説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法

【課題】発光輝度及び発光効率が高く、寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法を提供する
【解決手段】昇華精製により、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計を50ppm以下とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法、並びに、陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計を昇華精製により50ppm以下としてなる有機エレクトロルミネッセンス素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りん光発光性の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法に関し、特に、発光輝度及び発光効率が高く、寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下エレクトロルミネッセンスをELと略記することがある)は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W. Tang, S.A. Vanslyke, アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年等)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、又は正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
有機EL素子の発光材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それらからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
また、近年、有機EL素子の発光層に、発光材料の他に有機りん光材料を利用することも提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
このように有機EL素子の発光層において、有機りん光材料の励起状態の1重項状態と3重項状態とを利用することにより、高い発光効率が達成されている。有機EL素子内で電子と正孔が再結合する際にはスピン多重度の違いから1重項励起子と3重項励起子とが1:3の割合で生成すると考えられているので、りん光性の発光材料を用いれば蛍光のみを使った素子の3〜4倍の発光効率の達成が考えられる。
このような有機EL素子においては、3重項の励起状態又は3重項の励起子が消光しないように順次、陽極、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層(正孔阻止層)、電子注入層、陰極のように層を積層する構成が用いられ、有機発光層にホスト化合物とりん光発光性の化合物が用いられてきた。
さらに、この有機EL素子は、長期にわたる駆動に伴う有機EL素子の発光輝度減衰を抑制し、実用的に絶え得るものとする技術を確立することである。この課題については有機EL素子の構成材料に用いる各種有機化合物の純度が、発光効率や、発光強度の減衰に強く影響を及ぼすという記載がある(非特許文献3、非特許文献4参照)。しかし化合物の構造、性質等が有機EL素子の性能に与える影響については明らかにされていないだけでなく、定量的に解明する方法も確立されていなかった。
また、りん光性発光材料を含まない有機EL素子においては、初めて実用的な素子における不純物の定量的な許容範囲が示され、実施例としてその許容範囲が500ppmまでが記載されている(特許文献3)。しかし、特許文献3には、りん光発光物質を含有した場合の記載がなく、実用的なりん光発光性有機EL素子での不純物の定量的な影響に関しては何ら言及されておらず不明である。また、特許文献4では高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により、不純物の濃度を定量しているが、不純物の濃度が低い場合、分解能が悪くなり正確な定量に限界がある。そのため、より高感度な分析による不純物を定量し、さらに不純物を軽減した有機EL素子が求められる。
【0004】
さらに、特許文献4には、不純物の含有量が1.0質量%以下(ほぼ10000ppm以下に相当)〜0.1質量%以下(ほぼ1000ppm以下に相当)である有機化合物層を有する発光素子が提案されている。この素子に用いる材料の純度は高速液体クロマトグラフィーにより99.9%以上と確認しているが、不純物濃度0.1%(1000ppm)の検出が限界だということを示しており、かつ不純物が有機化合物層を構成する有機化合物に由来する分解生成物であることが好ましく、実施例では高速液体クロマトグラフィーにより99.9%以上と確認されたα−NPDを熱分解させて用いており、ハロゲン含有量の影響については何も言及されていない。
特許文献5には、クロスカップリング反応により生じうる不純物の含有量が0.5質量%以下(ほぼ5000ppm以下に相当)〜0.1質量%以下(ほぼ1000ppm以下に相当)である有機化合物層を有する発光素子が提案されている。しかしながら、不純物としては反応に用いた原料のハロゲン原子や金属原子が水素で置き換わったものを想定しており、高速液体クロマトグラフィー(検出限界0.05%としている)により不純物が検出されない精製α−NPDを用いている場合でも不純物はビフェニルであり、なんらハロゲン化物の影響について言及されていない。
特許文献6では、重合体成分中に燐光発光剤が含有されている発光性重合体組成物が提案されており、その燐光発光剤である燐光のイリジウム錯体化合物において、含有するそのダイマーの不純物濃度が1000ppm以下であることが好ましい旨の記載がなされている。その実施例ではその塩素原子を含んだダイマー濃度が100ppm以下のイリジウム錯体化合物をポリマーに混合した発光層形成用塗布液が用いられている。しかしながら、直接ハロゲン濃度が素子性能に影響する記載は無く、かつ直接ハロゲンを検出する手法を用い検出したという記載は無い。また、遊離ハロゲン原子を含む材料に含まれる全ハロゲン質量濃度についても分析されていないので、イリジウム錯体が含有するハロゲン量を測定しているとは言えず、真の塩素濃度は不明である。また、用いるポリマーの不純物量に関する記載もない。
【0005】
また、りん光発光性の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、高発光効率が期待されるため、通電劣化が深刻な問題となる。ハロゲン化合物は蛍光発光性有機エレクトロルミネッセンス素子でも古くからいわれている通り消光因子として働く場合が多い。りん光発光性素子では発光寿命がマイクロ秒オーダーと比較的長く、かつ発光層中を励起子が拡散する割合が蛍光型に比べて大きいため、少しのハロゲン不純物が存在したとしても、不純物と励起子が出会う確率が蛍光型素子に比べて高くなるので、発光寿命がナノ秒のオーダーで速い蛍光発光性素子に比べてより消光される寄与が大きいと考えられる。そこで、りん光発光性素子では蛍光発光性素子に比べてさらにハロゲンの質量濃度をさげる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−239655号公報
【特許文献2】特開平7−138561号公報
【特許文献3】特許第3290432号公報
【特許文献4】特開2002−373785号公報
【特許文献5】特開2002−373786号公報
【特許文献6】特開2003−221484号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.F.O'Brien and M.A.Baldo et al "Improved energy transferin electrophosphorescent devices" Applied Physics letters Vol. 74 No.3, pp442-444, January 18, 1999
【非特許文献2】M.A.Baldo et al "Very high- efficiencygreen organic light-emitting devices based on electrophosphorescence" Applied Physics letters Vol.75 No.1, pp4-6, July 5, 1999
【非特許文献3】月刊ディスプレイ9 月号15頁(1995)
【非特許文献4】応用物理,第66巻第2号114頁(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光輝度及び発光効率が高く、寿命の長い有機EL素子及び有機EL素子用材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、りん光発光性有機EL素子において発光輝度、効率及び寿命に悪影響を与えるハロゲン元素の不純物を特定し、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)を用いた高感度で定量的な解析の結果、ハロゲン元素濃度の上限値が発光性能に与える影響が蛍光型有機EL素子よりも厳しいことを見出し、また、有機薄膜層に含まれる有機EL素子用材料の不純物としてのハロゲン元素濃度を極めて低減したりん光発光性有機EL素子を作製し、評価した結果、発光輝度、効率及び半減寿命が向上することを見出し、特に発光輝度と半減寿命においては飛躍的に向上させることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が50ppm以下である有機EL素子、
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素及びヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計が40ppm以下である有機EL素子、
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素のハロゲン元素質量濃度が30ppm以下である有機EL素子、
不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度が、それぞれ誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されてなる有機EL素子用材料、
ICP−MS分析又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmであるりん光発光性有機金属錯体、
ICP−MS分析又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmである有機EL素子用ホスト材料、
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、前記発光層が前記りん光発光性有機金属錯体及び前記ホスト材料を用いて形成されてなる有機EL素子
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機EL素子は、発光層に含まれる不純物としてのハロゲン元素質量濃度を極めて低濃度としたことにより、発光輝度及び発光効率が高く、寿命の長い有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1及び比較例1の有機エレクトロルミネッセンス素子を低電圧駆動したときの、駆動時間に対する発光輝度の変化を示す図である。
【図2】実施例1及び比較例1の有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動したときの、駆動時間に対する電圧の変化を示す図である。
【図3】実施例2及び比較例2の有機エレクトロルミネッセンス素子を低電圧駆動したときの、駆動時間に対する発光輝度の変化を示す図である。
【図4】実施例3〜5及び比較例3の有機エレクトロルミネッセンス素子を低電圧駆動したときの、駆動時間に対する発光輝度の変化を示す図である。
【図5】実施例3〜5及び比較例3の有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動したときの、駆動時間に対する電圧の変化を示す図である。
【図6】実施例6及び比較例4の有機エレクトロルミネッセンス素子を低電圧駆動したときの、駆動時間に対する発光輝度の変化を示す図である。
【図7】実施例6及び比較例4の有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動したときの、駆動時間に対する電圧の変化を示す図である。
【図8】実施例7、8及び比較例5の有機エレクトロルミネッセンス素子を低電圧駆動したときの、駆動時間に対する発光輝度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が50ppm以下であり、40ppm以下であると好ましく、5ppm以下であるとさらに好ましい。
また、本発明の有機EL素子は、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素及びヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計が40ppm以下であり、30ppm以下であると好ましく、5ppm以下であるとさらに好ましい。
さらに、本発明の有機EL素子は、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素のハロゲン元素質量濃度が30ppm以下であり、5ppm以下であると好ましい。
また、前記各有機EL素子において、前記ハロゲン元素質量濃度の合計の下限が1ppbであると好ましい。
【0014】
本発明に用いる有機EL素子用材料は、不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度が、それぞれ誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されたものであると好ましく、前記ハロゲン元素質量濃度が、1ppb〜50ppmであると好ましく、不純物としての臭素のハロゲン元素質量濃度が30ppm以下であっても好ましい。
本発明で用いるりん光発光性有機金属錯体は、以下で説明する誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmであると好ましい。
本発明で用いる有機EL素子用ホスト材料は、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmであると好ましい。
本発明の有機EL素子は、前記発光層が本発明のりん光発光性有機金属錯体及び本発明のホスト材料を用いて形成されてなると好ましい。
【0015】
前記ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、ハロゲン元素は蛍光量子収率が非常に小さく消光作用を示すために、有機EL素子の発光輝度の減衰や、発光寿命の低下を招くことが知られているが、本発明では、不純物としてのハロゲン元素を上記範囲にのように極めて低減することが好ましいことが判明した。特に合成する際に使用される化合物に含有されているハロゲン元素である臭素、塩素、ヨウ素の含有濃度を上記範囲にのように極めて低減することが好ましい。
さらに、発光層に隣接する正孔輸送層、電子輸送層又は正孔阻止層を形成する材料に含まれる少なくとも1種のハロゲン化物のハロゲン元素質量濃度が20ppm以下であることが好ましく、1ppb〜20ppmであるとさらに好ましく、1ppb〜10ppmであると特に好ましい。また、発光層中のりん光発光性有機金属錯体に含まれる少なくとも1種のハロゲン化物のハロゲン元素質量濃度も同様に20ppm以下であることが好ましく、1ppb〜20ppmであるとさらに好ましく、1ppb〜10ppmであると特に好ましい。
【0016】
ハロゲン元素の定量的分析には、元素分析、ガスクロマトグラフィー分析、HPLC分析、マス(質量)分析を行なう方法があるが、元素分析は感度が低く、また、定量するには値の振れが大きく望ましくない。また、ガスクロマトグラフィーについては揮発性の高い低分子量化合物については有効な分析手段であるが、高沸点化合物については好ましくない。HPLC分析については、ハロゲンイオンについてはイオンクロマトグラフィーで分析でき、あらかじめ保持時間が判明しているものではハロゲン元素をそれぞれ定量的に分析することができる。しかしながら、HPLCでの不純物定量分析では、約100ppmの濃度分析が限界であり、%純度でいえば小数点2桁までが限界(純度99.9X%まで)である。
【0017】
これらの検出限界の問題を解決する装置の一つとして、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS)装置が挙げられる。誘導結合プラズマ(ICP:大気圧のアルゴンガスに高周波エネルギーを与えることによって発生する放電プラズマ)をイオン化源とし、検出部として質量分析装置を組み合わせることで極めて感度が高く、ppb、pptレベルの超微量元素分析が可能である。また、ほとんどの元素が分析可能で、ハロゲン元素の分析もpptレベルで分析できる。装置は主として「イオン化部」、「質量分析部」、「検出・データ処理部」などから構成され、「イオン化部」では数千℃のアルゴンプラズマ中に試料溶液を導入し、分析元素をイオン化する。生成したイオンは「質量分析部」に真空環境下に導入され、質量分析計で各イオンの質量毎に分離される。質量分析計の種類は四重極型質量分析計と磁場型質量分析計(二重収束型)がある。四重収束型は操作が簡便であり、広い質量範囲を高速で走査できる。二重収束型は高い分解能を得ることができ、「分子イオン」の影響を除くことができるため、四重収束型より1桁以上の高感度である。ppb〜ppmレベルの分析ではどちらの分析装置も使用できるので一般的で操作が簡便な四重収束型が望ましい。
しかしながら、誘導結合プラズマ−質量分析ではプラズマのアルゴン、純水中の酸素、水素、大気中の窒素、炭素に起因する分子イオンがバックグラウンドとして検出される。特に塩素、フッ素等は、同質量の化学種がバックグラウンドに多量に含まれるため、定量的な微量分析が困難である。同質量の化学種の例としては、例えば、19Fでは18OH,17OH2 16OH3 等、35Clでは1718O,1618OH,1717OH等が挙げられる。このため、特に材料の合成中間体、材料合成の原料として用いられる塩素化合物の影響を調べるためには別な分析手法が好ましい。その1つの例として電量滴定法が挙げられる。これは石英セルに乗せた試料をアルゴン気流中徐々に燃焼させた後、酸素気流中で完全に燃焼させ、生成したHClガスを脱水浴を通して滴定セルへ導入し、塩素量を滴定する方法である。滴定セル中では、HClガスはAgイオンと反応し、AgClが生成する。そのとき、一定に保たれてる滴定セル中の電解液の電位が変化すると、終点電位に戻すように発生電極対に電解電流を流し、銀発生電極より銀イオン(Ag+ )を発生し、塩素量が滴定される。この分析手法により、試料中の塩素濃度は数ppmまで測定が可能である。
【0018】
また、本発明で有機EL素子に用いる有機化合物材料(ホスト材料)を精製するに際し、昇華精製法は特に昇華性の有機化合物材料には有効な精製法である。昇華精製は一般的には加熱部に昇華精製する試料を置き、そこから縦型又は横型に延びたガラス等で作製された管を設置し、試料を加熱することにより昇華させ、昇華した試料を設置したガラス管に凝結する方法で行われる。しかしながら、昇華した試料をあまりにも低い温度を有する部分に一気に凝結させると、試料に含まれる低分子量の不純物や、高昇華性の不純物が一緒に凝結してしまい、精製純度が低下する。
この問題を解決する手段としては、加熱部の温度制御、凝結部の温度制御、並びに凝結部からさらに加熱部の反対側に離れた部分の温度制御が重要になる。好ましい方法としては、加熱部は、純粋な試料が昇華する温度より少し低い温度に保ち、まず不純物として含まれる低分子量成分や、高昇華性成分を先に昇華させて取り除く方法や、加熱部を純粋な試料が昇華する温度に加熱し、凝結部の温度を加熱部より少し低く純粋な試料のみが凝結する温度に制御することで純度の良い試料をその部分で凝結させ、さらに加熱部と反対側にその部分より緩やかな温度勾配を設け、より低温で昇華する不純物をなるべく純粋な試料の凝結部より離れた位置に凝結させる方法がある。
また、通常、昇華精製は減圧下で行われる。減圧度を高くすることは、昇華するための加熱温度を低くすることができるだけでなく、酸素等を原因とする加熱による有機物の酸化的崩壊を防ぐことができる。減圧度が低い場合、不活性ガス気流中で行わない場合は、試料の酸素付加体の生成あるいは酸化的開裂が起こり、試料が崩壊する場合があるので、通常、大気圧力が1Pa以下の環境下で試料を昇華精製することが好ましい。さらに好ましくは1×10-2Pa以下である。
【0019】
特に、有機EL用材料の昇華精製方法としては、前述したように、減圧下、温度を的確に制御して昇華精製を行なう方法が適している。
低分子量成分や、高昇華性を有する不純物としては、試料の合成に使用される試薬、多段階合成における中間体生成物及びハロゲン化物を含む未反応物、合成に使用した触媒残さ等が含まれる。この方法により、昇華する試料に含まれる様々な不純物を除去できる。
また、特にりん光発光に関与する有機材料においては、酸素付加体(例えばペルオキソ体)が材料中に存在した場合、素子中で何らかの引き金で3重項のクエンチャーである酸素を放出すれば悪影響を及ぼすことは明らかであるので、できる限り酸素を除いた雰囲気下で昇華精製を行なうことが望ましい。そこで、不活性ガス(窒素又はアルゴンガス等)気流中で行う昇華精製も、酸素付加の影響を減じることができるので、好ましく用いることができる。
【0020】
本発明の有機EL素子は、前記有機薄膜層が、りん光発光性有機金属錯体から選ばれる少なくとも1種と、芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物から選ばれる少なくとも1種とを含有すると好ましく、りん光発光性の発光層がこれらの化合物を含有するとさらに好ましい。
前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物が、それぞれ下記一般式(1)又は(2)で表される構造を有するものであると好ましい。
【0021】
【化1】

一般式(1)中、Arは、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の3価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20(好ましくは3〜14)の3価の芳香族複素環基を表し、RA 、RB 及びRC は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20(好ましくは3〜14)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA 、RB 及びRC は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、隣同士で互いに結合していてもよい。
【0022】
一般式(1)において、Arの芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、フルオランテン、アセナフチレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ピレン、トリナフチレン等の芳香族炭化水素の3価の残基が挙げられる。
一般式(1)において、Arの芳香族複素環基としては、例えば、ピロリン、イミダゾリン、ベンゾイミダゾリン、ピラゾリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チオフェン、イソベンゾフラン、チアンスレン、インドリジン、イミダゾピリジン、イソインドール、3H−インドリール、インドール、テトラヒドロカルバゾール、1H−インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン等の芳香族複素環の3価の残基が挙げられる。
また、一般式(1)において、Arが、ベンゼントリイル基、ピリジントリイル基、ピリミジントリイル基又はトリアジントリイル基であると好ましい。
一般式(1)において、RA 、RB 及びRC の芳香族炭化水素基の例としては、それぞれ独立に、前記Arで説明した芳香族炭化水素の1価の残基に加え、この残基にさらに前記Arで説明した芳香族炭化水素基が結合した1価の残基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基及びターフェニル基等が挙げられる。
一般式(1)において、RA 、RB 及びRC の芳香族複素環基の例としては、それぞれ独立に、前記Arで説明した芳香族複素環の1価の残基に加え、フェニルピリジル基、フェニルピリジニル基等の前記Arで説明した芳香族炭化水素基と芳香族複素環基が結合した1価の残基や2つの芳香族複素環基が結合した1価の残基等が挙げられる。
【0023】
【化2】

一般式(2)中、Ar’は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の2価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20(好ましくは3〜14)の2価の芳香族複素環基を表し、RA 及びRB は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20(好ましくは3〜14)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA 及びRB は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0024】
一般式(2)において、Ar’の芳香族炭化水素基の例としては、それぞれ独立に、前記一般式(1)のArで説明した芳香族炭化水素の2価の残基等が挙げられる。
一般式(2)において、Ar’の芳香族複素環基の例としては、それぞれ独立に、前記一般式(1)のArで説明した芳香族複素環の2価の残基等が挙げられる。
また、一般式(2)において、Ar’が、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、フェニルピリミジンジイル基又はフェニルピリジンジイル基であると好ましい。
一般式(2)において、RA 及びRB の芳香族炭化水素基の例としては、それぞれ独立に、前記Arで説明した芳香族炭化水素の1価の残基等が挙げられる。
一般式(2)において、RA 及びRB の芳香族複素環基の例としては、それぞれ独立に、前記Arで説明した芳香族複素環の1価の残基等が挙げられる。
【0025】
本発明の有機EL素子において、前記有機薄膜層に含まれるホスト材料の不純物である前記ハロゲン元素を含むハロゲン化物としては、下記一般式(3)〜(5)で表される少なくとも1種の構造を有するものや下記一般式(6)及び/又は(7)で表される構造を有するもの等が挙げられる。
【化3】

【0026】
一般式(3)〜(5)中、Ar、RA 及びRB は前記と同じであり、その例は、前記一般式(1)で説明したものと同様である。
一般式(3)中、X1 はハロゲン原子を表し、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、特に臭素、塩素、ヨウ素であるものを低減すると好ましい。
一般式(4)中、X2 〜X3 は、一方がハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子又は水素原子を表す。ハロゲン原子の例としては、前記X1 と同様である。
一般式(5)中、X4 〜X6 は、少なくとも1つがハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子または水素原子を表す。ハロゲン原子の例としては、前記X1 と同様である。
ただし、X2 〜X6 が水素原子である場合、Arはその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2 〜X3 又はX4 〜X6 において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。
【0027】
【化4】

一般式(6)〜(7)中、Ar’及びRA は前記と同じであり、その例は、前記一般式(2)で説明したものと同様である。
一般式(6)中、X1 は前記と同じである。
一般式(7)中、X2 〜X3 は前記と同じである。
ただし、X2 〜X3 が水素原子である場合、Ar’はその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2 〜X3 において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。
【0028】
本発明の有機EL素子は、前記発光層が、前記一般式(1)及び/又は(2)で表される構造を有する芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環化合物を含有すると好ましい。
本発明の有機EL素子において、前記発光層が、不純物として、前記一般式(3)〜(5)で表される少なくとも1種の構造を有するハロゲン化物、もしくは前記一般式(6)及び/又は(7)で表される構造を有するハロゲン化物を含有することがある。
【0029】
本発明で用いる芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物は、有機EL素子のホスト材料であると好ましい。このホスト材料とは、正孔と電子の注入が可能であって、正孔及び/又は電子が輸送され、再結合して蛍光を発する機能を有するものである。
また、本発明で用いる一般式(1)及び(2)の化合物は、1重項のエネルギーギャップが2.8〜3.8eVと高く、3重項のエネルギーギャップも2.4〜3.3eVと高いものであると好ましく、りん光素子用のホスト材料として有用となる。ここで、りん光素子とは、3重項準位のエネルギー状態から基底1重項準位の状態への遷移に基づく発光の強度が他の物質に比べて高い物質、例えば、周期律表7〜11族から選ばれる少なくとも1つの金属を含む有機金属錯体などのりん光物質を含む、いわゆるりん光を利用した有機電界発光素子のことである。
【0030】
本発明の有機EL素子は、前記したように陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜層を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間にりん光発光性の発光層を設けている。りん光発光性の発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有してもよい。また、発光材料は、極めて高い蛍光量子効率、高い正孔輸送能力及び電子輸送能力を併せ持ち、均一な薄膜を形成することが好ましい。多層型の有機EL素子としては、(陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子輸送層(電子注入層)/陰極)、(陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/電子輸送層(電子注入層)/陰極)等の多層構成で積層したものがある。
りん光発光性の発光層には、必要に応じて、前記発光材料に加えてさらなる公知のホスト材料、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を使用し、組み合わせて使用することもできる。有機EL素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができ、他のドーピング材料により、発光輝度や発光効率を向上させたり、りん光発光に寄与する他のドーピング材料と組み合わせて用いることにより、従来の発光輝度や発光効率を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の有機EL素子における正孔輸送層、発光層、電子輸送層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されてもよい。その際、正孔輸送層の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子輸送層の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機薄膜層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
本発明の有機EL素子は、電子輸送層や正孔輸送層が、前記した芳香族炭化水素化合物及び/又は芳香族複素環化合物を含有してもよく、さらに、正孔注入層、電子注入層、正孔障壁層が前記化合物を含有してもよく、りん光発光性化合物と混合して用いてもよい。
【0032】
前記芳香族炭化水素化合物及び/又は芳香族複素環化合物と共に有機薄膜層に使用できる発光材料又はホスト材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体及び蛍光色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の有機EL素子においては、発光層が、前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物から選ばれる少なくとも一種と共に、発光材料として素子の外部量子効率をより向上させることができる点でりん光発光性有機有機金属化合物から選ばれる少なくとも一種を含有すると好ましい。
有機金属化合物の金属原子として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を含有する金属錯体が挙げられ、オスミウム、イリジウム、白金を含有する金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、白金錯体がさらに好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が最も好ましい。
有機金属化合物としては、下記一般式(V)で表されるものが挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、A1 は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基であり、前記置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜30のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜30のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、アセチル基等のアシル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、シアノ基を表す。
2 は、窒素を複素環を形成する原子として含有する置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表し、好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジン基、トリアジン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリン基、フェナントリジン基、イミダゾピリジン基、インドール基、ジアゾール基、トリアゾール基であり、前記置換基としては、A1 と同様のものが挙げられる。
1 を含む環とA2 を含む環は一つの縮合環を形成してもよく、このようなものとしては、例えば、7,8-ベンゾキノリン基等が挙げられる。
Qは、周期表7〜11族から選ばれる金属であり、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を表す。
Lは、2座型の配位子を表し、好ましくは、アセチルアセトナート等のβ−ジケト型の配位子、ピコリン酸配位子、フェニルピリジン系配位子、ベンゾキノリン系配位子、キノリノール系配位子、ビピリジル系配位子、フェナントロリン系配位子等、ホスフィン系配位子、亜リン酸エステル系配位子、ホスフィニン系配位子、ピリジニルジアゾール系配位子及びピリジニルトリアゾール系配位子の中から選ばれる。
m及びnは整数を表し、Qが二価金属の場合は、n=2、m=0であり、Qが三価金属の場合は、n=3かつm=0、又はn=2かつm=1である。)
【0035】
前記一般式(V)で示される有機金属化合物の具体例を以下に示すが、何ら下記の化合物に限定されるものではない。
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層又は電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
これらの正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、芳香族三級アミン誘導体又はフタロシアニン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)−トリフェニルアミン、4,4',4''−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)−トリフェニルアミン、4,4',4''−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、又はこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2 Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2 SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
また、正孔注入材料に加え、正孔阻止材料を用いることができ、正孔阻止材料としては、特に限定されないが、バソフプロリン(BCP)、4−ビフェニルオキソラートアルミナム(III) ビス(2−メチル−8−キノリナート)4−フェニルフェノラート(BAlq)等が挙げられる。
以上の正孔注入材料及び正孔阻止材料は、正孔輸送層(正孔注入層)の材料としても用いられる。
【0041】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、キノキサリン、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体及びシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの電子注入材料の中で、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物又は含窒素環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、含窒素環誘導体は、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族複素環化合物が好ましく用いられる。該窒素環誘導体の具体的な化合物としては、5員環であるアゾ−ル骨格を有するものが好ましい。アゾ−ル骨格を有する化合物とは、炭素原子、水素原子以外の原子を基本骨格内に2つ以上有する化合物であり、単環もしくは縮合環であってもよい。前記含窒素誘導体としては、好ましくはN、O、S原子から選ばれる原子を2つ以上有するものであり、より好ましくは少なくとも1つN原子を骨格内に有するものであり、さらに好ましくはN原子を骨格内に2つ以上有するものである。また、ヘテロ原子は縮合位置にあっても、非縮合位置にあってもよい。ヘテロ原子を2つ以上含む含窒素誘導体としては、例えばピラゾール、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、インダゾール、プリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ペリミジン、フェナントロリン、ピロロイミダゾール、ピロロトリアゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、イミダゾイミダゾール、イミダゾピリダジン、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、トリアゾロピリジン、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、トリアジンなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、該電子輸送性ホスト材料として、イミダゾピリダジン、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール等の縮合アゾ−ル骨格を有する化合物又はトリアジン骨格を有する化合物がより好ましく、さらに好ましくは縮合イミダゾピリジンである。
以上の電子注入材料は、電子輸送層(電子注入層)の材料としても用いられる。
【0043】
また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電荷注入性を向上させることもできる。
本発明の有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等及びそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0044】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方の電極と前記有機薄膜層との間に無機化合物層を有していてもよい。無機化合物層に使用される好ましい無機化合物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、SiOX 、AlOX 、SiNX 、SiON、AlON、GeOX 、LiOX 、LiON、TiOX 、TiON、TaOX 、TaON、TaNX 、Cなど各種酸化物、窒化物、酸化窒化物である。特に陽極に接する層の成分としては、SiOX 、AlOX 、SiNX 、SiON、AlON、GeOX 、CeOX 、Cが安定な注入界面層を形成して好ましい。また、特に陰極に接する層の成分としては、LiF、MgF2 、CaF2 、MgF2 、NaFが好ましい。
【0045】
本発明の有機EL素子は、効率良く発光させるために、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板も透明であることが望ましい。
透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムが挙げられる。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0046】
本発明の有機EL素子は、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
本発明の有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり発光効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解又は分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであってもよい。また、いずれの層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ICP−MS分析は以下のような使用条件で行った。
ICP−MS分析の装置はAgilent 7500a(横河アナリティカルシステムズ社製)を用いた。また、試料の前処理には燃焼−アルカリ吸収前処理装置としてダイヤインスツルメンツ社製TSX−10型(三菱化学社製)の燃焼部を用いた。
Br(臭素)分析
前処理装置の出口の吸収管に、アルカリ吸収原液88mmol Na2CO3/24mmol NaHCO3 0.75mlとH22 100μlを入れ15mlにメスアップした。この時のそれぞれのアルカリ濃度はNa2CO3 4.4mmol/NaHCO3 1.2mmol となる。H22 の添加は、Brの一部がアルカリ吸収液に吸収されないBr2 となると予想されるために、アルカリ吸収液に吸収されるHBrに還元するために行った。次に試料50mgを燃焼ボートに採り燃焼させ、約15分間保持した。その後、燃焼ボートに純水 100μlを採取し規定の場所で約1分間保持した(吸収液までのラインに付着したBrを回収)。この溶液について規定の条件に設定したICP−MS分析装置でBrを定量した。ICP−MS分析での定量時、測定溶液と標準溶液のマトリックスマッチングは正確度に大きく影響を与えるので、マトリックスマッチングを行った。燃焼−アルカリ吸収時、アルカリ吸収液にH22 を添加するのは、Br2 をHBrに還元し吸収液に完全に吸収させるために不可欠である。また試料を燃焼した後、純水を燃焼炉内の一定の位置に移動し水蒸気を発生させ、これにより吸収容器までに付着したBrを回収し回収率の向上をはかった。
なお、あらかじめ回収率が90%以上となる試料の必要量はテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド([CH3(CH2)]4N・Br)/トルエン溶液を任意の量を採取し、燃焼−アルカリ吸収させ回収率を求めた結果、50mgを燃焼すればよいことがわかった。
I(ヨウ素)分析
Br分析と同様に行ったが、Br分析時にBr2 を還元するために用いたH22 の代わりに、Iの分析では5%ヒドラジン溶液を同量用いた。このヒドラジンもI2 を還元し、アルカリ吸収液に全て吸収させるために用いた。なお、あらかじめ回収率が90%以上となる試料の必要量はテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド([CH3(CH2)]4N・I)/トルエン溶液を任意の量採取し、燃焼−アルカリ吸収させ回収率を求めた結果、Brの時と同様に50mgを燃焼すればよいことがわかった。
また、実施例及び比較例において、電量滴定分析は以下の使用条件で行った。
電量滴定装置は、TSX−100(ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。また、滴定に用いる電解液、対極液、参照電極の内部液及び参照電極の外部液は以下の様に調製、又は以下の濃度の溶液を用いた。
電解液:無水酢酸ナトリウム675mg を酢酸425ml に溶解し、純水を加え500ml にした。
対極液:硝酸カリウム50g に純水を加え500ml として用いた。
参照電極の内部液:1M塩化カリウム溶液を用いた。
参照電極の外部液:1M硝酸カリウム溶液を用いた。
試料は全て30mgを計量し、石英ガラス製の燃焼ボートに入れた。アルゴンガスを流しながら試料を900℃に加熱し、酸素を吹き込みながら完全に燃焼させ、発生したガスは加熱配管を通り、脱水浴を経由し滴定セル内に導入し、滴定した。
【0048】
実施例1及び比較例1
以下に示す合成スキームにて発光材料1(以下、[Host1]とする)を合成した。
【化10】

【0049】
化合物[Host1]は以下のようにして合成した。
合成中間体(1)の合成
3,5−ジブロモベンズアルデヒド18.0g(68mmol) 、アセトフェノン9.0g(75mmol)をメタノール200ml に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液 70ml(70mmol) を滴下し、室温で30分間撹拌した。反応終了後、析出した結晶を濾過してメタノールで洗浄し、合成中間体(1)20.4g (収率82% )を得た。
合成中間体(2)の合成
合成中間体(1)10.0g (27mmol)、ベンズアミジン塩酸塩4.4g(28mmol)をエタノール70mlに懸濁し、水酸化ナトリウム3.3g(60mmol)を加えた後、18時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却し、水40mlを加え、1時間攪拌した後、析出した結晶を濾過してエタノールで洗浄し、合成中間体(2)6.2g(収率49% )を得た。得られた結晶は90MHz 1H−NMR 及びFD-MS (フィールドディソープションマススペクトル)により合成中間体(2)であることを確認した。また、FD-MS の測定結果を以下に示す。
FD-MS ; calcd for C22H14N2Br2=466, found, m/z=466 (M+ , 100)
さらに最低励起三重項エネルギー準位T1を測定した。溶液は濃度10μmol/l で溶媒をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:イソプロピルアルコール=5:5:2容積比)とした。りん光測定は77Kにて石英セル中、(株)日立製作所製蛍光光度計F-4500を用いて行い、得られたりん光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き横軸との交点である波長(発光端)を求め、この波長をエネルギー値に換算した。その結果最低励起三重項エネルギー準位T1は2.9eVであった。
化合物[Host1]の合成
中間体(2)3.0g(6.4mmol) 、カルバゾール2.3g(14mmol)、よう化銅0.12g(0.6mmol)、リン酸カリウム4.2g(20mmol)を1,4−ジオキサン21mlに懸濁し、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン0.8ml(6.4mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、18時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却した後、塩化メチレン、水を順に加え、二層分離した後、水で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去後、残さを1,4−ジオキサン21mlに懸濁し、よう化銅0.12g(0.6mmol)、リン酸カリウム2.9g(14mmol)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン0.8ml(6mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、18時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却し、塩化メチレン、水を加えて二層分離した後、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去後、酢酸エチル30mlを加えて析出した結晶を濾過し、続いて酢酸エチルで洗浄して黄白色結晶3.5g(収率85% )を得た。得られた結晶は90MHz 1H−NMR 及びFD-MS により目的物[Host1]であることを確認した。また、FD-MS の測定結果を以下に示す。
FD-MS ; calcd for C46H30N4=638, found, m/z=638 (M+ , 100)
この未精製[Host1]を質量分析法により分析したところ、1つの不純物ピーク(ハロゲン化物(A))を確認した。
この不純物を分取精製し、90MHz 1H-NMR及びFD-MS により分析した結果、ハロゲン化物(A)は下記の構造であると同定された。
1H-NMR(90MHz ,CDCl3):7.2-8.8 (m,22H)
FD-MS ; calcd for C34H22N3Br=551, found, m/z=551,553
【0050】
【化11】

【0051】
さらに、最低励起三重項エネルギー準位T1を測定した。溶液は濃度10μmol/lで溶媒をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2容積比)とした。りん光測定は77Kにて石英セル中、(株)日立製作所製蛍光光度計F-4500を用いて行い、得られたりん光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き横軸との交点である波長(発光端)を求め、この波長をエネルギー値に換算した。その結果最低励起三重項エネルギー準位T1は2.9eV であった。さらに[Host1]についてICP-MS分析を行った結果、臭素質量濃度及びヨウ素質量濃度はそれぞれ順に325ppm,10ppm であった。また、この[Host1]について電量滴定による塩素分析を行った結果、塩素質量濃度は22ppm であった。
次に、この未精製[Host1]を、ボート温度 340℃、1Paの条件で不純物を分離する目的で昇華精製を行ない、淡黄色の粉末を得た。以下、これを精製[Host1]という。この精製[Host1]についてICP-MS分析を行った結果、臭素質量濃度及びヨウ素質量濃度はそれぞれ順に17ppm ,5ppmであった。また、電量滴定による塩素分析の結果、塩素質量濃度は7ppmであった。
次に、未精製[Host1]と精製[Host1]を発光層の材料として使用し、下記構成の有機EL素子を2種類作製し、未精製[Host1]を用いたものを素子1(比較例1)とし、精製[Host1]を用いたものを素子2(実施例1)とする。
素子1(比較例1);ITO/α-NPD/未精製[Host1] 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
素子2(実施例1);ITO/α-NPD/精製[Host1] 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
【0052】
有機EL素子は、以下のようにして作製した。
25mm×75mm×0.7mm 厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極が形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚40nmの下記4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル膜(「α−NPD膜」と略記する。)を成膜した。このα−NPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、α−NPD膜の成膜に続けてこのα−NPD膜上に膜厚30nmの[Host1]をホスト材料として蒸着し発光層を成膜した。同時にりん光発光性のIr金属錯体ドーパントとして下記トリス(2−フェニルピリジン)Ir(以下「Ir(ppy)3 」と略記する。)を添加した。発光層中におけるIr(ppy)3 の濃度は5質量%とした。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmの下記(1,1’−ビスフェニル)−4−オラート)ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(以下、「BAlq膜」と略記する。)を成膜した。このBAlq膜は正孔障壁層として機能する。さらにこの膜上に膜厚40nmの下記8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(以下、「Alq膜」と略記する。)を成膜した。このAlq膜は電子注入層として機能する。この後、ハロゲン化アルカリ金属であるLiFを0.2nm の厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nm の厚さに蒸着した。このAl/LiFは陰極として機能する。このようにして有機EL素子を作製した。
【化12】

【0053】
得られた素子1及び素子2に対し、電圧印加して発光テストを行なったところ、どちらも緑色の均一発光が得られた。
また、素子1及び素子2を、それぞれ初期輝度1500nit にて定電流駆動させ、駆動時間に対する輝度の変化を測定し、その結果を図1に示す。同図に示したように、輝度750nitまで減衰する相対時間比は、素子1:素子2(=70時間:467時間)と約1:7であり、臭素質量濃度が17ppm の精製[Host1]を用いた実施例1の有機EL素子の方が、大幅に寿命が長かった。
また、素子1及び素子2について95時間駆動後の電圧上昇を測定したところ、1.51V(素子1)、1.15V(素子2)であり、実施例1の有機EL素子の方が、電圧上昇が低かった。その結果を図2に示す。
なお、同じ発光層に添加したIr(ppy)3 も、臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により[Host1]と同様な方法で分析したところ、質量濃度はそれぞれ順に5ppm,5ppm,12ppm であった。さらに、α−NPD,BAlqについても臭素,ヨウ素をICP-MSで、さらに塩素を電量滴定法により、[Host1]と同様な方法で分析したところ、臭素については、質量濃度は順に2ppm,3ppmであり、ヨウ素についてはどちらも2ppm、塩素については、質量濃度は順に3ppm,5ppmであった。
【0054】
実施例2及び比較例2
以下に示す合成スキームにて発光材料2(以下、[Host2]とする)を合成した。
【化13】

【0055】
化合物[Host2]は以下のようにして合成した。
合成中間体(3)の合成
1,3,5−トリブロモベンゼン5.0g(16mmol)、1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾール5.3g(31mmol)、よう化銅0.3g(0.4mmol) 、リン酸カリウム13.8g(65mmol) を1,4−ジオキサン50mlに懸濁し、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン1.9ml(16mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、26時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却し、塩化メチレン、水を加え、二層分離した後、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、合成中間体(3)を1.4g(収率22% )を得た。
合成中間体(4)の合成
ブロモ−3,5−ジフェニルベンゼン10.0g(32mmol) をトルエン50ml、エーテル50mlに溶解し、アルゴン雰囲気下−16〜−42℃でノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M) 27ml(42mmol) を加え、−42℃から0℃で1時間撹拌した。次に反応溶液を−70℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル22ml(97mmol)をエーテル25mlに希釈した溶液を滴下し、−70℃で1時間撹拌した後、室温まで昇温して6時間攪拌した。更に反応溶液に5%塩酸70mlを滴下した後、室温で45分間攪拌した。反応溶液を二層分離した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を5分の1程度まで減圧留去後、ノルマルヘキサン10mlを加え、析出した結晶を濾過し、トルエン−ノルマルヘキサン混合溶媒、ノルマルヘキサンで順次洗浄し、合成中間体(4)7.0g(収率78% )を得た。
化合物[Host2]の合成
中間体(3)1.4g(3.5mmol) 、合成中間体(4)1.9g(7.0mmol) 、テトラキス( トリフェニルホスフィン) パラジウム0.12g(0.10mmol) を1,2−ジメトキシエタン21mlに懸濁し、炭酸ナトリウム2.2g(21mmol)を水11mlに溶解した溶液を加え、9時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却した後、析出した結晶を濾過し、水、メタノール、酢酸エチルで順次洗浄し、結晶2.2g(収率88% )を得た。得られた結晶は、90MHz 1H-NMR、FD-MS により目的物[Host2]であることを確認した。また、FD-MS の測定結果を以下に示す。
FD-MS ; calcd for C54H41N=703, found, m/z=703 (M+ , 100)
この未精製[Host2]を高速液体クロマトグラフィー法、NMR 及び質量分析法により分析し、不純物の構造解析の結果、[Host2]の反応中間体である下記ハロゲン化物(B)が不純物として検出された。
この不純物を分取精製し、90MHz 1H-NMR及びFD-MS により分析した結果、ハロゲン化物(B)は下記の構造であると同定された。
1H-NMR(90MHz ,CDCl3):7.2-8.8 (m,22H)
FD-MS ; calcd for C30H28NBr=553, found, m/z=553,555
【0056】
【化14】

【0057】
また,未精製[Host2]について、臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により[Host1]と同様な方法で測定したところ、質量濃度はそれぞれ順に420ppm,50ppm ,28ppm であった。
次に、この未精製[Host2]を、ボート温度 340℃、1Paの条件で不純物を分離する目的で昇華精製を行ない、淡黄色の粉末を得た。以下、これを精製[Host2]という。この精製[Host2]を高速液体クロマトグラフィー法により分析した結果ハロゲン化物(B)は検出されなかった。さらに、精製[Host2]について、臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により[Host1]と同様な方法で測定したところ,それぞれ順に質量濃度は14ppm ,3ppm,3ppmであった。また、同じ発光層に添加したFIrpicも、臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により[Host1]と同様な方法で分析したところ、それぞれ順に質量濃度は3ppm,3ppm,18ppm であった。
次に、未精製[Host2]と精製[Host2]を発光層の材料として使用し、下記構成の有機EL素子を2種類作製し、未精製[Host2]を用いたものを素子3(比較例2)とし、精製[Host2]を用いたものを素子4(実施例2)とする。
素子3(比較例2);ITO/CuPc/TPAC/未精製[Host2] 及びFIrpic/Alq/LiF/Al
素子4(実施例2);ITO/CuPc/TPAC/精製[Host2] 及びFIrpic/Alq/LiF/Al
【0058】
有機EL素子は、以下のようにして作製した。
25mm×75mm×0.7mm 厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極が形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚10nmの下記銅フタロシアニン膜(以下「CuPc膜」と略記する。)を成膜した。このCuPc膜は、正孔注入層として機能する。CuPc膜の成膜に続けて、この膜上に膜厚30nmの下記1,1’−ビス[4−N,N−ジ(パラトリル)アミノフェニル]シクロヘキサン膜(以下「TPAC膜」と略記する。)を成膜した。このTPAC膜は正孔輸送層として機能する。さらに、TPAC膜上に膜厚30nmの[Host2]をホスト材料として蒸着し発光層を成膜した。同時にりん光性のIr金属錯体として下記Irビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナート−N,C2']ピコリナート(以下「FIrpic」と略記する。)を添加した。発光層中におけるFIrpicの濃度は7質量%とした。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚30nmのAlq膜を成膜した。このAlq膜は電子注入層として機能する。この後、ハロゲン化アルカリ金属であるLiFを0.2nm の厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nm の厚さに蒸着した。このAl/LiFは陰極として機能する。このようにして有機EL素子を作製した。
【化15】

【0059】
得られた素子3及び素子4に対し、電圧印加して発光テストを行なったところ、どちらも青緑色の均一発光が得られた。
また、得られた素子3及び素子4を、それぞれ初期輝度200nitにて定電流駆動させ、駆動時間に対する輝度の変化を測定し、その結果を図3に示す。同図に示したように、輝度100nitまで半減する相対時間比は、素子3:素子4(=0.7時間:71時間)と1:100であり、臭素質量濃度が14ppm の精製[Host2]を用いた実施例2の有機EL素子の方が、大幅に寿命が長かった。さらに、TPAC,FIrpicについても臭素,ヨウ素をICP-MSで、さらに塩素を電量滴定法により、[Host1]と同様な方法で分析したところ、臭素についてはどちらも質量濃度は3ppmであり、ヨウ素については質量濃度はどちらも2ppm、塩素については質量濃度は順に3ppm,12ppmであった。
【0060】
実施例3〜5及び比較例3
以下に示す合成スキームにて発光材料3(以下、[Host3]とする)を合成した。
【化16】

【0061】
化合物[Host3]は以下のようにして合成した。
合成中間体(5)の合成
3,5−ジブロモフェニルボロン酸3.0g(11mmol)、ヨードベンゼン2.2g(11mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン) パラジウム0.25g(0.21mmol) を1,2−ジメトキシエタン32mlに懸濁し、炭酸ナトリウム3.4g(32mmol)を水16mlに溶解した溶液を加え、アルゴン雰囲気下、9時間加熱環流した。反応溶液を二層分離した後、有機層を5%炭酸ナトリウム、5%塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)で精製し、3,5−ジブロモビフェニル(5)2.5g(収率75% )を得た。
化合物[Host3]の合成
中間体(5)20g(64mmol) 、上記ボロン酸37g(130mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン) パラジウム2.2g(1.9mmol) を1,2−ジメトキシエタン400ml に懸濁し、炭酸ナトリウム41g(380mmol)を水200ml に溶解した溶液を加え、アルゴン雰囲気下、18時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却後、析出した結晶を濾過し、水で2回、メタノールで2回、酢酸エチルで2回順次洗浄し、粗結晶を得た。得られた結晶を塩化メチレン1000mlに溶解して水洗し、シリカゲル、硫酸ナトリウムを載せたグラスフィルターを用いて減圧濾過した。有機溶媒を減圧留去後、酢酸エチル350ml を加え、析出した結晶を濾過し、酢酸エチル200ml で2回洗浄し、結晶44g (回収率92% )を得た。減圧下昇華精製して、精製結晶34g (回収率77% )を得た。得られた結晶は、90MHz 1H-NMR、FD-MS により目的物[Host3]であることを確認した。また、FD-MS の測定結果を以下に示す。
FD-MS ; calcd for C48H32N2=636, found, m/z=636
この未精製[Host3]を高速液体クロマトグラフィー法、NMR 及び質量分析法により分析し、不純物の構造解析の結果、[Host3]の反応中間体である下記ハロゲン化物(C)が不純物として検出された。
この不純物を分取精製し、90MHz 1H-NMR及びFD-MS により分析した結果、ハロゲン化物(C)は下記の構造であると同定された。
1H-NMR(90MHz ,CDCl3):7.2-8.8 (m,20H)
FD-MS ; calcd for C30H20NBr=473, found, m/z=473,475
【0062】
【化17】

【0063】
また,未精製[Host3]について臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により[Host1]と同様な方法で測定したところ、それぞれ順に質量濃度は390ppm,10ppm ,10ppm であった。
次に、得られた未精製[Host3]全量34g について、温度段差を制御した減圧昇華精製装置で昇華精製した。温度制御については加熱部を345 ℃とし、加熱部から離れるに従って温度が下がり、加熱部から一番離れた場所が260 ℃となるように制御した。真空到達度は1.1×10-3Paであった。昇華精製された[Host3]は凝結した場所により、3つのサンプルに分割した。加熱部に近いほうからS1、S2、S3とラベルをし、S1から順に8.8g、17.4g 、4.8gを回収した(回収率91%)。次に各サンプルについて臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法により精製[Host1]と同様な方法で測定したところ、臭素質量濃度はS1,S2,S3の順に24ppm ,16ppm ,13ppm であった。また、ヨウ素質量濃度はS1,S2,S3の順に5ppm,4ppm,4ppm、塩素質量濃度はS1,S2,S3の順に4ppm,5ppm,3ppmであった。
【0064】
次に、未精製[Host3]と精製[Host3](S1、S2、S3)を発光層の材料として使用し、下記構成の有機EL素子を4種類作製し、未精製[Host3]を用いたものを素子8(比較例3)とし、精製[Host3](S1、S2、S3)を用いたものをそれぞれ素子5(実施例3)、素子6(実施例4)、素子7(実施例5)とする。有機EL素子は、実施例1及び比較例1において、[Host1]の代わりに、上記未精製[Host3]と精製[Host3](S1、S2、S3)をそれぞれ用いた以外は同様にして作製した。
素子5(実施例3);ITO/α-NPD/精製[Host3](S1) 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
素子6(実施例4);ITO/α-NPD/精製[Host3](S2) 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
素子7(実施例5);ITO/α-NPD/精製[Host3](S3) 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
素子8(比較例3);ITO/α-NPD/未精製[Host3] 及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
得られた素子5〜8に対し、電圧印加して発光テストを行なったところ、いずれも緑色の均一発光が得られた。
また、得られた素子5〜8を、それぞれ初期輝度1500nit にて定電流駆動させ、駆動時間に対する輝度の変化を測定し、その結果を図4に示す。同図に示したように、輝度750nitまで半減する相対時間比は、素子5:素子6:素子7:素子8(=1083時間:3988時間:4623時間:57時間)と約1:4:4:0.1であり、精製[Host3](S1、S2、S3)を用いた実施例3〜5の有機EL素子の方が、未精製[Host3]を用いた比較例3の有機EL素子より大幅に寿命が長かった。
また、素子5〜8について40時間駆動後の電圧上昇を測定したところ、0.45V(素子5)、0.21V(素子6)、0.24V(素子7)、0.92(素子8)であり、臭素質量濃度が20ppm以下のものと、そうでないものとで大きな差があった。また、その結果を図5に示す。
【0065】
実施例6及び比較例4
合成した下記化合物[CBP]の全量6.0gについて、温度段差を制御した減圧昇華精製装置で昇華精製した。温度制御については加熱部を305 ℃とし、加熱部から離れるに従って温度が下がり、加熱部から一番離れた場所が230 ℃となるように制御した。真空到達度は1.1×10-3Paであった。昇華精製された[CBP]は凝結した場所により、3つのサンプルに分割した。加熱部に近いほうからS4、S5、S6とラベルをし、S4から順に0.9g、3.6g、0.5gを回収した(回収率83%)。次に各サンプルについて臭素,ヨウ素をICP-MSで、また、塩素を電量滴定法によりS1〜S3と同様な方法で測定したところ、臭素質量濃度は未精製CBP ,S4,S5,S6の順に60ppm ,25ppm ,22ppm ,12ppm であった。また、ヨウ素質量濃度については、未精製CBP ,S4,S5,S6の順に28ppm ,8ppm,5ppm,5ppmであった。塩素質量濃度は、未精製CBP ,S4,S5,S6の順に16ppm ,4ppm,5ppm,5ppmであった。
【化18】

【0066】
次に、未精製[CBP]と精製[CBP](S5)を発光層の材料として使用し、下記構成の有機EL素子を2種類作製し、未精製[CBP]を用いたものを素子9(比較例4)とし、精製[CBP](S5)を用いたものをそれぞれ素子10(実施例6)とする。有機EL素子は、実施例1及び比較例1において、[Host1]の代わりに、上記未精製[CBP]と精製[CBP](S5)をそれぞれ用いた以外は同様にして作製した。
素子9(比較例4);ITO/α-NPD/未精製[CBP]及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
素子10(実施例6);ITO/α-NPD/精製[CBP](S5)及びIr(ppy)3/BAlq/Alq/LiF/Al
得られた素子9及び素子10に対し、電圧印加して発光テストを行なったところ、どちらも緑色の均一発光が得られた。
また、得られた素子9及び素子10を、それぞれ初期輝度1500nit にて定電流駆動させ、駆動時間に対する輝度の変化を測定し、その結果を図6に示す。同図に示したように、輝度750nitまで半減する相対時間比は、素子9:素子10(=475時間:2469時間)と約1:5であり、精製[CBP](S5)を用いた実施例6の有機EL素子の方が、未精製[CBP]を用いた比較例4の有機EL素子より大幅に寿命が長かった。
また、素子9及び素子10について92時間駆動後の電圧上昇を測定したところ、0.74V(素子9)、0.65V(素子10)であり、実施例6の有機EL素子の方が、電圧上昇が低かった。また、その結果を図7に示す。
【0067】
実施例7、8及び比較例5
実施例5で用いた精製[Host3](S3)について,さらに2回の昇華精製を施し、同様に臭素、ヨウ素の元素質量濃度をICP-MSで、また塩素の元素質量濃度を電量滴定法により測定した。その結果、質量濃度は、臭素2ppm,ヨウ素1ppm,塩素1ppmであった(この精製材料を精製[Host3](S3R) と表記する)。また、実施例1で用いたIr(ppy)3 をシリカゲルカラムで精製した後、蒸留水で洗浄、乾燥後、2回の昇華精製を施し、同様に臭素、ヨウ素をICP-MSで、また塩素を電量滴定法により測定した。その結果、それぞれのハロゲン元素質量濃度は臭素1ppm,ヨウ素1ppm,塩素1ppmであった(この精製材料を精製Ir(ppy)3 A と表記する)。
実施例5において、精製[Host3](S3)の代わりに、精製[Host3](S3R) を用い、Ir(ppy)3 の代わりに精製Ir(ppy)3 A を用い(素子11(実施例7))、実施例5において、Ir(ppy)3 の代わりに精製Ir(ppy)3 A を用い(素子12(実施例8))る以外は同様にして有機EL素子を作製した。
素子11(実施例7);ITO/α-NPD/精製[Host3](S3R)及びIr(ppy)3A/BAlq/Alq/LiF/Al
素子12(実施例8);ITO/α-NPD/精製[Host3](S3) 及びIr(ppy)3A/BAlq/Alq/LiF/Al
次に、実施例1で用いたIr(ppy)3 をシリカゲルカラムで精製した後、乾燥後、1回の昇華精製を施し、同様に臭素、ヨウ素をICP-MSで、また塩素を電量滴定法により測定した。その結果、それぞれのハロゲン元素質量濃度は臭素2ppm,ヨウ素1ppm,塩素7ppmであった(この精製材料を精製Ir(ppy)3 B と表記する)。
実施例5において、Ir(ppy)3 の代わりに精製Ir(ppy)3 B を用いる以外は同様に有機EL素子を作製した(素子13(比較例5))。
素子13(比較例5);ITO/α-NPD/精製[Host3](S3) 及びIr(ppy)3B/BAlq/Alq/LiF/Al
【0068】
また、得られた素子11〜13を、それぞれ初期輝度1500nit にて定電流駆動させ、駆動時間に対する輝度の変化を測定した結果を図8に示す。
同図に示したように、素子12と素子13の比較から明らかにりん光発光性有機金属錯体に含まれる臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が5ppm以下の素子12とそうでない素子13で大きな差が見られる。具体的には、初期輝度1500nit から減衰し1250nit に達するまでの素子寿命の時間は,りん光発光性有機金属錯体(ここでは精製Ir(ppy)3 A と精製Ir(ppy)3 B )に含まれる塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計が5ppmを越えている素子13では400時間に満たないのに対して,5ppm以下の素子12は約1000時間の寿命が観測された。
また、素子11と素子12の比較から、さらにホスト材料とりん光発光性有機金属錯体に含まれる臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が何れも5ppm以下のものとそうでないもので大きな寿命の差が見られる。具体的には塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計が20ppm である精製[Host3](S3)を用いた素子12では初期輝度1500nit から減衰し1250nit に達するまでの素子寿命の時間は約1000時間であるのに対し、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計が5ppm以下である精製[Host3](S3R) を用いた素子11では約2000時間と2倍の寿命向上が観測された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上詳細に説明したように、本発明の有機EL素子は、りん光発光性であるため発光輝度及び発光効率が高く、発光層に含まれる不純物としてのハロゲン元素質量濃度を極めて低濃度としたことにより、発光輝度及び発光効率が高く、寿命の長い有機EL素子が得られる。
このため、本発明の有機EL素子は、例えば、電子写真感光体、壁掛けテレビ用フラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯、アクセサリー等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華精製により、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計を50ppm以下とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項2】
昇華精製により、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に不純物として含まれる臭素及びヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計を40ppm以下とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項3】
昇華精製により、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に不純物として含まれる臭素のハロゲン元素質量濃度の合計を30ppm以下とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項4】
臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が5ppm以下である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン元素質量濃度の合計の下限が1ppbである請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項6】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が、芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物が、それぞれ下記一般式(1)で表される構造を有するものである請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【化1】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の3価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の3価の芳香族複素環基を表し、RA、RB及びRCは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA、RB及びRCは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、隣同士で互いに結合していてもよい。)
【請求項8】
前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物が、それぞれ下記一般式(2)で表される構造を有するものである請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【化2】

(式中、Ar’は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の2価の芳香族複素環基を表し、RA及びRBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA及びRBは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記ハロゲン元素を含有するハロゲン化物が、下記一般式(3)〜(5)で表される少なくとも1種の構造を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【化3】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の3価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の3価の芳香族複素環基を表し、RA及びRBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA及びRBは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)中、X1はハロゲン原子を表す。
一般式(4)中、X2〜X3は、一方がハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子又は水素原子を表す。
一般式(5)中、X4〜X6は、少なくとも1つがハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子または水素原子を表す。
ただし、X2〜X6が水素原子である場合、Arはその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2〜X3又はX4〜X6において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。)
【請求項10】
前記ハロゲン元素を含有するハロゲン化物が、下記一般式(6)及び/又は(7)で表される構造を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【化4】

(式中、Ar’は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の2価の芳香族複素環基を表し、RAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。
一般式(6)中、X1はハロゲン原子を表す。
一般式(7)中、X2〜X3は、一方がハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子又は水素原子を表す。
ただし、X2〜X3が水素原子である場合、Ar’はその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2〜X3において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。)
【請求項11】
前記一般式(1)において、Arが、ベンゼントリイル基、ピリジントリイル基、ピリミジントリイル基又はトリアジントリイル基である請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項12】
前記一般式(2)において、Ar’が、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジンジイル基、ピリミジンジイル基又はトリアジンジイル基である請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項13】
前記ハロゲン元素質量濃度が、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項14】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子用ホスト材料である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項15】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用ホスト材料が、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmである請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項16】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されてなる不純物としての臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計量が1ppb〜5ppmであるりん光発光性有機金属錯体である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の製造方法。
【請求項17】
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計を昇華精製により50ppm以下としてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素及びヨウ素のハロゲン元素質量濃度の合計を昇華精製により40ppm以下としてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
陰極と陽極間に少なくともホスト材料及びりん光発光性有機金属錯体を含んで形成されたりん光発光性の発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層を形成するホスト材料に不純物として含まれる臭素のハロゲン元素質量濃度を昇華精製により30ppm以下としてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
臭素、ヨウ素及び塩素のハロゲン元素質量濃度の合計が5ppm以下である請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
前記ハロゲン元素質量濃度の合計の下限が1ppbである請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
前記発光層が、りん光発光性有機金属錯体から選ばれる少なくとも1種と、芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物から選ばれる少なくとも1種とを含有する請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物が、それぞれ下記一般式(1)で表される構造を有するものである請求項22に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の3価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の3価の芳香族複素環基を表し、RA、RB及びRCは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA、RB及びRCは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、隣同士で互いに結合していてもよい。)
【請求項24】
前記芳香族炭化水素化合物及び芳香族複素環化合物が、それぞれ下記一般式(2)で表される構造を有するものである請求項22に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】

(式中、Ar’は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の2価の芳香族複素環基を表し、RA及びRBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA及びRBは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項25】
前記ハロゲン元素を含有するハロゲン化物が、下記一般式(3)〜(5)で表される少なくとも1種の構造を有するものである請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の3価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の3価の芳香族複素環基を表し、RA及びRBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、RA及びRBは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)中、X1はハロゲン原子を表す。
一般式(4)中、X2〜X3は、一方がハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子又は水素原子を表す。
一般式(5)中、X4〜X6は、少なくとも1つがハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子または水素原子を表す。
ただし、X2〜X6が水素原子である場合、Arはその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2〜X3又はX4〜X6において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。)
【請求項26】
前記ハロゲン元素を含有するハロゲン化物が、下記一般式(6)及び/又は(7)で表される構造を有するものである請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】

(式中、Ar’は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の2価の芳香族複素環基を表し、RAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。
一般式(6)中、X1はハロゲン原子を表す。
一般式(7)中、X2〜X3は、一方がハロゲン原子を表し、残りはハロゲン原子又は水素原子を表す。
ただし、X2〜X3が水素原子である場合、Ar’はその水素原子の数に応じて価数を減じる。また、X2〜X3において、2つ以上がハロゲン原子であった場合、同一原子であってもよい。)
【請求項27】
前記一般式(1)において、Arが、ベンゼントリイル基、ピリジントリイル基、ピリミジントリイル基又はトリアジントリイル基である請求項23に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項28】
前記一般式(2)において、Ar’が、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジンジイル基、ピリミジンジイル基又はトリアジンジイル基である請求項24に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項29】
前記りん光発光性の発光層が、前記一般式(1)で表される構造を有する芳香族炭化水素化合物を含有する請求項23に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項30】
前記りん光発光性の発光層が、前記一般式(2)で表される構造を有する芳香族炭化水素化合物を含有する請求項24に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項31】
前記りん光発光性の発光層が、前記一般式(3)〜(5)で表される少なくとも1種の構造を有するハロゲン化物を含有する請求項25に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項32】
前記りん光発光性の発光層が、前記一般式(6)及び/又は(7)で表される構造を有するハロゲン化物を含有する請求項26に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項33】
前記ハロゲン元素質量濃度が、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS分析)又は電量滴定法により特定されたものである請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項34】
発光層に隣接する正孔輸送層、電子輸送層又は正孔阻止層を形成する材料に含まれる少なくとも1種のハロゲン化物のハロゲン元素質量濃度が20ppm以下である請求項17〜19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−216903(P2011−216903A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148564(P2011−148564)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2006−510520(P2006−510520)の分割
【原出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】