説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】 有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関し、データ線を多層化することなく、開口率を確保する。
【解決手段】 基板1上に配線層/絶縁層3/第1の電極/有機エレクトロルミネッセンス層5/第2の電極6を積層した有機エレクトロルミネッセンス表示装置における一列の第1の電極4と基板1に挟まれる配線層を列方向に延びる複数の給電配線2から構成し、各給電配線2に少なくとも一つの第1の電極4を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものであり、特に、少なくとも基板と反対側を表示面とする所謂トップエミッション構造において、パッシブマトリクス駆動型の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の輝度を高めるため配線構造に特徴のある有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のCRT(ブラウン管)やLCD(液晶表示装置)と比較して薄型化、軽量化が可能な表示装置として、近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた表示装置が大きな注目を集めている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は自己発光型であるため、視認性が高い、視野角依存性がない、可撓性を有するフィルム基板を用いることができる、液晶表示装置と比較して薄い・軽い、などの様々な特長がある。
【0004】
この内、パッシブマトリクス駆動型の有機EL表示装置は、互いに交差する複数のアノードとカソードの交差部に有機EL層を挟んで発光素子を構成し、各電極配線をデータ線及びスキャン線として駆動信号を与えることによって、順次に複数の発光素子を発光させて画面を形成する。
【0005】
1つのデータ線上に構成される複数の発光素子は各々のスキャン線の信号に応じて発光し、スキャン線を順次走査して全画素の発光を制御することで画面全体を描いているので、この様な駆動パネル構成の一例を図7を参照して説明する。
【0006】
図7参照
図7は、従来のパッシブマトリクス駆動パネル構成の一例(例えば、特許文献1参照)の説明図であり、一端が陰極線42に接続され、他端が電源電圧或いは接地電位のいずれかに接続される走査スイッチ43からなる陰極走査回路41、一端が陽極線45と接続され、他端が電流源46と接続されるドライブスイッチ47からなる陽極ドライブ回路44、一端が陽極線45と接続され、他端が接地電位と接続されるシャントスイッチ49からなる陽極リセット回路48、及び、発光制御回路50から構成される。
【0007】
発光制御回路50は、発光データに基づいて陰極走査回路41、陽極ドライブ回路44及び陽極リセット回路48を制御して陰極線42と陽極線45との交差位置の有機EL層を発光させて表示を行う。
なお、ここでは、発光箇所をダイオードで示し、非発光箇所をコンデンサで示すとともに、以前の発光で充電状態にある非発光箇所を破線付したコンデンサで示している。
なお、この特許文献1においては、画素数256×64で走査線数、即ち、スキャン線数64本での駆動例が開示されている。
【0008】
この場合の各発光素子に与えられる発光時間はスキャン信号幅(=フレーム周期T/スキャン線数N)以内であり、発光時間内に画素へ流れた電流によって輝度が決まる。
即ち、スキャン信号幅が大きく発光時間が長いほど高輝度になるため、パッシブマトリクス駆動型の有機EL表示装置で高輝度を得るには発光時間(スキャン信号幅)を稼ぐ必要がある。
【0009】
しかし、表示装置の高精細化にともなって、画素数が多くなるとスキャン線数が増大するために発光時間が短くなり十分な輝度を確保することが困難になる。
そこで、従来、画素数が多く、スキャン線数が多い画面構成においては、画面のスキャン領域を分割し、各スキャン領域に対応する複数のデータ線を構成することで、スキャン信号幅を拡大することが提案されている。
【0010】
例えば、QVGA画面(320×240画素構成)において、スキャン領域の分割なしではスキャン信号幅はT/240であるが、スキャン領域の二分割ではデータ線を画面上下に320本引き出すとともにスキャン信号幅はT/120となって2倍に広がり、2倍の輝度が得られる。
【0011】
さらに、スキャン領域の四分割ではデータ線を画面上下に320本×2組引き出すとともにスキャン信号幅はT/60となって4 倍に広がることで、発光時間を稼ぎ高輝度を得ていた。
【0012】
図8参照
図8は、スキャン領域分割型の有機EL表示装置の構成例の概略的断面図であり、透明基板51および透明画素電極54を通して外部へ発光を取出すボトムエミッション構造であるため、画素間に分割したスキャン領域の数に応じたデータ線52を配置している。
なお、図における符号53,55,56は夫々層間絶縁膜、有機EL層、上部電極を表す。
【0013】
しかし、この構成では、分割したスキャン領域毎にデータ線52を構成するため、分割数に比例してデータ線数は増大し、データ線52を配置するための画素間の面積が増大して開口面積(発光面積)が小さくなり、単純にスキャン信号幅の拡大に比例して輝度は向上しないという問題がある。
【0014】
例えば、一例を挙げると、パターンルールによるが2分割の場合の開口率が90%であるとすると、4分割の場合には、発光時間が2倍になる一方で、開口率は約57%となることにより、輝度比は(57/90)×2≒1.27となり、2分割の場合と比較して輝度は約27%増となる。
【0015】
しかし、8分割の場合には、発光時間が4倍になる一方で、開口率は約19%となることにより、輝度比は(19/90)×4≒0.84となり、2分割の場合と比較して輝度は約16%減となり、スキャン領域を分割した効果が得られなくなる。
【0016】
そこで、この様な問題を解決するために、配線を3次元多層化することが提案(例えば、特許文献2参照)されているので、ここで、図9を参照して説明する。
図9参照
図9は、データ線を多層化したスキャン領域分割型の有機EL表示装置の構成例の概略的断面図であり、画素間に分割したスキャン領域の数に応じたデータ線57,59を積層して配置しており、スキャン領域の分割数が多くなっても開口率を一定に保つことができ、高精細の有機EL表示装置において高輝度化が可能になる。
なお、図における符号58,60は夫々層間絶縁膜を表す。
【特許文献1】特開平11−311978号公報
【特許文献2】特開2004−288607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、データ線を多層化した場合には、開口率は一定に保つことができるものの、配線層の積層数に応じて製造プロセスが多く複雑になるため製造コストが高くなるという問題がある。
【0018】
したがって、本発明は、データ線を多層化することなく、開口率を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、基板1上に配線層/絶縁層3/第1の電極/有機エレクトロルミネッセンス層5/第2の電極6を積層し、有機エレクトロルミネッセンス層5における発光は第2の電極6を透過して得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、一列の第1の電極4と基板1に挟まれる配線層が列方向に延びる複数の給電配線2から構成され、各給電配線2が少なくとも一つの第1の電極4と接続されたことを特徴とする。
【0020】
このように、有機エレクトロルミネッセンス層5における発光を第2の電極6を透過して取り出すトップエッション型の有機エレクトロルミネッセンス表示装置とすることによって、有機エレクトロルミネッセンス層5の下層に配置する給電配線2が開口率に影響を与えることがないので、広開口率と広スキャン信号幅を両立することができ、それによって、高輝度で高精細な有機エレクトロルミネッセンス表示装置を実現することが可能になる。
【0021】
この場合、各給電配線2には、複数の第1の電極4が接続されるとともに、複数の第1の電極4が、隣接して配置されることで連続した画素列を構成することが望ましく、それによって、配置構成が簡素化される。
【0022】
また、画面内域の画素列に対応する給電配線2が、その画素列よりも画面外周寄りの画素列の領域を通過して画面外周に引き出されることが望ましく、それによって、給電配線2の引き出しスペースをコンパクトにすることができる。
【0023】
また、複数の第2の電極6を画素列と交差する方向で接続するとともに、第1の電極4側を信号線とし、第2の電極6側を走査線とするパッシブマトリクス駆動の画素回路を構成することが一般的な構成であり、それによって、高輝度で高精細なパッシブ駆動型の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を実現することができる。
【0024】
この場合、給電配線2を画面中央において分割して、互いに対向する2つの画面外周に引き出すことが望ましく、それによって、画素と給電配線2の端部までの最長距離を分割しない場合の約半分にすることができるとともに、給電配線2の線幅を約2倍にすることができる。
【0025】
また、給電配線2と第1の電極4との接続部7を第2の電極6と投影的に重ならない位置に設けることが望ましく、それによって、接続部7のエッジ部において有機エレクトロルミネッセンス層5が薄くなって第1の電極4と第2の電極6とが短絡することを防止することができるとともに、第2の電極6を蒸着するための蒸着マスクに設ける開口部間のリブ幅を十分確保することができるので、蒸着マスクの変形を抑制することができる。
【0026】
また、上述の画素回路をM×Nの画素から構成する場合、走査領域をS個に分割すると、一つの走査領域における信号線はM本で且つ走査線はN/S本となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、スキャン領域を複数に分割し、各スキャン領域に対応するデータ線を発光取出しの妨げにならないよう第一の電極の下層に埋設することで、開口率を大きく確保しつつスキャン駆動信号幅を広げることができ、従来構成よりも2〜3倍の輝度向上が得られ、また、従来の高コストな多層配線構造に比較して低コスト化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ここで、図2及び図3を参照して発明を実施するための最良の形態を説明する。
図2参照
図2は、本発明の有機EL表示装置の駆動回路図であり、ここでは、画面を2nに分割し、スキャン信号回路1〜2nの各々に対応してデータ信号回路1〜2nを構成するとともに、データ信号回路1〜2nを画面の上下に2分して配置する。
【0029】
発光データの入力に対して、発光制御回路から各スキャン信号回路とデータ信号回路を駆動し、データ信号回路とスキャン信号回路からなる各スキャン領域を同時に駆動して、選択した箇所のダイオードで示したEL発光素子を点灯させて表示を行う。
【0030】
図3参照
図3は本発明の有機EL表示装置の構成説明図であり、上図は概略的要部透視平面図であり、中図及び下図はそれぞれ上図におけるA−A′を結ぶ一点鎖線及びB−B′を結ぶ一点鎖線に沿った概略的断面図である。
【0031】
まず、ガラス基板11上にAl膜をスパッタリング法によって成膜したのち、通常のフォトエッチング工程を用いて所定の本数のデータ線12を形成する。
次いで、全面に感光性樹脂をコーティングし、データ線12上に画素電極15と接続するためのコンタクトホール14をフォトリソグラフィを用いて形成し、残る感光性樹脂を層間絶縁膜13とする。
なお、データ線端子16と接続する端子部におけるデータ線12上にも開口を設ける。
【0032】
この場合の画素電極15と接続するためのコンタクトホール14は、1本のデータ線12に対して分割したスキャン領域に応じて割り当てられたスキャン線(図の場合には、上部電極18)の数だけ設けていく。
【0033】
次いで、全面にAl膜をスパッタリング法によって成膜したのち、通常のフォトエッチング工程を用いて画素数に応じた数の画素電極15を形成するとともに、外部駆動回路との接続を成すデータ線端子16も同時に形成して、層間絶縁膜13に形成したコンタクトホールを介してデータ線12と接続する。
なお、Alからなる画素電極15は光学反射面及びカソードとして機能する。
【0034】
次いで、メタルマスクを用いて画素電極15上に、画素電極15側から電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を順次マスク蒸着することによって画面形成範囲を覆う有機EL層17を形成する。
【0035】
次いで、有機EL層17は熱に弱いため、低温成膜が可能な反応性プラズマ蒸着法によるマスク蒸着法によって、データ線12に交差する方向に延伸したストライプ形状にITO膜(インジウム錫酸化膜)を成膜して上部電極18及びスキャン線端子19を形成する。
なお、この上部電極18はスキャン線及びアノードとして機能する。
【0036】
最後に、有機EL層17を外気と遮断するため、光透過性があるガラスからなる封止板20を、画面を覆うとともにデータ線端子16とスキャン線端子19を露出するように構成してUV硬化接着剤21で封止することによって有機EL表示装置の基本構成が完成する。
なお、ここでは、一つの画素列に対して4本のデータ線12を設けた例、即ち、スキャン領域を8分割した例として図示している。
【0037】
この有機EL表示装置においては、図2に示したように、データ線12とスキャン線となる上部電極18を選択的に通電することによって、所望の画素電極15と上部電極18に挟まれた有機EL層17を発光させて表示を行う。
【実施例1】
【0038】
次に、図4乃至図6を参照して、画面サイズを64mm×48mm(3.2型)とし、画素数を320×240としたQVGA仕様の具体的な本発明の実施例1を説明する。 なお、この場合には、画素ピッチは0.2mm(=48mm/240)で、精細度127ppiとなる。
【0039】
図4及び図5参照
図4は、本発明の実施例1の有機EL表示装置のパターン構成図であり、また、図5はスキャン領域6の要部拡大図であり、スキャン線240本を8分割として、一つのスキャン領域33のスキャン線を30本(=240本/8分割)で構成する。
なお、全体の基本的平面構造及び断面構造は上述の図3に示した構造と同じである。
【0040】
また、データ線32は各スキャン領域33に対して320本構成するので、全データ線は2560本(=320本×8領域分)となるが、データ線32を引き出すデータ線端子36を画面長手二辺に均等に割り振ることにより、片側への引き出しはスキャン領域4個分のデータ線1280本(=320本×4領域分)となる。
【0041】
即ち、一画素列あたり4本のデータ線32を引き出し、画素ピッチ0.2mm内にこれら4本のデータ線32を構成するため、データ線32間のピッチは0.05mm(=0.2mm/4)となり、ここではデータ線32の間のスペースを0.01mm取って、データ線32の幅を0.04mmとする。
【0042】
この場合のデータ線32の長さは、ガラス基板31の端部から少なくとも駆動対象のスキャン領域33まで配置すれば良いが、ここでは配線パターンの加工形状均一性を得るため、全てのデータ線32をガラス基板31の端部から画面中央まで引き、画面中央で両端から引いたデータ線32の先端が向き合う部分においてもデータ線32が対向するスペースを0.01mmする。
データ線32は厚さが、例えば、200nmのAl膜によって構成する。
【0043】
また、層間絶縁膜は、厚さが、例えば、3μmの感光性ポリイミド膜をコーティングし、フォトリソグラフィによってパターニングすることによってデータ線32上に0.03mm□のコンタクトホール34を形成する。
なお、イミド化する加熱工程においてコンタクトホール34のエッジ断面はテーパ角45度以下のなだらかなエッジとし、後工程の電極薄膜形成において段差被覆を可能としている。
【0044】
このコンタクトホール34は一つのスキャン領域33内における一画素列内のデータ線1本上に画素ピッチ0.2mmで形成し、同データ線上にはその他のスキャン領域のコンタクトホールは構成されない。
また、ガラス基板31の端側の全データ線32上にも後に形成するデータ線端子36とのコンタクトホール(図示を省略)を形成する。
【0045】
また、画素電極35は、厚さが、例えば、100nmのAl膜から構成し、画素ピッチからなる0.2mm□内に形成するが、画素電極35間のスペースを0.01mmで、電極寸法を0.19mmとして、画素数に応じて320×240個形成する。
【0046】
このとき、各画素電極35は各1個のコンタクトホール34を介して対応するデータ線32と接続され、また、この工程においてガラス基板31の端部に2mm×0.04mmのデータ線端子36を形成し、各データ線端子36は各1個のコンタクトホールを介して対応するデータ線32と接続される。
【0047】
また、有機EL層は画素電極35全てを覆うよう、メタルマスクを用いた真空蒸着で66mm×50mmの範囲に、厚さが、例えば、1nmのCsFからなる電子注入層、厚さが、例えば、20nmのAlq3からなる電子輸送層、厚さが、例えば、30nmのホストAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナート) アルミニウム)に発光材料t(npa)py(1,3,6,8−テトラ〔N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ピレンをドープした発光層、厚さが、例えば、20nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン) からなる正孔輸送層、厚さが、例えば、30nmのMTDATA〔4,4′,4″−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕からなる正孔注入層をガラス基板31側から順次蒸着して形成する。
【0048】
また、上部電極37は厚さが、例えば、200nmのITOで構成し、ストライプ状の開口を有するメタルマスクを用いた反応性プラズマ蒸着法によってスキャン線パターンとして形成する。
【0049】
この上部電極37はデータ線32の直交方向の画素間を横断する構成で、寸法は画素電極35の幅0.19mm内でコンタクトホール34を避けた範囲の電極幅0.135mmとし、画面長辺を横断する長さと外部接続用のスキャン線端子38を合わせた長さを70mmとする。
【0050】
このように、上部電極37の形成幅をコンタクトホール34を避けるようにしているので、コンタクトホール34のエッジ部において有機EL層等の膜厚が薄くなって画素電極35と上部電極37とが短絡することを防止することができる。
【0051】
また、上部電極37を形成するためにメタルマスクにおいてストライプ開口間のリブ幅を0.065mm確保することができ、それによって、剛性を確保してマスク形状の変形を防止することができる。
【0052】
最後に、ガラス封止板39を、データ線端子36及びスキャン線端子38が露出する70mm×54mmの範囲を覆うようにUV硬化接着剤用いてガラス基板31に接着して封止を行う。
【0053】
以上より、実施例1の有機EL表示装置における画素は、画素ピッチ0.2mm×0.2mmの範囲において発光領域40は画素電極35の幅0.19mmと上部電極37の幅0.135mmに応じて0.19mm×0.135mmとなり、開口率は64%となる。
【0054】
このデータ線端子36及びスキャン線端子38をFPC(フレキシブルプリント回路)によって駆動回路に接続し、パッシブマトリクス駆動を行うことによって画面を構成する画素320×240個を任意に発光させて情報を表示させる。
【0055】
図6参照
図6は、本発明の実施例1の有機EL表示装置の駆動例の説明図であり、フレーム周波数60Hz(周期16.7ms≒1000ms/60)における駆動例を示している。
この実施例1においては、スキャン領域33を8分割して一つのスキャン領域33のスキャン線を30本としているので、一つのスキャン線に与えられる駆動信号幅は556μs(≒16.7ms/30)となる。
【0056】
駆動に際しては、8つのスキャン領域33が同時にスキャン駆動され、各スキャン領域33の画素には各領域専用のデータ線32で駆動信号が送られる。
この構成において全画素点灯したとき輝度は100cd/m2 であった。
【0057】
次に、本発明の実施例1の作用効果を従来のボトムエミッション型の有機EL表示装置を本発明の実施例1と同じパターンルールで形成した場合と比較して確認する。
(1)ボトムエミッション構造でスキャン領域2分割の場合
一つのスキャン領域のスキャン線は120本(=240/2)となり、一つのスキャン線に与えられる駆動信号幅は139μs(≒16.7ms/120)となる。
また、発光領域はデータ線が画素電極を兼ねるように形成するとともに、コンタクトホールなしによる上部電極幅によって0.19mm×0.19mmとなり、開口率は90%となる。
【0058】
したがって、本発明の実施例1に対するスキャン信号幅の比は0.25倍(=139/556)、開口率の比は1.4倍(=90/64)となるので、輝度は35cd/m2 (=100cd/m2 ×0.25×1.4)となり、本発明の実施例1の方が略3倍の輝度が得られる。
【0059】
(2)ボトムエミッション構造でスキャン領域4分割の場合
一つのスキャン領域のスキャン線は60本(=240/4)となり、一つのスキャン線に与えられる駆動信号幅は278μs(≒16.7ms/60)となる。
また、発光領域はデータ線幅0.04mm×2本による遮光とコンタクトホールなしによる上部電極幅によって0.12mm×0.19mmとなり、開口率は57%となる。
【0060】
したがって、本発明の実施例1に対するスキャン信号幅の比は0.5倍(=278/556)、開口率の比は0.89倍(=57/64)となるので、輝度は45cd/m2 (=100cd/m2 ×0.5×0.89)となり、本発明の実施例1の方が略2倍強の輝度が得られる。
【0061】
(3)ボトムエミッション構造でスキャン領域8分割の場合
一つのスキャン領域のスキャン線は30本(=240/80)となり、一つのスキャン線に与えられる駆動信号幅は556μs(≒16.7ms/30)となる。
また、発光領域はデータ線幅0.04mm×4本による遮光とコンタクトホールなしによる上部電極幅によって0.04mm×0.19mmとなり、開口率は19%となる。
【0062】
したがって、本発明の実施例1に対するスキャン信号幅の比は1倍(=556/556)、開口率の比は0.3倍(=19/64)となるので、輝度は30cd/m2 (=100cd/m2 ×1×0.3)となり、本発明の実施例1の方が略3倍強の輝度が得られる。
【0063】
以上の比較から、本発明の構成が従来例よりも2〜3倍輝度向上に有効であることが明確であり、特に、高精細化が進み、分割数が増加する程効果が高いことが分かる。
【0064】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明は実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、上記の実施例において示した有機EL層を構成する材料は単なる一例にすぎず、発光色に応じて有機層の材料は公知の有機EL材料の中から適宜選択するものである。
【0065】
また、上記の実施例においては、基板としてガラス基板を用いているが、ガラス基板に限られるものではなく、プラスチック基板や樹脂フィルムを用いても良く、さらには、トップエミッション型であるので透明基板である必要はなく絶縁体で被覆した金属板を用いても良い。
【0066】
また、上記の実施例においては、データ線をAlで構成しているが、Alに限られるものではなく、Ag等のAlと同様に低比抵抗の導電材料を用いても良いものである。
【0067】
また、上記の実施例においては、画素電極をフォトエッチング工程によりパターニングして形成しているが、メタルマスクを用いてマスク蒸着法によってパターン形成しても良いものである。
【0068】
また、各電極に対するアノード、カソードの機能は任意であり、例えば、画素電極をAlとITOの積層膜で構成してアノードとし、ITO上面に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順で積層して有機EL層を形成し、上部電極として厚さが、例えば、2nmの半透明なAl薄膜を設けてカソードとして良いものである。
【0069】
また、上記の実施例においては短絡による歩留り低下を避けるために、上部電極をコンタクトホールの位置と投影的に重ならないように設けているが、必ずしも必須ではなく、コンタクトホールのテーパ形状等を工夫することによってコンタクトホールと重なるように上部電極を設けても良く、その場合には、上述のパターンルールで0.19mm幅にすることができるので、開口率を90%とすることができる。
【0070】
また、上記の実施例においては、全てのデータ線とスキャン線に接続する端子を設け、これらの端子を外部に設けた駆動回路とFPCの配線によって接続しているが、そのような構成に限られるものではなく、表示デバイスの基板上に駆動ドライバを直接実装するCOG(Chip On Glass)またはCOF(Chip On Film)の構成によって外部接続端子の数を低減しても良い。
【0071】
また、上記の実施例においては、上部電極を構成する透光性材料としてITOを用いているが、ITOに限られるものではなく、IZO或いはZnO等の他の酸化物導電材料を用いても良いものである。
【0072】
また、上記の各実施例においては、画素電極としてAlを用いているが、Alに限られるものではなく、Alと同様に光反射性の材料であるAg或いはMo等を用いても良く、或いは、Al等の高反射性の材料とITO等の酸化物導電材料の積層として用いても良く、それによって、光取り出し効率を高めることができる。
【0073】
また、上記の実施例においては、封止板を貼り合わせる場合に、UV硬化接着剤を用いているが、熱硬化型接着剤を用いて加熱・加圧して貼り合わせても良いものである。
【0074】
また、上記の実施例においては電子注入層を設けているが、電子注入層は必須ではなく、カーソドとなる画素電極上に直接電子輸送層を設けても良いものである。
【0075】
また、上記の実施例においては、説明を簡単にするために単色の表示装置として説明しているが、複数の色を適当に組み合わせてカラー表示装置としても良いものであり、特に、RGB発光素子を組み合わせることによって、フルカラーの表示装置を構成する場合にも適用されるものである。
【0076】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 基板1上に配線層/絶縁層3/第1の電極4/有機エレクトロルミネッセンス層5/第2の電極6を積層し、前記有機エレクトロルミネッセンス層5における発光は前記第2の電極6を透過して得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、一列の第1の電極4と基板1に挟まれる配線層が前記列方向に延びる複数の給電配線2から構成され、各給電配線2が少なくとも一つの第1の電極4と接続されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記2) 上記各給電配線2には、上記複数の第1の電極4が接続されるとともに、前記複数の第1の電極4が、隣接して配置されることで連続した画素列を構成することを特徴とする付記1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記3) 画面内域の画素列に対応する給電配線2が、当該画素列よりも画面外周寄りの画素列の領域を通過して画面外周に引き出されることを特徴とする付記2記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記4) 複数の上記第2の電極6を上記画素列と交差する方向で接続するとともに、上記第1の電極4側を信号線とし、前記第2の電極6側を走査線とするパッシブマトリクス駆動の画素回路を構成することを特徴とする付記3記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記5) 上記給電配線2を上記画面中央において分割して、互いに対向する2つの画面外周に引き出すことを特徴とする付記4記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記6) 上記給電配線2と第1の電極4との接続部7が、上記第2の電極6と投影的に重ならない位置に設けられていることを特徴とする付記4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(付記7) 上記画素回路がM×Nの画素から構成され、走査領域はS個に分割され、一つの走査領域における信号線はM本で且つ走査線はN/S本であることを特徴とする付記4乃至6のいずれか1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の活用例としては、二次元マトリクス状の表示装置が典型的なものであるが、表示装置に限られるものではなく、ムード照明用光源等の大型単一光源にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の駆動回路図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置の構成説明図である。
【図4】本発明の実施例1の有機EL表示装置のパターン構成図である。
【図5】スキャン領域の要部拡大図である。
【図6】本発明の実施例1の有機EL表示装置の駆動例の説明図である。
【図7】従来のパッシブマトリクス駆動パネル構成の一例の説明図である。
【図8】スキャン領域分割型の有機EL表示装置の構成例の概略的断面図である。
【図9】データ線を多層化したスキャン領域分割型の有機EL表示装置の構成例の概略的断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 給電配線
3 絶縁層
4 第1の電極
5 有機エレクトロルミネッセンス層
6 第2の電極
7 接続部
11 ガラス基板
12 データ線
13 層間絶縁膜
14 コンタクトホール
15 画素電極
16 データ線端子
17 有機EL層
18 上部電極
19 スキャン線端子
20 封止板
21 UV硬化接着剤
31 ガラス基板
32 データ線
33 スキャン領域
34 コンタクトホール
35 画素電極
36 データ線端子
37 上部電極
38 スキャン線端子
39 ガラス封止板
40 発光領域
41 陰極走査回路
42 陰極線
43 走査スイッチ
44 陽極ドライブ回路
45 陽極線
46 電流源
47 ドライブスイッチ
48 陽極リセット回路
49 シャントスイッチ
50 発光制御回路
51 透明基板
52 データ線
53 層間絶縁膜
54 透明画素電極
55 有機EL層
56 上部電極
57 データ線
58 層間絶縁膜
59 データ線
60 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配線層/絶縁層/第1の電極/有機エレクトロルミネッセンス層/第2の電極を積層し、前記有機エレクトロルミネッセンス層における発光は前記第2の電極を透過して得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、一列の第1の電極と基板に挟まれる配線層が前記列方向に延びる複数の給電配線から構成され、各給電配線には少なくとも一つの第1の電極が接続されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
上記各給電配線には、複数の第1の電極が接続されるとともに、前記複数の第1の電極が、隣接して配置されることで連続した画素列を構成することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
画面内域の画素列に対応する給電配線が、当該画素列よりも画面外周寄りの画素列の領域を通過して画面外周に引き出されることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
複数の上記第2の電極を上記画素列と交差する方向で接続するとともに、上記第1の電極側を信号線とし、前記第2の電極側を走査線とするパッシブマトリクス駆動の画素回路を構成することを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
上記画素回路がM×Nの画素から構成され、走査領域はS個に分割され、一つの走査領域における信号線はM本で且つ走査線はN/S本であることを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−330592(P2006−330592A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157490(P2005−157490)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】