説明

有機性汚泥の処理方法

【課題】 嫌気性消化汚泥の脱水分離液中に含まれるアンモニア態窒素を可及的に少ない曝気量と有機物添加量により効率的に硝化脱窒処理し、しかも返流先の廃水処理場の窒素負荷を低減させることが可能な有機性汚泥の処理技術を提供すること。
【解決手段】 廃水処理場で発生した有機性汚泥をその固形分濃度が5〜20重量%となるように高濃度濃縮処理してから嫌気性消化処理を行い、ついでこの消化汚泥を脱水処理すると共にその脱水分離液を、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が500mg/L以下の条件で亜硝酸型脱窒処理し、この処理水を前記廃水処理場に返流することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物を含む廃水の処理場から発生する有機性汚泥の有利な処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物を含む廃水の処理場の典型的なものとして下水処理場があるが、ここでは最初沈殿池汚泥、最終沈殿池余剰汚泥などの有機性汚泥が大量に発生し、特に近年下水処理場の規模の増大に伴って、その処理が重大な問題になりつつある。
【0003】
こうした問題に対処するため、これら有機性汚泥を減容化することによりトータルの発生汚泥を減少させる方法が検討、実施されており、この具体的な手段として有機性汚泥の処理プロセスに嫌気消化工程を採用する下水処理場が増加している。この嫌気消化とは有機性汚泥を嫌気性微生物の働きで消化し、汚泥の一部をメタン、二酸化炭素に変換し、汚泥量を減らす技術である。発生したメタンガスは燃料などに有効利用することができる。
【0004】
このように嫌気消化された汚泥は脱水され、固形分である脱水ケーキと脱水分離液に分けられ、脱水ケーキは焼却や埋め立てなどによって処分され、脱水分離液は下水処理場に返流され、原水と共に再び浄化処理される。
【0005】
しかしながら、この消化汚泥の脱水分離液中には、通常500〜5000mg/L程度のアンモニア態窒素が含まれており、脱水分離液をそのまま返流すると、下水処理場の窒素負荷が上がり、同処理場の放流水の水質が悪化する問題が出てくる。
【0006】
そこで、脱水分離液中のアンモニア態窒素を処理してから下水処理場に返流することが必要となる。このアンモニア態窒素の処理方法としては、コスト面から生物学的処理である硝化脱窒処理が有効である。硝化脱窒処理によるアンモニア態窒素の除去原理は、硝化槽(好気槽)でアンモニア態窒素を硝酸態窒素に酸化し、脱窒槽(無酸素槽)で硝酸態窒素を窒素ガスに還元して除去するというものである。ここでの硝化には酸素が必要であるため、硝化槽は空気曝気が行なわれる。硝化反応は、アンモニア態窒素から亜硝酸態窒素、さらに亜硝酸態窒素から硝酸態窒素への2段階の酸化反応で進行する。脱窒には有機物が必要なため、気流入水中の有機物を利用するか、又はメタノールなどの有機物を外部から添加する。
【0007】
代表的な生物学的窒素除去法として、図4に示す循環式脱窒法と図5に示す硝化−内生脱窒法があり、いずれも硝化槽における硝化反応と脱窒槽における脱窒法を組み合わせた方式である。通常の硝化脱窒処理で、アンモニア態窒素は硝化槽で硝酸態窒素にまで酸化され、生成した硝酸態窒素は脱窒槽で窒素ガスに転換されて脱窒される。この硝化を亜硝酸の状態で止めることができれば、硝化反応に必要な酸素量が少なくて済むため曝気量を削減でき、また、脱窒反応に必要な有機物の量が少なくなるためメタノールなどの有機物添加量を削減することができ、ランニングコストの低減につながるため、亜硝酸型の硝化脱窒法が注目されている。
【0008】
従来、この嫌気性消化汚泥の脱水分離液中の窒素除去と亜硝酸型硝化脱窒法を組み合わせた方法として、(1)嫌気性消化汚泥脱水分離液の液性をアルカリ性とすることにより亜硝酸型硝化脱窒を行わせるもの(特許文献1など)、(2)嫌気性消化汚泥脱水分離液に臭素イオンを添加してオゾン処理することによりアンモニア態窒素を窒素ガスで酸化して除去するもの(特許文献2など)がある。
【0009】
しかし、前者の方法は液性を常にアルカリ性にするだけでは亜硝酸型硝化脱窒を安定して達成、維持することが困難であり、また多量のアルカリ薬品が必要となってコスト高となるし、後者の方法はあくまでも嫌気性消化汚泥脱水分離液のアンモニア態窒素をオゾン処理によって除去するものであり、積極的に亜硝酸型硝化脱窒を利用して除去するものと異なっていると共に、高価なオゾンを使用するため処理コストが嵩むという問題がある。さらに、両者とも事前に有機性汚泥の高濃度濃縮処理を行うものではないため、嫌気消化後の脱水分離液の量が多くなり、下水処理場での窒素負荷を十分に減らすことができない。
【特許文献1】特開平2003−53396号公報
【特許文献2】特開平2000−93160号公報
【特許文献3】特開平2000−61494号公報
【特許文献4】特開平2003−10883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来の技術的背景並びにその問題に鑑みてなされたものであって、嫌気性消化汚泥の脱水分離液中に含まれるアンモニア態窒素を可及的に少ない曝気量と有機物添加量により効率的に硝化脱窒処理し、しかも返流先の廃水処理場の窒素負荷を低減させることが可能な有機性汚泥の処理技術を提供することをその課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、上記課題を解決するためになされた本発明とは以下のような構成をその要旨とするものである。
(1)廃水処理場で発生した有機性汚泥をその固形分濃度が5〜20重量%となるように高濃度濃縮処理してから嫌気性消化処理を行い、ついでこの消化汚泥を脱水処理すると共にその脱水分離液を、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が500mg/L以下の条件で亜硝酸型脱窒処理し、この処理水を前記廃水処理場に返流することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
(2)亜硝酸型脱窒処理における硝化槽のアンモニア態窒素濃度が20〜500mg/Lであることを特徴とする上記(1)に記載の有機性汚泥の処理方法。
(3)廃水処理場が下水処理場であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機性汚泥の処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃水処理場で発生した有機性汚泥をその固形分濃度が5〜20重量%となるように高濃度濃縮処理してから嫌気性消化処理を行い、ついでこの消化汚泥を脱水処理すると共その脱水分離液を、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が500mg/L以下の条件で亜硝酸型脱窒処理し、この処理水を前記廃水処理場に返流する有機性汚泥の処理方法を採用することにより、嫌気性消化汚泥の脱水分離液中に含まれるアンモニア態窒素を可及的に少ない曝気量と有機物添加量により効率的に硝化脱窒処理し、しかも返流先の廃水処理場の窒素負荷を著しく低減させることが可能であり、もって廃水処理における全体のランニングコストを大幅に減少できるという優れた効果を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき、図1および図2に示す実施形態に基づいて詳述することにする。
【0014】
図1は本発明に係る有機性汚泥処理方法の処理プロセスを示す概要工程図であるが、ここにおいて先ず下水処理場における下水処理の過程で発生した有機性汚泥は汚泥濃縮装置に供給され、この汚泥濃縮装置によって高濃度に濃縮処理される。この濃縮装置としては、遠心濃縮機やスクリュープレスなどの一般的に使用されている装置でよいが、比較的強力な性能を備え、以下の固形分濃度に効率的に濃縮しうるものが好ましい。
【0015】
すなわち、本発明では有機性汚泥をこの濃縮装置によってその固形分濃度が5〜20重量%の範囲にまで高めることが重要であり、かかる高濃度濃縮処理を嫌気消化の前に組み込んだ点が本発明における大きな特徴の一つである。これによって嫌気消化後の脱水分離液の量を少なくすることができ、ひいては後述する亜硝酸型硝化脱窒処理との共同作用により最終的に下水処理場に返流されるアンモニア態窒素の絶対量を減らすことができ、同処理場における窒素負荷を減少させることが可能となる。しかし、従来の一般的に嫌気消化を行うとき、固形分濃度(通常1〜3重量%)のように5重量%未満の場合は脱水分離液を減少させる効果が小さく、本発明の前記課題を達成できなくなる。一方、20重量%を越える固形分濃度では後段の嫌気性消化における流動性が悪化し、消化が困難となってしまう。従って、本発明において有機性汚泥の濃縮による固形分濃度は5〜20重量%の範囲とすることが必須であり、さらに脱水分離量が少なく且つ流動性を維持す観点も含めるとこの固形分濃度は10〜15重量%が好ましいといえる。
【0016】
次いで、汚泥濃縮装置により5〜20重量%の固形分濃度に濃縮された汚泥は、嫌気性消化装置に送られ、ここで嫌気性消化が行われる。この処理により汚泥の一部はメタンと二酸化炭素に分解され、これらは消化ガスとして回収され、メタンは燃料などの用途に有効利用される。また、この嫌気性消化の過程で、分解された汚泥から溶出した窒素成分はアンモニア態窒素となる。
【0017】
嫌気性消化反応は、消化装置内で汚泥が十分に流動する方が効率よく進むが、本発明の如く、その対象となる汚泥が高濃度になると、この流動性が低下して消化が不十分となる恐れもある。
【0018】
このような場合は、図2に示す本発明の別の実施形態のように、汚泥濃縮装置と嫌気性消化装置との間に汚泥流動化装置を設け、高濃度濃縮された汚泥を嫌気消化する前にこの汚泥流動化装置により流動化処理を実施し、汚泥の流動性を高めることが好ましい。汚泥流動化処理の方法としては熱処理、薬品処理、オゾン処理、物理的破砕・粉砕処理などの周知の方法のほか汚泥に流動性を高めることができるものであれば如何なる方法も採用可能である。
【0019】
次に、嫌気性消化された汚泥は、汚泥脱水装置に送られ、ここで脱水処理がなされる。汚泥脱水装置としては、ベルトプレス、スクリュープレスなどの一般的な脱水装置を用いれば良い。これにより、汚泥は含水率が60〜85%程度の脱水ケーキと脱水分離液とに分離され、脱水ケーキは必要に応じてさらに処理を加えた後、廃棄物として処分される。
【0020】
そして、前述のようにアンモニア態窒素を高濃度に含む脱水分離液は亜硝酸型硝化脱窒装置により亜硝酸型硝化脱窒処理が施される。しかも、本発明ではこの脱窒処理に当たって、亜硝酸型硝化脱窒を安定して達成できる範囲内において、アンモニア態窒素を低濃度に維持して行うものであり、すなわち、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が500mg/L以下の条件で行う。
【0021】
本発明はこのように下水処理(一般的には廃水処理)における有機性汚泥処理プロセスの中に特異な亜硝酸型硝化脱窒処理を組み込んだ点がもう一つの大きな特徴である。かかる亜硝酸型硝化脱窒処理によって、処理水つまり返流水に移行するアンモニア態窒素濃度を低下させることができ、下水処理場における窒素負荷を軽減させることができる。また、亜硝酸型硝化脱窒処理の採用によって、硝化反応に必要な酸素量が少なくて済むため曝気量を削減でき、さらに脱窒反応に必要な有機物の量が少なくなるためメタノールなどの有機物添加量を削減することができるといったその本来の効果も同時に達成できる。
【0022】
先に述べた高濃度濃縮処理により、亜硝酸型硝化脱窒装置に供給されるこの脱水分離液は、その成分としてアンモニア態窒素の濃度は通常の脱水分離液と比べて高いものの、その絶対量が少ないという特性を有している。このため、亜硝酸型硝化脱窒を安定して達成するには、後述の如く一定濃度以上のアンモニア態窒素を残すような条件下で処理しなければならないが、本発明においては脱水分離液の量自体が少ないことから、これに伴って硝化脱窒後の処理水に含まれるアンモニア態窒素の絶対量も減少することになる。従って、この処理水を下水処理場に返流したときのアンモニア態窒素の負荷は(アンモニア態窒素の濃度×アンモニア態窒素の絶対量)の関係により、通常に比べて少なくなるという有利なメリットが生ずるのである。
【0023】
また、この脱水分離液は上記の特性に加えてそのpHも通常のものに比較して高いため、硝化脱窒処理に際して亜硝酸型になりやすく、亜硝酸型硝化脱窒処理に適しているというメリットをも有している。
【0024】
ところで、亜硝酸型硝化脱窒を安定して達成、維持するためには、亜硝酸型硝化脱窒装置の硝化槽におけるアンモニア態窒素濃度が重要となり、本発明の実施に際して、はこの濃度を20mg/L以上とすることが望ましい。20mg/L未満では、硝酸の生成が優先し、亜硝酸型を維持すること困難となる。さらに安定した亜硝酸型硝化脱窒を行うためには、50mg/L以上とすることがより望ましい条件として推奨される。
【0025】
また、硝化槽におけるアンモニア態窒素濃度を500mg/Lを超える高い濃度としても亜硝酸型窒素の割合はほぼ一定となり、亜硝酸型硝化脱窒を行う上で特にメリットがないばかりでなく、処理水のアンモニア態窒素濃度も高くなり、下水処理場に返流したときのアンモニア態窒素の負荷が増大する不利を招くことになるので、前述の通り500mg/L以下とすることが必要である。加えて、200mg/Lより高い濃度のアンモニア態窒素とした場合は、同アンモニア態窒素濃度の増加に対する亜硝酸態窒素の割合の増加の度合いが小さく、亜硝酸型硝化脱窒を行う上でのメリットが小さい一方で、やはりこれに伴う処理水のアンモニア態窒素濃度増加による下水処理場のアンモニア態窒素の負荷が増大する不利を招くことになるから、アンモニア態窒素の濃度は200mg/L以下とすることが望ましい。
【0026】
従って、硝化槽におけるアンモニア態窒素濃度は20〜500mg/Lに維持することが望ましく、さらに亜硝酸型を安定して達成、維持しながら処理水のアンモニア態窒素をできる限り低く維持する観点からは、硝化槽のアンモニア態窒素濃度は50〜200mg/Lに維持することがより望ましいといえる。
【0027】
亜硝酸型硝化脱窒処理の具体的な方法に関して、本発明に用いられる循環式亜硝酸型硝化脱窒の一例を示す図3により説明する。
【0028】
嫌気性消化後の汚泥から分離された脱水分離液は脱水分離液タンクに貯留された後、脱窒槽へと送られる。脱窒槽には、硝化槽で硝化された亜硝酸を含む液が硝化液循環ラインを通って送り込まれ、脱窒菌の働きにより亜硝酸態窒素が窒素ガスへと還元され、系外に放出される。脱窒槽には脱窒反応に必要なメタノールなどの有機物が添加される。
【0029】
硝化槽は空気曝気により好気条件に保たれており、硝化菌の働きによりアンモニア態窒素が亜硝酸態窒素へと酸化される。pH調整のため、硝化槽には必要に応じて水酸化ナトリウムなどのアルカリが添加される。
【0030】
硝化槽を出た液の一部は、脱窒槽に循環され、残りは沈殿池に送られ汚泥と処理水(上澄み水)が固液分離される。処理水は下水処理場に返流され、沈殿した汚泥の一部は、汚泥濃縮装置に供給され、再度嫌気性消化処理されると共に、残りは返送汚泥として脱窒槽へと戻される。
【0031】
硝化槽にはアンモニア態窒素を測定するための濃度計が設置されており、アンモニア態窒素が20〜500mg/Lの範囲の適正値となるように、流入水量、空気曝気量、硝化液循環量、返送汚泥量、薬剤添加量の少なくとも1つが制御される。あるいは、このアンモニア態窒素の測定、制御に代えて、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が上記適正値になるような運転条件を予め設定しておき、その条件で実施するようにしても良い。
【0032】
さて、図1および図2の通り、このようにして亜硝酸型硝化脱窒が行われた脱水分離液は処理水として下水処理場の最初沈殿槽(図示せず)などに返流され、ここで原水と共に合流されて、再び浄化処理がなされることになる。
【0033】
(実施例1)
図2および図3に示す実施形態により、一般的な下水処理場汚泥の嫌気性消化および消化汚泥脱水分離液の処理を実施した。各処理における装置の運転条件は次の通りである。
【0034】
(1)濃縮汚泥の固形分濃度:
条件1: 3重量%(高濃度濃縮なし)
条件2: 5重量%
条件3:10重量%
条件4:15重量%
条件5:20重量%
条件6:25重量%
(2)汚泥流動化処理:160℃で30分間の熱処理
(3)嫌気性消化処理:37℃、滞留時間 30日
(4)亜硝酸型硝化脱窒処理:
アンモニア態窒素濃度の設定値;100mg/L
この結果を表1に示す。なお、表中の項目の算出方法は以下の通りである。
【0035】
返流水アンモニア態窒素負荷(kg/日)
=脱水分離液量(m3/日)×硝化脱窒処理後のアンモニア態窒素濃度(mg/L)/1000
硝化槽での亜硝酸態窒素の割合(%)
=(亜硝酸態窒素濃度/(硝酸態窒素濃度+亜硝酸態窒素濃度))×100
汚泥減容化率(%)
=(消化槽供給汚泥固形分量−消化後汚泥固形分量)/消化槽供給汚泥固形分量×100
ここで条件6は、汚泥濃度が高すぎるため汚泥の流動性が悪く、嫌気性消化槽での攪拌が困難となり、嫌気消化処理ができなかったため、同表1にはこれを除く、条件1〜5の結果を掲載した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から、返流水アンモニア態窒素の負荷は、汚泥固形分濃度が低い比較法の条件1と比べて、同濃度が高い範囲とした本発明法の条件2〜5では低く、特に条件3〜5で負荷低減効果が著しいことが分る。一方、消化槽の汚泥減容化率は、比較法の条件1並びに本発明法の条件2〜4共には約60%で変わりないが、本発明法の条件5では汚泥減容化率は少し低い。これは条件5では汚泥量が高いため、条件1〜4と比較して消化槽の流動性が劣るためと考えられる。亜硝酸態窒素の割合は、いずれの条件でも80%前後であり、亜硝酸型硝化脱窒が達成できていることが確認できる。
【0038】
従って、有機性汚泥の高濃度濃縮処理による固形分濃度は、5〜20重量%とすることが必要であり、15〜20重量%が好ましいといえる。
【0039】
(実施例2)
図2および図3に示す実施形態により、一般的な下水処理場汚泥の嫌気性消化および消化汚泥脱水分離液の処理を実施した。各処理における装置の運転条件は次の通りである。
【0040】
(1)濃縮汚泥の固形分濃度:10重量%
(2)汚泥流動化処理:160℃で30分間の熱処理
(3)嫌気性消化処理:37℃、滞留時間 30日
(4)亜硝酸型硝化脱窒処理:
アンモニア態窒素濃度の設定値;
条件1: 10mg/L
条件2: 20mg/L
条件3: 50mg/L
条件4: 100mg/L
条件5: 200mg/L
条件6: 500mg/L
条件7: 800mg/L
表2にこれら条件1〜7の結果を示した。なお、表中の項目の算出方法は実施例1と同じである。
【0041】
【表2】

【0042】
同表2の結果より、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が10mg/Lの比較法の条件1は硝化槽の亜硝酸態窒素の割合が10%と低く、硝酸生成が優先しており、亜硝酸脱窒が達成されていない。一方、アンモニア態窒素濃度が20mg/L以上である本発明法の条件2〜条件6及び比較法の条件7は、亜硝酸態窒素の割合が約50〜90%であり、亜硝酸型硝化脱窒が達成できており、このうちアンモニア態窒素濃度が50mg/L以上の条件では安定した良好な亜硝酸型硝化脱窒が維持されていることが分かる。しかし、本発明法の条件6と比較法の条件7とを比べると明らかなように、アンモニア態窒素濃度が500mg/Lと800mg/Lと大きく増加しているにもかかわらず、亜硝酸態窒素の割合は同じであり、亜硝酸型硝化脱窒処理の安定度に変化がないことが判明する。しかも、比較法の条件7は本発明法の条件6に比して返流水のアンモニア態窒素の負荷が大幅に増えており、問題であることが知れる。また、本発明法の条件5と条件6の亜硝酸態窒素の割合の差が小さいことも分かる
以上により、硝化槽でのアンモニア態窒素濃度は500mg/L以下の亜硝酸型消化脱窒処理が可能な条件で行う必要があり、好ましくは20〜500mg/L、より好ましくは50〜200mg/Lのアンモニア態窒素濃度を硝化槽で維持すれば良いことになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る有機性汚泥処理方法の処理プロセスを示す概要工程図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る有機性汚泥処理方法の処理プロセスを示す概要工程図である。
【図3】本発明に採用される循環式亜硝酸型硝化脱窒の一例を示す概要図である。
【図4】生物学的窒素除去法における循環式脱窒法を示す概要図である。
【図5】生物学的窒素除去法における硝化−内生脱窒法を示す概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理場で発生した有機性汚泥をその固形分濃度が5〜20重量%となるように高濃度濃縮処理してから嫌気性消化処理を行い、ついでこの消化汚泥を脱水処理すると共にその脱水分離液を、硝化槽のアンモニア態窒素濃度が500mg/L以下の条件で亜硝酸型硝化脱窒処理し、この処理水を前記廃水処理場に返流することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
【請求項2】
亜硝酸型硝化脱窒処理の際のアンモニア態窒素濃度を20〜500mg/Lに維持することを特徴とする請求項1に記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項3】
廃水処理場が下水処理場であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機性汚泥の処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−305488(P2006−305488A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132720(P2005−132720)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】