説明

有料放送の放送システム

【課題】 新RMP方式のようにBCASカード用いない放送方式においても、サーバ装置等の装置を追加することなく有料放送を可能とする。
【解決手段】 電子マネー機能を持ったICカードを用い、有料放送視聴料の決済および、放送に施されるスクランブルの解除を行うことで、サーバ装置等を追加することなしに有料放送を実施することが可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル放送の放送システムに関し、特にICカードを用いて有料放送の視聴料金の決済の行う放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星や地上波を用いたデジタル放送において、BCAS(BS Conditional Access System)カードを用いた有料放送が行われている。従来行われている有料放送においては、有料放送の視聴履歴を受信機で蓄積しておき、蓄積された視聴履歴とBCASカードIDを電話回線等を通して送信することで後日まとめて料金精算を行う方式や、予めBCASカードIDを登録することで視聴契約を行い、放送局から登録済のBCASカードIDに対して視聴可能である旨を表す情報を送信し、視聴を許可する方式が行われている。
【0003】
ところで、電波産業会の標準規格である「デジタル放送におけるアクセス制御方式」(ARIB STD B−25 Ver5.1)第3部「受信時の制御方式(コンテンツ保護方式)」で新しい方式のコンテンツ保護方式が追加規格化されている。以下、この規格を新RPM方式と呼ぶ。新RMP方式においては、従来地上波デジタル放送の視聴にも必要であったBCASカードが不要となり、新しいコンテンツ保護方式が用いられる。以下、新RMP方式におけるコンテンツ保護方式について説明する。
【0004】
図8は新RMP方式におけるコンテンツ保護方式を表す模式図である。図8において、左半分は暗号化を施す放送局を、右半分は復号を施す受信機を表している。放送局はコンテンツデータをスクランブル鍵でスクランブルを施した暗号化コンテンツ、スクランブル鍵をワーク鍵で暗号化した情報を含むECM(Entitlement Control Message)、ワーク鍵をデバイス鍵で暗号化したワーク鍵設定EMM(Entitlement Management Message)、デバイス鍵生成情報を含むデバイス鍵設定EMMを時分割で多重化して送信する。受信機は受信したデータを暗号化コンテンツ、ECM、ワーク鍵設定EMM、デバイス鍵設定EMMに分離する。デバイス鍵設定EMMには、受信機に固有のデバイス鍵生成アルゴリズムによりデバイス鍵を生成することのできる情報が含まれており、放送局が各受信機に合わせたデバイス鍵設定EMMを生成、送信し、受信機は自機向けのデバイス鍵設定EMMをデバイス鍵生成アルゴリズムに通すことによりデバイス鍵を得る。ワーク鍵設定EMMはデバイス鍵により復号可能であり、放送局が各受信機のデバイス鍵で復号可能なワーク鍵を含むワーク鍵設定EMMを生成、送信し、受信機は自機向けのワーク鍵設定EMMを復号することでワーク鍵を得る。ECMは全受信機に共通の情報であり、ワーク鍵を用いて復号可能である。ECMを復号して得られるスクランブル鍵は暗号化コンテンツをデスクランブル(スクランブルを解除する操作)することが可能であり、スクランブル鍵を使用して番組のコンテンツデータを復号することができる。つまり、受信機側では、デバイス鍵→ワーク鍵→スクランブル鍵の順に鍵を生成、使用することで番組のコンテンツを視聴可能となる。
【0005】
以上説明したように、新RMP方式ではコンテンツ保護のためにBCASカードが用いられない。また、個々の受信機にはメーカーIDおよび機種IDが割り振られるが、個別の機体を判別するためのIDは付与されないために個別認証を行うことができず、従来のBCASカードを用いた有料放送と同様の仕組では有料放送を行うことができない。
【0006】
BCASカードを用いない有料放送の課金システムとしては、従来いくつかの方法が提案されている。例えば特許文献1では、電子マネーを用いて視聴料金の決済を行い、PC等の情報機器を用いてインターネット経由で視聴権データをICカードへ書き込み、ICカードに書き込まれた視聴権データを受信機へ取り込むことで視聴の可否を判定する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−32644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法はインターネット等のネットワークを介して視聴権データを取得する仕組であるため、有料放送を行う放送事業者側に視聴権データの送信要求を受付、送信要求の正当性をチェックし、正当な送信要求に対して視聴権データを送信するためのサーバ装置が必要となり、放送事業者にとって負担となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために本発明の有料放送の放送システムは以下の構成を備える。すなわち、有料放送番組の送信を行う送信装置と、有料放送番組を受信する受信装置と、有料放送視聴料金の決済を行う情報端末とから構成され、前記送信装置はさらに、放送信号に暗号化を施す第一の暗号手段と、該第一の暗号手段により用いられる第一の暗号鍵に暗号化を施す第二の暗号手段と、該第二の暗号手段により用いられる第二の暗号鍵に暗号化を施す第三の暗号手段と、該第三の暗号手段により生成された暗号化情報を契約情報として送信する契約情報送信手段とを備え、前記情報端末はさらに、前記第三の暗号手段により施された暗号を復号する第一の復号手段を備え、前記受信装置はさらに、前記第一の復号手段により復号された第二の暗号鍵を取得する取得手段と、該第二の暗号鍵を用いて前記第二の暗号手段により施された暗号を復号する第二の復号手段と、該第二の復号手段により復号された第二の暗号鍵を用いて前記第一の暗号手段により施された暗号を復号する第三の復号手段と、前記送信手段により送信された前記契約情報を受信する契約情報受信手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新RMP方式のデジタル放送においても、サーバ装置等の追加の装置を必要とせず、有料放送を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0011】
以下、本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例に係る有料放送課金システムの概略を模式的に表したブロック図である。図1において、デジタル放送の受信装置101はICカード102内のデータを読み書きするためのICカードリーダー/ライターを介してICカード102内のデータを読み書き可能に構成されている。ICカードリーダー/ライターは、受信装置101に内蔵されていてもよいし、USB(Universal Serial Bus)等のバスを介して外部装置として受信装置101と接続されていてもよい。受信装置101の詳細については後述する。情報端末103は受信装置101と同様に、ICカード102内のデータを読み書き可能に構成されている。また、情報端末103はインターネット等のネットワーク106を介して電子マネーシステム105と接続されている。情報端末103としてはICカードリーダー/ライターを接続したPC等の他にICカードを内蔵した携帯電話等を用いることができる。放送装置104は、放送コンテンツにスクランブルを施したコンテンツ信号と、有料放送の視聴可否を表す契約情報、番組情報等を送信可能に構成されている。また、放送装置104はネットワークを介して電子マネーシステム105と接続され、有料放送視聴料金の決済情報を受信可能に構成されている。放送装置104の詳細については後述する。電子マネーシステム105は、情報端末端末103と通信を行い、有料放送視聴料金の決済を行う。
【0013】
次に図2を用いて有料放送を視聴可能となるまでの処理フローを説明する。ユーザーは情報端末103を用いて視聴を希望する番組の視聴料金の決済を電子マネーシステム105に対して要求する(201)。この際、視聴を希望する番組に関する情報とともに、ICカード102のIDおよび、受信機101の機種IDを送信する。決済要求を受信した(202)電子マネーシステム105は、情報端末103と通信を行い、決済処理を行う(203)。決済処理は電子マネーシステムの提供する仕組で行うことが可能であり、情報端末としてICカードを内蔵した携帯電話を用いる場合、例えばモバイルEdy等の決済方法を用いることができる。視聴料金の決済が完了すると、電子マネーシステム105は放送装置104に対して、決済処理が完了した旨を通知する(204)。この際、ステップ202で受信したICカードIDおよび受信機の機種IDを同時に通知する。決済完了通知を受信すると(205)放送装置104は受信したICカードIDおよび機種IDに特有の契約情報を生成する(206)。契約情報は図3に示すように、新RMP方式においてワーク鍵の設定に用いられるワーク鍵設定EMMを、ICカードIDを鍵として復号可能なように暗号化し、暗号化したワーク鍵設定EMMを可変部に含んだ形式のEMMである。契約情報を表すEMMのヘッダ部にICカードIDを含むことで、受信機側ではICカードIDを基に取得するべき契約情報を選択することが可能となる。次に放送装置104は、生成した契約情報をコンテンツデータ多重化して送信する(207)。受信装置101は、契約情報を受信すると(208)、ICカード102に対して契約情報を送信し、ワーク鍵設定EMMの復号を依頼する(209)。契約情報を受信した(210)ICカード102は、契約情報からワーク鍵設定EMMを復号し(211)、復号したワーク鍵設定EMMを受信装置101へ送信する(212)。受信装置101は、ワーク鍵設定EMMを受信すると(213)ワーク鍵設定EMMからデバイス鍵を用いてワーク鍵を取り出し、ワーク鍵を設定する(214)。ワーク鍵の設定が完了すると、有料放送番組に施されたスクランブルを解除するためのスクランブルキーを取得することが可能となるため、有料放送の視聴が可能となる(215)。
【0014】
次に放送装置104の詳細について説明する。図4は放送装置104の構成を、本発明の実施例に関連する部分を中心に表した模式図である。コンテンツ管理部401は放送番組のコンテンツデータを管理しており、エンコード部402に対してコンテンツデータを供給する。エンコード部402はコンテンツ管理部401より供給されたコンテンツデータをMPEG2(Motion Picture Experts Group phase 2)等、定められた圧縮方式でエンコードする。契約情報管理部403は、電子マネーシステム105からの決済完了通知を受信し、契約情報を生成する。図5は、契約情報管理部403の概略を表すブロック図である。契約情報管理部403は、決済完了通知部501により電子マネーシステム105と接続されており、決済完了通知を受信する。決済完了通知受信部501は、決済完了通知を受信すると決済完了通知に含まれるICカードIDおよび機種IDを契約情報生成部502へ供給する。契約情報生成部502は、受け取った機種IDに基づいてEMM管理部503へワーク鍵設定EMMを要求する。契約情報生成部502は、受け取ったワーク鍵設定EMMをICカードIDを鍵として復号可能な形式で暗号化を施し、契約情報を生成する。EMM管理部503は、スクランブル制御部405よりワーク鍵を、デバイス鍵管理部504より機種IDに対応したデバイス鍵を受け取り、ワーク鍵設定EMMを生成し、契約情報生成部へ供給する。デバイス鍵管理部504は、機種ID毎に定められたデバイス鍵を管理しており、EMM管理部からの要求に応じて、機種IDに対応したデバイス鍵を供給する。多重化部404は、エンコード部402より供給されるコンテンツデータおよび、契約情報管理部404より供給される契約情報を時分割で多重化し、MPEG2−TS(Transport Stream)形式等の定められた形式の放送ストリームを生成し、スクランブル部406へ供給する。スクランブル部406は、スクランブル制御部405の制御に基づき、多重化部より供給される放送ストリームの内、コンテンツデータに該当する部分に対してスクランブル処理を施し、スクランブル後の放送ストリームを送信部へ供給する。スクランブル処理に必要なスクランブル鍵はスクランブル制御部405より供給される。スクランブル制御部405は、コンテンツデータのスクランブルに用いられるスクランブル鍵、スクランブル鍵を送信するためのECMをスクランブルする際に用いられるワーク鍵を管理している。送信部407はスクランブル部406により供給される暗号化放送ストリームを放送波に乗せて送信する。
【0015】
次に受信機101の詳細について説明する。図6は受信機101およびICカード102の概略を模式的に表したブロック図である。ICカードID記憶部608は、ICカードの発行者により付与されたユニークなICカードIDを記憶する。ワーク鍵設定EMM復号部609は、ICカードリーダー/ライター部604を介して受信した契約情報より、ワーク鍵設定EMMを復号する。ワーク鍵設定EMMの復号に用いる暗号鍵としてはICカードIDを用いる。放送受信部601は、アンテナを介して入力されたデジタル放送信号を受信する。また、受信した信号に対して復調処理、誤り訂正処理等、デジタル放送規格により定められた処理を施してTS信号を生成する。多重分離部602は、TS信号を映像信号/音声信号などのコンテンツ信号と、契約情報、ECMなどの制御信号とに分離する。コンテンツ信号は復号部606へ、制御信号のうち、契約情報は有料放送視聴管理部603へ、ECMは鍵管理部605へそれぞれ供給される。有料放送視聴管理部603は、ICカードリーダー/ライター部604を介してICカード102と通信可能であり、契約情報およびワーク鍵設定EMMの処理を行う。図7は有料放送視聴管理部603の処理フローを表すフローチャートである。有料放送視聴管理部603は、ユーザーから有料放送視聴の指示があるとまずICカードと通信可能な状態となるのを待つ(701)。ICカードと通信可能となると、ICカードよりICカードIDを取得する(702)。次に多重分離部602より供給される契約情報の中から、取得したICカードIDに対応する契約情報を取得し(703)、ICカードへ取得した契約情報を送信する(704)。次にICカードによりワーク鍵設定EMMが送信されるのを待機する(705)。ワーク鍵設定EMMを受信すると、ワーク鍵設定EMMを鍵管理部605へ供給して(706)終了する。ICカードリーダー/ライター部604は、有料放送視聴管理部603からの要求に応じてICカード102と通信を行い、ICカード102内のデータを取得/更新する。鍵管理部605は、受信機の機種毎に固有なデバイス鍵を管理しており、有料放送視聴管理部603により供給されるワーク鍵設定EMMよりワーク鍵を復号/管理する。また、多重分離部よりECMを受け取り、ワーク鍵を用いてスクランブル鍵を復号する。復号部606は、鍵管理部605により供給されるスクランブル鍵を用いて、コンテンツデータに施されたスクランブルを解除し、表示部607へコンテンツデータを供給する。表示部607は、コンテンツデータに基づき、コンテンツの内容を表示する。
【0016】
以上説明してきたように、本発明によればBCASカードを用いない新RMP方式の放送においても、サーバ装置等の追加をすることなく有料放送を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る放送システムの概略を表す模式図
【図2】本発明の実施例1に係る放送システムの処理フローを表すフロー図
【図3】本発明の実施例1に係る契約情報を表す模式図
【図4】本発明の実施例1に係る放送装置の概略を表すブロック図
【図5】契約情報管理部の概略を表すブロック図
【図6】本発明の実施例1に係る受信装置の概略を表すブロック図
【図7】有料放送視聴管理部の処理フローを表すフロー図
【図8】新RMP方式のコンテンツ保護法式の概略を表す模式図
【符号の説明】
【0018】
101 受信装置
102 ICカード
103 情報端末
104 放送装置
105 電子マネーシステム
106 インターネット
401 コンテンツ管理部
402 エンコード部
403 契約情報管理部
404 多重化部
405 スクランブル制御部
406 スクランブル部
407 送信部
501 決済完了通知受信部
502 契約情報生成部
503 EMM管理部
504 デバイス鍵管理部
601 放送受信部
602 多重分離部
603 有料放送視聴管理部
604 ICカードリーダー/ライター部
605 鍵管理部
606 復号部
607 表示部
608 ICカードID記憶部
609 ワーク鍵設定EMM復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料放送番組の送信を行う送信装置と、有料放送番組を受信する受信装置と、有料放送視聴料金の決済を行う情報端末とからなる有料放送の放送システムであって、
前記送信装置はさらに、放送信号に暗号化を施す第一の暗号手段と、該第一の暗号手段により用いられる第一の暗号鍵に暗号化を施す第二の暗号手段と、該第二の暗号手段により用いられる第二の暗号鍵に暗号化を施す第三の暗号手段と、該第三の暗号手段により生成された暗号化情報を契約情報として送信する契約情報送信手段とを備え、
前記情報端末はさらに、前記第三の暗号手段により施された暗号を復号する第一の復号手段を備え、
前記受信装置はさらに、前記第一の復号手段により復号された第二の暗号鍵を取得する取得手段と、該第二の暗号鍵を用いて前記第二の暗号手段により施された暗号を復号する第二の復号手段と、該第二の復号手段により復号された第一の暗号鍵を用いて前記第一の暗号手段により施された暗号を復号する第三の復号手段と、前記送信手段により送信された前記契約情報を受信する契約情報受信手段とを備えることを特徴とする有料放送の放送システム。
【請求項2】
前記情報端末は該端末を一意に識別可能な識別子を記憶する識別子記憶手段と、有料放送視聴料金の決済を行う際に該識別子を通知する識別子通知手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の有料放送の放送システム。
【請求項3】
有料放送視聴料金の決済に電子マネー情報を記憶するICカードを用いることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の有料放送の放送システム。
【請求項4】
前記ICカードは、前記第二の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記契約情報を記憶契約情報記憶手段とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の有料放送の放送システム。
【請求項5】
前記第二の暗号鍵を前記ICカードの前記暗号鍵記憶手段へ書き込む暗号鍵書き込み手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の有料放送の放送システム。
【請求項6】
前記受信装置は、前記契約情報を前記ICカードの前記契約情報記憶手段へ書き込む契約情報書き込み手段と、前記ICカードに記憶された前記第二の暗号鍵を読み出す暗号鍵読み出し手段とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の有料放送の放送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−260791(P2009−260791A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108985(P2008−108985)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】