説明

有機性排水処理装置及び有機性廃棄物処理装置

【課題】有機性排水処理装置の嫌気性ゾーンを低酸素濃度に保持して処理効率を向上させ、かつ設置面積を小さくする。
【解決手段】有機性排水10を処理する処理槽9と、処理槽9の長手方向の両端部を除いて上下に二分して好気性ゾーン23、嫌気性ゾーン25を形成する水平仕切部材11と、有機性排水10を投入する排水投入口13と、処理槽9の有機性排水10の上澄水を処理水31として排出する処理水排出口15と、曝気装置17を備えて構成され、好気性ゾーン23に流入した有機性排水10は好気性雰囲気となり、曝気装置17により有機性排水10に供給された酸素で好気性菌の働きが活発になり、有機性排水10中のアンモニアが酸化されて硝酸となり、好気性ゾーン23から嫌気性ゾーン25に流入した有機性排水10は大気中の酸素の影響を受けずに嫌気性雰囲気となり、嫌気性菌の働きが活発になり、好気性ゾーン23で生成された硝酸が還元作用により脱窒され窒素ガスとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水処理装置及び有機性廃棄物処理装置に係り、特に、畜産排泄物又は食品廃棄物等の有機性廃棄物の処理に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、畜産排泄物や食品廃棄物などの有機性廃棄物について、適正な処理を行うとともに、有効利用が求められている。例えば、畜産排泄物の処理では、メタン発酵により燃料となるメタンガスを生産するバイオマスプラントが知られている。このようなバイオマスプラントにおいて、メタンガスを発生した残渣であるメタン発酵排液は、固液分離装置で汚泥とろ液とに分離され、汚泥は堆肥などの肥料として有効利用される。一方、ろ液は、有機性窒素濃度が高い有機性の排水であることから、適切に処理して河川等に放流する必要がある。
【0003】
この有機性排水の処理装置としては、特許文献1に記載されているように、管理維持の容易なスクリュー型表面曝気装置を備えたオキシデーションディッチ法による処理装置が知られている。これによれば、上部が開放された処理槽の中に鉛直仕切板を設置して循環流路を形成し、鉛直仕切板の片側を好気性ゾーンとし、他方側を嫌気性ゾーンとし、有機性排水を処理槽に投入して好気性ゾーンと嫌気性ゾーンを循環させるように構成されている。そして、好気性ゾーンを循環する有機性排水は、スクリュー型表面曝気装置により供給された空気中の酸素により好気性細菌の働きが活発になり、有機性排水中の例えば、アンモニア性窒素が硝化反応により酸化されて亜硝酸及び硝酸等の硝酸性窒素となる。一方、嫌気性ゾーンは曝気されないから無酸素又は低酸素雰囲気になっており、嫌気性ゾーンでは嫌気性細菌の働きが活発になり、好気性ゾーンから嫌気性ゾーンに循環される有機性排水の硝酸性窒素が、有機物中の水素によって還元される脱窒反応により窒素ガスとなって大気中に放散される。これによって、処理槽の排水を河川等に放流できるレベルに有機性排水中の有機性成分及び窒素成分が分解除去される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−231206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の有機性排水処理装置は、嫌気性ゾーンの上面が大気に開放されていることから、大気中の酸素が嫌気性ゾーンの有機性排水に溶け込むため、嫌気性ゾーンを無酸素状態に保つことが難しい。その結果、嫌気性菌による脱窒反応が阻害されるという問題がある。すなわち、大気中の酸素の影響で嫌気性ゾーン中の嫌気性菌の働きが低下し、有機性排水の処理効率が低下するおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に記載の有機性排水処理装置は、処理対象の有機性排水の循環流路が水平横型の処理槽であることから、設置面積が大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、有機性排水処理装置の嫌気性ゾーンを低酸素濃度に保持して処理効率を向上させ、かつ反応槽と沈殿槽を一体型にすることで装置のコスト削減を図るとともに、設置面積を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の有機性排水処理装置は、好気性菌と嫌気性菌を含む活性汚泥により有機性成分を含む有機性排水を処理する上部が開放された処理槽と、該処理槽の長手方向の両端を除いて当該処理槽を上下に二分して設けられ、上部を好気性ゾーンとし下部を嫌気性ゾーンとする循環流路を形成する水平仕切部材と、前記嫌気性ゾーンに前記有機性排水を投入する排水投入口と、前記処理槽の槽壁に前記有機性排水の上澄水を排出する処理水排出口と、前記処理槽の前記処理水排出口側を、前記好気性ゾーンの下流側、かつ前記嫌気性ゾーンの上流側とし、前記好気性ゾーンの上流側の循環水に酸素を含んだ気体を前記好気性ゾーンの下流側に向けて曝気する曝気装置を備えてなることを特徴とする。
【0009】
このように構成されることから、本発明によれば、処理槽の好気性ゾーンの有機性排水は曝気装置から曝気された空気により好気性雰囲気となり、活性汚泥中の好気性菌の働きが活発になる。これにより、好気性ゾーンでは、例えば、好気性菌である硝化細菌の硝化反応により有機性排水中のアンモニア(NH)が酸化されて亜硝酸(NO)及び硝酸(NO)が生成される。これらの亜硝酸及び硝酸を含む有機性排水が嫌気性ゾーンに導入されると、嫌気性である脱窒細菌の脱窒反応により有機性排水中の有機物から供給される水素によって、亜硝酸及び硝酸が還元されて有機性排水の脱窒が行われる。
【0010】
特に、処理槽の循環流路を縦型に形成していることから、下部の循環流路の嫌気性ゾーンは大気から遮断されているので、大気中の酸素が溶け込まない。また、曝気された酸素が好気性ゾーンで消費される分だけ、嫌気性ゾーンの酸素濃度を低く保つことができる。その結果、嫌気性菌の働きが活発になり、好気性ゾーンで生成された亜硝酸及び硝酸等の硝酸性窒素が還元によって窒素ガスとなり、有機性排水を無害化することができる。このようにして、有機性排水を好気性ゾーンと嫌気性ゾーンに繰返し循環させることにより、有機性排水中の有機物及びアンモニア等が好気性菌及び嫌気性菌による酸化及び還元によって分解処理される。
【0011】
この際、嫌気性ゾーンの本発明において、嫌気性ゾーンの上流側に循環流を攪拌する水中攪拌機を設け、該水中攪拌機の下流側に排水投入口を配置した構成とすることにより、新たに投入される有機性排水が水中攪拌機によって攪拌されるとともに、処理槽内の循環流を制御することができる。
【0012】
また、処理水排出口が設けられた槽壁と水平仕切部材の端との間に、仕切板を処理槽の底から下端を離して鉛直に配置して沈殿ゾーンを形成することが好ましい。この形態とすれば、処理槽と沈殿槽を一体化でき、設置スペースを小さくできるだけでなく、有機性排水を処理して生成される汚泥を一元処理できるから、装置を簡素化できる。
【0013】
さらに、曝気装置よりも下流側の好気性ゾーンに酸素濃度計を設け、これにより検出された循環水の酸素濃度に基づいて曝気装置の曝気量を制御する制御装置を設けることが好ましい。これにより、好気性ゾーンにおいて消費される酸素量に見合う分だけ曝気することにより、嫌気性ゾーンの酸素濃度を無酸素又は低酸素濃度に保持できる。
【0014】
本発明の有機性排水処理装置は、畜産排泄物又は食品廃棄物等の有機性廃棄物を処理する有機性廃棄物処理装置に適用することが好ましい。この場合、有機性廃棄物を含む排水をメタン細菌によりメタン発酵処理してメタンガスを発生させるメタン発酵槽と、該メタン発酵槽から排出されるメタン発酵排液を汚泥と有機性排水に分離する固液分離装置を前置し、該固液分離装置から排出される有機性排水を本発明の有機性排水処理装置により処理する構成とする。また、畜産排泄物の場合は、畜産排泄物を無希釈で30℃〜40℃の温度で攪拌しながらメタン発酵槽で処理し、メタン発酵排液をベルトスクリーン型圧搾機などの固液分離手段による無薬注脱水により固液分離し、分離された有機性排水を本発明の有機性排水処理装置に投入して処理することができる。
【0015】
また、曝気装置は多数のノズルを有して形成され、濃度計は好気性ゾーンの流れの終端に設置することが望ましい。
【0016】
さらに、前記有機性排水処理装置及び有機性廃棄物処理装置を地下構造とすることにより寒冷地においても前記メタン発酵槽や前記処理槽内の温度を維持しやすく、窒素除去効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機性排水処理装置の嫌気性ゾーンを低酸素濃度に保持して処理効率を向上させ、かつ設置面積を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に本発明の一実施形態の有機性排水処理装置の断面図を示す。図2に本発明の一実施形態の有機性排水処理装置を適用した有機性廃棄物処理装置の全体構成図を示す。
【0019】
図2に示すように、有機性廃棄物処理装置3は、メタン発酵槽4と、固液分離装置5と、有機性排水処理装置1から構成される。メタン発酵槽4は、水中攪拌装置6を有する。固液分離装置5には、メタン発酵排液7を無薬注脱水により、汚泥8と有機性排水10に固液分離することができる固液分離手段が用いられている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の有機性排水処理装置1は、処理槽9と、水平仕切部材11と、排水投入口13と、処理水排出口15と、曝気装置17と、仕切板19と、整流部材21を有して形成されている。
【0021】
処理槽9は、概略直方体で上部が開放されて形成されている。水平仕切部材11は、処理槽9の長手方向の両端を除いて処理槽9を上下に二分して、上部を好気性ゾーン23とし下部を嫌気性ゾーン25とする循環流路を形成して設けられている。処理水排出口15は、処理槽9の槽壁27に上澄水である処理水31を排出可能に設けられており、有機性排水10の液面29が処理水排出口15の下端付近に位置する。排水投入口13は、嫌気性ゾーン25に有機性排水10を投入可能に設けられている。曝気装置17は、有機性排水10中の液面29付近に形成され、処理槽9の処理水排出口15側を、好気性ゾーン23の下流側、かつ嫌気性ゾーン25の上流側とし、好気性ゾーン23の上流側の循環水に酸素を含んだ気体を好気性ゾーン23の下流側に向けて曝気可能に設けられている。好気性ゾーン23に酸素濃度計33と、制御装置35が設けられている。酸素濃度計33は、好気性ゾーン23の終端近くに、有機性排水10中の液面29付近に形成されている。制御装置35は、酸素濃度計33によって検出された酸素濃度に基づいて曝気装置17の曝気量を制御可能に設けられ、曝気装置17と酸素濃度計33が配線37を介して電気的に接続されている。また、嫌気性ゾーン25の排水投入口13よりも上流側に循環流を攪拌する水中攪拌機39が設けられ、水中攪拌機39は処理槽9内の循環流を制御可能に形成されている。
【0022】
仕切板19は、槽壁27と水平仕切部材11の端との間に、処理槽9の底から下端を離して鉛直に配置され、沈殿ゾーン41を形成している。沈殿ゾーン41は、槽壁27と液面29がなす角度が、例えば60度となるように形成されている。整流部材21は、水平仕切部材11と仕切板19の間に鉛直に設けられて構成されている。
【0023】
以下に、本実施形態の有機性排水処理装置1を適用した有機性廃棄物処理装置3の動作について説明する。
【0024】
畜産排泄物を含む有機性排水は図示しない貯留槽に集められ、スラリーポンプによりメタン発酵槽4に定量的に投入される。投入量はメタン発酵槽4での滞留時間(例えば10日〜60日)によって規定される。投入方法は、例えば1日3回以上の間欠投入、又は連続投入とする。畜産排泄物43を無希釈でメタン発酵槽4に投入し、例えば中温(30℃〜40℃)の温度、投入TS濃度6%〜12%で攪拌する。
【0025】
中温メタン発酵の場合、アンモニア性窒素濃度が4,000mg/Lと高くなっても顕著な阻害(メタン生成速度の低下、及び有機酸の蓄積)が見られないのに対し、高温メタン発酵の場合、アンモニア性窒素濃度が2,000mg/L以上になると、メタン生成速度が低下し、有機酸の蓄積が見られる。つまり、中温メタン発酵のアンモニア耐性は高温発酵より強く、無希釈メタン発酵を実現しやすい。また、畜産排泄物43の加温を考慮すると中温メタン発酵の方がエネルギー的にも有利となる。
【0026】
本発明では、メタン発酵槽4内の攪拌は水中攪拌機6で行う。これにより、畜産排泄物43中に含まれる生分解性の有機物はまず加水分解され、続いて酸生成細菌により酢酸、プロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸に分解され、最終的にメタン細菌によりバイオガス45(メタン55%〜65%程度、二酸化炭素35%〜45%)とメタン発酵排液7に分解される。
このメタン発酵過程は〔化1〕式のようになる。
【0027】
〔化1〕
+〔n−0.25a−0.5b+1.75c〕HO →
〔0.5n+0.125a−0.25b−0.375c〕CH
+〔0.5n−0.125a+0.25b−0.625c〕CO
+cNH+cHCO
メタン発酵槽4において、嫌気性に分解可能な有機物はほぼバイオガス45となり、増殖した嫌気性細菌は残渣とともにメタン発酵排液7となる。メタン発酵排液7は固液分離装置5に投入され、ベルトスクリーン型圧搾機によって無薬注脱水をされ、肥料とすることができる汚泥8と、BOD成分とアンモニアを含んだ有機性排水10に分離される。
【0028】
次に、有機性排水処理装置1における処理動作について説明する。有機性排水処理装置1の排水投入口13より嫌気性ゾーン25に有機性排水10を投入すると、新たに投入された有機性排水10は、排水投入口13よりも嫌気性ゾーン25の上流に設けられた水中攪拌機39により好気性ゾーン23より循環した有機性排水10と攪拌され、嫌気性ゾーン25の下流側より好気性ゾーン23に循環する。
【0029】
好気性ゾーン23に循環された有機性排水10は、曝気装置17により供給される酸素により好気性雰囲気となり、活性汚泥中の好気性菌の働きが活発になり、例えば、好気性菌である硝化細菌の酸化作用により有機性排水10中のアンモニアが酸化されて亜硝酸が生成される。
さらに、この反応で生成された亜硝酸は亜硝酸酸化細菌の酸化作用により硝酸に酸化される。
これらの硝化反応は〔化1〕、〔化2〕式のように二段階で進行する。
【0030】
〔化1〕
NH+1.5O → NO+2H+H
〔化2〕
2NO+0.5O → NO
これらの亜硝酸及び硝酸を含む有機性排水10が嫌気性ゾーン25に循環されると、嫌気性である脱窒細菌の脱窒反応により有機性排水10中の有機物から供給される水素によって、亜硝酸及び硝酸が還元されて有機性排水10の脱窒が行われる。
【0031】
これらの脱窒反応は〔化3〕―〔化5〕式のように進行する。
【0032】
〔化3〕
2NO+2(H) → 2NO+2H
〔化4〕
2NO+3(H) → N+2OH+2H
〔化5〕
2NO+5(H) → N+2OH+4H
特に、処理槽9の循環流路を縦型に形成していることから、下部の循環流路の嫌気性ゾーン25は大気から遮断されているので、大気中の酸素が溶け込まない。また、好気性ゾーン23において消費される酸素量に見合う分だけ曝気することにより、嫌気性ゾーン25の酸素濃度を無酸素又は低酸素濃度に保持できる。その結果、嫌気性菌の働きが活発になり、好気性ゾーン23で生成された亜硝酸及び硝酸等の硝酸性窒素が還元によって窒素ガスとなり、有機性排水10を無害化することができる。
【0033】
このようにして、有機性排水を好気性ゾーン23と嫌気性ゾーン25に繰返し循環させることにより、有機性排水10中の有機物及びアンモニア等が好気性菌及び嫌気性菌による酸化及び還元によって分解処理される。
【0034】
本実施形態において、嫌気性ゾーン25の上流側に循環流を攪拌する水中攪拌機39を設け、水中攪拌機39の下流側に排水投入口13を配置した構成としていることから、新たに投入される有機性排水10が水中攪拌機39によって攪拌されるとともに、処理槽9内の循環流を制御することができる。また、整流部材21を設けていることから、その整流作用により有機性排水10を流れよく循環させることができる。
【0035】
また、処理水排出口15が設けられた槽壁27と水平仕切部材11の端との間に、仕切板19を処理槽9の底から下端を離して鉛直に配置して沈殿ゾーン41を形成することが好ましい。これによれば、処理槽9と沈殿ゾーン41を一体化でき、設置スペースを小さくできるだけでなく、有機性排水10を処理して生成される汚泥47を一元処理できるから、装置を簡素化できる。さらに、沈殿ゾーン41において重力沈殿によって上澄水である処理水31と汚泥47に分離され、処理水31は処理水排出口15から排出され、汚泥47は沈殿ゾーン41の一箇所に集積され定期的に排出される。
【0036】
本実施形態によれば、有機性排水処理装置1の嫌気性ゾーン25を低酸素濃度に保持して処理効率を向上させ、かつ設置面積を小さくすることができる。
【実施例1】
【0037】
本発明の畜産排泄物処理装置3を用いて、乳牛ふん尿を処理対象とした場合の実験結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

単位はppm

表1において、TSは全固形物濃度を、VSは有機物濃度を、SSは有機性排水中の浮遊物質を、CODは化学的酸素要求量を、添字のCrは酸化剤としてクロムを用いていることを、BODは生物学的酸素要求量を、T−Nは全窒素を表している。
【0039】
原料の乳牛ふん尿49は、図3に示すように原料槽51に集積され、その後、固液分離装置53に投入される。乳牛ふん尿49に対してスクリュープレスなどの簡易無薬注固液分離により汚泥55と、畜産排泄物43が得られ、この畜産排泄物43がメタン発酵の原料となる。
【0040】
畜産排泄物43をメタン発酵槽4に投入し、中温35℃、滞留時間20日でメタン発酵を行い、メタン発酵排液7が得られた。このメタン発酵排液7を固液分離装置5に投入し、ベルトスクリーン型圧搾機で脱水し、有機性排水10、及び汚泥8が得られた。
また、この有機性排水10に対して、図1に示した本実施形態の有機性排水処理装置1を用いてMLSS(有機性排水の浮遊物濃度)4000mg/L、HRT(水理学的滞留時間)10日の条件で処理した結果、処理水31が得られた。処理水31を放流調整槽57に流入させ水質分析した結果、河川等に放流できる処理水質結果が得られた。メタン発酵におけるバイオガス生成量は投入スラリーの約20倍(ガス発生倍率)ほどであり、そのうちメタン含有率は60%であった。メタン発酵槽4のVS容積負荷は3kg−VS/m/dであり、単位容積当たりのガス生成速度は1.0m/m/日であった。
【0041】
また、本実施形態の有機性排水処理装置1を用いた室内連続実験では、COD濃度5000mg/L、NH−N濃度800mg/Lの流入有機性排水10に対して約6ヶ月間にわたり処理槽の水質分析を行った。まずHRTを12.5日に設定し、次にHRT6日と負荷を上昇させて有機性排水10の処理特性について検討した。
【0042】
図4に各窒素成分の経日変化を示す。横軸は運転日数を、縦軸は上から流入アンモニア量、排出アンモニア量、排出硝酸量及び排出亜硝酸量、窒素除去率を表している。
【0043】
図4からわかるように、流入NH−N濃度は若干の変動はあるものの、約800mg−N/Lの濃度で安定して供給されていた。また、HRT12.5日においては、運転期間中頃に若干NO−Nの蓄積がみられたが、運転日数120日目には、NH−N、NO−N、及びNO−Nの蓄積量は非常に少ない結果となり、NH−NをNO−N、及びNO−Nに酸化する硝化反応も、NO−N、及びNO−NをNに還元する脱窒反応も十分に進行したといえる。運転日数120日目から135日までの期間における平均窒素除去率は89%であり、最高で93%まで達した。
【0044】
HRT6日では、負荷変更に伴い徐々にNH−Nが蓄積しはじめ、150日目に至っては約300mg−N/Lが硝化されずに残存していた。その一方で、脱窒は良好に進行しており、NO−NおよびNO−Nの蓄積は見られず、運転日数150日から176日までの期間における平均窒素除去率は66%を示した。
【0045】
脱窒は完全に進行していることから、脱窒と同時に硝化も進行するような曝気量に調整することができれば窒素除去率はさらに向上するものと考えられる。
【0046】
図5に本実施形態の有機性排水処理装置1におけるT−CODCrの経日変化を示す。流入T−CODCrは約5300mg/Lで安定的に供給されており、流出T−CODCrはHRT12.5日で平均90%以上減少したが、HRTの短縮に伴い、T−CODCrは増加した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態の有機性排水処理装置の断面図である。
【図2】図1の実施形態の有機性排水処理装置を用いることを特徴とした畜産排泄物処理装置を示す図である。
【図3】実施例1の畜産排泄物処理装置を示す図である。
【図4】実施例1における各窒素成分の経日変化を示す図である。
【図5】実施例1における化学的酸素要求量の経日変化を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 有機性排水処理装置
3 畜産排泄物処理装置
4 メタン発酵槽
5 固液分離装置
9 処理槽
11 水平仕切部材
13 排水投入口
15 処理水排出口
17 曝気装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性菌と嫌気性菌を含む活性汚泥により有機性成分を含む有機性排水を処理する上部が開放された処理槽と、
該処理槽の長手方向の両端を除いて当該処理槽を上下に二分して設けられ、上部を好気性ゾーンとし下部を嫌気性ゾーンとする循環流路を形成する水平仕切部材と、
前記好気性ゾーンの上流側の循環水に酸素を含んだ気体を前記処理槽の下流側に向けて曝気する曝気装置と、
前記嫌気性ゾーンに前記有機性排水を投入する排水投入口と、
前記好気性ゾーンの下流側の前記処理槽の槽壁に前記有機性排水の上澄水を排出する処理水排出口を備えてなる有機性排水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記嫌気性ゾーンの上流側に投入排水と循環流を攪拌する水中攪拌機を設け、該水中攪拌機の下流側に前記排水投入口を配置したことを特徴とする有機性排水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記処理水排出口が設けられた槽壁と前記水平仕切部材の端との間に、仕切り板を前記処理槽の底から下端を離して鉛直に配置して沈殿ゾーンを形成してなることを特徴とする有機性排水処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記好気性ゾーンの前記曝気装置よりも下流側に酸素濃度計を設け、該酸素濃度計によって検出された循環水の酸素濃度に基づいて前記曝気装置の曝気量を制御する制御装置を設けたことを特徴とする有機性排水処理装置。
【請求項5】
畜産排泄物又は食品廃棄物等の有機性廃棄物を含む排水をメタン細菌によりメタン発酵処理してメタンガスを発生させるメタン発酵槽と、該メタン発酵槽から排出されるメタン発酵排液を汚泥と排水に分離する固液分離装置と、該固液分離装置から排出される排水を活性汚泥により処理する有機性排水処理装置とを備えてなる有機性廃棄物処理装置において、
前記有機性排水処理装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機性排水処理装置であることを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記有機性廃棄物が畜産排泄物であり、
前記メタン発酵槽は、前記畜産排泄物を無希釈で30℃〜40℃の温度で攪拌しながら処理するものであり、
前記固液分離装置は、ベルトスクリーン型圧搾機などの無薬注脱水装置であることを特徴とする有機性廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−136942(P2008−136942A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325761(P2006−325761)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000222015)株式会社ユアテック (26)
【Fターム(参考)】