説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を向上するために、隙間や気泡といった水蒸気の通り道を作らない封止方法を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41が形成された第一の基材10と、基材12上に接着層51が形成された第二の基材20とを接着層51を介して貼り合わせ、前記第一の基材10と第二の基材20とを加熱圧着手段に超音波振動を付与しながら接着することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法とそたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビやパソコンモニタ、携帯電話等の携帯端末などに使用されるフラットパネルディスプレイや、面発光光源、照明、発光型広告体などとして、幅広い用途が期待される有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、広視野角、応答速度が速い、低消費電力などの利点から、ブラウン管や液晶ディスプレイに変わるフラットパネルディスプレイとして期待されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極層と陰極層との間に有機発光媒体層を挟持した構造であり、両電極間に電圧を印加し、電流を流すことにより有機発光媒体層で発光が生じる自発光型の表示素子である。
【0004】
有機発光媒体層は、通常機能分離された複数の層から構成され、その典型的な例としては、正孔注入層に銅フタロシアニン、正孔輸送層にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、蛍光体層にトリス(8−キノリノール)アルミニウムなどが積層された低分子型有機発光媒体層や、ポリチオフェン誘導体、ポリアルキルフルオレン誘導体などが積層された高分子型有機発光媒体層がある。
【0005】
陰極層は、アルミニウムや銀などの金属が用いられるが、隣接する有機発光媒体層によっては、カルシウムやバリウム、リチウムといった電子注入層が必要である。そのため有機EL素子は、大気中の水分による劣化を起こし易く、ダークスポットと呼ばれる非発光部が発生し、拡大するといった現象が観察される。
この問題を解決するために、乾燥窒素雰囲気下で金属箔やガラス板などを有機エレクトロルミネッセンス素子に貼り合せる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−182759号公報
【特許文献2】特開2004−103471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの封止技術の課題は、ガラス板や金属箔からの水蒸気透過がほぼ無視できることから、接着性樹脂層の水分透過を抑制することにある。特に、加熱硬化時には接着性樹脂層と基材の界面に応力が生じやすく微小な隙間が生じやすいといった問題や、樹脂をフィルタリングや攪拌、塗布する際に樹脂中に微小な気泡が混入するといった問題などがある。
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を向上するために、隙間や気泡といった水蒸気の通り道を作らない封止方法を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するために、まず請求項1においては、少なくとも基材上に
陽極層、有機発光媒体層、陰極層を有する第一の基材と、基材上に接着層が形成された第二の基材とを接着して有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第一の基材と第二の基材とを加熱圧着手段に超音波振動を付与しながら接着することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法としたものである。
【0008】
また、請求項2においては、前記加熱圧着手段が、熱源を有するゴムロールであることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法としたものである。
【0009】
また、請求項3においては、前記加熱圧着手段が、プレートによる加熱と、圧力差により膨張したゴムシートによるダイアフラム式圧着であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法としたものである。
【0010】
また、請求項4においては、減圧雰囲気下で接着することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法としたものである。
【0011】
また、請求項5においては、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いて、製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子としたものである。
【0012】
また、請求項6においては、前記陰極層上に保護層を設けたことを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネセンス素子としたものである。
【0013】
また、請求項7においては、前記接着層が、熱可塑性または熱硬化性を有する接着性樹脂であることを特徴とする請求項5または6記載の有機エレクトロルミネセンス素子としたものである。
【0014】
さらにまた、請求項8においては、前記接着層が、少なくともエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネセンス素子としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着層と基材界面に微小な隙間を作らず、接着層中に微小気泡を発生させることなく貼り合せすることができるため、長期にわたり水分による劣化を抑制できる有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一実施例を示す模式構成断面図である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子100は、透光性と絶縁性を有する基板からなる基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41からなる第1基材10と、透光性と絶縁性を有する基板からなる基材12上に接着層51が形成された第2基材20とを積層して一体化構造にした有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子100は、後記するように第1基材10と第2基材20とを加熱圧着手段にて超音波振動を付与しながら加熱圧着するため、接着層
界面の微小隙間の除去、接着層中の気泡除去などの効果が得られ、信頼性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。





図2(a)〜(f)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の一実施例を示す模式構成断面図である。
有機エレクトロルミネッセンス素子としては、基材/陽極層/有機発光媒体層/陰極層/保護層/接着層/基材の構成例について説明するが、この構成に限定されるものではない。
【0018】
まず、基材11上に陽極層21を形成し、必要に応じてパターニングを行う(図2(a)参照)。
基材11の材料としては、後記する基材12との兼ね合いで、少なくとも一方の基材が透光性と絶縁性を有する基板であれば如何なる基材も使用することができる。例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。
【0019】
また、これら基材11及び12は、必要に応じて、薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、駆動用基板として用いても良い。TFTの材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の有機TFTを用いてもよく、アモルファスシリコンやポリシリコンTFTを用いてもよい。
【0020】
また、これらの基材11及び12は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基材内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基材11及び12上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施すことが好ましい。また、これら基材11及び12には、必要に応じてカラーフィルター層や光散乱層、光偏向層などを設けてもよい。
【0021】
陽極層21としては、後記する陰極層22との兼ね合いで、少なくとも陰極層とどちらか一方が透光性であれば良く、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。
また、必要に応じて、陽極層21の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。
陽極層21の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。
【0022】
また、陽極層21は、必要に応じてパターニングを行う。パターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。
【0023】
次に、有機発光媒体層31を形成する(図2(b)参照)。
有機発光媒体層31としては、発光物質を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔(電子)注入機能と正孔(電子)輸送機能を分けたり、正孔(電子)の輸送をプロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。
【0024】
正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0025】
発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることができる。
【0026】
電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0027】
有機発光媒体層4の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50〜150nmである。特に、高分子EL素子の正孔輸送材料は、基材や陽極層の表面突起を覆う効果が大きく、50〜100nm程度厚い膜を成膜
することがより好ましい。
【0028】
有機発光媒体層4の形成方法としては、材料に応じて、真空蒸着法や、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法やインクジェット法などを用いることができる。高分子発光媒体層を溶液化する際には、形成方法に応じて、溶剤の蒸気圧、固形分比、粘度などを制御することが好ましい。溶剤としては、水、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの単独溶媒でも、混合溶媒でも良い。
また、塗工性向上のために、必要に応じて界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適量混合することがより好ましい。塗布液の乾燥方法としては、EL特性に支障のない程度に溶剤を取り除ければ良く、加熱しても、減圧しても、加熱減圧しても良い。
【0029】
次に、陰極層22を形成し、必要に応じてパターニングを行う(図2(c)参照)。
陰極層22の材料としては、有機発光媒体層31への電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg,Al, Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0030】
陰極層22を透光性電極層として利用する場合には、仕事関数が低いLi,Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、前記有機発光媒体層31に、仕事関数が低いLi,Caなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属酸化物を積層してもよい。
【0031】
陰極層22の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。陰極層22の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。また、陰極層22を透光性電極層として利用する場合、CaやLiなどの金属材料を用いる場合の膜厚は0.1〜10nm程度が望ましい。
【0032】
次に、陰極層22及び有機発光媒体層31上に保護層41を形成し、基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41が形成された第一の基材10を作製する(図2(d)参照)。
保護層41は、後記する第1基材と第2基材とを超音波振動を付与しながら加熱圧着する際に、有機発光媒体層31及び陰極層22を保護するためのものである。
保護層41の材料としては、絶縁材料で、乾式法で形成できる材料が好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素などの金属酸化物や、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、弗化アルミニウム、弗化マグネシウムなどの金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化クロムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物を用いることができる。
保護層41の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの成膜法を用いることができる。保護層6の膜厚としては特に制限はないが、10〜1000nm程度が望ましく、
さらには陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22の段差を保護するために、100nm以上の厚膜を形成することがより好ましい。
【0033】
次に、基材12に所定厚の接着層51を形成し、第二の基材20を作製する(図2(e)参照)。
接着層51の材料としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを単層もしくは積層して用いることができる。特に、耐湿性、耐水性に優れ、硬化時の収縮が少ないエポキシ系熱硬化型接着性樹脂を用いることが好ましい。
また、接着層51内部の含有水分を除去するために、酸化バリウムや酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入してもよい。
接着層51の形成方法としては、材料に応じて、ロールコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、スプレーコートなどのコーティング法、印刷法及びノズル塗布等を適宜選択して膜形成する。また、転写法などを用いて基材11または12上に形成しても良い。
【0034】
次に、第一の基材10と第二の基材20とを接着層51を介して重ね合わせ、加熱圧着手段にて超音波振動を付与しながら加熱圧着し、有機エレクトロルミネッセンス素子100を得る(図2(f)参照)。
図3(a)〜(c)は、本発明の請求項2及び3に係る加熱圧着手段の一実施例を示す模式構成断面図である。
加熱圧着の方法としては、図3(a)に示す加熱圧着手段81により、熱源を有するゴムロール61間を通して第一の基材10と第二の基材20とを超音波振動を付与しながら加熱圧着する。または。図3(b)に示す加熱圧着手段82により、熱源を有するゴムロール61と加熱されたプレート71間を通して第一の基材10と第二の基材20とを超音波振動を付与しながら加熱圧着する。または、図3(c)に示す加熱圧着手段83により、加熱されたプレート71とゴムシート62間に第一の基材10と第二の基材20とを載置して、大気との圧力差により膨張したゴムシート62により加圧(ダイアフラム式圧着)し、第一の基材10と第二の基材20とを超音波振動を付与しながら加熱圧着する。
超音波振動の周波数は、50kHz以下であれば特に制限はなく、20kHz以下がより好ましい。さらには、複数の周波数を所定の時間毎に切り替え組み合わせて使用することもできる。
また、加熱圧着時に、少なくとも基材11、12間を、真空ポンプ等を用いて減圧することにより、気泡のかみあわせや、水分の付着を防止することができるため、より好ましい。
【0035】
上記したように、加熱圧着手段81、82及び83を用いて、第一の基材10と第二の基材20とを超音波振動を付与しながら加熱圧着することにより、接着層51に気泡を混入することなく、所定の基材11、12間の接着力を有する有機エレクトロルミネッセンス素子100を得ることができる。
また、超音波振動を付与することにより、接着層51と基材11、12との塗れ性向上、界面の微小隙間の除去、接着層中の気泡除去などの効果が得られるため、より好ましい。また、保護層41を設けているため、超音波付与による衝撃で有機EL素子が破壊されるのを防止できる。
【実施例1】
【0036】
まず、ガラス基板からなる基材11上にスパッタリング法でITO膜からなる150nm厚の陽極層21を形成し、フォトリソグラフィー法及びウェットエッチング法によって、陽極層21をパターンニング処理した(図2(a)参照)。
【0037】
次に、スピンコート法により正孔輸送層として20nm厚のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物層と、蛍光体層として100nm厚のポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレン ビニレン](MEHPPV)層を順に積層し、有機発光媒体層31を形成した(図2(b)参照)。
【0038】
次に、真空蒸着法により20nm厚のCa層と200nm厚のAg層を順に積層し、陰極層22を形成した(図2(c)参照)。
次に、有機発光媒体層31と陰極層22を被覆するように、窒化珪素膜をして1000nm厚の保護層41を形成し、基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41が形成された第一の基材10aを作製した(図2(d)参照)。
【0039】
次に、ガラス基板からなる基材12に熱硬化型エポキシ接着剤を塗布乾燥させ、接着層51が形成された第二の基材20aを作製した(図2(e)参照)。
【0040】
次に、第一の基材10aと第二の基材20aとを接着層51を介して重ね合わせ、加熱圧着手段83を用いて、90℃に加熱したプレート71とゴムシート62との間を減圧に保ちながら、ゴムシート62の上部を大気に開放することによりゴムシート62を膨張させ、加熱されたプレート71に超音波振動(15kHz)を付与しながら加熱圧着することにより、第一の基材10aと第二の基材20aとを貼り合せ、有機エレクトロルミネッセンス素子100aを得た(図2(f)参照)。
【0041】
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子100aを、60℃90RH%恒温恒湿層中で1000時間保存した結果、接着層51の端部から侵入した水分が、陰極層22の端部(封止額縁5mm)に到達せず、端部劣化やダークスポットの拡大は観察されなかった。
【実施例2】
【0042】
まず、実施例1と同様の材料、方法で、ガラス基板からなる基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41を形成し、第一の基材10aを作製した(図2(d)参照)。
【0043】
次に、50μm厚のアルミニウム箔からなる基材12に熱硬化型エポキシ接着剤を塗布乾燥させ、接着層51が形成された第二の基材20bを作製した(図2(e)参照)。
【0044】
次に、第一の基材10aと第二の基材20bとを接着層51を介して重ね合わせ、加熱圧着手段81を用いて、減圧環境下で90℃に加熱したゴムロール61間を通して、加熱されたゴムロール61に超音波振動(15kHz)を付与しながら加熱圧着することにより、第一の基材10aと第二の基材20bとを貼り合せ、有機エレクトロルミネッセンス素子100bを得た(図2(f)参照)。
【0045】
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子100bを、60℃90RH%恒温恒湿層中で1000時間保存した結果、接着層51の端部から侵入した水分が、陰極層22の端部(封止額縁5mm)に到達せず、端部劣化やダークスポットの拡大は観察されなかった。
【実施例3】
【0046】
本実施例3は比較のための例である。
<比較例1>
まず、実施例1と同様の材料、方法で、ガラス基板からなる基材11上に陽極層21、有
機発光媒体層31、陰極層22及び保護層41を形成し、第一の基材10aを作製した(図2(d)参照)。
【0047】
次に、ガラス基板からなる基材12に乾燥窒素雰囲気中で、熱硬化型エポキシ接着剤を塗布乾燥させ、接着層51aが形成された第二の基材20cを作製した(図2(e)参照)。
次に、90℃に加熱したプレート71に第一の基材10aと第二の基材20cとを接着層51を介して重ね合わせ、特に加圧することなく、第二の基材20cの自重のみで貼り合せを行い、接着層51を加熱硬化させ、有機エレクトロルミネッセンス素子100cを得た(図2(e)参照)。
【0048】
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子100cを、60℃90RH%恒温恒湿層中で1000時間保存した結果、接着層51aの端部から侵入した水分が、陰極層22の端部(封止額縁5mm)に到達し、発光画素の15%が劣化し、非発光状態となった。また、部分的な気泡混入によりダークスポットが拡大した。
【実施例4】
【0049】
本実施例4は比較のための例である。
<比較例2>
まず、実施例1と同様の材料、方法で、ガラス基板からなる基材11上に陽極層21、有機発光媒体層31及び陰極層22を形成し、第一の基材10bを作製した(図2(d)参照)。
【0050】
次に、ガラス基板からなる基材12に熱硬化型エポキシ接着剤を塗布乾燥させ、接着層51が形成された第二の基材20aを作製した(図2(e)参照)。
【0051】
次に、第一の基材10bと第二の基材20aとを接着層51を介して重ね合わせ、加熱圧着手段83を用いて、90℃に加熱したプレート71とゴムシート62との間を減圧に保ちながら、ゴムシート62の上部を大気に開放することによりゴムシート62を膨張させ、加熱されたプレート71に超音波振動(15kHz)を付与しながら加熱圧着することにより、第一の基材10bと第二の基材20aとを貼り合せ、有機エレクトロルミネッセンス素子100dを得た(図2(f)参照)。
【0052】
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子100dは、超音波による衝撃のため、部分的に有機エレクトロルミネッセンス素子が破壊され、ダークスポットの発生や、電極間ショートを起こした。ただし、60℃90RH%恒温恒湿層中で1000時間保存した結果、接着層51の端部から侵入した水分が、陰極層22の端部(封止額縁5mm)に到達せず、端部劣化は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一実施例を示す模式構成断面図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の一例を示す模式構成断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、加熱圧着手段の一実施例を示す構成概略図である。
【符号の説明】
【0054】
10、10a、10b……第一の基材
11……基材
20、20a、20b、20c……第二の基材
21……陽極層
22……陰極層
31……有機発光媒体層
41……保護層
51……接着層
61……ゴムロール
62……ゴムシート
71……プレート
81、82、83……加熱圧着手段
100、100a、100b、100c、100d……有機エレクトロルミネッセンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材上に陽極層、有機発光媒体層、陰極層を有する第一の基材と、基材上に接着層が形成された第二の基材とを接着して有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第一の基材と第二の基材とを加熱圧着手段に超音波振動を付与しながら接着することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記加熱圧着手段が、熱源を有するゴムロールであることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱圧着手段が、プレートによる加熱と、圧力差により膨張したゴムシートによるダイアフラム式圧着であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
減圧雰囲気下で接着することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いて、製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項6】
前記陰極層上に保護層を設けたことを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項7】
前記接着層が、熱可塑性または熱硬化性を有する接着性樹脂であることを特徴とする請求項5または6記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項8】
前記接着層が、少なくともエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−172729(P2006−172729A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359500(P2004−359500)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】