説明

有料道路料金収受設備の車載機

【課題】 車両運転手にとって安全で使いやすく、また、道路事業者にとって、不正使用を防ぎ、安全性が高い車載機を提供する。
【解決手段】 有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機10において、ICカード24を挿入するICカード挿入手段20と、PINを入力する入力手段14と、車両の走行信号から車両の走行中または停車中を判別する走行/停車判別手段11とを設け、走行/停車判別手段の判定が走行中であるとき、入力手段からのPIN入力を禁止するようにしている。走行中のPIN入力操作に伴う危険性を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有料道路の自動料金収受システム(Electronic Toll Collection:ETC)に使用される車載機と、この車載機にPIN(personal identification number)を入力する入力方法に関し、特に、運転の安全性を損なうことなくPINが入力されるように構成したものである。
【0002】
【従来の技術】ETCシステムは、料金所に設置されたアンテナと車両に搭載された車載機との間で必要な情報を無線によって交信し、通行料金の課金処理を自動的に行なうシステムであり、このシステムの導入により、車両は料金所をノンストップで通過することができ、有料道路の料金所での渋滞を解消することができる。
【0003】図9は、従来のETCシステムの概要を示している。レーン脇には、光線の遮断によって車両の通過を感知する第1車両感知器91と第2車両感知器92とが4m程度の間隔を置いて配置され、レーンの上にはETC車と無線交信するためのアンテナ93が設置され、この第1車両感知器91、第2車両感知器92及びアンテナ93からの検知情報を基に通過車両95に対して必要な処理を行なう路側機94がレーン脇に設置されている。
【0004】このシステムでは、車両95がレーンを通過すると、第1車両感知器91が通過車両を検知して、その検知情報を路側機94に伝え、路側機94はアンテナ93からの無線送信を開始する。
【0005】ETC車95は、車内のダッシュボード上などに車載機が設置されており、車載機には、支払い口座や残高情報などの個人情報が記録されたICカードが挿入されている。この車載機は、アンテナ93からの無線信号を受信すると、記憶している出発地、通過地の情報や支払い口座、残高情報などを送信する。これらの情報はアンテナ93で受信されて路側機94に送られ、路側機94は、車載機からの情報を基に自動料金収受の処理を行ない、課金情報をETC車に伝える。通過車両が第2車両感知器92の位置に達すると、第2車両感知器92は、その検知情報を路側機94に伝え、路側機94は、アンテナ93による無線交信を停止する。
【0006】また、車載機は、図7のブロック図及び図8R>8の斜視図に示すように、ICカード24が挿入されるICカード挿入部20と、ICカード挿入部20へのICカード24の挿入を検知するICカード挿入検知センサ21と、ICカード24との間でデータを転送するICカードI/F回路19と、必要な演算処理を実行するCPU11と、ICカード24から読み出したデータや演算処理後のデータを記憶するRAM13と、レーン上のアンテナ93と通信するための通信回路18と、CPU11の動作を規定するプログラムが格納されたROM12とを備えている(例えば、特開平4−14043号に開示)。
【0007】この車載機では、ICカード24をICカード挿入部20に挿入した時点で、ICカード挿入検知センサ21がそれを検知し、CPU11の指令に基づいて、ICカード24に記録されている支払い口座や残高情報、支払い履歴情報を、ICカードI/F回路19を介して、RAM13に転送し、RAM13で記憶する。
【0008】このRAM13に記憶された情報は、車両が料金所を通過する間に、通信回路18から、アンテナ93を通じて路側機94に送信される。路側機94は、これらの情報を基に自動料金収受の処理を行ない、課金情報を車載機10に送信する。
【0009】路側機94から課金情報を受け取ると、車載機10のCPU11は、残高を計算し、この残高や課金履歴をRAM13に記憶する。
【0010】料金所を過ぎて車載機10と路側機94との間の通信が終了すると、RAM13に記憶された更新後の課金履歴と残高とがICカード24に転送され、記憶される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、車載機にICカードを挿入するだけで料金所での自動料金収受が可能になるシステムでは、拾ったり不法に入手した他人のICカードが不正使用されるケースを防止できないという問題点がある。
【0012】そこで、銀行の現金自動支払機と同じように、車載機にICカードを挿入する際に暗証番号(PIN)を併せて入力させ、ICカードに記憶されているナンバーと入力されたPINとの一致を条件としてICカードの使用を認める方式が考えられる。このPIN入力は、通行料の自動支払いに応ずる意志を確認する意味からも有意義である。
【0013】ただ、この場合、PINの入力操作が走行中の運転手によって行なわれると、安全運転が損なわれ、交通事故の原因になりかねない。
【0014】本発明は、こうした問題点の改善を図るものであり、車両運転手にとって安全で使いやすく、また、道路事業者にとって、不正使用を防ぎ、信頼性が高い車載機を提供し、また、この車載機へのPINの入力方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の車載機では、ICカードを挿入するICカード挿入手段と、PINを入力する入力手段と、車両の走行信号から車両の走行中または停車中を判別する走行/停車判別手段とを設け、走行/停車判別手段の判定が走行中であるとき、入力手段からのPIN入力を禁止するように構成している。
【0016】また、有効なICカードナンバーを記憶する有効ICカード記憶手段と、ICカード挿入手段に挿入されたICカードのナンバーと有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーとの一致を判別する一致判別手段とを設け、一致判別手段が有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーの中に一致するナンバーを見つけたとき、入力手段からのPIN入力を省略できるようにしている。
【0017】また、本発明の暗証番号入力方法では、車載機に挿入されるICカードの有効性を、入力されるPINによって確認するとともに、このPINの入力を車両走行中は禁止するようにしている。
【0018】また、車載機が、有効なICカードナンバーを予め記憶し、挿入されるICカードのナンバーが、記憶しているICカードナンバーと一致するとき、そのICカードの有効性を確認するようにしている。
【0019】そのため、ICカードの不正使用を防止することができ、また、走行中のPIN入力操作に伴う危険性を回避することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機において、ICカードを挿入するICカード挿入手段と、PINを入力する入力手段と、車両の走行信号から車両の走行中または停車中を判別する走行/停車判別手段とを設け、走行/停車判別手段の判定が走行中であるとき、入力手段からのPIN入力を禁止するようにしたものであり、PIN入力操作によって安全運転が損なわれる事態を回避することができる。
【0021】請求項2に記載の発明は、ガイダンスを音声または表示メッセージで表示する表示手段を設け、ICカード挿入手段にICカードが挿入されたとき、走行/停車判別手段の判定が走行中であれば、表示手段が、PIN入力は停車時のみ有効である旨のガイダンスを表示し、ICカード挿入手段にICカードが挿入されたとき、走行/停車判別手段の判定が停車中であれば、表示手段が、PIN入力を促すガイダンスを表示するようにしたものであり、運転手はガイダンスに従ってPINの入力を安全な状態で行なうことができる。
【0022】請求項3に記載の発明は、ICカード挿入手段へのICカードの挿入を検知する挿入検知手段を設け、走行/停車判別手段の判定が走行中から停車中に移行した時点で、挿入検知手段がICカードの挿入を検知している場合に、表示手段が、車外へ出るときにはICカードを所持するように促すガイダンスを表示するようにしたものであり、車載機に差し込まれたままのICカードが駐車中の車両から盗まれることを未然に防止できる。
【0023】請求項4に記載の発明は、運転席から運転手が離れた時点を検知する離席検知手段を設け、挿入検知手段がICカードの挿入を検知しているときに、離席検知手段が運転席から離れる運転手を検知した場合に、表示手段が、ICカードを所持するように促すガイダンスを表示するようにしたものであり、車載機に差し込まれたままのICカードが駐車中の車両から盗まれることを未然に防止する。
【0024】請求項5に記載の発明は、運転席を振動する振動手段に起動信号を出力する信号出力手段を設け、信号出力手段が、表示手段の表示に同期して、振動手段を起動するようにしたものであり、振動により運転手に、表示を気付かせることができる。
【0025】請求項6に記載の発明は、有効なICカードナンバーを記憶する有効ICカード記憶手段と、ICカード挿入手段に挿入されたICカードのナンバーと有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーとの一致を判別する一致判別手段とを設け、一致判別手段が有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーの中に一致するナンバーを見つけたとき、入力手段からのPIN入力を省略できるようにしたものであり、ICカードを挿入する度にPIN入力が求められる煩わしさから解放される。また、不正手段で入手したICカードは利用できないため、システムの信頼性は確保される。
【0026】請求項7に記載の発明は、有効ICカード記憶手段で、複数のICカードナンバーが記憶できるようにしたものであり、タクシーや営業車など、1台の車両を複数の人が利用する場合にも適用できる。
【0027】請求項8に記載の発明は、入力手段から有効なPINが入力されたときにICカード挿入手段に挿入されているICカードのナンバーが、有効ICカード記憶手段に記憶されるようにしたものであり、PIN入力が一度行なわれると、次回からのPIN入力が省略できる。
【0028】請求項9に記載の発明は、有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、ファーストインファーストアウトの原理により最古のICカードナンバーを順次最新のICカードナンバーで置き換えるようにしたものであり、新しいICカードナンバーを順次記憶することができる。
【0029】請求項10に記載の発明は、有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、有効ICカード記憶手段への新たなICカードナンバーの保存を禁止するようにしたものであり、固定したメンバーに対してだけ、PIN入力の省略を可能にすることができる。
【0030】請求項11に記載の発明は、有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードナンバーの保存日時とを記憶し、保存日時から一定時間が経過したICカードナンバーを自動的に消去するようにしたものであり、期限を限って貸し出すレンタカーなどに適用することができる。
【0031】請求項12に記載の発明は、有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードによる支払処理の実績回数とを記憶し、有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、支払処理の実績回数が最小のものから順次最新のICカードナンバーで置き換えるようにしたものであり、利用実態を考慮してICカードナンバーを更新することができる。
【0032】請求項13に記載の発明は、有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードによる支払処理の実績回数とICカードナンバーの保存日時とを記憶し、有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、保存日時から一定時間が経過したICカードナンバーの中で支払処理の実績回数が最小のものから順次最新のICカードナンバーで置き換えるようにしたものであり、利用実態を正確に考慮してICカードナンバーを更新することができる。
【0033】請求項14に記載の発明は、この一定時間をキーボード入力、通信コマンドまたは設定用ICカード等から設定するようにしたものであり、これらの手段を通じて保存日時からの一定時間を適宜設定することができる。
【0034】請求項15に記載の発明は、有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機への暗証番号入力方法において、車載機に挿入されるICカードの有効性を、入力されるPINによって確認するとともに、このPINの入力を車両走行中は禁止するようにしたものであり、システムの不正利用を排し、また、安全運転を図ることができる。
【0035】請求項16に記載の発明は、車載機にICカードが挿入されたとき、車両が走行中であれば、PIN入力は停車時のみ有効である旨を音声または画面表示で案内し、車両が停車中であれば、PIN入力を音声または画面表示で促すようにしたものであり、運転手に戸惑いを与えることなく、正しい動作を行なわせることができる。
【0036】請求項17に記載の発明は、車載機にICカードを挿入したまま車外へ出る運転手に、ICカードを所持して下車するように音声または画面表示で案内するようにしたものであり、駐車車両からのICカードの盗難を予防することができる。
【0037】請求項18に記載の発明は、音声または画面表示での案内に同期して、運転手席を振動させて運転手の注意を喚起するようにしたものであり、運転手に、表示を確実に気付かせることができる。
【0038】請求項19に記載の発明は、有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機への暗証番号入力方法において、車載機が有効なICカードナンバーを予め記憶し、挿入されるICカードのナンバーが、記憶しているICカードナンバーと一致するとき、そのICカードの有効性を確認するようにしたものであり、ICカードの不正使用を防ぎながら、ICカード挿入時のPIN入力の煩わしさを解消することができる。
【0039】請求項20に記載の発明は、車載機が、有効なICカードナンバーの複数個を記憶するようにしたものであり、タクシーや営業車など、1台の車両を複数の人が利用する場合に適用することができる。
【0040】請求項21に記載の発明は、車載機が、入力されたPINによって有効性を確認したICカードのナンバーを、有効なICカードナンバーとして記憶するようにしたものであり、PIN入力が一度行なわれると、次回からのPIN入力が省略できる。
【0041】請求項22に記載の発明は、車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、ファーストインファーストアウトの原理により最古のICカードナンバーを消去して、最新のICカードナンバーを記憶するようにしたものであり、新しいICカードナンバーを順次記憶することができる。
【0042】請求項23に記載の発明は、車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、新たなICカードナンバーの記憶を禁止するようにしたものであり、固定したメンバーに対してだけ、PIN入力の省略を可能にすることができる。
【0043】請求項24に記載の発明は、車載機が記憶する有効なICカードナンバーの中から、記憶時点から一定時間が経過したICカードナンバーを自動的に消去するようにしたものであり、期限を限って貸し出すレンタカーなどに適用することができる。
【0044】請求項25に記載の発明は、車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、支払処理の実績回数が最小のICカードのナンバーを消去して最新のICカードナンバーを記憶するようにしたものであり、利用実態を考慮してICカードナンバーを更新することができる。
【0045】請求項26に記載の発明は、車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、記憶時点から一定時間が経過したICカードナンバーの中で支払処理の実績回数が最小のICカードのナンバーを消去して最新のICカードナンバーを記憶するようにしたものであり、利用実態を正確に考慮してICカードナンバーを更新することができる。
【0046】以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0047】(第1の実施形態)第1の実施形態の車載機は、図1のブロック図及び図2の斜視図に示すように、ICカード24が挿入されるICカード挿入部20と、ICカード挿入部20へのICカード24の挿入を検知するICカード挿入検知センサ21と、ICカード24との間でデータを転送するICカードI/F回路19と、ICカード24から読み出したデータや演算処理後のデータ、メッセージデータ等を記憶するRAM13と、料金所のアンテナと通信するための通信回路18と、PINを入力するキーボード14と、運転手へのメッセージを音声で指示する音声指示部15と、運転手へのメッセージを画面に表示する表示画面16と、現在時刻を計時する時計17と、各種の検知信号が入力する信号入力部22と、運転席を振動する振動駆動装置25に信号を出力する信号出力部23と、各部を制御し、必要な演算処理を実行するCPU11と、CPU11の動作を規定するプログラムが格納されたROM12とを備えている。
【0048】また、信号入力部22には、車輪の回転を検知する車両走行検知信号、運転手の離席による運転席の重量変化を検知する重量センサ検知信号、及び、運転手の離席を赤外で検知する赤外センサ検知信号が入力する。
【0049】この車載機のICカード挿入部20にICカード24を挿入すると、ICカード挿入検知センサ21が、それを検知して検知信号をCPU11に出力し、CPU11の指示に基づいて、ICカード24に記録されているナンバーや支払い口座、残高情報などの情報が、ICカードI/F回路19を介して、RAM13に転送され、RAM13で記憶される。
【0050】CPU11は、このとき、信号入力部22から入力する車両走行検知信号によって、車両が走行中であるか停車しているかを判定し、走行中であれば、RAM13に記憶されている、PIN入力は停車時のみ有効である旨のガイダンスのデータを音声指示部15及び表示画面16に出力する。これを受けて、音声指示部15は、“暗証番号の入力は停車していないとできません”というガイダンスを音声で指示し、また、表示画面16には、このメッセージが文字で表示される。また、CPU11は、走行中のキーボード14からの入力を無効入力として処理する。
【0051】一方、車両が停車している場合には、CPU11は、RAM13に記憶されている、PIN入力を促すガイダンスのデータを音声指示部15及び表示画面16に出力する。これを受けて、音声指示部15は、“キーボードから暗証番号を入力して下さい”というガイダンスを音声で指示し、また、表示画面16には、このメッセージが文字で表示される。
【0052】運転手が、このガイダンスに従ってキーボード14からPINを入力した場合、CPU11は、入力されたPINと、RAM13で記憶しているICカード24のナンバーとを比較する。そして、それらが一致している場合には、ICカード24を有効と認め、また、一致していない場合には、このICカードは使用できない旨のガイダンスを音声指示部15及び表示画面16から表示させる。
【0053】ICカード24が有効である場合の料金所における車載機10の動作は、従来の装置と同じであり、車両が料金所を通過する間に、RAM13に記憶された情報が、通信回路18から路側機に送信される。路側機は、これらの情報を基に自動料金収受の処理を行ない、課金情報を車載機10に送信する。路側機から課金情報が送られて来ると、車載機10のCPU11は、残高を計算し、この残高や課金履歴をRAM13に記憶する。料金所を過ぎて車載機10と路側機との間の通信が終了すると、RAM13に記憶された更新後の課金履歴と残高とがICカード24に転送され、そこに記憶される。
【0054】なお、課金データを路側機から中央装置へ送信し、後日、顧客の銀行口座から引き落とすという後納システムにおいても、上記発明内容は同等に採用することが可能である。
【0055】PINが未入力や無効入力であったり、入力されたPINが相違しているためにICカード24が無効である場合には、料金所での車載機10と路側機との交信は行なわれず、運転手は車両を停めて通行料を現金で支払うことになる。
【0056】このように、この車載機では、車両走行時のPIN入力が禁止されるため、キーボードへの入力操作に伴う運転の危険性を回避することができる。
【0057】(第2の実施形態)第2の実施形態では、車載機からのICカードの抜き忘れを防止する手段について説明する。
【0058】この車載機10は、図1の構成を有している。CPU11は、IC挿入検知センサ21の信号がICカード24の挿入を示している状態で、車両走行検知信号が車両の停車を示した場合に、車両の停車時点で、RAM13に記憶されている、下車時のICカードの所持を促すガイダンスを音声指示部15及び表示画面16に出力する。これを受けて、音声指示部15は、“車外へ出る時はICカードを抜いて所持して下さい”というガイダンスを音声で指示し、また、表示画面16には、このメッセージが文字で表示される。
【0059】CPU11は、同時に、振動駆動装置25を起動する信号を信号出力部23から出力する。振動駆動装置25は、この信号により運転席の振動を開始し、運転手にメッセージが表示されていることを気付かせる。
【0060】また、運転手が運転席から腰を上げたことを、運転席に設置した重量センサの検知信号で検知し、ICカードが車載機に挿入されたままになっている時には、ICカードを車載機から抜いて所持するように促すガイダンスを表示するようにしても良い。また、運転手が運転席から離れたことを赤外センサで検知し、それを基に、ICカードの抜き忘れを防止するガイダンスを表示するようにしても良い。
【0061】このように、下車時のICカードの所持を促すことによって、駐車車両からのICカードの盗難を未然に防ぐことができる。
【0062】(第3の実施形態)第3の実施形態では、PIN入力を省略できるようにした車載機について説明する。
【0063】この車載機は、図1の構成を有し、RAM13には、図3に示すように、有効なICカードのナンバーを複数分ストアする有効ICカードエリアが設けられている。
【0064】この有効ICカードエリアには、一度PIN入力により有効と判断されたICカードのナンバーが保存される。タクシーや業務用車両のように、一台の車を複数の人が交替で運転する場合を考慮して、この有効ICカードエリアには、複数のICカードナンバーを記録する領域が確保されている。
【0065】ICカード24が新たにICカード挿入部20に挿入されると、CPU11は、そのICカード24のナンバーと、RAM13の有効ICカードエリアに記録されているICカードナンバーとを比較し、一致するものがあるかどうか判定する。一致するナンバーが存在する場合には、挿入されたICカード24を有効と判断する。この場合には、キーボード14から改めてPINを入力する必要がない。
【0066】なお、図3では、有効ICカードエリアに複数のICカードナンバーが記録できるように構成しているが、有効ICカードエリアに一つだけのICカードナンバーしか記録できないように構成してもよい。
【0067】また、有効ICカードエリアに記録された複数のICカードナンバーの更新は、次のように行なわれる。
【0068】有効ICカードエリアに複数のICカードナンバーがフルに記録されている状態で、車載機に新たなICカードが挿入され、キーボード14からPINが入力されると、CPU11は、そのICカードを有効と判断したときに、ファーストインファーストアウトの原理により、有効ICカードエリアに記録されている最も古いICカードナンバーを廃棄し、それに替わって最新のICカードナンバーを有効ICカードエリアに記録する。
【0069】こうした更新処理により、一台の車両を交替で運転するグループのメンバーが入れ替わった場合に、新メンバーのICカードナンバーを有効ICカードエリアに記録することが可能になる。
【0070】また、有効ICカードエリアに複数のICカードナンバーがフルに記録された場合に、新たなICカードナンバーの有効ICカードエリアへの保存を禁止し、その旨を音声指示部15及び表示画面16を通じて運転手に通知するように構成することもできる。この場合には、車載機に新たなICカードを挿入した場合、キーボード14からPINを入力しなければ、そのICカードは有効にならない。
【0071】こうした更新処理により、一台の車両を交替で運転する固定されたメンバー以外の人が、その車両を臨時で運転するような場合に、有効ICカードエリアのデータが書き換えられてしまうことを防ぐことができる。
【0072】また、図4に示すように、有効ICカードエリアに、ICカードナンバーと、それを登録した年月日時刻とを記録し、また、キーボード14からICカードナンバーの保存期間を設定し、保存期間が経過したICカードナンバーを自動的に有効ICカードエリアから消去するように構成することもできる。この場合、CPU11は、時計17の計時する現在時刻と有効ICカードエリアに記録された登録時刻との差分を取ることにより、各ICカードナンバーの登録時刻からの経過時間を算出する。そして、経過時間が保存時間に達したICカードナンバーを有効ICカードエリアから消去する。
【0073】こうした更新処理は、例えば、レンタカーを貸し出す際に、ICカードナンバーを登録し、時間を限って車載機の利用を可能にするシステムにおいて有効である。なお、ICカードナンバーの保存期間は、通信コマンドや設定用ICカード等から設定するように構成することもできる。
【0074】また、図5に示すように、有効ICカードエリアに、ICカードナンバーと、通行料支払いの実績回数とを記録し、有効ICカードエリアのICカードナンバーの記録がフル状態に達した場合に、支払い処理の実績回数に基づいて、ICカードナンバーの更新を行なうように構成することもできる。
【0075】この場合、CPU11は、車両が料金所に進入し、路側機から課金情報を受信すると、有効ICカードエリアに記憶されている、該当するICカードの実績回数を1つインクリメントして、ICカードナンバーに対応する通行料支払いの実績回数を更新する。
【0076】また、CPU11は、有効ICカードエリアに複数のICカードナンバーがフルに記録された状態のときに、車載機に新たなICカードが挿入され、キーボード14からPINが入力されると、有効ICカードエリアに記録されているICカードナンバーの中から、支払い処理の実績回数が最も少ないICカードナンバーを廃棄し、それに替わって最新のICカードナンバーを記録する。
【0077】また、図6に示すように、有効ICカードエリアに、ICカードナンバーと、それを登録した年月日時刻と、通行料支払いの実績回数とを記録し、有効ICカードエリアのICカードナンバーの記録がフル状態に達した場合に、登録時刻から一定時間が経過しているICカードナンバーの中で、支払い処理の実績回数が最も少ないICカードナンバーを選んで、最新のICカードナンバーに置き換えるようにしてもよい。
【0078】また、この場合、登録時刻からの一定時間を、キーボード14からの入力や通信コマンド、設定用ICカード等により設定することができる。
【0079】このように、支払い処理の実績回数を考慮して、有効ICカードエリアに残すべきICカードナンバーを選択することにより、実際的な有効ICカードエリアのデータ更新が可能となる。
【0080】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の車載機、及び、車載機への暗証番号入力方法は、ICカードの不正使用を防止し、かつ、運転の安全性を保つことができる。そのため、この車載機は、運転手にとって安全で使いやすく、また、道路事業者にとって、不正使用を排除し、ETCシステムの信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における車載機の構成を示すブロック図、
【図2】本発明の実施形態における車載機の斜視図、
【図3】本発明の第3の実施形態における車載機の有効ICカードエリアにICカードナンバーが記憶されている状態を示す図、
【図4】本発明の第3の実施形態における車載機の有効ICカードエリアにICカードナンバーと登録日時とが記憶されている状態を示す図、
【図5】本発明の第3の実施形態における車載機の有効ICカードエリアにICカードナンバーと支払処理の実績回数とが記憶されている状態を示す図、
【図6】本発明の第3の実施形態における車載機の有効ICカードエリアにICカードナンバーと登録日時と支払処理の実績回数とが記憶されている状態を示す図、
【図7】従来の車載機の構成を示すブロック図、
【図8】従来の車載機の斜視図、
【図9】従来のETCシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
10 車載機
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 キーボード
15 音声指示部
16 表示画面
17 時計
18 通信回路
19 ICカードI/F回路
20 ICカード挿入部
21 ICカード挿入検知センサ
22 信号入力部
23 信号出力部
24 ICカード
25 振動駆動装置
91 第1車両感知器
92 第2車両感知器
93 アンテナ
94 路側機
95 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機において、ICカードを挿入するICカード挿入手段と、PIN(personal identification number)を入力する入力手段と、車両の走行信号から車両の走行中または停車中を判別する走行/停車判別手段とを備え、前記走行/停車判別手段の判定が走行中であるとき、前記入力手段からのPIN入力を禁止することを特徴とする車載機。
【請求項2】 ガイダンスを音声または表示メッセージで表示する表示手段を具備し、前記ICカード挿入手段にICカードが挿入されたとき、前記走行/停車判別手段の判定が走行中であれば、前記表示手段が、PIN入力は停車時のみ有効である旨のガイダンスを表示し、前記ICカード挿入手段にICカードが挿入されたとき、前記走行/停車判別手段の判定が停車中であれば、前記表示手段が、PIN入力を促すガイダンスを表示することを特徴とする請求項1に記載の車載機。
【請求項3】 前記ICカード挿入手段へのICカードの挿入を検知する挿入検知手段を具備し、前記走行/停車判別手段の判定が走行中から停車中に移行した時点で、前記挿入検知手段がICカードの挿入を検知している場合に、前記表示手段が、車外へ出るときにはICカードを所持するように促すガイダンスを表示することを特徴とする請求項2に記載の車載機。
【請求項4】 運転席から運転手が離れた時点を検知する離席検知手段を具備し、前記挿入検知手段がICカードの挿入を検知しているときに、前記離席検知手段が運転席から離れる運転手を検知した場合に、前記表示手段が、ICカードを所持するように促すガイダンスを表示することを特徴とする請求項3に記載の車載機。
【請求項5】 運転席を振動する振動手段に起動信号を出力する信号出力手段を具備し、前記信号出力手段が、前記表示手段の表示に同期して、前記振動手段を起動することを特徴とする請求項2、3または4に記載の車載機。
【請求項6】 有効なICカードナンバーを記憶する有効ICカード記憶手段と、前記ICカード挿入手段に挿入されたICカードのナンバーと前記有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーとの一致を判別する一致判別手段とを具備し、前記一致判別手段が前記有効ICカード記憶手段に記憶されたナンバーの中に一致するナンバーを見つけたとき、前記入力手段からのPIN入力を省略できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車載機。
【請求項7】 前記有効ICカード記憶手段が、複数のICカードナンバーを記憶可能であることを特徴とする請求項6に記載の車載機。
【請求項8】 前記入力手段から有効なPINが入力されたときに前記ICカード挿入手段に挿入されているICカードのナンバーが、前記有効ICカード記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項6または7に記載の車載機。
【請求項9】 前記有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、ファーストインファーストアウトの原理により最古のICカードナンバーを順次最新のICカードナンバーで置き換えることを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項10】 前記有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、前記有効ICカード記憶手段への新たなICカードナンバーの保存を禁止することを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項11】 前記有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードナンバーの保存日時とを記憶し、保存日時から一定時間が経過したICカードナンバーを自動的に消去することを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項12】 前記有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードによる支払処理の実績回数とを記憶し、前記有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、前記支払処理の実績回数が最小のものから順次最新のICカードナンバーで置き換えることを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項13】 前記有効ICカード記憶手段に、ICカードナンバーとそのICカードによる支払処理の実績回数とICカードナンバーの保存日時とを記憶し、前記有効ICカード記憶手段に記憶されたICカードナンバーが記憶容量の許容限度数に達した場合に、前記保存日時から一定時間が経過したICカードナンバーの中で支払処理の実績回数が最小のものから順次最新のICカードナンバーで置き換えることを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項14】 前記一定時間をキーボード入力、通信コマンドまたは設定用ICカード等から設定することを特徴とする請求項11または13に記載の車載機。
【請求項15】 有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機への暗証番号入力方法において、車載機に挿入されるICカードの有効性を、入力されるPINによって確認するとともに、このPINの入力を車両走行中は禁止することを特徴とする車載機への暗証番号入力方法。
【請求項16】 車載機にICカードが挿入されたとき、車両が走行中であれば、PIN入力は停車時のみ有効である旨を音声または画面表示で案内し、車両が停車中であれば、PIN入力を音声または画面表示で促すことを特徴とする請求項15に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項17】 車載機にICカードを挿入したまま車外へ出る運転手に、ICカードを所持して下車するように音声または画面表示で案内することを特徴とする請求項15に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項18】 音声または画面表示での案内に同期して、運転手席を振動させて運転手の注意を換気することを特徴とする請求項16または17に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項19】 有料道路の自動料金収受システムに使用する車載機への暗証番号入力方法において、車載機が有効なICカードナンバーを予め記憶し、挿入されるICカードのナンバーが、記憶しているICカードナンバーと一致するとき、前記ICカードの有効性を確認することを特徴とする車載機への暗証番号入力方法。
【請求項20】 車載機が、有効なICカードナンバーの複数個を記憶することを特徴とする請求項19に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項21】 車載機が、入力されたPINによって有効性を確認したICカードのナンバーを、有効なICカードナンバーとして記憶することを特徴とする請求項19または20に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項22】 車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、ファーストインファーストアウトの原理により最古のICカードナンバーを消去して、最新のICカードナンバーを記憶することを特徴とする請求項20に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項23】 車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、新たなICカードナンバーの記憶を禁止することを特徴とする請求項20に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項24】 車載機が記憶する有効なICカードナンバーの中から、記憶時点から一定時間が経過したICカードナンバーを自動的に消去することを特徴とする請求項20に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項25】 車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、支払処理の実績回数が最小のICカードのナンバーを消去して最新のICカードナンバーを記憶することを特徴とする請求項20に記載の車載機への暗証番号入力方法。
【請求項26】 車載機が記憶する有効なICカードナンバーの数が記憶容量の許容限度数に達した場合に、記憶時点から一定時間が経過したICカードナンバーの中で支払処理の実績回数が最小のICカードのナンバーを消去して最新のICカードナンバーを記憶することを特徴とする請求項20に記載の車載機への暗証番号入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−123210(P2000−123210A)
【公開日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−304733
【出願日】平成10年10月13日(1998.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】