説明

有機エレクトロルミネッセンス装置

【課題】表示性能を良好に維持できる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
【解決手段】有機EL装置は、複数の発光素子が設けられた第1基板と、第1基板と対向するように配置され、発光素子の光が入射するとともに、その入射した光を外部に射出する射出面を有する第2基板と、第2基板に設けられ、発光素子の光が入射するとともに、その入射した光を透過可能な複数の着色部と、第2基板に設けられ、着色部を透過した発光素子の光を検出する光センサとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL:electroluminescence)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は、発光層とその発光層を挟む陽極及び陰極とを含む発光素子を有しており、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とを発光層内で再結合し、励起状態から失括する際に発光する現象を利用して、所望の光を射出する。発光素子は、例えば経時的に劣化する。発光素子が劣化すると、有機EL装置の表示性能も劣化する。そのため、有機EL装置の表示性能を良好に維持するために、発光素子の発光状態を光センサを用いて検出し、その検出結果に基づいて、発光素子の発光状態を制御する技術が案出されている。
【特許文献1】特開2002−278504号公報
【特許文献2】特開2006−098638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機EL装置において、発光素子の光をカラーフィルタを介して装置の外部に射出する技術が知られている。このような構成の装置の場合、光センサを配置する位置によっては、その光センサの検出結果に基づいて、有機EL装置の表示性能を維持するための制御を良好に行うことができなくなる可能性がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、表示性能を良好に維持できる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
本発明の第1の態様によると、複数の発光素子が設けられた第1基板と、前記第1基板と対向するように配置され、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を外部に射出する射出面を有する第2基板と、前記第2基板に設けられ、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を透過可能な複数の着色部と、前記第2基板に設けられ、前記着色部を透過した前記発光素子の光を検出する光センサと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置が提供される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、カラーフィルタの着色部を透過した発光素子の光を光センサで検出するようにしたので、光センサは、有機EL装置の外部に実際に射出される光、すなわち、実際に観察者の目に入射する光と等価な光を検出できる。したがって、その検出結果に基づいて、表示性能を良好に維持するための適切な処置を講ずることができる。
【0007】
上記態様の有機エレクトロルミネッセンス装置において、前記複数の発光素子に対応する画素を複数有し、前記着色部及び前記光センサは、前記画素毎に設けられている構成を採用できる。
【0008】
これによれば、画素毎の光を光センサで検出でき、その検出結果に基づいて、表示性能を良好に維持するための適切な処置を講ずることができる。
【0009】
上記態様の有機エレクトロルミネッセンス装置において、複数の着色部の境界に配置された遮光部を有し、前記光センサは、前記遮光部によって前記外部からの光の照射が抑制された位置に配置されている構成を採用できる。
【0010】
これによれば、光センサは、外部からの光の影響をほぼ受けることなく、カラーフィルタの着色部を透過した光を良好に検出できる。
【0011】
上記態様の有機エレクトロルミネッセンス装置において、複数の着色部の境界に配置された遮光部を有し、前記光センサは、前記遮光部によって前記外部からの光の照射が抑制された位置に配置され、前記遮光部は、該光センサに接続される配線の少なくとも一部を含む構成を採用できる。
【0012】
これによれば、光センサは、外部からの光の影響をほぼ受けることなく、カラーフィルタの着色部を透過した光を良好に検出できる。
【0013】
上記態様の有機エレクトロルミネッセンス装置において、前記光センサの検出結果に基づいて、前記発光素子に与える電力を調整する制御装置を備えた構成を採用できる。
【0014】
これによれば、光センサの検出結果に基づいて、有機EL装置の表示性能を良好に維持することができる。
【0015】
本発明の第2の態様によると、第1基板と、前記第1基板上に設けられ、前記第1基板と対向する第1電極及び該第1電極と反対側の第2電極を含む発光素子と、前記発光素子の光射出側で前記第2電極と接続するように配置され、前記発光素子の光の一部を透過するとともに別の一部を反射し、前記第1電極と前記第2電極との間で光共振器を形成する半透明反射膜と、前記第1基板上の発光素子と対向するように配置され、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を外部に射出する射出面を有する第2基板と、前記第2基板に設けられ、前記光共振器を含む前記発光素子の光を検出する光センサと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、微小な光共振器構造、所謂マイクロキャビティ構造を含む発光素子の光を光センサで検出するようにしたので、光センサは、有機EL装置の外部に実際に射出される光、すなわち、実際に観察者の目に入射する光と等価な光を検出できる。したがって、その検出結果に基づいて、表示性能を良好に維持するための適切な処置を講ずることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る有機EL装置Sの一例を模式的に示す側断面図である。
【0019】
図1において、有機EL装置Sは、複数の発光素子1が設けられたTFTアレイ基板2と、TFTアレイ基板2と対向するように配置され、発光素子1の光が入射するとともに、その入射した光を外部に射出する射出面3を有するカラーフィルタ4を備えたカラーフィルタ基板(封止基板)5とを備えている。TFTアレイ基板2は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等の回路素子を含む。カラーフィルタ4は、TFTアレイ基板2に設けられた発光素子1の光が入射するとともに、その入射した光を透過可能な複数の着色部4R、4G、4Bと、複数の着色部4R、4G、4Bの境界に配置された遮光部BMとを有する。
【0020】
着色部は、赤色着色部(R着色部)4R、緑色着色部(G着色部)4G、及び青色着色部(B着色部)4Bを含む。遮光部BMは、R着色部4R、G着色部4G、及びB着色部4Bの境界に配置されており、画素間の光の漏れを抑制する機能、コントラストを向上する機能等を有する、所謂ブラックマトリクスである。
【0021】
本実施形態においては、発光素子1は、白色光を発光する。発光素子1の白色光がカラーフィルタ4を透過することによって、射出面3からは、赤色、緑色、及び青色に着色された光が射出される。これにより、有機EL装置Sは、フルカラー表示できる。
【0022】
そして、本実施形態の有機EL装置Sは、カラーフィルタ基板5に設けられ、カラーフィルタ4の着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光を検出する光センサ6を備えている。
【0023】
有機EL装置Sは、複数の発光素子1に対応する画素(サブ画素を含む)を複数有し、着色部4R、4G、4B及び光センサ6は、画素毎に設けられている。また、光センサ6は、遮光部BMによって外部からの光の照射が抑制された位置に配置されている。本実施形態においては、光センサ6は、遮光部BMと着色部4R、4G、4Bとの間に配置されている。
【0024】
また、有機EL装置Sは、各光センサ6の検出結果に基づいて、各発光素子1に与える電力を調整する制御装置7を備えている。
【0025】
本実施形態の有機EL装置Sは、発光素子1の光を、カラーフィルタ基板5側から取り出す方式、所謂トップエミッション型である。
【0026】
図2は、本実施形態に係る有機EL装置Sの配線構造を示す模式図である。本実施形態の有機EL装置Sは、アクティブマトリクス方式の駆動方式を採用し、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を有する。
【0027】
図2において、有機EL装置Sは、X軸方向に延び、Y軸方向に並ぶようにTFTアレイ基板2に形成された複数の走査線(ゲート線)101と、Y軸方向に延び、X軸方向に並ぶようにTFTアレイ基板2に形成された複数の信号線(ソース線、データ線)102と、各信号線102と並列となるようにTFTアレイ基板2に形成された複数の電源線103とを有する。画素が形成される画素領域GAは、複数の走査線101と複数の信号線102との各交点付近に設けられる。
【0028】
走査線101のそれぞれは、走査線駆動回路80と接続されている。走査線駆動回路80は、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を含む。信号線102のそれぞれは、信号線駆動回路81と接続されている。信号線駆動回路81は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を含む。
【0029】
有機EL装置Sは、画素領域GAのそれぞれに配置され、走査線101より印加される走査信号(電圧)に基づいてON状態(導通状態)又はOFF状態(非導通状態)に切り替わるスイッチング用TFT31と、スイッチング用TFT31がON状態のときに、そのスイッチング用TFT31を介して信号線102より画像信号(電圧)が印加され、その画像信号(電圧)を保持可能な保持容量32と、保持容量32より印加される画像信号(電圧)に基づいてON状態(導通状態)又はOFF状態(非導通状態)に切り替わる駆動用TFT33と、駆動用TFT33がON状態のときに、その駆動用TFT33を介して電源線103より駆動電流が供給され、その駆動電流に基づいて発光する発光素子1とを備えている。発光素子1は、画素電極23と、共通電極25と、画素電極23と共通電極25とに挟まれた発光層24とを備えている。
【0030】
スイッチング用TFT31のゲート電極は、走査線101に接続されている。走査線101よりスイッチング用TFT31のゲート電極に走査信号が供給されると、その走査信号に基づいて、スイッチング用TFT31は、ON状態となる。走査線駆動回路80は、複数の走査線101のそれぞれに、パルス状の走査信号を順次印加する。これにより、複数のスイッチング用TFT31のゲート電極のそれぞれに走査信号が順次印加され、複数のスイッチング用TFT31は、順次ON状態となる。
【0031】
スイッチング用TFT31のソース電極は、信号線102に接続されており、スイッチング用TFT31のドレイン電極は、保持容量32に接続されている。スイッチング用TFT31がON状態のときに、信号線102よりスイッチング用TFT31のソース電極に画像信号(電圧)が印加されると、スイッチング用TFT31(スイッチング用TFT31のドレイン電極)を介して、保持容量32が充電される。保持容量32には、そのときの信号線102の画像信号(電位)が保持され、保持容量32は、印加された画像信号(電圧)を保持する。
【0032】
駆動用TFT33のゲート電極は、保持容量32に接続されている。駆動用TFT33の状態(ON状態、OFF状態のいずれか)は、保持容量32の状態に応じて決定される。保持容量32より、駆動用TFT33のゲート電極に、その保持容量32に保持されていた画像信号(電圧)が印加されると、その画像信号に基づいて、駆動用TFT33は、ON状態となる。
【0033】
駆動用TFT33のソース電極は、電源線103に接続されており、駆動用TFT33のドレイン電極は、発光素子1の画素電極23に接続されている。駆動用TFT33がON状態のときに、電源線103より駆動用TFT33のソース電極に駆動電流が供給されると、その駆動電流が、駆動用TFT33(駆動用TFT33のドレイン電極)を介して、発光素子1の画素電極23に供給される。発光素子1の画素電極23に供給された電流は、発光層24を介して、共通電極25に流れる。発光層24は、流れる電流量に応じて発光する。このように、発光素子1は、供給される電流に応じて発光し、発光素子1から射出される光の光量(輝度)は、供給される電流値に応じて変化する。制御装置7は、発光素子1に供給する電流値を調整することによって、発光素子1から射出される光の光量(輝度)を調整可能である。
【0034】
発光素子1に供給する電流値(発光素子1から射出される光の光量)は、保持容量32から駆動用TFT33(駆動用TFT33のゲート電極)に印加される電圧値によって制御可能である。また、保持容量32は、画像信号(電圧)を保持可能(維持可能)なので、走査線101からのスイッチング用TFT31(スイッチング用TFT31のゲート電極)に対する走査信号(電圧)の印加が停止し、スイッチング用TFT31がOFF状態になっても、駆動用TFT33(駆動用TFT33のゲート電極)の電圧(電位)は、保持容量32によって維持され、発光素子1は、発光し続けることができる。
【0035】
図3は、有機EL装置Sを模式的に示す平面図である。図3に示すように、本実施形態に係る有機EL装置Sは、各種配線、TFT等を含む回路素子が設けられたTFTアレイ基板2と、カラーフィルタ4を含むカラーフィルタ基板5とを備えている。本実施形態においては、有機EL装置Sは、カラーフィルタ基板5の射出面3側に配置された表示領域50を有する。本実施形態においては、表示領域50は、実表示領域51と、実表示領域51の周囲に配置されたダミー領域52とを含む。
【0036】
実表示領域51には、画素電極23、及び各画素領域GAの発光素子1の光が透過する着色部4R、4G、4Bがマトリクス状に配置されている。発光素子1の白色の光は、各着色部4R、4G、4Bを透過して、射出面3より、赤色、緑色、及び青色の光として射出される。また、ダミー領域52には、走査線駆動回路80、80と、検査回路82とが配置されている。検査回路82は、有機EL装置Sの動作状況を検査するための回路であり、例えば、検査結果を外部に出力する検査情報出力装置(図示せず)を備え、製造途中、出荷時における有機EL装置Sの品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0037】
図4は、本実施形態に係る有機EL装置Sの断面図である。図4において、有機EL装置Sは、薄膜トランジスタ(TFT)を備えたTFTアレイ基板2と、TFTアレイ基板2上に設けられた発光素子1とを備えている。
【0038】
TFTアレイ基板2は、基板20と、その基板20上に設けられた走査線101、信号線102、電源線103、スイッチング用TFT31、及び駆動用TFT33等を含む回路素子と、層間絶縁膜21とを有する。基板20は、ガラス、透明な樹脂等で形成されており、透明な基板である。
【0039】
なお、上述のように、本実施形態の有機EL装置Sは、トップエミッション型であるため、基板20は、金属、不透明な樹脂等で形成された不透明な基板でもよい。
【0040】
層間絶縁膜21は、例えば酸化シリコン(SiO)で形成されており、基板20上に設けられた走査線101、信号線102、電源線103、スイッチング用TFT31、及び駆動用TFT33等の回路素子を覆っている。なお、層間絶縁膜21は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン膜(SiON)等で形成されてもよい。
【0041】
発光素子1は、層間絶縁膜21上に形成された画素電極23と、画素電極23上に配置された発光層24と、発光層24上に配置された共通電極25とを有する。
【0042】
画素電極23は、駆動用TFT33のそれぞれに対応するように形成されている。本実施形態においては、画素電極23は、アルミニウムの膜等、光を反射する機能を有する反射膜23Aと、反射膜23A上に形成され、インジウム錫酸化物(ITO)の膜等、光を透過する機能を有する透明膜23Bとを含む。なお、画素電極23は、反射膜23A及び透明膜23Bのいずれか一方のみで形成されていてもよい。画素電極23は、層間絶縁膜21に形成されたコンタクトホール内のプラグ(図示せず)を介して、駆動用TFT33と電気的に接続されている。
【0043】
層間絶縁膜21上には、画素領域GAを区画する隔壁22が形成されている。隔壁22は、互いに隣り合う画素電極23、23の間の層間絶縁膜21の上面を覆うとともに、各画素電極23の上面の周縁領域を覆うように形成されている。画素電極23の上面の中央領域は、隔壁22の開口22Aより露出する。隔壁22は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の絶縁性を有する有機材料で形成されている。
【0044】
発光層24は、開口22Aより露出した画素電極23の上面の中央領域、及び隔壁22の上面を覆うように形成されている。発光層24は、画素電極23の上面に接続するように形成された正孔輸送層と、正孔輸送層上に形成された正孔注入層と、正孔注入層上に形成された有機EL層と、有機EL層上に形成された電子注入層と、電子注入層上に形成された電子輸送層とを含む。これら各層は、例えば蒸着法等の気相成膜法によって形成可能である。なお、この発光層24の層構成は、必要に応じて適宜に変更可能である。例えば、有機EL層が複数の層で形成されていてもよい。
【0045】
なお、正孔輸送層、正孔注入層は、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、及び特開平3−152184号公報等に記載されているような、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等で形成可能である。
【0046】
有機EL層は、低分子の有機発光色素、高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質、燐光物質などの発光物質、Alq3(アルミキレート錯体)等の有機エレクトロルミネッセンス材料で形成可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン又はポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。低分子発光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781号公報、特開昭59−194393号公報等に開示されている材料が挙げられる。
【0047】
上述のように、本実施形態においては、有機EL層を含む発光層24は白色光を発光する。したがって、有機EL層を形成する材料としては、有機EL層から発光される光が白色となるように適宜選択される。白色光は、互いに異なるピーク波長を有する複数の光を合成した光であるため、例えば、赤色の光を発光できる材料、緑色の光を発光できる材料、及び青色の光を発光できる材料を合成することによって、白色の光を発光できる有機EL層を形成する材料を形成できる。
【0048】
電子注入層、電子輸送層は、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、及び特開平3−152184号公報等に開示されているような、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等で形成可能である。
【0049】
共通電極25は、発光層24を覆うように形成されている。共通電極25は、例えばMgAg、ITOの膜等、光を透過する機能を有する透明膜で形成されている。共通電極25は、例えば蒸着法等によって形成可能である。上述のように、本実施形態の有機EL装置Sは、トップエミッション型であるため、共通電極25は、十分な透明性を有する膜で形成される。
【0050】
共通陰極25上には、SiON等の膜等、光を透過する機能を有するパッシベーション膜26が形成されている。パッシベーション膜26は、共通電極25を覆うように形成されている。パッシベーション膜26は、水分、酸素等が外部から発光層24に浸入することを抑制する機能を有する。
【0051】
カラーフィルタ基板5は、基板30と、その基板30に設けられたカラーフィルタ4とを有する。基板30は、ガラス、透明な樹脂等で形成されており、透明な基板である。カラーフィルタ基板5は、透明な接着層27を介して、パッシベーション膜26上に接続されている。接着層27は、熱硬化型樹脂、または紫外線照射硬化型樹脂で形成されており、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等で形成可能である。
【0052】
カラーフィルタ4は、接着層27と対向するように配置された着色部4R、4G、4Bと、各着色部4R、4G、4Bの境界に配置された遮光部(ブラックマトリクス)BMとを有する。
【0053】
遮光部BMは、基板30の表面(射出面3を含む)と平行な平面内(XY平面内)において、画素領域GAの間に配置されている。図4においては、遮光部BMは、隔壁22の直上に配置されている。遮光部BMは、クロム(Cr)の膜等、光を遮る機能を有する膜で形成されている。遮光部BMは、格子状に形成されている。遮光部BMに囲まれた領域は、画素領域GAのそれぞれと対応する。
【0054】
カラーフィルタ4は、画素領域GAのそれぞれと対応する位置、すなわち、図4において、画素領域GA(画素電極23)のほぼ直上に配置されている。発光層24から発光された白色の光はカラーフィルタ4の各着色部4R、4G、4Bを透過することによって着色され、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの波長域にピークを有する光として射出面3より射出する。
【0055】
着色部4R、4G、4Bは、発光素子1と対向するように配置されている。すなわち、発光素子1と対向するカラーフィルタ4の面(下面)は、着色部4R、4G、4Bの下面で形成されている。一方、遮光部BMは、発光素子1とは反対側の基板30と対向するように配置されている。すなわち、基板30と対向するカラーフィルタ4の面(上面)の一部は、遮光部BMの上面で形成されている。
【0056】
そして、光センサ6は、遮光部BMによって、装置の外部からの光(射出面3からの光)の照射が抑制された位置に配置されている。具体的には、光センサ6は、カラーフィルタ4の上面側に配置されている遮光部BMと下面側に配置されている着色部4R、4G、4Bとの間に配置されている。これにより、光センサ6は、遮光部BMによって外部からの光の照射を抑制されつつ、着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光のみを検出可能である。光センサ6は、各画素領域GA毎に設けられている。
【0057】
図5は、光センサ6の一例を示す模式図である。光センサ6は、カラーフィルタ基板5に設けられており、着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光を検出する。光センサ6は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等、光を受光することによって、電気信号(電流)を出力可能な受光素子を含む。
【0058】
本実施形態においては、光センサ6は、TFTと同等の構成を有する。図5において、光センサ6は、遮光部BMの一部に形成された絶縁性の基材61と、絶縁性の基材61上(図5においては、基材61の下面)に形成されたゲート電極62と、ゲート電極62を覆うゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63を介してゲート電極62と対向するように配置されたアモルファスシリコン膜64と、アモルファスシリコン膜64上に形成されたn型アモルファスシリコン膜65と、ソース電極66と、ドレイン電極67と、アモルファスシリコン膜64、65、ソース電極66、及びドレイン電極67を覆う絶縁膜68とを備えている。
【0059】
本実施形態においては、ゲート電極62は、モリブデン(Mo)等、光を遮る機能を有する材料で形成されている。ゲート絶縁膜63は、例えばSiOで形成されている。ソース電極66及びドレイン電極67は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。絶縁膜68は、例えばシリコン窒化膜(SiNx)で形成されている。
【0060】
上述のように、本実施形態においては、光センサ6には、発光素子1から射出され、カラーフィルタ4の着色部4R、4G、4Bを透過した光が入射する。光センサ6は、受光した光の光量(受光量)に応じた電気信号(電流)を出力する。
【0061】
本実施形態においては、アモルファスシリコン膜64、65と対向する位置に、光を遮る機能を有するゲート電極62が配置されている。したがって、遮光部BM及びゲート電極62によって、外部からの光が光センサ6(アモルファスシリコン膜)に照射されることが抑制されている。特に、基板30の表面(射出面3)と平行なXY平面内におけるゲート電極62の大きさを、アモルファスシリコン膜64、65より大きくすることによって、外部からの光がアモルファスシリコン膜に照射されることを抑制できる。
【0062】
このように、光センサ6に接続される配線の一部を形成するゲート電極62によって、光センサ6に外部からの光が照射されることを抑制することができる。あるいは、バイアス線73の一部、走査線71の一部等を用いて、光センサ6に外部からの光が照射されることを抑制することもできる。
【0063】
図6は、複数の光センサ6の出力を読み出すための配線構造の一例を示す模式図である。図6においては、一例として、各着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光のそれぞれを検出する複数(3つ)の光センサ6が示されている。
【0064】
本実施形態において、有機EL装置Sは、各光センサ6に接続されるスイッチング用TFT70を備えている。光センサ6は、スイッチング用TFT70のソース電極と接続されている。スイッチング用TFT70のゲート電極は、カラーフィルタ基板2上に形成された走査線71に接続されており、スイッチング用TFT70のドレイン電極は、カラーフィルタ基板2上に形成された読み出し線72に接続されている。
【0065】
光センサ6に光が照射されている状態で、走査線71によりスイッチング用TFT70のゲート電極に走査信号(電圧)が印加され、そのスイッチング用TFT70がON状態となると、光センサ6は、スイッチング用TFT70を介して、電気信号を読み出し線72に出力する。読み出し線72は、制御装置7に接続されており、光センサ6の電気信号は、制御装置7に出力される。光センサ6は、受光量に応じた電気信号を出力するので、制御装置7は、光センサ6から出力された電気信号に基づいて、光センサ6で受光した受光量を求めることができる。また、発光素子1より射出され、着色部4R、4G、4Bを透過した光の光量と、光センサ6の受光量とは対応関係にあるため、制御装置7は、光瀬名6から出力された電気信号に基づいて、着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光の光量を求めることができる。また、光センサ6は、画素毎に設けられており、制御装置7は、画素毎の光センサ6の電気信号(画素毎の着色部を透過した光の光量)を検出できる。
【0066】
図7は、本実施形態に係る光センサ6に接続された配線構造を示す模式図、図8は、本実施形態に係る有機EL装置Sの電気的構成を示すブロック図である。
【0067】
図7及び図8において、有機EL装置Sは、X軸方向に延び、Y軸方向に並ぶようにカラーフィルタ基板5に形成された複数の走査線(ゲート線)71と、各走査線71と並列となるようにカラーフィルタ基板5に形成された複数のバイアス線73と、Y軸方向に延び、X軸方向に並ぶようにカラーフィルタ基板5に形成された複数の読み出し線72とを備えている。カラーフィルタ基板5の走査線71は、TFTアレイ基板2の走査線101と対応するように形成されている。同様に、カラーフィルタ基板5の読み出し線72は、TFTアレイ基板2の信号線102と対応するように形成されている。
【0068】
図8に示すように、走査線71のそれぞれは、走査線駆動回路83と接続されている。読み出し線72のそれぞれは、読み出し線駆動回路84と接続されている。TFTを含む光センサ6は、複数の走査線71と複数の読み出し線72との各交点付近に設けられる。なお、図8においては、バイアス線73の図示を省略してある。
【0069】
図7に示すように、有機EL装置Sは、TFTからなる光センサ6と、走査線71より印加される走査信号(電圧)に基づいてON状態(導通状態)又はOFF状態(非導通状態)に切り替わるスイッチング用TFT70とを備えている。
【0070】
光センサ6のゲート電極は、そのゲート電極に負バイアスを印加可能なバイアス線73と接続されている。光センサ6のドレイン電極は、スイッチング用TFT70のソース電極と接続されている。光センサ6のソース電極は、バイアス線73に隣接する走査線71と接続されている。
【0071】
TFTからなる光センサ6は、バイアス線73の状態に基づいて、具体的にはバイアス線73より印加される負バイアス(負の電圧)に基づいて、ON状態又はOFF状態に切り替わる。バイアス線73より光センサ6のゲート電極に負バイアス(負の電圧)が印加されると、その負バイアスに基づいて、光センサ6は、ON状態となる。
【0072】
光センサ6に光が照射されている状態で、バイアス線73の状態に基づいて、光センサ6(TFT)がON状態となると、光センサ6は、電気信号をスイッチング用TFT70に出力する。走査線71の状態に基づいて、走査線71よりスイッチング用TFT70のゲート電極に走査信号(電圧)が印加され、そのスイッチング用TFT70がON状態となると、光センサ6からスイッチング用TFT70のソース電極に供給された電気信号は、スイッチング用TFT70のドレイン電極に供給される。スイッチング用TFT70のドレイン電極は、読み出し線72に接続されており、光センサ6の電気信号は、読み出し線72に出力される。すなわち、光センサ6からスイッチング用TFT70に供給された電気信号は、ON状態のスイッチング用TFT70を介して、読み出し線72に出力される。読み出し線72に出力された光センサ6の電気信号は、読み出し線駆動回路84を介して、制御装置7に出力される。
【0073】
光センサ6は、受光量に応じた電気信号を出力する。制御装置7は、光センサ6から出力された電気信号に基づいて、光センサ6の受光量、すなわち、発光素子1より射出され、着色部4R、4G、4Bを透過した光の光量を求めることができる。また、光センサ6は、画素毎に設けられており、制御装置7は、画素毎の光センサ6の電気信号(画素毎の着色部を透過した光の光量)を検出できる。
【0074】
本実施形態においては、TFTアレイ基板2の走査線101の走査と、カラーフィルタ基板5の走査線71の走査とが同期して実行される。換言すれば、TFTアレイ基板2の複数の走査線101のそれぞれにパルス状の走査信号が印加されるタイミングと同期して、その走査線101に対応するカラーフィルタ基板5の複数の走査線71のそれぞれにパルス状の走査信号が印加される。これにより、TFTアレイ基板2の発光素子1の発光動作に同期して、その発光素子1に対応するように配置されている光センサ6の受光動作が実行される。
【0075】
図8に示すように、本実施形態の制御装置7は、TFTアレイ基板2の駆動回路80、81を制御するとともに、カラーフィルタ基板5の駆動回路83、84を制御する制御部91と、有機EL装置Sで画像を表示するための画像信号をTFTアレイ基板2の駆動回路81に出力する画像処理部92と、画像表示に関する各種情報を記憶した記憶部93と、カラーフィルタ基板5の光センサ6からの電気信号が読み出し線駆動回路84を介して出力される信号処理部94とを含む。
【0076】
制御部91は、TFTアレイ基板2の各駆動回路80、81を制御するための制御信号を、各駆動回路80、81に出力する。制御部91は、タイミング信号生成装置として機能し、外部装置から供給される垂直走査信号、水平走査信号、ドットクロック信号、及びクロック信号等の制御信号に従って、各種タイミング信号、クロック信号等を生成し、TFTアレイ基板2の駆動回路80、81に出力する。
【0077】
また、制御部91は、カラーフィルタアレイ基板2の各駆動回路83、84を制御するための制御信号を、各駆動回路83、84に出力する。本実施形態においては、制御部91は、TFTアレイ基板2の走査線101の走査と、カラーフィルタ基板5の走査線71の走査とが同期して実行されるように、各駆動回路80、83を制御する。
【0078】
画像処理部92は、有機EL装置Sが所望の画像を表示できるように、外部装置から入力される画像信号を補正して、その補正後の画像信号をTFTアレイ基板2の駆動回路81に出力する。本実施形態においては、記憶部93には、光センサ6に入射する光の波長と、その光の波長に対応する光センサ6の感度との関係が記憶されている。画像処理部92は、記憶部93の記憶情報を参照して、外部装置から入力される画像信号を、所望の画像が得られる画像信号に補正する。
【0079】
次に、本実施形態に係る有機EL装置Sの動作の一例について説明する。制御装置7は、TFTアレイ基板2の駆動回路80、81のそれぞれに、制御部91より、制御信号を出力させるとともに、TFTアレイ基板2の駆動回路81に、画像処理部92より、画像信号を出力させる。駆動回路80、81は、制御部91及び画像処理部92のそれぞれから供給された制御信号及び画像信号に基づいて、各走査線101、信号線102等を介して、TFT31、33に、走査信号、画像信号を供給する。各画素の発光素子1には、供給された画像信号に基づく電流が流れ、各画素の発光素子1は、その電流値に応じた光量(輝度)の光を射出する。
【0080】
本実施形態においては、制御装置7は、TFTアレイ基板2の複数の走査線101のそれぞれにパルス状の走査信号を印加するタイミングと同期して、カラーフィルタ基板5の複数の走査線71のそれぞれにパルス状の走査信号を印加する。これにより、各画素の発光素子1に対応するようにカラーフィルタ基板5に配置されている複数の光センサ6は、TFTアレイ基板2の発光素子1の発光動作に同期して、その発光素子1からの光を受光する。各光センサ6は、受光量に応じた電気信号を、スイッチング用TFT70を介して、読み出し線72に出力する。読み出し線72に出力された光センサ6の電気信号は、駆動回路84を介して、信号処理部94に出力される。
【0081】
本実施形態においては、信号処理部94は、1フレーム毎、すなわち、複数の走査線71の1回の走査毎の光センサ6の電気信号を保持する。信号処理部94は、光センサ6の電気信号を処理した後、画像処理部92に出力する。
【0082】
画像処理部92は、信号処理部94から供給される各光センサ6の検出結果に基づいて、各画素の着色部4R、4B、4Gを透過した発光素子1の光が、所望の光量(輝度)を有しているかどうかを判断する。そして、画像処理部92は、各光センサ6の検出結果に基づいて、各画素の着色部4R、4B、4Gを透過した発光素子1の光が、所望の光量(輝度)を有するように、外部装置から入力される画像信号を必要に応じて補正して、その補正後の画像信号を出力する。例えば、ある画素の着色部4Rを透過した発光素子1の光が、所望の光量(輝度)を有していない場合、所望の光量(輝度)を有するように、その画素の発光素子1に流れる電流値が最適値となるように、画像信号に補正する。例えば、ある画素の着色部4Rを透過した発光素子1の光が、目標光量よりも低い光量である場合、所望の光量となるように、その画素の発光素子1に流れる電流値が高くなるように、画像信号を補正する。
【0083】
記憶部93には、発光素子1に流す電流値(ひいてはその電流値を得るための画像信号の補正量)と、着色部を介して得られる発光素子1から射出された光の光量との関係が予め記憶されている。また、記憶部93には、光センサ6に入射する光の波長と、その光の波長に対応する光センサ6の感度との関係が記憶されている。制御装置7の画像処理部92は、光センサ6の検出結果と、記憶部93の記憶情報とに基づいて、所望の光量を得るための発光素子1に流す電流値(画像信号)を決定する。
【0084】
そして、制御装置7の画像処理部92は、その決定した補正後の画像信号を、TFTアレイ基板2の駆動回路80、81に出力する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、カラーフィルタ4の複数の着色部4R、4G、4Bを透過した発光素子1の光を光センサ6で検出するようにしたので、光センサ6は、有機EL装置Sの外部に実際に射出される光、すなわち、実際に観察者の目に入射する光と等価な光を検出できる。したがって、その検出結果に基づいて、有機EL装置Sの表示性能を良好に維持するための適切な処置を講ずることができる。
【0086】
そして、制御装置7は、光センサ6の検出結果に基づいて、発光素子1に与える電力(発光素子1に流す電流)を調整できるので、有機EL装置Sの表示性能を良好に維持することができる。発光素子1が経時的に劣化し、例えば光量が低下する場合であっても、光センサ6の検出結果に基づいて、発光素子1に流す電流を調整することによって、発光素子1を所望の発光状態にすることができ、有機EL装置Sは、その発光素子1を用いて所望の光量で画像を表示できる。また、有機EL装置Sは、発光素子1から発光される光量の経時的な変化を補正できるので、入力画像を忠実に再現でき、その再現性を長期間に亘って維持できる。
【0087】
また、光センサ6は、画素毎に設けられているので、制御装置7は、画素毎の光量を調整でき、例えば光量むら、色むらなどを補正することもできる。
【0088】
そして、光センサ6(アモルファスシリコン膜64、65)は、遮光部BM、ゲート電極62等によって、外部からの光の照射が抑制された位置に配置されているので、外部からの光の影響をほぼ受けることなく、発光素子1より射出され、カラーフィルタ4の着色部4R、4G、4Bを透過した光を良好に検出できる。したがって、制御装置7は、その光センサ6の検出結果に基づいて、発光素子1に流す電流を制御して、ほぼ目標値どおりの光量を有する着色部4R、4G、4Bを介した発光素子1の光を得ることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、TFTアレイ基板2の各TFT31、33と、カラーフィルタ基板5の各TFT6、70とを別々に形成することができる。したがって、カラーフィルタ基板5の各TFT6、70を、アモルファスシリコンを含むものとし、TFTアレイ基板2の各TFT31、33を、ポリシリコンを含むものとすることができるなど、各TFTを所望の形態に製造できる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0091】
図9は、第2実施形態に係る有機EL装置Sの一例を模式的に示す側断面図である。本実施形態においては、有機EL装置Sは、互いに異なる色の光を射出する発光素子1を複数備える。本実施形態においては、有機EL装置Sは、赤色の光を射出する発光素子1R、緑色の光を射出する発光素子1G、及び青色の光を射出する発光素子1Bを有する。また、発光素子1R、1G、1Bのそれぞれに対応するように、各着色部4R、4G、4Bが配置されている。すなわち、発光素子1Rから射出された赤色の光は、R着色部4Rを透過した後、射出面3より射出され、発光素子1Gから射出された赤色の光は、G着色部4Gを透過した後、射出面3より射出され、発光素子1Bから射出された赤色の光は、B着色部4Bを透過した後、射出面3より射出される。こうすることにより、射出面3から射出される色純度を向上することができ、有機EL装置Sは、高いコントラストを有する画像を表示できる。
【0092】
本実施形態においても、各画素毎に、光センサ6が設けられており、制御装置7は、光センサ6の検出結果に基づいて、所望の光量を有する光を射出面3より射出できる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0094】
図10は、第3実施形態に係る有機EL装置Sの一例を模式的に示す側断面図である。第3実施形態の有機EL装置Sは、TFTアレイ基板2と、TFTアレイ基板2上に設けられ、TFTアレイ基板2と対向する画素電極23及びその画素電極23と反対側の共通電極25を含む発光素子1R、1G、1Bと、発光素子1R、1G、1Bの光射出側で共通電極25と接続するように配置され、発光素子1R、1G、1Bの光の一部を透過するとともに別の一部を反射し、画素電極23と共通電極25との間で光共振器を形成する半透明反射膜29と、TFTアレイ基板2上の発光素子1R、1G、1Bと対向するように配置され、発光素子1R、1G、1Bの光が入射するとともに、その入射した光を外部に射出する射出面3を有する第2基板5と、第2基板5に設けられ、光共振器を含む発光素子1R、1G、1Bの光を検出する光センサ6とを備えている。
【0095】
すなわち、本実施形態の有機EL装置Sは、例えば特開平7−282981号公報に開示されているような、微小な光共振器構造、いわゆるマイクロキャビティ構造を含む発光素子1R、1G、1Bを有する。本実施形態においては、半透明反射膜29は、例えば、TiOの膜とSiOの膜とを積層したものである。また、画素電極23は、例えばアルミニウム等、光を反射可能な材料で形成された膜を含む。共通電極25は、MgAg、ITO等、透明な材料で形成されている。
【0096】
本実施形態においては、各発光素子1R、1G、1Bの発光スペクトルのピーク波長と、各発光素子1R、1G、1Bの画素電極23と共通電極25との間の発光層(有機層)24R、24G、24Bにおける光路長とが合致するように、各発光層24R、24G、24Bの膜厚が設定されている。したがって、図10に示すように、各発光素子1R、1G、1Bの発光層24R、24G、24Bの膜厚が互いに異なる。マイクロキャビティ構造を有する発光素子1R、1B、1Gのそれぞれは、所望の発光スペクトルを有する光を射出できる。
【0097】
そして、第3実施形態においては、上述の第2実施形態と同様、各発光素子1R、1G、1Bのそれぞれに対応するように、各着色部4R、4G、4Bが配置されている。これにより、射出面3からは、高い色純度の光が射出される。
【0098】
本実施形態においても、各画素毎に、光センサ6が設けられており、制御装置7は、光センサ6の検出結果に基づいて、所望の光量を有する光を射出面3より射出できる。
【0099】
なお、第3実施形態において、カラーフィルタ4(着色部4R、4G、4B)を省略してもよい。マイクロキャビティ構造を有する発光素子1R、1B、1Gのそれぞれは、所望の発光スペクトルを有する光を射出できるので、カラーフィルタ4(着色部4R、4G、4B)を省略しても、射出面3から、高い色純度の光を射出できる。
【0100】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。図11(A)〜(C)は、上述の第1〜第3実施形態で説明した有機EL装置Sを搭載した電子機器の一例を示す図である。
【0101】
図11(A)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(A)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0102】
図11(B)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(B)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理本体、符号602は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0103】
図11(C)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(C)において、符号700は時計本体を示し、符号701は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0104】
図11(A)〜(A)に示す電子機器は、上述の実施形態に示したように、所望の光を射出できる有機EL装置Sを有するので、高い表示特性を有する。
【0105】
なお、電子機器としては、図11に示したような電子機器に限られず、種々の電子機器に本発明を適用できる。例えば、ディスクトップ型コンピュータ、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の一例を模式的に示す側断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係る有機EL装置を模式的に示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係る有機EL装置の断面図である。
【図5】第1実施形態に係る光センサの一例を示す模式図である。
【図6】第1実施形態に係る光センサの出力を読み出すための配線構造の一例を示す模式図である。
【図7】第1実施形態に係る光センサに接続された配線構造を示す模式図である。
【図8】第1実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態に係る有機EL装置の一例を模式的に示す側断面図である。
【図10】第3実施形態に係る有機EL装置の一例を模式的に示す側断面図である。
【図11】本実施形態に係る電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
1(1R、1G、1G)…発光素子、2…TFTアレイ基板、3…射出面、4…カラーフィルタ、4R、4G、4B…着色部、5…カラーフィルタ基板、6…光センサ、7…制御装置、BM…遮光部、S…有機EL装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が設けられた第1基板と、
前記第1基板と対向するように配置され、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を外部に射出する射出面を有する第2基板と、
前記第2基板に設けられ、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を透過可能な複数の着色部と、
前記第2基板に設けられ、前記着色部を透過した前記発光素子の光を検出する光センサと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子に対応する画素を複数有し、
前記着色部及び前記光センサは、前記画素毎に設けられている請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
複数の着色部の境界に配置された遮光部を有し、
前記光センサは、前記遮光部によって前記外部からの光の照射が抑制された位置に配置されている請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
複数の着色部の境界に配置された遮光部を有し、
前記光センサは、前記遮光部によって前記外部からの光の照射が抑制された位置に配置され、
前記遮光部は、該光センサに接続される配線の少なくとも一部を含む請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記光センサの検出結果に基づいて、前記発光素子に与える電力を調整する制御装置を備えた請求項1〜4のいずれか一項記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板上に設けられ、前記第1基板と対向する第1電極及び該第1電極と反対側の第2電極を含む発光素子と、
前記発光素子の光射出側で前記第2電極と接続するように配置され、前記発光素子の光の一部を透過するとともに別の一部を反射し、前記第1電極と前記第2電極との間で光共振器を形成する半透明反射膜と、
前記第1基板上の発光素子と対向するように配置され、前記発光素子の光が入射するとともに、該入射した光を外部に射出する射出面を有する第2基板と、
前記第2基板に設けられ、前記光共振器を含む前記発光素子の光を検出する光センサと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−91037(P2008−91037A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266994(P2006−266994)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】