説明

有機エレクトロルミネセンス素子

本発明は、リン光有機エレクトロルミネセンスデバイスの改良に関し、ここで、トリアジン、ピリミジン、ピリダジンおよびピラジンを、好ましくは、正孔障壁層における材料として用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
有機化合物および有機金属化合物は、最も広い意味において電子産業とみなされ得る、多くの種々のアプリケーションにおける機能性材料として用いられる。有機成分に基づく有機エレクトロルミネセンスデバイス(構造の一般的な記載は、US 4,539,507 および US 5,151,629 を参照のこと)、およびその個々の構成要素である有機発光ダイオード(OLED)は、パイオニア社製の「有機ディスプレイ」を有する自動車用ラジオ、またはコダック社製のデジタルカメラにより確認されるように、市場への導入が既に始まっている。このタイプの他の製品は、導入されているところである。それにもかかわらず、これらのディスプレイを、現在市場を支配している液晶ディスプレイ(LCD)の真の競合物とするため、または後者をしのぐためには、かなりの改善が、なお必要とされる。
【0002】
近年持ち上がっている開発は、蛍光の代わりにリン光を示す有機金属錯体の使用である(M.A.バルドー(Baldo)等、Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6 )。スピン統計に基づく理由のために、リン光エミッタとして有機金属化合物を用いると、エネルギー効率およびパワー効率の最大で4倍の向上が可能となる。この始まったばかりの開発が成功するか否かは、OLEDにおいてこれらの利点(一重項発光=蛍光と比較した三重項発光=リン光)を実行することができる対応するデバイス要素を見出すことができるか否かにかかっている。ここで重要なことは、有機金属化合物自体の開発だけでなく、とりわけ、この目的に具体的に要求されるさらなる材料、例えば、マトリックス材料または正孔障壁材料の開発である。
【0003】
有機エレクトロルミネセンスデバイスは、通常、真空法または種々の印刷法によって順に重ねて設けられた複数の層から成る。リン光有機エレクトロルミネセンスデバイスについては、これらの層は、詳細には、
1.外板=基板(通常、ガラスまたはプラスチックシート)、
2.透明陽極(通常、インジウム−スズ酸化物、ITO)、
3.正孔注入層(HIL):例えば、フタロシアニン銅(CuPc)または伝導性ポリマーに基づく、
4.正孔輸送層(HTL):通常、トリアリールアミン誘導体に基づき、例えば、第1層として4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(NaphDATA)、および第2層としてN,N’−ジ−(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、
5.発光層(EML):通常、リン光デバイスにおけるマトリックス材料を含み、例えば、リン光染料、例えばトリス(フェニルピリジル)イリジウム(Ir(PPy))またはトリス(2−ベンゾチオフェニルピリジル)イリジウム(Ir(BTP))をドープした4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、
6.正孔障壁層(HBL):通常、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン=バトクプロイン)またはビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)、
7.電子輸送層(ETL):通常、アルミニウムトリス−8−ヒドロキシキノリネート(AlQ)に基づく、
8.電子注入層(EIL、絶縁層=ISLとしても知られる):例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF等の高い誘電率を有する材料の薄層、
9.陰極:一般的に、低い仕事関数を有する金属、金属の組み合わせ、または合金、例えば、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、In、Mg/Ag
である。
【0004】
デバイス構造によっては、複数のこれらの層は一致してもよく、またはこれらの層のそれぞれが、必ずしも存在する必要はない。
【0005】
しかしながら、高品質のフルカラーアプリケーションを容易にするためには、急を要する改善を必要とするかなりの問題がなお存在する。
【0006】
1.例えば、特にOLEDの駆動寿命は、未だにかなり短く、これまでは、商業的には簡単なアプリケーションを導入することができるのみであることを意味する。
【0007】
2.短い寿命は、第2の問題を生じさせる。とりわけフルカラーアプリケーション(フルカラーディスプレイ)について、現在のところの状況であるが、個々の色が、異なる速度で老化する場合に特に質が悪い。これは、寿命を終える(一般的に、初期の輝度の50%までの低下と定義される)前に、白色点が、かなりシフトする結果となる、すなわち、ディスプレイにおける表示の色の忠実度を悪化させる。これを回避するために、いくつかのディスプレイ製造業者は、寿命を、70%または90%の寿命と定義している(すなわち、初期値の70%または90%までの初期輝度の低下)。しかしながら、これは、寿命がさらに短くなる結果となる。
【0008】
3.老化プロセスは、一般的に、電圧の上昇を伴う。この効果は、電圧駆動型有機エレクロトルミネセンスデバイスを困難にするか、不可能にする。しかしながら、電流駆動型アドレッシングは、この場合には、より複雑であり、且つ高価である。
【0009】
4.効率的なリン光OLEDの場合にまさに、必要な駆動電圧はかなり高く、従って、パワー効率を改善するためには、これを低減させる必要がある。
【0010】
5.リン光OLEDの効率、とりわけパワー効率(Im/Wで測定)は許容範囲にあるものの、改善が、ここではさらに所望される。
【0011】
6.多数の有機層のために、OLEDの構造は複雑であり、技術的に困難である。製造工程の数を減らし、よって技術を簡単にし、製造の信頼性を高めるために、層の数を減らすことが、製造については所望される。
【0012】
上記の理由は、OLEDの製造における改善を必要とする。
【0013】
リン光OLEDの場合に、正孔障壁層(HBL)は、効率と寿命を高めるために、通常、発光層の後に用いられる。これらのデバイス構造は、通常、最大効率の基準に従って最適化される。BCP(バトクプロイン)は、しばしば、正孔障壁材料(HBM)として用いられ、非常に良好な効率を得ることを可能にする(D.F.オブライエン(O'Brien)等、Appl. Phys. Lett. 1999, 74, 442)が、BCPを含むOLEDの寿命は、かなり制限されるという決定的な不都合を伴う。T.ツツイ(Tsutusi)等、(Japanese J. Appl. Phys. 1999, 38, L1502)は、BCPの低い安定性を、乏しい寿命の理由と指摘しており、これは、これらのデバイスを、高品質なディスプレイにおいて用いることができないことを意味する。他の正孔障壁材料は、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。これは、デバイスの安定性および寿命を有意に改善することを可能にしたが、BAlqを含むデバイスの量子効率が、BCPに比べて約40%低いという副作用を伴う(T.ワタナベ等、Proc. SPIE 2001, 4105, 175)。クォン(Kwong)等(Appl. Phys. Lett. 2002, 81, 162)は、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(III)を用いて、100cd/mで10,000時間の寿命を達成した。しかしながら、このデバイスは、わずか19cd/Aの効率を示し、これは、当該技術の状況よりもかなり劣る。つまり、BAlqを用いると良好な寿命が可能となるが、しかしながら、全体としてみれば、得られる効率があまりにも低いために、これは満足のいく正孔障壁材料ではない。
【0014】
例えば、BCPまたはBAlqのような、今日まで用いられている正孔障壁層(HBM)は、意に満たない副作用をもたらすことが、この記載から明白である。つまり、OLEDにおける良好な効率をもたらすと同時に、長い寿命をもたらす正孔障壁材料についての要求が存在し続ける。驚くべきことに、以下に示すある種の複素環、とりわけジアジンおよびトリアジンを、正孔障壁材料として含むOLEDは、従来技術に対して著しい改善点を有することがここに見出された。これらの正孔障壁材料を用いると、従来技術による材料を用いては可能でなかった、高い効率と良好な寿命を同時に得ることが可能である。さらに、別個の電子輸送層は、この新規な正孔障壁材料と共には必ずしも用いる必要がないことが見出され、これは、技術的な利点を示し、およびさらに、結果として、駆動電圧を有意に低減することができることが見出され、これはより高いパワー効率に対応する。
【0015】
有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける、発光材料または電荷輸送材料としてのトリアジン、ピリミジン、ピラジンおよびピリダジンの使用は、既に、文献に記載されている。これらの材料は、蛍光エミッタとして、または蛍光エミッタと組み合わせて記載されている。US 6352791 および US 6225467 は、OLEDにおける電子輸送材料として、トリアジン、とりわけ具体的には置換トリアジンを記載している。バッカー(Bacher)等(Inorg. and Org. Electroluminescence(Int. Workshop on Electroluminescence)1996, 109-112)等は、エミッタとしてのAlQおよび陰極との間の電子輸送層として、トリアジン誘導体を含む場合に、3倍高い効率を報告している。寿命についての記載はない。電子輸送材料としてのピラジンが、例えば、T.オヤマダ(Oyamada)等(Chem. Lett. 2003, 32, 388)により記載されている。一方で、置換ピリミジン誘導体および置換トリアジン誘導体を、OLEDにおける正孔輸送材料として用いることもできる(US 5716722)。JP 2002/212170 は、パング(Pang)等(J. Mater. Chem. 2002, 12, 206)と同じく、電場蛍光(electrofluorescent)化合物として、トリアジン誘導体を記載している。
【0016】
JP 2003/282270 は、OLEDにおけるフェニルピリジン誘導体を記載している。多くの他の基に加えて、これらは、また、トリアジン、ピリミジン、ピラジンまたはピリダジンを含み得る。しかしながら、これらの化合物の好ましい効果は、フェニルピリジン単位に帰するものであって、トリアジン、ピリミジン、ピラジンまたはピリダジンに帰するものでなく、従って、この出願は、偶然の開示とみなされるべきである。
【0017】
どのようにジアジン誘導体およびトリアジン誘導体を、リン光OLEDにおいて有効に用いることができるかということは、これらの材料が、電子伝導体および正孔伝導体として、または(蛍光)エミッタとして記載されているために、上に挙げた従来技術からは理解することができない。とりわけ、リン光OLEDにおける正孔障壁材料としての、例えば、トリアジンのような電子不足複素環は、500cd/mの輝度で、典型的には100時間未満の範囲の非常に乏しい寿命をもたらすことが、リン光OLEDの分野における第一人者による文献(R.C.クォン(Kwong)、M.E.トンプソン(Thompson)、S.R.フォレスト(Forrest)等、Appl. Phys. Lett. 2002, 81, 162)に記載されており、これは、当該技術の状況よりもかなり劣る。当業者は、このことから、この組み合わせは、技術的な改良を達成するには適していないということを導き得るであろう。このことは、良好な結果を、これをもって達成することができるということを全く示唆しない。
【0018】
本発明は、陽極、陰極、および少なくとも1つのリン光エミッタをドープした少なくとも1つのマトリックス材料から成る発光層を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、式(1)の化合物を含む正孔障壁層を、発光層と陰極との間に組み込んだことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスに関する
【化3】

【0019】
(式中、以下を、用いられる記号および添え字に適用する。すなわち、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはCRであり、但し、少なくとも2つの、最大で4つのQは、窒素を表わし、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、NO、CN、N(R、1〜40のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−または−NR−により置き換えられてもよく、また、1以上のH原子は、Fまたは芳香族基Rにより置き換えられてもよい)、またはそれぞれ1〜40の芳香族C原子を有する芳香族環構造若しくは複素環式芳香族環構造、若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(ここで、1以上のH原子は、F、Cl、BrまたはIにより置き換えられてもよく、または、これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい(ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環または多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい))、またはそれぞれ1〜40の芳香族C原子を有する、二価の基−Z−を介して結合された芳香族環構造若しくは複素環式芳香族環構造、若しくは1〜40の芳香族C原子を有するアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(ここで、1以上のH原子は、F、Cl、BrまたはIにより置き換えられてもよく、または、これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい(ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環のまたは多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい))であり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜20のC原子を有する脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環式芳香族炭化水素基(ここで、複数の置換基R、またはRとRは、さらなる単環または多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい)であり、
Zは、出現毎に同一であるか異なり、1〜40のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状の、好ましくは共役基であり、これは、好ましくは、2つの他の置換基と共役しており、ここで、式(1)の基と芳香族基を結ぶZにおける原子の数は、好ましくは偶数であり、ここで、1以上の非隣接のC原子は、−O−、−S−若しくは−NRにより置き換えられてもよく、または1以上のC原子は、R基またはハロゲンにより置換されていてもよく、
但し、Rは、置換または無置換フェニルピリジンを含まない)。
【0020】
式(1)の化合物は、好ましくは、少なくとも350g/モルの分子量を有する。
【0021】
本発明の目的のために、芳香族環構造または複素環式芳香族環構造は、必ずしも、アリール基またはヘテロアリール基のみを含む系ではなく、代わりに、複数のアリール基またはヘテロアリール基が、例えば、sp混成のC、O、N等のような短い非芳香族単位により中断されていてもよい系を意味するものとする。つまり、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル等のような系も、芳香族系として理解されたい。
【0022】
OLEDは、また、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および/または電子輸送層のようなさらなる層を含んでいてもよい。しかしながら、全てのこれらの層は、必ずしも存在する必要はないことを指摘しておく。つまり、正孔障壁層において式(1)の化合物を含む本発明によるOLEDは、別個の電子注入層および電子輸送層を用いない場合にも、低減された駆動電圧と共に、同等に良好な効率および寿命を提供し続けることを見出した。本発明による正孔障壁層は、好ましくは、少なくとも50%の、特に好ましくは少なくとも80%の式(1)の化合物を含み、非常に特に好ましくは、式(1)の化合物のみから成る。
【0023】
式(1)の好ましい構造は、環に2つまたは3つの窒素原子を含有する。これらは、ジアジンまたはトリアジンであり、すなわち、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン)、ピリダジン(1,4−ジアジン)、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン若しくは1,3,5−トリアジンである。ピリミジンまたはトリアジン、とりわけ1,2,4−トリアジンおよび1,3,5−トリアジンが特に好ましい。
【0024】
記載から明らかであるが、正孔障壁材料は、1を超えるこのようなジアジンまたはトリアジン単位を含んでもよいことを明示的に指摘しておく。
【0025】
特に適した正孔障壁材料であると判明した化合物は、非平面構造を有する化合物である。骨格(すなわち、ジアジンまたはトリアジンの6員環)は、常に、平面構造を有する一方、(R中に存在する)対応する置換基は、全体として、構造の平面からのずれを引き起こし得る。これは、特に、少なくとも1つの置換基Rが、sp混成炭素原子(または、相当するものとして、シリコン、ゲルマニウム、窒素等)を含み、このため、四面体(または窒素の場合にはピラミッド形)形状を有する場合である。
【0026】
従って、好ましい正孔障壁材料は、置換基Rの少なくとも1つが、少なくとも1つのsp混成炭素原子を含む、式(1)の化合物である。
【0027】
より大きな平面からのずれを達成するために、このsp混成炭素原子は、第二級、第三級または第四級炭素原子であることが好ましく、特に好ましくは第三級または第四級炭素原子であり、非常に特に好ましくは第四級炭素原子である。第二級、第三級、または第四級炭素原子とは、2つ、3つまたは4つの、水素以外の置換基を有する炭素原子を意味すると解釈する。
【0028】
R基の少なくとも1つにおいて、9,9’−スピロビフルオレン誘導体、9,9−二置換フルオレン誘導体、6,6−および/または12,12−二置換または四置換インデノフルオレン誘導体、トリプチセン誘導体(好ましくは、9および/または10位を介して結合)、またはテトラアリールメタン誘導体を含む、式(1)の化合物が特に好ましい。ここで、ジアジンまたはトリアジンまたはテトラアジン単位は、例えば、フルオレンの9位、またはインデノフルオレンの6および/または12位において結合され得る。
【0029】
R基の少なくとも1つにおいて、9,9’−スピロビフルオレン誘導体を含む式(1)の化合物が、非常に特に好ましい。
【0030】
式(1)の化合物のガラス転移温度は、好ましくは>100℃、特に好ましくは>120℃、非常に特に好ましくは>140℃である。R基の少なくとも1つがスピロビフルオレン誘導体を含む化合物のガラス転移温度は、一般的にこの範囲にあることが見出された。これは、これらの材料の好ましさの根拠を示す。
【0031】
(効率と寿命に関する)最良の結果を、正孔障壁層の層の厚さが1〜50nm、好ましくは5〜30nmの場合に達成することが見出された。
【0032】
とりわけ駆動電圧およびパワー効率に関する特に良好な結果を、正孔障壁層と陰極または電子注入層との間に、別個の電子輸送層が組み込まれない場合に達成することが見出された。つまり、電子輸送層を含まず、正孔障壁層が、電子注入層または陰極に直接的に隣接する本発明によるエレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。正孔障壁材料としてBCPを含み、ETLを含まない同様のデバイス構造が、著しく短い寿命を与えるために、このことは驚くべき結果である。
【0033】
本発明を、式(1)の正孔障壁材料の以下の例により、より詳細に説明するが、これらに制限されることを望まない。スピロビフルオレン単位または対応する他の単位上の考えられる置換基、およびトリアジン上の考えられるさらなる置換基は、明瞭にするために示さない。当業者は、発明を必要とすることなく、記載および例から、同様の正孔障壁材料を含む本発明に従うさらなるエレクトロルミネセンスデバイスを製造することができるであろう。
【化4】

【化5】

【化6】

【0034】
リン光エミッタのマトリックスは、好ましくは、カルバゾール(例えば、WO 00/057676、EP 1202358 および WO 02/074015 による)、ケトンおよびイミン(例えば、WO 04/093207 による)、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、ホスフィンセレニド、ホスファゼン、スルホン、スルホキシド(例えば、DE 10330761.3 による)、シラン、多座金属錯体(例えば、WO 04/081017)、またはスピロビフルオレンに基づくオリゴフェニレン(例えば、EP 676461 および WO 99/40051)のクラスから選択され、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスピロビフルオレンに基づくオリゴフェニレンが特に好ましい。
【0035】
リン光エミッタは、好ましくは、36よりも大きく84未満の原子番号を有する少なくとも1つの元素を含む化合物である。リン光エミッタは、特に好ましくは、56よりも大きく80未満の原子番号を有する少なくとも1つの元素、非常に特に好ましくは、例えば WO 98/01011、US 02/0034656、US 03/0022019、WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 03/040257、WO 03/084972、およびWO 04/026886 によれば、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウムの少なくとも1つの元素を含む。
【0036】
有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける1以上の層を、好ましくは、昇華プロセスによりコーティングし、ここで、低分子量材料を、真空昇華装置中、10−5mbar以下、好ましくは10−6mbar以下、特に好ましくは10−7mbar以下の圧力で蒸着する。
【0037】
同様に、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける1以上の層を、好ましくは、OVPD(有機気相成長(organic vapour phase deposition))プロセスによりコーティングし、またはキャリアガス昇華を用いてコーティングし、ここで、低分子量材料を、10−5mbar〜1barの圧力で適用する。
【0038】
同様に、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける1以上の層を、好ましくは、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷のような印刷法、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化(light induced thermal imaging)、熱転写印刷)、またはインクジェット印刷によりコーティングする。
【0039】
上記した発光デバイスは、従来技術に対して、以下の驚くべき利点を有する。
【0040】
1.対応するデバイスの効率は、HBLとしてBAlqを含む従来技術による系と比較して、より高い。
【0041】
2.対応するデバイスの寿命は、HBLとしてBCPを含む従来技術による系と比較して、より長い。従って、寿命および効率が、従来技術による最も良い値に匹敵し、BAlqまたはBCPの場合のように、2つの性質のうちの一方のみが良好な結果を与えるということのないデバイスが得られる。
【0042】
3.本発明によるデバイスにおける駆動電圧は、従来技術によるデバイスと比べて、より低い。
【0043】
4.別個の電子輸送層を用いる必要がないために、層構造を簡素化することができる。電子輸送層を含まず、トリアジンの代わりにBCPを含む同様のデバイス構造が、かなり劣る寿命と効率を与えるために、このことは、非常に驚くべきことである。
【0044】
5.電子輸送層を用いない場合に、さらなる利点が生じる。すなわち、ここでの駆動電圧は、有意により低い。その結果として、パワー効率は、大幅に向上する。トリアジンの代わりにBAlqを含む同様のデバイス構造が、全く殆ど低下しない駆動電圧に終わるために、このことは驚くべき結果である。
【0045】
6.同様に、電子輸送層を用いなければ、製造はより複雑でなくなる。蒸着装置の別個のセグメントが、一般的な製造プロセスにおいて各有機層について必要とされるために、このことは、製造プロセスにおいて、相当な技術的利点である。
【0046】
ここで述べたことに関する詳細を、以下に記載する例に与える。
【0047】
本出願明細書および以下の例は、有機発光ダイオードおよび対応するディスプレイに関する。この記載の制限に関わらず、当業者は、さらなる発明を必要とせずに、本発明に従う対応する設計を、他の関連デバイス、例えば、いくつかの他のアプリケーションを挙げると、有機太陽電池(O−SC)、有機トランジスタ、有機集積回路または有機レーザーダイオードについて用いることができるであろう。従って、本出願は、これらにも関する。
【0048】
トリアジンにより置換されたスピロビフルオレンは、新規であり、よって、同様に、本発明の主題である。
【0049】
従って、本発明は、少なくとも1つのスピロビフルオレン単位を含み、少なくとも1つのトリアジン単位がスピロビフルオレンに結合していることを特徴とする式(2)の化合物に関する
【化7】

【0050】
(式中、RおよびRは、式(1)において上で定義したものと同様の意味を有し、他の記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはCRであり、但し、3つのQは、窒素を表わし、および2つのQは、CRを表わし、
R’は、出現毎に同一であるか異なり、RまたはF、Cl、Br、I、B(R、またはB(ORであり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2または3であり。
【0051】
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、但し、p=1の場合には、nは4であってはならず、
pは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である)。
【0052】
トリアジン単位は、本発明によれば、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジンまたは1,3,5−トリアジンであり得る。種々のトリアジン誘導体も、単一化合物中に存在し得る。単一化合物中に存在する全てのトリアジンは、好ましくは、同一のトリアジン誘導体である。1,3,5−トリアジンまたは1,2,4−トリアジンが特に好ましい。
【0053】
トリアジン単位は、好ましくは、2(または2’、7または7’)位において、すなわち、スピロビフルオレンのフェニル−フェニル結合に対してパラ位においてスピロビフルオレンに結合する。
【0054】
式(2)の好ましい構造において、以下が、記号および添え字に適用される。すなわち、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状のアルキル基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、または−NR−により置き換えられてもよい)、または1〜30の芳香族C原子を有する芳香族環構造若しくは複素環式芳香族環構造(これは、1以上の非芳香族R基により置換されていてもよい(ここで、同じ環上および異なる環上双方の複数の置換基Rは、互いに、多環または単環の、脂肪族または芳香族環構造を形成してもよい))であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
他の記号および添え字は、式(1)および(2)において上で定義した通りである。
【0055】
式(2)の特に好ましい構造において、以下が、記号および添え字に適用される。すなわち、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10の芳香族C原子を有する芳香族環構造または複素環式芳香族環構造(これは、上に定義した、1以上の非芳香族R基により置換されていてもよい(ここで、同じ環上およびさらに異なる環上双方の複数の置換基Rは、互いに、単環のまたは多環の、脂肪族または芳香族環構造を形成していてもよい))であり、
R’は、出現毎に同一であるか異なり、R、1〜10のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状のアルキル基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、または−NR−、またはBr、IまたはB(ORにより置き換えられてもよい)であり、
mは、0であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
他の記号および添え字は、式(1)および(2)において上で定義した通りである。
【0056】
さらに、2つのトリアジン単位が存在し、双方とも、スピロビフルオレンの同じフルオレンサブユニットに、好ましくは、2および7位において結合している式(2)の化合物が好ましい。
【0057】
上に記載した本発明による式(2)の化合物を、また、例えば、対応するポリマーの製造のためのコモノマーとして、またはデンドリマーのコアとして用いることができる。例えば、ハロゲン、特に、臭素またはヨウ素、またはボロン酸若しくは対応する誘導体のような、続く反応に適する対応する官能基を含む式(2)の化合物が、この目的に特に適している。つまり、これらの化合物を、とりわけ、可溶性ポリフルオレン(例えば、EP 842208 または WO 00/22026 による)、ポリスピロビフルオレン(例えば、EP 707020 または EP-A-894107 による)、ポリインデノフルオレン(例えば、WO 04/041901 または EP 03014042.0 による)、またはポリジヒドロフェナントレン(例えば、DE 10337346.2 による)中に共重合することができる。これらのポリマーまたはデントリマーを、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける正孔障壁材料として用いることができる。
【0058】
さらに、式(2)の材料を、上に示した反応タイプによりさらに官能基化してもよく、例えば、伸長した式(2)の正孔障壁材料に変換してもよい。ここで述べることができる例は、アリールボロン酸を用いるスズキ官能基化、またはアミンを用いるハルトビヒ−ブークウォルド(Hartwig-Buchwald)官能基化である。
【0059】
さらに、本発明は、電子デバイスにおいて、式(2)の化合物、またはこれらの化合物を含むポリマー若しくはデンドリマーを用いることに関する。同様に、本発明は、少なくとも1つの式(2)の化合物、または対応するポリマーまたはデンドリマーを含む、例えば、有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機集積回路、または有機レーザーダイオードのような電子デバイスに関する。
【0060】
OLEDを、それぞれの状況に対する個々の場合(例えば、効率または色を最適化するための層の厚さの変動)に適応させた一般的なプロセスにより製造する。本発明によるデバイスの製造に用いられる正孔障壁材料は、式(1)の化合物であり、電子輸送層は、任意に省略する。本発明によるエレクトロルミネセンスデバイスを、例えば、DE 10330761.3 に記載されるように製造することができる。
【0061】

以下の合成を、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下、乾燥溶媒中で行った。出発原料を、アルドリッチ((スプレードライ)フッ化カリウム、トリ−tert−ブチルホスフィン、酢酸パラジウム(II))から購入した。3−クロロ−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジンを、SYNCHEM OHGから購入した。2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ビスボロン酸グリコールエステルを、WO 02/077060 に記載されるように調製し、および2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを、US 5438138 に記載されるように調製した。スピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ビス(ボロン酸グリコールエステル)を、WO 02/077060 と同じように調製した。
【0062】
例1:2,7−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン(TRI1)の合成
28.4g(50.0mmol)の2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ビスボロン酸グリコール、29.5g(110.0mmol)の2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、および44.6g(210.0mmol)のリン酸三カリウムを、500mlのトルエン、500mlのジオキサンおよび500mlの水中に懸濁させた。913mg(3.0mmol)のトリ−o−トリルホスフィン、続いて112mg(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)をこの懸濁液に加え、この反応混合物を16時間還流した。冷却後、有機相を分離し、シリカゲルを通してろ過して、200mlの水を用いて3回洗浄し、続いて乾燥するまで蒸発させた。残渣をトルエンから、およびジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶し、最終的に高真空(p=5×10−5mbar、T=385℃)中で昇華させた。収量は39.9g(44.8mmol)であり、理論の89.5%であった。
【0063】
H−NMR(CDCl):[ppm]=8.89(m,2H),8.65(m,8H),8.14(m,2H),8.06(m,2H),7.86(m,2H),7.61−7.50(m,12H),7.47(m,2H),6.79(m,2H),1.16(s,18H)。
【0064】
例2:2,7−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)スピロ−9,9’−ビフルオレン(TRI2)の合成
2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ビス(ボロン酸グリコールエステル)を、22.8g(50mmol)のスピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ビス(ボロン酸グリコールエステル)に置き換えて、例1と同様の方法。収量は、32.3g(41.5mmol)であり、理論の82.9%であった。
【0065】
H−NMR(CDCl):[ppm]=8.90(m,2H),8.64(m,8H),8.14(m,2H),8.09(m,2H),8.01(m,2H),7.61−7.49(m,12H),7.45(m,2H),7.15(m,2H),6.86(m,2H)。
【0066】
例3:2,7−ビス(5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン−3−イル)−2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン(TRI3)の合成
2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを、3−クロロ−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジンに置き換えて、例1と同様の方法。収量は41.0g(46.0mmol)で、理論の92.0%であった。
【0067】
H−NMR(CDCl):[ppm]=8.74(m,2H),8.12(m,4H),7.75(m,2H),7.59(m,4H),7.53(m,4H),7.45−7.30(m,14H),6.76(m,2H),1.14(s,18H)。
【0068】
例4:デバイス構造
以下の例は、式(1)の正孔障壁材料を含む、および比較材料としてのBCPおよびBAlqを含む種々のOLEDの結果を示す。用いた基本構造、材料および層の厚さ(HBLを除く)は、より良い比較のために同一であった。以下の構造を有するリン光OLEDを、上記の一般プロセスにより製造した。すなわち、
PEDOT(HIL):60nm(水からスピンコーティング;H.C.シュタルク(Starck)社からBaytron P として購入;ポリ−(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン))、
NaphDATA(HTL):20nm(蒸着;SynTec社から購入;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、
S−TAD(HTL):20nm(蒸着;WO 99/12888 に記載されるように調製;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)スピロビフルオレン)
(EML):30nm(蒸着);マトリックス材料としてのビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン中10%のIrPPy
(HBL):材料および層の厚さは、表1の例を参照のこと、
AlQ(ETL):全てのデバイス中に存在しない(表1参照);存在する場合には、蒸着(SynTec社から購入;トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(III))、
Ba/Al(陰極):3nmのBaの上の150nmのアルミニウム
である。
【0069】
これらの未だ最適化されないOLEDを、標準的な方法により特性決定した。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、輝度の関数としての最大パワー効率(Im/Wで測定)、および寿命を測定した。寿命は、10mA/cmの一定の電流密度で、OLEDの初期輝度が、半分にまで低下した後の時間と定義する。
【0070】
表1は、本発明によるOLED、および比較例(BCPおよびBAlqを含む)によるOLEDについての結果を示す(例5〜8)。表は、正孔障壁層(組成および層の厚さ)を示すのみである。他の層は、上記の構造に対応する。例5において、TRI1をETLと共に用い、表6においてはETLを伴わずに用いた。例7において、TRI2を、ETLと共に用い、例8においてはETLを伴わずに用いた。
【0071】
上記および表1において用いた略語は、以下の化合物に相当する。
【化8】

【表1】

【0072】
まとめると、式(1)または式(2)の正孔障壁材料を含むリン光OLEDは、表1における例から容易に理解することができる通り、長い寿命および低い駆動電圧に加えて、高い効率を有することを述べることができる。特に、電子輸送層を用いない場合に、非常に低い駆動電圧と非常に高いパワー効率が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、および少なくとも1つのリン光エミッタをドープした少なくとも1つのマトリックス材料から成る発光層を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、式(1)の化合物を含む正孔障壁層を、前記発光層と前記陰極との間に組み込んだことを特徴とする有機エレクロトルミネセンスデバイス。
【化1】

(式中、以下を、用いられる記号および添え字に適用する。すなわち、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはCRであり、但し、少なくとも2つの、最大で4つのQは、窒素を表わし、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、NO、CN、N(R、1〜40のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−または−NR−により置き換えられてもよく、また、1以上のH原子は、Fまたは芳香族基Rにより置き換えられてもよい)、またはそれぞれ1〜40の芳香族C原子を有する芳香族環構造若しくは複素環式芳香族環構造、若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(ここで、1以上のH原子は、F、Cl、BrまたはIにより置き換えられてもよく、または、これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい(ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環または多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい))、またはそれぞれ1〜40の芳香族C原子を有する、二価の基−Z−を介して結合された芳香族環構造若しくは複素環式芳香族環構造、若しくは1〜40の芳香族C原子を有するアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(ここで、1以上のH原子は、F、Cl、BrまたはIにより置き換えられてもよく、または、これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい(ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環のまたは多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい))であり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜20のC原子を有する脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環式芳香族炭化水素基(ここで、複数の置換基R、またはRとRは、さらなる単環または多環の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよい)であり、
Zは、出現毎に同一であるか異なり、1〜40のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状の、好ましくは共役基であり、これは、好ましくは、2つの他の置換基と共役しており、ここで、式(1)の基と芳香族基を結ぶZにおける原子の数は、好ましくは偶数であり、ここで、1以上の非隣接のC原子は、−O−、−S−若しくは−NRにより置き換えられてもよく、または1以上のC原子は、R基またはハロゲンにより置換されていてもよく、
但し、Rは、置換または無置換フェニルピリジンを含まない)。
【請求項2】
正孔注入層、および/または正孔輸送層、および/または電子注入層、および/または電子輸送層が存在することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項3】
前記正孔障壁層が、少なくとも50%の式(1)の化合物を含むことを特徴とする請求項1および/または2に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項4】
前記正孔障壁層が、式(1)の化合物のみから成ることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項5】
前記式(1)の構造が、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、または1,3,5−トリアジンの群から選択されることを特徴とする請求項1〜4の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項6】
前記式(1)の構造が、1,2,4−トリアジンまたは1,3,5−トリアジンの群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項7】
前記正孔障壁材料が、1を超える式(1)の単位を含むことを特徴とする請求項1〜6の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項8】
前記正孔障壁材料の分子が、非平面構造を有することを特徴とする請求項1〜7の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項9】
前記正孔障壁材料における置換基Rの少なくとも1つが、少なくとも1つのsp混成炭素原子を含むことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項10】
前記sp混成炭素原子が、第四級炭素原子であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項11】
前記式(1)の化合物において、9,9’−スピロビフルオレン誘導体、9,9−二置換フルオレン誘導体、6,6−および/若しくは12,12−二置換若しくは四置換インデノフルオレン誘導体、テトラアリールメタン誘導体、またはトリプチセン誘導体が、R基の少なくとも1つの中に存在することを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項12】
前記式(1)の化合物において、9,9’−スピロビフルオレン誘導体が、R基の少なくとも1つの中に存在することを特徴とする請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項13】
前記式(1)の化合物のガラス転移温度が、>100℃であることを特徴とする請求項1〜12の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項14】
前記正孔障壁層の層の厚さが、1〜50nmであることを特徴とする請求項1〜13の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項15】
前記リン光エミッタのためのマトリックスが、カルバゾール、ケトン、イミン、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、ホスフィンセレニド、ホスファゼン、スルホン、スルホキシド、シラン、多座金属錯体、またはスピロビフルオレンに基づくオリゴフェニレンのクラスから選択されることを特徴とする請求項1〜14の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項16】
前記リン光エミッタが、36よりも大きく84未満の原子番号を有する少なくとも1つの元素を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜15の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項17】
前記リン光エミッタが、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金およびユーロピウム元素から選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項16に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項18】
1以上の層を、昇華プロセスによりコーティングすることを特徴とする請求項1〜17の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項19】
1以上の層を、OVPD(organic vapour phase deposition)(有機気相成長)プロセスによりコーティングする、またはキャリアガス昇華を用いてコーティングすることを特徴とする請求項1〜17の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項20】
1以上の層を、印刷法によりコーティングすることを特徴とする請求項1〜17の一項以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項21】
有機トランジスタ、有機集積回路、有機太陽電池、有機レーザーダイオードまたは光受容器についての、請求項1〜17の一項以上に記載の電子デバイスの設計の使用。
【請求項22】
少なくとも1つの9,9’−スピロビフルオレン単位を含み、少なくとも1つのトリアジン単位が、9,9’−スピロビフルオレンに結合していることを特徴とする式(2)の化合物。
【化2】

(式中、RおよびRは、請求項1において定義したものと同じ意味を有し、他の記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはCRであり、但し、3つのQは、窒素を表わし、および2つのQは、CRを表わし、
R’は、出現毎に同一であるか異なり、RまたはF、Cl、Br、I、B(R、またはB(ORであり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2または3であり。
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、但し、p=1の場合には、nは4であってはならず、
pは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である)。
【請求項23】
1,2,4−トリアジンまたは1,3,5−トリアジンを含むことを特徴とする請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記記号および添え字に、以下の、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10の芳香族C原子を有する芳香族環構造または複素環式芳香族環構造(これは、1以上の非芳香族R基により置換されていてもよい(ここで、同じ環上および異なる環上双方の複数の置換基Rは、互いに、単環のまたは多環の、脂肪族または芳香族環構造を形成していてもよい))であり、
R’は、出現毎に同一であるか異なり、R、1〜10のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状のアルキル基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、または−NR−、またはBr、IまたはB(ORにより置き換えられてもよい)であり、
mは、0であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
他の記号および添え字は、式(1)および(2)において上で定義した通りであること
が適用されることを特徴とする請求項22および/または23に記載の化合物。
【請求項25】
2つのトリアジン単位が存在し、双方が、スピロビフルオレンの同じフルオレンサブユニットに結合していることを特徴とする請求項22〜24の一項以上に記載の化合物。
【請求項26】
請求項22〜25の一項以上に記載の化合物の1以上を含むポリマーまたはデンドリマー。
【請求項27】
電子デバイスにおける、請求項22〜26の一項以上に記載の化合物、ポリマーまたはデンドリマーの使用。
【請求項28】
請求項22〜26の一項以上に記載の少なくとも1つの化合物、ポリマーまたはデンドリマーを含む電子デバイス。
【請求項29】
有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機集積回路、有機レーザーダイオードまたは有機光受容器であることを特徴とする請求項28に記載の電子デバイス。

【公表番号】特表2007−520875(P2007−520875A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540365(P2006−540365)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013314
【国際公開番号】WO2005/053055
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】