説明

有機エレクトロニクスパネルの製造方法

【課題】枚葉状基材、帯状の樹脂フィルム基材を使用して、乾式法又は湿式法で形成した電極を使用し有機エレクトロニクスパネルを作製しても、シヨートやリーク電流の発生を抑えられ機能低下の少ない有機エレクトロニクスパネルの製造方法の提供。
【解決手段】基材の上に、第1電極と、第2電極と、封止層と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、前記有機機能層は第1有機機能層を有し、前記第1有機機能層を帯状の樹脂フィルムの上に形成する第1有機機能層形成工程と、前記帯状の樹脂フィルムの上に形成された前記第1有機機能層の上に、前記第1電極を形成する第1電極形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロニクスパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、有機ELパネルとも言う)、有機薄膜トランジスターパネル(以下、有機TFTパネルとも言う)、有機太陽電池パネル(以下、有機PVパネルとも言う)、有機光電変換パネル、有機電子写真用感光体をはじめとした様々な有機エレクトロニクスパネルの開発が検討されている。有機エレクトロニクスパネルは、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮出来ると期待され、従来のシリコーンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。これらの有機エレクトロニクスパネルは、有機物の非常に薄い膜に電極を介して電流を流すことで、発光したり、発電したり、帯電したり、電流や電圧を制御したりする素子である。
【0003】
有機ELパネルは、有機化合物の薄膜からなる発光層を電極で挟持した構成で、電極間に電流を供給すると発光する素子である。従って、薄膜の有機ELパネルを光源として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、蛍光灯に比べ発光の応答速度が速く、点灯直後の光量も比較的安定した照明装置となる。
【0004】
有機PVパネルや有機光電変換パネルは、有機化合物の薄膜からなる発電層を電極で挟持した構成で、光を照射すると発電する素子である。従って、薄膜の有機光電変換パネルを太陽電池として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、既存の無機半導体系の太陽電池に比べ、低照度環境や高温環境下でも比較的安定した出力を得られる太陽電池となる。
【0005】
これらの有機エレクトロニクスパネルは、基本的には陽極と陰極との間に有機機能層を有し、封止部材で封止された構造を有している。又、製造方法としては、基材の上にパターン化した陽極又は陰極を形成し、陽極又は陰極の上に有機機能層を積層した後、有機機能層の上に陰極又は陽極を形成し封止部材で封止することで製造されている。
【0006】
陰極又は陽極膜は、乾式又は湿式の何れかの方法によって基板上に形成されるのが一般的である。
【0007】
乾式法は、PVD(Physical Vapor Deposition:物理的蒸着法;スパッタリング、イオンプレーティング、および真空蒸着を含む。)、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的蒸着法)が挙げられる。これらPVD法、CVD法は酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(FZO)などの金属酸化物型の透明導電フィルムの形成に使用されている。
【0008】
湿式法は、押出し方式であるエクストルージョン型の塗布コーターを使用した塗布方式、カーテン型の塗布ヘッドを使用した塗布方式、スライド型の塗布コーターを使用した塗布方式、コンマ型コーターを使用したコンマ塗布方法、インクジェットヘッドを使用したインクジェット法等が挙げられる。これらの塗布方式は、上記混合酸化物などの導電性粉末、金属ナノワイヤー等とバインダーとを使用して、導電性コーティング組成物を塗布することで透明導電フィルムの形成に使用されている。
【0009】
これらの電極の乾式法を使用した有機エレクトロニクスパネルの具体的な製造方法として、例えば、基材の上に陽極として酸化インジウムスズ(Indium−Tin−Oxide、以下、略して「ITO」とも言う。)を、透明基材上に、スパッタリング蒸着法、電子ビーム蒸着法、直接塗布して加熱により融着させる方法などの様々な手法を用いて所定の厚さに形成されるが、何れの手法を用いても形成されるITOの表面は粗く、その値は日本工業規格(JIS)で定められた表面粗さの定義と表示(B0601)において定義される表面粗さの平均粗さ(Ra)が数十Å程度である。
【0010】
例えば、有機ELパネルの場合、陽極上に積層される有機機能層の厚さは、500Åから2000Å程度であるので、ITO表面に凸部が存在すると、そこだけ陽極と陰極との間の距離が短くなり、素子に正方向(素子を発光させる方向)の電圧を印加した場合に、その部分に集中的に電流が流れる現象(リーク電流)が起こる。素子の発光中にリーク電流が発生すると、流れた電流に対する輝度(電流−輝度特性)が低下するばかりでなく、その部分の陽極と陰極とがショートして、そこだけにしか電流が流れなくなって素子が発光しなくなる場合がある。又、ある場合には、電流が集中して流れた部分の素子が急速に劣化して電流を通さなくなり、非発光部(ダークスポット)として現れることもある。
【0011】
有機PVパネルにおいてもITO表面に凸部が存在すると、有機ELパネル同様ショートやリーク電流を引き起こす原因となる。リーク電流により並列抵抗が下がることで、電圧−電流特性において開放電圧の低下を招き、高い最大出力点が得られない等、太陽電池の出力特性の劣化を引き起こすといった問題点が発生する。
【0012】
これらの対応として、特開平9−245965号公報にはガラス基板上のITOをポリシング、ラッピング又はテープラッピングなどの手法で平滑にし、その上に有機層以降を形成させる方法が開示されている。これらの方法では煩雑な工程を含むため、更に検討が進められてきた。
【0013】
例えば、水と、水に分散させた平均粒径が5nmから50nmのコロイダルシリカと、保護膜形成剤とを含み、pHが2から3の範囲の研磨液でITOの表面を研磨する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は次の問題点を有していることが判った。
1)ガラス基板の様な枚葉基材に対して研磨は容易であるが、帯状の樹脂フィルムの場合は不向きである。
2)研磨終了後の基板は流水中で良く洗浄後、乾燥させる必要があるため、長尺シートフィルムに浸透した水分を除去するために長大な乾燥工程を必要とする。
【0015】
又、乾式法に比べ比較的単純な装置が利用出来、生産性も高く、連続的又は大型の基板への適用も容易であるが、乾式法で形成した電極と同様に電極の表面粗さが光電素子に応用する上で潜在的な大きな課題であることが知られている。乾式法で形成した電極の表面粗さの対応として検討が進められて来た。例えば、線径が0.1nmから200nmである金属ナノワイヤーをバインダーに分散した分散液を基板上に塗布後、溶媒を除去しネットワーク構造を形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0016】
しかしながら、特許文献2に記載の方法で作製した電極を使用して有機PVパネルを作製した場合、リーク電流、ショートに伴う出力低下が見られ、充分な対応となっていないことが判った。
【0017】
これらの状況から、枚葉状の基材、帯状の基材を使用して、乾式法又は湿式法で形成した電極を使用し有機エレクトロニクスパネルを作製しても、シヨートやリーク電流による機能低下の発生がない有機エレクトロニクスパネルの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−154176号公報
【特許文献2】特開2009−129607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、その目的は枚葉状の基材、帯状の基材を使用して、乾式法又は湿式法で形成した電極を使用し有機エレクトロニクスパネルを作製しても、シヨートやリーク電流による機能低下の発生が少ない有機エレクトロニクスパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0021】
1.基材の上に、第1電極と、第2電極と、封止層と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、
前記有機機能層は第1有機機能層を有し、
前記第1有機機能層を帯状の樹脂フィルムの上に形成する第1有機機能層形成工程と、
前記帯状の樹脂フィルムの上に形成された前記第1有機機能層の上に、前記第1電極を形成する第1電極形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0022】
2.前記帯状の樹脂フィルムの前記第1有機機能層を形成する面は微細構造を有することを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0023】
3.前記基材はガスバリア層を有していることを特徴とする前記1又は2に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0024】
4.前記1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において
前記有機機能層は前記第1有機機能層と第2有機機能層とを有し、
且つ、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0025】
A)前記第1有機機能層形成工程
B)第1電極形成工程
C)前記第1電極にパターンを形成するパターン形成工程
D)前記第1電極の上に前記基材を貼合する基材貼合工程
E)前記帯状の樹脂フィルムを剥離する剥離工程
F)前記第1有機機能層の、前記帯状の樹脂フィルムが剥離された面の上に、前記第2有機機能層を形成する第2有機機能層形成工程
G)前記第2有機機能層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程
H)前記第2電極の上に前記封止層を形成する封止層形成工程
5.前記1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、前記有機機能層は前記第1有機機能層と第2有機機能層とを有し、前記第1電極形成工程はマスクを用いた蒸着方式で形成され、
且つ、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0026】
A)前記第1有機機能層形成工程
B)前記第1電極形成工程
C)前記第1電極の上に前記基材を貼合する基材貼合工程
D)前記帯状の樹脂フィルムを剥離する剥離工程
E)前記第1有機機能層の、前記帯状の樹脂フィルムが剥離された面の上に、前記第2有機機能層を形成する第2有機機能層形成工程
F)前記第2有機機能層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程
G)前記第2電極の上に前記封止層を形成する封止層貼合工程
6.前記有機エレクトロニクスパネルが有機光電変換素子であることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0027】
7.前記有機エレクトロニクスパネルが有機エレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
枚葉状の基材、帯状の基材を使用して、乾式法又は湿式法で形成した電極を使用し有機エレクトロニクスパネルを作製しても、シヨートやリーク電流による機能低下の発生がない有機エレクトロニクスパネルの製造方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】有機エレクトロニクスパネルの一例を示す概略図である。
【図2】図1に示す構成の有機エレクトロニクスパネルを製造する製造工程の概略図である。
【図3】図2に示す製造工程で有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる迄の概略フロー図である。
【図4】図1に示す構成の有機エレクトロニクスパネルをマスクパターン成形により第1電極をパターン化して製造する製造工程の概略図である。
【図5】図6に示す製造工程で有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる迄の概略フロー図である。
【図6】表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルムを製造する製造工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施する形態を図1から図6を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
図1は本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法により製造された有機エレクトロニクスパネルの構成の一例を示す模式図である。図1(a)は本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法により製造された複数の有機エレクトロニクスパネルを有する有機エレクトロニクスパネル連続体の概略平面図である。図1(b)は図1(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
【0032】
図中、1′は複数の個別の有機エレクトロニクスパネル1′aが連続的に繋がった有機エレクトロニクスパネル連続体を示す。有機エレクトロニクスパネル連続体1′は複数の個別の有機エレクトロニクスパネル1′aが基材101′の上に連続的に形成された状態となっており、最終的には断裁されて個別の有機エレクトロニクスパネル1′aが作製される。本図は、基材101′の上に2列で個別の有機エレクトロニクスパネル1′aが間隔を空けて作製されている状態を示しているが、個別の有機エレクトロニクスパネル1′aの列数は基材の幅、有機エレクトロニクスパネルの大きさにより変更することが可能である。
【0033】
101′は基材を示す。102′は第1電極(陽極)を示し、102′aは第1電極(陽極)102′の外部接続用の取出し電極を示す。103′は第1電極102′の上に形成された有機物層を含む有機機能層を示す。有機機能層103′は第1有機機能層103′aと第2有機機能層103′bとを有している。104′は第2有機機能層103′bの上に形成された第2電極(陰極)を示し、104′aは第2電極(陰極)104′の外部接続用の取出し電極を示す。105′は第2電極(陰極)104′の上に接着剤層106′を介して設けられた封止層を示す。
【0034】
本図では有機機能層が2層の場合を示しているが、必要に応じて単層であってもよく、又多層であってもよく必要に応じて設定することが可能である。
【0035】
有機機能層とは、有機ELパネルの場合、例えば正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層等を指す。又、有機PVパネルの場合、例えば正孔輸送・電子ブロック層/光電変換層/電子輸送・正孔ブロック層等を指す。有機ELパネル及び有機PVパネルの構成に関しては後述する。
【0036】
本発明で有機エレクトロニクスパネルとは、有機ELパネル、有機TFTパネル、有機PVパネル、有機光電変換パネル、有機電子写真用感光体を含めて言う。
【0037】
図2は図1に示す構成の有機エレクトロニクスパネルを製造する製造工程の概略図である。
【0038】
図中、1は有機エレクトロニクスパネルを製造する製造工程を示す。製造工程1は第1有機機能層形成工程1aと、第1電極形成工程1bと、パターン形成工程1cと、基材貼合工程1dと、剥離工程1eと、第2有機機能層形成工程1fと、第2電極形成工程1gと、封止材貼合工程1hとを有している。本図では、各工程が独立して配設されている場合を示しているが、必要に応じて各工程を繋げても構わない。例えば、第1有機機能層形成工程1aと、第1電極形成工程1bと、パターン形成工程1cとを、基材貼合工程1dと、剥離工程1eと、第2有機機能層形成工程1fとを繋げて行うことも可能である。又、第1有機機能層形成工程1aから第2有機機能層形成工程1f迄を連続に行うことも可能である。各工程の機能に付き説明する。
【0039】
第1有機機能層形成工程1aは、帯状の樹脂フィルム供給工程1a1と、塗布工程1a2と、乾燥工程1a3と、回収工程1a4とを有している。
【0040】
帯状の樹脂フィルム供給工程1a1からは帯状の樹脂フィルム1a11が繰り出され塗布工程1a2に供給される。
【0041】
塗布工程1a2では、コーター1a21と、バックアップロール1a22とを使用しており、バックアップロール1a22に保持された帯状の樹脂フィルム1a11の上にコーター1a21により第1有機機能層形成用塗布液が塗布される。
【0042】
第1有機機能層形成用塗布液の塗布方法としては特に限定はなく、例えば後計量型塗布方式、前計量型塗布方式が挙げられる。後計量型塗布方式としては、ブレード型塗布方式、エアーナイフ型塗布方式、ワイヤーバー型塗布方式等の後計量型塗布方式等が挙げられる。前計量型塗布方式としては、押出し方式であるエクストルージョン型の塗布コーターを使用した塗布方式、カーテン型の塗布ヘッドを使用した塗布方式、スライド型の塗布コーターを使用した塗布方式、コンマ型コーターを使用したコンマ塗布方法、インクジェットヘッドを使用したインクジェット法等が挙げられる。本図は、コーター1a21に押出し方式であるエクストルージョン型の塗布コーターを使用した塗布方式の場合を示している。
【0043】
乾燥工程1a3では、乾燥装置1a31を使用し塗布工程1a2で帯状の樹脂フィルム1a11の上に塗布された塗膜を乾燥し、第1有機機能層103′a(図3参照)を形成する。
【0044】
回収工程1a4では、第1有機機能層103′a(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11が巻き取り装置(不図示)により巻き芯にロール状に巻き取られる。
【0045】
第1電極形成工程1bは、第1有機機能層103′a(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11を供給する供給工程1b1と、塗布工程1b2と、乾燥工程1b3と、回収工程1b4とを有している。
【0046】
供給工程1b1からは第1有機機能層103′a(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11が繰り出され塗布工程1b2に供給される。
【0047】
塗布工程1b2では、コーター1b21と、バックアップロール1b22とを使用しており、バックアップロール1b22に保持された第1有機機能層103′a(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11の第1有機機能層103′a(図3参照)の上、全面にコーター1b21により第1電極形成用塗布液が塗布される。第1電極形成用塗布液の塗布方法としては特に限定はなく、第1有機機能層形成用塗布液の塗布方法と同じ塗布方法の使用が可能である。本図は、コーター1b21に押出し方式であるエクストルージョン型の塗布コーターを使用した塗布方式の場合を示している。
【0048】
乾燥工程1b3では、乾燥装置1b31を使用し塗布工程1b2で帯状の樹脂フィルム1a11の上に塗布された塗膜を乾燥し第1電極102′(図3参照)が形成される。
【0049】
回収工程1b4では、第1電極が形成された帯状の樹脂フィルム1a11が巻き取り装置(不図示)により巻き芯にロール状に巻き取り保管する。
【0050】
パターン形成工程1cでは、パターン形成装置1c1を使用し、供給工程1c2から送られて来る帯状の樹脂フィルム1a11の上、全面に形成された第1電極102′(図3参照)を必要とするパターンの第1電極102′b、102′c(図3参照)に成形(例えば図1に示す連続体1を形成する様に幅方向に2列)する。
【0051】
パターン形成装置1c1としては特に限定はなく、例えば反応性ガスエッチング装置、大気圧プラズマ反応性イオンエッチング装置、減圧プラズマ反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、イオンビームエッチング装置、反応性レーザービームエッチング装置、レーザービームエッチング装置等が挙げられる。これらのドライエッチング装置は上市されているドライエッチング装置の使用が可能である。
【0052】
回収工程1c3では、パターン化された引出し電極を含む第1電極102′(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11を巻き取り装置(不図示)により巻き芯にロール状に巻き取られる。
【0053】
基材貼合工程1dは、パターン化された第1電極102′が形成された帯状の樹脂フィルム1a11の供給工程1d1と、接着剤塗工工程1d2と、基材供給工程1d3と、貼合工程1d4と、回収工程1d5とを有している。
【0054】
接着剤塗工工程1d2は、接着剤塗工装置でパターン形成された第1電極102′(102′b、102′c)(図3参照)の上全面に接着剤が塗工され接着剤層107′(図3参照)が形成される。
【0055】
基材供給工程1d3からは繰り出し装置(不図示)により有機エレクトロニクスパネルの基板となる帯状の基材101′が供給される。
【0056】
貼合工程1d4では貼合装置1d41を使用し、供給工程1d1から送られてくるパターン形成された第1電極102′(102′b、102′c)(図3参照)が形成された帯状の樹脂フィルム1a11の上に接着剤層107′(図3参照)を介して基材101′を積重し貼合する。貼合は減圧環境下、大気圧環境下の両方に分けて行っても良いし、何れか一方でもよいし、両方を配設しても構わなく、必要に応じて選択することが可能である。
【0057】
この段階で、帯状の樹脂フィルム1a11の上に、第1有機機能層/第1電極/接着剤層/基材の順番で構成された構成を有する帯状の樹脂フィルム1a11が出来上がる。
【0058】
剥離工程1eでは、剥離装置1e1を使用し、帯状の樹脂フィルム1a11の供給工程1e2から送られてくる帯状の樹脂フィルム1a11の上に、第1有機機能層/第1電極/接着剤層/基材をこの順番で積層した帯状の樹脂フィルム1a11の第1有機機能層103′a(図3参照)から帯状の樹脂フィルム1a11を剥離し、回収工程1e4で巻き取り回収する。1e3は剥離され巻き取られた帯状の樹脂フィルム1a11を示す。
【0059】
尚、帯状の樹脂フィルム1a11を剥離した後、第1電極の引出し電極となる部分の第1有機機能層103′a(図3参照)及び第1有機機能層103′a(図3参照)不要領域部分は払拭方式で除去される。不要領域部分は例えば有機PVパネルの場合非発電領域、有機ELパネルの場合は非発光領域となる。
【0060】
第2有機機能層形成工程1fは、供給工程1f1と、塗布工程1f2と、乾燥工程1f3と、回収工程1f4とを有している。
【0061】
供給工程1f1からは、基材101′の上に第1電極102′(図3参照)と第1有機機能層103′a(図3参照)とがこの順番で積層された帯状の基材101′が繰り出され塗布工程1f2に供給される。
【0062】
塗布工程1f2では、コーター1f21と、バックアップロール1f22とを使用しており、バックアップロール1f22に保持された基材/接着剤層/第1電極/第1有機機能層を有する帯状の基材101′の第1有機機能層103′a(図3参照)の上にコーター1f21により第2有機機能層形成用塗布液が塗布される。塗布後、第1電極の引出し電極102′a(図3参照)となる部分及び不要領域部分の第2有機機能層形成用塗膜は払拭方式で除去される。
【0063】
第2有機機能層形成用塗布液の塗布方法としては特に限定はなく、第1有機機能層形成用塗布液の塗布方法と同じ塗布方法を使用することが可能である。本図は、コーター1f21に押出し方式であるエクストルージョン型の塗布コーターを使用した塗布方式の場合を示している。
【0064】
乾燥工程1f3では、乾燥装置1f31を使用し塗布工程1f2で第1有機機能層103′a(図3参照)の上に塗布された第2有機機能層形成用塗膜を乾燥し第2有機機能層103′b(図3参照)が形成される。
【0065】
回収工程1f4では、第2有機機能層103′b(図3参照)が形成された帯状の基材101′が巻き取り装置(不図示)により巻き芯にロール状に巻き取られる。
【0066】
尚、本図は有機機能層103′(図3参照)が第1有機機能層103′a(図3参照)と第2有機機能層103′b(図3参照)との2層の場合を示しているが、多層の場合は第2有機機能層形成工程1fを、必要とする有機機能層の層数に合わせ設置することが可能となっている。
【0067】
第2電極形成工程1gは、第2電極形成装置1g2を使用し、供給工程1g1から送られてくる第2有機機能層103′b(図3参照)までが積層された帯状の基材101′の第2有機機能層の上に第1電極102′(図3参照)の大きさに合わせ第2電極104′(図3参照)が形成され、同時に第2電極の引出し電極104′a(図3参照)も第2有機機能層103′b(図3参照)が除去された接着剤層107′の上に形成される。この後、回収工程1g3で巻き取り装置(不図示)で巻き芯にロール状に巻き取られる。第2電極形成装置1g2は特に限定はなく、例えば蒸着装置、スパッタリング装置等が挙げられる。
【0068】
封止材貼合工程1hは、第2電極までが形成された帯状の基材101′の供給工程1h1と、接着剤塗工工程1h2と、封止材供給工程1h3と、貼合工程1h4と、回収工程1h5とを有している。
【0069】
接着剤塗工工程1h2では、接着剤塗工装置で形成された第2電極104′(図3参照)、第2電極の引出し電極104′a(図3参照)及び第1電極の引出し電極102′a(図3参照)の上を含めた全面に接着剤が塗工され接着剤層107′が形成される。
【0070】
封止材供給工程1h3からは繰り出し装置(不図示)により有機エレクトロニクスパネルを封止する帯状の封止材105′が供給される。
【0071】
貼合工程1h4では貼合装置1h41を使用し、供給工程1h1から送られてくる第2電極104′(図3参照)までが形成された帯状の基材101′の第2電極104′(図3参照)の上に接着剤層107′を介して封止材105′を積重し貼合する。貼合は減圧環境下、大気圧環境下の両方に分けて行っても良いし、何れか一方でもよいし、両方を配設しても構わなく、必要に応じて選択することが可能である。
【0072】
この段階で、基材/接着剤層/第1電極/第1有機機能層/第2有機機能層/接着剤層/封止層の構成を有する個別の有機エレクトロニクスパネルが連続的に基材の上に形成された図1に示す様な有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる。この後、断裁することで個別の有機エレクトロニクスパネルが製造される。
【0073】
図3は図2に示す製造工程で図1に示す構成の有機エレクトロニクスパネルが出来上がる迄の模式フロー図である。
【0074】
第1有機機能層形成工程1aでは、帯状の樹脂フィルム1a11の上に第1有機機能層103′aが形成される。
【0075】
第1電極形成工程1bでは、第1有機機能層形成工程1aで形成された第1有機機能層103′aの上に第1電極102′が形成される。
【0076】
パターン形成工程1cでは、第1電極形成工程1bで形成された第1電極102′を必要とするパターンに成形する。本図は図1に示す様に第1電極102′b、第1電極102′cの2列にパターン化した場合を示している。
【0077】
基材貼合工程1dでは、パターン形成工程1cでパターンが形成された第1電極102′(第1電極102′b、第1電極102′c)、第1有機機能層103′aの上に接着剤を塗工し接着剤層107′を形成し、基材101′が接着剤層107′を介して貼合される。第1電極層102′の上に基材101′を貼合することで第1電極102′を形成する時に第1電極102′表面に発生する凸部が基材101′側になるため、第2電極104′と第1電極102′との距離が一定になる。このため、例えば有機ELパネルの場合、電圧を印加した場合に、第2電極104′と第1電極102′との距離が短くなった時に発生する輝度の低下、部分的な発光不良、ダークスポット等の故障が抑制される。
【0078】
有機PVパネルの場合、リーク電流による出力低下を抑えられ、安定して効率の高い製品を得ることが出来る。
【0079】
剥離工程1eでは、帯状の樹脂フィルム1a11が第1有機機能層103′aから剥離される。この後、第1電極102′の引出し電極102′aの形成部分、及び不要領域部分の第1有機機能層103′aが払拭法で除去される。
【0080】
第2有機機能層形成工程1fでは、剥離工程1eで帯状の樹脂フィルム1a11が剥離された第1有機機能層103′aの面及び第1有機機能層103′aが除去された領域に第2有機機能層103′b(図中斜線で示される部分)が形成される。この後、第1電極102′の引出し電極102′aの形成部分と不要領域の第2有機機能層103′bが払拭法で除去される。
【0081】
第2電極形成工程1gでは第2有機機能層形成工程1fで形成された第2有機機能層103′bの上に第2電極104′が形成される。又、第2有機機能層103′bが除去された基材101′の上に第2電極の引出し電極104′aが形成される。
【0082】
封止材貼合工程1hでは第2電極形成工程1gで形成された第2電極104′の上に接着剤106′を介して封止材105′が貼合される。この段階で、個別の有機エレクトロニクスパネルが連続的に基材の上に連続的に形成された図1に示す様な有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる。この後、断裁することで個別の有機エレクトロニクスパネルが製造される。
【0083】
図4は図1に示す構成の有機エレクトロニクスパネルをマスクパターン成形により第1電極をパターン化して製造する製造工程の概略図である。
【0084】
図中、3は有機エレクトロニクスパネルを製造する製造工程を示す。製造工程3は第1有機機能層形成工程3aと、第1電極形成工程3bと、基材貼合工程3cと、剥離工程3dと、第2有機機能層形成工程3eと、第2電極形成工程3fと、封止材貼合工程3gとを有している。尚、本図に示す製造工程3と図2に示す製造工程1との違いは、第1電極をパターン化する方法が異なるだけでその他は同じである。
【0085】
本図では、各工程が独立して配設されている場合を示しているが、必要に応じて各工程を繋げても構わない。例えば、基材貼合工程3cと、剥離工程3dと、第2有機機能層形成工程3fとを繋げて行うことも可能である。又、第1有機機能層形成工程3bから第2有機機能層形成工程3e迄を連続に行うことも可能である。
【0086】
図4に示す製造工程3と図2に示す製造工程1との違いは、第1電極をパターン化する方法が異なるだけでその他は同じである。各工程の機能に付き説明する。
【0087】
第1有機機能層形成工程3aは、帯状の樹脂フィルム3a11の供給工程3a1と、塗布工程3a2と、乾燥工程3a3と、回収工程3a4とを有している。塗布工程3a2はコーター3a21と、バックアップロール3a22とを使用している。乾燥工程3a3は乾燥装置3a31を使用している。第1有機機能層形成工程3aでは、帯状の樹脂フィルム3a11の上に第1有機機能層103′a(図5参照)が形成される。各工程の機能は図2に示す第1有機機能層形成工程1aと同じであるので省略する。
【0088】
第1電極形成工程3bは、第1電極形成装置3b2を使用し供給工程3b1から送られてくる第1有機機能層形成工程3aで形成した第1有機機能層103′a(図5参照)を有する帯状の樹脂フィルム3a11の第1有機機能層103′a(図5参照)の上にマスクを使用してパターン成膜が行われパターン化した第1電極102′(図5参照)が形成される。この後、回収工程3b3の巻き取り装置(不図示)で巻き芯にロール状に巻き取られる。第1電極形成装置3b2は特に限定はなく、例えば蒸着装置、スパッタリング装置等が挙げられる。
【0089】
基材貼合工程3cは、パターン形成された第1電極102′(図5参照)が形成された帯状の樹脂フィルム3a11の供給工程3c1と、接着剤塗工工程3c2と、基材供給工程3c3と、貼合工程3c4と、回収工程3c5とを有している。
【0090】
基材貼合工程3cでは、第1電極102′(図5参照)の上に接着層107′(図5参照)を介して帯状の基材101′(図5参照)が貼合される。各工程の機能は図2に示される基材貼合工程1dと同じであるため省略する。
【0091】
この段階で、帯状の樹脂フィルム3a11の上に第1有機機能層/第1電極/接着剤層/基材の順番の構成を有する帯状の樹脂フィルム3a11が出来上がる。
【0092】
剥離工程3dでは、剥離装置3d1を使用し、帯状の樹脂フィルム3a11の供給工程3d2から送られてくる基材101′(図5参照)までを積層した帯状の樹脂フィルム3a11の第1有機機能層103′a(図5参照)から帯状の樹脂フィルム3a11を剥離し、回収工程3d4で巻き取り回収する。3d3は剥離され巻き取られた帯状の樹脂フィルム3a11を示す。尚、帯状の樹脂フィルム3a11を剥離した後、第1電極102′(図5参照)の引出し電極102′a(図5参照)となる部分の第1有機機能層103′a(図5参照)及び不要領域部分は払拭方式で除去される。不要領域部分は例えば有機PVパネルの場合非発電領域、有機ELパネルの場合は非発光領域となる。
【0093】
第2有機機能層形成工程3eは、供給工程3e1と、塗布工程3e2と、乾燥工程3e3と、回収工程3e4とを有しており、剥離工程3dで帯状の樹脂フィルム3a11が剥離された第1有機機能層103′a(図5参照)の面に第2有機機能層103′b(図5参照)が形成される。塗布工程3e2はコーター3e21とバックアップロール3e22とを使用している。塗布工程3e2で第2有機機能層形成用塗布液を塗布した後、第1電極102′(図5参照)の引出し電極102′a(図5参照)となる部分及び不要領域部分の第2有機機能層103′bは払拭方式で除去される。
【0094】
乾燥工程3e3は乾燥装置3e31を使用している。各工程の機能は図2に示す第2有機機能層形成工程1fと同じであるため省略する。
【0095】
尚、本図は有機機能層103′(図5参照)が第1有機機能層103′a(図5参照)と第2有機機能層103′b(図5参照)との2層の場合を示しているが、多層の場合は第2有機機能層形成工程3eを、必要とする有機機能層の層数に合わせ設置することが可能となっている。
【0096】
第2電極形成工程3fは、第2電極形成装置3f2を使用し、供給工程3f1から送られてくる第2有機機能層103′b(図5参照)までが積層された帯状の基材101′の第2有機機能層103′b(図5参照)の上に第1電極の大きさに合わせ第2電極104′(図5参照)が形成され、同時に第2電極の引出し電極104′a(図5参照)も第2有機機能層が除去された接着剤層107′(図5参照)の上に形成される。この後、回収工程3f3で巻き取り装置(不図示)で巻き芯にロール状に巻き取られる。第2電極形成装置3f2は特に限定はなく、例えば蒸着装置、スパッタリング装置等が挙げられる。
【0097】
封止材貼合工程3gは、第2電極104′迄が形成された帯状の基材101′(図5参照)の供給工程3g1と、接着剤塗工工程3g2と、封止材供給工程3g3と、貼合工程3g4と、回収工程3g5とを有している。接着剤塗工工程3g2では、接着剤塗工装置により形成された第2電極104′(図5参照)、第2電極の引出し電極104′a(図5参照)及び第1電極102′(図5参照)の引出し電極102′a(図5参照)の上を含めた全面に接着剤が塗工され接着剤層106′が形成される。貼合工程3g4は貼合装置3g41を使用している。各工程の機能は図2に示す封止材貼合工程1hと同じであるため省略する。
【0098】
この段階で、基材/接着剤層/第1電極層/第1樹脂層/第2樹脂層/接着剤層/封止層の構成を有する個別の有機エレクトロニクスパネルが連続的に基材の上に形成された図1に示す有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる。この後、断裁することで個別の有機エレクトロニクスパネルが製造される。
【0099】
図5は図4に示す製造工程で図1に示す有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる迄の概略フロー図である。
【0100】
第1有機機能層形成工程3aでは、帯状の樹脂フィルム3a11の上に第1有機機能層103aが形成される。
【0101】
第1電極形成工程3bでは、第1有機機能層103′aの上に第1電極102′b、第1電極102′cの2列にパターン化した第1電極102′が形成される。
【0102】
基材貼合工程3cでは、パターン化して形成された第1電極層102′の上に基材101′が接着剤層107′(図中、斜線で示される部分)を介して貼合される。第1電極層102′の上に基材101′を貼合することで、図3に示した基材貼合工程1dで得られた効果と同じ効果が得られる。
【0103】
剥離工程3dでは、帯状の樹脂フィルム3a11が第1有機機能層103′aから剥離される。この後、第1電極102′の引出し電極102′aの形成部分と不要領域の第1有機機能層103′aが払拭法で除去される。
【0104】
第2有機機能層形成工程3eでは、剥離工程3dで帯状の樹脂フィルム3a11が剥離された第1有機機能層103′aの面及び第1有機機能層103′aが除去された領域に第2有機機能層103′b(図中、クロス斜線で示される部分)が形成される。この後、第1電極102′の引出し電極102′aの形成部分、及び不要領域部分の第2有機機能層103′bが払拭法で除去される。
【0105】
第2電極形成工程3fでは、第2有機機能層形成工程3eで形成された第2有機機能層103′bの上に第2電極104′及び第2有機機能層103′bが除去された接着剤層107′の上に第2電極の引出し電極104′aが形成される。
【0106】
封止材貼合工程3gでは第2電極形成工程3fで形成された第2電極104′及び第2電極104′の引き出し電極104′aの上に接着剤層106′を介して封止材105′が貼合される。この段階で、個別の有機エレクトロニクスパネルが連続的に基材の上に連続的に形成された図1に示す様な有機エレクトロニクスパネル連続体が出来上がる。この後、断裁することで個別の有機エレクトロニクスパネルが製造される。
【0107】
図2、図4に示す製造工程の各基材貼合工程で使用する基材は、少なくとも片面に、酸素及び水蒸気の透過を抑制し有機エレクトロニクスパネルの保存性を向上させるため、バリアコート層(例えば、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等))を有していることが好ましい。
【0108】
本発明の特徴は図2、図4に示す製造工程の各基材貼合工程で、第1電極の表面に接着剤層を介して基材が貼合されることである。第1電極を形成する時に第1電極の表面には凸部が発生しているが、基材を貼合することでこの凸部が基材側になる。このため、第2電極と第1電極との距離が一定になる。このため、例えば有機ELパネルの場合、電圧を印加した場合に、第2電極と第1電極との距離が短くなったときに発生する輝度の低下、部分的な発光不良、ダークスポット等の故障がなくなる。有機PVパネルの場合、リーク電流による出力低下を抑えられ、安定して効率の高い製品を得ることが出来る。
【0109】
図6は表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルムを製造する製造工程の概略図である。図6(a)は図2、図4に示す製造工程で使用する表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルムを製造する製造工程の概略図である。図6(b)は表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルムの概略断面図である。
【0110】
図中、4は製造工程を示す。製造工程4は、供給工程4a1と、塗布工程4a2と、乾燥工程4a3と、表面加工工程4a4と、回収工程4a5とを有している。
【0111】
供給工程4a1からは帯状のフィルムの基材となる帯状の基材フィルム401が供給される。塗布工程4a2は、コーター4a21と、バックアップロール4a22とを使用しており、供給工程4a1から供給される帯状の基材フィルム401の表面に表面層形成用塗布液が塗布される。
【0112】
乾燥工程4a3は、乾燥装置4a31を使用し、塗布工程4a2で塗布され形成された表面層形成用塗膜から溶媒を除去し表面層402を形成する。
【0113】
表面加工工程4a4はロールインプリント装置4a41を使用しており、ロール金型4a42により、表面層402の表面全面に凹部402aと凸部402bとを有する微細構造が型押しされた後、使用する樹脂の種類に合わせ微細構造が固定され表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルム403が作製される。例えば、使用する樹脂が紫外線硬化型樹脂の場合は紫外線を照射することで樹脂層を硬化し微細構造を固定化する。Tは凹部の中心から次の凹部の中心迄の距離を示す。本発明では距離Tをピッチと言う。
【0114】
微細構造とは、ピッチが1nmから1000nm、アスペクト比が1以上の凹凸構造を言う。凸部の断面形状としては特に限定はなく、例えば、矩形、三角形、半円形、台形等が挙げられる。本図は矩形の場合を示している。
【0115】
表面層に使用する樹脂としては、活性エネルギー線硬化型の樹脂が挙げられる。活性エネルギー線硬化型の樹脂に関しては後述する。
【0116】
作製された表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルム403は、図2に示される製造工程の第1有機機能層形成工程1a、図4に示される製造工程の第1有機機能層形成工程3aで使用することが可能である。
【0117】
本図に示す様な表面に微細構造を有する帯状の樹脂フィルムを図2、図4に示される製造工程の第1有機機能層形成工程で使用し、この上に第1有機機能層、第1電極、基材を順次積層した後に帯状の樹脂フィルム403を剥離することで、第1有機機能層の表面には帯状の樹脂フィルム403の表面の微細構造が転写した状態となる。この上に第2有機機能層を形成することで、第1有機機能層と第2有機機能層との接触面積が増加する。このため、例えば有機PVパネルの場合は、電荷、電荷分離量が大きくなると共に、構造が規則的なため電荷の再結合が抑制される。その結果、直列抵抗が低くなり、高いエルルギー変換効率を得ることが可能となる。更に接触界面での急激な屈折率変化を抑え内部反射を抑える等、光学的な特性改善によるエルルギー変換効率への寄与も期待出来る。
【0118】
図1から図6に示す本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法による効果として次の効果が挙げられる。
1.第1電極の表面に基材を貼合することで、第1電極形成時に第1電極の表面に発生する凸部が基材側になるため、第2電極と第1電極との距離が一定になり、電圧を印加した場合に第2電極と第1電極との距離が不安定なことに伴う故障がなくなり安定した有機エレクトロニクスパネルの製造が可能となった。
2.第1有機機能層と第2有機機能層との間に微細構造を有するため、第1有機機能層と第2有機機能層との接触面積が増加し、高いエルルギー変換効率の有機エレクトロニクスパネルの製造が可能となった。
【0119】
次に本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法に係わる有機エレクトロニクスパネルの内、有機ELパネル及び有機PVパネルの構成及び材料に付き説明する。
【0120】
(帯状の樹脂フィルム)
帯状の樹脂フィルムとしては特に制限がなく、公知の熱可塑性樹枝フィルムの中から適宜選択することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることが出来るが、可視域の波長(380nmから800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することが出来る。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0121】
(活性エネルギー線硬化樹脂)
本発明に使用する活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性光線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂である。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性光線照射によって硬化する樹脂でもよい。活性エネルギー線硬化樹脂と合わせ酸化防止剤や紫外線吸収剤を使用することも可能である。
【0122】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーが、エネルギー線の照射により硬化してなる樹脂である。
【0123】
紫外線及び電子線硬化型樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることが出来る。この紫外線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー、又は光重合性モノマー、光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。又、電子線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー又は光重合性モノマーを含有するものである。
【0124】
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。又,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0125】
紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂PAK02(東洋合成工業(株)製)、アデカオプトマーKR、BYシリーズのKR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業(株)製)、コーエイハードのA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業(株)製)、セイカビームのPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株))、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インク化学工業(株)製)、オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製)、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業(株)製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製)、RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)、又はその他の市販のものから適宜選択して利用することが出来る。
【0126】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、ラジカル反応型でもイオン反応型でもよく、アセトフェノン類、ブチルフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類、オキセタン化合物等が挙げられる。又、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることが出来る。
【0127】
(有機ELパネルの構成)
有機ELパネルは、電極間に、単数又は複数の有機機能層を積層した構成であり、一般的には、第1電極(陽極)上に、有機物層として、正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層を積層し、その上から第2電極(陰極)が積層された構成をとる。第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との間の他の代表的な層構成としては次の構成が挙げられる。
【0128】
(1)第1電極(陽極)/発光層/第2電極(陰極)
(2)第1電極(陽極)/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)
(3)第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/第2電極(陰極)
(4)第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層//電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)
(5)第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)
有機ELパネルを構成する主たる有機材料層について以下述べる。
【0129】
(発光層)
発光層中に含有される有機発光材料としては、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体或いは複合オリゴ体等が挙げられるが、本発明においてはこれに限られるものではなく、広く公知の材料を用いることが出来る。
【0130】
又、発光層中(成膜材料)には、好ましくは0.1質量%から20質量%程度のドーパントが発光材料中に含まれてもよい。ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、又、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、等に代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が同様に0.1質量%から20質量%程度含有される。
【0131】
リン光発光方式は、発光層内部に発光領域を持つためか、比較的発光ムラが起こりづらく本発明において好ましい態様である。発光層の膜厚は、1nmから数百nmの範囲が好ましい。
【0132】
(有機PVパネルの構成)
本発明の有機PVパネルは、第1電極と第2電極との間に、両者に挟まれた光電変換層として、p型半導体材料とn型半導体材料を含む層を有し、光照射によって励起子がp/n界面に移動しキャリアに電荷分離することで起電力を発生するパネルである。
【0133】
上記光電変換層は、p型半導体材料とn型半導体材料のp/n界面を増やすため、両半導体材料を混合した所謂、バルクヘテロジャンクション構造を形成させることが好ましい(以後、バルクヘテロジャンクション層、又はBHJ層、i層とも言う)。
【0134】
一般的な有機PVパネルの構造は、第1電極(陽極)上に、有機物層として、正孔輸送・電子ブロック層/光電変換層/電子輸送・正孔ブロック層を積層し、その上から第2電極(陰極)が積層された構成だが、本発明においてはこれに限定されず、光電変換層がp型半導体材料とn型半導体材料からなる層で、上述したバルクヘテロジャンクション層が挟み込まれたような構成、所謂p−i−n構成を適用してもよい。これによって、発生したキャリアとして正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることが出来る。
【0135】
(p型半導体材料)
光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0136】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、ペンタセンやその誘導体、ポルフィリンやフタロシアニン、銅フタロシアニンやこれらの誘導体などが挙げられる。
【0137】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、ポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、ポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0138】
(n型半導体材料)
光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることが出来る。
【0139】
有機ELパネル及び有機PVパネルの構成に使用する共通材料に付き説明する。
【0140】
(正孔注入・輸送層、電子ブロック層)
正孔注入・輸送層、電子ブロック層に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料が、又、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などが挙げられる。
【0141】
本発明においては、目的に応じて、正孔注入層と正孔輸送層を積層形成してもよく、正孔の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0142】
又、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0143】
正孔注入・輸送層、電子ブロック層の各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nmから100nmが好ましく、5nmから70nmがより好ましく、10nmから50nmが最も好ましい。
【0144】
(電子注入・輸送層、正孔ブロック層)
電子注入・輸送層材料としては、種々のn型材料を用いることが出来る。本発明の有機エレクトロニクスパネルに好ましく用いることが出来る材料の例としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物若しくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール若しくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0145】
更に上述の化合物以外にも、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物などを用いることも本発明において好ましい。
【0146】
本発明においては、目的に応じて、電子注入層と電子輸送層を積層形成してもよく、電子の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0147】
又、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0148】
電子注入・輸送層、正孔ブロック層の各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nmから100nmが好ましく、5nmから80nmがより好ましく、10nmから60nmが最も好ましい。
【0149】
電子注入層(バッファ層)においては、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等のイオンを含むハロゲン化物、例えば、フッ化リチウムや、フッ化カリウム等を積層させ、電極との接合を向上させる構成が本発明において特に好ましい。
【0150】
これら無機材料からなる電子注入材料を用いる場合は、主にシャドウマスクを通した蒸着法によりパターニング製膜することが好ましいが、溶液として製膜出来る場合は、生産性の点で塗布製膜することがより好ましい。
【0151】
蒸着法の場合は、前述した拭き取りパターニングを行った後に蒸着製膜する製法が本発明において特に好ましい。
【0152】
(有機機能層の形成方法)
各有機機能層の形成方法としては、蒸着等により形成出来るが、製膜速度の点から塗布及び印刷等が好ましい。使用する塗布方法に制限はないが、例えば、ダイコート法、スピン塗布、転写塗布、エクストリュージョン塗布、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。又、印刷は、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等が使用出来る。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の移動度向上のために加熱乾燥アニールを行うことが好ましい。
【0153】
(有機機能層形成用塗布液に使用する溶媒)
各有機材料には溶解特性(溶解パラメータやイオン化ポテンシャル、極性)がそれぞれにあり、溶解出来る溶媒には限定がある。又その際には溶解度もそれぞれ違うため、一概に濃度も決めることが出来ないが、本発明において用いられる溶媒の種類は、成膜しようとする有機材料に応じて、前記の条件に適ったものを、公知の溶媒から選択すればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールや、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール,2−メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等のパラフィン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、ピリジン、キノリン、アニリン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒、チオフェン、二硫化炭素などの硫黄系溶媒が挙げられる。尚、使用可能な溶媒は、これらに限るものではなく、これらを二種以上混合して溶媒として用いてもよい。
【0154】
これらの内、好ましい例としては、有機エレクトロニクスパネルに用いられる材料の良溶媒としては、例えば芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒などであり、好ましくは、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒である。又、貧溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、パラフィン系溶媒などが挙げられ、中でもアルコール系溶媒、パラフィン系溶媒である。
【0155】
尚、これらの有機物層を塗布等によって積層する場合、下層にあたる層を溶解しないよう、材料や、溶媒を選択することが必要である。
【0156】
又、その為、これら有機物層の材料を積極的に架橋させるなどして不溶化させる構成も好ましく用いることが出来る。例えばビニル基のような重合性基或いは架橋基を持ち、加熱或いは光照射等によって、前記の構造単位をそれぞれ有する重合体・若しくは架橋構造を形成するものを用いることが出来る。これにより重層による膜の溶解、界面の乱れ等を抑えることが出来る。
【0157】
(第1電極)
第1電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nmから800nmの光を透過する電極である。材料としては、4eVより大きな(深い)仕事関数を持つものが適しており、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等を用いることが出来る。
【0158】
(第2電極)
第2電極は陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陰極として用いる場合、好ましくは仕事関数が4eV以下(浅い)の金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、有機機能層との電気的な接合、及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく(深く)安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム単独等が好適である。
【0159】
第2電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。又、膜厚は通常10nmから5μm、好ましくは50nmから200nmの範囲で選ばれる。
【0160】
第2電極として反射率の高い金属材料を用いれば、例えば有機EL素子において、発光した光の一部を反射して外部に取り出すことが出来、又、有機PV素子においては、光電変換層を通過した光を反射し、再度、光電変換層に戻すことで光路長を稼ぐ効果が得られ、何れにおいても外部量子効率の向上が期待出来る。
【0161】
更に、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、又は炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノ粒子やナノワイヤーの高分散性なペーストであれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法や印刷法により形成出来好ましい。
【0162】
又、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1nmから20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性の電極とすることも出来る。
【0163】
(基材)
基材としては、発光した光、若しくは起電力を発生させるための光を透過させることが可能な、即ちこれら光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。本発明で用いることが出来る基材の例としては、ガラス基板や樹脂基材等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0164】
透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることが出来るが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することが出来る。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0165】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることが出来る。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用出来る。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることが出来る。又、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることが出来る。
【0166】
又、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基材にはバリアコート層(例えば、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等))が予め形成されていてもよいし、透明導電層を製膜する側、又は反対側にハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0167】
(封止)
作製した有機光電変換素子が大気中の酸素、水分等で劣化しないように、有機EL素子や有機PV素子では、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、薄膜のアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機エレクトロニクスパネルの上を接着剤やUV硬化・熱硬化樹脂等で封止接着し貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)又は有機膜(パリレン等)を真空下や大気下でスパッタ法やCVD法などで堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることが出来る。
【0168】
更に本発明においては、素子寿命向上の観点から、基材を含む有機エレクトロニクスパネル全体を2枚のバリア付き基材でラミネート封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター等を同封した構成であっても構わない。
【実施例】
【0169】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0170】
実施例1
図2に示す有機エレクトロニクスパネルを製造する製造工程を使用して、図1に示される構成の有機エレクトロニクスパネルとして有機PVパネルを以下に示す方法で作製する時、表1に示す様に樹脂フィルム、基材の種類を変えて有機PVパネルを作製した。
【0171】
有機PVパネルの層構成は、基材/第1電極(陽極)/有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層/電子注入層)/第2電極(陰極)/封止層とした。
【0172】
〈樹脂フィルムAの準備〉
厚さ100μm、幅180mm、長さ10mのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人・デュポン社製フィルム、以下、PETフィルムと略記する)を樹脂フィルムAとして準備した。
【0173】
〈樹脂フィルムBの準備〉
図6(a)に示す製造工程を使用し表面に図6(b)に示す様な微細構造を有する樹脂層と基材フィルムとから構成される帯状の樹脂フィルムを製造し樹脂フィルムBとして準備した。
【0174】
(基材フィルムの準備)
樹脂フィルムBの基材フィルムとして、厚さ100μm、幅180mm、長さ10mのPETフィルムを基材フィルムとして準備した。
【0175】
(樹脂層形成用の活性エネルギー線硬化型樹脂の準備)
活性エネルギー線硬化型樹脂として、紫外線硬化型樹脂であるアクリル系樹脂PAK02(東洋合成工業(株)製)を準備した。
【0176】
(微細構造の形成)
押出しコーターを使用し、厚さ50μmの樹脂層を形成した後、ロールナノインプリント法にて樹脂層の表面全面に、下記の微細構造を形成した。
【0177】
微細構造
ピッチ:70nm
アスペクト比:1
凸部の断面形状:円柱形状
〈基材1の準備〉
厚さ100μm、幅180mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人・デュポン社製)を基材1として準備した。
【0178】
〈基材2の準備〉
準備した基材1と同じ基材を使用し、5×10−2Paまで減圧させた真空環境条件でスパッタリング法により、厚さ60nmのバリア層(主にSiOからなる層)を両面に形成させ基材2として準備した。
【0179】
〈試料No.101の作製〉
(正孔注入層の形成(第1有機機能層の形成))
(正孔注入層形成用塗布液の調製)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を40質量%に対し、純水30質量%、イソプロパノール30質量%で希釈し正孔注入層形成用塗布液を調製した。
【0180】
(正孔注入層形成用塗布液の塗布)
準備した樹脂フィルムAの上に調製した正孔注入層形成用塗布液をスリットコーターを使用して塗布し、続けて150℃で15分間乾燥・加熱処理し膜厚が30nmの正孔注入層を形成した後、ロール状に巻き取り保管した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、ジョバンイボン社製分光エリプソメータを使用し測定した値を示す。
【0181】
(第1電極(陽極)の形成)
(第1電極(陽極)形成用塗布液の調製)
Y.Sun,B.Gates,B.Mayers,Y.Xia,Nanoletters誌2巻,p.165などに記載されたポリオール法にもとづいて、PVP存在下のエチレングリコールに溶解した硝酸銀を還元し、Agナノワイヤー(線径35nm、長さ2μm)を作製した。エチレングリコールとPVPの添加により分散質濃度を調整し、Agナノワイヤーを0.2質量%、PVPを1質量%として、第1電極(陽極)形成用塗布液とした。
【0182】
(第1電極(陽極)形成用塗布液の塗布)
準備した正孔注入層を形成した樹脂フィルムAの正孔注入層の上に、押出しコーターを使用して全面に塗布し、続けて150℃で15分間乾燥・加熱処理し膜厚が30nmの第1電極(陽極)を形成しロール状に巻き取り保管した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、ジョバンイボン社製分光エリプソメータを使用し測定した値を示す。
【0183】
(第1電極(陽極)のパターニング)
スクリーン印刷法にて、電極の幅が10mm、間隔が1mmの75mm×150mmの大きさの第1電極(陽極)を正孔注入層の上に間隔を15mmで幅方向に2列、長さ方向に連続して形成した。
【0184】
(基材1の貼合)
準備した第1電極(陽極)までを形成した樹脂フィルムAの第1電極(陽極)の上に厚さ15μmで、紫外線硬化型の液状シール剤(ThreeBond3124C(株)スリーボンド製)をスクリーン印刷法にて塗設し、引き続き準備した基材1を積重し、1×10−2Paの減圧環境下で押圧力0.1MPaで圧着し、基材1側より主波長365nmの紫外線を照射(100mW/cmで90sec)により硬化処理し貼合した後、ロール状に巻き取り保管した。
【0185】
(樹脂フィルムAの剥離)
準備した基材1までを貼合した樹脂フィルムAから、樹脂フィルムAを剥離した。樹脂フィルムを剥離することで、接着剤/第1電極/正孔注入層がこの順番で積層された状態の基材1(PETフィルム)となる。
【0186】
(正孔輸送層(第2有機機能層1)の形成)
(正孔輸送層形成用塗布液の調製)
正孔輸送材料1を0.5質量%含むトルエン溶液を正孔輸送層形成用塗布液として調製した。
【0187】
【化1】

【0188】
(正孔輸送層形成用塗布液の塗布)
引き続き、樹脂フィルムAを剥離した基材1の上に積層された正孔注入層の上全面に、窒素チャンバー内(25℃、露点温度−20℃以下のN2ガス環境、大気圧下で、且つ清浄度クラス5以下(JIS B 9920))で、調製した正孔輸送層形成用塗布液をスリットコーターを用いて塗布した。乾燥後、更に、窒素雰囲気下で180秒間、100Wの高圧水銀ランプでUV照射し、光重合・架橋を行い、膜厚約20nmの正孔輸送層を形成し、ロール状に巻き取り保管した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、正孔注入層の膜厚の測定と同じ方法で測定した値を示す。
【0189】
(光電変換層(第2有機機能層2)の形成)
(光電変換層形成用塗布液の調製)
クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合し光電変換層形成用塗布液を調製した。
【0190】
【化2】

【0191】
(光電変換層形成用塗布液の塗布)
引き続き、正孔輸送層までを形成した基材1を、窒素雰囲気下で150℃で10分間加熱処理した後、調製した光電変換層形成用塗布液を正孔輸送層上にスリットコーターを用いてフィルターでろ過しながら塗布を行い、室温で放置して乾燥させ続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、膜厚が100nmの光電変換層を形成しロール状に巻き取り保管した。
【0192】
(電子注入層の形成)
引き続き光電変換層までを形成した基材1を、真空蒸着チャンバーに搬送し、蒸着原料としてフッ化リチウム(LiF)を使用し、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、光電変換層の上にパターニングされた発電領域に重なる形で蒸着製膜し、厚さ0.6nmの電子注入層を形成した。
【0193】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成した基材1を、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第1電極の外部接続用電極部を除き電子注入層(第1電極の上部(発電領域))及びリード部に至る領域まで、アルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる第2電極(陰極)を形成し図1に示される構成の有機PV素子を作製した。
【0194】
〔封止部材の貼合〕
(接着剤層の形成)
準備した有機PV素子の第2電極の上に紫外線硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)をスクリーン印刷法にて厚さ10μmになるように塗設した。封止フィルム(凸版印刷 GXフィルム:厚み100μm)を、接着剤塗設面にロールラミネータ法により貼合し、大気圧環境化にて押圧0.1MPaでロール圧着した後、100Wの高圧水銀ランプを、照射強度15mW/cm、距離10mmで1分間照射し固着させることで封止し有機PVパネルを作製し試料No.101とした。
【0195】
〈試料No.102の作製〉
貼合する基材を基材2に変えた他は全て試料No.101と同じ条件で有機PVパネルを作製し試料No.102とした。
【0196】
〈試料No.103の作製〉
樹脂フィルムAを樹脂フィルムBに変えた他は全て試料No.101と同じ条件で有機PVパネルを作製し試料No.103とした。
【0197】
〈試料No.104の作製〉
樹脂フィルムAを樹脂フィルムBに、基材1を基材2に変えた他は全て試料No.101と同じ条件で有機PVパネルを作製し試料No.104とした。
【0198】
〈比較試料No.105の作製〉
(基材の準備)
試料No.101の作製に使用した基材1同じ基材を使用した。
【0199】
(第1電極(陽極)の形成)
準備した基材の上に、試料No.102の第1電極(陽極)の作製に使用した第1電極(陽極)形成塗布液と同じ第1電極(陽極)形成塗布液準備し、試料No.102と同じ塗布方法で塗布した後、同じ方法でパターニングし第1電極(陽極)を形成した。
【0200】
(正孔注入層の形成)
第1電極(陽極)の上に試料No.102の作製に使用したと同じ正孔注入層形成用塗布液を試料No.102の作製と同じ方法で塗布し正孔注入層を形成した。
【0201】
(有機PVパネルの形成)
以降、正孔注入層の上に、正孔輸送層、光電変換層、電子注入層、第2電極を試料No.102と同じ条件で形成した後、試料No.102と同じ条件で封止部材を貼合し有機PVパネルを作製し比較試料No.105とした。
【0202】
(評価)
作製した試料No.101から105に付き、リーク発生の有無、リーク電流による機能低下の代用特性として直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)、エネルギー変換効率η(%)の作製直後性能、及び保存性能(エネルギー変換効率η(%))を以下に示す方法で測定した結果を表1に示す。
【0203】
尚、作製直後とは、25℃、50%RHの環境に12時間保存した状態を言う。
【0204】
(作製直後性能)
直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)の測定
予めソーラーシミュレーターは二次基準太陽電池(PV Measurements社製 RC2−G5)で校正したソーラーシミュレーター(英弘精機社製 ESS−500XIL)を使用し、AM1.5Gフィルタを用いて100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cmにしたマスクを受光部に重ね、ソースメーター(Keithley社製2400)で直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)を測定した。
【0205】
エネルギー変換効率η(%)の測定
直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)を測定するときに、同時に測定した、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFの測定結果から式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
【0206】
(式1) η(%)=Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF
(保存性)
常温大気(25℃50%RH)中で168時間放置した後にエネルギー変換効率η(%)に付き、同様の測定を行い、以下に示す評価ランクに従って評価した。
【0207】
評価ランク
◎:エネルギー変換効率が作製直後のエネルギー効率測定値に対して90%以上
○:エネルギー変換効率が作製直後のエネルギー効率測定値に対して70%以上90%未満
△:エネルギー変換効率が作製直後のエネルギー効率測定値に対して50%以上70%未満
×:エネルギー変換効率が作製直後のエネルギー効率測定値に対して50%未満
リーク発生の有無
850nmの赤外光を周波数3Hzで発光さて試料に照射し、試料撮影に赤外線カメラ(FLIR ATR社製SC5200)を用い、ロックイン・サーモブラフィを使ってリークによる発熱点の有無を目視で観察した。
【0208】
【表1】

【0209】
本発明の製造方法で作製した試料No.101からNo.104はリーク発生もなく、作製直後の機能はシヨートやリーク電流による機能低下の発生もなく、直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)、エネルギー変換効率η(%)は、比較試料No.105に比べ何れも優れた性能を示すことを確認した。何れも優れた性能を示すことを確認した。尚、並列抵抗Rsh[Ωcm]が比較試料No.105よりも高い値を示すが、これはリーク電流による機能低下の発生がないためと判断される。
【0210】
又、微細構造を有する樹脂フィルムBを使用して作製した試料No.103及び試料No.104は、微細構造のない樹脂フィルムAを使用して作製した試料No.101及び試料No.102と比較し直列抵抗が低い値を示した。これは、第1有機機能層(正孔輸送層)の表面に形成された微細構造によりと第2有機機能層(光電変換層)との接触面積が増加したためと判断される。結果として、高いエネルギー変換効率が得られることが確認された。
【0211】
更に、バリア層を有する基材2を使用して作製した試料102及び試料No.104は、バリア層を有さない基材1を使用して作製した試料No.101及び試料No.103に比べ作製直後のエネルギー変換効率に差は見られないが、保存性で大きな差が得られることが確認された。
【0212】
バリア層を有さない基材1を使用して作製した比較試料No.105は保存性ではバリア層を有さない基材1を使用して作製した試料No.101、103と同じ性能を示したが、リーク発生による発熱点が確認され、作製直後の直列抵抗Rs(Ωcm)、並列抵抗Rsh(Ωcm)、エネルギー変換効率η(%)の何れも試料No.101、103に比べ劣ることを確認した。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0213】
1′ 有機エレクトロニクスパネル連続体
1′a 有機エレクトロニクスパネル
101′ 基材
102′ 第1電極(陽極)
103′ 有機機能層
104′ 第2電極(陰極)
105′ 封止層
106′、107′ 接着剤層
1から4 製造工程
1aから3a 第1有機機能層形成工程
1b、3b 第1電極形成工程
1c パターン形成工程
1d、3c 基材貼合工程
1e、3d 剥離工程
1f、3e、3f 第2有機機能層形成工程
1g、3f 第2電極形成工程
1h、3g 封止材貼合工程
401 帯状基材フィルム
402 樹脂層
1a11、3a11、403 帯状の樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、第1電極と、第2電極と、封止層と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、
前記有機機能層は第1有機機能層を有し、
前記第1有機機能層を帯状の樹脂フィルムの上に形成する第1有機機能層形成工程と、
前記帯状の樹脂フィルムの上に形成された前記第1有機機能層の上に、前記第1電極を形成する第1電極形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項2】
前記帯状の樹脂フィルムの前記第1有機機能層を形成する面は微細構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項3】
前記基材はガスバリア層を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において
前記有機機能層は前記第1有機機能層と第2有機機能層とを有し、
且つ、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
A)前記第1有機機能層形成工程
B)第1電極形成工程
C)前記第1電極にパターンを形成するパターン形成工程
D)前記第1電極の上に前記基材を貼合する基材貼合工程
E)前記帯状の樹脂フィルムを剥離する剥離工程
F)前記第1有機機能層の、前記帯状の樹脂フィルムが剥離された面の上に、前記第2有機機能層を形成する第2有機機能層形成工程
G)前記第2有機機能層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程
H)前記第2電極の上に前記封止層を形成する封止層形成工程
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、前記有機機能層は前記第1有機機能層と第2有機機能層とを有し、前記第1電極形成工程はマスクを用いた蒸着方式で形成され、
且つ、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
A)前記第1有機機能層形成工程
B)前記第1電極形成工程
C)前記第1電極の上に前記基材を貼合する基材貼合工程
D)前記帯状の樹脂フィルムを剥離する剥離工程
E)前記第1有機機能層の、前記帯状の樹脂フィルムが剥離された面の上に、前記第2有機機能層を形成する第2有機機能層形成工程
F)前記第2有機機能層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程
G)前記第2電極の上に前記封止層を形成する封止層貼合工程
【請求項6】
前記有機エレクトロニクスパネルが有機光電変換素子であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項7】
前記有機エレクトロニクスパネルが有機エレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−129229(P2012−129229A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276712(P2010−276712)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】