説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

【課題】製造が容易で、発光性能および信頼性の高い有機EL素子、その製造方法、及び有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL素子は、基板と、前記基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた下地層と、基板上に設定される画素領域を取り囲むようにして、前記下地層上に配置された隔壁と、前記画素領域に設けられた有機発光層と、前記有機発光層を介在させて第1電極に対向して設けられた第2電極とを備える有機エレクトロルミネッセンスであり、前記下地層は、前記第1電極の表面に存在する基に対する反応性基Xを有する化合物を含有する未処理層を、第1電極上に形成し、該未処理層をUVオゾン処理することにより形成された第1の層と、水に不溶性の有機物から構成され、前記第1の層上に設けられた第2の層とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)及びその製造方法、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の1種である有機EL素子は、一対の電極と、該電極間に配置される有機発光層とを含んで構成される。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに陰極から電子が注入され、これら電子と正孔が有機発光層で結合することによって発光する。
【0003】
有機EL素子は通常、一対の電極と有機発光層のみから構成されるわけではなく、素子特性の向上を目的として、有機発光層とは異なる所定の層をさらに備える。例えば有機発光層への正孔注入効率を高めるために、陽極と有機発光層との間に正孔注入層が設けられることがある。このような正孔注入層として例えばポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)からなる層を備える有機EL素子が開示されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235128号公報
【特許文献2】特表2000−514590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEDOT/PSSからなる正孔注入層は、素子特性の向上という点では有用ではあるが、素子製造上の観点からは以下のような問題がある。
【0006】
複数の有機EL素子を画素光源として備える表示装置では、複数の有機EL素子を画素ごとに区分けする隔壁が格子状に形成されているが、この隔壁を形成する工程において、PEDOT/PSSからなる正孔注入層が損傷を受けるおそれがある。
【0007】
すなわち、隔壁は通常フォトリソグラフィによってパターン形成されるが、フォトリソグラフィに用いられる溶剤にPEDOT/PSSが溶解するために、隔壁を形成する工程において正孔注入層が損傷を受けるおそれがある。さらに正孔注入層上に形成される有機発光層などを塗布法によって形成する場合、その際に用いられる塗布液に正孔注入層の一部が溶出することがある。このため正孔注入層の膜厚が不均一になり、結果として素子特性にバラツキが生じることがある。また正孔注入層が溶出することによって、最適な条件として設計された正孔注入層を設計通りに形成することができず、設計通りの素子特性を発揮する有機EL素子を得ることが困難である。さらに正孔注入層の膜厚が不均一になると、この正孔注入層上に形成される有機発光層などの性状にも悪影響を及ぼすことがある。
【0008】
このようにPEDOT/PSSを用いて正孔注入層を形成することにより、結果として表示品質が不充分な表示装置となるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、製造工程において素子が受けるダメージを軽減することのできる有機EL素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明では、下記の構成を備える有機EL素子、その製造方法、及び有機EL表示装置を提供する。
【0011】
[1] 基板と、前記基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた下地層と、基板上に設定される画素領域を取り囲むようにして、前記下地層上に配置された隔壁と、前記画素領域に設けられた有機発光層と、前記有機発光層を介在させて第1電極に対向して設けられた第2電極とを備える有機エレクトロルミネッセンスであり、前記下地層は、前記第1電極の表面に存在する基に対する反応性基Xを有する化合物を含有する未処理層を、第1電極上に形成し、該未処理層をUVオゾン処理することにより形成された第1の層と、水に不溶性の有機物から構成され、前記第1の層上に設けられた第2の層とを含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0012】
[2] 前記反応性基Xを有する化合物が、下記式(1)で表される化合物及びその部分加水分解縮合物、下記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに下記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、上記[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
1(X)v1(Ra)u-v1 ・・・(1)
−M2(X)v2(Ra)u-v2-1 ・・・(2)
−[Si(X)w(Ra)2-w−O]− ・・・(3)
(式(1)中のM1は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族もしくは15族に属する金属原子、又は炭素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、もしくは鉛原子を表す。式(2)中のM2は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する金属原子を表す。全式に共通するXは、陽極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基(反応性を有する基又は原子)を表す。また、全式に共通するRaは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。Raで表される基は、置換基を有していてもよい。v1は、1以上u以下の整数である。v2は、1以上u−1以下の整数である。wは、1又は2である。uは、M1又はM2の原子価を表す。Xが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0013】
[3] 前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(2)で表され、Mがケイ素原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
[4] 前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(1)で表され、M1がチタン原子である化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(2)で表され、M2がチタン原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
[5] 前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(1)で表され、M1がケイ素原子である化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
[6] 前記第1の層の膜厚が10nm以下である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
[7] 前記水に不溶性の有機物は、架橋した高分子化合物である、上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
[8] 第2の層は、陽極としての第1電極の材料とのHOMOのエネルギーレベルの差が0.5eV以下である材料を含む、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
[9] 第1電極が設けられた基板を用意する工程と、前記第1電極上に下地層を設ける工程と、前記基板上に設定される画素領域を取り囲むように、前記下地層上に隔壁を設ける工程と、前記画素領域に有機発光層を設ける工程と、前記有機発光層を介在させて、前記第1電極と対向するように第2電極を設ける工程とを有し、前記下地層を設ける工程が、前記第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物を含有する溶液を用いて、前記第1電極上に塗布法により未処理層を形成した後、該未処理層をUVオゾン処理により改質して第1の層を得る工程と、水に不溶性の有機物から構成される前記第2の層を前記第1の層上に形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0020】
[10] 前記UVオゾン処理におけるUVの照射量が1J/cm以上である、上記[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0021】
[11] 前記未処理層を形成する前に前記第2電極をUVオゾン処理する、上記[9]又は[10]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0022】
[12] 前記水に不溶性の有機物は、架橋した高分子化合物である、上記[9]〜[11]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
【0023】
[13] 前記隔壁に囲まれる領域に設ける層を塗布法により形成する、上記[9]〜[12]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0024】
[14] 上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有機EL素子は、製造工程において受けるダメージが抑制された有機EL素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係る有機EL素子の一実施形態における、画素領域の一部を示す図2のA−A線に沿う矢視断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る有機EL装置の一実施形態における、電極配線等を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の有機EL素子製造の一実施形態における一工程を示す図である。
【図4】図4は、本発明の有機EL素子製造の一実施形態における一工程を示す図である。
【図5】図5は、本発明の有機EL素子製造の一実施形態における一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[用語の説明]
以下、本明細書において共通して用いられる用語を説明する。本明細書において、「Cm〜Cn」(m、nはm<nを満たす正の整数である)という用語は、この用語とともに記載された基の炭素数がm〜nであることを表す。
【0028】
(ハロゲン原子)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0029】
(アルキル基)
アルキル基は、非置換のアルキル基、及びハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基等で置換されたアルキル基を意味し、直鎖状アルキル基及び環状アルキル基(シクロアルキル基)の両方を含む。アルキル基は分岐を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。
【0030】
かかるアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、アミノプロピル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、メルカプトプロピル基、メルカプトオクチル基、メルカプトデシル基等が例示される。C1〜C12アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0031】
(アルコキシ基)
アルコキシ基は、非置換のアルコキシ基、及びハロゲン原子、アルコキシ基等で置換されたアルコキシ基を意味し、直鎖状アルコキシ基及び環状アルコキシ基(シクロアルコキシ基)の両方を含む。アルコキシ基は分岐を有していてもよい。また、アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。
【0032】
かかるアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が例示される。C1〜C12アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
(アルキルチオ基)
アルキルチオ基は、非置換のアルキルチオ基、及びハロゲン原子等で置換されたアルキルチオ基を意味し、直鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基(シクロアルキルチオ基)の両方を含む。アルキルチオ基は分岐を有していてもよい。また、アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。
【0034】
かかるアルキルチオ基として、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が例示される。C1〜C12アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基等が挙げられる。
【0035】
(アリール基)
アリール基は、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団であり、非置換のアリール基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリール基を意味する。アリール基には、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の基、例えば、ビニレン基等のアルケニレン基を介して結合したものも含まれる。また、アリール基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0036】
かかるアリール基として、具体的には、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0037】
上記C1〜C12アルコキシフェニル基として、具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、i−プロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、i−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基等が例示される。
【0038】
上記C1〜C12アルキルフェニル基として、具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が例示される。
【0039】
(アリールオキシ基)
アリールオキシ基は、非置換のアリールオキシ基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールオキシ基を意味する。また、アリールオキシ基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0040】
かかるアリールオキシ基として、具体例には、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0041】
上記C1〜C12アルコキシフェノキシ基として、具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、i−プロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、i−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基等が例示される。
【0042】
上記C1〜C12アルキルフェノキシ基として、具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が例示される。
【0043】
(アリールチオ基)
アリールチオ基は、非置換のアリールチオ基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールチオ基を意味する。また、アリールチオ基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0044】
かかるアリールチオ基として、具体的には、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が例示される。
【0045】
(アリールアルキル基)
アリールアルキル基は、非置換のアリールアルキル基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキル基を意味する。また、アリールアルキル基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0046】
かかるアリールアルキル基として、具体的には、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が例示される。
【0047】
(アリールアルコキシ基)
アリールアルコキシ基は、非置換のアリールアルコキシ基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルコキシ基を意味する。また、アリールアルコキシ基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0048】
かかるアリールアルコキシ基として、具体的には、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が例示される。
【0049】
(アリールアルキルチオ基)
アリールアルキルチオ基は、非置換のアリールアルキルチオ基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキルチオ基を意味する。また、アリールアルキルチオ基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
【0050】
かかるアリールアルキルチオ基として、具体的には、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等が例示される。
【0051】
(アリールアルケニル基)
アリールアルケニル基は、非置換のアリールアルケニル基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルケニル基を意味する。また、アリールアルケニル基の炭素数は、通常8〜60、好ましくは8〜48、より好ましくは8〜30程度である。
【0052】
かかるアリールアルケニル基として、具体例には、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0053】
上記C2〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
【0054】
(アリールアルキニル基)
アリールアルキニル基は、非置換のアリールアルキニル基、及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキニル基を意味する。また、アリールアルキニル基の炭素数は、通常8〜60、好ましくは8〜48、より好ましくは8〜30程度である。
【0055】
かかるアリールアルキニル基として、具体例には、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0056】
上記C2〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基等が挙げられる。
【0057】
(複素環チオ基)
複素環チオ基は、メルカプト基の水素原子が1価の複素環基で置換された基を意味する。複素環チオ基としては、例えば、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基等のヘテロアリールチオ基等が挙げられる。
【0058】
上記1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、水素原子がアルキル基等の置換基で置換された1価の複素環基、又は非置換の1価の複素環基を意味する。なお以下において「置換」は水素原子を置換することを意味する。1価の複素環基の炭素数は、置換基の炭素数を含めないで、通常4〜60、好ましくは4〜30、より好ましくは4〜20程度である。
【0059】
上記複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。
【0060】
かかる1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、中でもチエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0061】
(アミノ基)
アミノ基は、非置換のアミノ基、及びアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1又は2個の置換基で置換されたアミノ基(以下、置換アミノ基という。)を意味する。上記置換基は更に置換基(以下、二次置換基という場合がある。)を有していてもよい。また、置換アミノ基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは2〜48、より好ましくは2〜40程度である。
【0062】
上記置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0063】
(シリル基)
シリル基は、非置換のシリル基、及びアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたシリル基(以下、置換シリル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。
上記置換シリル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは3〜48、より好ましくは3〜40程度である。
【0064】
かかる置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0065】
(アシル基)
アシル基は、非置換のアシル基、及びハロゲン原子等で置換されたアシル基を意味する。また、アシル基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。
【0066】
かかるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0067】
(アシルオキシ基)
アシルオキシ基は、非置換のアシルオキシ基、及びハロゲン原子等で置換されたアシルオキシ基を意味する。また、アシルオキシ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。
【0068】
かかるアシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0069】
(イミン残基)
イミン残基は、式:H−N=C<及び式:−N=CH−の少なくとも一方で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。
【0070】
このようなイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0071】
イミン残基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。かかるイミン残基としては、例えば、一般式:−CR'=N−R''又は一般式:−N=C(R'')2(式中、R'は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、R''はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、ただし、R''が2個存在する場合、2個のR''は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基等が挙げられる。
イミン残基の具体例としては、以下の構造式で示される基等が挙げられる。
【0072】
【化1】

(式中、Meはメチル基を示す。)
【0073】
(アミド基)
アミド基は、非置換のアミド基、及びハロゲン原子等で置換されたアミド基を意味する。また、アミド基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。
【0074】
かかるアミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0075】
(酸イミド基)
酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基を意味する。酸イミド基の炭素数は、通常4〜20、好ましくは4〜18、より好ましくは4〜16程度である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基等が挙げられる。
【0076】
【化2】

(式中、Meはメチル基を示す。)
【0077】
(カルボキシル基)
カルボキシル基は、非置換のカルボキシル基、並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基等の置換基で置換されたカルボキシル基(以下、置換カルボキシル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。
上記置換カルボキシル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは2〜48、より好ましくは2〜45程度である。
【0078】
かかる置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0079】
本発明の有機EL素子は、基板と、前記基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた下地層と、画素領域を取り囲むようにして前記下地層上に配置された隔壁と、前記画素領域に設けられた有機発光層と、前記有機発光層を介在させて第1電極に対向して設けられた第2電極とを含んで構成される。また前記下地層は、前記第1電極の表面に存在する基に対する反応性基Xを有する化合物を含有する未処理層を、第1電極上に形成し、該未処理層をUVオゾン処理することにより形成された第1の層と、水に不溶性の有機物から構成され、前記第1の層上に設けられた第2の層とを含んで構成される。
【0080】
また本発明の有機EL素子の製造方法は、第1電極が設けられた基板を用意する工程と、前記第1電極上に下地層を設ける工程と、前記基板上に設定される画素領域を取り囲むように、前記下地層上に隔壁を設ける工程と、前記画素領域に有機発光層を設ける工程と、前記有機発光層を介在させて、前記第1電極と対向するように第2電極を設ける工程とを有し、前記下地層を設ける工程が、前記第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物を含有する溶液を用いて、前記第1電極上に塗布法により未処理層を形成した後、該未処理層をUVオゾン処理により改質して第1の層を得る工程と、水に不溶性の有機物から構成される前記第2の層を前記第1の層上に形成する工程とを有する。
【0081】
本発明は、前記第1電極上に設けられる第1の層と該第1の層上に設けられる第2の層とを含んで構成される下地層を特定の材料により構成することに大きな特徴がある。
【0082】
以下に本発明の有機EL素子及び有機EL素子の製造方法の一実施形態について説明する。なお本明細書中の説明において、基板の厚み方向の一方を上方(または上)といい、基板の厚み方向の他方を下方(または下)という場合がある。この上下関係は説明の便宜上設定したもので、必ずしも実際に有機EL素子が製造される工程および使用される状況に適用されるものではない。また本明細書では、「透明な基板」、「透明な電極」とは、入射した光の少なくとも一部が透過する基板、電極をそれぞれ意味する。
【0083】
本発明の有機EL素子を複数備えた有機エレクトルミネッセンス装置(以下、有機EL装置という場合がある)の一実施形態を図1、図2に示す。図1は、複数の有機EL素子が搭載された有機EL装置の一部を示すものであり、図2の斜視図における切断面線A−Aから見た断面図である。図2は、有機EL装置60における基板及び電極の位置関係を模式的に示す斜視図である。
【0084】
図2に示す有機EL装置60は、いわゆるパッシブマトリクス型に構成されている。パッシブマトリクス型の有機EL装置60では、基板1上において、線状に延びる複数本の第1電極2が所定の間隔をあけて平行に設けられる。また平面視で前記第1電極2に直交するように線状に延びる複数本の第2電極7が所定の間隔をあけて平行に設けられている。すなわち平面視で第1電極2及び第2電極7が格子状に設けられる。第1電極2と第2電極7の間には、下地層3、有機発光層5などを含む積層体が設けられる。第1および第2電極2,7と、該電極に挟持される積層体とによって有機EL素子が構成される。平面視で第1及び第2電極2,7が交差する領域に、後述する隔壁により規定される画素領域が設定され、この画素領域に前述した積層体が設けられる。なお、各電極に接続し、所定のタイミングで所定の電極に所定の電圧を印加する駆動回路(不図示)を有機EL装置60はさらに備える。
【0085】
下地層3は、基板1の厚み方向の一方から第1電極2および基板1を覆って形成される。本実施形態における下地層3は、平面視で第1及び第2電極2,7の交差の最外周を内包するマトリクス領域12の全領域にわたって連続的に形成されている。なお下地層3は、第1電極上において画素領域にのみ形成されてもよい。例えば第1電極上において、各第1電極2に沿って島状に、下地層3を離散的に形成してもよいが、蒸着法やスピンコート法などによって下地層3を基板1上に連続的に形成する方が製造上は簡易である。
【0086】
下地層3上には、基板の厚み方向の一方から見て各画素領域R1を取り囲むように隔壁4が形成される(図1参照)。各画素領域R1は、平面視で格子状に配置される第1及び第2電極2,7が交差する領域であるため、この各画素領域R1を取り囲む隔壁4は、下地層3上において格子状に設けられる。
【0087】
画素領域R1(隔壁で取り囲まれた領域)には、前述したように有機発光層5が設けられる。有機発光層5は有機化合物を含んで構成される。この有機発光層5は、蒸着法などのドライプロセス、またはインキジェット法などのウエットプロセスによって形成され、成膜が簡易なウエットプロセスによって形成することが好ましい。
以下に下地層を中心にして、各層の構成およびその成膜方法についてさらに説明する。
【0088】
(基板)
本発明の有機EL素子が形成される基板は、有機EL素子を形成する工程において変化しないものが好ましく、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよい。例えばガラス板、プラスチック板、高分子フィルム、シリコン板、これらを積層したものを基板として用いることができる。
【0089】
(電極)
本発明の有機EL素子は、一対の電極を備える。この一対の電極は、下地層及び有機発光層を介在させて、対向して配置される。一対の電極のうちの、基板寄りに配置される電極を第1電極とし、第1電極よりも基板から離間して配置される電極を第2電極という。これら一対の電極のうちの一方の電極は陽極として機能し、他方の電極は陰極として機能する。第1電極が陽極とすることが多いが、逆に第2電極を陽極とすることもできる。
【0090】
電極の具体的な形状は、前述したパッシブマトリクス型の表示装置用の形状に特に限定されず、例えばアクティブマトリックス型の形状とすることもできる。アクティブマトリックス型の表示装置では、例えば基板上において島状の第1電極がマトリクス状に設けられ、第2電極が平板状に設けられる。
【0091】
有機発光層5から放射される光を外に出射するために、当該有機発光層5を挟む一対の電極のうちの一方の電極は、透明電極によって構成される。本発明の製造方法において、第1電極が設けられた基板を用意する工程では、用意した基板上に第1電極を形成することにより第1電極が設けられた基板を用意してもよいし、第1電極が設けられた基板を市場から入手してもよい。例えば駆動回路および第1電極が予め形成されたTFT(Thin Film Transistor)を市場から入手してもよい。なお第1電極を透明電極とする場合、有機発光層5から放射される光は、第1電極および基板を通して外に出射するため、基板には透明基板を用いる必要がある。他方、第2電極を透明電極とする場合には、基板は不透明であってもよい。
【0092】
第1電極を透明電極とする場合には、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。また第1電極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0093】
第1電極の膜厚は、求められる特性および成膜の簡易さなどを考慮して、適宜決定することができ、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0094】
第1電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0095】
前記第1電極は、当該第1電極上に所期の第1の層を確実に形成するために、第1の層を形成する前に、UVオゾン処理することが好ましい。このUVオゾン処理により、第1の層を構成する化合物に含まれる反応性基Xと第1電極との反応性を向上させることができるものと推測される。
【0096】
(第1電極の表面に存在する基又は原子)
第1電極には導電性の無機酸化物や金属の薄膜が一般的に利用されるため、多くの場合その表面に水酸基を有している。本発明において「第1電極の表面に存在する基」とは、無機酸化物材料からなる第1電極の場合、これらに含まれる酸素が水素と結合したOH等の分極を有する特性基を意味し、有機の導電膜材料からなる第1電極の場合、有機導電膜材料に含まれる極性を有する官能基を意味し、主に上述の水酸基を意味するが、これに限定されるものではなく、第1電極を形成する材料によっては他の基が第1電極の表面に存在する場合もあり、その場合にはそれらの基を意味する。また「第1電極の表面に存在する原子」とは、上記導電性の無機酸化物や金属を構成している原子を意味し、例えば酸素原子を意味する。
【0097】
(下地層)
本発明の有機EL素子において、下地層は、前記第1電極の少なくとも一部の領域上に設けられる。下地層が第1電極の「少なくとも一部の領域上」に設けられるとは、第1電極の上側の面上の少なくとも一部の領域に下地層が存在している領域があることをいう。従って、第1電極の上側の面の全てを下地層が覆っていてもよく、第1電極の上側の面の一部のみを下地層が覆っていてもよい。通常は、第1電極のうち、画素領域に属する部分は、その全面を下地層が覆うよう構成される。
【0098】
下地層の構造を図1に示す実施形態を再び参照して説明する。この例においては、基板1上の上には複数の第1電極2が設けられ、基板1の厚み方向の一方から第1電極2および基板1を覆って形成され、平面視で第1及び第2電極2,7の交差の最外周を内包するマトリクス領域12の全領域にわたって連続的に形成されている。このような構成とすることにより、第1電極2上において均一な厚さを有し、且つ画素領域間における厚さのばらつきの少ない下地層を、スピンコート法などの簡便な塗布法により設けることができる。
【0099】
本発明の有機EL素子においては、上記下地層3は、第1電極2に接する第1の層3aと、該第1の層3a上に形成される第2の層3bを有する。なお下地層3は、第1の層3aと第2の層3bとの間に1層以上の中間層を有していてもよい。下地層3として3層以上の層を設けると、電極と隔壁との間隔が厚くなり、隣接する画素領域とのクロストークが生じるおそれが大きくなるため、下地層3は2層で構成することが好ましい。
【0100】
第1の層3aおよび第2の層3bは、それぞれ所定の機能を発揮し、例えば第1電極が陽極である場合、第1の層3aは正孔注入層、第2の層3bは正孔輸送層として設けられる。また例えば第1電極が陰極である場合、第1の層3aを電子注入層とし、第2の層3bを電子輸送層とすることもできる。
【0101】
(第1の層)
上記第1の層3aは、第1電極2の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物を含有する溶液から薄膜(以下、未処理層と記す場合がある)を、第1電極上に形成し、該薄膜をUVオゾン処理により改質することにより形成されたものである。
【0102】
前記反応性基Xを有する化合物は、好ましくは、下記式(1)で表される化合物及びその部分加水分解縮合物、下記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに下記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
1(X)v1(Ra)u-v1 ・・・(1)
−M2(X)v2(Ra)u-v2-1 ・・・(2)
−[Si(X)w(Ra)2-w−O]− ・・・(3)
(式(1)中のM1は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族もしくは15族に属する金属原子、又は炭素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、もしくは鉛原子を表す。式(2)中のM2は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する金属原子を表す。全式に共通するXは、第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基(反応性を有する基又は原子)を表す。また、全式に共通するRaは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。Raで表される基は、置換基を有していてもよい。v1は、1以上u以下の整数である。v2は、1以上u−1以下の整数である。wは、1又は2である。uは、M1又はM2の原子価を表す。Xが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0103】
前記第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物は、好ましくは、前記式(2)で表され、M2がケイ素原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;前記式(1)で表され、M1がチタン原子である化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(2)で表され、M2がチタン原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;前記式(1)で表され、M1がケイ素原子である化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
前記反応性基Xを有する化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記薄膜(未処理層)を形成するための溶液は、前記反応性基Xを有する化合物以外にも、正孔輸送能を有する化合物等を含有していてもよい。これらの任意成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0105】
上記反応性基Xを有する溶液の塗膜を乾燥することにより前記薄膜(未処理層)が形成されるが、この未処理層の厚さは、通常0.1nm〜10nmであり、好ましくは1.0nm〜10nmである。この未処理層が後述のUVオゾン処理により改質されて第1の層となる。このUVオゾン処理により、正孔注入層として好適に機能する第1の層が得られるが、その改質のメカニズムは明らかでなく、以下のように推定される。
【0106】
未処理層を構成する分子は、当該未処理層を構成する分子の反応性基Xと第1電極表面の分極との静電気的な結合によって、第1電極表面に付着する。また未処理層を構成する分子に含まれる基のうちの反応性基X以外の基は、UVオゾン処理により主鎖から解離するものと考えられる。UVオゾン処理に伴って未処理層において前記反応が起こることにより未処理層が改質されて第1の層となると考えられる。改質された結果として、第1の層は正孔注入特性が良好になるものと考えられる。このような第1の層上に正孔輸送層、発光層などを積層することにより正孔注入特性に優れた有機EL素子が形成されるものと考えられる。また上述のUVオゾン処理の効果は、1分子層の第1の層が第1電極上に形成される条件付近で最も顕著になるものと推定される。
【0107】
第1の層3aの平均膜厚は、10nm以下が好ましいが、この第1の層3aが担う正孔注入性の観点、さらには正孔輸送性の観点から、好ましくは0.1〜10nmであり、より好ましくは1.0〜5.0nmである。第1の層3aの平均膜厚が10nmを超える場合、第1電極2から電荷注入が十分行われず、駆動電圧が上昇したり、耐久性が低下したりすることがある。
【0108】
前記式(1)中の反応性基Xは、第1電極2の表面に存在する基又は原子によって選択することができる。
前記第1電極2が金属又はその酸化物もしくは硫化物である場合には、反応性基Xとしては、水酸基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロカルボニル基(式:−C(O)−Y(式中、Yはハロゲン原子を表す。))で表される基を用いることができる。
【0109】
これらの基は、より具体的には、式:−C(O)−Clで表される基及び式:−C(O)−Brで表される基が好ましい。)、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、リン酸基(式:(HO)2P(O)−O−で表される基)、リン酸エステル基(式:(R1O)2P(O)−O−又は式:(R1O)(HO)P(O)−O−(式中、R1は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。)で表される基)、亜リン酸基(式:(HO)2P−O−で表される基)、亜リン酸エステル基(式:(R1O)2P−O−又は式:(R1O)(HO)P−O−(式中、R1は前記のとおりである。)で表される基)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、複素環チオ基、アミノ基等が例示される。
【0110】
上記反応性基Xが第1電極2の表面に存在する基又は原子と反応することにより、前記式(1)で表される化合物及びその部分加水分解縮合物と第1電極2との間に、共有結合、配位結合、イオン結合等の結合が形成される。したがって、これら化合物を用いて形成される第1の層3aと第1電極2との接着性は大変強いものとなる。
【0111】
第1電極には導電性の無機酸化物や金属の薄膜が一般的に利用されるため、その表面に水酸基を有している場合が多いので、反応性基Xは、水酸基と反応し得る基であることが好ましく、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸基、アミノ基、水酸基等であることが好ましい。
【0112】
なお反応性基Xは、第1電極2の表面に存在する基又は原子と直接的に反応するものであってもよいが、他の物質を介して間接的に反応するものであってもよく、直接的に反応するものと間接的に反応するものを兼ね合わせていてもよい。また第1の層3aを形成するための溶液に反応性基Xが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0113】
前記式(1)中、M1は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族もしくは15族に属する金属原子、又は炭素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、もしくは鉛原子を表す。
【0114】
かかるM1としては、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等の4族に属する金属原子;バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子等の5族に属する金属原子;クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等の6族に属する金属原子;ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、タリウム原子等の13族に属する金属原子;ケイ素原子、ゲルマニウム原子、錫原子、鉛原子等の14族に属する金属原子;リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子等の15族に属する金属原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子等が挙げられるが、スズ原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ニオブ原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子が好ましく、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ホウ素原子、チタン原子、リン原子がより好ましく、チタン原子、リン原子、ケイ素原子がさらに好ましい。
【0115】
前記式(1)中、Raは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表すが、好ましくはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基である。Raで表される基は、置換基を有していてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
前記式(1)中、uは、M1又はM2の原子価を表す。M1又はM2が、例えば、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子等である場合、uは4であり、M1又はM2が、ホウ素原子、アルミニウム原子等である場合、uは3である。
前記式(1)中、v1は1以上u以下の整数であるが、好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは3以上の整数である。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、前記第1電極2の表面には水酸基が存在しており、前記式(1)中のM1がチタン原子である。さらに、前記式(1)中の反応性基Xが、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸基、又はアミノ基であることが好ましい。また、u−v≧1である場合、Raはアルキル基又はアリール基が好ましい。
【0117】
前記式(1)で表される化合物及びその部分加水分解縮合物としては、アセトキシプロピルトリクロロシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、(ジクロロメチル)ジメチルクロロシラン、(ジクロロメチル)メチルジクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロプロピルプロピルトリクロロシラン、ペンタフルオロプロピルプロピルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェノキシトリクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシチタン、オクチルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリメトキシチタン、アミノデシルトリメトキシチタン、メルカプトプロピルトリメトキシチタン、メルカプトオクチルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリエトキシチタン、メルカプトプロピルトリエトキシチタン、メルカプトデシルトリエトキシチタン、プロピルトリクロロチタン、オクチルトリクロロチタン、デシルトリクロロチタン、アミノプロピルトリクロロチタン、メルカプトプロピルトリクロロチタン、メルカプトオクチルトリクロロチタン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシチタン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリクロロチタン、チタンエトキサイド、チタンイソブトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンメトキサイド等、及びこれらの部分加水分解縮合物等のチタンカップリング剤;ブチルクロロジヒドロキシスズ、ブチルトリクロロスズ、ジアリルジ-ブチルスズ、ジブチルジアセトキシスズ、ジブチルジクロロスズ、ジブチルジブロモスズ、ジブチルジメトキシスズ、ジメチルジクロロスズ、ジオクチルジクロロスズ、ジフェニルジクロロスズ、メチルトリクロロスズ、フェニルトリクロロスズ、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムブトキサイド、テトラブトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムブトキサイド、ハフニウムエトキサイド、インジウムメトキシエトキサイド、ニオブブトキサイド、ニオブエトキサイド、ジルコニウムブトキサイド、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムポロポキサイド等が挙げられる。
前記式(1)で表される化合物の部分加水分解縮合物の分子量は、通常、100〜1000000である。
【0118】
前記式(2)中、M2は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する金属原子を表す。
かかるM2としては、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等の4族に属する金属原子;バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子等の5族に属する金属原子;クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等の6族に属する金属原子;ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、タリウム原子等の13族に属する金属原子;ケイ素原子、ゲルマニウム原子、錫原子、鉛原子等の14族に属する金属原子;リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子等の15族に属する金属原子が挙げられる。これらの中でも、ケイ素原子、錫原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ニオブ原子、ホウ素原子、リン原子が好ましく、ケイ素原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ホウ素原子、チタン原子、リン原子がより好ましく、ケイ素原子、チタン原子、リン原子が更に好ましい。
【0119】
前記式(2)中、X、Ra及びuは、前記と同じ意味を有する。
前記式(2)中、v2は1以上u−1以下の整数であるが、好ましくは2以上の整数である。
【0120】
前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物は、前記式(2)で表される1価の基を側鎖に有することが好ましい。前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物における前記式(2)で表される1価の基の個数は、1つでも2つ以上でもよい。
【0121】
前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物におけるM2の合計重量は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。
【0122】
前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物が、前記式(2)で表される1価の基を側鎖に有する場合、主鎖を構成する繰り返し単位としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、アミン残基が挙げられる。
また、前記式(2)で表される1価の基を側鎖に有する繰り返し単位と前記式(2)で表される1価の基を側鎖に有しない繰り返し単位との共重合体でもよく、前記式(2)で表される1価の基を側鎖に有する繰り返し単位の割合が、該共重合体中の全繰り返し単位の5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。
【0123】
前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物の具体例としては、以下の構造式(4−1)、(4−2)で示されるものが挙げられる。
【0124】
【化3】

(式中、nは重合度を表す。)
【0125】
前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物の分子量は、通常、100〜1000000である。
なお、前記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0126】
前記式(3)中、X及びRaは、前記式(1)、(2)での場合と同じ意味を有する。
前記式(3)中、wは1又は2である。また、前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物の重合度nは通常2〜100000の整数であり、好ましくは10〜10000の整数である。
【0127】
前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物としては、ポリジエトキシシロキサン、ポリジブトキシシロキサン、ポリジエチルチタネート、ポリジブチルチタネート、ジエトキシシロキサン−エチルチタネートコポリマーが挙げられる。
【0128】
前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物の分子量は、通常、100〜1000000である。
なお、前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0129】
前記反応性基Xを有する化合物を含有する薄膜(未処理層)を形成する方法としては、反応性基Xを有する化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液に第1電極を浸漬して該第1電極の表面に存在する基と該化合物中の親水性基(反応性基X)とを反応させる方法が挙げられる。その後、第1電極を溶液から取り出し、前記化合物を溶解可能な溶媒で第1電極を洗浄することにより、未反応の前記化合物を第1電極上から除去してもよい。
【0130】
前記反応性基Xを有する化合物を溶媒に溶解又は分散する際に、前記化合物中の反応性基Xが溶媒と化学反応し、異なる基になった後、第1電極と反応してもよい。このような反応としては、加水分解反応等が挙げられる。
【0131】
前記反応性基Xを有する化合物を溶解又は分散させる溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;水等が例示される。
なお、前記溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0132】
上記反応性基Xを有する化合物の溶液は、PEDOT/PSSほど強酸性ではなく、弱アルカリ性ないしは弱酸性である。強酸性の材料は作業性が悪く、塗布装置だけでなく、電極などを傷めるおそれがあるが、上記反応性基Xを有する化合物の溶液を用いることにより、作業性に優れ、第1電極に損傷を与えるおそれが少なく、またプロセスに用いる装置への悪影響も少ない。
【0133】
前記反応性基Xを有する化合物を溶媒に溶解又は分散させて得られた溶液における前記化合物の濃度は、特に制限されない。
【0134】
前記化合物の溶液を第1電極2上に塗布する方法として、浸漬法を用いる場合、濃度が低すぎると、前記化合物と第1電極2との反応に長時間必要となる場合があるので好ましくなく、濃度が高すぎると、前記化合物の分子同士の凝集により成膜性が低下する場合があるので好ましくない。したがって浸漬法を用いる場合、0.01〜100mモル/Lが好ましい。
【0135】
また浸漬法の他に、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法、キャピラリコート法等の塗布法を用いて、前記化合物の溶液を第1電極2上に塗布することができる。
【0136】
適切な厚みの薄膜を形成するための溶液の濃度は、塗布法によって異なるため、適宜、調整する必要がある。
【0137】
スピンコート法を用いる場合、濃度が低すぎると、均一な薄膜を得ることが難しいため好ましくなく、濃度が高すぎると、厚い膜を形成するため電荷の注入が困難になることがあるため好ましくない。したがってスピンコート法を用いる場合、0.001〜10mモル/Lが好ましい。
【0138】
上記いずれかの塗布法により形成した塗膜を乾燥することにより薄膜(未処理層)を得る。前記薄膜(未処理層)は、UVオゾン処理により第1の層に改質される。
【0139】
(UVオゾン処理)
UVオゾン処理とは、前記未処理層にUV(紫外線)を照射し、空気中の酸素をオゾンに変化させ、このオゾン及び紫外線により該未処理層を改質することを意味する。
【0140】
UV光源は、UV照射により酸素をオゾンに変化させることができれば、特に制限されない。UV光源としては、低圧水銀ランプが挙げられる。低圧水銀ランプは185nmと254nmのUV光を発生し、185nm線が酸素をオゾンに変化させることができる。UVとオゾンの相乗効果で生ずる強力な酸化力により、前記未処理層の表面を改質し、正孔注入を促進することができる。照射の際の照度は、用いる光源により異なるが、一般的に数十〜数百mW/cmのものが使用されている。また、集光や拡散することで照度を変更することができる。照射時間は、ランプの照度及び前記未処理層の種類により異なるが、通常、1分〜24時間である。処理温度は、通常、10〜200℃である。また、UVの照射量(即ち、紫外線量)は、通常1J/cm以上であり、好ましくは1〜100000J/cmであり、より好ましくは10〜100000J/cmであり、さらに好ましくは100〜100000J/cmであり、特に好ましくは1000〜100000J/cmある。
【0141】
(第2の層)
前記第2の層3bは、水に不溶性の有機物で形成される。第2の層3bは、水に不溶性の有機物からなるため、第2の層3bを形成した後に、水を含む溶液を用いる工程があるとしても、この水を含む溶液に第2の層3bが溶出しないため、設計通りの構成の第2の層3bを備える有機EL素子を形成することができる。水を含む溶液に第2の層3bが溶出しないため、第2の層3bに損傷を与えることなく、水を含む溶液を用いる塗布法によって、第2の層3b上に所定の層を形成することができる。また第2の層3b上に形成される隔壁は、工程の簡易さから、フォトリソグラフィによって形成されることが多い。フォトリソグラフィでは、現像工程、リンス工程などにおいて、純水、TMAH(Tetra-methyl-ammonium-hydroxyde)水溶液などの水を含む溶液が使用されるが、水を含む溶液に第2の層3bが溶出しないため、第2の層3bに損傷を与えることなく、隔壁を形成することができる。またこれら水を含む溶液を使用する工程において第2の層3bが溶出しないので、第2の層3bの膜厚が実質的に減少せず、設計通りの構成の第2の層3bを維持することができる。水に不溶性の有機物としては、水1gに溶解する量が0.1mg以下であることが好ましく、0.01mg以下であることがより好ましく、0.001mg以下であることがさらに好ましい。
【0142】
本実施形態においては、隔壁を設ける前に、スピンコート法等の簡易な成膜方法で下地層を形成することができると共に、水に不溶性の有機物から構成される第2の層を下地層に設けることにより、下地層上に設けられる隔壁の形成工程においても下地層が損なわれず、その結果、意図した構成の有機EL素子を容易に形成することができる。
【0143】
前記下地層3の第2の層3bの抵抗率は、好ましくは1×1010Ωcm以上である。下地層の抵抗率は、抵抗率計(例えばダイアインスツルメンツ社製の「ロレスタGP MCP−T610型」)により測定することができる。
【0144】
第2の層を正孔輸送層として設ける場合、第2の層を構成する材料としては、正孔輸送材料を含んでいてもよく、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体からなる群から選ばれる高分子化合物であって親水基を有さない高分子化合物が好ましく、主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含む高分子化合物が好ましい。この場合、該高分子化合物中の全繰り返し単位に対して前記芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を30〜100モル%含有することが好ましく、正孔輸送性をより向上させる観点から、40〜100モル%含有することがより好ましく、50〜85モル%含有することがさらに好ましい。
【0145】
上記高分子化合物の正孔輸送材料は、前記芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位のほかに、その他の芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環を有する共役系化合物残基からなる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0146】
第2の層は、正孔注入性の観点から、陽極としての第1電極の材料とのHOMOのエネルギーレベルの差が0.5eV以下である正孔輸送材料を含むことが好ましく、該エネルギーの差が0.3eV以下である材料を含むことがより好ましい。
【0147】
なお、本明細書における第1電極の材料のHOMOエネルギーレベルとは、前述した未処理層をUVオゾン処理して得られた第1の層を構成する部材のHOMOエネルギーレベルであり、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において測定した値を意味する。
【0148】
第2の層は、前記芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位として、下記式(5):
【0149】
【化4】

(式中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14はそれぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar15、Ar16及びAr17はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。Ar16とAr17は、上記の基を表す代わりに、一緒になって、Ar16とAr17が結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。o及びpはそれぞれ独立に、0又は1を表す。)
で表される繰り返し単位を含む正孔輸送材料を含むことが好ましく、さらに式(5)で表される繰り返し単位を含む正孔輸送材料として、陽極としての第1電極の材料とのHOMOのエネルギーレベルの差が0.5eV以下である材料を含むことが好ましい。
【0150】
前記式(5)中、アリーレン基とは、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子2個を除いた残りの原子団であり、非置換のアリーレン基及び置換のアリーレン基を意味する。アリーレン基には、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環或いは縮合環2個以上が単結合又は2価の有機基、例えば、ビニレン等のアルケニレン基を介して結合したものも含まれる。置換のアリーレン基における置換原子及び置換基は、特には限定されないが、溶解性、蛍光特性、合成の行い易さ、素子にした場合の特性等の観点から、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基が好ましい。
【0151】
前記式(5)中、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、ビフェニル−ジイル基、ターフェニル−ジイル基、縮合環化合物基、フルオレン−ジイル基、インデノフルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基、ジスチルベン−ジイル基等が例示され、フェニレン基、ビフェニル−ジイル基、フルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。
【0152】
前記式(5)中、2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。2価の複素環基は置換基を有していてもよい。前記複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。2価の複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基等が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基が好ましい。非置換の2価の複素環基の炭素数は、通常、3〜60程度である。
【0153】
前記2価の複素環基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ヘテロ原子として、窒素原子を含む2価の複素環基;ピリジン−ジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基、フェナントロリンジイル基等。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、ホウ素原子等を含みフルオレン構造を有する基。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子等を含み、インデノフルオレン構造を有する基。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子等を含む5員環複素環基。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子等を含む5員環縮合複素環基。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子等を含む5員環複素環基で、そのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基。ヘテロ原子として、ケイ素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子等を含む5員環複素環基で、そのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基。ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含む5員環縮合複素環基に、フェニル基、フリル基、チエニル基が置換した基。
【0154】
前記式(5)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(5−1)〜(5−11)で表されるものが挙げられる。
【0155】
【化5】

【0156】
前記式(5−1)〜(5−11)中、芳香環上の水素原子は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数7〜26のフェニルアルキル基、炭素数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素数2〜21のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基で置換されていてもよい。また、2つの置換基が存在する場合、それらが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0157】
前記フェニルアルキル基としては、炭素数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、フェニルドデシル基等が挙げられる。
【0158】
前記フェニルアルコキシ基としては、炭素数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルプロピルオキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチルオキシ基、フェニルヘキシルオキシ基、フェニルヘプチルオキシ基、フェニルオクチルオキシ基、フェニルノニルオキシ基、フェニルデシルオキシ基、フェニルドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0159】
前記アルキル基置換フェニル基とは、フェニル基上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換された基、即ち、モノアルキルフェニル基、ジアルキルフェニル基、トリアルキルフェニル基、テトラアルキルフェニル基、及びペンタアルキルフェニル基をいう。アルキル基置換フェニル基としては、炭素数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタメチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタエチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタプロピルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソプロピルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−s−ブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−t−ブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタペンチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソアミルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘキシルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘプチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタオクチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(2−エチルヘキシル)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタノニルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタデシルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(3,7−ジメチルオクチル)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタドデシルフェニル基等が挙げられる。
【0160】
前記アルコキシ基置換フェニル基とは、フェニル基上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された基、即ち、モノアルコキシフェニル基、ジアルコキシフェニル基、トリアルコキシフェニル基、テトラアルコキシフェニル基、及びペンタアルコキシフェニル基をいう。アルコキシ基置換フェニル基としては、炭素数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタメトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタエトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタプロピルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソプロピルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−s−ブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−t−ブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタペンチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘキシルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘプチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタオクチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタノニルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタデシルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタドデシルオキシフェニル基等が挙げられる。
【0161】
前記アルキルカルボニル基としては、炭素数が、通常2〜21、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ドデカノイル基等が挙げられる。
【0162】
前記アルコキシカルボニル基としては、炭素数が、通常2〜21、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0163】
前記式(5)で表される繰り返し単位としては、下記式(6):
【0164】
【化6】

(式中、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数7〜26のフェニルアルキル基、炭素数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素数2〜21のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基を表す。R3とR4は、上記の基を表す代わりに、一緒になって、環を形成していてもよい。x及びyはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、zは1又は2であり、sは0〜5の整数である。R3、R4及びR5の少なくとも1種が複数存在する場合には、その複数存在する基は同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるものが好ましい。
【0165】
前記式(6)中のR3とR4が、一緒になって、環を形成する場合、その環としては、置換基を有していてもよいC5〜C14の複素環が挙げられる。該複素環としては、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロール環、ピペリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
【0166】
前記式(6)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(6−1)〜(6−10)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0167】
【化7】

【0168】
前記式(6)で表される繰り返し単位としては、下記式(7):
【0169】
【化8】

(式中、R6は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、sは0〜5の整数である。R6が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるものが、溶媒への溶解性等の観点から好ましい。
【0170】
前記高分子化合物の末端部分は、重合活性基がそのまま残っていると、素子の作製に用いた場合、得られる素子の発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な保護基で保護されていることが好ましい。保護基としては主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は1価の複素環基が主鎖と結合している構造が挙げられる。具体的には、特開平9−45478号公報の[化10]に記載の置換基等が例示される。
【0171】
前記主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物は、上記芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位の少なくとも1種と共に下記式(8)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を主鎖に含むことが、最大発光効率や素子寿命等の素子特性の観点から好ましい。

−[Ar8]− (8)

(式中、Ar8はアリーレン基を表す。)
【0172】
前記式(8)中、アリーレン基としては、前記式(5)項で説明し例示したものと同様である。
【0173】
前記式(8)で表される繰り返し単位の中では、輝度半減寿命の観点から、下記式(9)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0174】
【化9】

(式中、R7及びR8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、h及びiはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表す。R7及びR8が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0175】
前記式(9)中、h及びiは、原料モノマーの合成の容易さの観点から、0又は1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。また、前記式(9)中、R9及びR10は、原料モノマーの合成の容易さの観点から、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0176】
前記式(9)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(9−1)〜(9−8)で表されるものが挙げられる。
【0177】
【化10】

【0178】
前記主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物は、数平均分子量がポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、104〜106
程度であることがより好ましい。
【0179】
なお、本発明においてポリスチレン換算の「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)を用いて求める。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、SECに50μL注入する。更に、SECの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流す。また、カラムとしては、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げたものを用いる。また、検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いる。
【0180】
主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物の合成方法としては、例えば、所望の高分子化合物に応じたモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子化合物の分解による方法等が挙げられる。これらのうち、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、反応制御が容易である点で好ましい。
【0181】
前記反応においては、反応促進のために、適宜、アルカリ、適切な触媒を添加することができる。これらアルカリ、適切な触媒は、反応の種類に応じて選択すればよいが、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリとしては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩が挙げられる。触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類が挙げられる。
【0182】
主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物の純度は、素子の発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合させることが好ましく、また、合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0183】
前記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0184】
反応後は、例えば、水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、該有機溶媒を留去する等の通常の後処理で、粗製の高分子化合物を得ることができる。また、上記のとおり、高分子化合物の単離及び精製はクロマトグラフィーによる分取、再結晶等の方法により行うことができる。
【0185】
前記高分子化合物の合成方法の具体例としては、下記式(10)で表される化合物を単独で、又は、下記式(10)で表される化合物と下記式(11)で表される化合物とを、上記の方法により重合させる方法が挙げられる。
【0186】
【化11】


3−Ar18−X4 ・・・(11)

(式(10)、(11)中、Ar11〜Ar18は前記のとおりであり、X1〜X4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、又はビニル基を表す。)
【0187】
前記式(10)又は(11)で表される化合物の合成上の観点及び反応のし易さの観点から、X1〜X4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0188】
アルキルスルホ基としては、メタンスルホ基、エタンスルホ基、トリフルオロメタンスルホ基等が例示される。アリールスルホ基としては、ベンゼンスルホ基、p−トルエンスルホ基等が例示される。アリールアルキルスルホ基としては、ベンジルスルホ基等が例示される。
【0189】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式(12−1)〜(12−4)で示される基が挙げられる。
【0190】
【化12】

(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
【0191】
スルホニウムメチル基としては、下記式(13−1)、(13−2)で示される基が例示される。
−CH2+Me2α- ・・・(13−1)
−CH2+Ph2α- ・・・(13−2)
(式中、αはハロゲン原子を示し、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0192】
ホスホニウムメチル基としては、下記式(14)で示される基が例示される。
−CH2+Ph3α- ・・・(14)
(式中、αはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0193】
ホスホネートメチル基としては、下記式(15)で示される基が例示される。
−CH2PO(OR112 ・・・(15)
(式中、R11はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を示す。)
【0194】
モノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基又はヨウ化メチル基が例示される。
【0195】
また、主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する正孔輸送層に別の層、例えば、正孔と電子の再結合で発光する発光層を積層する際に、共通の溶媒による両層の混合や正孔輸送層の溶出を防止するために、該正孔輸送層を不溶化することが好ましい。不溶化する処理としては、可溶性の前駆体や可溶性の置換基を有する高分子を用いて、熱処理により前駆体を共役系高分子に転換したり、該置換基を分解することで溶解性を低下させたりして不溶化する方法や、架橋性基を分子内に有する正孔輸送性高分子を用いる方法、熱、光、電子線等により架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーを混合する方法等が例示される。特に、架橋性基を分子内に有する主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物を用いることが好ましい。
【0196】
前記架橋性基を分子内に有する主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物としては、側鎖に架橋性基を有する前記主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物が例示される。このような架橋性基としては、例えば、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、小員環(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、シロキサン誘導体を含有する基等がある。また、これらの基の他に、エステル結合やアミド結合を形成可能な基の組み合わせ等も用いることができる。例えば、エステル基とアミノ基、エステル基とヒドロキシル基等の組み合わせである。更に、国際公開97/09394号パンフレットに記載のベンゾシクロブタン構造を含む基等も例示される。その中でも、とりわけアクリレート基又はメタクリレート基が好ましい。
【0197】
アクリレート基又はメタクリレート基を有する単官能モノマーの具体例としては、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。アクリレート基又はメタクリレート基を有する2官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。その他のアクリレート基又はメタクリレート基を有する多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0198】
前記架橋性基を分子内に有する主鎖に芳香族アミン骨格からなる繰り返し単位を含有する高分子化合物における該架橋性基の含有率は、通常、0.01〜30重量%であり、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0199】
架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000以下であり、上記架橋性基を二つ以上有するものが例示される。架橋性基を有する高分子や架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーの架橋反応としては、加熱や光、電子線等照射により起こる反応が例示される。熱重合開始剤、光重合開始剤、熱重合開始助剤、光重合開始助剤等の存在下で前記反応を行ってもよい。
【0200】
加熱して不溶化する場合、加熱の温度は、材料の分解により特性が低下する温度より低ければ特に制限はないが、例えば、50℃〜300℃であり、100℃〜250℃が好ましい。
【0201】
加熱して不溶化する場合、併用できる熱重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;及び過酸化水素が挙げられる。
【0202】
ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。これらの熱重合開始剤はそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱重合開始剤を併用する場合の反応温度は、例えば、40℃〜250℃であり、50℃〜200℃が好ましい。光重合開始剤を用いた光重合では、紫外線を0.01mW/cm2以上の照射強度で1秒〜3600秒間、好ましくは30秒〜600秒照射すればよい。
【0203】
光重合開始剤は、光が照射されることによって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤、酸を発生する酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0204】
上記第2の層の成膜の方法に制限はないが、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜や、溶液からの成膜による方法が例示される。溶液からの成膜に用いる溶媒は、前記第2の層を構成する材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0205】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キヤピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インキジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成をする場合には、パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インキジェットプリント法等の印刷法が好ましい。
【0206】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0207】
第2の層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該第2の層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0208】
(中間層)
第1の層と第2の層との間に所定の中間層を設ける場合、該中間層を構成する材料としては、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体などが例示される。中間層の成膜の方法に制限はないが、上記第2の層と同様の溶液からの成膜による方法が例示される。
【0209】
(隔壁)
隔壁4は、画素領域を取り囲むようにして下地層3上に設けられる。換言すると隔壁4は、下地層3上において複数の画素領域を規定する。本実施形態では前述したように下地層3は複数の画素領域にわたって連続して一体に形成されており、隔壁4は、この下地層3上において例えば格子状に形成される。
【0210】
上記構成を図1の例を参照して説明する。画素領域R1は、第1及び第2電極2,7が平面視で交差する領域として設定される。前述したように第1及び第2電極2,7は、平面視で格子状に設けられるので、画素領域R1はマトリクス状に離散的に配置される。この複数の画素領域R1をそれぞれ取り囲むように隔壁4が設けられる。すなわち、隔壁4は、下地層3上において格子状に形成される。
【0211】
(隔壁の材料及び形成方法)
隔壁は、例えばフォトリソグラフィ法などによって形成することができる。隔壁の上下方向の厚みとしては、0.1〜5μm程度がよい。隔壁の材料としては、耐熱性に優れた有機材料を用いるのが望ましく、感光性ポリイミド、アクリル系(メタクリル系)樹脂やノボラック系樹脂などの感光性樹脂を用いてもよい。感光性を有する有機材料を用いると、材料の塗布、プリベーク、露光、現像、ポストベークという一連のフォトリソグラフィ法で、隔壁を形成できる。露光光としてはUV光のg、h、i線の混合光であってもよく、g,h,i線の単波長であってもよい。現像液としては、有機、無機アルカリの水溶液を使用できる。
このように隔壁を形成する際に水溶液を用いたとしても、この水溶液に第2の層が溶解しないため、隔壁形成工程において第2の層に損傷を与えることを回避することができる。
【0212】
(有機発光層)
本発明において、有機発光層は、隔壁によって規定された画素領域に設けられる。有機発光層は、有機発光材料を含むインキを供給し、乾燥することにより形成される。この有機発光層上に第2電極を形成することにより、有機EL素子を構成することができる。
【0213】
図1の例を参照して説明すると、有機発光層5は、隔壁4で規定された画素領域R1に設けられ、第1電極2の上に、下地層3を介して積層されている。この有機発光層5上に、平面視で第1電極2と直交するように第2電極7を設けることにより、第1及び第2電極2,7の間に下地層3および有機発光層5が積層された有機EL素子を構成することができる。
【0214】
(有機発光層の材料及び形成方法)
有機発光層は、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとを含む。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、発光層は、ポリスチレン換算の数平均分子量が、10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0215】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどが挙げられる。
【0216】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0217】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0218】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0219】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0220】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0221】
(ドーパント材料)
有機発光層中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加することができる。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような有機発光層の厚さは、通常約2〜200nmである。
【0222】
(有機発光層の成膜方法)
有機物を含む発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を隔壁によって囲まれる画素領域に供給する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。発光材料を含む溶液に用いる溶媒の例としては、前述の第2の層を構成する材料を溶解する溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒があげられる。
【0223】
隔壁によって囲まれる画素領域に発光材料を含む溶液を供給する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インキジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インキジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、所望のところのみに有機発光層を形成する方法も用いることができる。
【0224】
(有機発光層と第2電極との間に設けられる層)
図1の例では、有機発光層5上に直接第2電極7を形成するが、素子特性および工程数などを考慮して、有機発光層と第2電極との間に、所定の層を設けてもよい。このような所定の層として、第2電極が陰極の場合、電子輸送層、電子注入層および正孔ブロック層などが設けられる。陰極としての第2電極と、有機発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
【0225】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0226】
(電子輸送層)
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体などを挙げることができる。
【0227】
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0228】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液もしくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
【0229】
電子輸送層の膜厚は、素子特性および工程の容易さなどを考慮して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0230】
(電子注入層)
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上含む合金、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0231】
(第2電極)
第2電極は、前記第1電極が陽極である場合、陰極である。陰極である場合の構成材料及び形成方法を以下に説明する。
(陰極)
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、有機発光層への電子注入が容易な材料が好ましく、電気伝導度が高い材料が好ましい。また陽極、基板を通して光を取り出す構成の有機EL素子では、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。このような陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。
【0232】
上記金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表13属金属等を用いることができる。これら金属の具体的例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
【0233】
また合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0234】
陰極は、必要に応じて透明電極とされるが、それらの材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性酸化物、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
【0235】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜選択することができ、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは、20nm〜1μmであり、さらに好ましくは、50nm〜500nmである。
【0236】
(保護層)
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を設けてもよい。
【0237】
本実施形態の有機EL素子における、第1電極から第2電極までの層構成の組み合わせ例を以下に示す。なお、以下の層構成において、下地層を一つの層として表示しているが、本実施の形態では、先に述べたように下地層は第1の層と第2の層の少なくとも2層から構成される層である。また以下では、第1電極を陽極とし、第2電極を陰極とした場合の層構成の一例を示している。
a)陽極/下地層/有機発光層/陰極
b)陽極/下地層/有機発光層/電子注入層/陰極
c)陽極/下地層/有機発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/下地層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0238】
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜d)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のe)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
【0239】
e)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のf)に示す層構成を挙げることができる。
【0240】
f)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0241】
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0242】
ここで、電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0243】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、層全体の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧、発光効率、素子寿命などの素子特性および工程の簡易さ等を考慮して適度な値に設定され、例えば30nm〜1μmであり、好ましくは40nm〜500nmであり、さらに好ましくは60nm〜400nmである。
【0244】
(本発明の有機EL素子の製造方法)
本発明の有機EL素子の製造方法は、少なくとも次の(i)〜(v)の工程を含み、工程(ii)として、少なくとも2つの工程(ii−a)と(ii−b)とを含む。
【0245】
すなわち、本発明の有機EL素子の製造方法は、
(i)第1電極が設けられた基板を用意する工程と、
(ii)前記第1電極上に下地層を設ける工程と、
(iii)画素領域を取り囲む隔壁を前記下地層上に設ける工程と、
(iv)前記画素領域に有機発光層を設ける工程と、
(v)前記有機発光層を介在させて前記第1電極と対向するように第2電極を設ける工程とを有し、
前記下地層を設ける工程(ii)が、下記2つの工程(ii−a)と(ii−b)を含む。
(ii−a)
第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物を含有する溶液を用いて塗布法により未処理層を第1電極上に形成し、該未処理層をUVオゾン処理により改質して前記第1の層を得る工程。
(ii−b)
前記第1の層上に水に不溶性の有機物を用いて第2の層を第1電極上に形成する工程。
【0246】
次に、本発明の有機EL素子の製造方法の一実施形態を、図1および図3から図5を参照して説明する。
【0247】
図3に示すように、まず第1電極2が設けられた基板を用意する。この工程は前述した通りである。次に下地層3を設ける。図3に示す例では、下地層3は第1の層3aと第2の層3bとからなる。第1の層3aおよび第2の層3bの形成方法は先に詳述した通りである。続いて、隔壁を形成するためのフォトレジスト層P4を下地層3上に設ける。
【0248】
次にフォトレジスト層P4のうちの画素領域に相当する部分をフォトリソグラフィにより除去し、画素領域R1を取り囲む隔壁4を形成する(図4参照)。この画素領域R1は、第1及び第2電極2,7が平面視で重なる領域に形成される(図2参照)。
【0249】
次に、隔壁4に取り囲まれた画素領域R1に有機発光層5を設ける(図5参照)。有機発光層5は、有機発光層5の材料組成物を含むインキを画素領域R1内に設け、これを必固化することにより形成することができる。インキを画素領域R1内に設ける方法としては、前述した塗布法を挙げることができ、それらのなかでも、フレキソ印刷法、インキジェット法が好ましい。
【0250】
有機発光層5を設けた後、平面視で第1電極2と直交するように複数本の第2電極7を設ける(図1参照)。このようにして、有機EL素子を得ることができる。さらに、封止部材及び画素の駆動に必要な配線等の任意の構成要素を加えることにより、有機EL素子を搭載した有機EL装置を作製することができる。
【0251】
本発明の有機EL素子は面状光源、表示装置の光源として用いることができる。
本発明の有機EL素子を備える装置は、さらに必要に応じて、カラーフィルター又は蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な配線等の、表示素子を構成するための任意の構成要素を有することができる。
【実施例】
【0252】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために作製例及び比較例を示すが、本発明はこれら作製例に限定されるものではない。
【0253】
[合成例1](高分子化合物Aの合成〜正孔輸送性高分子化合物〜)
ジムロートを接続したフラスコに、下記式(16):
【0254】
【化13】

で表される化合物A 5.25g(9.9mmol)、下記式(17):
【0255】
【化14】

で表される化合物B 4.55g(9.9mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:アリコート(Aliquat)336、アルドリッチ社製) 0.91g、及びトルエン69mlを加えて、モノマー溶液を得た。窒素雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、80℃で、酢酸パラジウム 2mg、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン 15mgを加えた。得られた溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液9.8gを注加した後、110℃で19時間攪拌した。そこへ、トルエン1.6mlに溶解したフェニルホウ酸 121mgを加え、105℃で1時間攪拌した。
【0256】
得られた反応液の有機相を水相と分離した後、有機相にトルエン300mlを加えた。
得られた有機相を、3重量%酢酸水溶液 40ml(2回)、イオン交換水 100ml(1回)の順番で洗浄した。洗浄して得られた有機相に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 0.44g、及びトルエン 12mlを加え、65℃で4時間攪拌した。
【0257】
あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに、得られた反応生成物のトルエン溶液を通液し、この溶液をメタノール1400mLに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後、乾燥し、固体を得た。この固体をトルエン400mLに溶解させ、得られた溶液をメタノール1400mLに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し、高分子化合物Aを6.33g得た。高分子化合物Aのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×104であり、重量平均分子量Mwは3.2×105であった。高分子化合物Aは、仕込み原料から、下記2つの式(18)、(19):
【0258】
【化15】

【0259】
【化16】

で表される繰り返し単位を、1:1(モル比)で有してなるものと推測される。また、高分子化合物AのHOMOのエネルギーレベルは、5.4eVであった。
【0260】
(作製例1)
第1の層および第2の層のうちの第1の層のみを下地層として備える有機EL素子を作製した。
【0261】
(陽極を有する基板の準備)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜(陽極)を付けたガラス基板をUVオゾン装置(テクノビジョン社製)を用いてUVオゾン処理を20分間行った。
【0262】
(陽極の表面の末端基又は原子と反応する反応性基Xを有する化合物の溶液の調製)
メタノール:水=95:5混合溶媒(重量比)に、式(1)で表される化合物として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(アズマックス社製,式(1)においてMがSi,XがCH−O−,Rが3−アミノプロピルである。)を0.07重量%の濃度で溶解させた溶液Xsを調製した。この溶液のpHをpHメーターにより確認したところ10.41(弱アルカリ性)であった。
【0263】
(第1の層の形成)
上記基板上に、上記溶液Xsを用い、スピンコート法により2000rpmの速度で塗膜を形成した。塗膜を形成した基板を大気下、ホットプレート上で110℃、30分間加熱して、前記塗膜を乾燥し、薄膜(未処理層)を得た。
前記薄膜を形成した基板を室温まで冷却後、UVオゾン装置を用いて、前記薄膜(未処理層)にUVオゾン処理を20分間行い(UVの照射量:10J/cm2)、前記ITO膜を付けたガラス基板上に第1の層を形成した。この第一の層の平均膜厚を測定したところ、平均膜厚は10nm以下であった。
【0264】
(正孔輸送層の形成)
高分子化合物Aを固形分濃度が約0.5重量%になるように前記高分子化合物Aのキシレン溶液を調製し、このキシレン溶液を、上記第1の層上にスピンコート法により塗布し、約10nm以下の厚みの塗膜を得た。この塗膜を窒素雰囲気下で200℃、15分間加熱して乾燥し、正孔輸送層を得た。
【0265】
(有機発光層の形成)
得られた正孔輸送層上に有機発光層を形成した。発光材料にはLumation BP361(Sumation社製)を用いた。Lumation BP361を固形分濃度が約1.2重量%となるように調製したキシレン溶液(発光材料インキ)を用い、スピンコート法により80nmの厚みで、正孔輸送層上に成膜した。この塗膜を、窒素雰囲気下、130℃で20分乾燥して、有機発光層を得た。
【0266】
(陰極の形成)
上記有機発光層上に、バリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約100nm蒸着することにより、陰極を形成した。なお、この陰極形成工程では、真空度が、1×10-4Pa以下に到達した後、金属の蒸着を開始した。
【0267】
(有機EL素子の評価)
上述のようにして得られた有機EL素子の陽極の材料のHOMOのエネルギーレベルは、5.1eVであった。
また、得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、Lumation BP361由来のピーク波長470nmの青色の発光を示した。また、1cd/cm2となる発光開始電圧は2.9Vであり、最大発光効率は7.5cd/Aであった。さらに、この素子を電流密度35.25mA/cm一定で駆動したところ、初期輝度が2430cd/mであり、輝度が半減するまでの時間は約52時間であった。
【0268】
(比較例1)
作製例1と同様にして、3−アミノプロピルトリメトキシシランの成膜を行った後、基板を大気下、ホットプレート上で110℃、30分間加熱して、未処理層を得た。
次いで、室温まで冷却後、前記未処理層のUVオゾン処理を20分間行なわず、その代わりに、酸素プラズマ装置を用いて、プラズマ出力100W、圧力0.5Pa、酸素流量40sccmの条件の下、2分間プラズマ処理を行った。それ以外は、作製例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0269】
(有機EL素子の評価)
得られた素子に電圧を印加したところ、Lumation BP361由来のピーク波長470nmの青色の発光を示した。また、1cd/cm2となる発光開始電圧は9.1Vであり、最大発光効率は0.07cd/Aであった。この素子を電流密度35.25mA/cm一定で駆動したところ、初期輝度が11cd/mであり、輝度が半減するまでの時間は約1時間であった。
【0270】
(比較例2)
(正孔注入層(第1の層)の作成)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜(陽極)を付けたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(Bayer製、Baytron P CH8000)の懸濁液を、スピンコートにより80nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃、10分間加熱して、正孔注入層(第1の層)を得た。Baytron P CH8000のpHをpHメーターにより確認したところ2.09(強酸性)であった。
【0271】
(正孔輸送層の作成)
室温に冷却した後、高分子化合物Aを固形分濃度が約0.5重量%になるように調製したキシレン溶液を用い、スピンコート法により約10nmの厚みで基板上に成膜した。その後、窒素雰囲気下で200℃、15分間加熱した。
【0272】
(有機発光層および陰極の形成)
次いで、作製例1と同様にして、有機発光層および陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0273】
(有機EL素子の評価)
得られた素子に電圧を印加したところ、Lumation BP361由来のピーク波長470nmの青色の発光を示した。また、1cd/cm2となる発光開始電圧は3.1Vであり、最大発光効率は7.9cd/Aであった。この素子を電流密度33.5mA/cm一定で駆動したところ、初期輝度が2400cd/mであり、輝度が半減するまでの時間は約41時間であった。
【0274】
(参考例)
(正孔注入層(第1の層)の作成)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をUVオゾン装置(テクノビジョン社製)を用いてUVオゾン処理を20分間行った。この基板上に、メタノール:水=95:5混合溶媒(重量比)に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(アズマックス社製)を1.0重量%の濃度で溶解させて調製した溶液を用い、スピンコート法により1000rpmの速度で成膜した(第1の層)。第1の層の平均膜厚を測定したところ、平均膜厚は35nmであった。成膜後、基板を大気下、ホットプレート上で110℃、30分間加熱した。
【0275】
(正孔輸送層の作成)
室温まで冷却後、UVオゾン装置を用いて、UVオゾン処理を20分間行った(UVの照射量:10J/cm2)。この基板上に、高分子化合物Aを固形分濃度が約0.5重量%になるように調製したキシレン溶液を用い、スピンコート法により約10nm以下の厚みで基板上に成膜した後、窒素雰囲気下で200℃、15分間加熱した。
【0276】
(発光層および陰極の形成)
次いで、作製例1と同様にして、UVオゾン処理、有機発光層を形成し、有機EL素子を作製した。
【0277】
(有機EL素子の評価)
得られた素子に電圧を印加したところ、Lumation BP361由来のピーク波長470nmの青色の発光を示した。しかし、1cd/m2となる発光開始電圧は8.6Vであり、最大発光効率は0.43cd/Aであった。この素子を電流密度250mA/cm一定で駆動したところ、初期輝度が1820cd/mであり、輝度が半減するまでの時間は約2時間であった。
【0278】
(作製例1と比較例1,2の比較検討)
作製例1では、有機エレクトロルミネッセンス素子における第1の層の作製に用いる溶液が弱酸性であり、かつUVオゾン処理という簡便な方法により第1の層を形成することができるので、作業性が著しく優れていた。得られた素子の寿命(輝度半減寿命)は約52時間であり、長寿命であると認められた。
【0279】
比較例1では、有機エレクトロルミネッセンス素子における第1の層の形成において、酸素プラズマ処理という煩雑な真空プロセスが必要であり、作業性が悪かった。得られた素子の寿命(輝度半減寿命)は約1時間であり、実用性には乏しい。
【0280】
比較例2では、有機エレクトロルミネッセンス素子における第1の層の作製に用いる溶液が強酸性系であるので、作業性が悪かった。得られた素子の寿命(輝度半減寿命)は約41時間であり、作製例1の有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命(輝度半減寿命)と比較して20%程度劣っていた。
【0281】
(作製例2)
作製例2および3では、第1の層および第2の層のうちの第2の層のみを下地層として備える有機EL素子を作製した。
【0282】
(第2の層の形成)
正孔注入材料である水に不溶性の高分子材料1、架橋剤であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、重合開始剤であるイルガキュアー360(チバガイギー社製)を重量比で1:0.25:0.01の割合で混合し、混合物を得た。有機溶剤に、前記混合物を1質量%の割合で溶解し、第2の層形成用インキを得た。
【0283】
陽極としてのITOパターンを有する平板状のガラス基板の、当該パターンを有する側の面全面に、前記インキをスピンコートし、約60nmの厚さの塗膜を作製した。その後、基板周辺部の封止エリア及び取り出し電極部分等の表示素子を作製しない領域の塗膜を拭き取り、ホットプレート上で200℃、10分間熱処理・乾燥して不溶化し、正孔注入層として機能する第2の層を得た。本第2の層は、水に不溶性の架橋高分子化合物からなる。第2の層の抵抗率は2×1014Ωcm以上であった。
【0284】
(隔壁の形成)
得られた第2の層上に、フォトレジスト(東京応化製「TELR−P003」)を、回転数1000rpmでスピンコートし、フォトレジスト層を得た。この層に、所望のパターンが形成されているフォトマスクを介して、露光機(大日本スクリーン製「MA−1200」)を用いて露光処理を施し、続いてKOHの1質量%水溶液で現像することで、所望のパターンを得た。得られた膜を230℃×20分間オーブンで乾燥し、隔壁を得た。得られた隔壁は、厚さが1.5μmであった。また、隔壁を上面から観察すると、第2の層が露出している素子領域の開口が、70×210μmの矩形であり、隣接する素子領域との距離が20μmであった。
【0285】
(有機発光層の形成)
上記陽極、第2の層及び隔壁を有する基板の上に、赤色発光有機EL材料(Lumation RP158(Sumation社製))のキシレン溶液(溶液における赤色発光有機EL材料の割合が1質量%)を、スピンコートし、その後、キシレンを浸した布で基板周辺部、及び隔壁頂部上などの不要部分を拭き取った後、減圧下80℃で1時間乾燥し、厚さ80nmの有機発光層を隔壁内の画素領域に形成した。
【0286】
(陰極の形成)
上記陽極、第2の層、隔壁及び有機発光層を有する基板の上に、厚さ約5nmのバリウムと、その上の厚さ約100nmのアルミニウムの2層からなる陰極を、蒸着法により形成した。陰極の形状は、シャドーマスクを用いて規定し、平面視において、有機発光層上でITO陽極と直交する形状とし、陽極と陰極とでパッシブマトリクス型の電極を構成した。
【0287】
(封止)
封止用ガラス基板の主面の周辺部に、UV硬化性封止材(ナガセケムテックス社製XNR5516Z)を、ディスペンサーを用いて塗布した。この塗布面を下側として、(1−4)で得た積層構造を有する基板と位置合わせして、減圧下(−25kPa)で貼り合わせた。その後大気圧に戻し、UV光を照射して封止材を硬化することにより上記陽極〜陰極までの積層体を封止し、有機EL素子を得た。
【0288】
(有機EL素子の評価)
上記有機EL素子の電極に電源を接続し駆動させたところ、単色(赤色)の画像が表示されることが確認された。画素中の発光は均一であった。
【0289】
(作製例3)
発光層ポリマー(Sumation社製、商品名「Lumation G1302」)を、第2の層用インキと同じ有機溶媒に0.8質量%の割合で溶解し、粘度8cPのインキを調製した。
【0290】
作製例2と同様にして得た陽極、第2の層及び隔壁を有する基板の上に、上記インキを塗布し、有機発光層を作製した。
インキの塗布は、インキジェット装置(Litrex社製、商品名「120L」)を用い、隔壁により規定された画素領域のそれぞれに7滴ずつ吐出した。
【0291】
インキ塗布後、真空中で約100℃、60分間加熱処理し、続いて作製例2の工程と同様に操作し、有機EL素子を得た。
【0292】
得られた素子の電極に電源を接続し駆動させたところ、クロストークの無い明瞭な動画像が表示されることを確認した。一画素のリーク電流は、−10Vにおいて0.1μA以下であった。また、第2の層の抵抗率は2×1014Ωcmであった。
【0293】
(比較例3)
(第2の層の形成)
第2の層形成用インキとして、水溶性であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名「Baytron P CH 8000」)を含む水溶液を用いた他は、作製例2と同様にして、ITO陽極及び第2の層を有する基板を得た。
得られた第2の層上に、作製例2と同様に隔壁を形成しようとしところ、隔壁形成のフォトリソグラフィの過程で第2の層の厚さが不均一となった。
【符号の説明】
【0294】
1 基板
1S 基板平面の周辺部
2 第1電極
3 下地層
3a 第1の層
3b 第2の層
4 隔壁
5 有機発光層
7 第2電極
12 マトリクス領域
60 有機EL表示装置
P4 フォトレジスト層
R1 画素領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極上に設けられた下地層と、
基板上に設定される画素領域を取り囲むようにして、前記下地層上に配置された隔壁と、
前記画素領域に設けられた有機発光層と、
前記有機発光層を介在させて第1電極に対向して設けられた第2電極とを備える有機エレクトロルミネッセンスであり、
前記下地層は、
前記第1電極の表面に存在する基に対する反応性基Xを有する化合物を含有する未処理層を、第1電極上に形成し、該未処理層をUVオゾン処理することにより形成された第1の層と、
水に不溶性の有機物から構成され、前記第1の層上に設けられた第2の層とを含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記反応性基Xを有する化合物が、下記式(1)で表される化合物及びその部分加水分解縮合物、下記式(2)で表される1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに下記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
1(X)v1(Ra)u-v1 ・・・(1)
−M2(X)v2(Ra)u-v2-1 ・・・(2)
−[Si(X)w(Ra)2-w−O]− ・・・(3)
(式(1)中のM1は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族もしくは15族に属する金属原子、又は炭素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、もしくは鉛原子を表す。式(2)中のM2は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する金属原子を表す。全式に共通するXは、陽極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基(反応性を有する基又は原子)を表す。また、全式に共通するRaは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。Raで表される基は、置換基を有していてもよい。v1は、1以上u以下の整数である。v2は、1以上u−1以下の整数である。wは、1又は2である。uは、M1又はM2の原子価を表す。Xが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(2)で表され、Mがケイ素原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(3)で表される繰り返し単位からなる化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(1)で表され、M1がチタン原子である化合物及びその部分加水分解縮合物、並びに前記式(2)で表され、M2がチタン原子である1価の基を持つ化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記反応性基Xを有する化合物が、前記式(1)で表され、M1がケイ素原子である化合物及びその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第1の層の膜厚が10nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記水に不溶性の有機物は、架橋した高分子化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
第2の層は、陽極としての第1電極の材料とのHOMOのエネルギーレベルの差が0.5eV以下である材料を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
第1電極が設けられた基板を用意する工程と、
前記第1電極上に下地層を設ける工程と、
前記基板上に設定される画素領域を取り囲むように、前記下地層上に隔壁を設ける工程と、
前記画素領域に有機発光層を設ける工程と、
前記有機発光層を介在させて、前記第1電極と対向するように第2電極を設ける工程とを有し、
前記下地層を設ける工程が、
前記第1電極の表面に存在する基又は原子に対する反応性基Xを有する化合物を含有する溶液を用いて、前記第1電極上に塗布法により未処理層を形成した後、該未処理層をUVオゾン処理により改質して第1の層を得る工程と、
水に不溶性の有機物から構成される前記第2の層を前記第1の層上に形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記UVオゾン処理におけるUVの照射量が1J/cm以上である、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
前記未処理層を形成する前に前記第2電極をUVオゾン処理する、請求項9又は10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
前記水に不溶性の有機物は、架橋した高分子化合物である請求項9〜11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
【請求項13】
前記隔壁に囲まれる領域に設ける層を塗布法により形成する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−278157(P2010−278157A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128209(P2009−128209)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】