説明

有機物処理材および有機物処理方法と有機物処理装置。

【課題】微生物を利用する発酵式生有機物処理方法は、加熱乾燥方式に比べ処理エネルギーが少ない、減量度合いが高く残量物回収のエネルギーが少ない、残量物が肥料などに利用しやすいなどの長所を持ちながら、処理時間が長いことと処理中の臭気が気になるなどの理由から、普及が進んでいない。
【解決手段】発酵式生有機物処理材に用いる微生物を、主たる構成物が通性嫌気性微生物群であってかつその「自然発酵温度」が常温環境で70℃以上120℃以下の範囲にある「高温発酵微生物」とすることと、さらには加熱手段をマイクロ波加熱とすることで、処理時間短縮と処理中の臭気低減を同時に達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用や家庭用の発酵方式有機物処理に用いられる、効率的で臭気発生の少ない有機物処理材および有機物処理方法と有機物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランや給食などの業務では、毎日大量の生ゴミを中心とする有機物が発生し、処理業者にその都度引き取ってもらっている。家庭においても、生ゴミを分別し数日に一度は集積所に出し、自治体の収集車に回収を委ねている。日本での生ゴミ系有機物の総排出量は年間5,000万トン、家庭からだけでも年間1,500万トンを超えると言われている。そして回収されたこれらの有機物は、通常は埋め立て処分されるか焼却される。最近は新規な埋め立て地が激減しており、焼却の比重が高まっている。ここに膨大な回収と焼却のエネルギーが使われ、関連活動を含め大量の二酸化炭素を発生させている。この社会的大問題に対処するために、生ゴミに限らず農業・酪農・製造業における種々の不用有機物の発生原点において、有機物量を大幅に減量しようと企図するのが、業務用及び家庭用有機物処理装置である。
【0003】
一般的な有機物処理方法は大別すると2種類ある。有機物を加熱し撹拌し減量する「加熱方式」と、有機物に微生物を混ぜ合わせ有機物を発酵させ分解させて減量する「発酵方式」とである。「加熱方式」は処理過程での臭気発生が少ないので屋内での使用が可能であるが、「発酵方式」に比べると加熱エネルギーを多く必要とする欠点がある。一方「発酵方式」は「加熱方式」に比し処理エネルギーが少なく、ほとんど消滅させるほど減量度合いも大であるものの、処理時間が数倍長くかつ処理過程で臭気が発生し、屋内での使用が困難である。
【0004】
これら2方式のうち、より本質的な有機物処理は「発酵方式」である。この「発酵方式」が持つ上記欠点の改善を考えるにあたり、最初に「発酵方式」の理解をしておく。有機物を糖質、たんぱく質、脂質、無機質の基本物質とそれらの結合組織とから構成されているとすると、有機物処理とは、微生物の発酵を主とする作用により上記基本物質と結合組織が切断される・溶解される・食され消滅し変質させられる、最終的には水分・気体・無機物に分解されることである、と言える。
【0005】
微生物による有機物の分解は大別すると2方式ある。1つは好気発酵である。好気性微生物が酸素をとりこんで活動するので効率の高い発酵であり、嫌気性微生物による発酵に比べ分解速度が速いとされている。好気発酵は自然界では優占的であり、糸状菌、放線菌、細菌の大部分が好気性菌である。アンモニアを主とする悪臭を発生し、使用に当たっては一般的には臭気対策がとられている。好気発酵は現在市販されている家庭用発酵式生ゴミ処理装置の主流の方式である。
【0006】
2つめは嫌気発酵である。好気発酵に比べエネルギー効率が悪く長時間を要すると言われている。加えて有機物の分解過程で不完全な酸化物が生成する。発酵を全うさせるには好気性菌の力を借りる必要がある。嫌気性微生物は2種類に分類される。酸素があると活動できない偏性嫌気性菌(絶対的嫌気性菌とも言われる)と、少しの酸素で嫌気性ではあるが好気的な働きをする通性嫌気性菌である。市販の有用菌やEM菌は乳酸菌を主とする通性嫌気性菌である。乳酸発酵は速度の遅い発酵であるが、進行につれ有機物から水分が多く流出し減量が進む。酸性も強くなり雑菌の活動が抑制され腐敗臭は発生しにくい。しかしこの乳酸発酵が停止し、そのまま放置されると酪酸発酵菌や酢酸発酵菌が動き出し悪臭を伴う発酵、いわば腐敗となる。これら2方式の知見は次の参考文献に詳しい。
【非特許文献1】藤原俊六朗著「家庭でつくる生ごみ堆肥」農文協、1999年。25,26,27頁。
【0007】
次に図1により、従来の発酵方式有機物処理機10について説明する。ふた1には熱源(図示せず)からの熱風の有機物処理室4への吹き込み口2と、発生した水蒸気や気体などの気体排出口3が設けられている。出し入れ自在の釜形状の有機物処理室4の中には撹拌羽5が設けられており、装填されている有機物処理材6と使用にあたり投入された有機物7を撹拌するようになっている。気体排出口3からの気体は脱臭装置8を通過し排気ファン9によって機外に排出される。
【0008】
有機物処理室4の中では、吹き込み口2から矢印11の熱風が吹き込まれ、有機物7と有機物処理材6が加熱され、水分の蒸発が始まり発酵も始まる。撹拌は温度の均一化と空気の供給と発生気体の蒸散促進の機能を持つ。市販品には多様な形態があるが、基本的なプロセスと機能は似通っており、大略このように説明できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の発酵方式有機物処理においては、▲1▼処理時間が加熱方式に比べ長い。たとえば家庭用装置で1Kgの生ゴミを処理する場合、加熱方式の処理時間が2〜3時間であるのに対し発酵方式は5〜24時間である。業務用でも同様の関係であり、これでは深夜に有機物を処理装置に投入し早朝に業者が回収するのには間に合わない。1〜2時間での処理完了、長くとも加熱方式の3時間を超えたくないものである。また、ここで有機物が生ゴミである場合は、生ゴミに含まれている塩分が発酵を阻害する大きな要因の一つになっている。これにも対処せねばならない。▲2▼発酵に特有の臭気が発生する。したがって屋内使用には不向きである。しかたなく屋外設置で使うことになるが、それでは家庭用としては使い勝手が悪い。発酵方式は環境保護の観点から加熱方式より良いと分かっていても、これら▲1▼及び▲2▼の欠点があるため、普及は必ずしも進んでいない。業務用なら屋外設置で使えるとする考えもあるが、都市部においては相当の臭気対策をしない限り、周囲に対してその臭気は許容されるものではなく、やはりあまり普及していない。
【0010】
本発明は、このような従来の発酵方式有機物処理方法が有している上記の問題▲1▼及び▲2▼を解決しようとするものである。すなわち(1)処理時間の大幅な短縮、たとえば厨房からの一般的な廃棄有機物であるなら、1kgの量を1時間程度でほぼ消滅させよう、というような高速処理と、(2)処理中の臭気発生の実用レベルまでの低減、これら2点を同時に実現することを目的とするものである。
【0011】
この目的を達成するための具体的な課題は、(イ)どのような微生物を使えば従来にない処理時間の大幅な短縮ができるか、(ロ)そのような微生物をどうやって選別するか、(ハ)得られた微生物群の発酵活動を助けさらに臭気などを押える発酵環境の整備要件は何か、(ニ)そのような発酵環境整備要件をどのようにして具現化するか、である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明になる第1の解決手段は、有機物を微生物により処理する有機物処理材において、該微生物が少なくとも通性嫌気性微生物を含み該微生物の「自然発酵温度」が常温環境で70℃以上120℃以下の範囲にある「高温発酵微生物」であることを特徴とする有機物処理材である。
【0013】
第2の解決手段は、第1の解決手段の「高温発酵微生物」が「高温発酵好塩菌」を含んでいることを特徴とする有機物処理材である。
【0014】
第3の解決手段は、第1の解決手段の「高温発酵微生物」が、少なくともボルテラ属キリアタ種(Voltella・ciliata)、カプリアビダス属コンピネンシス種(Cupriavidus・campinensis)、トリコスポロン属(Trichosporon・sp)、バシラス属ベリゼンシス種(Bacillus・velezensis)、ユウペニシリウム属(Eupenicillium・sp)、プロビデンシア属レットゲリ種(Providencia・rettgeri)、コスモスポーラ属コンサーズ種(Cosmaspora・consors)、アスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)、モニリエラ属(Monilliera・sp)、ペニシリウム属グラブラム種(Penicillium・glabrum)、シュードアレシェリア属ボイディ種(Pseudoallescheria・boydii)とシュードモナス属エレギノーサ種(Pseudomonas・aeruginosa)のいずれか複数の微生物を含んでいることを特徴とする有機物処理材である。
【0015】
第4の解決手段は、第2の解決手段の「高温発酵好塩菌」が、少なくともアスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)、モニリエラ属(Monilliera・sp)とペニシリウム属グラブラム種(Penicillium・glabrum)、シュードアレシェリア属ボイディ種(Pseudoallescheria・boydii)、シュードモナス属エレギノーサ種(Pseudomonas・aeruginosa)のいずれかを含んでいることを特徴とする有機物処理材である。
【0016】
第5の解決手段は、解決手段1〜4の有機物処理材に100℃以上140℃以下の温度で20分以上40分以下の加熱処理を施したことを特徴とする有機物処理材である。
【0017】
第6の解決手段は、第1〜5の解決手段に記載した有機物処理材に、炭素材料が配合されていることを特徴とする有機物処理材である。
【0018】
第7の解決手段は、第1〜6の解決手段に記載した有機物処理材に、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の有機物消化酵素が配合されていることを特徴とする有機物処理材である。
【0019】
第8の解決手段は、有機物処理材に有機物を投入し加熱手段で加熱し、撹拌し、もって有機物を発酵・減量させる有機物処理方法であって、有機物投入後該有機物処理材の死滅温度を超えない該有機物処理材の至適生育温度域以上の高温で一定時間加熱し、次いで至適生育温度域で加熱する2段階加熱であることを特徴とする有機物処理方法である。
【0020】
第9の解決手段は、第8の解決手段における有機物処理材が請求項1〜7記載のいずれか1項に記載の有機物処理材であることを特徴とする有機物処理方法である。
【0021】
第10の解決手段は、少なくとも加熱手段を有し有機物処理材と有機物とを加熱し有機物を発酵させ減量させる有機物処理装置において、有機物処理材が解決手段1〜7記載のいずれか1項に記載の有機物処理材でありこの加熱手段がマイクロ波加熱であることを特徴とする有機物処理装置である。
【0022】
第1の解決手段による作用を説明する前に、微生物が有機物を分解・消化する速度の律則要件を考察する。一般的には次の諸点が重要であると考えられる。
A:微生物自体の分解・消化能力。B:塩分濃度。C:pH。最適値は使用する処理材に拠りその最も好む値。D:水分過小あるいは過多。普通には処理対象有機物に対して重量比で50〜60%の水分量が良いとされている。E:発酵環境の酸素不足あるいは酸素過多。F:温度。普通には30〜50℃が良いとされている。G:炭素比(C/N比)。一般的には30〜40%が良いとされている。H:微生物担持体の物性とそのサイズや形状と安定性、以上である。その他に微生物による有機物分解・発酵においては、I:悪臭低減、病原菌の死滅化、人体への安全性、等々も考慮すべき重要な要件である。
【0023】
これらの諸要件を総合的に各々適切なレベルで実現を目指すのが本発明であるが、その「基本となる技術思想」は、第一に、諸要件達成を有機物処理材(微生物群)と処理方法に全体最適的に分担させるというものである。すなわち、上記諸要件のうちA、B、Cを微生物群に担わせ、D、E、F、G、Hを処理方法に担わせるのが合理的であると考えた。Eの酸素量に関しては、本発明では後述するように通性嫌気性微生物群を主に用いるので、酸素過多を防ぐこととなる。これは基本的には処理装置の工夫で行う。CのpHに関しては、処理中pHをモニターし必要な薬剤を投入する方法はもちろん考えられるし、実際そのようなことをしている業務用市販機もある。しかし本発明では、必要なら使い始めのみpH調整を行うことがあっても、それ以後の処理中は基本的には微生物群の自律的な緩衝能に委ねる、という考えに立脚している。Iの悪臭低減、病原菌の死滅化、人体への安全性に関しては、有機物処理材(微生物群)と処理方法との両方で行うべきであると考えた。
【0024】
本発明の「基本となる技術思想」の第二は、処理時間の大幅な短縮のために従来にない発酵作用の強い微生物を探索し用いるというものである。しかし市販の有機物処理に使われている好気性微生物は既に十分検討されているため、好気性微生物主体では差別化できる傑出した解はないと考えた。そこでまだ十分には開拓されていないともいえる嫌気性微生物を検討した。中でも嫌気性とはいえ条件によっては好気的にふるまう通性嫌気性微生物の中には、好気性微生物をしのぐ豊かな能力を有しているものがあるはずであると考えた。代表的な通性嫌気性微生物である乳酸菌と酵母は、発酵食品などで極めて有用な通性嫌気性微生物としてよく知られている。EM菌も通性嫌気性微生物群であると思われ、一部で生ゴミ処理にも使われている。しかし短時間処理を特徴にしているものではない。通性嫌気性微生物に有機物処理の分解速度の速さ、たとえば厨房からの一般的な有機廃棄物1Kgを1時間程度でほぼ消滅させよう、というような高速処理を求める要求は、これまで業界内には強くは存在していなかったようである。実際市販品の家庭用生ごみ処理機などでは、全て常識的な好気性微生物が使われており、カタログにもそのことが特徴として謳われているほどである。
【0025】
しかし自然界には、有機物の強い分解作用を有する多様な微生物が土壌中に存在するはずである。ここで着目したのは、有機物の発酵では発熱が起こるが、ほとんどの場合その温度は高くとも60℃くらいであるという点である。そこで、もし常温環境下で例えば100℃に近い高温の発酵温度となる微生物なら、その活動は従来にない旺盛なもののはずであるという考えに基づき、通性嫌気性微生物を中心に、そのような発酵温度の高い微生物の探索と選別を行ったのである。
【0026】
具体的には通性嫌気性微生物を中心に狙いをつけているのであるから、土壌の比較的深部の低酸素濃度領域に探索の方向を定めた。それとおぼしき発酵がおこっている数多くの土壌の中から、微生物群を採取し培養した。先ず採取した土壌は様々な状態であり扱いにくいので、可能な限り状態の規格化を図った。そこで蒸留水1リットルに砂糖20g、肉エキス10g、酵母エキス10gを溶かし、その溶液300ccを腐食土1Kgにしみ込ませ水分含有量略50%まで乾燥させた。この栄養分を含ませた腐食土1Kgと採取した土壌1Kgをよく混ぜ合わせた。数時間おきに撹拌しつつ2昼夜微生物の活動を促し、この新環境で十分に増殖が進んだところで採取土壌の試料とした。試料の選別は以下の方法で行った。上部にわずかな開口を有するのみで積極的な空気の流入を断った「準嫌気的密閉環境」を持つ容器の中で、発酵には十分な質と量の栄養分を与えた。具体的には採取土壌試料1Kgにご飯300g、粗挽き鳥胸肉300g、ラード50g、砂糖50g、略4cm幅に刻んだキャベツ150g、略1cm角にカットした人参150gである。10分に1度の撹拌を行い、その間不織布の容器底から発生水分は落下させ水蒸気などの気体は上部の開口から逃した。測定環境は常温(23〜25℃)であり、容器全体は断熱材で囲い放熱を抑えるようにしてある。そして中心部の発酵温度の推移を測定した。
【0027】
ここで、この発酵温度の最高到達温度を「自然発酵温度」と呼称する。そして様々な採取微生物群の中から、70℃を超える「自然発酵温度」を持つ群を選別した。70℃という下限条件設定理由は後述する。400を超える採取物の中のほとんどにはそこまでの発酵温度を示すものは見られなかったが、約30組の微生物群に所望の高温発酵群を得ることができた。これらをさらに120±5℃の恒温槽で30分間加熱し、生き残った微生物を採用候補としたのである。外部の分析機関(JFEテクノリサーチ株式会社:東京都中央区日本橋二丁目1番10号)に依頼し分析した。ほとんどが嫌気性微生物でありその大半が通性嫌気性微生物であった。好気性微生物と偏性嫌気性微生物も数種類含まれていた。
【0028】
第1の解決手段による作用であるが、先ず採取微生物群の「自然発酵温度」が常温(23〜25℃)環境で70℃以上120℃以下であるということは、極めて高い活動能力を持っていることの証左である。さらに120±5℃の恒温槽で30分の高温加熱処理を施したことは、このような高温でも生き延びられる微生物のみを残し用いることを意味している。実際にこのような微生物群は、後述する実験から分かるように有機物の発酵能力が高くその分解スピードは極めて速いのである。本発明ではこの微生物群を「高温発酵微生物」と呼称することにする。ただし厳密な意味では、上記の選別方法でスクリーニングされた微生物全ての「自然発酵温度」が70℃以上120℃以下ということではなく、単に選別過程で120℃30分の高温加熱処理でも死滅しなかったものも含まれているはずである。したがってここで定義した「高温発酵微生物」は、厳密には「自然発酵温度」が70℃以上120℃以下を示すものと120℃の高温でも死滅しなかった微生物群を含む、と言うことである。
【0029】
一般的には至適生育温度が45〜75℃にある微生物は中等度好熱菌、75〜90℃にあるものは高度好熱菌、90℃以上は超好熱菌と定義されている。中等度好熱菌は55〜60℃で最もよく活動し、その下の中温菌は25〜37℃でよく活動すると言われている。この中温菌は通常の常温環境下で最も多く見られ、中には食品の腐敗に関係する微生物が多い、というものである。本発明で用いた「自然発酵温度」は厳密な意味では異なるかもしれないが、至適生育温度と同義と言えよう。いずれにしても発酵温度域の中で最も増殖の盛んな温度に相当すると換言できる。図2にこれらの関係を表し、「自然発酵温度」相当点を記号Mで示してある。そして本発明の「高温発酵微生物」は高度好熱菌を完全に含み、さらに超好熱菌の中で低温の部類も含むものである。なお、それ以上では高温すぎて微生物が活動を停止するあるいは死滅する温度を最高生育温度と言い、多くの場合、至適生育温度より約10℃高いところにあると言われている。
【0030】
本発明が「自然発酵温度」の高い微生物を使うところに特徴があるといっても、有機物処理装置で設計する加熱最高温度は、特に水分の加熱が支配的であることを考慮すると、100℃以下、好ましくは90℃以下であるのが実際的である。この実際的判断視点から「高温発酵微生物」の選択上限温度を決める。最高増殖活動の80%以上のレベルであれば、十分に活発な活動であると考えて妥当である。そうであれば70℃から90℃くらいの温度域(図2で記号Nで示す)でその増殖活動レベルに達する微生物の「自然発酵温度」相当点Mは、普通には100℃から120℃くらいとなる。実際の探索で得られた約30組の微生物群の「自然発酵温度」は、ほとんどが70℃から100℃の間にあり、100℃を大きく超えるものはなかった。しかし今後の探索で120℃までのものが捕まれば、それらは上記の理由から90℃近辺で活発な増殖活動を示すはずであるので、ここを上限とし採用する。この点を超えるものは実際的には使いにくい。その100℃以下の温度域での活動はまだ相当に低いからである。
【0031】
このようにして選別した「高温発酵微生物」は、本発明の一部に属する後述のマイクロ波加熱を使った処理装置を用いた実験において、1Kgの有機物試料を1時間以内で、具体的には40分ないしは50分で、消滅させる分解速度を示した。選別において採用しなかった「自然発酵温度」がたとえば約60℃を示す微生物群では、同じ実験で1時間を超え1時間20分から1時間40分ほどの時間を要した。これでも市販の家庭用発酵方式生ゴミ処理機の処理時間である4〜5時間に比べれば、はるかに速いものであった。
【0032】
しかしながら実際に投入される有機物には、実験と異なりさまざまなものがあるので、中にはもっと時間のかかることもあるであろう。そのような観点から、当初仮に目標とした一般的な厨房排出有機物1Kgを1時間で処理したい、というレベルは堅持したく、厳しい基準を設けた。すなわち本発明で用いた選別方法における「自然発酵温度」で下限70℃という選別基準である。一般的には発酵温度が高い微生物を使えば有機物の分解速度が速くなる傾向にあることは知られている。たとえば下記文献では、「加熱装置27によって加熱された消滅槽10内の温度が、中高温菌の至適温度、好ましくは、30〜80℃、より好ましくは、35〜60℃となるように、加熱装置27のスチーム本管29から放出されるスチームの供給が制御されるようになっている。」と記されている。しかし70℃以上の「自然発酵温度」あるいは至適生育温度を有する微生物だけを使うというものではなく、非常に高いレベルの高速発酵を意図して適用する考えが開示されているものではない。
【特許文献1】特開2001−239241号公報、〔0031〕。
【0033】
第2の解決手段による作用であるが、有機物にはほとんどの場合多くの塩分が含まれ、この塩分が発酵においては阻害要因となっていることに関係している。身近な例では糠漬けがある。糠に付着している微生物を利用して野菜などを発酵させうまみを引き出すのであるが、そのままでは腐敗してしまうので必ず食塩を加える。この塩分によって発酵に適度のブレーキをかけているのである。本発明ではその逆を行いたいのである。すなわち塩分を除去する、あるいは塩分存在下でも有機物を発酵させることを企図するのである。しかしこれを処理プロセスで行うのはかなりの難題である。シンプルに行うには実効的な塩分濃度を低下させてくれる土壌中の微生物を使うのが得策と考えた。実際このような考え方は下記の特許文献にも開示されているものである。
【特許文献2】特開2002−051767号公報
【特許文献3】特開2008−199938号公報
【特許文献4】特開2009−011985号公報
【0034】
その選別には上述の方法で採取・選別した「高温発酵微生物」の各組に、重量比で投与栄養分総量の5%の塩を加えて発酵を観察した。多くの組は「自然発酵温度」が塩を加えなかった場合に比し低下し、与えた栄養分の分解も遅延気味であった。残りの僅かではあったがいくつかの組は、特段の変化もなく70℃を超える発酵温度を示し、分解も進んでいた。そしてこれらの組に特有的に含まれている微生物を同定し、塩分に強い微生物群とみなした。前記の外部分析機関での分析結果では、具体的名前は後述するがともに通性嫌気性微生物であり、好塩菌と呼ばれるものであった。普通には、好塩菌は好気性や偏性嫌気性のものが多いのであるが、本発明の採取・選別方法の特徴から、品種は多くはなかったが通性嫌気性微生物が捕まったのではないかと思われる。
【0035】
本発明ではこの微生物群を「高温発酵微生物」の中で、特に「高温発酵好塩菌」と呼称することにする。塩分も含まれることの多い一般的な有機物の高速発酵には、「高温発酵微生物」の中にこの「高温発酵好塩菌」が含まれていることが好ましいと考えたのである。好塩菌は塩素イオンを窒素分に結合させてその濃度を低下させ、他の微生物の発酵阻害を防ぐ作用を持っていると言われている。なお、前記特開2002−051767号公報では新種バチルス菌であって耐酸性(酸性条件下で塩分を分解する能力)を有する菌が開示されているが、発酵温度は記されていない。また標準的な家庭生ゴミ1Kgの処理時間の諸例が示されているが全て4時間以上である。特開2008−199938号公報では発酵温度は温度32〜50℃と記されている。特開2009−011985号公報では、発酵温度20〜28℃、しかし50〜60℃になることがある、と記されている。これらの公知技術は好塩菌の作用を有効に活かしているものの、70℃を超える自然発酵温度の高さを活用し、処理時間の高速化を図ることは示唆していない。
【0036】
第3の解決手段に示した「高温発酵微生物」は、第1の解決手段の項で説明した採取・選別方法により得られたものであり、前記の外部分析機関での分析結果によって同定されたものである。自然界にはもっと多くの高い分解・消化作用を示す微生物がいるはずであるが、現在把握しているのがこれらである。少なくともこれらを単独あるいは複合的に用いることで本発明の目的の大半は達成できる。補足すると、これらのうちシュードモナス属エレギノーサ種(Pseudomonas・aeruginosa)は好気性であるが、その特性から発酵には寄与していると考えられる。偏性嫌気性微生物クロストリジウム属が1種類含まれていたが主要な働きは疑問であるので特記していない。バシラス属ベリゼンシス種(Bacillus・velezensis)には粘度を著しく低下させる作用があり、有機物処理過程でご飯や麺類のデンプン質が多いとき団子状になることを軽減してくれる極めて貴重な働き者である。
【0037】
第4の解決手段に示した「高温発酵好塩菌」は、第2の解決手段の項で説明した選別方法により得られたものであり、前記の外部分析機関での分析結果によって同定されたものである。同様に自然界にはもっと多くの高温発酵性の好塩菌がいるはずであるが、現在把握しているのがこれらである。少なくともこれらを単独あるいは複合的に用いることで本発明の目的を補完的に達成できる。補足すると、アスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)は分解の難しいリグニンを分解する酵素も作り出している。これらの高温発酵性の好塩菌はダイオキシンの分解能や重金属類とPCBに耐性を有しているようである。
【0038】
第5の解決手段は、実際の使用に当たって、あらためて100℃以上140℃以下の温度で20分以上40分以下の高温加熱処理をする、というものである。これらの温度領域や時間は一般的な滅菌条件であるが、本発明の微生物群にこの処理を施すのは極めて格好の組み合わせである。実際にはもう少し幅広い範囲での実施でも問題はないであろう。しかし少なくともこの処理条件は押えるべき要件の一つである。この処理によって高温処理に耐え生き延びたもののみを使うということであり、かつ雑菌駆除がなされ腐敗を押えることができ、もって臭気発生を抑制できるからである。
【0039】
もともと高温発酵により選別された微生物群は、高温下での活動が群を抜いて活発で優占的な存在である。しかしそれでも微生物群の様々な取り扱い時には雑菌汚染が避けられない。したがって使用前にこのような高温加熱処理は必要であり、好ましくは所定の周期で行うべきである。処理材の準備としてだけでなく処理装置の運転のたびに、この高温加熱処理を行うとさらに好ましい。加熱制御に関係する各段落において具体的に記述してある。本発明の処理材は、その高い「自然発酵温度」性とこの高温加熱処理により、雑菌の死滅が図られ悪臭をほとんどと言ってよいほどに放たないのである。同時に雑菌死滅により保存安定性が担保される。
【0040】
こうして得られた微生物群は、他の微生物菌を圧倒して生存する点にある。さらに他の微生物に比べ耐酸性や拮抗性も高く、多くは水溶性であり水分過多の環境下において強いという特性を持っている。また、適度な酸化還元ポテンシャルを持ち緩衝能が高い。芽胞形成による休眠効果を持っていることも保存において重要な長所である。
【0041】
これまで説明してきた微生物群による処理材の示す作用を、実験データを用いて説明する。図3に、(I)処理材も装置も市販機の場合、(II)市販機の処理材をマイクロ波加熱方式で用いた場合、(III)本発明の「高温発酵好塩菌」を含まない「高温発酵微生物」で構成された処理材をマイクロ波加熱方式で用いた場合、(IV)本発明の「高温発酵好塩菌」を含む「高温発酵微生物」で構成された処理材をマイクロ波加熱方式で用いた場合、以上の4とおりの方法について処理速度と臭気を調べた実験の結果を示す。なお本実験ではいずれの場合にも装置の脱臭装置は通さずに臭いレベルの判定を行った。
【0042】
ここで用いた有機物は「約150gの生さんま1匹、約3cm角に形を整えた豚肉150g、みじん切りにした野菜200g、甘味物100g、塩50g、ご飯とうどん計200g、卵150g、合計1kg」の試料である。
【0043】
本実験に用いた上記(III)では「高温発酵好塩菌」を含まない「高温発酵微生物」を用いた。分析ではボルテラ属キリアタ種(Voltella・ciliata)、カプリアビダス属コンピネンシス種(Cupriavidus・campinensis)、バシラス属ベリゼンシス種(Bacillus・velezensis)、プロビデンシア属レットゲリ種(Providencia・rettgeri)が含まれていた。(IV)では(III)にさらに「高温発酵好塩菌」のアスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)とモニリエラ属(Monilliera・sp)とペニシリウム属グラブラム種(Penicillium・glabrum)の加わった微生物群を用いた。これらを、粒径略2mmの活性炭を担持体とする培地に接種し、使用前に記述のごとき高温加熱処理を施した。
【0044】
実験では、試料1000gと処理材1000gを混合した。(I)は市販機を使いそのプログラムに従い処理した。(III)と(IV)での加熱は後述する図5の有機物処理機を使った。上部に設けたマイクロ波加熱装置30を用い、1.2KWのマグネトロンの出力を制御して第一段階は95℃に急速加熱し、この温度で5分間維持し、第2段階で70℃を下回らないように維持した。その間、常に緩やかな(〜5rpm)撹拌を続け、発生気体は吸出し続けた。(II)では市販機の処理材を上記図4の有機物処理機に投入し、マイクロ波加熱装置30を用いカタログに従い80±5℃で制御した。好気的な処理材であるから導入口からも熱風を吹き込み、撹拌も早め(〜10rpm)にした。いずれの場合も、試料が減量して初期の30%以下になったと思われる時(T時間)に取り出し残量を計量した。仮にMgとする。処理速度は、減量/処理時間=(1000−M)/Tで換算した。
【0045】
臭気の程度の評価は次のようにして行った。先ず3人の実験者が、全処理工程中の臭気の中から官能検査で小(レベルA)、中(レベルB)、大(レベルC)の認識を確認しあった。レベルAは極めてかすかな臭いであり屋外使用では全く問題ならないレベルである。屋内使用でも脱臭材で簡単に無臭化できる。レベルBはかすかな腐葉土のような臭いが感じられ、屋外使用では通常は問題にならないが必要なら脱臭装置で無臭化できるレベルである。室内仕様では脱臭装置が必須であるがこれにより無臭化できる。レベルCは普通の人には不快感をもたらす臭気の強さであり、脱臭装置により無臭化はできるが頻度の高いメンテナンスを行う必要があるくらい臭気量が多く、実用には供しにくいレベルである。なおB−はBよりわずかに臭気が少ないがAよりは明らかにBの範疇である、 A+はAよりわずかに臭気が多いがBよりは明らかにAの範疇である、というレベルである。
【0046】
図3の実験結果において、実験者3人の官能検査結果は全て一致しばらつきは無かった。この実験結果から分かるように、もっぱら好気性微生物群を用いる市販品の有機物処理材では処理時間が長く臭気の発生は少ない。そして本発明になる特定の通性嫌気性微生物群を用いる処理材でも、臭気レベルはさらに低く処理時間が大幅に短くなっている。処理速度に関しては、処理速度表現(g/時)で、I:167、II:195、III:800、IV:1,012であった。IとIIの差は、マイクロ波加熱が単なる熱風吹きこみ方式より加熱効率が高いためだと考えられる。IとIIの組に比べIIIとIVの組の処理速度が格段に速い主要因は加熱方式ではなく使った微生物の差である。さらに「高温発酵好塩菌」を含まない「高温発酵微生物」は、「高温発酵好塩菌」を含む「高温発酵微生物」に比べ処理時間は少し長くなっている。
【0047】
別の実験(緩衝能測定と言われている)で本発明の「高温発酵好塩菌」を含む「高温発酵微生物」(「本案処理材」と呼称する)が有する消臭効果をモデル的に検討した。先ずイオン交換水に「本案処理材」を添加した溶液(P)50mlとブランクのイオン交換水(Q)50mlずつを準備した。次いでこれらPおよびQの溶液に、0.0005N(規定)の塩酸あるいはアンモニア水を1mlずつ添加していきPHの変化を測定した。
【0048】
結果は図4に示す。「本案処理材」を添加した溶液PはpH7〜8で安定した緩衝能を有していることが読み取れる。一方ブランク溶液Qはそれぞれ酸性側およびアルカリ性側に変化していっている。このことから「本案処理材」は、添加した酸・アルカリを分解か反応により中和していることが分かる。すなわち「本案処理材」は緩衝能が極めて高いのである。このことは当然ながら、有機物処理中に発生する中間生成物(多くは臭気が激しい)が水分の存在で酸性またはアルカリ性となるが、これらを中和していると考えられる。緩衝能の高さはこのような臭気成分の分解・中性化にとどまらず、有機物中に存在する多種多様な物質の化学的変化に対して、システム全体の安寧維持の点からも重要な機能である。このため、臭気を抑えると同時に、繰り返し使用に対しても安定した処理能力を示すのである。
【0049】
上記第6の解決手段による作用は、微生物の活動エネルギー確保のためには炭素比(C/N比)が大切であることに関する。一般的には30〜40%が望ましいとされている。本発明になる微生物群の発酵能力は極めて高いものである。したがってこの微生物の担持体に一般的に使われるコーヒー豆の細粒やもみ殻などの有機物を採用すると、これらの担持体自体が微生物によって消化されていき、担持体としての機能が低下してくる。適宜担持体を補給する方法もあろうが、好ましくは微生物に消化されにくい無機物の担持体を使いうことである。詳しくは後述する。しかしその場合には逆に炭素不足が惹起される。解決策は最初に炭素材料を配合しておくことである。例えば、カーボン繊維を10〜30重量%混ぜ込んで使用に供し、繰り返し使用でも略500回の長期間にわたり安定した性能を示した。その他の炭素材料としては、木炭粉や石炭粉も使うことができる。混入量は使用目的により最適化する設計要項の一つである。
【0050】
上記第7の解決手段による作用は、次のように考えられる。基本的には「高温発酵微生物」が発酵・分解を進めるのであるが、活動開始の呼び水としての栄養取得が容易にできれば動き出しが早い。アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の酵素は活動活発化の前状態の微生物群に、有機物を素早く分解して栄養分を食べやすいものにしてくれる役割を持つ。アミラーゼはデンプン質の消化促進酵素、プロテアーゼはたんぱく質の消化促進酵素、リパーゼは脂肪分の消化促進酵素、セルラーゼは繊維質の消化促進酵素である。実験ではバラツキはあるものの10%くらいの処理速度の短縮が見られた。微生物担持体に付着した微生物群1000gに対して約1mg量のこれらの酵素を混入させ、1日間寝かせて平衡状態になったところで有機物処理材として用いた。
【0051】
上記第8の解決手段による作用は、有機物処理材を装填した有機物処理機に有機物を投入し、加熱の第1段階はこの有機物処理材の耐熱温度を超えない至適生育温度域以上の高温域で加熱することによって、第1に休止中に増えたかもしれない雑菌を死滅させることである。第2の作用は有機物に含まれる過剰な水分を、本格的な発酵に先立ち先ずは低減させることである。過剰な水分は発酵・分解の妨げになることはよく知られている。水分が適量にまで低下したところで、第2段階として有機物処理材の至適生育温度域で加熱制御することによって、水分と温度が有機物処理材の増殖環境として整えられる。
【0052】
第9の解決手段は上記第8の解決手段における処理方法の機能を最大限に活用する有機物処理材は、解決手段1〜7記載の有機物処理材であることを規定している。第8の解決手段はいわば加熱と水分低減の加速方法であり、70℃を超え100℃近い高温発酵の微生物に適用されてこそその実力を活かせるし、逆に「高温発酵微生物」の高速発酵能力も、このような制御方式を適用することで最大化できるのである。
【0053】
第10の解決手段は加熱手段に関するものであり、特に本発明の処理材の高温発酵性と高速性を最大限に引き出すための工夫に関するものである。処理材の発酵を助ける加熱には、大別すると3方法ある。広く使われているのは熱風加熱である。これは好気発酵にはうってつけであるが、「準嫌気発酵」である本発明の通性嫌気性微生物を主体として用いる場合には不都合である。2番目は、処理容器である釜を加熱しこれにより処理材と処理物に熱を伝え温める「釜加熱」方法である。所望の温度に達するのに長時間を要する。3番目はマイクロ波加熱方式である。これは処理材と処理物に直接働きかけて昇温させるので極めて効率的である。特に水分蒸発の誘発は特記すべき特長である。熱風吹きつけのごとき空気の大量導入も無縁であるし、「釜加熱」のように熱伝導を図るため撹拌をこまめに行う必要がない。ともに「準嫌気発酵」環境を破壊している。いっぽう、本発明の1部であるマイクロ波加熱方式であれば、「準嫌気発酵」環境を維持しつつ短時間の水蒸気蒸発を促進し、昇温と温度制御を迅速かつ正確に行えるのである。
【0054】
マイクロ波加熱の装置は下記の特許文献に詳しく記されている。しかしほん文献では有機物処理材に、主体が通性嫌気性微生物であって「高温発酵微生物」である処理材を使うことは、一切示唆していない。
【特許文献5】特開平8−197035号公報
【0055】
前記第8の解決手段の項で述べた第一段階の有機物処理材に含まれる過剰水分の減量速度は、マイクロ波加熱方式の採用によって数分の一に早まる。第2段階の有機物処理材分解工程も加熱の均一化と、緩やかで済む撹拌がもたらす過剰とならない酸素供給量が、組み合わせた微生物群の繁殖活動に良い作用をもたらしているようである。なお一般的には水分量は時間とともに減量するが、マイクロ波加熱はそのスピードが特に速く、繁殖活動適域から外れることがある。必要に応じて一般的に使われているどのような方法でも良いが、適度の水分維持の仕組みを備えるのも一方法である。具体例は実施例の項で後述する。いずれにしても、この急速高温加熱手段が「高温発酵微生物」の高速発酵能力を最大化できるのである。
【発明の効果】
【0056】
上述したように、有機物処理材の主要構成が通性嫌気性微生物群であってさらにこの微生物群の「自然発酵温度」が常温環境で70℃以上120℃以下となる「高温発酵微生物」を選定し採用したことは、有機物処理時間のかってない短縮と臭気低減の実現をもたらした。また、「高温発酵好塩菌」を含むことや酵素と炭素を配合することにより、処理時間短縮効果の最大化を図ることができた。2段階加熱方式や「準嫌気発酵」環境を作る処理装置の機構の工夫、特にマイクロ波加熱方式の採用は、急速加熱とこれらの微生物群の活動を促す最適温度管理を容易にし、加えて通性嫌気発酵を阻害する大量の熱風吹きこみを必要としない利点があり、「高温発酵微生物」有機物処理材とのベストマッチングが図れたと言える。
【0057】
本発明の有機物処理材・処理方法・処理装置によって、処理時間の短縮と発生臭気の抑制がなされるが、これは家庭用有機物処理機においては、従来臭気のため屋外設置でしか使えなかったものを屋内でも使用可能にし、今後の普及の端緒となることが期待できる。さらに従来の屋内使用ができることゆえに普及している加熱式に比べ、これよりも処理エネルギーが少ないこと、有機物の減量度合いが大であるから取り出し頻度が少なくて済むこと、ひいては自治体あるいは業者による処理物回収頻度が下がること、回収物の総量は当然低減されること、したがって回収コスト・エネルギーおよび焼却コスト・エネルギーの低減と焼却炉の長寿命化をもたらしてくれること、などと計り知れない利点をもたらしてくれる。
【0058】
業務用有機物処理機においては、家庭用と同様な効果に加え、業務用特有の効果も得られる。すなわち、レストラン・ホテル・デパートなどでは通常深夜にゴミを投入し早朝業者による回収がシステム化されているし、そうでないと業務上・社会生活上やっかいな問題を起こす。ここではたとえば数時間を超す処理時間の従来の方式は使えない。仕方なく大量の有機物のままの回収を余儀なくされている。本発明の処理材と方法では早朝までに10%以下程度までの減量を達成してくれるのであるから、現行システムに容易に入り込める。加えて処理エネルギーが少ないこと、回収物の総量が低減され回収エネルギーも少ないこと、家庭用と同様に数々の利点をもたらしてくれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
1.有機物処理材の構成に関する処理材の最良の実施形態は、先の課題解決手段第1〜第7とその作用の説明の項で詳述した。その「基本となる技術思想」、これに立脚して開発された有機物処理材の構成、特に骨格となるところの通性嫌気性微生物主体であって「自然発酵温度」の高い微生物群に着目した理由、採取・選別の手法、高温加熱処理の意義、有機物の発酵だけでなく阻害要因の塩分対策を微生物群に委ねることとその具現化、などである。そこで開示した「高温発酵微生物」及びこれに「高温発酵好塩菌」を含み高温加熱処理された有機物処理材は本発明の「基本」であり、さらに第4及び第5の課題解決手段で開示した具体的な微生物群は極めて優れた性能を持っている。しかし自然界にはもっと多くの微生物が存在している。本発明で紹介した「基本となる技術思想」と選別の考え方・手法を基にさらに多様な微生物群を探し出し利用できるはずである。
【0060】
2.有機物処理方法と有機物処理装置:図5に本発明の方法を具現化した装置20の概略を前記の市販品との比較において示す。開閉自在のふた1’にはマイクロ波加熱装置30が取り付けられている。出し入れ自在の釜形状の有機物処理室4’には撹拌羽5’が設けられており、装填されている有機物処理材6’と使用にあたり投入された有機物7を撹拌するようになっている。気体吸出口3’からの気体は脱臭装置8’通過しファン9’によって機外に排出される。2’は有機物処理室4’への空気導入口である。基本的な機能部は前記第8及び9の解決手段とその作用の項で述べたとおりであるが、最良の形態とするにはさらにいくつかのポイントとなる方法や装置の考案が有効である。
【0061】
2.1:第1点は水分量の制御方法である。発酵の前半は水分過多になりやすい。一部の有機物処理装置では発生水分を下水道に流す方式がとられているが、本発明ではあくまでも自己完結的な方法をとる。好ましくは既述のように本格的な発酵に先立ち、急速高温加熱により有機物の持つ過剰な水分を先ず蒸発させ吸い出す。急速高温加熱にはマイクロ波加熱が最適である。温度制御は処理の対象物や容量により最初に温度と時間をプログラムしておいても良いし、重量や水分量をモニターし温度と時間を自動的に制御しても良い。次いで発酵適温域で温度を管理しつつ発生水蒸気を吸い出す。
【0062】
ここでの要点は、処理材が通性嫌気性微生物を主体としているので、その能力を引き出すための空気量に関する必須要件である「準嫌気発酵」環境を作りだすことに係るものである。すなわちわずかな空気の存在を維持する発酵環境作りを具現化する工夫である。例えば加熱のために熱風を処理材に吹き付けるようなことは避けるべきである。酸素過多をもたらすからである。しかし加熱は他の方法を採るとしても、発酵によって発生する水蒸気やその他の気体は排除せねばならない。そこで有機物処理室は原則密閉容器ないしは密閉室とし、発生気体の吸い出しだけができるようにする。具体的には有機物と有機物処理材の上部位置に比較的小さな空気導入口と気体吸出口を設け、この気体吸出口は気体吸出手段につながっている構造とする。このような配置にして、吹き込むのではなく吸い出すのである。こうして処理材に新鮮な空気を直接当てないで、蒸発してきた水蒸気や気体を連れ出すことができる。
【0063】
すなわち、図5の矢印・吸い出し気流21で示すが、このように空気導入口2から入った空気は処理室の上部を流れて、気体吸出口3’から吸い出される。その間発生した水蒸気や気体を一緒に運び出すのである。1例であるが1Kg程度の家庭生ゴミの処理においては、1,000〜4,000cc/秒程度の風量で滞りなく排出できる。「準嫌気発酵」環境のため緩やかではあるが、処理物の撹拌は水分の蒸発には必須である。一方、往々にして発酵の後半過程に入ると水分不足が起こることがある。そのまま進行させても発酵終結間近なので構わないが、水分センサーを設けてたとえば40%を切ったところで水噴霧手段(図示せず)から水分を供給する方法をとるのも良い。
【0064】
2.2:第2点は酸素量のコントロールである。使用する有機物処理材の主体は通性嫌気性微生物であるから、繰り返しになるが「準嫌気発酵」環境を保たねばならない。上述のように、▲1▼有機物処理室4’は基本的には密封状態、▲2▼有機物と有機物処理材より上部位置に空気導入口2’と気体吸出口3’を設け、空気を吹き込むのではなく吸い出す、▲3▼撹拌は有機物と処理材の接触を増やし発生水蒸気を排出させるために必要である。撹拌は「準嫌気発酵」環境を保たつためには、それは緩やかなものでなければならない。撹拌羽の形状にもよるが、数回転/分ていどが適当である。
【0065】
2.3:第3点は加熱方法である。既存の様々な技術や方法が使えるが、本発明の目的の一つである迅速な処理に重点を置くと、前記第10の解決手段とその作用の項で述べたように、マイクロ波加熱が最良である。他の実施例としては、処理室を鉄容器で作り電磁誘導加熱を行う方法も採れる。さらに温度センサーを設けて所望の温度域に細かく制御することはさらに効果的である。重量変化や水分量をモニターし水分過多と過剰減少の両極端となることを押えることも必要なら取り得る設計要項である。
【0066】
12時間近くかけて処理する場合にはスタートダッシュはそれほど重要ではない。しかしたとえば1時間で処理する、それに答えてくれる微生物群を開発した、その特性を最大限に発揮させるのだ、となると、スタートダッシュは重要である。もっとも望ましい方法は前記第8、9及び10の解決手段とその作用の項で述べた。要点をまとめる。有機物投入後の第一段階は、有機物処理材の死滅温度を超えない高温域まで一気に加熱し、水分の蒸発を促す。同時にこの高温加熱は雑菌処理にもなっている。第2段階として有機物処理材の至適生育温度に温度を下げ発酵を促す。加熱手段はマイクロ波加熱方式が最良である。既述のように、マイクロ波加熱は電磁波が水分子の振動を誘起し発熱させる原理であり、水分の温度上昇は極めて早い。有機物を直接しかも内部から加熱することになる。次に良い方法は有機物処理において使用例はないが、一般家庭でも使われている電磁誘導加熱である。
【0067】
具体的な実施例を示す。第一段階の温度は主たる目的が水分蒸発であるから、90℃から100℃の範囲が実際的である。既述のようにこの高温加熱処理は滅菌にもなっている。投入電力1.2〜1.5KWの出力であれば、1Kg程度の家庭生ゴミは約7〜8分で(室温が常温の場合)到達し激しく水蒸気が発生し始める。さらに3〜5分間この温度を維持し水蒸気を吸い出し続ける。次いで電力投入を切り、水蒸気は吸い出しつながら放熱を待ち、第2段階の75±5℃の発酵適温域で温度を維持する。実際には発酵が始まっているので、電力投入を止めていても自己発熱で温度が下がらないことが多々起こる。そのまま任せておけばよい。放熱段階では排気ファンの排出力を上げ積極的に冷気を吸引させることも設計事項の一つである。
【0068】
さらに30〜40分を過ぎ大半の有機物が消化されてくると発熱温度が下がってくる。ここでの温度制御にはいくつかの方法がある。有機物の初期投入量が分かっていたら、それに対応した一定時間経過後発酵温度維持の温度制御を停止し、自然放熱に任せる。あるいは重量をモニターしつつ、有機物の初期投入量の例えば20%を切ったところで温度制御を停止し、自然放熱に任せる。さらに両者において、自然放熱過程で温度がたとえば40℃となったところで、この中温発酵温度で約20分維持する方法がある。後者のほうが発酵の最終段階の比較的低温域で進むリグニン分解や処理材の乾燥促進には好ましいようであるが、必須ではない。
【0069】
2.4:第4点は微生物坦持体である。一般的にはコーヒー豆かす、木製チップ、もみ殻や椰子殻を粉末にしたもの、牡蠣やホタテなどの貝殻を粉砕した粉末、活性炭などが用いられている。本発明の微生物群は発酵能力が高いので、坦持体が有機物の場合は、繰り返し使用で坦持体自体が消化されていく。適宜補給することが必要となる。その意味では微生物坦持体は無機物が好ましい。たとえば、平均粒径1〜5mmの粘土、砂、珪藻土粉末、セラミック、ゼオライト、金属粉などである。このとき微生物坦持体に前もって微生物の栄養分となる糖分、脂肪分、アミノ酸などを溶かした溶液を付着させておく、あるいは坦持体と微生物群を混ぜるときにこれらの栄養分も加えると良い。また、微生物坦持体は不定形や多孔質形状であると表面積が増しあるいは孔中に微生物を保持できるので、微生物の増殖を助け棲みかとしては好都合であり、ひとつの選択肢である。
【0070】
2.5:第5点は、発酵が最高潮時期になると水分の生成量が増え、蒸発での発散では追いつかず処理材と分解中の有機物が団子状になってくることへの対策である。本発明になる高温発酵通性嫌気性微生物であるバシラス属ベリゼンシス種(Bacillus・velezensis)は粘度を低下させる作用があり、特にでんぷん質が多いとき団子状になることを軽減してくれるが、完全ではない。効果的な対策を2案考案した。撹拌補助球と、撹拌羽の工夫である。
【0071】
▲1▼撹拌補助球の混入:比重が0.8〜3で撥水性表面を有する直径0.5〜2cmの球体を、処理材に対して重量比10〜20%混入する。撹拌羽だけでなくこの球体のランダムな動きによって団子状のほぐれが良くなった。硬質ポリ塩化ビニール、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレンをコーティングしたガラス玉などである。その他にも必ずしも撥水性表面ではないが、同サイズのセラミック球、ベントナイト球の混入も改善効果が見られた。
【0072】
▲2▼撹拌装置の撹拌羽根の取り付け角度の工夫:参考になるのはすし飯の混ぜ方である。すし飯を団子状にしないために、しゃもじの腹ですし飯を押すようにして混ぜるのではなく、少し斜めにしてしゃもじのエッジで切るようにして混ぜるのである。これに習い、羽根は回転方向に対して直角ではなく角度をつけるのである。図6に撹拌棒の先端に取り付けた撹拌羽の取り付け角度の実施例を示す。S1では、矢印で示す撹拌棒の回転進行方向にたいして、直角に取り付けた常識的な羽を示す。S2では撹拌棒の回転進行方向にたいして、斜めに取り付けた羽を示す。共に斜視図である。両者の下に平面図s1とs2を示す。撹拌棒の回転進行方向に対する羽の傾きが分かりやすく示されている。1例として45度で取り付けると、団子状になる程度が改善された。撹拌機能は当然低下し内容物のかき混ぜ効率は落ちるが、前述のように準嫌気的発酵なので酸素供給のために激しく撹拌する必要はなく、何の問題も起こらなかった。
【0073】
2.6:第6点は臭気低減のための好ましい実施例に関する。本発明では▲1▼「自然発酵温度」が常温環境で70℃以上120℃以下の範囲にある「高温発酵微生物」を使う。この「高温発酵微生物」は優占的であり、そのために低・中温発酵微生物を良く駆逐する。▲2▼「高温発酵微生物」に100℃以上140℃以下の温度で20分以上40分以下の高温加熱処理を施す。これにより低・中温発酵微生物を滅菌する。▲3▼特にカプリアビダス属コンピネンシス種(Cupriavidus・campinensis)とモニリエラ属(Monilliera・sp)は、発酵過程で生じる中間生成物(これが臭気のもとになることが多い)を速やかに分解し、最終生成物である炭酸ガスと水にする能力が高いと考えられている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は主に業務用及び家庭用生ゴミ処理への適用として説明されが、その他にも産業上の利用分野は広く存在する。生ゴミの他に、この方式の応用で様々な有機廃棄物の処理が可能である。食品加工残渣・食品汚泥、農業や畜産業における家畜の糞尿、造園業や林業における伐採枝の処理、製材業におけるバーグの処理、下水汚泥などの分野である。いずれこれらの大量処理分野ではそのバイオマス化が進むことが考えられるが、先ずは本発明になる処理は有要視されるものと考える。さらに本方式を発展させてメタンガスなどに変換することも考案されるであろう。しかし本発明になる有機物処理の価値は将来にわたっても続くものと考える。また、本発明になる有機物処理材は、使い方はそれなりの工夫が要るものの、汚水処理へ応用し好結果を得た。
【0075】
有機物処理材はたとえば6ヶ月も使い続けていると疲弊してきて発酵能力が低下してくる。無機物などの残渣も蓄積してくる。そこで交換するのであるが、この使用済み有機物処理材は貴重な資源である。すなわち含まれる窒素・リン等に着目し、これらの成分を利用して農地や緑地へ有機肥料あるいは土壌改良材として還元するのである。コンポスト化し有機質肥料や堆肥に混ぜ込んで再利用する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】従来の代表的な発酵式有機物処理機
【図2】至適生育温度の説明図
【図3】処理材と処理速度および発生臭気度実験結果
【図4】処理材の緩衝能測定結果
【図5】本発明の方法を具現化した発酵式有機物処理機
【図6】撹拌羽の取り付け角度
【符号の説明】
【0077】
10 従来の発酵式有機物処理機
1 ふた
2 吹き込み口2
3 気体排出口
4 有機物処理室
5 撹拌羽
6 有機物処理材
7 有機物
8 脱臭装置
9 排気ファン
11 吹き込み空気流
20 本発明の発酵式有機物処理機
30 マイクロ波加熱装置
1’ふた
2’空気導入口
3’気体吸出口
4’有機物処理室
5’撹拌羽
6’有機物処理材
8’脱臭装置
9’排気ファン
21 吸い出し気流
M:増殖活動量が100%になる温度=「自然発酵温度」相当
N:増殖活動量が略80%になる温度
P:イオン交換水に本発明の微生物群を添加した溶液
Q:ブランクのイオン交換水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を微生物により処理する有機物処理材において、該微生物が少なくとも通性嫌気性微生物を含み該微生物の「自然発酵温度」が常温環境で70℃以上120℃以下の範囲にある「高温発酵微生物」であることを特徴とする有機物処理材。
【請求項2】
請求項1の「高温発酵微生物」が「高温発酵好塩菌」を含むことを特徴とする有機物処理材。
【請求項3】
請求項1に記載の「高温発酵微生物」が、少なくともボルテラ属キリアタ種(Voltella・ciliata)、カプリアビダス属コンピネンシス種(Cupriavidus・campinensis)、トリコスポロン属(Trichosporon・sp)、バシラス属ベリゼンシス種(Bacillus・velezensis)、ユウペニシリウム属(Eupenicillium・sp)、プロビデンシア属レットゲリ種(Providencia・rettgeri)、コスモスポーラ属コンサーズ種(Cosmaspora・consors)、アスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)、モニリエラ属(Monilliera・sp)、ペニシリウム属グラブラム種(Penicillium・glabrum)、シュードアレシェリア属ボイディ種(Pseudoallescheria・boydii)とシュードモナス属エレギノーサ種(Pseudomonas・aeruginosa)のいずれか複数の微生物を含んでいることを特徴とする有機物処理材。
【請求項4】
請求項2に記載の「高温発酵好塩菌」が、少なくともアスペルギルス属テレウス種(Aspergillus・terreus)、モニリエラ属(Monilliera・sp)とペニシリウム属グラブラム種(Penicillium・glabrum)、シュードアレシェリア属ボイディ種(Pseudoallescheria・boydii)、シュードモナス属エレギノーサ種(Pseudomonas・aeruginosa)の単独あるいは複数の微生物を含んでいることを特徴とする有機物処理材。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の有機物処理材に、さらに100℃以上140℃以下の温度で20分以上40分以下の加熱処理を施したことを特徴とする有機物処理材。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の有機物処理材に、炭素材料が配合されていることを特徴とする有機物処理材。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載の有機物処理材に、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の有機物消化酵素が配合されていることを特徴とする有機物処理材。
【請求項8】
有機物処理材に有機物を投入し加熱手段で加熱し、撹拌し、もって有機物を発酵・減量させる有機物処理方法であって、有機物投入後該有機物処理材の耐熱温度を超えない該有機物処理材の至適生育温度域以上の温度域で一定時間加熱し、ついで至適生育温度域で加熱する2段階加熱であることを特徴とする有機物処理方法。
【請求項9】
請求項8において、有機物処理材が請求項1〜7記載のいずれか1項に記載の有機物処理材であることを特徴とする有機物処理方法。
【請求項10】
少なくとも加熱手段を有し有機物処理材と有機物とを加熱し有機物を発酵・減量させる有機物処理装置において、有機物処理材が請求項1〜7記載のいずれか1項に記載の有機物処理材であり該加熱手段がマイクロ波加熱であることを特徴とする有機物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194529(P2010−194529A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66948(P2009−66948)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(507254676)コスタトレーディング株式会社 (6)
【出願人】(598012050)
【Fターム(参考)】