有機エレクトロルミネッセンス装置、その製造方法および電子機器
【課題】有機EL素子の形成領域を狭めることなく、封止層による封止性能の向上を図ることができる有機EL装置、その製造方法、およびそれを用いた電子機器を提供すること。
【解決手段】有機EL装置100の素子基板10において、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しにくい。また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。
【解決手段】有機EL装置100の素子基板10において、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しにくい。また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)装置、その製造方法、および当該有機EL装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は、図12に示すように、概ね、素子基板10上で画素領域10aを複数の領域に区画する隔壁層51と、隔壁層51により囲まれた領域に設けられた有機EL素子80とを有している。有機EL素子80は、第1電極層81(陽極/画素電極)、有機機能層82および第2電極層83(陰極)が積層された構造を備えており、有機機能層82と第2電極層83との層間に、アルカリ金属やアルカリ土類金属を主成分とする電子注入層が配置される場合もある。このような有機EL素子80に用いられる有機機能層82や第2電極層83は、非常に活性であるため、大気中に存在する水分や酸素と接触すると簡単に反応して変質する。かかる変質が起こると、電子注入効果が損なわれ、ダークスポットと呼ばれる非発光部分が発生してしまう。
【0003】
そこで、隔壁層51および有機EL素子80を覆うように封止層60を形成した構成が提案されており、かかる封止層60としては、無機膜からなる第1封止層61(電極保護層)、樹脂層からなる第2封止層62(有機緩衝層)、および無機膜からなる第3封止層63(ガスバリア層)の積層構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−059868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の封止構造では、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分にクラックが発生していないことが重要である。しかしながら、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分は、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上に積層されるため、封止層60にクラックが発生しやすい。特に、第1封止層61や第3封止層63は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上ではクラックが発生しやすい。それ故、特許文献1に記載の封止構造では、有機機能層82や第2電極層83を確実に保護することができないという問題点がある。かといって、隔壁層51の壁面を素子基板10に対して小さな角度をなすようなテーパー面にすると、隔壁層51において画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511が有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことになるため、有機EL素子80の面積が狭くなって発光強度が低下する。それ故、従来は、封止性能の安定性と、発光強度の向上とは二律背反する課題であり、一方を実現しようとすると、他方が犠牲になってしまう。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、有機EL素子の形成領域を狭めることなく、封止層による封止性能の向上を図ることができる有機EL装置、その製造方法、および当該有機EL装置を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る有機EL装置は、基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機EL素子と、前記隔壁層および前記有機EL素子を覆う封止層と、を有し、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁は、当該隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、例えば、前記隔壁層内壁が前記基板に対してなす角度は60〜70°であり、前記隔壁層外壁が前記基板に対してなす角度は45°以下である。
【0009】
本発明では、隔壁層および有機EL素子を覆う封止層によって、有機EL素子を水分や酸素などから保護する。ここで、封止層において画素領域を外側で囲む部分は、隔壁層外壁に積層されるが、かかる隔壁層外壁は、隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっている。すなわち、本発明では、隔壁層内壁については基板に対してなす角度を大きな構造とし、隔壁層外壁については基板に対してなす角度を小さくしてある。このため、封止層は、基板に対してなす角度が小さい隔壁層外壁上に積層されるので、封止層にクラックが発生しにくい。それ故、有機EL素子を水分や酸素から確実に保護することができる。また、隔壁層内壁は、基板に対してなす角度が大きいため、有機EL素子の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子の面積が広い。それ故、本発明によれば、有機EL素子の面積を狭めることなく、封止層による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置を実現することができる。
【0010】
また、本発明では、基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機EL素子と、前記隔壁層および前記有機EL素子を覆う封止層と、を有する有機EL装置の製造方法において、前記隔壁層を形成するにあたっては、前記基板上に感光性樹脂を塗布する感光性樹脂塗布工程と、当該感光性樹脂のうち、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する露光工程と、を行ない、当該隔壁層外壁を前記隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることを特徴とする。
【0011】
本発明では、感光性樹脂によって隔壁層を形成する際、露光工程において、感光性樹脂のうち、隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、画素領域に近い領域と画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する。このため、隔壁層外壁を隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることができる。
【0012】
本発明において、前記封止層は、無機膜からなる第1封止層と、該第1封止層の上層に積層された樹脂層からなる第2封止層と、該第2封止層の上層に積層された無機膜からなる第3封止層と、を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、第1封止層を電極保護層とし、第2封止層については有機緩衝層とし、第3封止層についてはガスバリア層とすることができる。また、第1封止層や第3封止層は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、基板に対して大きな角度をなす隔壁層外壁上ではクラックが発生しやすいが、本発明によれば、かかるクラックの発生を確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、前記基板上において前記有機EL素子の下層側には、少なくとも、前記有機EL素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を備え、当該反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域には、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部が形成されている構成を採用することができる。
【0014】
かかる構成の有機EL装置では、以下の製造方法を採用することができる。すなわち、本発明に係る有機EL装置の製造方法では、前記基板上に前記隔壁層および前記有機EL素子を形成する前に、前記有機EL素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を形成する反射層形成工程を有し、当該反射層形成工程では、前記反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部を形成し、前記露光工程では、前記反射層において前記感光性樹脂が位置する側とは反対側から前記開口部を介して前記感光性樹脂において前記隔壁層外壁を形成する樹脂部分を露光する。
【0015】
かかる構成によれば、反射層によって、感光性樹脂において隔壁層外壁を構成する部分に対してハーフ露光(諧調露光)を行なうことができる。それ故、感光性樹脂に対する露光工程では、高価なハーフ露光用マスクを用いる必要がないという利点がある。
【0016】
本発明を適用した有機EL装置は、携帯電話機あるいはモバイルコンピューターなどの電子機器において直視型の表示部などとして用いられる。また、本発明を適用した有機EL装置は、プリンターやコピー機などの電子機器で用いられる露光ヘッドや、各種電子機器の照明装置などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置をその上に形成された各構成要素と共に封止基板の側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である
【図3】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の断面構成を模式的に示す断面図、およびその一部を拡大して示す説明図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の相隣接する画素2つ分の平面図、およびそのB−B′線に相当する位置で素子基板を切断したときの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置における反射層と隔壁層との関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、反射層および第1電極層を形成する工程の工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、隔壁層を形成する工程の工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する別の方法を示す工程断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る有機EL装置の一部を拡大して示す説明図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置100の製造工程のうち、素子基板上に隔壁層を形成する工程の工程断面図、および別の方法を示す工程断面図である。
【図11】本発明に係る有機EL装置を用いた電子機器の説明図である。
【図12】従来の有機EL装置の問題点を示す説明Z図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、図12を参照して説明した構成との対応が分りやすいように、可能な限り、対応する部分には同一の符号を付して説明する。なお、薄膜トランジスターでは、印加する電圧によってソースとドレインが入れ替わるが、以下の説明では、説明の便宜上、画素電極が接続されている側をドレインとして説明する。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。図2(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置をその上に形成された各構成要素と共に封止基板の側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である。
【0020】
図1に示す有機EL装置100において、素子基板10上には、複数の走査線3aと、走査線3aに対して交差する方向に延びる複数のデータ線6aと、走査線3aとデータ線6aとの交差に対応する位置に形成された画素10bとを有しており、複数の画素10bがマトリクス状に配列されている領域によって画素領域10aが構成されている。また、素子基板10上では、データ線6aに並列して複数の電源線6gが延在し、走査線3aに並列して複数の容量線3eが延在している。データ線6aにはデータ線駆動回路101が接続され、走査線3aには走査線駆動回路104が接続されている。複数の画素10bの各々には、走査線3aを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスター30bと、このスイッチング用の薄膜トランジスター30bを介してデータ線6aから供給される画素信号を保持する保持容量70と、保持容量70によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスター30cとが形成されている。また、複数の画素10bの各々には、薄膜トランジスター30cを介して電源線6gに電気的に接続したときに電源線6gから駆動電流が流れ込む第1電極層81(陽極層/画素電極)が形成されており、かかる第1電極層81上に、後述する有機機能層および第2電極層(陰極層)が積層されることにより有機EL素子80が構成されている。
【0021】
かかる有機EL装置100では、走査線3aが駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスター30bがオンになると、そのときのデータ線6aの電位が保持容量70に保持され、保持容量70が保持する電荷に応じて、駆動用の薄膜トランジスター30cのオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスター30cのチャネルを介して、電源線6gから第1電極層81に電流が流れ、さらに有機機能層82を介して第2電極層83に電流が流れる。その結果、有機EL素子80は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0022】
このような有機EL装置100は、携帯電話機やモバイルコンピューターなどの電子機器において表示部として用いることができ、カラー表示を行なう場合、図1に(R)、(G)、(B)を付したように、各画素10bは各々、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のサブピクセルを構成する。本形態では、同一の色に対応する画素10bがデータ線6aの延在方向に直線的に並ぶストライプ配列が採用されている。
【0023】
本形態において、有機EL素子80は、白色光、または赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の混合色光が出射され、画素10bが赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれに対応するかは、後述するカラーフィルター層によって規定されている。
【0024】
なお、図1に示す構成では、電源線6gおよび容量線3eが各々、データ線駆動回路101および走査線駆動回路104から延在しているが、電源線6gおよび容量線3eが直接、端子102から延在している構成などを採用してもよい。また、図1に示す構成では、走査線3aと並列に容量線3eを形成したが、容量線3eを形成せずに、電源線6gと薄膜トランジスター30bのドレインとの間に保持容量70を形成することもできる。
【0025】
(有機EL装置の具体的構成)
図2(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の平面的な構成を各構成要素と共に第2基板側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である。なお、図2(b)にはカラーフィルター層などの図示を省略してある。図2(a)、(b)において、本形態の有機EL装置100は、素子基板10と、封止部材およびカラーフィルター基板としての機能を担う封止基板20とを備えており、素子基板10において、複数の有機EL素子80が形成されている面側に封止基板20が重ねて配置されている。
【0026】
素子基板10と封止基板20とは、第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わされている。かかる第1シール材層91および第2シール材層92の詳細な構成は後述するが、第1シール材層91は、図2(a)にドットを密に付した領域で示してあるように、画素領域10aの周りを囲む周辺領域10cに沿って枠状に形成されている。これに対して、第2シール材層92は、図2(a)にドットを疎に付した領域で示してあるように、第1シール材層91で囲まれた領域の全体にわたって形成されている。
【0027】
素子基板10において、封止基板20からの張り出し領域には端子102が形成されている。また、素子基板10において、周辺領域10cや、画素領域10aと周辺領域10cとに挟まれた領域を利用して、図1を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104(図示せず)が形成されている。
【0028】
(素子基板10の回路部等の構成)
図3(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の断面構成を模式的に示す断面図、およびその一部を拡大して示す説明図である。なお、図3には、有機EL素子として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に対応する3つの有機EL素子のみを示してあり、回路部を構成する配線などの図示は省略してある。図4(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置100の相隣接する画素2つ分の平面図、およびそのB−B′線に相当する位置で素子基板10を切断したときの断面図である。なお、図4(a)では、第1電極層81は長い点線で示し、データ線6aおよびそれと同時形成された薄膜は一点鎖線で示し、走査線3aおよびそれと同時形成された薄膜は実線で示し、半導体層は短い点線で示してある。また、図4(a)において隔壁層は右上がりの点線を付した領域として示してある。
【0029】
図3(a)、(b)および図4(a)、(b)において、素子基板10では、ガラスなどの透光性の基板本体10dの表面上に下地絶縁層10e、および絶縁膜11、12、13、14、15が形成されており、絶縁膜11、12、13、14、15の層間を利用して、以下に説明する回路部が構成されている。
【0030】
まず、素子基板10上には、複数の透明な第1電極層81(長い点線で囲まれた領域)がマトリクス状に形成され、第1電極層81の縦横の境界領域に沿ってデータ線6a(一点鎖線で示す領域)、電源線6g(一点鎖線で示す領域)、走査線3a(実線で示す領域)および容量線3e(実線で示す領域)が形成されている。
【0031】
素子基板10では、基板本体10dの表面にシリコン酸化膜などからなる下地絶縁層10eが形成されているとともに、その上層側に薄膜トランジスター30cが形成されている。薄膜トランジスター30cは、ポリシリコン膜などからなる島状の半導体層1aに対して、チャネル領域1g、ソース領域1h、およびドレイン領域1iが形成されている。半導体層1aの表面側にはゲート絶縁層11が形成されており、ゲート絶縁層11の表面にゲート電極3fが形成されている。ゲート電極3fは、薄膜トランジスター30bのドレインに対して、中継電極6sを介して電気的に接続し、かかる中継電極6sは容量線3eと平面的に重なって保持容量70を構成している。ゲート電極3f、走査線3aおよび容量線3eが同一の導電膜によって形成されている。なお、薄膜トランジスター30bの基本的な構成は、薄膜トランジスター30cと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
薄膜トランジスター30cの上層側には、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる絶縁膜12と、シリコン窒化膜からなる絶縁膜13と、厚さが1.5〜2.0μmの厚い感光性樹脂からなる絶縁膜14(平坦化膜)と、シリコン窒化膜などからなる透光性の絶縁膜15とが形成されている。絶縁膜12の表面(絶縁膜12、13の層間)には、データ線6a、電源線6g、ドレイン電極6h、および中継電極6sが同一の導電膜によって形成され、電源線6gは、絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12gを介してソース領域1hに電気的に接続している。ドレイン電極6hは、絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12hを介してドレイン領域1iに電気的に接続している。
【0033】
このようにして素子基板10上には、異なる絶縁膜上に形成された複数種類の導電膜によって、薄膜トランジスター30b、30c、保持容量70、および各種配線が形成されている。絶縁膜15の表面にはITO膜からなる第1電極層81が形成されており、第1電極層81は、絶縁膜13、14、15に形成されたコンタクトホール14g、15gを介してドレイン電極6hに電気的に接続している。
【0034】
(隔壁層51の基本構成)
第1電極層81の上層側には、発光領域を規定するための開口部を備えた厚い隔壁層51が形成されている。隔壁層51は感光性樹脂からなり、本形態では、かかる感光性樹脂として感光性アクリル樹脂が用いられている。
【0035】
隔壁層51は、画素領域10aを複数の領域に区画しており、かかる隔壁層51で囲まれた領域内に有機EL素子80が設けられている。隔壁層51は、高さ寸法が2μm程度、幅寸法が10μm程度であり、画素10bを一つずつ囲むように格子状に形成されている。画素領域10aは、例えば、最外周に位置する隔壁層51の上面の幅方向の中間位置を結んだ線によって定義される。
【0036】
本形態においては、同一の色に対応する画素10bがデータ線6aの延在方向に直線的に並ぶストライプ配列(図1参照)が採用されている。かかる構成の場合、異なる色に対応する画素10bの境界領域に沿って、隔壁層51をストライプ状に形成することもある。
【0037】
(有機EL素子の構成)
第1電極層81の上層には、有機機能層82および第2電極層83が積層されており、第1電極層81、有機機能層82および第2電極層83によって、有機EL素子80が形成されている。本形態において、有機機能層82および第2電極層83は、隔壁層51が形成されている領域も含めて、画素領域10aの全面にわたって形成されている。隔壁層51の上面部において、有機機能層82と第2電極層83との間には補助陰極線84が形成されている。かかる補助陰極線84は、第2電極層83の上層に形成されることもある。
【0038】
有機機能層82は、トリアリールアミン(ATP)多量体からなる正孔注入層、TPD(トリフェニルジアミン)系正孔輸送層、アントラセン系ドーパントやルブレン系ドーパントを含むスチリルアミン系材料(ホスト)からなる発光層、アルミニウムキノリノール(Alq3)からなる電子注入層をこの順に積層した構造を有しており、その上層にMgAgなどの薄膜金属からなる第2電極層83が形成されている。有機機能層82と第2電極層83との間には、LiFからなる電子注入バッファ層が形成されることもある。これらの材料のうち、有機機能層82を構成する各層、および電子注入バッファ層は、加熱ボート(るつぼ)を用いた真空蒸着法で順次形成することができる。また、第2電極層83などを構成する金属系材料については真空蒸着法により形成でき、第1電極層81を構成するITOなどの酸化物材料についてはECRプラズマスパッタ法やプラズマガン方式イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタ法などの高密度プラズマ成膜法により形成することができる。
【0039】
本形態の有機EL装置100は、トップエミッション型であり、矢印L1で示すように、基板本体10dからみて有機EL素子80が形成されている側から光を取り出すので、基板本体10dとしては、アルミナなどのセラミックス、ステンレススチールなどといった不透明な基板を用いることも可能である。また、絶縁膜14、15の層間には、アルミニウム、銀、それらの合金からなる反射層41が形成されており、有機EL素子80から基板本体10dに向けて出射された光を反射層41で反射することにより、光を出射可能である。なお、有機EL装置100をボトムエミッション型で構成した場合、基板本体10dの側から光を取り出すので、基板本体10dとしては、ガラスなどの透明基板が用いられる。
【0040】
本形態において、有機EL素子80は、白色光、または赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の混合色光を出射する。このため、有機EL装置100では、封止基板20において、有機EL素子80と対向する位置に形成した赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)によって色変換を行なうことにより、フルカラー表示を行なう。すなわち、封止基板20には、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどプラスチック基板や、ガラス基板などからなる透光性の基板本体20dに、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)の間で光の漏洩を防止するための遮光層23(ブラックマトリックス層)、透光性の平坦化膜24、酸窒化シリコン層などからなる透光性のガスバリア層25がこの順に形成されている。本形態において、カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)、遮光層23、平坦化膜24、およびガスバリア層25は、封止基板20の画素領域10aのみに形成され、周辺領域10cには形成されていない。このため、封止基板20の周辺領域10cでは、基板本体20dが露出している。
【0041】
カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)は、透明樹脂バインダーに顔料または染料が混合されている層であり、赤(R)、緑(G)、青(B)を用いるのが基本であるが、目的に応じてライトブルーやライトシアン、白などを加えてもよい。カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)の厚みは、光線透過率を考慮して極力薄い方がよく、0.1〜1.5μmの範囲で形成され、その厚さは、対応する色によって相違させることもある。遮光層23は、黒色顔料を含んだ樹脂からなり、その厚さは、カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)よりも厚く、1〜2μm前後の膜厚が好ましいが、これ以上の膜厚であってもよい。なお、封止基板20には、紫外線の入射を防止する紫外線遮断・吸収層や、光反射防止層、放熱層などの機能層が形成されることもある。
【0042】
(封止層60の構成)
このように構成した有機EL装置100において、有機機能層82、陰極として用いた第2電極層83、電子注入層などは、水分により劣化しやすく、かかる劣化は、電子注入効果の劣化を惹き起こし、ダークスポットと呼ばれる非発光部分を発生させてしまう。そこで、本形態では、素子基板10に対して以下に説明する封止層60を形成した構成と、封止基板20と素子基板10とを貼り合せた構成とを併用する。
【0043】
まず、素子基板10には、第2電極層83の上層に画素領域10aよりも広い領域にわたって封止層60が形成されており、封止層60は、有機EL素子80および隔壁層51を覆っている。かかる封止層60として、本形態では、第2電極層83上に積層されたシリコン化合物層からなる第1封止層61、この第1封止層61上に積層された樹脂層からなる第2封止層62、およびこの第2封止層62上に積層されたシリコン化合物からなる第3封止層63を備えた積層膜が用いられている。
【0044】
第1封止層61および第3封止層63は、高密度プラズマ源を用いた高密度プラズマ気相成長法、例えば、ブラズマガン方式イオンプレーティング、ECRプラズマスパッタ、ECRプラズマCVD、表面波プラズマCVD、ICP−CVDなどを用いて成膜された窒化シリコン(SiNx)や酸窒化シリコン(SiOxNy)などから構成されている。かかる薄膜は、低温で成膜しても水分を確実に遮断する高密度ガスバリア層として機能する。第1封止層61の膜厚は、例えば100〜200nmであり、第3封止層63の膜厚は、例えば200〜600nmである。
【0045】
第2封止層62は、膜厚が3〜10μmの樹脂層から構成されており、素子基板10の反りや体積膨張により発生する応力を緩和することにより、第2電極層83からの第1封止層61の剥離や、第1封止層61でのクラックの発生を防止する機緩衝層として機能する。また、第2封止層62は、隔壁層51や配線などに起因する表面凹凸を平坦化して第3封止層63を平坦化する。従って、第2封止層62は、第3封止層63での応力集中を防止し、第3封止層63でのクラックの発生を防止する。かかる第3封止層63は、例えば、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどを単独、若しくは複数組み合わされて用いられる。また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ、硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類やアミノフェノールなどのアミン化合物を微量添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
【0046】
第2封止層62を形成するにあたっては、硬化時間を短縮するためよく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤を用いてもよいが、硬化収縮が急激に進まないよう反応の遅いものが良く、また、塗布後の加熱による粘度低下で平坦化を進めるように最終的には熱硬化を用いて硬化物を形成するものが好ましい。さらに、第1封止層61および第3封止層63との密着性を向上させることを目的にシランカップリング剤や、イソシアネート化合物などの捕水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加物を混入してもよい。なお、第2封止層62は、膜厚が厚い方が好ましい。但し、第2封止層62の膜厚が10μmを超えると、光を取り出す効率が低下してしまう。
【0047】
本形態では、封止層60を構成する第1封止層61および第3封止層63(高密度ガスバリア層)は、画素領域10aから周辺領域10c付近までの広い領域にわたって形成されている。これに対して、第2封止層62は、画素領域10aおよび画素領域10aの近傍領域のみに分厚く形成され、周辺領域10c付近には形成されていない。このため、第1封止層61と第3封止層63とは、第2封止層62を外周側で積層された状態にある。なお、絶縁膜14、15は概ね、画素領域10aおよび画素領域10aの近傍領域のみに形成され、絶縁膜14、15の形成領域は第2封止層62の形成領域よりも狭い。
【0048】
(隔壁層51の詳細構成およびその効果)
図5は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置100における反射層41と隔壁層51との関係を示す説明図である。
【0049】
図3(a)、(b)において、隔壁層51は、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。隔壁層内壁511は、素子基板10に用いた基板本体10dに対して角度Θ1をなしており、隔壁層外壁512は、素子基板10に用いた基板本体10dに対して角度Θ2をなしている。ここで、角度Θ1および角度Θ2はいずれも90°以下である。
【0050】
また、封止層60は、隔壁層51および有機EL素子80を覆うように形成されている。このため、封止層60は、画素領域10aの外側では、隔壁層外壁512の上に積層されている。かかる封止層60では、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分にクラックが発生していないことが重要であり、それには、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいことが好ましい。
【0051】
一方、画素10bから出射される光の輝度を高めるには、有機EL素子80の形成面積が広い方が好ましく、それには、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいことが好ましい。
【0052】
そこで、本形態では、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になるように設定してある。すなわち、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0053】
従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しない。特に、第1封止層61や第3封止層63は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上ではクラックが発生しやすいが、本形態によれば、かかるクラックの発生を確実に防止することができる。それ故、本形態によれば、有機EL素子80を水分や酸素から保護することができる。
【0054】
また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子80の面積が広い。それ故、本形態によれば、有機EL素子80の面積を狭めることなく、封止層60による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置100を実現することができる。
【0055】
また、本形態では、第1電極層81の下層側では、反射層41が各画素10b毎に形成されており、互いに隣り合う反射層41の間には、隔壁層51と重なる領域で途切れている。但し、本形態では、画素領域10aの最外周に位置する反射層41は、画素領域10aの外側まで延在しており、かかる反射層41において、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bにはスリット状の開口部41cが形成されている。
【0056】
ここで、スリット状の開口部41cは、後述する露光工程で、隔壁層外壁512を形成する際にハーフ露光(諧調露光)を行なうためのマスクとして利用される。このため、図5に示すように、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bは、画素領域10aに近い領域と画素領域10aから遠い領域との間で開口密度が相違している。本形態では、隔壁層51をポジタイプの感光性樹脂(ポジタイプの感光性アクリル樹脂)により形成する。このため、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。
【0057】
(封止基板20による封止)
本形態では、図2(a)、(b)、および図3(a)に示すように、素子基板10と封止基板20との間では、周辺領域10cに沿って第1シール材層91が矩形枠状に形成され、周辺領域10cで囲まれた領域の全体にわたって透光性の第2シール材層92が形成されており、素子基板10と封止基板20とは、第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わされている。
【0058】
本形態において、第2シール材層92(第2シール材92a)には、熱によって硬化するエポキシ系接着剤が用いられている。第1シール材層91(第1シール材91a)は、素子基板10と封止基板20との間に介在して素子基板10と封止基板20との基板間隔を制御するビーズ状あるいはファイバー状のギャップ材91e(図2参照)が樹脂91r中に分散された構造になっており、素子基板10と封止基板20との間隙はギャップ材91eによって制御されている。第1シール材層91において、樹脂91rには、紫外線によって硬化するエポキシ系接着剤が用いられている。
【0059】
かかる第1シール材層91および第2シール材層92によって封止を行なうには、第1シール材塗布工程において、ディスペンサー描画、スクリーン印刷法、マイクロピエゾヘッドを用いたインクジェット法などにより、素子基板10の周辺領域10cに対して、前記した光硬化性のエポキシ樹脂材料からなる樹脂91r中にギャップ材91eが分散された第1シール材91aを1mm以下の狭い幅寸法に塗布する。
【0060】
次に、第2シール材塗布工程において、ディスペンサー描画、スクリーン印刷法、マイクロピエゾヘッドを用いたインクジェット法などにより、素子基板10において、第1シール材91a囲まれた領域内に、前記した熱硬化性のエポキシ樹脂材料からなる第2シール材92aを塗布する。
【0061】
次に、重ね合わせ工程では、真空度1Pa程度の減圧雰囲気中で、第1シール材91aおよび第2シール材92aを間に挟むように素子基板10と封止基板20とをアライメントしながら重ね合わせる。その際、約600N程度の力で封止基板20を素子基板10に向けて加圧し、この状態を約200秒保持する。かかる重ね合わせ工程では、まず、第1シール材91aが封止基板20に接触して内側が密閉され、その後、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aが展開する。
【0062】
次に、常圧に戻すと、大気圧によって加圧されたのと同様な状態になるので、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aが隅々まで展開し、第2シール材92aの充填性が向上する。その際、第1シール材91aは、第2シール材92aに対するバンクとして機能する。このため、減圧状態から常圧に戻した際に大気圧によって加圧されたのと同様な状態になっても、第2シール材92aは、第1シール材91aによって堰き止められ、外側に流出しない。なお、素子基板10と封止基板20との間には、第1シール材91aが含有するギャップ材91eによって所定の隙間が確保される。
【0063】
次に、シール材固化工程では、第1シール材91aを固化させて第1シール材層91を形成するとともに、第2シール材92aを固化させて第2シール材層92を形成する。本形態において、第1シール材91aは光硬化性であり、第2シール材92aは熱硬化性である。そこで、素子基板10または/および封止基板20の側から第1シール材91aに対して紫外線を照射して第1シール材91aのみを選択的に硬化させて、第1シール材層91を形成する。次に、第1シール材層91によって貼り合わされた素子基板10と封止基板20とをホットプレート上に配置した状態で、有機EL素子80が劣化しない温度条件、例えば100℃以下の温度条件、より具体的には60〜100℃の温度条件で加熱を行い、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aを隅々まで行き渡らせながら第2シール材92aを硬化させ、第2シール材層92を形成する。このようにして、素子基板10と封止基板20とを第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わせた構造とする。
【0064】
(本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第1例)
図6および図7を参照して、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第1例を説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、反射層および第1電極層を形成する工程の工程断面図であり、図7は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、隔壁層を形成する工程の工程断面図である。なお、図7では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。また、図6および図7では、下地絶縁層10eの図示を省略してある。
【0065】
本形態の有機EL装置100を製造するには、図6(a)に示すように、基板本体10d上に絶縁膜14までを形成した後、図6(b)に示すように、アルミニウムなどの反射性金属41xを形成する。次に、反射性金属41xの表面に、図3、図4および図5を参照して説明した反射層41の形成パターンと同一のマスクパターンを有するエッチングマスク99を形成する。
【0066】
次に、エッチングマスク99の開孔部を介して反射性金属41xをエッチングした後、エッチングマスク99を除去すれば、図6(c)に示すように反射層41が形成される。かかる反射層41において、図3(a)、(b)を参照して説明した隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bに、図5に示す開口部41cが形成されている。
【0067】
次に、図6(d)に示すように、反射層41の上層側に絶縁膜15を形成する。次に、絶縁膜15に、図4(b)を参照して説明したコンタクトホール15gを形成する。次に、絶縁膜15の表面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いてITO膜をパターニングし、第1電極層81を形成する。
【0068】
次に、図7(a)に示すように、第1電極層81の上層側にポジタイプの感光性樹脂51xを塗布した後、図7(b)および図7(c)に示す露光工程を行なう。
【0069】
かかる露光工程では、まず、図7(b)に示すように、図3および図4に示す隔壁層51で囲まれた領域が透光部93aになっている露光マスク93を介して感光性樹脂51xを露光する。その結果、感光性樹脂51xにおいて透光部93aと重なる部分51wが完全露光される。
【0070】
次に、図7(c)に示すように、反射層41に対して感光性樹脂51xが位置する側とは反対側から露光する。その結果、感光性樹脂51xにおいて、反射層41のスリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51zは、反射層41のスリット状の開口部41cを介してハーフ露光される。ここで、開口部41cは、図5に示すように、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が拡大しており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。このため、感光性樹脂51xにおいて、反射層41のスリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51zでは、図7(c)に模式的に示すように、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって露光量が増大していく。また、感光性樹脂51xにおいて、周辺領域10cや周辺領域10c付近に位置する部分51yは完全露光される。その際、画素領域10aでは、隔壁層51を形成する必要がある部分には、反射層41や配線などの遮光膜が存在するので、露光されることがない。但し、反射層41などの遮光層が形成されていない領域が存在し、かかる部分にも隔壁層51を形成する必要がある場合、かかる領域については、露光マスク94の遮光部94bで覆っておけばよい。
【0071】
次に、露光済みの感光性樹脂51xを現像すると、完全露光された部分51w、51yは完全に除去される。これに対して、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分51zでは、露光量が多い箇所では感光性樹脂51xが多く除去され、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51xが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51xを焼成すると、図7(d)に示す隔壁層51が形成される。かかる隔壁層51では、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。但し、ハーフ露光によって形成された隔壁層外壁512では、完全露光によって形成された隔壁層内壁511に比して、基板本体10dに対してなす角度が小さい。このため、隔壁層51において、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になっている。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0072】
しかる後には、有機機能層82、補助陰極線84、第2電極層83、封止層60(第1封止層61、第2封止層62、第3封止層63)を順次形成していく。そして、封止層60を形成する際には、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいため、封止層60において隔壁層外壁512を覆う部分にクラックが発生することがない。
【0073】
このように本形態では、隔壁層51を形成する際、ハーフ露光を行なって、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2を小さくする。このため、ハーフ露光の際の光量分布を変えるだけで、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2を最適な角度に設定することができる。また、ハーフ露光を行なう際、反射層41に形成したスリット状の開口部41cを介して背面露光を行なう。このため、ハーフ露光用の高価な露光マスクを必要としない。また、反射層41に対する遮光層外壁512の位置に高い精度で得ることができる。
【0074】
(本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第2例)
図8を参照して、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第2例を説明する。図8は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する別の方法を示す工程断面図である。図8では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。なお、本形態の方法で製造した有機EL装置100の構造は、図1〜図5を参照して説明した構成と同一であるため、構造についての詳細な説明を省略する。
【0075】
図5〜図7を参照して説明した例では、反射層41のスリット状の開口部41cを介してポジタイプの感光性樹脂をハーフ露光するため、図5に示すように、スリット状の開口部41cは、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分411は、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっていた。これに対して、本形態では、ポジタイプの感光性樹脂に代えて、ネガタイプの感光性樹脂を用いる。また、本形態でも、図8(a)、(b)に示すように、反射層41において、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分411にはスリット状の開口部41cを形成するが、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。
【0076】
かかる構成の場合、例えば、図8(a)に示すように、ネガタイプの感光性樹脂51eを塗布した後、画素領域10a内において隔壁層51を形成したい部分と重なる部分が透光部95aになっている露光マスク95を用いて感光性樹脂51eを露光する。その結果、感光性樹脂51eにおいて、透光部95aと重なる部分51fが完全露光される。
【0077】
次に、図8(b)に示すように、反射層41に対して感光性51eが位置する側とは反対側から露光する。その際、周辺領域10cや周辺領域近傍など、隔壁層51を一切、形成しない部分については、露光マスク96の遮光部96bで覆っておく。その結果、感光性樹脂51eにおいて、スリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51gは、反射層41のスリット状の開口部41cを介してハーフ露光される。ここで、開口部41cは、図5に示す構成とは反対に、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が狭くなっており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。このため、感光性樹脂51eにおいて、ハーフ露光された部分51gでは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって露光量が減少していく。
【0078】
従って、露光済みの感光性樹脂51eを現像すると、一切露光されなかった部分は完全に除去され、完全露光された部分51fが残る。また、ハーフ露光された部分51gでは、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51eが多く除去され、露光量が多い箇所では感光性樹脂51eが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51eを焼成すると、図3に示す隔壁層51が形成される。かかる隔壁層51では、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になっている。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。このため、封止層60を形成した際、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいため、封止層60において隔壁層外壁512を覆う部分にクラックが発生することがない。また、本形態では、ハーフ露光を行なう際、反射層41に形成したスリット状の開口部41cを介して背面露光を行なう。このため、ハーフ露光用の高価な露光マスクを必要としない。また、反射層41に対する遮光層外壁512の位置に高い精度で得ることができる。
【0079】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置の一部を拡大して示す説明図であり、図3(b)に対応する。図10(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置100の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する工程の工程断面図、および別の方法を示す工程断面図である。図10では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。なお。本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同一であるため、共通する部分の説明を省略する。
【0080】
図9に示すように、本形態の有機EL装置100でも、実施の形態1と同様、隔壁層51は、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。また、本形態でも、実施の形態1と同様、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になるように設定してある。すなわち、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0081】
従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しにくい。それ故、有機EL素子80を水分や酸素から保護することができる。また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子80の面積が広い。それ故、本形態によれば、有機EL素子80の面積を狭めることなく、封止層60による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置100を実現することができる。
【0082】
かかる有機EL装置100において、本形態では、反射層41は、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分には形成されていない。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
かかる構成の有機EL装置100を製造するにあたって、本形態では、図10(a)に示すように、第1電極層81の上層側にポジタイプの感光性樹脂51xを塗布した後、露光マスク96による1回の露光を行なう。かかる露光マスク96では、隔壁層51で囲まれた領域と重なる部分など、感光性樹脂51xを完全に除去する部分は透光部96aになっており、隔壁層51を形成すべき部分は遮光部96bになっている。また、露光マスク96では、感光性樹脂51xにおいて隔壁層外壁512を形成すべき部分と重なる部分には、スリット状の開口部96cが形成されている。かかる開口部96cは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が拡張しており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。
【0084】
従って、露光済みの感光性樹脂51xを現像すると、完全露光された部分は完全に除去される。これに対して、感光性樹脂51xにおいて、露光マスク96の開口部96cによってハーフ露光された部分のうち、露光量が多い箇所では感光性樹脂51xが多く除去され、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51xが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51xを焼成すると、図9に示す隔壁層51が形成される。
【0085】
また、図9に示す有機EL装置100を製造するにあたって、ネガタイプの感光性樹脂51eを用いた場合、図10(b)に示す露光マスク97による1回の露光を行なう。かかる露光マスク97では、隔壁層51で囲まれた領域と重なる部分など、感光性樹脂51eを完全に除去する部分は遮光部97bになっており、隔壁層51を形成すべき部分は透光部97aになっている。また、露光マスク97では、感光性樹脂51eにおいて隔壁層外壁512を形成すべき部分と重なる部分には、スリット状の開口部97cが形成されている。かかる開口部97cは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が狭まっており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。
【0086】
従って、露光済みの感光性樹脂51eを現像すると、一切露光されなかった部分は完全に除去され、完全露光された部分が残る。また、ハーフ露光された部分では、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51eが多く除去され、露光量が多い箇所では感光性樹脂51eが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51eを焼成すると、図9に示す隔壁層51が形成される。
【0087】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1、2では、封止基板20にカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)を設けた場合を例に説明したが、有機EL素子自身が各色の光を出射する有機EL装置に本発明を適用してもよく、この場合、封止基板20は封止基板のみとして機能する。また、上記実施の形態では、カラー表示用の有機EL装置100を例に説明したが、複写機の光学ヘッドなどとして利用する場合には、モノクロ仕様でよく、このようなモノクロ仕様の有機EL装置に本発明を適用してもよい。この場合も、封止基板20は封止部材のみとして機能する。
【0088】
上記実施の形態1、2では、トップエミッション型の有機EL装置100に本発明を適用したが、実施の形態2に係る構成は、ボトムエミッション型の有機EL装置に適用することができる。
【0089】
上記実施の形態1、2では、有機機能層82を画素領域10aの全面に形成した例を説明したが、隔壁層51で囲まれた領域内にインクジェット法などで有機機能層を選択的に塗布した後、定着させて、第1電極層81の上層には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)などからなる正孔注入層、および発光層からなる有機機能層が形成された有機EL装置に発明を適用してもよい。この場合、発光層は、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープした材料から構成される。また、発光層としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる組成物も使用可能である。
【0090】
[電子機器への搭載例]
図11を参照して、上述した実施形態に係る有機EL装置100を搭載した電子機器について説明する。図11は、本発明に係る有機EL装置を用いた電子機器の説明図である。
【0091】
図11(a)に、有機EL装置100を備えたモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての有機EL装置100と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。図11(b)に、有機EL装置100を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての有機EL装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置100に表示される画面がスクロールされる。図11(c)に、有機EL装置100を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての有機EL装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置100に表示される。なお、有機EL装置100が適用される電子機器としては、図11(a)〜(c)に示すものの他、デジタルスチールカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL装置100が適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10・・素子基板、10a・・画素領域、10b・・画素、10c・・周辺領域、20・・封止基板、41・・反射層、41c・・反射層の開口部、51・・隔壁層、60・・封止層、61・・第1封止層、62・・第2封止層、63・・第3封止層、80・・有機EL素子、81・・第1電極層、82・・有機機能層、83・・第2電極層、100・・有機EL装置、511・・隔壁層内壁、512・・隔壁層外壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)装置、その製造方法、および当該有機EL装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は、図12に示すように、概ね、素子基板10上で画素領域10aを複数の領域に区画する隔壁層51と、隔壁層51により囲まれた領域に設けられた有機EL素子80とを有している。有機EL素子80は、第1電極層81(陽極/画素電極)、有機機能層82および第2電極層83(陰極)が積層された構造を備えており、有機機能層82と第2電極層83との層間に、アルカリ金属やアルカリ土類金属を主成分とする電子注入層が配置される場合もある。このような有機EL素子80に用いられる有機機能層82や第2電極層83は、非常に活性であるため、大気中に存在する水分や酸素と接触すると簡単に反応して変質する。かかる変質が起こると、電子注入効果が損なわれ、ダークスポットと呼ばれる非発光部分が発生してしまう。
【0003】
そこで、隔壁層51および有機EL素子80を覆うように封止層60を形成した構成が提案されており、かかる封止層60としては、無機膜からなる第1封止層61(電極保護層)、樹脂層からなる第2封止層62(有機緩衝層)、および無機膜からなる第3封止層63(ガスバリア層)の積層構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−059868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の封止構造では、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分にクラックが発生していないことが重要である。しかしながら、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分は、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上に積層されるため、封止層60にクラックが発生しやすい。特に、第1封止層61や第3封止層63は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上ではクラックが発生しやすい。それ故、特許文献1に記載の封止構造では、有機機能層82や第2電極層83を確実に保護することができないという問題点がある。かといって、隔壁層51の壁面を素子基板10に対して小さな角度をなすようなテーパー面にすると、隔壁層51において画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511が有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことになるため、有機EL素子80の面積が狭くなって発光強度が低下する。それ故、従来は、封止性能の安定性と、発光強度の向上とは二律背反する課題であり、一方を実現しようとすると、他方が犠牲になってしまう。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、有機EL素子の形成領域を狭めることなく、封止層による封止性能の向上を図ることができる有機EL装置、その製造方法、および当該有機EL装置を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る有機EL装置は、基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機EL素子と、前記隔壁層および前記有機EL素子を覆う封止層と、を有し、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁は、当該隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、例えば、前記隔壁層内壁が前記基板に対してなす角度は60〜70°であり、前記隔壁層外壁が前記基板に対してなす角度は45°以下である。
【0009】
本発明では、隔壁層および有機EL素子を覆う封止層によって、有機EL素子を水分や酸素などから保護する。ここで、封止層において画素領域を外側で囲む部分は、隔壁層外壁に積層されるが、かかる隔壁層外壁は、隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっている。すなわち、本発明では、隔壁層内壁については基板に対してなす角度を大きな構造とし、隔壁層外壁については基板に対してなす角度を小さくしてある。このため、封止層は、基板に対してなす角度が小さい隔壁層外壁上に積層されるので、封止層にクラックが発生しにくい。それ故、有機EL素子を水分や酸素から確実に保護することができる。また、隔壁層内壁は、基板に対してなす角度が大きいため、有機EL素子の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子の面積が広い。それ故、本発明によれば、有機EL素子の面積を狭めることなく、封止層による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置を実現することができる。
【0010】
また、本発明では、基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機EL素子と、前記隔壁層および前記有機EL素子を覆う封止層と、を有する有機EL装置の製造方法において、前記隔壁層を形成するにあたっては、前記基板上に感光性樹脂を塗布する感光性樹脂塗布工程と、当該感光性樹脂のうち、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する露光工程と、を行ない、当該隔壁層外壁を前記隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることを特徴とする。
【0011】
本発明では、感光性樹脂によって隔壁層を形成する際、露光工程において、感光性樹脂のうち、隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、画素領域に近い領域と画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する。このため、隔壁層外壁を隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることができる。
【0012】
本発明において、前記封止層は、無機膜からなる第1封止層と、該第1封止層の上層に積層された樹脂層からなる第2封止層と、該第2封止層の上層に積層された無機膜からなる第3封止層と、を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、第1封止層を電極保護層とし、第2封止層については有機緩衝層とし、第3封止層についてはガスバリア層とすることができる。また、第1封止層や第3封止層は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、基板に対して大きな角度をなす隔壁層外壁上ではクラックが発生しやすいが、本発明によれば、かかるクラックの発生を確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、前記基板上において前記有機EL素子の下層側には、少なくとも、前記有機EL素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を備え、当該反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域には、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部が形成されている構成を採用することができる。
【0014】
かかる構成の有機EL装置では、以下の製造方法を採用することができる。すなわち、本発明に係る有機EL装置の製造方法では、前記基板上に前記隔壁層および前記有機EL素子を形成する前に、前記有機EL素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を形成する反射層形成工程を有し、当該反射層形成工程では、前記反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部を形成し、前記露光工程では、前記反射層において前記感光性樹脂が位置する側とは反対側から前記開口部を介して前記感光性樹脂において前記隔壁層外壁を形成する樹脂部分を露光する。
【0015】
かかる構成によれば、反射層によって、感光性樹脂において隔壁層外壁を構成する部分に対してハーフ露光(諧調露光)を行なうことができる。それ故、感光性樹脂に対する露光工程では、高価なハーフ露光用マスクを用いる必要がないという利点がある。
【0016】
本発明を適用した有機EL装置は、携帯電話機あるいはモバイルコンピューターなどの電子機器において直視型の表示部などとして用いられる。また、本発明を適用した有機EL装置は、プリンターやコピー機などの電子機器で用いられる露光ヘッドや、各種電子機器の照明装置などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置をその上に形成された各構成要素と共に封止基板の側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である
【図3】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の断面構成を模式的に示す断面図、およびその一部を拡大して示す説明図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の相隣接する画素2つ分の平面図、およびそのB−B′線に相当する位置で素子基板を切断したときの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置における反射層と隔壁層との関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、反射層および第1電極層を形成する工程の工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、隔壁層を形成する工程の工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する別の方法を示す工程断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る有機EL装置の一部を拡大して示す説明図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置100の製造工程のうち、素子基板上に隔壁層を形成する工程の工程断面図、および別の方法を示す工程断面図である。
【図11】本発明に係る有機EL装置を用いた電子機器の説明図である。
【図12】従来の有機EL装置の問題点を示す説明Z図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、図12を参照して説明した構成との対応が分りやすいように、可能な限り、対応する部分には同一の符号を付して説明する。なお、薄膜トランジスターでは、印加する電圧によってソースとドレインが入れ替わるが、以下の説明では、説明の便宜上、画素電極が接続されている側をドレインとして説明する。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。図2(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置をその上に形成された各構成要素と共に封止基板の側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である。
【0020】
図1に示す有機EL装置100において、素子基板10上には、複数の走査線3aと、走査線3aに対して交差する方向に延びる複数のデータ線6aと、走査線3aとデータ線6aとの交差に対応する位置に形成された画素10bとを有しており、複数の画素10bがマトリクス状に配列されている領域によって画素領域10aが構成されている。また、素子基板10上では、データ線6aに並列して複数の電源線6gが延在し、走査線3aに並列して複数の容量線3eが延在している。データ線6aにはデータ線駆動回路101が接続され、走査線3aには走査線駆動回路104が接続されている。複数の画素10bの各々には、走査線3aを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスター30bと、このスイッチング用の薄膜トランジスター30bを介してデータ線6aから供給される画素信号を保持する保持容量70と、保持容量70によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスター30cとが形成されている。また、複数の画素10bの各々には、薄膜トランジスター30cを介して電源線6gに電気的に接続したときに電源線6gから駆動電流が流れ込む第1電極層81(陽極層/画素電極)が形成されており、かかる第1電極層81上に、後述する有機機能層および第2電極層(陰極層)が積層されることにより有機EL素子80が構成されている。
【0021】
かかる有機EL装置100では、走査線3aが駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスター30bがオンになると、そのときのデータ線6aの電位が保持容量70に保持され、保持容量70が保持する電荷に応じて、駆動用の薄膜トランジスター30cのオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスター30cのチャネルを介して、電源線6gから第1電極層81に電流が流れ、さらに有機機能層82を介して第2電極層83に電流が流れる。その結果、有機EL素子80は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0022】
このような有機EL装置100は、携帯電話機やモバイルコンピューターなどの電子機器において表示部として用いることができ、カラー表示を行なう場合、図1に(R)、(G)、(B)を付したように、各画素10bは各々、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のサブピクセルを構成する。本形態では、同一の色に対応する画素10bがデータ線6aの延在方向に直線的に並ぶストライプ配列が採用されている。
【0023】
本形態において、有機EL素子80は、白色光、または赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の混合色光が出射され、画素10bが赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれに対応するかは、後述するカラーフィルター層によって規定されている。
【0024】
なお、図1に示す構成では、電源線6gおよび容量線3eが各々、データ線駆動回路101および走査線駆動回路104から延在しているが、電源線6gおよび容量線3eが直接、端子102から延在している構成などを採用してもよい。また、図1に示す構成では、走査線3aと並列に容量線3eを形成したが、容量線3eを形成せずに、電源線6gと薄膜トランジスター30bのドレインとの間に保持容量70を形成することもできる。
【0025】
(有機EL装置の具体的構成)
図2(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の平面的な構成を各構成要素と共に第2基板側から見た平面図、およびそのJ−J′断面図である。なお、図2(b)にはカラーフィルター層などの図示を省略してある。図2(a)、(b)において、本形態の有機EL装置100は、素子基板10と、封止部材およびカラーフィルター基板としての機能を担う封止基板20とを備えており、素子基板10において、複数の有機EL素子80が形成されている面側に封止基板20が重ねて配置されている。
【0026】
素子基板10と封止基板20とは、第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わされている。かかる第1シール材層91および第2シール材層92の詳細な構成は後述するが、第1シール材層91は、図2(a)にドットを密に付した領域で示してあるように、画素領域10aの周りを囲む周辺領域10cに沿って枠状に形成されている。これに対して、第2シール材層92は、図2(a)にドットを疎に付した領域で示してあるように、第1シール材層91で囲まれた領域の全体にわたって形成されている。
【0027】
素子基板10において、封止基板20からの張り出し領域には端子102が形成されている。また、素子基板10において、周辺領域10cや、画素領域10aと周辺領域10cとに挟まれた領域を利用して、図1を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104(図示せず)が形成されている。
【0028】
(素子基板10の回路部等の構成)
図3(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の断面構成を模式的に示す断面図、およびその一部を拡大して示す説明図である。なお、図3には、有機EL素子として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に対応する3つの有機EL素子のみを示してあり、回路部を構成する配線などの図示は省略してある。図4(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置100の相隣接する画素2つ分の平面図、およびそのB−B′線に相当する位置で素子基板10を切断したときの断面図である。なお、図4(a)では、第1電極層81は長い点線で示し、データ線6aおよびそれと同時形成された薄膜は一点鎖線で示し、走査線3aおよびそれと同時形成された薄膜は実線で示し、半導体層は短い点線で示してある。また、図4(a)において隔壁層は右上がりの点線を付した領域として示してある。
【0029】
図3(a)、(b)および図4(a)、(b)において、素子基板10では、ガラスなどの透光性の基板本体10dの表面上に下地絶縁層10e、および絶縁膜11、12、13、14、15が形成されており、絶縁膜11、12、13、14、15の層間を利用して、以下に説明する回路部が構成されている。
【0030】
まず、素子基板10上には、複数の透明な第1電極層81(長い点線で囲まれた領域)がマトリクス状に形成され、第1電極層81の縦横の境界領域に沿ってデータ線6a(一点鎖線で示す領域)、電源線6g(一点鎖線で示す領域)、走査線3a(実線で示す領域)および容量線3e(実線で示す領域)が形成されている。
【0031】
素子基板10では、基板本体10dの表面にシリコン酸化膜などからなる下地絶縁層10eが形成されているとともに、その上層側に薄膜トランジスター30cが形成されている。薄膜トランジスター30cは、ポリシリコン膜などからなる島状の半導体層1aに対して、チャネル領域1g、ソース領域1h、およびドレイン領域1iが形成されている。半導体層1aの表面側にはゲート絶縁層11が形成されており、ゲート絶縁層11の表面にゲート電極3fが形成されている。ゲート電極3fは、薄膜トランジスター30bのドレインに対して、中継電極6sを介して電気的に接続し、かかる中継電極6sは容量線3eと平面的に重なって保持容量70を構成している。ゲート電極3f、走査線3aおよび容量線3eが同一の導電膜によって形成されている。なお、薄膜トランジスター30bの基本的な構成は、薄膜トランジスター30cと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
薄膜トランジスター30cの上層側には、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる絶縁膜12と、シリコン窒化膜からなる絶縁膜13と、厚さが1.5〜2.0μmの厚い感光性樹脂からなる絶縁膜14(平坦化膜)と、シリコン窒化膜などからなる透光性の絶縁膜15とが形成されている。絶縁膜12の表面(絶縁膜12、13の層間)には、データ線6a、電源線6g、ドレイン電極6h、および中継電極6sが同一の導電膜によって形成され、電源線6gは、絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12gを介してソース領域1hに電気的に接続している。ドレイン電極6hは、絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12hを介してドレイン領域1iに電気的に接続している。
【0033】
このようにして素子基板10上には、異なる絶縁膜上に形成された複数種類の導電膜によって、薄膜トランジスター30b、30c、保持容量70、および各種配線が形成されている。絶縁膜15の表面にはITO膜からなる第1電極層81が形成されており、第1電極層81は、絶縁膜13、14、15に形成されたコンタクトホール14g、15gを介してドレイン電極6hに電気的に接続している。
【0034】
(隔壁層51の基本構成)
第1電極層81の上層側には、発光領域を規定するための開口部を備えた厚い隔壁層51が形成されている。隔壁層51は感光性樹脂からなり、本形態では、かかる感光性樹脂として感光性アクリル樹脂が用いられている。
【0035】
隔壁層51は、画素領域10aを複数の領域に区画しており、かかる隔壁層51で囲まれた領域内に有機EL素子80が設けられている。隔壁層51は、高さ寸法が2μm程度、幅寸法が10μm程度であり、画素10bを一つずつ囲むように格子状に形成されている。画素領域10aは、例えば、最外周に位置する隔壁層51の上面の幅方向の中間位置を結んだ線によって定義される。
【0036】
本形態においては、同一の色に対応する画素10bがデータ線6aの延在方向に直線的に並ぶストライプ配列(図1参照)が採用されている。かかる構成の場合、異なる色に対応する画素10bの境界領域に沿って、隔壁層51をストライプ状に形成することもある。
【0037】
(有機EL素子の構成)
第1電極層81の上層には、有機機能層82および第2電極層83が積層されており、第1電極層81、有機機能層82および第2電極層83によって、有機EL素子80が形成されている。本形態において、有機機能層82および第2電極層83は、隔壁層51が形成されている領域も含めて、画素領域10aの全面にわたって形成されている。隔壁層51の上面部において、有機機能層82と第2電極層83との間には補助陰極線84が形成されている。かかる補助陰極線84は、第2電極層83の上層に形成されることもある。
【0038】
有機機能層82は、トリアリールアミン(ATP)多量体からなる正孔注入層、TPD(トリフェニルジアミン)系正孔輸送層、アントラセン系ドーパントやルブレン系ドーパントを含むスチリルアミン系材料(ホスト)からなる発光層、アルミニウムキノリノール(Alq3)からなる電子注入層をこの順に積層した構造を有しており、その上層にMgAgなどの薄膜金属からなる第2電極層83が形成されている。有機機能層82と第2電極層83との間には、LiFからなる電子注入バッファ層が形成されることもある。これらの材料のうち、有機機能層82を構成する各層、および電子注入バッファ層は、加熱ボート(るつぼ)を用いた真空蒸着法で順次形成することができる。また、第2電極層83などを構成する金属系材料については真空蒸着法により形成でき、第1電極層81を構成するITOなどの酸化物材料についてはECRプラズマスパッタ法やプラズマガン方式イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタ法などの高密度プラズマ成膜法により形成することができる。
【0039】
本形態の有機EL装置100は、トップエミッション型であり、矢印L1で示すように、基板本体10dからみて有機EL素子80が形成されている側から光を取り出すので、基板本体10dとしては、アルミナなどのセラミックス、ステンレススチールなどといった不透明な基板を用いることも可能である。また、絶縁膜14、15の層間には、アルミニウム、銀、それらの合金からなる反射層41が形成されており、有機EL素子80から基板本体10dに向けて出射された光を反射層41で反射することにより、光を出射可能である。なお、有機EL装置100をボトムエミッション型で構成した場合、基板本体10dの側から光を取り出すので、基板本体10dとしては、ガラスなどの透明基板が用いられる。
【0040】
本形態において、有機EL素子80は、白色光、または赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の混合色光を出射する。このため、有機EL装置100では、封止基板20において、有機EL素子80と対向する位置に形成した赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)によって色変換を行なうことにより、フルカラー表示を行なう。すなわち、封止基板20には、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどプラスチック基板や、ガラス基板などからなる透光性の基板本体20dに、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)の間で光の漏洩を防止するための遮光層23(ブラックマトリックス層)、透光性の平坦化膜24、酸窒化シリコン層などからなる透光性のガスバリア層25がこの順に形成されている。本形態において、カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)、遮光層23、平坦化膜24、およびガスバリア層25は、封止基板20の画素領域10aのみに形成され、周辺領域10cには形成されていない。このため、封止基板20の周辺領域10cでは、基板本体20dが露出している。
【0041】
カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)は、透明樹脂バインダーに顔料または染料が混合されている層であり、赤(R)、緑(G)、青(B)を用いるのが基本であるが、目的に応じてライトブルーやライトシアン、白などを加えてもよい。カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)の厚みは、光線透過率を考慮して極力薄い方がよく、0.1〜1.5μmの範囲で形成され、その厚さは、対応する色によって相違させることもある。遮光層23は、黒色顔料を含んだ樹脂からなり、その厚さは、カラーフィルター層22(R)、(G)、(B)よりも厚く、1〜2μm前後の膜厚が好ましいが、これ以上の膜厚であってもよい。なお、封止基板20には、紫外線の入射を防止する紫外線遮断・吸収層や、光反射防止層、放熱層などの機能層が形成されることもある。
【0042】
(封止層60の構成)
このように構成した有機EL装置100において、有機機能層82、陰極として用いた第2電極層83、電子注入層などは、水分により劣化しやすく、かかる劣化は、電子注入効果の劣化を惹き起こし、ダークスポットと呼ばれる非発光部分を発生させてしまう。そこで、本形態では、素子基板10に対して以下に説明する封止層60を形成した構成と、封止基板20と素子基板10とを貼り合せた構成とを併用する。
【0043】
まず、素子基板10には、第2電極層83の上層に画素領域10aよりも広い領域にわたって封止層60が形成されており、封止層60は、有機EL素子80および隔壁層51を覆っている。かかる封止層60として、本形態では、第2電極層83上に積層されたシリコン化合物層からなる第1封止層61、この第1封止層61上に積層された樹脂層からなる第2封止層62、およびこの第2封止層62上に積層されたシリコン化合物からなる第3封止層63を備えた積層膜が用いられている。
【0044】
第1封止層61および第3封止層63は、高密度プラズマ源を用いた高密度プラズマ気相成長法、例えば、ブラズマガン方式イオンプレーティング、ECRプラズマスパッタ、ECRプラズマCVD、表面波プラズマCVD、ICP−CVDなどを用いて成膜された窒化シリコン(SiNx)や酸窒化シリコン(SiOxNy)などから構成されている。かかる薄膜は、低温で成膜しても水分を確実に遮断する高密度ガスバリア層として機能する。第1封止層61の膜厚は、例えば100〜200nmであり、第3封止層63の膜厚は、例えば200〜600nmである。
【0045】
第2封止層62は、膜厚が3〜10μmの樹脂層から構成されており、素子基板10の反りや体積膨張により発生する応力を緩和することにより、第2電極層83からの第1封止層61の剥離や、第1封止層61でのクラックの発生を防止する機緩衝層として機能する。また、第2封止層62は、隔壁層51や配線などに起因する表面凹凸を平坦化して第3封止層63を平坦化する。従って、第2封止層62は、第3封止層63での応力集中を防止し、第3封止層63でのクラックの発生を防止する。かかる第3封止層63は、例えば、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどを単独、若しくは複数組み合わされて用いられる。また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ、硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類やアミノフェノールなどのアミン化合物を微量添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
【0046】
第2封止層62を形成するにあたっては、硬化時間を短縮するためよく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤を用いてもよいが、硬化収縮が急激に進まないよう反応の遅いものが良く、また、塗布後の加熱による粘度低下で平坦化を進めるように最終的には熱硬化を用いて硬化物を形成するものが好ましい。さらに、第1封止層61および第3封止層63との密着性を向上させることを目的にシランカップリング剤や、イソシアネート化合物などの捕水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加物を混入してもよい。なお、第2封止層62は、膜厚が厚い方が好ましい。但し、第2封止層62の膜厚が10μmを超えると、光を取り出す効率が低下してしまう。
【0047】
本形態では、封止層60を構成する第1封止層61および第3封止層63(高密度ガスバリア層)は、画素領域10aから周辺領域10c付近までの広い領域にわたって形成されている。これに対して、第2封止層62は、画素領域10aおよび画素領域10aの近傍領域のみに分厚く形成され、周辺領域10c付近には形成されていない。このため、第1封止層61と第3封止層63とは、第2封止層62を外周側で積層された状態にある。なお、絶縁膜14、15は概ね、画素領域10aおよび画素領域10aの近傍領域のみに形成され、絶縁膜14、15の形成領域は第2封止層62の形成領域よりも狭い。
【0048】
(隔壁層51の詳細構成およびその効果)
図5は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置100における反射層41と隔壁層51との関係を示す説明図である。
【0049】
図3(a)、(b)において、隔壁層51は、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。隔壁層内壁511は、素子基板10に用いた基板本体10dに対して角度Θ1をなしており、隔壁層外壁512は、素子基板10に用いた基板本体10dに対して角度Θ2をなしている。ここで、角度Θ1および角度Θ2はいずれも90°以下である。
【0050】
また、封止層60は、隔壁層51および有機EL素子80を覆うように形成されている。このため、封止層60は、画素領域10aの外側では、隔壁層外壁512の上に積層されている。かかる封止層60では、封止層60において画素領域10aを外側で囲む部分にクラックが発生していないことが重要であり、それには、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいことが好ましい。
【0051】
一方、画素10bから出射される光の輝度を高めるには、有機EL素子80の形成面積が広い方が好ましく、それには、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいことが好ましい。
【0052】
そこで、本形態では、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になるように設定してある。すなわち、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0053】
従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しない。特に、第1封止層61や第3封止層63は薄くて硬質の無機膜であり、物理気相堆積法により成膜されるため、素子基板10に対して大きな角度をなす隔壁層外壁512上ではクラックが発生しやすいが、本形態によれば、かかるクラックの発生を確実に防止することができる。それ故、本形態によれば、有機EL素子80を水分や酸素から保護することができる。
【0054】
また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子80の面積が広い。それ故、本形態によれば、有機EL素子80の面積を狭めることなく、封止層60による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置100を実現することができる。
【0055】
また、本形態では、第1電極層81の下層側では、反射層41が各画素10b毎に形成されており、互いに隣り合う反射層41の間には、隔壁層51と重なる領域で途切れている。但し、本形態では、画素領域10aの最外周に位置する反射層41は、画素領域10aの外側まで延在しており、かかる反射層41において、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bにはスリット状の開口部41cが形成されている。
【0056】
ここで、スリット状の開口部41cは、後述する露光工程で、隔壁層外壁512を形成する際にハーフ露光(諧調露光)を行なうためのマスクとして利用される。このため、図5に示すように、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bは、画素領域10aに近い領域と画素領域10aから遠い領域との間で開口密度が相違している。本形態では、隔壁層51をポジタイプの感光性樹脂(ポジタイプの感光性アクリル樹脂)により形成する。このため、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。
【0057】
(封止基板20による封止)
本形態では、図2(a)、(b)、および図3(a)に示すように、素子基板10と封止基板20との間では、周辺領域10cに沿って第1シール材層91が矩形枠状に形成され、周辺領域10cで囲まれた領域の全体にわたって透光性の第2シール材層92が形成されており、素子基板10と封止基板20とは、第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わされている。
【0058】
本形態において、第2シール材層92(第2シール材92a)には、熱によって硬化するエポキシ系接着剤が用いられている。第1シール材層91(第1シール材91a)は、素子基板10と封止基板20との間に介在して素子基板10と封止基板20との基板間隔を制御するビーズ状あるいはファイバー状のギャップ材91e(図2参照)が樹脂91r中に分散された構造になっており、素子基板10と封止基板20との間隙はギャップ材91eによって制御されている。第1シール材層91において、樹脂91rには、紫外線によって硬化するエポキシ系接着剤が用いられている。
【0059】
かかる第1シール材層91および第2シール材層92によって封止を行なうには、第1シール材塗布工程において、ディスペンサー描画、スクリーン印刷法、マイクロピエゾヘッドを用いたインクジェット法などにより、素子基板10の周辺領域10cに対して、前記した光硬化性のエポキシ樹脂材料からなる樹脂91r中にギャップ材91eが分散された第1シール材91aを1mm以下の狭い幅寸法に塗布する。
【0060】
次に、第2シール材塗布工程において、ディスペンサー描画、スクリーン印刷法、マイクロピエゾヘッドを用いたインクジェット法などにより、素子基板10において、第1シール材91a囲まれた領域内に、前記した熱硬化性のエポキシ樹脂材料からなる第2シール材92aを塗布する。
【0061】
次に、重ね合わせ工程では、真空度1Pa程度の減圧雰囲気中で、第1シール材91aおよび第2シール材92aを間に挟むように素子基板10と封止基板20とをアライメントしながら重ね合わせる。その際、約600N程度の力で封止基板20を素子基板10に向けて加圧し、この状態を約200秒保持する。かかる重ね合わせ工程では、まず、第1シール材91aが封止基板20に接触して内側が密閉され、その後、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aが展開する。
【0062】
次に、常圧に戻すと、大気圧によって加圧されたのと同様な状態になるので、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aが隅々まで展開し、第2シール材92aの充填性が向上する。その際、第1シール材91aは、第2シール材92aに対するバンクとして機能する。このため、減圧状態から常圧に戻した際に大気圧によって加圧されたのと同様な状態になっても、第2シール材92aは、第1シール材91aによって堰き止められ、外側に流出しない。なお、素子基板10と封止基板20との間には、第1シール材91aが含有するギャップ材91eによって所定の隙間が確保される。
【0063】
次に、シール材固化工程では、第1シール材91aを固化させて第1シール材層91を形成するとともに、第2シール材92aを固化させて第2シール材層92を形成する。本形態において、第1シール材91aは光硬化性であり、第2シール材92aは熱硬化性である。そこで、素子基板10または/および封止基板20の側から第1シール材91aに対して紫外線を照射して第1シール材91aのみを選択的に硬化させて、第1シール材層91を形成する。次に、第1シール材層91によって貼り合わされた素子基板10と封止基板20とをホットプレート上に配置した状態で、有機EL素子80が劣化しない温度条件、例えば100℃以下の温度条件、より具体的には60〜100℃の温度条件で加熱を行い、素子基板10と封止基板20との間で第2シール材92aを隅々まで行き渡らせながら第2シール材92aを硬化させ、第2シール材層92を形成する。このようにして、素子基板10と封止基板20とを第1シール材層91および第2シール材層92によって貼り合わせた構造とする。
【0064】
(本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第1例)
図6および図7を参照して、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第1例を説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、反射層および第1電極層を形成する工程の工程断面図であり、図7は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、隔壁層を形成する工程の工程断面図である。なお、図7では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。また、図6および図7では、下地絶縁層10eの図示を省略してある。
【0065】
本形態の有機EL装置100を製造するには、図6(a)に示すように、基板本体10d上に絶縁膜14までを形成した後、図6(b)に示すように、アルミニウムなどの反射性金属41xを形成する。次に、反射性金属41xの表面に、図3、図4および図5を参照して説明した反射層41の形成パターンと同一のマスクパターンを有するエッチングマスク99を形成する。
【0066】
次に、エッチングマスク99の開孔部を介して反射性金属41xをエッチングした後、エッチングマスク99を除去すれば、図6(c)に示すように反射層41が形成される。かかる反射層41において、図3(a)、(b)を参照して説明した隔壁層外壁512と平面的に重なる部分41bに、図5に示す開口部41cが形成されている。
【0067】
次に、図6(d)に示すように、反射層41の上層側に絶縁膜15を形成する。次に、絶縁膜15に、図4(b)を参照して説明したコンタクトホール15gを形成する。次に、絶縁膜15の表面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いてITO膜をパターニングし、第1電極層81を形成する。
【0068】
次に、図7(a)に示すように、第1電極層81の上層側にポジタイプの感光性樹脂51xを塗布した後、図7(b)および図7(c)に示す露光工程を行なう。
【0069】
かかる露光工程では、まず、図7(b)に示すように、図3および図4に示す隔壁層51で囲まれた領域が透光部93aになっている露光マスク93を介して感光性樹脂51xを露光する。その結果、感光性樹脂51xにおいて透光部93aと重なる部分51wが完全露光される。
【0070】
次に、図7(c)に示すように、反射層41に対して感光性樹脂51xが位置する側とは反対側から露光する。その結果、感光性樹脂51xにおいて、反射層41のスリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51zは、反射層41のスリット状の開口部41cを介してハーフ露光される。ここで、開口部41cは、図5に示すように、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が拡大しており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。このため、感光性樹脂51xにおいて、反射層41のスリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51zでは、図7(c)に模式的に示すように、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって露光量が増大していく。また、感光性樹脂51xにおいて、周辺領域10cや周辺領域10c付近に位置する部分51yは完全露光される。その際、画素領域10aでは、隔壁層51を形成する必要がある部分には、反射層41や配線などの遮光膜が存在するので、露光されることがない。但し、反射層41などの遮光層が形成されていない領域が存在し、かかる部分にも隔壁層51を形成する必要がある場合、かかる領域については、露光マスク94の遮光部94bで覆っておけばよい。
【0071】
次に、露光済みの感光性樹脂51xを現像すると、完全露光された部分51w、51yは完全に除去される。これに対して、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分51zでは、露光量が多い箇所では感光性樹脂51xが多く除去され、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51xが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51xを焼成すると、図7(d)に示す隔壁層51が形成される。かかる隔壁層51では、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。但し、ハーフ露光によって形成された隔壁層外壁512では、完全露光によって形成された隔壁層内壁511に比して、基板本体10dに対してなす角度が小さい。このため、隔壁層51において、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になっている。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0072】
しかる後には、有機機能層82、補助陰極線84、第2電極層83、封止層60(第1封止層61、第2封止層62、第3封止層63)を順次形成していく。そして、封止層60を形成する際には、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいため、封止層60において隔壁層外壁512を覆う部分にクラックが発生することがない。
【0073】
このように本形態では、隔壁層51を形成する際、ハーフ露光を行なって、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2を小さくする。このため、ハーフ露光の際の光量分布を変えるだけで、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2を最適な角度に設定することができる。また、ハーフ露光を行なう際、反射層41に形成したスリット状の開口部41cを介して背面露光を行なう。このため、ハーフ露光用の高価な露光マスクを必要としない。また、反射層41に対する遮光層外壁512の位置に高い精度で得ることができる。
【0074】
(本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第2例)
図8を参照して、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造方法の第2例を説明する。図8は、本発明の実施の形態1に係る有機EL装置の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する別の方法を示す工程断面図である。図8では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。なお、本形態の方法で製造した有機EL装置100の構造は、図1〜図5を参照して説明した構成と同一であるため、構造についての詳細な説明を省略する。
【0075】
図5〜図7を参照して説明した例では、反射層41のスリット状の開口部41cを介してポジタイプの感光性樹脂をハーフ露光するため、図5に示すように、スリット状の開口部41cは、反射層41において隔壁層外壁512と平面的に重なる部分411は、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっていた。これに対して、本形態では、ポジタイプの感光性樹脂に代えて、ネガタイプの感光性樹脂を用いる。また、本形態でも、図8(a)、(b)に示すように、反射層41において、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分411にはスリット状の開口部41cを形成するが、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。
【0076】
かかる構成の場合、例えば、図8(a)に示すように、ネガタイプの感光性樹脂51eを塗布した後、画素領域10a内において隔壁層51を形成したい部分と重なる部分が透光部95aになっている露光マスク95を用いて感光性樹脂51eを露光する。その結果、感光性樹脂51eにおいて、透光部95aと重なる部分51fが完全露光される。
【0077】
次に、図8(b)に示すように、反射層41に対して感光性51eが位置する側とは反対側から露光する。その際、周辺領域10cや周辺領域近傍など、隔壁層51を一切、形成しない部分については、露光マスク96の遮光部96bで覆っておく。その結果、感光性樹脂51eにおいて、スリット状の開口部41cが形成されている部分と平面的に重なる部分51gは、反射層41のスリット状の開口部41cを介してハーフ露光される。ここで、開口部41cは、図5に示す構成とは反対に、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が狭くなっており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。このため、感光性樹脂51eにおいて、ハーフ露光された部分51gでは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって露光量が減少していく。
【0078】
従って、露光済みの感光性樹脂51eを現像すると、一切露光されなかった部分は完全に除去され、完全露光された部分51fが残る。また、ハーフ露光された部分51gでは、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51eが多く除去され、露光量が多い箇所では感光性樹脂51eが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51eを焼成すると、図3に示す隔壁層51が形成される。かかる隔壁層51では、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になっている。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。このため、封止層60を形成した際、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2が小さいため、封止層60において隔壁層外壁512を覆う部分にクラックが発生することがない。また、本形態では、ハーフ露光を行なう際、反射層41に形成したスリット状の開口部41cを介して背面露光を行なう。このため、ハーフ露光用の高価な露光マスクを必要としない。また、反射層41に対する遮光層外壁512の位置に高い精度で得ることができる。
【0079】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置の一部を拡大して示す説明図であり、図3(b)に対応する。図10(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る有機EL装置100の製造工程のうち、素子基板10上に隔壁層を形成する工程の工程断面図、および別の方法を示す工程断面図である。図10では、感光性樹脂において露光されていない部分には右上がりの破線のみを付し、露光された部分には右上がりの破線および右下がりの破線を付してある。なお。本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同一であるため、共通する部分の説明を省略する。
【0080】
図9に示すように、本形態の有機EL装置100でも、実施の形態1と同様、隔壁層51は、画素領域10aの内側に位置する隔壁層内壁511、および画素領域10aの外側に位置する隔壁層外壁512のいずれもがテーパー面になっている。また、本形態でも、実施の形態1と同様、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1と、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2とを比較すると、以下の関係
Θ1 > Θ2
になるように設定してある。すなわち、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1よりも小さい。例えば、隔壁層内壁511が基板本体10dに対してなす角度Θ1は60〜70°であり、隔壁層外壁512が基板本体10dに対してなす角度Θ2は45°以下である。
【0081】
従って、封止層60は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が小さな隔壁層外壁512上に積層されるので、封止層60にはクラックが発生しにくい。それ故、有機EL素子80を水分や酸素から保護することができる。また、隔壁層内壁511は、基板本体10dに対してなす角度Θ1が大きいため、有機EL素子80の形成領域に大きく張り出すことがない。従って、有機EL素子80の面積が広い。それ故、本形態によれば、有機EL素子80の面積を狭めることなく、封止層60による封止性能の向上を図ることができるので、輝度が大きく、かつ、信頼性の高い有機EL装置100を実現することができる。
【0082】
かかる有機EL装置100において、本形態では、反射層41は、隔壁層外壁512と平面的に重なる部分には形成されていない。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
かかる構成の有機EL装置100を製造するにあたって、本形態では、図10(a)に示すように、第1電極層81の上層側にポジタイプの感光性樹脂51xを塗布した後、露光マスク96による1回の露光を行なう。かかる露光マスク96では、隔壁層51で囲まれた領域と重なる部分など、感光性樹脂51xを完全に除去する部分は透光部96aになっており、隔壁層51を形成すべき部分は遮光部96bになっている。また、露光マスク96では、感光性樹脂51xにおいて隔壁層外壁512を形成すべき部分と重なる部分には、スリット状の開口部96cが形成されている。かかる開口部96cは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が拡張しており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が高くなっている。
【0084】
従って、露光済みの感光性樹脂51xを現像すると、完全露光された部分は完全に除去される。これに対して、感光性樹脂51xにおいて、露光マスク96の開口部96cによってハーフ露光された部分のうち、露光量が多い箇所では感光性樹脂51xが多く除去され、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51xが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51xを焼成すると、図9に示す隔壁層51が形成される。
【0085】
また、図9に示す有機EL装置100を製造するにあたって、ネガタイプの感光性樹脂51eを用いた場合、図10(b)に示す露光マスク97による1回の露光を行なう。かかる露光マスク97では、隔壁層51で囲まれた領域と重なる部分など、感光性樹脂51eを完全に除去する部分は遮光部97bになっており、隔壁層51を形成すべき部分は透光部97aになっている。また、露光マスク97では、感光性樹脂51eにおいて隔壁層外壁512を形成すべき部分と重なる部分には、スリット状の開口部97cが形成されている。かかる開口部97cは、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって幅寸法が狭まっており、画素領域10aに近い領域から遠い領域に向かって開口密度が低くなっている。
【0086】
従って、露光済みの感光性樹脂51eを現像すると、一切露光されなかった部分は完全に除去され、完全露光された部分が残る。また、ハーフ露光された部分では、露光量が少ない箇所では感光性樹脂51eが多く除去され、露光量が多い箇所では感光性樹脂51eが少なく除去される。従って、現像後に残った感光性樹脂51eを焼成すると、図9に示す隔壁層51が形成される。
【0087】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1、2では、封止基板20にカラーフィルター層22(R)、(G)、(B)を設けた場合を例に説明したが、有機EL素子自身が各色の光を出射する有機EL装置に本発明を適用してもよく、この場合、封止基板20は封止基板のみとして機能する。また、上記実施の形態では、カラー表示用の有機EL装置100を例に説明したが、複写機の光学ヘッドなどとして利用する場合には、モノクロ仕様でよく、このようなモノクロ仕様の有機EL装置に本発明を適用してもよい。この場合も、封止基板20は封止部材のみとして機能する。
【0088】
上記実施の形態1、2では、トップエミッション型の有機EL装置100に本発明を適用したが、実施の形態2に係る構成は、ボトムエミッション型の有機EL装置に適用することができる。
【0089】
上記実施の形態1、2では、有機機能層82を画素領域10aの全面に形成した例を説明したが、隔壁層51で囲まれた領域内にインクジェット法などで有機機能層を選択的に塗布した後、定着させて、第1電極層81の上層には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)などからなる正孔注入層、および発光層からなる有機機能層が形成された有機EL装置に発明を適用してもよい。この場合、発光層は、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープした材料から構成される。また、発光層としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる組成物も使用可能である。
【0090】
[電子機器への搭載例]
図11を参照して、上述した実施形態に係る有機EL装置100を搭載した電子機器について説明する。図11は、本発明に係る有機EL装置を用いた電子機器の説明図である。
【0091】
図11(a)に、有機EL装置100を備えたモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての有機EL装置100と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。図11(b)に、有機EL装置100を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての有機EL装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置100に表示される画面がスクロールされる。図11(c)に、有機EL装置100を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての有機EL装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置100に表示される。なお、有機EL装置100が適用される電子機器としては、図11(a)〜(c)に示すものの他、デジタルスチールカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL装置100が適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10・・素子基板、10a・・画素領域、10b・・画素、10c・・周辺領域、20・・封止基板、41・・反射層、41c・・反射層の開口部、51・・隔壁層、60・・封止層、61・・第1封止層、62・・第2封止層、63・・第3封止層、80・・有機EL素子、81・・第1電極層、82・・有機機能層、83・・第2電極層、100・・有機EL装置、511・・隔壁層内壁、512・・隔壁層外壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、
該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を覆う封止層と、
を有し、
前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁は、当該隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記隔壁層内壁が前記基板に対してなす角度は60〜70°であり、
前記隔壁層外壁が前記基板に対してなす角度は45°以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記封止層は、無機膜からなる第1封止層と、該第1封止層の上層に積層された樹脂層からなる第2封止層と、該第2封止層の上層に積層された無機膜からなる第3封止層と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記基板上において前記有機エレクトロルミネッセンス素子の下層側には、少なくとも、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を備え、
当該反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域には、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、
該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を覆う封止層と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
前記隔壁層を形成するにあたっては、前記基板上に感光性樹脂を塗布する感光性樹脂塗布工程と、当該感光性樹脂のうち、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する露光工程と、を行ない、
当該隔壁層外壁を前記隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板上に前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する前に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を形成する反射層形成工程を有し、
当該反射層形成工程では、前記反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部を形成し、
前記露光工程では、前記反射層において前記感光性樹脂が位置する側とは反対側から前記開口部を介して前記感光性樹脂において前記隔壁層外壁を形成する樹脂部分を露光することを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、
該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を覆う封止層と、
を有し、
前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁は、当該隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面になっていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記隔壁層内壁が前記基板に対してなす角度は60〜70°であり、
前記隔壁層外壁が前記基板に対してなす角度は45°以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記封止層は、無機膜からなる第1封止層と、該第1封止層の上層に積層された樹脂層からなる第2封止層と、該第2封止層の上層に積層された無機膜からなる第3封止層と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記基板上において前記有機エレクトロルミネッセンス素子の下層側には、少なくとも、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を備え、
当該反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域には、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
基板上で画素領域を複数の領域に区画する隔壁層と、
該隔壁層により囲まれた領域に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を覆う封止層と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
前記隔壁層を形成するにあたっては、前記基板上に感光性樹脂を塗布する感光性樹脂塗布工程と、当該感光性樹脂のうち、前記隔壁層において前記画素領域の外側に位置する隔壁層外壁を形成する樹脂部分については、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で異なる光量で露光する露光工程と、を行ない、
当該隔壁層外壁を前記隔壁層において前記画素領域の内側に位置する隔壁層内壁に比較して前記基板に対してなす角度が小さいテーパー面とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板上に前記隔壁層および前記有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する前に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と平面的に重なる領域、および前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に反射層を形成する反射層形成工程を有し、
当該反射層形成工程では、前記反射層において前記隔壁層外壁と平面的に重なる領域に、前記画素領域に近い領域と前記画素領域から遠い領域との間で開口密度が相違する開口部を形成し、
前記露光工程では、前記反射層において前記感光性樹脂が位置する側とは反対側から前記開口部を介して前記感光性樹脂において前記隔壁層外壁を形成する樹脂部分を露光することを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−211983(P2010−211983A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54584(P2009−54584)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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