説明

有機フッ素化合物処理システム

【課題】被処理水中の有機フッ素化合物を低コストで無害化できる、有機フッ素化合物処理システム。
【解決手段】有機フッ素化合物処理システム2は、有機フッ素化合物を含む被処理水を濃縮する濃縮手段であるイオン交換処理装置300と、前記被処理水を前記濃縮手段で処理して得られた濃縮液を、超臨界状態として酸化処理する超臨界水酸化処理装置100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機フッ素化合物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸及びパーフルオロオクタン酸等の有機フッ素化合物は、写真感光剤、半導体の反射防止膜及びフォトレジスト作成等の様々な産業分野で用いられてきた。しかしこれら有機フッ素化合物は、安定性が高いことから、生態系内での分解が進まず、環境への残留性が問題となっており、有機フッ素化合物を分解処理して無害化することが望まれている。
【0003】
一般に、水中の汚染物質の分解処理方法として、フェントン試薬を用いる方法、オゾンを用いる方法、及び過酸化水素と紫外線を用いる方法等、酸化反応によって汚染物質を分解する方法がある。しかしながら、フェントン試薬を用いる方法では、鉄塩による汚泥が発生するという問題があった。また、オゾンを用いる方法、及び過酸化水素と紫外線を用いる方法等はいずれも分解能力が弱く、安定性の高い有機フッ素化合物を分解することは難しいという問題がある。
また、直接これらを焼却処理する方法がある。また、例えば汚染物質や有機化合物を処理する方法として、分解効率のよい超臨界水を用いる方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2003−6997号公報
【特許文献2】特開2006−175392号公報
【特許文献3】特開2003−245679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、工業廃水等に含まれる有機フッ素化合物は希薄である。このような廃水等を焼却処理する方法では、大量の燃料が必要であり、コストがかかるという問題がある。また、上述したいずれの方法であっても、大量に排出される工業廃水等に含有される、希薄な有機フッ素化合物を効率的に処理して無害化することは難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、被処理水中の有機フッ素化合物を低コストで無害化できる、有機フッ素化合物処理システムを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機フッ素化合物処理システムは、有機フッ素化合物を含む被処理水を濃縮する濃縮手段と、前記被処理水を前記濃縮手段で処理して得られた濃縮液を、超臨界状態として酸化処理する超臨界水酸化処理装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の有機フッ素化合物処理システムにおいて、前記濃縮手段は、イオン交換処理装置、合成吸着装置又は活性炭処理装置であることが好ましい。
本発明の有機フッ素化合物処理システムにおいて、前記濃縮手段は、電気透析装置、蒸発濃縮装置又は膜処理装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機フッ素化合物処理システムによれば、被処理水中の有機フッ素化合物を、低コストで効率的に無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の有機フッ素化合物処理システムについて例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
[第一の実施形態]
<有機フッ素化合物処理システム>
本発明の第二の実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第二の実施形態にかかる有機フッ素化合物処理システム2の模式図である。図1に示すように有機フッ素化合物処理システム2は、濃縮手段であるイオン交換処理装置300と超臨界水酸化処理装置100とが備えられている。
イオン交換処理装置300には、被処理水流入ライン15と、処理水流出ライン11と、濃縮液送液ライン12とが接続されている。被処理水流入ライン15には図示されない被処理水供給源と接続されている。
超臨界水酸化処理装置100には、前記濃縮液送液ライン12と、酸化剤流入ライン13と、排水・排気ライン14とが接続されている。酸化剤流入ライン13は図示されない酸化剤供給源と接続されている。
【0011】
(濃縮手段)
濃縮手段であるイオン交換処理装置300は、有機フッ素化合物を含有する被処理水Aを濃縮するための装置である。図1においてはイオン交換処理装置300にイオン交換塔311が備えられている。
イオン交換塔311には、被処理水流入ライン15と、処理水流出ライン11と、脱離溶媒流入ライン312と、濃縮液送液ライン12とが接続されている。脱離溶媒流入ライン312には図示されない脱離溶媒供給源と接続される。
尚、被処理水流入ライン15にはバルブ17aが取り付けられ、処理水流出ライン11にはバルブ17bが取り付けられ、脱離溶媒流入ライン312にはバルブ17cが取り付けられ、濃縮液送液ライン12にはバルブ17dが取り付けられている。
【0012】
イオン交換処理装置300に備えられているイオン交換塔311には、アニオン交換体を含むイオン交換体が充填されている。イオン交換塔311に充填するイオン交換体は、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等を用いることができる。この内、最も汎用的なイオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
アニオン交換体としては、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物を吸着できるものを選択でき、強塩基性アニオン交換体。弱塩基性アニオン交換体等を挙げることができる。アニオン交換体としては、例えばアニオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名、ローム・アンド・ハース社製)を挙げることができる。
【0014】
加えてアニオン交換体は、熱水により有機フッ素化合物を脱離できるものであればなお好ましい。一般に、アニオン交換体の脱離溶液には水酸化ナトリウム等のアルカリ性水溶液を用いるが、脱離後のアルカリ性の濃縮液による超臨界水酸化処理装置100の腐食が懸念される。従って、超臨界水酸化処理装置100の構成部材の材料選定、運転条件の緩和等をおこなう必要が生じる。また、濃縮液を中和する場合に、超臨界水酸化処理装置100内での塩の析出による閉塞の懸念がある。このため、熱水による有機フッ素化合物の脱離が可能なアニオン交換体を用いることが、装置設計の観点から好ましい。
【0015】
イオン交換塔311のイオン交換体の充填形態は特に制限されず、アニオン交換体を単独で充填した単床形態、カチオン交換体とアニオン交換体とを混合して充填した混床形態、カチオン交換体の充填層とアニオン交換体の充填層とを鉛直方向に積層した複床形態等を挙げることができる。中でも、被処理水A中の有機フッ素化合物を効率的に吸着できる観点から、アニオン交換体の単床形態が好ましい。なお、カチオン交換体とアニオン交換体との混床形態、または複床形態とする場合には、イオン交換塔311に充填するイオン交換体中、アニオン交換体の割合を50質量%以上100質量%未満とすることが好ましい。
【0016】
イオン交換塔311に充填するカチオン交換体は、被処理水Aにおける水質などを考慮して決定することができ、強酸性カチオン交換体、弱酸性カチオン交換体を挙げることができる。カチオン交換体としては、例えばカチオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名、ローム・アンド・ハース社製)を挙げることができる。
【0017】
(超臨界水酸化処理装置)
超臨界水酸化処理装置100は、濃縮手段で得られた濃縮液中の有機フッ素化合物を酸化分解し、無害化する装置である。本発明において無害化とは、有機フッ素化合物を分解して、フッ化物イオンと二酸化炭素と水とし、フッ化物イオンを単離させることである。
【0018】
超臨界水酸化処理装置の一例について図2を用いて説明する。
図2は超臨界水酸化処理装置100の模式図である。超臨界水酸化処理装置100には、ポンプ111a、ポンプ111b、反応器112、冷却機113及び減圧機114が備えられている。
ポンプ111aには、濃縮液送液ライン12と、配管124aとが接続されている。更に配管124aは反応器112と接続されている。
ポンプ111bには、酸化剤流入ライン13と、配管124bとが接続されている。更に配管124bは反応器112と接続されている。
反応器112と冷却機113とは、配管125で接続されている。冷却機113と減圧機114とは、配管126により接続されている。更に減圧機114には、排水・排気ライン14が接続されている。
【0019】
反応器112とは、耐熱性と耐圧性を備える容器の外周部に加熱用のヒーター等が設けられたもの(ベッセル型)が挙げられる。あるいは、円筒状の配管やコイル状のチューブの外周部に加熱用のヒーター等が設けられたもの(チューブ型)が挙げられる。尚、ベッセル型では被処理水量を増加させる場合に装置を大型化する必要がある。このため、大量の被処理水を効率的に処理する観点から、反応器112はチューブ型を用いることが好ましい。尚、反応器形状に関わらず反応熱で温度が上がる場合、必ずしも加熱用のヒーターは必要ない。
【0020】
冷却機113は、反応器112で超臨界状態とするために高温(374℃以上)にした超臨界水を任意の温度に冷却し、液体に出来るものであれば特に限定されず、公知の熱交換機等を用いることができる。
【0021】
減圧機114は、反応器112で超臨界状態とするために高圧(22MPa以上)にした超臨界水を任意の圧力に減圧できるものであれば特に限定されず、バルブ式、キャピラリー式等のものが用いられる。
【0022】
<有機フッ素化合物の処理方法>
有機フッ素化合物処理システム2を用いた、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物の処理方法について説明する。
まず、濃縮手段であるイオン交換処理装置300を用いて、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物を濃縮する(濃縮工程)。
次に、超臨界水酸化処理装置100を用いて、濃縮工程で得られた濃縮液を酸化分解して、濃縮液内に含有されている有機フッ素化合物を無害化する(酸化処理工程)。
【0023】
(濃縮工程)
まず、バルブ17a及びバルブ17bを開け、バルブ17c及びバルブ17dを閉じて、被処理水流入ライン15より有機フッ素化合物を含有する被処理水Aを送液し、イオン交換塔311に通液させてイオン交換塔311内のイオン交換体に有機フッ素化合物を吸着させる。尚、有機フッ素化合物をイオン交換体に吸着させた後の処理水は、処理水流出ライン11より排出する。
次に、バルブ17a及びバルブ17bを閉じ、バルブ17c及びバルブ17dを開けて、脱離溶媒流入ライン312より、イオン交換塔311に脱離溶媒を送り込み、イオン交換体に吸着させた有機フッ素化合物を脱離させる。そして、得られた脱離液を濃縮液とする。
【0024】
(酸化処理工程)
バルブ17a及びバルブ17bを閉じ、バルブ17c及びバルブ17dを開け、ポンプ111aを起動して、濃縮工程で得られた濃縮液を濃縮液送液ライン12から、超臨界水酸化処理装置100の反応器112に送る。
同時にポンプ111bを起動し、酸化剤を酸化剤流入ライン13から、超臨界水酸化処理装置100の反応器112に送る。
このとき、ポンプ111aでは加圧をしながら濃縮液を送液する。ポンプ111bでは、反応器112における超臨界水の任意の酸化剤濃度に応じて酸化剤の送液量を調節するとよい。
その後、反応器内の濃縮液を超臨界状態とし、有機フッ素化合物を酸化分解して、フッ化物イオン、二酸化炭素及び水等を含有する超臨界水を得る。
得られた超臨界水を、冷却機113及び減圧機114に通して、排水と排ガスに分離させ、排水・排気ライン14より放出する。
このとき、排水はフッ化物イオン、水等を含有し、排ガスは二酸化炭素などを含有する。
【0025】
(有機フッ素化合物の処理条件)
被処理水Aが含有する有機フッ素化合物としては、パーフルオロオクタンスルホン酸(以下、「PFOS」という。)の他、パーフルオロアルキルスルホン酸(以下、「PFAS」という。)及びパーフルオロオクタン酸(以下、「PFOA」という。)等が挙げられる。これらは、1種のみが含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0026】
イオン交換塔311通液させる被処理水Aの量は、被処理水Aが含有する有機フッ素化合物の濃度及びイオン交換体の保持能等によって決定するとよい。また、被処理水Aが含有する有機フッ素化合物の濃度も特に限定されないが、イオン交換体の保持能と濃縮液の濃度とを考慮して決定されることが好ましい。
【0027】
脱離溶媒としては、イオン交換体の種類に応じて決定することができ、例えば水酸化ナトリウム溶液、熱水等を用いることができる。
脱離溶媒に塩が含まれると超臨界水酸化処理装置100の反応器112内に塩が析出する可能性がある。従って、塩が析出しない熱水を用いることが特に好ましい。
尚、脱離溶媒として水酸化ナトリウム溶液を用いる場合は、有機フッ素化合物脱離後の濃縮液に含まれる水酸化ナトリウムの濃度を0.1〜10質量%とすることが好ましく、1〜5質量%とすることがより好ましい。水酸化ナトリウムの濃度が0.1質量%以上であれば充分に有機フッ素化合物を脱離することができる。一方、10質量%以下であれば、水酸化ナトリウムが過剰にならず効率的に脱離を行うことができるため経済的である。
【0028】
濃縮液においては、有機フッ素化合物の濃度が1μg/L〜100mg/Lであることがより好ましい。
濃縮液中の有機フッ素化合物の濃度が100mg/Lを超えると、腐食性が著しく高くなり、濃縮液によって超臨界水酸化処理装置100内の腐食の進行が著しくなる傾向にある。一方、1μg/L未満の場合、処理効率が落ちる傾向にある。
【0029】
酸化剤としては、過酸化水素、空気、酸素等を用いることができる。また、濃縮液の有機フッ素化合物濃度が薄い場合は、酸化剤を添加せず、濃縮液中の溶存酸素のみを用いて、反応させてもよい。
【0030】
酸化剤の添加量は、再生廃液中の有機フッ素化合物濃度や溶存酸素濃度を勘案して決定することができる。例えば、再生廃液中の酸化剤濃度は、再生廃液中の有機フッ素化合物が完全に二酸化炭素、水、フッ酸に酸化分解するのに必要な酸化剤量の1〜2倍とすることが好ましく、1〜1.5倍量とすることがより好ましい。
【0031】
反応器112内の温度は、374℃以上であり、400〜650℃であることがより好ましい。反応器112内の温度が374℃以上であれば、濃縮液を超臨界状態とし、有機フッ素化合物を分解することができ、650℃以下であれば反応器の材質選定が比較的容易となる。
また、反応器112内の圧力は、22MPa以上であり、22〜40MPaであることがより好ましく、22〜30MPaであることが特に好ましい。反応器112内の圧力が22MPa以上であれば濃縮液を超臨界状態とし、有機フッ素化合物を分解することができ、40MPa以下であれば比較的安価で装置をつくることが可能である。
また、反応器112における滞留時間は、反応器112内の圧力、温度及び濃縮液の濃度にもよるが、1秒〜60分であることが好ましい。反応時間が1秒以上であれば有機フッ素化合物を充分に分解することができ、60分以下であれば比較的安価で装置をつくることが可能である。
【0032】
上述したように、有機フッ素化合物処理システム2には、濃縮手段であるイオン交換処理装置300と超臨界水酸化処理装置100とが備えられている。
超臨界水酸化処理装置によれば、有機フッ素化合物を、フッ化物イオン、二酸化炭素及び水等に分解し無害化できる。この超臨界水酸化処理装置によって有機フッ素化合物を分解する方法は、従来の燃焼法に比べて、多くのエネルギー(燃料)を必要としないため、コスト削減が可能である。
また、工場などから排出される廃水等の被処理水中の有機フッ素化合物濃度、特にPFOS、PFAS、PFOAの濃度は低く、そのまま超臨界水酸化処理装置100にて酸化処理を施すと、水量付加が大きく、装置を拡大する必要があった。その一方、これらの有機フッ素化合物の濃度は、高くしすぎると有機フッ素化合物処理システム2を腐食するおそれがあった。しかしながら、本発明の濃縮手段を用い、好ましい濃度に有機フッ素化合物を濃縮すると、水量付加を最小限に抑えながら、反応器に負担をかけることなく、効率よく有機フッ素化合物を分解できる。
また、上述したような、本発明の有機フッ素化合物処理システムを用いた有機フッ素化合物の処理においては、処理水流出ライン11及び排水・排気ライン14より放出する、処理水及び排水の有機フッ素化合物濃度を、少なくとも0.1×10−3mg/L以下とすることが可能であり、環境残留性への影響を低減できる。
更に、この有機フッ素化合物処理システム2では、イオン交換体として、アニオン交換体を用いる場合、濃縮液から、より選択的に有機フッ素化合物を除去できる。
【0033】
[第二の実施形態]
<有機フッ素化合物処理システム>
本発明の第三の実施形態について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第三の実施形態にかかる有機フッ素化合物処理システム3の模式図である。図3に示すように有機フッ素化合物処理システム3は、濃縮手段である膜処理装置400と超臨界水酸化処理装置100とが備えられている。
膜処理装置400には、被処理水流入ライン15と、処理水流出ライン11と、濃縮液送液ライン12が接続されている。尚、処理水流出ライン11は膜処理装置400の、膜透過分側に設置されており、濃縮液送液ライン12は膜処理装置400の膜不透過分側に設置されている。また、被処理水流入ライン15には図示されない被処理水供給源が接続され、濃縮液送液ライン12には超臨界水酸化処理装置100が接続されている。
超臨界水酸化処理装置100には、前記濃縮液送液ライン12と酸化剤流入ライン13と、排水・排気ライン14とが接続されている。酸化剤流入ライン13は図示されない酸化剤供給源と接続されている。
濃縮液送液ライン12及び処理水流出ライン11には、バルブ18a及びバルブ18bが取り付けられている。
【0034】
(濃縮手段)
濃縮手段である膜処理装置400は、被処理水Aを分離膜に接触させ、分離膜を透過しない膜不透過分を濃縮液として送液し、分離膜を透過した膜透過分を処理水として送液する装置である。
分離膜の分離性能は、被処理水A中の有機フッ素化合物が透過せず、膜不透過分として濃縮できるものであればよく、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物の種類を考慮して選択するとよい。例えば、NaClの除去率として50〜99.7質量%である分離膜を選択するとよい。
【0035】
分離膜としては、逆浸透膜やナノ濾過膜が挙げられる。分離膜の材質は特に限定されず、天然高分子である酢酸セルロース系の非対称膜、合成高分子系複合膜等が挙げられる。合成高分子系複合膜としては、スキン層の素材が、ポリアミド系、芳香族ポリアミド系素材を含むものが挙げられる。分離膜の形態は特に限定されず、例えばスパイラル型、平膜型、中空糸型を挙げることができる。
【0036】
(超臨界水酸化処理装置)
超臨界水酸化処理装置100としては、第一の実施形態で用いられたものと同様の超臨界水酸化処理装置100が用いられる。
【0037】
<有機フッ素化合物の処理方法>
有機フッ素化合物処理システム3を用いた、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物の処理方法について説明する。
まず、濃縮手段である膜処理装置400を用いて、被処理水Aに含有される有機フッ素化合物を濃縮する(濃縮工程)。
次に、超臨界水酸化処理装置100を用いて、濃縮工程で得られた濃縮液を酸化分解して、濃縮液内に含有されている有機フッ素化合物を無害化する(酸化処理工程)。
【0038】
(濃縮工程)
まず、バルブ18a及びバルブ18bを開けた状態で、被処理水流入ライン15より有機フッ素化合物を含有する被処理水Aを送液し、膜処理装置400に流し、濃縮液(膜不透過分)と、処理水(膜透過分)とに分離する。尚、処理水は、処理水流出ライン11より排出する。
【0039】
(酸化処理工程)
次に、濃縮工程で得た濃縮液を、濃縮液送液ライン12を経て、超臨界水酸化処理装置100の反応器112に送り込み、第一の実施形態と同様の方法で、酸化処理工程を行う。
【0040】
(有機フッ素化合物の処理条件)
被処理水Aに含有される有機フッ素化合物としては、第一の実施形態と同様のものが挙げられる。
膜処理装置400に流す被処理水Aの量は、膜処理装置400の膜の種類によって決定することができる。また、被処理水Aが含有する有機フッ素化合物の濃度も特に限定されないが、分離膜の処理能力と濃縮液の濃度とを考慮して決定されることが好ましい。
更に、濃縮液中の有機フッ素化合物濃度は第一の実施形態と同様に1μg/L〜100mg/Lであることが好ましい。
【0041】
尚、酸化処理工程における、酸化剤の種類、反応器112内の温度、圧力、滞留時間、冷却機の温度、減圧機の圧力、及び処理水及び排水中の有機フッ素化合物の濃度は、第一の実施形態と同様とする。
【0042】
上述したように、有機フッ素化合物処理システム3には、濃縮手段である膜処理装置400と超臨界水酸化処理装置100とが備えられている。
この有機フッ素化合物処理システム3では、有機フッ素化合物処理システム2のように、有機フッ素化合物を吸着させる工程と脱離させる工程とを切り替える操作がなく、より簡便に有機フッ素化合物を処理することが可能である。
【0043】
[その他の実施形態]
本発明は上述の第一の実施形態〜第二の実施形態に限られるものではない。
第一の実施形態〜第二の実施形態では濃縮手段として、イオン交換処理装置及び膜処理装置のいずれかが用いられているが、このほか、活性炭処理装置、合成吸着処理装置、電気透析装置や蒸発濃縮装置が用いられてもよい。
活性炭処理装置に用いられる活性炭は、粒状活性炭、粉末活性炭のどちらでも使用可能であるが、再生の容易さから粒状活性炭の方が好ましい。合成吸着処理装置に用いられる合成吸着剤としては、メタクリル系、ポリスチレン系等の合成吸着剤のいずれも用いることができる。蒸発濃縮装置としては自然循環式、強制循環式、液膜式等が挙げられる。
【0044】
第一の実施形態〜第二の実施形態では、有機フッ素化合物の濃縮液を直接に分解装置(超臨界水酸化処理装置)に供給している。しかし、本発明はこれらの形態に限られず、例えば再生廃液(濃縮液)を一時的に貯留する貯留槽を、濃縮手段と超臨界水酸化処理装置との間に設けてもよい。このような構成によれば、濃縮手段で得られた任意の量の濃縮液を該貯留槽に貯留した後に、該貯留槽から濃縮液を分解装置に供給して濃縮液中の有機フッ素化合物を無害化することが可能である。
また、第一の実施形態〜第二の実施形態では、得られた濃縮液(前処理水)をそのまま分解装置(超臨界水酸化処理装置)に供給している。しかし、本発明はこの形態に限られず、濃縮液(前処理水)を必要に応じて希釈または更に濃縮した後に、分解装置に供給しても良い
【0045】
また、超臨界水酸化処理装置100の構成は第一の実施形態〜第三の実施形態に限定されるものではなく、例えば、酸化剤として濃縮液中の溶存酸素が用いられる場合、酸化剤流入ライン13、ポンプ111b及び配管124bがなくてもよい。
また、超臨界水酸化処理装置100における反応器112としては、濃縮液が酸化分解反応により充分に発熱する場合は、加熱用のヒーターが設置されていない反応器を用いてもよい。
【0046】
また、有機フッ素化合物処理システムは、濃縮手段及び超臨界水酸化処理装置に、無機イオン除去手段等が加えられた構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる有機フッ素化合物処理システムを示す模式図である。
【図2】本発明の有機フッ素化合物処理システムに用いる超臨界水酸化処理装置を示す模式図である。
【図3】本発明の第二の実施形態にかかる有機フッ素化合物処理システムを示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1,2:有機フッ素化合物処理システム
100:超臨界水酸化処理装置
300:イオン交換処理装置
400:膜処理装置
A:被処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機フッ素化合物を含む被処理水を濃縮する濃縮手段と、
前記被処理水を前記濃縮手段で処理して得られた濃縮液を、超臨界状態として酸化処理する超臨界水酸化処理装置とを備える、有機フッ素化合物処理システム。
【請求項2】
前記濃縮手段は、イオン交換処理装置、合成吸着装置又は活性炭処理装置である、請求項1に記載の有機フッ素化合物処理システム。
【請求項3】
前記濃縮手段は、電気透析装置、蒸発濃縮装置又は膜処理装置である、請求項1に記載の有機フッ素化合物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131478(P2010−131478A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307528(P2008−307528)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】