説明

有機デバイス上の非共通キャッピング層

【課題】非共通キャッピング層を有する有機デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】第一の方法は、第一の基板の上に複数の有機発光デバイス(OLED)を備え付ける工程を含む。そのOLEDのそれぞれは、光透過性のトップ電極(上面電極)を含む。その複数のOLEDはOLEDの第一の部分と、その第一の部分とは異なるOLEDの第二の部分を含む。第一の方法は、その複数のOLEDの少なくとも第一の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させ、その第一のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第一の部分と光学的に結合されている。第二のキャッピング層が、その複数のOLEDの少なくともその第二の部分の上に堆積されており、その第二のキャッピング層がその複数のOLEDの第二の部分とは光学的に結合されているが、その複数のOLEDのその第一の部分とは光学的に結合されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機デバイス上の非共通キャッピング層に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0003】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0004】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0005】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iの構造を有する。
【化1】

【0006】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0007】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0008】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0009】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0010】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0011】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップのより近くに現れる。
【0012】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0013】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【特許文献5】米国特許第6,294,398号明細書
【特許文献6】米国特許第6,895,667号明細書
【特許文献7】米国特許第7,964,439号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【非特許文献3】Advanced Materials 2006, 18, (10), 1313-1316
【非特許文献4】Advanced Materials 2004, 16, (5), 432436
【非特許文献5】H. Riel, S. Karg, T. Beierlein, B. Ruhstaller, 及びW. Riess, Applied Physics Letter, Vol. 82, No. 3(2003年1月20日)
【非特許文献6】H. Riel, S. Karg, T. Beierlein, B. Ruhstaller, 及びW. Riess , Journal of Applied Physics, Vol. 94, No. 8 (2003年10月15日)
【非特許文献7】ST Lee, JY Lee, MH Kim, MC Suh, TM Kang, YJ Choi, JY Park, JH Kwon, HK Chung, “A New Patterning Method for Full-Color Polymer Light-Emitting Devices: Laser Induced Thermal Imaging (LITI)”, Proceeding of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 33: (suppl2), Boston, 2002, pp 784-787。
【非特許文献8】ST Lee, BD Chin, MH Kim, TM Kang, MW Song, JH Lee, HD Kim, HK Chung, MB Wolk, E Bellman, JP Baetzold, S Lamansky, V Savvateev, TR Hoffend JS Staral, RR Roberts, Y. Li, A novel patterning method for full-color organic light-emitting devices: laser-induced thermal imaging (LITI). Proceeding of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 35:(suppl2), Seattle, 2004, pp 1008-1011。
【非特許文献9】T Hirano, K Matsuda, K Kohinata, K Hanawa, T Matsumi, E Matsuda, T Ishibashi, A Yoshida, T Sasaoka, “Novel Laser Transfer Technology for Manufacturing Large-Sized Displays”, Proceedings of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 38:(suppl2), Long Beach, 2007, pp 1592-1595
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
非共通キャッピング層(non-common capping layer)を有する有機デバイスの製造方法を提供する。第一の方法は、第一の基板の上に複数の有機発光デバイス(OLED)を備え付ける工程を含む。そのOLEDのそれぞれは、光透過性のトップ電極(上面電極)を含む。その複数のOLEDはOLEDの第一の部分と、その第一の部分とは異なるOLEDの第二の部分を含む。第一の方法は、その複数のOLEDの少なくとも第一の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させて、その第一のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第一の部分と光学的に結合される。第二のキャッピング層をその複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に堆積させて、その第二のキャッピング層がその複数のOLEDの第二の部分とは光学的に結合されるが、その複数のOLEDの第一の部分とは光学的に結合されない。上述した第一の方法では、第二のキャッピング層がパターン形成されたマスク、より好ましくは、ファインメタルマスク(FMM)を通して堆積されるのではない。いくつかの態様では、第二のキャッピング層は以下のうちの少なくとも一つを用いて堆積される:レーザー誘起熱画像形成法(Laser Induced thermal imaging、LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(Laser induced pattern-wise sublimation, LIPS)。「第一の方法」として言及される下記の態様は、FMMを通して堆積させた非共通キャッピング層を含む態様、並びに非共通キャッピング層がFMMを通して堆積されない態様の両方をいうことができる。
【0017】
いくつかの態様では、上述した第一の方法は、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させて、その第一のキャッピング層がその複数のOLEDのその第二の部分と光学的に結合される工程をさらに含む。いくつかの態様では、第一のキャッピング層はブランケット層を含むことができる。いくつかの態様では、第一のキャッピング層はその複数のOLEDの第二の部分の上には堆積されずに、その第一のキャッピング層はその複数のOLEDの第二の部分とは光学的に結合されない。いくつかの態様では、その複数のOLEDは透明なOLEDであり、及び/又はトップ発光OLED(上面発光OLED)である。
【0018】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、第一のキャッピング層は、複数のOLEDの第一の部分全体に一定である第一の全光学経路を有する。第二のキャッピング層は、複数のOLEDの第二の部分全体に一定である第二の全光学経路を含むことができる。その第一の全光学経路と第二の全光学経路とは異なる。
【0019】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、第二のキャッピング層を堆積させる工程は、第二の基板の一部分の上に第二のキャッピング層を堆積させて、その第二のキャッピング層を複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に配置する工程を含む。第二のキャッピング層は、少なくとも以下のうちの一つを用いて第二の基板の上に堆積させることができる:フォトリソグラフィー、LITI、LIPS、捺印(スタンピング)、又はインクジェット印刷。いくつかの態様では、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に第二のキャッピング層を配置させる工程は、第二の基板の一部の上に第二のキャッピング層を堆積させて、その第二の基板が第一の基板と結合された場合に、第二のキャッピング層が複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に配置される工程を含む。第一の基板が第二の基板と結合された場合に、この第二のキャッピング層は第一のキャッピング層と光学的に結合されることができる。いくつかの態様では、第二の基板はディスプレイカバーである。
【0020】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、第一のキャッピング層を堆積する工程が、ファインメタルマスク(FMM)及び気相熱蒸着(VTE)のいずれか一つ又はそのいくらかの組み合わせを含む。いくつかの態様では、どのキャッピング層もFMM及びVTEのいずれか一つ又はそれらのいくらかの組み合わせによって堆積されていない。
【0021】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDは、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含むことができる。複数のOLEDの第一の部分は、複数の青色OLEDを含みうる。いくつかの態様では複数のOLEDの第二の部分は、複数の緑色OLED及び複数の赤色OLEDのみを含む。いくつかの態様では、複数のOLEDの第二の部分は、複数の赤色OLEDのみを含む。いくつかの態様では、複数のOLEDの第二の部分は、複数の緑色OLEDのみを含む。
【0022】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDはその第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含むことができる。上記第一の方法は、複数のOLEDの少なくともその第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層はその複数のOLEDの第一及び第二の部分とは光学的に結合されていない。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、その複数のOLEDのその第一の部分又は第二の部分とは光学的に結合されていない。いくつかの態様では、第三のキャッピング層はパターン形成されたマスクを通して堆積されておらず、また、好ましくはFMMを通して堆積されていない。この第三のキャッピング層は以下のうちの少なくとも一つを用いて堆積されていることができる:レーザー誘起熱画像形成法(LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(LIPS)。
【0023】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、さらにその複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、前記第一の方法が、その複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、それによりその第三のキャピング層がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分と光学的に結合させる工程をさらに含み、その第三のキャッピング層を堆積させる工程はその第三のキャッピング層を第二の基板の一部の上に堆積させ、その第三のキャッピング層をその複数のOLEDの第三の部分の上に配置させる工程を含んでいることができる。いくつかの態様においては、第三のキャッピング層は、以下のうちの少なくとも一つの方法を用いて第二の基板上に堆積させることができる:フォトリソグラフィー、LITI、LIPS、スタンピング(捺印)、又はインクジェット印刷。いくつかの態様では、第三のキャピング層は、第二の基板の一部の上に第三のキャッピング層を堆積させることによって配置(align)させ、その第二の基板が第一の基板と結合された場合に、第三のキャッピング層が複数のOLEDの第三の部分と光学的に結合されることができる。また第三のキャッピング層は、第一の基板が第二の基板と結合されたときに、第一のキャッピング層と光学的に結合されていてもよい。いくつかの態様では、第二の基板はディスプレイカバー又は照明パネルである。
【0024】
いくつかの態様では、上述した第一に方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、且つ、第一の方法がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含み、その複数のOLEDの第三の部分は複数の赤色OLEDのみを含んでいてもよい。その複数のOLEDの第二の部分は複数の緑色OLEDのみを含んでいてもよい。その複数のOLEDの第一の部分は、複数の青色OLEDのみを含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、且つ、第一の方法が複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含み、その複数のOLEDのその第三の部分は、複数の緑色OLEDのみを含んでいてもよい。複数のOLEDのその第二の部分は複数の赤色OLEDのみを含んでいてもよい。複数のOLEDのその第一の部分は、複数の青色OLEDのみを含んでいてもよい。
【0026】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その第一のキャッピング層が、複数の赤色OLED、緑色OLED、及び青色OLEDのうちの少なくとも1つに対して最適化された厚さを有していてもよい。好ましくは、その第一のキャッピング層は、その複数の青色OLEDに対して最適化された厚さを有する。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層は約125nm未満の光学的厚さを有する。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層は概略90〜130nmの範囲内の光学的厚さを有する。
【0027】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、第一のキャッピング層はAlqを含む。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層は、その第一のキャッピング層が光学的に結合している各OLEDによって発せられる光の波長にほぼ等しい波長を有する光に対して実質的に透明である。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は約1〜2.5の範囲に入る屈折率を有する。好ましくは、第一のキャッピング層は約1.5〜2の範囲に入る屈折率を有する。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、約5〜10%の範囲に入る、その複数の緑色OLEDに対する効率の損失しかもたらさない光学的厚さを有する。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層は、約25〜35%の範囲に入る、その複数の赤色OLEDに対する効率の損失しかもたらさない光学的厚さを有する。
【0028】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その第二のキャッピング層は、その複数の赤色OLED及び/又は複数の緑色OLEDに対して最適化された厚さを有することができる。いくつかの態様では、第二のキャッピング層は概略125〜160nm内にはいる光学的厚さを有する。いくつかの態様では、第一のキャッピング層はAlqである。いくつかの態様においては、その第二のキャッピング層は、その第二のキャッピング層が光学的に結合している各OLEDによって発せされる光の波長に概略等しい波長を有する光に対して実質的に透明である。いくつかの態様では、その第二のキャッピング層は、約1〜2.5の範囲に入る屈折率を有する。好ましくは、その第二のキャッピング層は、約1.5〜2の範囲に入る屈折率を有する。
【0029】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、且つ、第一の方法がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含み、その第三のキャッピング層は、その複数の赤色OLED及び/又はその複数の緑色OLEDに対して最適化された厚さを有する。いくつかの態様においては、その第三のキャッピング層は、概略160〜200nmの範囲に入る厚さを有する。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層はAlqを含む。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、その第三のキャッピング層が光学的に結合している各OLEDによって発せられる光の波長とほぼ等しい波長を有する光に対して実質的に透明である。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、概略1〜2.5の範囲に入る屈折率を有する。好ましくは、その第三のキャッピング層は、概略1.5〜2の範囲に入る屈折率を有する。
【0030】
いくつかの態様では、上述した第一の方法において、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、且つ、第一の方法がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含み、その第一のキャッピング層はその複数の青色OLEDに対して最適化された厚さを有し、その第二のキャッピング層はその複数の緑色OLEDに対して最適化された厚さを有し、且つその第三のキャッピング層はその複数の赤色OLEDに対して最適化された厚さを有する。いくつかの態様では、その第一のキャッピング層は概略90〜130nmの範囲の光学的厚さを有し、その第二のキャッピング層は概略125〜160nmの範囲の光学的厚さを有し、且つその第三のキャッピング層は概略160〜200nmの範囲の光学的厚さを有する。
【0031】
非共通キャッピング層(non-common capping layer)を有する有機デバイスを含む装置も提供する。第一の装置は複数のOLEDを含み、各OLEDは、第一の電極、その第一の電極の上に配置された第二の電極、その第一及び第二の電極の間に配置された有機エレクトロルミネッセンス(EL)物質を有する。第一の装置は、複数のOLEDの少なくとも第一の部分の第二の電極の上に配置された第一のキャッピング層をさらに含み、その第一のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第一の部分と光学的に結合されている。この第一の装置は第二のキャッピング層も含む。この第二のキャッピング層は、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の第二の電極の上に配置されることができ、その第二のキャッピング層がその複数のOLEDの第二の部分とは光学的に結合されているが、複数のOLEDの第一の部分とは光学的に結合されていない。いくつかの態様では、第二のキャッピング層はFMMを通して堆積されていない。いくつかの態様では、その複数のOLEDは、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含む。
【0032】
いくつかの態様では、その複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含む上述した第一の装置においては、その第二のキャッピング層は、複数の赤色OLED、緑色OLED、及び青色OLEDのうちの少なくとも1種の上には配置されていない。いくつかの態様では、その第二のキャッピング層は、その複数の青色OLEDの上には配置されていない。
【0033】
いくつかの態様では、その複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含み、その複数のOLEDがその第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをさらに含む上述した第一の装置において、その第一の装置は、その複数のOLEDの少なくとも第三の部分の第二の電極の上に配置された第三のキャッピング層をさらに含み、その第三のキャッピング層は複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合されている。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、複数のOLEDの第一又は第二の部分とは光学的に結合されていない。いくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、FMMと通して又はVTEによっては堆積されていない。いくつかの態様では、その第二のキャッピング層は、複数の青色OLED又は複数の緑色OLEDとは光学的に結合されておらず、且つその第三のキャッピング層は、複数の赤色OLED又は複数の青色OLEDとは光学的に結合されていない。
【0034】
一般に、キャッピング層の追加は、トップ発光(上面発光)有機発光デバイスの効率を高める。キャッピング層の最適な光学的厚さは、発光色(すなわち、発光の波長)に左右される。例えば、キャッピング層の最適な光学的厚さは、赤、緑、及び青色発光に対して異なる。しかし、製造工程における複雑さ並びに複数の堆積工程を行うことによる増大する費用に部分的に基づいて、製造者によってこれまでに開発された解決法は、「最も弱い」色(通常は青)に合わせた、デバイスのキャッピング層のための単一の厚さを選択し、妥協をすることである。これは、その他の色(通常は赤及び緑色OLED)については最適な効率よりも低くなる。したがって、本明細書では、各色のOLEDに対して異なる光学的厚さを有するキャッピング層を用いることによってこれらの欠点に対処するデバイス、及びそのようなデバイスの製造方法を提供する。これによって、その発光色に関係なく、それぞれのOLEDの効率の最適化が可能になる。
【0035】
本明細書で提供する態様はまた、単一のデバイスのために複数のキャッピング層を堆積させることを費用的に困難にしうるファインメタルマスク(FMM)又はその他の費用がかかる堆積方法の使用を必要としない堆積手法を利用する。例えば、実施態様は、LITI及び/又はLIPS堆積法を備え、これらはこれまで、キャッピング層を堆積させるための容易に実施可能な手法としては認識されてこなかった。これまで、これらの2つの例示した手法の両方とも、OLEDに関しては研究及び開発レベルでしか用いられておらず、OLED積層体の電気的に活性な要素を堆積させるための試みで使用されてきたにすぎない。しかし、本発明者は、キャッピング層が電気的に活性ではないという事実に部分的には基づき、そのような手法の欠点の多くが最小化され、各色のOLEDに対して異なる光学的厚さを有するキャッピング層を堆積させることに対してそれらの手法を有効にすることを認識している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、本明細書に記載した態様に従うデバイス例の側面図を示す。
【図4】図4は、本明細書に記載した態様に従うデバイス例の側面図を示す。
【図5】図5は、本明細書に記載した態様に従うデバイス例の側面図を示す。
【図6】図6は、本明細書に記載した態様に従うデバイス例の側面図を示す。
【図7】図7は、本明細書に記載した態様に従うデバイス例の側面図を示す。
【図8】図8は、本明細書に記載した態様に従う方法及び装置の例を示す。
【図9】図9は、本明細書に記載した態様に従う方法及び装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくらかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0038】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0039】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0040】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0041】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0042】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0043】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0044】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0045】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0046】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0047】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0048】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0049】
本出願で用いる用語についての追加の定義を以下に示す。
【0050】
本明細書で用いるように、「キャッピング層」の用語は、OLEDのトップ電極(これは通常、上面発光(トップ発光)デバイスのカソードである)の上に堆積された物質の層をいうことができる。この層は通常、OLEDから外に出る(outcouple)光の量を高めるために用いられる。この層は任意の好適な材料(例えば、Alq)で作られていることができ、好ましくは透明、半透明、又は光透過性である。「全キャッピング層(total capping layer)」の用語は、OLEDの上に配置され(且つそれに光学的に結合され)たキャッピング層の全体の組み合わせをいうことができる。例えば、第一及び第二のキャッピング層がOLEDの上に配置され、それらが全て光学的に結合されている場合、そのOLEDのトータルキャッピング層は、その第一及び第二のキャッピング層の組み合わせである。「全光学的厚さ(total optical thickness)」は、その全キャッピング層の光学的厚さである。
【0051】
本明細書で用いるように、「光学的に結合された」の用語は、第一の部材の表面から発せられた又はそれを通して伝播する実質的に全ての光が、さらに、第二の部材の実質的に平行な表面を通して伝播する構成をいうことができる。「部材」には、有機デバイス(例えば、OLED、透明OLED、又は上面発光(トップ発光)OLED)、有機デバイスの一つの層(例えば、有機層、発光層など)、キャッピング層(これは有機デバイスの上に配置されていてもよい)、基板、及び/又は有機デバイスの電極が含まれうる。例えば、OLEDからその電極の一つに対して垂直方向に発せられた実質的に全ての光が、さらにその電極に実質的に平行なキャッピング層の表面を通して伝播する場合、OLEDはキャッピング層と光学的に結合されているということができる。
【0052】
本明細書で用いるように、「堆積」又は「堆積させる」の用語には、第一の基板上に有機デバイスの層を作製する任意の公知の方法が含まれ、それにはVTE、OVJP、OVJD、スタンピング法(捺印法)、インクジェット堆積法、LITI、LIPS、並びに第二の基板上への層の作成(フォトリソグラフィーを含む)とそれに続く第一及び第二の基板を配列させることが含まれる。スタンピング法(捺印法)(付加法(即ち、冷間圧着(コールドウェルディング))及び減成法(subtractive)の両方)は、米国特許第6,294,398号明細書、米国特許第6,895,667号明細書、及び米国特許第7,964,439号明細書に詳細に記載されており、これらを参照により援用する。
【0053】
本明細書で用いるように、あるキャッピング層が複数のOLEDのそれぞれの実質的な部分の上に配置されている(例えば、被覆する)場合、キャッピング層は複数の有機デバイスに共通していることができる。例えば、キャッピング層が第一及び第二のOLEDに共通しているが第三のOLEDとは共通でない場合は、そのキャッピング層はその第一及び第二のOLEDの両方の実質的な部分の上に配置されているが、その第三のOLEDの上には実質的に配置されていない。
【0054】
本明細書で用いるように、「ブランケット層」の用語は、基板上のOLED(複数)の全てに又は実質的に全てに共通である層をいうことができる。ブランケット層は、物質が基板の端部周辺(例えば、密封するために必要な領域、あるいは外部電源又はビデオ信号からの電気接点が必要である領域)に堆積されることを防ぐマスクを通して堆積させることができる。しかし、ブランケット層の堆積は、一般に、例えば、FMMのように、基板上に特徴を画するマスクを通して基板上に物質を堆積させることを含まない。ほとんどの場合に、サブピクセルサイズの特徴をもつ堆積用孔が基板の上に正確に一致するほどの程度の精密さで、用いたマスクが位置合わせされる必要はない。
【0055】
本明細書で用いるように、「パターン形成されたマスク」又は「ファインメタルマスク」(FMM)は、基板上に物質を堆積させるために用いることができるマスクをいうことができる。VTEについては、通常、有機及び金属層は、ブランケット及び/又は共通層を含め、「パターン形成されたマスク」を通して堆積される。したがって、「パターン形成されたマスク」中の開孔部(すなわち「孔」)は通常は大きく、ディスプレイ又は照明パネル領域のかなりの部分を覆う。それとは対照的に、FMMは、基板上の全体の活性な(発光する)領域よりも小さなパターン解像度を有する特徴構造を堆積させるために用いることができる。典型的には、FMMは、基板上に配置されるサブピクセル(通常は一つの色のサブピクセル)部分の寸法のオーダーの一つの寸法をもっている。FMMは、それゆえに典型的には有機デバイスの発光層の堆積に用いられ、ディスプレイの異なる色は、そのディスプレイに存在するアクティブなOLEDの部分への堆積だけを可能にするようにデザインされたFMMを通して別個にそれぞれ堆積される(例えば、それを通して赤色の発光層のみが堆積されるFMM、それを通して緑色の発光層のみが堆積される別のFMM、など)。
【0056】
「パターン形成」されたもの又はFMMに関わらず全てのマスクは、ある程度の位置合わせが必要である。しかし、FMMはより厳密な位置の許容値が求められ(例えば、サブピクセルの部分の寸法のオーダーで)、そのために通常、位置合わせにより長く時間がかかり、このことが生産時間及びコストに有意に加わる。FMMはまた、通常は、より大きな面積の「パターン形成された」マスクよりも多くの定期的メンテナンス(すなわち、交換又は定期的洗浄)を必要とし、なぜなら、FMMのより小さな「孔」(これを通して物質が堆積される)の大きさが、堆積/生産時間の関数として小さくなりうるからであり、それは物質がその孔に堆積されるからである。このことは、FMMの堆積面積がその当初の設計を超えて小さくなったときに、ディスプレイ領域に問題を引き起こすおそれがある。さらに、FMMの上での物質の蓄積は、「フレーキング」(すなわち、チャンバー内でのマスクから落ち、あるいは基板上に付く物質)に関する問題も引き起こすおそれがあり、これは歩留まりの問題を生じさせるおそれがある。これらの問題は、「パターン形成された」大きな面積のマスクについては、そのマスクの表面領域(表面の上には、物質は、ずっとわずかしか堆積しないことができる)ほどには顕著ではない可能性がある(すなわち、物質にとっては、それを通って堆積される、より大きな開口部がある)。
【0057】
本明細書で用いるように、「光学的厚さ」の用語は、等方性光学要素の物理的な厚さとその屈折率との積をいうことができる。キャッピング層の「物理的な厚さ」は、その上にOLEDが堆積される基板の表面に対して実質的に垂直な方向におけるキャッピング層の長さをいう。
【0058】
本明細書で用いるように、「最適化された」又は「最適な」の用語は、OLEDの寿命又は効率を最大化することをいうことができ、これは、効率の損失を約5%未満に低減することに起因しうる。
【0059】
典型的には上面発光(トップ発光)(又は透明な)有機デバイスにおいては、キャッピング層がトップ電極の上に堆積されて、そのデバイスからの発光を強める。すなわち、キャッピング層(これは典型的には高透明性物質を含む)は、デバイスからの発光の減衰を抑制するために用いられる。キャッピング層が適切に選択された場合には、そのキャッピング層は、例えば、内部導波などの過程によってデバイスからの出力(アウトカップリング)損失を低減することによって輝度を高めることにより、トップ発光(上面発光)デバイスの出力を高めることができる。しかし、特定の物質からなるキャッピング層の(効率に関して)最適な厚さは、発光色(及びその結果、光の波長)に応じて変わる。これは、異なる色の発光の波長の違いと、そのOLED中で作り出される干渉パターン(広角度及び多重ビーム干渉の両方)に対応した影響によるものである。トップ発光OLEDからの光の透過へのキャッピング層の厚さの影響は、以下の文献に詳細に記載されており、これらは全ての目的のためにそれら全体を援用する。
H. Riel, S. Karg, T. Beierlein, B. Ruhstaller, 及びW. Riess,「Phosphorescent Top-Emitting Organic Light-Emitting Devices With Improved Light Outcoupling」, Applied Physics Letters, Vol. 82, No. 3(2003年1月20日)。
H. Riel, S. Karg, T. Beierlein, B. Ruhstaller, 及びW. Riess,「Tuning the Emission Characteristics of Top-Emitting Organic Light-Emitting Devices By Means of a Dielectric Capping Layer: An Experimental and Theoretical Study」, Journal of Applied Physics, Vol. 94, No. 8 (2003年10月15日)。
【0060】
本発明者は、異なる波長(複数)の光を発する複数のOLEDを含むデバイスに対して最大の効率を達成するための一つの方法は、その有機デバイスのそれぞれに対して異なるキャッピング層(複数)を持たせることであることを認識している。例えば、並置型の赤−緑−青(RGB)ディスプレイについては、本明細書に示した態様は、そのRGB画素のそれぞれに対して、異なる光学的厚さのキャッピング層を用いることができる(例えば、その青色画素の上に配置した第一のキャッピング層の光学的厚さ、その緑色画素の上に配置した第二のキャッピング層の光学的厚さ、及びその赤色画素の上に配置した第三のキャッピング層の光学的厚さ)。いくつかの態様においては、キャッピング層の物理的な厚さを変えるよりはむしろ、又はそれに加えて、異なる色のOLEDのそれぞれに対する異なるキャッピング層のために異なる物質を用いて、同様の最適化(したがってこれはその物質の屈折率に基づいて、キャッピング層の光学的厚さを変えうる)を達成することができる。RGBディスプレイに関して説明したけれども、実施態様はそのように限定されず、任意の特定のデバイスにおいて各色のOLEDに対して異なるキャッピング層の厚さ(及び/又は異なる物質)を備えていることができる。
【0061】
しかし、異なるキャッピング層の物理的厚さ及び/又は物質を、OLEDデバイス(複数)のそれぞれに対して(すなわち、発光される色のそれぞれに対して)備えることは、複数の色のOLEDデバイス(複数)を含むデバイス又は装置(例えばディスプレイ)に対して、コスト及び製造工程の複雑さを付与しうる。さらに、追加の製造工程は、製造工程における誤りが起こる、より多くの機会を作りだす。したがって、製造者によって開発された解決法は、典型的には、その「最も弱い」色(通常は青)に合わせたキャッピング層に対する単一の厚さ及び物質を選択することで妥協している。「最も弱い」色が表す意味は、その色についてOLEDが最も効率が低くあるいは最も寿命が短い色を意味する。この単一のキャッピング層のみの使用は、キャッピング層の厚さが最適化された波長とは異なる波長を有する光を発するOLEDに対しては、最適な性能よりも低い性能をもたらす。典型的には、これは、キャッピング層が青色OLEDを最大化するために選択される場合の赤色及び緑色有機デバイスである。例えば、最適なキャッピング層よりも薄いもの(例えば、青色発光に対して最適化されたキャッピング層)を用いることは、潜在的な緑色の効率の約5〜10%の損失、及び/又は潜在的な赤色の効率の約30%の損失をもたらしうる。「潜在的な効率」とは、キャッピング層がその効率を最適化するように選択された場合のデバイスの効率を意味する。したがって、このデバイス全体としては、可能な限りの効率では作動しない。
【0062】
本明細書で提供した態様は、それぞれの色の発光に対して異なる光学的厚さを有する、
それぞれの有機デバイスに対する全キャッピング層を用いることによって最適化されたそれぞれのOLEDの発光を有するデバイス(例えばディスプレイ)を開示している(例えば、必要に応じて異なる厚さ及び/又は物質を備えることによって)。そのような上面(トップ)発光デバイスにおいて作られた干渉パターンの効果は、キャッピング層の光学的厚さと発光の波長によって部分的に決まり、それによって最小化されうる。キャッピング層の厚さがOLEDの光学的効率に影響を及ぼしうるという当技術分野における理解にもかかわらず、これの解決方法、すなわち複数の色(例えば、赤、緑、及び青のディスプレイ)を発光する複数のOLEDを有するデバイスに対する新しいアプローチを提供する解決方法についてのいかなる認識もなかった。実際に、当産業においては、そのような解決法は教示されておらず、それがそのようなデバイスを製造するためには実用的でなく且つ/又は費用効率が悪いであろうという考えによる。しかし、以下に詳細に述べるように、本発明者は、これらの問題のうちのいくつか又は全てを満足しうるそのような態様のものを製造する方法及びデバイスの態様を本明細書において提供している。
【0063】
上で指摘したとおり、異なる光学的厚さを有するキャッピング層を用いることによってデバイス中の各色のOLEDに対して発光の最適化を達成することは、従来の方法を用いてそのようなデバイスを製造する費用を実質的に増加させうる。すなわち、異なるキャッピング層の厚さ又は材料を供与することは、多重堆積法又は多重堆積工程を使用することを必要としうる。例えば、従来のやり方を用いることは、各OLEDの色の上にそれぞれ異なる材料及び/又は異なる厚さの同じ材料を堆積させるためには、複数のパターン形成されたマスクの使用を必要としうる(例えば、FMMを通してのVTE蒸着と組み合わせたFMM)。典型的なRGBデバイス(すなわち、3つの異なる色のうちの一つを有するOLEDを含むデバイス)は、典型的には2つの追加の微細な堆積工程を含み、それぞれがFMMの使用を必要とする。
【0064】
しかし、毎回、方法は追加の堆積工程(特に、FMMを通して)の使用を必要とし、両方の回におけるコスト及び製造の出費が増大する。例えば、それぞれの繰り返しは、デバイスに追加の材料を堆積させる前にパターン形成されたマスク(特に、FMM)を正しく位置合わせすることを必要としうる。上で指摘したとおり、FMMはしばしば厳しい位置合わせの許容差を必要とし、そのため、通常は適切に位置合わせするために比較的長い時間がかかる。さらに、FMMはしばしばその連続使用に伴う高コストである−典型的には定期的なメンテナンスを必要とし(すなわち、交換又は定期的な洗浄)、なぜなら材料がそのマスク上に堆積されるので、堆積及び/又は生産時間の関数として、マスク中の小さな「孔」の大きさが小さくなりうるからである。
【0065】
さらに、FMMを使用することは、製造工程においてある種の欠陥が生じる機会をしばしば増大させ、その欠陥とは、例えば、マスクを通して堆積される領域が縮小し(マスクの「孔」に堆積される材料の増加に基づく)、それによって照明又はディスプレイの領域において問題を引き起こすことに関連する課題である。FMM上への材料の蓄積は、「フレーキング」(すなわち、マスクからチャンバーへの材料の落下又は基板上への付着であり、これは歩留まりの問題を起こしうる)による問題をも引き起こしうる。したがって、本発明者は、複数のキャッピング層を堆積させるために代替の堆積方法を用いることが好ましいことをさらに認識している。
【0066】
本明細書に示した態様は、FMMを用いる堆積を行う追加の工程を必要とすることなしに、それぞれの画素(ピクセル)及び/又は色のOLEDに対して異なるキャッピング層の光学的厚さを用いること(それによって、デバイスのそれぞれのOLEDの出力効率の最適化を可能にする)を可能にする。例となる態様では、例えば、赤、緑、及び青色のOLEDは、共通のキャッピング層(例えば、異なる色の複数の画素に共通しうるキャッピング層)を含む公知の方法を用いて作製されうる。このキャッピング層は、青色の画素にマッチ(すなわち、最適化)するように設計されることができ、なぜなら通常、この画素はまた、最も薄い厚さの材料を必要とするからである。赤及び緑色の画素を最適化するために必要とされる追加のキャッピング層材料を次に堆積させて、各画素と光学的に結合させることができる。しかし、追加の材料を適用することは、材料のFMM及び/又はVTE堆積法を使用して行われなくてもよい。それに代わり、本明細書で提供する態様は、例えば、その共通のキャッピング層の上にレーザー誘起熱画像形成法(LITI)及び/又はレーザー誘起パターン別昇華法(LIPS)による堆積を用いて追加の物質を堆積させることができる。
【0067】
要するに且つ限定するのではないが、LITI法のいくつかの例は、ドナーフィルム(ドナー)、高精度レーザー露光システム、及び基板(レセプター)を用いる。ドナーフィルムは最初に任意の公知の方法を用いて基板上に貼り合わせられ、それによりドナーとアクセプターが緊密に密着されうる。ドナーは、レーザーエネルギーを熱に変換する光熱変換層(light-to-heat conversion, LTHC)を含みうる。LTHC層は、照射の波長を吸収する材料を含み、入射した輻射の一部を、ドナーからアクセプターへの熱転写層(通常は有機材料)の移行を可能にするために充分な熱に変換する。ドナーは次に高精度レーザー露光システムからのレーザービームで(画像毎のパターンで)露光され、これがLTHC層によって吸収される。これが、ドナーから熱転写層を引き離すと共に、その熱転写層のレセプターへの接着をもたらす。全ての所望する材料の転写が完了した後、そのドナーはレセプター界面から引きはがされる。このようにして、ドナーの露光された領域のみがレセプターへ材料を移す。しかし、同様の方法及び原理を用いるその他のLITI法が存在することができ、上記記載は限定することを意味しないことが理解されるべきである。
【0068】
LITI法のさらなる例及び詳細は以下の文献に記載されており、そのそれぞれを、その全体を且つ全ての目的について、参照により本明細書に援用する。
ST Lee, JY Lee, MH Kim, MC Suh, TM Kang, YJ Choi, JY Park, JH Kwon, HK Chung, “A New Patterning Method for Full-Color Polymer Light-Emitting Devices: Laser Induced Thermal Imaging (LITI)”, Proceeding of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 33: (suppl2), Boston, 2002, pp 784-787。
ST Lee, BD Chin, MH Kim, TM Kang, MW Song, JH Lee, HD Kim, HK Chung, MB Wolk, E Bellman, JP Baetzold, S Lamansky, V Savvateev, TR Hoffend JS Staral, RR Roberts, Y. Li, A novel patterning method for full-color organic light-emitting devices: laser-induced thermal imaging (LITI). Proceeding of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 35:(suppl2), Seattle, 2004, pp 1008-1011。
【0069】
LIPS法は、ドナー及びアクセプターが最初に真空中で一緒に押圧され、クランピング機構で固定される点を除いてLITI法と類似しうる。ドナー、レセプター、及びクランピング機構は次に真空から取り出される(且ついずれかの基板にかかる大気圧によって一緒に保持される)とともに、画素(ピクセル)間のギャップはピクセル画定層(pixel defined layer, PDL)の高さによって保たれうる。レーザーを次に用いてドナーの所望の部分を加熱し(例えば、ドナー材料を有するガラス基板)、ドナー材料が真空昇華によってレセプターに転写される。LIPS法の例は以下の文献に記載されており、その全体を全ての目的のために本明細書に援用する。
T Hirano, K Matsuda, K Kohinata, K Hanawa, T Matsumi, E Matsuda, T Ishibashi, A Yoshida, T Sasaoka, “Novel Laser Transfer Technology for Manufacturing Large-Sized Displays”, Proceedings of the Society for Information Display, Digest of Technical Papers 38:(suppl2), Long Beach, 2007, pp 1592-1595。
【0070】
LITI及びLIPS法は、特に電気的に活性な性質を有する材料の堆積について、通常は理想に及ばなくさせるというある欠点をもっている。例えば、LITI法においては、ドナーフィルムと任意の発光層との間の接触はデバイスを劣化させるおそれがあり;転写された層の界面はラミネーション工程によって形成され、それが電気的接点を乱す可能性もあり;且つ、この方法は粒子による汚染に非常に敏感であり、これが電気的接点を乱すおそれがある(これはドナーと基板との間に真空を作ることによって、LIPS法によって低減されうるが)。両方の堆積法とも、非常に高い電力密度エネルギーの適用を必要とする。そのような適用は、材料の熱分解を引き起こし、あるいは堆積される材料の熱特性に追加の制約条件を求める(例えば、Tg、昇華温度範囲など)。これらの制約条件は、電気的に活性な部材に用いることができる材料の選択を制限する。
【0071】
しかし、LITI及びLIPS法がこれまでに堆積させるために用いられてきた有機層の堆積とは異なり、キャッピング層材料はOLEDデバイス中の電気的に活性な成分ではない。本発明者はそれに関して、LITI法に通常関連する懸念事項及び厄介な問題並びに寿命の観点からの有害な影響が、追加のキャッピング層の厚さ及び材料を堆積させるためにこの方法を用いた場合には低減されることに気付いた。さらに、いくつかの態様では、LITI法はグローブボックス又は空気中で行うことができる可能性もある。そのような方法は、各OLEDのために最適化されたキャッピング層を堆積させることに対してFMM/VTEアプローチよりもずっと低コストでありうる。例えば、LITI及びLIPSは、いずれもマスクの使用を必要とせず、設計が変更された場合であっても設備を一新する必要がないので、それらを非常に融通の利くものにする。さらに、レーザー堆積法の使用は非常に正確であることができ、材料を堆積させるためのマスクの位置合わせを必要としない。さらに、以下で議論するように、キャッピング層がFMMを通してVTEによって堆積されない場合、それはライン外で行うことができ(すなわち、ライン内(インライン)での製造方法からの分離)、それによって製造工程を簡略化することができる。これは部分的には、製造及び堆積条件(例えば、熱)に対してしばしば耐性の低い有機材料を含む基板上に材料が直接堆積されないことによる。
【0072】
例えば、いくつかの態様では、一つのキャッピング層又は複数のキャッピング層が有機デバイス上に直接堆積されないことができる。その代わりに、キャッピング層材料が第二の基板上、例えばディスプレイのカバーガラスに堆積されうる。いくつかの態様では、RGBディスプレイに対して、これは赤色OLEDのみを最適化するためのキャッピング層材料であることができる。このパターン形成は、フォトリソグラフィー、LITI、LIPS、スタンピング法(捺印法)、又はインクジェット印刷法、を含めた様々な堆積方法を使用して行うことができ、なぜなら、キャッピング層はデバイス中の電気的に活性な成分ではなく、そのために堆積時の劣化についての懸念が低減されるからである。RGBディスプレイの例について続けると、赤色用キャッピング層材料は、ディスプレイ裏板上の対応する赤色サブピクセルパターンと位置合わせされうるようにして堆積させることができる。カバーガラスと裏板が次に一緒に合わせられる(即ち、結合される)ときに、赤色用キャッピング層は赤色サブピクセル上の共通のキャッピング層(これはいくつかの態様ではブランケット層として、例えば、FMMを通さないで堆積されることができる)と光学的に結合されて、その共通のキャッピング層と赤色用キャッピング層がその赤色サブピクセルと光学的に結合されることを可能にする。
【0073】
一般に、青色ピクセル(青色画素)はその最適化されたキャッピング層のための通常の候補であるので(すなわち、単一の均一なキャッピング層のみを備えている場合は)、いくつかの態様では、赤色ピクセル(赤色画素)は効率に関して通常は最も不利な色である。したがって、いくつかの態様では、上述した製造方法については、(青色のあとで)最も重要な色は、最適化の観点からは赤色ピクセルでありうる。したがって、製造方法を簡略化するために、赤色サブピクセルにのみ追加のキャッピング材料を適用しながら(既に共通キャッピング層があることを仮定してすれば、すなわち、キャッピング層が複数のOLEDに共通であり、それが青色OLEDを最適化するように設計されていることを仮定してみれば)、デバイスの性能の向上を達成することも可能である。したがって、そのような態様においては、2種の異なるキャッピング層のみが存在しうる。すなわち、全てのOLED(すなわち、赤、青、及び緑色のOLED)に対して共通する第一のキャッピング層と、赤色OLEDのみに光学的に結合された第二のキャッピング層である。しかし、上述したように、態様はそのように限定されるものではなく、これは単に説明の目的のためだけである。
【0074】
[方法の態様の例]
以下に、デバイスの態様の例、及びデバイスの製造の方法の例を説明し、デバイスは有機デバイスと異なる複数の(即ち共通ではない)キャッピング層を含む。これらの態様は説明の目的のみのために説明し、したがって限定することを意図していない。この開示を読んだ後で、当業者には、以下に記載した様々な構成要素が特定の態様において組み合わせられ又は省略される一方で、なお記載した原理を実施しうることが明らかであろう。
【0075】
さらに、本明細書に示した議論が様々な態様のデバイス、及びそのようなデバイスを製造する方法を開示しており、そのデバイスは通常は非共通キャッピング層(単一又は複数の層)を含んでおり、但しその非共通キャッピング層(単一又は複数の層)が堆積された特定の方法が求められないと同時に、その非共通キャッピング層はFMMを通して堆積されないことが一般的には好ましいということが理解されるべきである。そのような好ましい堆積法は、その他の方法、例えば、LIPS、LITIを用いること、あるいは第二の基板上への堆積及び位置合わせ(以下に説明するとおり)を含みうる。したがって、以下の開示は、任意の公知の方法を用いて堆積されたキャッピング層を含む様々な態様として理解されるべきであるが、それだけでなく、それらのデバイスと同じ特徴を含む態様をも含み、しかし好ましくはFMMの使用によって堆積されたのではない非共通キャッピング層(単一又は複数層)を含むことが好ましい態様としても理解されるべきである。
【0076】
非共通キャッピング層を有する有機デバイスの製造方法を提供する。第一の方法は、第一の基板上に複数のOLEDをもたらす工程を含む。「もたらす工程」は、配置された所望の数及び所望のタイプの有機デバイスをその上に有する基板を得るための任意の公知の方法を含むことができる。これには、例として、上述した方法を含めた任意の公知の方法を用いて基板上にOLEDを堆積させることが含まれる。さらに、実施態様には、その上に堆積されたいくつか又は全てのOLED(あるいはその構成部分)を既に有する基板を購入し、あるいは得ることも含まれる。構成部分のうちのいくらかしか基板上に備えていない場合には、「もたらす工程」は基板上のOLEDの構成部分を完成させること(例えば、追加の物質の層を堆積させることによる)を含むことも考えられる。
【0077】
複数のOLEDのそれぞれは、光透過性のトップ電極(上面電極)を含む。すなわち、トップ電極は、透明、半透明(semi-transparent, translucent)であってよく、それにより光がトップ電極を通って伝播しうる。いくつかの実施態様では、OLEDは透明OLED又は上面発光(トップ発光)OLEDであることができる。トップ発光OLEDはアクティブマトリクス用にしばしばより適しており、なぜなら、例えば、それらは不透明なトランジスタ背板とより容易に一体化されうるからである。これはしばしばディスプレイの場合である。
【0078】
複数のOLEDは、OLEDの第一の部分とその第一の部分とは異なる、OLEDの第二の部分とを含む。すなわち、第一の部分を構成するOLEDは、第二の部分を構成するOLEDと分かれており且つ区別され、それによりこれら2つの指定(designations)の間に重なりはない。いくつかの実施態様では、その第一の部分は、単一の色を発するOLEDのみからなることがきる。いくつかの実施態様では、OLEDの第一の部分及び第二の部分は、単一の色を発する複数のOLEDの間にいかなる重なりも含まない。すなわち、例えば、赤色OLEDは、複数のOLEDの第一の部分及び第二の部分の両方には含まれない。
【0079】
第一の方法は、少なくともその複数のOLEDの第一の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させて、その第一のキャッピング層が少なくともその複数のOLEDの第一の部分と光学的に結合されることをさらに含む。上述したとおり、キャッピング層は、ボトム電極の透明な導体及び反射力によって作り出される吸収及び干渉による損失を低下させるために、トップ発光型有機デバイスにおいてしばしば用いられる。キャッピング層は任意の適切な物質を含んでいてよく、誘電性物質を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、キャッピング層は好ましくはAlqである。第一のキャッピング層は任意の好適な方法を用いて堆積されることができ、それには上述した方法が含まれる。
【0080】
第一の方法は、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に第二のキャッピング層を堆積させて、その第二のキャッピング層を複数のOLEDのその第二の部分に光学的に結合させるが、その複数のOLEDの第一の部分には光学的に結合させない工程を含む。すなわち、いくつかの実施態様では、第二のキャッピング層はそれが複数のOLEDの第二の部分の上に配置されるように堆積されるが、第一の部分には堆積されずに、それによって複数のOLEDの第一の部分と第二の部分の上の全キャッピング層の光学的厚さが異なることができる。上で定義したように、全キャッピング層とは、OLEDの上に配置されたキャッピング層のそれぞれの組み合わせをいうことができ、例えば、第一及び第二のキャッピング層が両方とも複数のOLEDの第二の部分と光学的に結合されている場合には、その全キャッピング層は第一と第二のキャッピング層を合わせたものである。このことは、図3及び5〜9に示される様々な実施態様に図示されており、これについては以下に説明する。好ましくは、第二のキャッピング層は、上に記したように、FMMを用いない方法を使用して堆積され、それは記載した理由による。
【0081】
上述した第一の方法及び得られるデバイスは、現在のデバイスに対して利点を備えていることができる。例えば、第一及び第二のキャッピング層を備えることによって、デバイスは少なくとも2種の異なる色を発するOLEDからの発光を最適化しうる。例えば、現在のデバイス(例えば、OLEDを含むディスプレイ)は、各デバイスからの発光の波長にかかわらず、全ての有機デバイスを通じて共通する単一のキャッピング層を用いているだけである。その結果は、一つの色を有する光を発するOLEDは最適化されうる一方で、その他の有機デバイスは、最大の効率をもたらすように有効に光取り出し(アウトカップリング)されない。異なる発光への光学的厚さの影響は上で論じており、特に、H. Rielら, “Phosphorescent Top-Emitting Organic Light-Emitting Devices With Improved Light Outcoupling”, 及び“Tuning the Emission Characteristics of Top-Emitting Organic Light-Emitting Devices By Means of a Dielectric Capping Layer: An Experimental and Theoretical Study”に論じられている。さらに、異なる波長の発光(すなわち、異なる光学的厚さを有する)に対して最適化された複数のキャッピング層を有することによる有効性が、試験的なシミュレーションの部において以下に実証されている。
【0082】
いくつかの実施態様では、複数のOLEDが基板上に備えられており、それぞれがそのOLEDの第一及び第二の部分と光学的に結合されているように第一及び第二のキャッピング層が堆積される上述した第一の方法においては、第二のキャッピング層は、パターン形成されたマスク又は、好ましくは、FMMを通して堆積されない。上述したように、FMMを用いた追加の堆積工程は、有機デバイスを製造するための費用と時間を大きくしうる。代替法を用いることによって、以下で論じるように、実施態様は、より費用対効果に優れ、より柔軟性があり、且つ時間的効率により優れた方法を提供しうる。さらに、これらの代替の堆積法は、トップ発光(上面発光)デバイスに対してキャッピング層を適用するために用いられてきていない(異なる光学的厚さを有する非共通キャッピング層については言うまでもない)。本発明者は、そのような手法は、電気的に活性な化合物を堆積させる場合にはその手法を理想よりも劣るものにしうる一方、キャッピング層に関してはそれらの欠点のいくらか又は全てが存在せず、なぜなら、キャッピング層は電気的に活性(それらは誘電性物質を含みうる)ではないからである。この点で、いくつかの実施態様では、第二のキャッピング層が以下の少なくとも一つを用いて堆積される:レーザー誘起熱画像形成法(Laser Induced thermal imaging、LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(Laser induced pattern-wise sublimation, LIPS)。これらの例示の堆積法は非常に高い電力密度エネルギーの適用を必要する可能性があり、且つそれによってその物質の熱分解を引きおこすおそれがあるか又はそれらを電気的に活性な成分を堆積させるためには好ましくないものにする(上述した)熱特性上の追加の制約が必要とされる一方で、これらと同じ欠点は、電気的に不活性な層に適用する場合には小さくなる。しかし、同じ実施態様においては、FMM又は同様の方法の使用を含まない任意の堆積方法を用いることができる。
【0083】
いくつかの実施態様では、上述した第一の方法は、複数のOLEDのうちの少なくとも第二の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させて、その第一のキャッピング層がその複数のOLEDのその第二の部分と光学的に結合される工程をさらに含む。これは図3及び7〜9に示した例示態様に図示されている。例えば、いくつかの態様では、第一のキャッピング層は異なる色(複数)で光を発するOLED(複数)と光学的に結合されることができる一方で、第二のキャッピング層は単一の色の光を発するOLEDと光学的に結合されていることができる。しかし、実施態様はそのようには限定されない。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、第二のキャッピング層が光学的に結合されていない少なくとも一色のOLEDと光学的に結合されている。例えば、いくつかの実施態様では、第一のキャッピング層は複数の、青、緑、及び赤のOLEDと光学的に結合されているが、第二のキャッピング層は複数の赤又は緑(あるいはその両方)のOLEDにのみ光学的に結合されていることができる。
【0084】
これと関連して、いくつかの態様では、第一のキャッピング層は全体的な層(ブランケット層)を含んでいることができる。すなわち、第一のキャッピング層は、デバイスの基板の上の全てあるいは実質的に全てのOLED(複数)の上に配置されるように堆積され、それがOLED(複数)のそれぞれに共通であるようにされることができる。これは、第一のキャッピング層がFMMあるいはその他の費用がかかる及び/又は複雑な堆積方法を通して堆積される必要がないという利点を有しうる。第一のキャッピング層の光学的厚さは、特定の色の光を発するOLEDを最適化するように選択することができる。いくつかの態様では、第一のキャッピング層の光学的厚さは、OLEDの発光色の少なくとも一つを最適化する最も薄い厚さに対応するように選択することができる。このように、追加のキャッピング層を第一のキャッピング層の上に配置して、異なる色を有するOLED(複数)に光学的に結合されているキャッピング層全体(全キャッピング層)もまた最適化されているようにすることができる(すなわち、光学的厚さは、特定の波長を有する発光に対して最適化されている)。
【0085】
いくつかの態様では、第一のキャッピング層は複数のOLEDの第二の部分の上には堆積されずに、第一のキャッピング層はその複数のOLEDのその第二の部分とは光学的に結合されていない。これの例示態様は図4に示しており、それにより、光学層(複数)のいずれも、異なる色のOLED(複数)を通して共通していない。いくつかの態様では、上述した第一の方法においては、複数のOLEDは透明なOLEDであり及び/又は上面発光(トップ発光)OLEDである。ここでもまた、上面発光(トップ発光)OLEDは、特定の実施、例えば、ディスプレイのために、より適していることができる。
【0086】
いくつかの態様では、上述した第一の方法においては、第一のキャッピング層は複数のOLEDの第一の部分全体に一定の第一の全光学経路(total optical path)を有し、第二のキャッピング層は複数のOLEDの第二の部分全体に一定の第二の全光学経路を含むことができ、且つその第一の全光学経路と第二の光学経路は異なる。これは、複数のOLEDが異なる波長の光を発するOLED(複数)を含むときのいくつかの態様における場合であることができ、その結果、OLED(複数)の効率を最大にする光学的厚さも異なる。したがって、2つの異なる光学的厚さを備えた態様は、2種の異なる色のOLEDを最大限にしうる。
【0087】
いくつかの態様では、複数のOLEDが基板上に備えられ、且つ第一及び第二のキャッピング層が、それぞれ、そのOLED(複数)の第一及び第二の部分と光学的に結合されるように堆積される上述した第一の方法においては、その第二のキャッピング層を堆積させる工程は、第二の基板の一部の上に第二のキャッピング層を堆積させ、且つその第二のキャッピング層を複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に配置させることを含むことができる。これは図8及び9に示しており、以下でより詳細に説明する。実施態様は、任意の公知の方法を使用した堆積を許容し、例えば、以下のうちの少なくとも1つを用いる方法である:フォトリソグラフィー、LITI、LIPS、捺印(スタンピング)、又はインクジェット印刷。第二の基板の上に第二のキャッピング層を堆積させることは、OLEDの上に直接キャッピング層を堆積させること(例えば、そのOLEDと同じ基板の上に直接キャッピング層を堆積させること)と比較して、より安価で且つより複雑ではなく、なぜなら、例えば、第二の基板の上への堆積は有機物質(これはその他の堆積及び製造工程によるダメージに比較的敏感でありうる)にダメージを与えるおそれなく行うことができるからである。さらに、もしも製造上の誤りがこの堆積工程で生じても、それはそれほど費用がかかることにはならず、なぜなら、その第二の基板の上に配置された他のOLED材料は存在しないからである。
【0088】
第二のキャッピング層が第二の基板上に配置される例示態様について続けると、いくつかの態様では、第二の基板の一部の上に第二のキャッピング層を堆積させてその第二の基板が第一の基板と結合される場合には、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の上に第二のキャッピング層を配置させる工程は、その第二のキャッピング層が複数のOLEDの少なくともその第二の部分を覆うようにする工程を含む。すなわち、例えば、第一及び第二の基板が結合される場合に、第二のキャッピング層は複数のOLEDの第二の部分と光学的に結合されることができる。このように、デバイス(例えば、ディスプレイ)は、異なる波長の発光を有するOLED(複数)をそれぞれ最適化する異なる光学的厚さ(複数)を有する複数のキャッピング層を含むことができ、それとともに第一のキャッピング層及び/又はそのOLEDの上の第二のキャッピング層の直接の堆積を必要としない。さらに、いくつかの態様では、第一の基板が第二の基板と結合される場合に、第一のキャッピング層が第二のキャッピング層と光学的に結合される。これは、例えば、第一のキャッピング層が、異なる色(複数)の光を発する複数のOLEDに共通するときの場合でありうる。
【0089】
第二のキャッピング層が第二の基板上に堆積される例示態様について続けると、いくつかの態様では、第二の基板はディスプレイカバー(display cover)である。さらに、そのような態様では、第一及び第二の基板を結合させることは、有機デバイスを密閉するために役立つことができる。これに関して、OLED中の物質は、空気及び水分に対して敏感であり、それらがそのような大気条件に曝される場合には、その有機物質の分解及び/又はその分子内の励起状態の消光をもたらしうる。このように第二の基板(これはガラスを含んでいてもよい)を用いることは、したがって、複数の目的に役立つことができる。
【0090】
いくつかの態様では、複数のOLEDが基板上に備えられ、且つ第一及び第二のキャッピング層がそれぞれそのOLEDの第一及び第二の部分と光学的に結合されるように堆積される上述した第一の方法において、その第一のキャッピング層を堆積させる工程は、FMM及びVTEのいずれか一つ又はその組み合わせを含んでいてよい。これは、第一のキャッピング層が、第一の基板上のOLEDデバイスの全て、又は実質的に全てには共通ではない場合でありうる。いくつかの態様では、キャッピング層のいずれも、FMM及びVTEのいずれか一つ又はその組み合わせによって堆積されない。例えば、いくつかの態様では、全てのキャッピング層は、LITI又はLISP法を用いて堆積されることができ、これは従来の堆積法に対し、上述した利点をもたらす。このように、実施態様は、FMMを用いない利点をもたらし、FMMの使用はOLED製造に複雑さを付与する可能性があり、また、マスクの変形などのエラーの様々な原因をももたらす。
【0091】
いくつかの態様では、複数のOLEDが基板上に備えられ、且つ第一及び第二のキャッピング層が、それぞれそのOLEDの第一及び第二の部分と光学的に結合されるように堆積される第一の方法において、その複数のOLEDは、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含むことができる。これは、ほとんどのディスプレイ(及び光パネル)の場合であって、なぜなら、ほとんどの色は、白色光も含めて、赤、緑、及び青の光の組み合わせを用いて再現されうるからである。さらに、その複数のOLEDの第一及び第二の部分はそれぞれが、特定の色のOLEDを含むことができ、いくつかの態様では、それらに重なりはない。例えば、いくつかの態様では、その複数のOLEDの第一の部分は、複数の青色OLEDを含むことができ、及び/又はその複数のOLEDの第二の部分は複数の緑色OLED及び複数の赤色OLEDだけを含むことができる。その結果、いくつかの態様では、第一のキャッピング層(これは複数のOLEDの第一の部分、すなわち、青色OLEDと光学的に結合される)は、第二のキャッピング層(これは複数のOLEDの第二の部分、すなわち、緑色及び赤色OLEDと光学的に結合される)とは異なることができることになる。この場合、その第一のキャッピング層をその青色スペクトルの発光に対して最適化させ(なぜなら、第一のキャッピング層は青色OLEDのみに対して最適化させられることができる)、その一方で同時に、第二のキャッピング層を赤色又は緑色OLEDのいずれかに対して最適化させることができる(あるいは、その第二のキャッピング層は、それぞれのデバイスに対する最適な光学的厚さの間の妥協点である光学的厚さを有していてもよい)。さらに、いくつかの態様では、複数のOLEDの第二の部分は、複数の赤色OLED又は複数の緑色OLEDのみを含む。第二のキャッピング層は、その結果、その緑色又は赤色OLEDの発光のいずれかに対して最適化されうる。
【0092】
いくつかの態様では、複数のOLEDが基板上に備えられ、第一及び第二のキャッピング層がそれぞれそのOLEDの第一及び第二の部分と光学的に結合されるように堆積され、且つ、その複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含む上述した第一の方法において、その複数のOLEDはその第一及び第二の部分とは異なる、OLEDの第三の部分をも含むことができる。この方法は、複数のOLEDの少なくともその第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含むことができる。第三のキャッピング層の追加は、3つの異なる色の発光(例えば、赤、青、及び緑)を有するOLEDの発光の最適化を可能にしうる。キャッピング層の2つの堆積のみを用いて3つの異なる光学的厚さを得ることは可能であるが、3つの堆積工程を用いることがより実際的でありうる(なぜなら、異なるOLEDの色からの発光をそれぞれ最適にする3つの異なる厚さをもたらすことは困難である可能性があるからである)。そのような構成の例示態様は図3〜7及び9に示されており、以下により詳細に説明する。いくつかの態様では、第三のキャッピング層は、複数のOLEDの第一の部分及び第二の部分とは光学的に結合されていない。すなわち、第三のキャッピング層は、デバイスのOLEDの全て又は実質的に全てに共通でなくてよい(すなわち、それはブランケット層でなくてよい)。さらに、その他のOLEDの全てに共通ではないキャッピング層を備えていることによって、実施態様は、デバイスのOLEDの特定のサブセットに対して(例えば、発光の色に基づいて)最適化されていることができる非共通キャッピング層を備えていることができる。いくつかの態様では、第三のキャッピング層は、複数のOLEDの第一の部分又は第二の部分とは光学的に結合されていない。これは、第三のキャッピング層に対して唯一の光学的厚さ(あるいは、複数のOLEDの第三の部分と光学的に連絡をしている全キャッピング層に対する唯一の光学的厚さ)を規定することができるが、それは第一及び第二のキャッピング層が、OLEDの第三の部分並びに第一及び/又は第二の部分のいずれかに対して共通である態様においてもである(例えば、以下に論じる図7を参照されたい)。いくつかの態様では、第三のキャッピング層は、パターン形成されたマスク、好ましくは、FMMを通しては堆積されない。ここでも、上で説明したように、FMMを通しての堆積、あるいはその他の従来の堆積法は、例えば、複数の非共通キャッピング層をもたらす場合に、費用的にひどく高くなりうる。したがって、第二のキャッピング層と同様に、本発明者は、これらの代替法、例えば、以下のうちの少なくとも1つを用いて第三のキャッピング層を堆積させることの利点を認識している:レーザー誘起熱画像形成法(LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(LIPS)。上で言及したように、本明細書に記載した態様及び特徴は、デバイスを製造する方法と、及びデバイスそれ自体と組み合わせ及びそれらとともに利用することができ、それらのデバイスはそのような代替堆積法を用いて(すなわち、FMMの使用を通さずに)堆積される非共通キャッピング層を含むものである。
【0093】
複数のOLEDが複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる、OLEDの第三の部分をも含み、且つ前記の第一の方法が、複数のOLEDの少なくとも第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分と光学的に結合される工程をさらに含む例示態様について続けると、その第三のキャッピング層を堆積させる工程は、第二の基板の一部の上に第三のキャッピング層を堆積させ、複数のOLEDの第三の部分の上にその第三のキャッピング層を配置する工程を含みうる。この方法は、第二のキャッピング層のための同様の堆積法に関して上で論じた。第一及び第二のキャッピング層の両方ともそのような方法で堆積されている例示態様は図9に示されており、これは以下でより詳細に説明する。第三のキャピング層は、例えば以下のものの少なくとも1つを用いて第二の基板の上に堆積されることができる:フォトリソグラフィー、LITI、LIPS、捺印(スタンピング)、又はインクジェット印刷。上で説明したように、キャッピング層(一つ又は複数)が第二の基板上に堆積される態様は、堆積法におけるより多くの選択肢、典型的には、費用の低減、そして通常は、間違いに対するより大きな許容性を可能にし、なぜなら、基板はそのような工程に対してしばしば敏感になりうる有機物質を含まないからである。いくつかの態様では、第三のキャッピング層はOLEDの第三の部分に位置合わせされることができ、それはその第三のキャッピング層を第二の基板の一部の上に堆積させて、その第二の基板が第一の基板と結合された場合に、その第三のキャッピング層が複数のOLEDの第三の部分と光学的に結合されることによる。第一の基板が第二の基板に結合される場合に、第三のキャッピング層も第一のキャッピング層と光学的に結合されうる。これは、第一のキャッピング層がブランケット層であるか、又は複数のOLEDの第一及び第三の部分の両方に共通である態様の場合でありうる。そのような態様の非限定的な例を図9に示している。いくつかの態様では、第二の基板はディスプレイカバーであり、それは、その上に配置されたOLEDを有する基板と第二の基板が結合された場合にその有機デバイスを密封するように機能しうる。
【0094】
複数のOLEDが複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含み、その複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分をも含み、且つその方法が、その複数のOLEDの少なくともその第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合される上述した第一の方法について続けると、その複数のOLEDの第一、第二、及び第三の部分は、それぞれ、様々な異なる色のOLEDを含むことができる。例えば、いくつかの態様では、複数のOLEDの第三の部分は複数の赤色OLEDのみを含んでいてよく、複数のOLEDの第二の部分は複数の緑色OLEDのみを含んでいてよく、そして、複数のOLEDの第一の部分は複数の青色OLEDのみを含んでいてよい。このように、複数のOLEDのそれぞれ(すなわち、各色について)の上の全キャッピング層を最適化することができる。すなわち、複数のOLEDの第一の部分中の各OLEDの上の全キャッピング層は同じであってよく(且つその青色発光を最適化することができる)、その第二の部分の各OLEDの上の全キャッピング層は同じであってよく(且つその赤色発光を最適化することができる)、且つその第三の部分の各OLEDの上の全キャッピング層は同じであってよい(且つその緑色発光を最適化することができる)。いずれかの色のOLEDが、上述したように、複数のOLEDの第一、第二、及び第三の部分のそれぞれに含まれるようにすることができることが理解されるべきである。例えば、複数のOLEDの第三の部分は複数の緑色OLEDのみを含んでいてよく、複数のOLEDの第二の部分は複数の赤色OLEDのみを含んでいてよく、且つ複数のOLEDの第一の部分は複数の青色OLEDのみを含んでいてよい。したがって、実施態様は、OLEDの第一、第二、及び第三の部分の上の全キャッピング層が最適化されるように、第一、第二、及び第三のキャッピング層の任意の組み合わせを含むこともできる。
【0095】
いくつかの態様では、複数のOLEDが基板の上に備えられ、且つ第一及び第二のキャッピング層がそれぞれ、OLEDの第一及び第二の部分と光学的に結合されるように堆積され、且つ複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含む上述した第一の方法において、その第一のキャッピング層は、その複数の赤色OLED、緑色OLED、及び青色OLEDの少なくとも1つに対して最適化されている厚さを有することができる。すなわち、上述した第一のキャッピング層は、いずれかの追加のキャッピング層の必要なしに、デバイス中のOLEDのいずれかの発光を最適化する光学的厚さを有するように設計されることができる。しかし、いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、複数の青色OLEDに対して最適化された厚さを有することが好ましいだろう。これは、一つには、青色発光は、もっとも薄い厚さ(すなわち、最も薄い)のキャッピング層を用いることによって通常は最適化されるという事実による。第一のキャッピング層が、最も短い波長のOLEDに対して発光を最適化させる厚さを有することが好ましく、なぜなら、第一のキャッピング層は次にブランケット層となることができ、そうしてそれはそのデバイスのOLEDの全て又は実質的に全てに共通となるからである。第二及び第三のキャッピング層が次に第一のキャッピング層の上に配置されて、より長い波長を有する光を発するOLEDと光学的に結合されることができ、なぜなら、これらのデバイスのためのキャッピング層の光学的厚さは通常、より厚いからである。したがって、第一のキャッピング層は、複数のOLEDの第二及び第三の部分の上の全キャッピング層のために、第二及び第三のキャッピング層と共に用いることができる。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、約125nmよりも短い光学的厚さを有する。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は90〜130nmの範囲内である。この範囲は、通常、青色OLEDを最適化するための光学的厚さを含んでいる。
【0096】
一般に、例示の方法においてOLEDの発光を最適化させるためには、そのOLED(これは特定の波長の発光、すなわち色を有する)に光学的に結合されているキャッピング層(単一又は複数)の光学的厚さをそのOLEDの発光波長の約4分の1に設定することが好ましいだろう。その結果、これが干渉パターンを低減させ、発光の量に関しての最大を確立しうる。しかし、当業者に理解されるように、一つには電磁波の周期性により、選択しうる多くの光学的厚さがある。
【0097】
上記キャッピング層は多くの異なる特性を含みうる。例えば、第一のキャッピング層は、任意の適した物質を含むことができ、それは例えば、当技術分野でしばしば用いられ且つ公知のものであり、それにはAlqが含まれる。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、その第一のキャッピング層が光学的に結合されている各OLEDによって発せられる光の波長に概ね等しい波長を有する光に対して、実質的に透明である。キャッピング層は透明であり、それにより有機デバイスの発光の損失を低減させることが好ましい。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、概ね1〜2.5の範囲にある屈折率を有する。典型的には、屈折率が高ければ高いほど、キャッピング層には、より短い物理的な厚さしか必要とされない(なぜなら光学的厚さは、物理的な厚さと屈折率との積だからである)。しかし、屈折率の増加は、キャッピング層の境界での臨界角をも小さくし、追加のタイプの損失が持ち込まれうる。したがって、第一のキャッピング層は概ね1.5〜2の範囲にある屈折率を有することが好ましいだろう。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は、複数の緑色OLEDに対して、約5〜10%の範囲である効率損失をもたらす光学的厚さを有する。この損失は、青色発光OLEDに対して最適化されている光学的厚さを有する第一のキャッピング層によるものでありうる。同様に、第一のキャッピング層は、複数の赤色OLEDに対して、約25〜35%の範囲である効率損失をもたらす光学的厚さを有しうる。これは、この場合も、第一のキャッピング層が青色OLEDに対して最適化されている場合に典型的でありうる。
【0098】
さらに、いくつかの態様では、第二のキャッピング層は、複数の赤色OLED及び/又は複数の緑色OLEDに対して最適化されている厚さを有しうる。第二のキャッピング層が複数の緑色OLEDに対して最適化されている場合、それは概ね125〜160nmの範囲にある光学的厚さを有していてよく、この範囲はキャッピング層が緑色発光OLEDに対して最適化されている値の範囲である。いくつかの態様、例えば、別なキャッピング層(例えば、第一のキャッピング層)がOLEDの第二の部分と共通である場合には、この範囲は、複数のOLEDの第二の部分と光学的に連絡している全キャッピング層の光学的厚さに対応しうることに留意されたい。すなわち、この例示態様においては、第二のキャッピング層は、緑色OLEDのみを最適化するために必要な厚さよりも薄い光学的厚さを有しうるが、第一及び第二のキャッピング層が一緒に結合されたときには、その全体の光学的厚さが発光を最適化しうる。これは図3及び5〜9に図示している。第一のキャッピング層と同様に、第二のキャッピング層は任意の適した物質、例えば、Alqを含むことができる。この第二のキャッピング層は、その第二のキャッピング層が光学的に結合されている各OLEDによって発せられる光の波長と概略等しい波長を有する光に対して実質的に透明でもありうる。さらに、第一のキャッピング層と同様、いくつかの態様においては、第二のキャッピング層は概略1〜2.5の範囲にあり、好ましくは概略1.5〜2の範囲にある屈折率を有することができる。これは第一のキャッピング層に関連して上述した。
【0099】
複数のOLEDが第一及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをも含み、その方法が複数のOLEDの少なくともその第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、その第三のキャッピング層をその複数のOLEDの少なくともその第三の部分と光学的に結合させる工程を含むいくつかの態様では、その第三のキャッピング層は、OLEDの色のいずれかに対して最適化されている光学的厚さを有することができる。例えば、その光学的厚さは、複数の赤色OLED及び/又は複数の緑色OLEDに対して最適化されていることができる。これは、第一又は第二のキャッピング層が青色OLEDに対して最適化されている態様における場合でありうる。いくつかの態様では、第三のキャッピング層が、赤色OLEDに対して最適化されている光学的厚さを有する場合、その第三のキャッピング層は概略160〜200nmの範囲に入る厚さを有する。上述したように、第一又は第二のキャッピング層が複数のOLEDの第三の部分に対して共通である場合には、第三のキャッピング層は、その複数のOLEDのその第三の部分に対して光学的に結合されている全キャッピング層の合計の光学的厚さが最適化されるような光学的厚さを有することができる。第一及び第二のキャッピング層と同様に、第三のキャッピング層は任意の適した材料、例えば、Alqを含むことができる。第三のキャッピング層は、その第三のキャッピング層が光学的に結合されている各OLEDによって発せられる光の波長と概略等しい波長を有する光に対して実質的に透明であることができる。さらに、いくつかの態様では、第三のキャッピング層は概略1〜2.5の範囲、好ましくは概略1.5〜2の範囲にある屈折率を有することができる。
【0100】
上述したように、第一、第二、及び第三のキャッピング層はそれぞれが、発光色の一つを同時に最適化するように設計されうる。例えば、いくつかの態様では、第一のキャッピング層は複数の青色OLEDに対して最適化されている厚さを有し、第二のキャッピング層は複数の緑色OLEDに対して最適化されている厚さを有し、第三のキャッピング層は複数の赤色OLEDに対して最適化されている厚さを有する。そのような態様においては、デバイス全体として、より高い効率で作動することができ、なぜなら各色のOLEDからの発光も最適化されているからである。各キャッピング層はそれ自体は、OLEDを最適化するための全光学的厚さをそなえている必要はないが、OLEDと光学的に結合されているその他のキャッピング層と結合するように設計されうる。いくつかの態様では、第一のキャッピング層は概略90〜130nmの範囲にある光学的厚さを有し、第二のキャッピング層は概略125〜160nmの範囲にある光学的厚さを有し、且つ第三のキャッピング層は概略160〜200nmの範囲にある光学的厚さを有する。これは、それぞれ、青、緑、及び赤色OLEDを最適化するための光学的厚さに相当しうる。
【0101】
〔装置の例示態様〕
説明した例示の方法に加えて、ここには例示の装置の説明を示す。ここでも、上述したように、実施態様は説明の目的のみのためであり、限定することを意味していない。
【0102】
複数のOLEDを含み、各OLEDが、第一の電極、その第一の電極の上に配置された第二の電極、及びその第一及び第二の電極の間に配置された有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を有する第一の装置を提供する。いくつかの態様では、そのOLED(複数)は共通の基板の上に配置され、そこで発光が一緒に結合されうる(ディスプレイの中での場合)。この第一の装置は、複数のOLEDの少なくとも第一の部分の第二の電極の上に配置されている第一のキャッピング層をさらに含み、そうしてその第一のキャッピング層はその複数のOLEDの少なくともその第一の部分と光学的に結合されている。このように、第一のキャッピング層は複数のOLEDの少なくともその第一の部分の発光の効率を高めることができ、これは上述したとおりである。この第一の装置は、第二のキャッピング層も含む。この第二のキャッピング層は複数のOLEDの少なくとも第二の部分の第二の電極の上に配置されることができ、そうしてその第二のキャッピング層は複数のOLEDのその第二の部分と光学的に結合されているが、その複数のOLEDの第一の部分とは結合されていない。このように、複数のOLEDの第二の部分と光学的に結合されている全キャッピング層の光学的厚さ(これはその第二のキャッピング層のみ、あるいは別のキャッピング層との何らかの組み合わせを含むことができる)は、前記の第一の複数のOLEDと光学的に結合されているものとは異なりうる。これは、いくつかの態様においては、そのようなデバイス中の単一色のOLED以上に最適化する能力を備えうる。
【0103】
いくつかの態様では、上述した第一の装置中の第二のキャッピング層はFMMを通してあるいはVTEによって堆積されない。すなわち、上で詳細に説明したように、そのキャッピング層は、デバイス上にキャッピング層を配置するためにこれまで用いられていなかった代替の堆積法を使用して堆積されていることができる。いくつかの態様では、これらの方法には、LITI及びLIPSが含まれることができ、これらの方法は好ましく、なぜなら、キャッピング層は電気的に活性ではないからである。いくつかの態様では、複数のOLEDは、例えば、そのデバイスがディスプレイ又は照明装置を含む場合、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含む。さらに、いくつかの態様では、第一の装置の第二のキャッピング層は、複数の赤色OLED、緑色OLED、及び青色OLEDのうちの少なくとも1つの上には配置されない。このように、そのOLEDの少なくとも2つが、他のOLEDとは異なる光学的厚さを有する全キャッピング層と光学的に結合されているようにすることができる。このことが、そのOLEDの色の少なくとも2つの発光の最適化を可能にしうる。例えば、いくつかの態様では、第二のキャッピング層は複数の青色OLEDの上には配置されていない。これは、第一のキャッピング層が青色OLEDに対して最適化されている光学的厚さを有し、それにより、青色OLEDに対して光学的に結合された追加のキャッピング層は、最適化を達成するために必要ではないだろう。
【0104】
いくつかの態様では、複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含み、且つその複数のOLEDが、第一の及び第二の部分とは異なる第三の部分のOLEDをさらに含む上述した第一の装置においては、その装置はその複数のOLEDの少なくとも第三の部分の第二の電極の上に配置された第三のキャッピング層をさらに含み、それによりその第三のキャッピング層がその複数のOLEDの少なくとも第三の部分と光学的に結合される。上述したように、第三のキャッピング層の追加は、3つの別個のOLED発光色を最適化することをより容易に達成可能にすることができる。いくつかの態様においては、第三のキャッピング層は、複数のOLEDの第一又は第二の部分とは光学的に結合されていない。この態様の例は、以下に説明するように、図4に示されている。これは、各キャッピング層が、その他のキャッピング層の光学的効果を結合させる必要なしに、複数のOLEDの一つの部分の発光を最適化するように設計されることを可能にする。いくつかの態様では、第三のキャッピング層はFMM又はVTEを通して堆積されず、これは上述したのと同じ利点をもたらす。いくつかの態様では、第二のキャッピング層は複数の青色OLED又は複数の緑色OLEDとは光学的に結合されておらず、且つその第三のキャッピング層は複数の赤色OLED又は複数の青色OLEDと光学的に結合されていない。この態様の例は図4に示されており、これは以下に詳細に説明する。
【0105】
[図面の説明]
残りの図面をここでより詳細に説明する。図面は例示態様を表し、限定することを意味しない。図面の多くは上で参照し、それによって、示したように提示した説明に関連しうる。
【0106】
図3〜9に示した例示デバイスのそれぞれは、異なる色(例えば、それぞれ、赤、緑、及び青)を発する複数のOLED(310,311,及び312)を含み、それぞれが第一の電極321及び第二の電極322を有し、ここで第二の電極322はトップ電極(上面電極)である。OLED(複数)のそれぞれは第一の基板300の上に配置されている。第一の基板は、例えば、バックプレーン及び/又はTFT基板を含むことができる。残る特性は、各図に関連して詳細に説明する。
【0107】
図3は、第一のキャッピング層301、第二のキャッピング層302、及び第三のキャッピング層303を含む例示態様の側面を示す。示されているように、第一のキャッピング層301は各OLED310、311、及び312のトップ電極322の上に配置され、各有機デバイスと光学的に結合されている。したがって、第一のキャッピング層は、OLED310、311、及び312に共通である。これは、第一のキャッピング層301がブランケット層として配置されることを可能にするという利点を有し、且つそれによってFMM又はその他の方法による堆積を必要としないことができる。図示したように、第一のキャッピング層はOLED312(例えば、青色OLED)に対して最適化されている光学的厚さを有することができる。また、第一のキャッピング層301及びOLED310の両方に光学的に結合された第二のキャッピング層302、並びに第一のキャッピング層301及びOLED311に光学的に結合された第三のキャッピング層303も示されている。いくつかの態様では、第一のキャッピング層301と第二のキャッピング層302を合わせたキャッピング層が、OLED310を最適化する合計の光学的厚さを有することができる。同様に、いくつかの態様では、第一のキャッピング層301と第三のキャッピング層303を合わせたキャッピング層(全キャッピング層)が、OLED311を最適化する合計の光学的厚さを有しうる。したがって、図3に示したように、例示の態様は、OLED312を最適化する単一で共通のキャッピング層301と、異なる色の光を発することができるその他のOLEDを最大強度にするように第二のキャッピング層302及び第三のキャッピング層303とを含むことができる。このようにして、図3のデバイスは最適化されることができる。
【0108】
図4は、第一のキャッピング層401、第二のキャッピング層402、及び第三のキャッピング層403を含む例示態様の側面を示している。図3の例示デバイスとは異なり、第一のキャッピング層401は、複数のOLED310、311、及び312に共通していない。実際に、どのキャッピング層も、別のキャッピング層のいずれかと光学的に結合されているように示されておらず、どのキャッピング層も複数の異なる色のOLEDと共通ではない。この態様では、キャッピング層401、402、及び403のそれぞれは、OLED310、311、及び312のそれぞれを最適化する光学的厚さを有することができる。
【0109】
図5は、第一のキャッピング層501、第二のキャッピング層502、及び第三のキャッピング層503を含む例示態様の側面を示している。図示したように、キャッピング層501は全ての3つのOLEDに共通であり、且つキャッピング層502はOLED311及び312に共通である。キャッピング層503は、OLED312のみと光学的に結合されている。各キャッピング層501、502、及び503は、同じ光学的厚さを有するように示されている。しかし、図5中の各OLEDに対する全キャッピング層の合計の光学的厚さは、各デバイスの上のキャッピング層の堆積数の違いに基づいて異なっている。したがって、これらの態様では、同じ堆積法と材料を適用するものの、3つの異なるキャッピング層(異なる色のOLEDのそれぞれに対して1つずつ)を有することができる。同じ厚さを有する別の物質を適用することもできる。
【0110】
図6は、第一のキャッピング層601及び第二のキャッピング層602を含む例示態様の側面を示している。示したように、キャッピング層601はOLED310及び312の両方に対して共通であり、キャッピング層602はOLED311及び312に対して共通である。この態様は、2つのキャッピング層しか用いていないのに、3つの異なる全キャッピング層を含むデバイスを得ることが可能であることを明らかにしている。すなわち、OLED310はキャッピング層601を含む全キャッピング層を有しており、OLED311はキャッピング層602を含む全キャッピング層を有しており、且つOLED312はキャッピング層601及び602を含む全キャッピング層を有する。これらの態様は、そのキャッピング層を堆積させるために2つの堆積工程しか用いないという利点を有し、これは生産の時間及び費用を少なくすることができる。
【0111】
図7は、第一のキャッピング層701、第二のキャッピング層702、及び第三のキャッピング層703を含む例示態様の側面を示している。示したように、図7は図5とほとんど同じであり、ここではキャッピング層701は3つのOLED全てに共通であり、キャッピング層702はOLED311及び312に共通であり、且つキャッピング層703はOLED312のみと光学的に結合されている。しかし、図7は、キャッピング層が様々な物理的厚さからなる態様を示している。したがって、この態様は、大きな適用性をもたらし、それぞれのOLEDの発光を容易に最適化するという利点をもちうる。
【0112】
図8及び9は、キャッピング層が第二の基板830、例えばディスプレイパネルの上に堆積されており、これが次に第一の基板300と結合される例示態様を示している。図8に示すように、単一のキャッピング層802のみが第二の基板830上に配置されている。キャッピング層802は、基板300及び830が結合された場合に、OLED310の位置に合わせられる。したがって、OLED310は、共通のキャッピング層801及びキャッピング層802と光学的に結合される。OLED311及び312の両方とも、キャッピング層801と光学的に結合しているだけである。上述したように、これは、キャッピング層801が青色OLEDに対して最適化されている態様の場合でありうる。典型的には、そのような例示態様において、赤色OLED(例えば、図8のOLED310)は最も大きく効率が低下する。したがって、キャッピング層802を備えていることは、OLED310を補い又は最適化しうる。キャッピング層のいくつか又は全てを、そして任意の組み合わせで、第二の基板830上に堆積させることができ、それは図3〜7を参照して論じたとおりである。
【0113】
図9は図8に類似しており、ここではキャッピング層902及び903が第二の基板830上に配置されており、これが次に第一の基板300と位置合わせされて結合されうる。示したように、第一の基板300及び第二の基板830が結合される場合、キャッピング層901は3つのOLED全てに共通であり、キャッピング層902はOLED311及び312に共通であり、且つキャッピング層903はOLED312にのみ光学的に結合される。したがって、結果は、図5及び7のキャッピング層によってもたらされる全体での効果と同様である。
【0114】
同じ又は異なる光学特性を有するキャッピング層(複数)の多くの組み合わせが備えられて、複数の異なる色のOLEDデバイスのそれぞれと光学的に結合された様々な合計した光学厚さを得ることができると理解されるべきである。しかし、一般的な原理は、本明細書に開示したものと同じままであり、したがって、発明の態様の範囲内であると考えられる。
【0115】
〔シミュレーション結果−電力消費計算〕
【0116】
本発明者は、異なる色のOLEDのそれぞれに対して異なるキャッピング層を含む例示デバイスについてのシミュレーションも行っている。例示デバイスは以下の特性をもっていた:ディスプレイサイズは4インチ(対角長)であり、全てのパラメータは40%のピクセルが点灯した白色点に対して300cd/mの全ディスプレイ輝度について計算した。薄膜トランジスタ(TFT)は5.5Vの電圧を有し、OLEDはそれぞれが4Vの電圧をもっていた。照明パネルはまた適用された円偏光子をも有し、これが全パネル透過率を44%に減衰させた。OLEDの色のそれぞれに対する1931CIE座標は以下のとおりである:赤(0.67,0.32);緑(0.21,0.71),及び青(0.13,0.058)。このデバイスの一緒になった白色発光は、(0.29,0.30)のCIE座標をもっていた。
【0117】
下の表1は、上述した例示4インチディスプレイに対する電力消費についてのシミュレーションの結果を示しており、そのディスプレイは(1)異なるキャッピング層の光学的厚さを用いて別個に最適化された赤、緑、及び青のピクセルを有し、且つ(2)キャッピング層が青色ピクセルにのみ最適化されているが、赤、緑、及び青色ピクセルに共通である。赤色OLEDに光学的に結合されたキャッピング層は100nmのAlqからなり、170nmの光学的厚さを有していた。緑色OLEDに光学的に結合されたキャッピング層は80nmのAlqからなり、138nmの光学的厚さを有していた。青色OLEDと光学的に結合されたキャッピング層は70nmのAlqからなり、125nmの光学的厚さを有していた。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に見られるように、この例示デバイスからの発光は、それぞれに対して光学的に結合されているキャッピング層が最適化されている場合、赤色OLED(輝度の約43.75%の増加)及び緑色OLED(輝度の約11.54%の増加)に対して実質的に増大する。青色OLEDからの発光は、予想したように、同じままであり、なぜなら、これらのデバイスに光学的に結合されたキャッピング層は両方のシミュレーションで同じ光学的厚さをもっていたからである。それぞれのキャッピング層に対する最適化の結果として、このディスプレイの電力消費は、単一の最適化されたキャッピング層だけを有するデバイスと比較して0.043W(約14.33%)低下した。したがって、このシミュレーションは、OLEDの色のそれぞれに対して最適化されているキャッピング層を含むデバイスがより高い発光レベルを有しており、その結果、より低い電力消費を有することを裏付けている。この低減された電力消費及びそれに生じる効率の向上は、デバイスのより長い寿命をももたらしうる。例えば、典型的な赤色燐光OLED加速係数2を用いると、ケース1(すなわち、赤色OLEDが最適化されている場合)における赤色ピクセルの寿命は、同じ初期輝度に対して、ケース2(すなわち、最適化されていない)におけるデバイスよりも2.1倍長いことが予測できる。
【0120】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみの目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の精神から離れることなく、別の物質と構造で置換されることができる。請求項に係る本発明は、したがって、当業者に明らかであるように、本明細書に記載した特定の例及び好ましい態様からの変形を含むことができる。本発明が何故機能するかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板上に複数の有機発光デバイス(OLED)を備え付ける工程であって、各OLEDが透光性の上面電極を含み、前記の複数の有機発光デバイスがOLEDの第一の部分と、前記第一の部分とは異なる、OLEDの第二の部分とを含む工程;
複数のOLEDの少なくとも前記第一の部分の上に第一のキャッピング層を堆積させて、前記第一のキャッピング層を複数のOLEDの少なくとも前記第一の部分と光学的に結合させる工程;及び
複数のOLEDの少なくとも前記第二の部分の上に第二のキャッピング層を堆積させて、前記第二のキャッピング層を複数のOLEDの前記第二の部分と光学的に結合させるが、複数のOLEDの前記第一の部分とは光学的に結合させない工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記第二のキャッピング層が、ファインメタルマスク(FMM)を通して堆積されるのではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のOLEDの少なくとも前記第二の部分の上に前記第一のキャッピング層を堆積させて、前記第一のキャッピング層を複数のOLEDの前記第二の部分と光学的に結合させる工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のキャッピング層が、複数のOLEDの前記第二の部分の上に堆積されずに、前記第一のキャッピング層が複数のOLEDの前記第二の部分と光学的に結合されていない、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のキャッピング層が複数のOLEDの前記第一の部分全体に一定である第一の全光学経路を有しており;
前記第二のキャッピング層が複数のOLEDの前記第二の部分全体に一定である第二の全光学経路を有しており;且つ
前記第一の全光学経路と前記第二の全光学経路とが異なる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第二のキャッピング層を堆積させる工程が、レーザー誘起熱画像形成法(LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(LIPS)のうちの少なくとも一つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第二のキャッピング層を堆積させる工程が、第二の基板の一部の上に第二のキャッピング層を堆積させて、前記第二のキャッピング層を複数のOLEDの少なくとも前記第二の部分の上に配置させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の緑色OLED、及び複数の青色OLEDを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のOLEDが、前記第一及び第二の部分とは異なる、OLEDの第三の部分をさらに含み、且つ、複数のOLEDの少なくとも前記第三の部分の上に第三のキャッピング層を堆積させて、前記第三のキャッピング層を複数のOLEDの少なくとも前記第三の部分と光学的に結合させる工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第三のキャッピング層が、複数のOLEDの前記第一の部分及び前記第二の部分とは光学的に結合されていない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第三のキャッピング層が、複数のOLEDの前記第一の部分又は前記第二の部分とは光学的に結合されていない、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第三のキャッピング層がファインメタルマスクを通して堆積されない、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第三のキャッピング層を堆積させる工程が、レーザー誘起熱画像形成法(LITI)又はレーザー誘起パターン別昇華法(LIPS)のうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第三のキャッピング層を堆積させる工程が、第二の基板の一部の上に第三のキャッピング層を堆積させ、且つ前記第三のキャッピング層を複数のOLEDの前記第三の部分の上に配置させる工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第一のキャッピング層が前記複数の青色OLEDに対して最適化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のキャッピング層が、前記複数の赤色OLED及び/又は前記複数の緑色OLEDに対して最適化されている厚さを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第三のキャッピング層が、前記複数の赤色OLED及び/又は前記複数の緑色OLEDに対して最適化されている厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数のOLEDを含み、各OLEDが、
第一の電極;
前記第一の電極の上に配置された第二の電極;及び
前記第一及び第二の電極の間に配置された有機エレクトロルミネッセンス(EL)物質;
第一のキャッピング層(この第一のキャッピング層は、複数のOLEDの少なくとも第一の部分の第二の電極の上に配置されており、前記複数のOLEDの少なくとも前記第一の部分と光学的に結合されている);及び、
第二のキャッピング層(この第二のキャッピング層は、複数のOLEDの少なくとも第二の部分の第二の電極の上に配置されており、複数のOLEDの前記第二の部分とは光学的に結合されているが、複数のOLEDの前記第一の部分とは光学的に結合されていない)、
を含む装置。
【請求項19】
前記複数のOLEDが、複数の赤色OLED、複数の青色OLED、及び複数の緑色OLEDを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記複数のOLEDが、前記第一及び第二の部分とは異なるOLEDの第三の部分をさらに含み、さらに前記複数のOLEDの少なくとも前記第三の部分の第二の電極の上に配置された第三のキャッピング層を含み、前記第三のキャッピング層が前記複数のOLEDの少なくとも前記第三の部分と光学的に結合されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第二又は前記第三のキャッピング層が、ファインメタルマスク(FMM)を通して堆積されたものではない、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第二のキャッピング層が、前記複数の青色OLED又は前記複数の緑色OLEDとは光学的に結合されておらず、且つ前記第三のキャッピング層が前記複数の赤色OLED又は前記複数の青色OLEDとは光学的に結合されていない、請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8669(P2013−8669A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−136669(P2012−136669)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】