説明

有機コンポーネントと湿気反応材料を含むパッケージ層とを備える装置

この装置は、基板(2)上に配置された少なくとも1つの光電コンポーネント(1)と、少なくとも1つの透明面とを備える。コンポーネント(1)は、少なくとも1つのバリヤ層(6)と湿気反応層(5)とを有するパッケージ層(3)により覆われる。反応層(5)は、アルカリ土類材料、アルカリ材料、及び有機金属誘導体から選択される湿気反応材料(4)を有する。材料(4)は、連続層又は有機基質(7)に分散された複数のノジュールの形状で、湿気反応層(5)に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配置された少なくとも1つの有機コンポーネント(organic component)を備える装置に関し、前記コンポーネントは少なくとも1つの湿気反応層(moisture-reactive layer)を有するパッケージ層に覆われ、前記反応層は基質(matrix)に分散された湿気反応材料のノジュール(nodule:小塊)を含む。
【背景技術】
【0002】
光電有機コンポーネント、例えば有機発光ダイオードの使用が増え、その活用の数も絶え間なく増えている。しかし、これらの新しい活用の要求を満たすために、外部環境に対する抵抗となる、より小さい透明保護手段を製造することが必要になってきている。実際、有機発光ダイオードが保護されていなかったり、保護が外部状況に完全には適合していなかったりする場合、ダイオードは劣化する。ダイオードの劣化は、基本的に、パッケージ手段を通過し、ダイオードを構成する材料と反応する外部雰囲気中の湿気により引き起こされる。
【0003】
従来は、図1に示すように、ダイオードはガラスカバー9とダイオード1が組み込まれた基板2との間で線引きされた閉キャビティ(closed cavity)に封入される。このキャビティは、周辺シール(peripheral seal)を形成する粘着剤のベッド(bed)10により境界される。しかし、この粘着剤のベッド10は湿気の不浸透性について限られた性能を示す。壁を通過した湿気と反応させるために固体ゲッター材料11をキャビティに配置して、ダイオードを保護する。しかし、このタイプのパッケージは、ダイオードの隣にゲッター材料を組み入れるための十分広い硬質基板及び/又はキャビティにのみ使用することができる。従って、このタイプの集積は、低価格の通常品用に産業化することは困難である。
【0004】
また、モノリシックパッケージ、すなわち、例えば、Al/ポリマー/Al積層体やSiO/SiN/SiO積層体などの、湿気に対して優れたバリヤ性能を有する1つ以上の層から形成されたパッケージを使用することが知られている。しかし、パッケージ層の厚みは限定されており、パッケージ層の不浸透性は、時間と共に、十分な強度を保障することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、実装が容易で、外部雰囲気の湿気に対して光電有機コンポーネントの改良された保護を与える装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は添付した請求の範囲により達成され、さらに詳しくは、前記基質が有機であり、前記湿気反応材料はアルカリ土類材料及びアルカリ材料から選択され、前記有機基質は、ナフチルフェニルビフェニル(BPhen)系材料、8−ヒドロキシキノリン系材料、Spiro TAD系材料、Spiro TTB系材料、Spiro−NPB材料、Spiro−TPD系材料、TMM4系材料、SEB010系材料、及びBCP系材料から選択されるという事実により達成される。
【0007】
他の利点及び特徴は以下の限定しない例示のためだけに与えられ、添付の図面に示される本発明の特定の実施形態の記載からさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術による装置の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による装置の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2に示されるように、装置の全部又は一部を形成するために、基板2上に少なくとも1つの有機コンポーネント1が配置される。有機コンポーネント1は、発光体及び/又は受光体、例えば有機発光ダイオード又は太陽電池(photovoltaic cell)とすることができる。有機コンポーネント1は有機トランジスタとすることもできる。基板2は、例えばシリコン又はガラスで作られた硬質基板、又は、例えばポリマー材料、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等で作られたフレキシブル基板とすることができる。コンポーネントが発光及び/又は受光コンポーネントである場合、装置は、光電有機コンポーネント1の動作波長(work wavelength)を透過させることができる少なくとも1つの透明面を有する。
【0010】
基板2上に配置された有機コンポーネント1は、外部雰囲気の湿気から保護するためのパッケージ層3に覆われている。パッケージ層3は、それ自身が湿気反応材料を含む連続湿気反応層5を有する。また、パッケージ層3は、外部雰囲気の湿気に対して低い透過性を示すバリヤ材料層6を有する。
【0011】
図2に示される特定の実施形態では、湿気反応層5は、バリヤ材料層6上に堆積された湿気反応材料の連続膜により形成される。
【0012】
図3に示される第2の実施形態では、湿気反応層5は、有機基質7に分散された湿気反応材料の複数のノジュール(nodule:小塊)4により形成される。
【0013】
湿気反応材料は、例えば、アルカリ元素、アルカリ土類元素、又はこれらの材料の1つに基づく合金から選択される。反応材料は、物理気相成長により堆積されたカルシウムCa、セシウムCe、又はバリウムBaからなることが好ましい。しかし、湿気反応材料は例えば、AlQ3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)、GaQ3、又はInQ3等の有機金属誘導体とすることができる。
【0014】
層5がアルカリ元素又はアルカリ土類元素からなる連続膜によって形成される場合、その厚さは典型的には少しの単原子層程度であり、透明のままにすることができる。反応層5の厚さは5nm未満が有利である。例えば、有機発光ダイオードが基板を介して光放射を発する(裏面発光)場合又はコンポーネントが有機トランジスタの場合など、パッケージ層を実質的に不透明にできる場合は、さらに厚くすることができる。反応層5は、典型的には50nm以上100nm以下の厚みのAlQ3から作ることもできる。
【0015】
層5が湿気反応材料4のノジュールを有する有機基質7により形成される場合、有機基質7はコンポーネント1の動作波長における透明材料から選択され、透明層5が得られる。
【0016】
有機基質7は、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)系材料、8−ヒドロキシキノリン系材料、Spiro TAD(2,2’,7,7’-テトラキス(ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)系材料、Spiro TTB(2,2’,7,7’-テトラキス(N,N’-ジ-p-メチルフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)系材料、Spiro−NPB(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン)材料、Spiro−TPD(2,2’,7,7’-テトラ-(m-トリル-フェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)系材料、TMM4系材料、SEB010系材料、及びBCP系材料から選択されることが有利である。この層が透明のままである場合、有機基質の厚みは、典型的には100nm以下である。しかし、透明性が求められない場合は、より厚く組み入れることができる。アクティブ有機層としてダイオード製造プロセスに既に組み込まれている場合、これらの材料を利用することが有利である。特に、ダイオード自体と同じ堆積チャンバで堆積できる。
【0017】
また、有利な方法では、有機基質7は、透明のままであるために、湿気反応材料の重さの2%未満含む。例えば、湿気反応層5は、2%のカルシウムを含むBPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の層により形成できる。
【0018】
好ましくは、反応層5が透明となるように、反応層5の厚み/湿気反応材料濃度の組み合わせが決定される。
【0019】
図2及び図3に示されるように、外部雰囲気中の湿気と反応層5との間の接触を遅らせるために、バリヤ層6は反応層5の上に配置される。パッケージ層3が光電有機コンポーネント1から反応層5を分離するもう1つのバリヤ層6を有することが有利である。
【0020】
バリヤ層6が反応層5上に堆積された時、この反応層と、特に有機基質の材料は、このような堆積物に適合しなければならない。起こり得る結晶化問題を避けるために、ガラス転移温度が十分高い、例えば100℃より高い有機材料が選択されることが好ましい。BPhenはガラス転移温度が低いため、使用しないことが有利である。
【0021】
パッケージ層3はバリヤ層6及び反応層5が交互になるもので形成され、バリヤ層6と共に始まって終わることが好ましい。
【0022】
バリヤ層6は原子層堆積(ALD)で堆積されたアルミナ(Al)で作られることが有利である。しかし、バリヤ層6は、例えばプラズマ化学気相成長又は原子層堆積により堆積されたシリコン酸化物(SiO)、化学量論又はそうでないシリコン窒化物(Si)、又はシリコン酸窒化物(SiO)によって作ることができる。バリヤ層6の厚みは、典型的には、5nm以上100nm以下である。
【0023】
光透過がパッケージ層3を介して起こった場合、パッケージ層を形成する異なる層の厚さは、後者が透明となるように選択される。
【0024】
反応層5が材料4の連続膜により形成される場合、反応層5の合計膜厚はカルシウム層5では5nm以下が有利であり、AlQ3の層5では100nm以下が有利である。さらに、反応層5が材料ノジュール4を含む有機基質膜により形成される場合、この合計膜厚は100nm未満が有利である。
【0025】
基板がプラスチック又はポリマーで形成される場合、コンポーネント1と基板2との間にさらなる湿気反応層を堆積することが有利である。
【0026】
後者が湿気に対するバリヤを形成するのに十分な固有の特性を示さない場合、反応材料のノジュール4も基板に配置することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)上に配置された少なくとも1つの有機コンポーネント(1)を備え、前記コンポーネント(1)は少なくとも1つの湿気反応層(5)を有するパッケージ層(3)に覆われ、前記反応層は基質に分散された湿気反応材料(4)のノジュール(4)を有する装置であって、前記基質は有機(7)であり、前記湿気反応材料はアルカリ土類材料及びアルカリ材料から選択され、前記有機基質は、ナフチルフェニルビフェニル(BPhen)系材料、8−ヒドロキシキノリン系材料、Spiro TAD系材料、Spiro TTB系材料、Spiro−NPB材料、Spiro−TPD系材料、TMM4系材料、SEB010系材料、及びBCP系材料から選択されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記湿気反応材料は、カルシウム、セシウム、及びバリウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記湿気反応材料はカルシウムであり、前記有機基質はナフチルフェニルビフェニル(BPhen)系材料であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記湿気反応材料(5)は前記湿気反応材料の連続膜により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つのバリヤ層(6)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
バリヤ層(6)は前記反応層(5)の上方に配置されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
バリヤ層(6)は、前記反応層(5)とコンポーネント(1)との間に配置されることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記パッケージ層(3)は、バリヤ層(6)及び反応層(5)が交互になるものにより形成されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記基板(2)はポリマー材料で作られることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記コンポーネント(1)と基板(2)との間に、さらなる湿気反応層が配置されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記有機コンポーネント(1)は発光ダイオード、太陽電池、又は有機トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−507252(P2011−507252A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537485(P2010−537485)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001703
【国際公開番号】WO2009/101299
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】