説明

有機物酸化分解装置

【課題】充分高い酸化分解率が得られ、かつ効率的に液体中の有機物を湿式酸化し無害化する有機物酸化分解装置を提供する。
【解決手段】有機物を含有する液体に酸素含有ガスを供給し、前記有機物を湿式酸化させ無害化する有機物酸化分解装置1であって、気液混合手段11を備え、前記有機物を高温高圧下で酸化分解する第一酸化反応器10と、前記第一酸化反応器10から排出される有機物を高温高圧下で酸化分解する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器30と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含有する液体に酸素含有ガスを供給し、有機物を湿式酸化させ無害化する有機物酸化分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品廃棄物、し尿その他の有機物含有排水の処理法には、(1)焼却処理法、(2)醗酵処理法、(3)活性汚泥処理法及び(4)湿式酸化処理法などの方法がある。
【0003】
焼却処理法は、補助燃料を焚いて有機物含有排水を焼却炉内で焼却処理する方法である。焼却に際しては、有機物含有排水を火炎中に直接噴霧して焼却処理する方法や、排熱を利用して有機物含有排水を気化させたのちに火炎と接触させて焼却処理する方法などがある。また、省エネルギーのために蓄熱式酸化炉を用いる方法がある。特許文献1には、排熱を利用して有機物含有廃水を気化させたのちに蓄熱式酸化炉で焼却処理する方法について述べられている。焼却処理法には、複雑な操作を伴わずに安定した処理性が得られるという利点がある一方で、多くの問題点をもっている。それらを挙げると、高温での燃焼のため多くのエネルギーを要する、特に大量に含まれる水の蒸発潜熱と燃焼温度までの顕熱を供給するため多くのエネルギーを要する。燃焼設備や排熱回収設備さらに排ガス処理設備などのコストがかかる。ダイオキシンの発生や、大量のエネルギー(補助燃料)消費に伴う地球温暖化ガスの発生などの問題がある。このため、焼却処理は有機物含有排水の処理法としては有利な方法とは言い難い。
【0004】
醗酵処理法は、醗酵槽に好気性菌及び好気性菌により分解される被分解有機物を混合した混合物を含有する菌床を貯留し、この菌床に空気を供給して菌床中の好気性菌を増殖させ、この好気性菌が生成する酵素の触媒作用により被分解有機物を醗酵分解させる方法である。特許文献2、特許文献3に、醗酵処理法に於いて菌床の調整法や空気の供給法に関する改良が述べられている。しかし、醗酵処理による方法は、品質の変化する廃水に対して安定した処理性や高い生産性を得るのは難しい。悪臭や廃棄物処理などの問題もあり工業規模の有機物含有排水の処理法にはなり難い。
【0005】
活性汚泥処理法は、比較的有機物濃度が薄く固形分(SS)が自然沈降し易い有機物含有排水の処理法として用いられる方法である。特許文献4には、有機物濃度が高く、またSS濃度も高く、自然沈降によって清澄な上澄液が得られないような有機物含有排水に対して、他の工業廃水を混ぜて後に静置法により清澄な上澄液を得てから活性汚泥処理をする方法が述べられている。また、特許文献5には、有機物濃度が高く且つSS濃度の高い廃液を予め加熱処理して発生する固形分を取り除いた後に活性汚泥処理をする方法について述べられている。しかし、活性汚泥処理法は、広い施設面積を要し余剰汚泥の処理も必要である。また悪臭対策が必要である。更に有機物濃度が高く且つSS濃度の高い排水に対して特許文献4や特許文献5の処理を加えるとすれば、設備コストやエネルギーその他の処理コストも大きくなり、有機物含有排水の処理法として有利な方法とは言い難い。
【0006】
湿式酸化処理法は、有機物含有排水に酸素含有ガスを加えて、高温、高圧容器内で有機物を酸化させ、水と炭酸ガスなどに分解し無害化するもので、液体の状態のままで処理するので装置をコンパクト化することが可能で、しかも酸化開始温度にまで昇温するのに大きな蒸発潜熱を与える必要が無い。また有機物濃度がある程度(数%)以上であれば、一旦酸化分解が始まればその反応熱で反応を継続することができ、さらに余剰の熱を回収することもできる。湿式酸化処理法は、比較的高濃度の有機物含有排水の処理に適した方法である。特許文献6には廃棄物に含まれる固形状有機物をスラリー状にする手段と、該スラリーに含まれる有機物を湿式酸化分解・液化する手段と、該液化した処理液を触媒により無機化する手段とからなることを特徴とする有機廃棄物の無害化システムについて述べられている。また、特許文献7には、特許文献6のシステムに更に不純物吸着装置、高度浄水装置、炭酸ガス濃縮装置、更に炭酸ガスを水素と反応させてメタンガスを生成する炭酸ガス還元装置を備えていることを特徴とする有機廃棄物及び有機排水の再資源化システムについて述べられている。これらの二つの特許文献には、有機物含有廃水の湿式酸化処理に関する基本的なシステムが述べられている。
【特許文献1】特許公表2002−523718号公報
【特許文献2】特開平10−287485号公報
【特許文献3】特開平10−328643号公報
【特許文献4】特開平11−188370号公報
【特許文献5】特開2001−310197号公報
【特許文献6】特許第2879199号公報
【特許文献7】特許第3716286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機物含有排水処理、又は有機物を含む液体の処理を、湿式酸化処理法により工業規模で効率よく経済的に行うためには、酸化分解反応を効率的に遂行するプロセス、装置を提供する必要がある。酸化分解反応を効率的に遂行するプロセス、装置とするのための因子としては、有機物を含む液体と酸素含有ガスとの気液接触、反応時間、反応温度・圧力のコントロールなどが挙げられ、これらに関して、酸化分解反応を効率的に遂行するための形態を見出して、プロセス、装置として具体化する必要がある。これらの観点から上記二つの特許文献を見ると、僅かに特許文献7に酸化分解反応器内部に半月板状のバッフル板を備えることや、供給した空気を有機物と接触し易くするための散気板を設けることの記述があるが、それ以外には酸化分解反応を効率的に、又は最適に遂行するためのプロセス、装置に関する特段の記述はない。
【0008】
本発明の目的は、充分高い酸化分解率が得られ、かつ効率的に液体中の有機物を湿式酸化し無害化する有機物酸化分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機物を含有する液体に酸素含有ガスを供給し、前記有機物を湿式酸化させ無害化する有機物酸化分解装置であって、気液混合手段を備え、前記有機物を高温高圧下で酸化分解する第一酸化反応器と、前記第一酸化反応器から排出される有機物を高温高圧下で酸化分解する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器と、を含むことを特徴とする有機物酸化分解装置である。
【0010】
また本発明は、前記有機物酸化分解装置において、前記第一酸化反応器へ供給する前記酸素含有ガスの量は、前記第一酸化反応器で必要とする酸素の量と前記第二酸反応器で必要とする酸素の量とを供給可能な量とし、前記第二酸化反応器へは、前記第一酸化反応器経由で、前記酸素含有ガスを供給することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記有機物酸化分解装置において、前記第一酸化反応器は、撹拌機を備える塔型酸化反応器であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記有機物酸化分解装置において、前記塔型酸化反応器は、内部を長手方向に多段に仕切る仕切板と、前記仕切板を支持固定する支持体と、各段毎に装着された撹拌翼と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記有機物酸化分解装置において、前記撹拌翼は、気泡を微細化可能な撹拌翼であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記有機物酸化分解装置において、前記支持体の外径をB、前記塔型酸化反応器の内径をD1、前記支持体の数をnとしたとき、(B/D1)1.2が0.2〜0.35であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機物酸化分解装置は、湿式酸化法により有機物を無害化する装置であって、酸化反応器は、気液混合手段を備える第一酸化反応器と、第一酸化反応器で酸化分解されなかった有機物を酸化分解する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器と、を含み構成される。第一酸化反応器を気液混合手段を備える反応器とすることで大きな酸化分解速度を確保し、第二酸化反応器を固定床触媒反応器とすることで押出し流れを確保する。このように異なる特性を有する反応器を直列に配置することで、効率的でかつ酸化分解率の優れた有機物酸化分解装置とすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、第二酸化反応器へは、第一酸化反応器経由で、前記酸素含有ガスを供給するので、第一酸化反応器内の酸素分圧が高くなり、酸化分解速度が大きくなる。さらに第一酸化反応器で微細化された酸素ガスが第二酸化反応器へ供給されるので、第二酸化反応器の酸化分解速度も大きくなる。これにより、有機物酸化分解装置を効率的で酸化分解率の優れた、かつコンパクトな装置とすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、第一酸化反応器は、撹拌機を備える塔型酸化反応器であるので、気液接触に優れ大きな酸化分解速度を確保することができる。さらに塔型であるので、押出し流れ性にも優れ、被処理物のショートパスを防止することが可能となり、全体として高い酸化分解率を確保することができる。また装置をコンパクト化することができる。
【0018】
また、本発明によれば、前記塔型酸化反応器は、仕切板により内部が長手方向に多段に仕切られ、各段毎に撹拌翼が取付けられているので、押出し流れ性がより高まり、効率的でかつ酸化分解率の優れた有機物酸化分解装置とすることができる。さらに装置をコンパク化することが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、前記塔型酸化反応器に使用する撹拌翼は、気泡を微細化可能な撹拌翼であるので、気液接触面積が大きく、大きな酸化分解速度を確保することができる。これにより効率的でかつ酸化分解率の優れた有機物酸化分解装置とすることができる。さらに装置をコンパク化することが可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、前記塔型酸化反応器において、前記支持体の外径をB、前記塔型反応器の内径をD1、前記支持体の数をnとしたとき、(B/D1)1.2が0.2〜0.35であるので、仕切板の支持体が、じゃま板として十分に機能する。これにより、塔型反応器の気液混合性能がより高まり、効率的でかつ酸化分解率の優れた有機物酸化分解装置とすることができる。さらに装置をコンパク化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態としての有機物酸化分解装置1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。図2は、図1の有機物酸化分解装置1に含まれる第一酸化反応器10の一部を示す部分断面図である。また図3は、図1の有機物酸化分解装置1に含まれる第一酸化反応器10の仕切板14の変形例の一部を示す平面図である。本発明の有機物酸化分解装置1は、酸化反応器に被処理物である有機物を含む液体を供給する被処理物供給装置4、第一酸化反応器10及び第二酸化反応器30からなる酸化反応器2、酸化反応器2で処理された処理物を回収する回収装置5、酸素含有ガスを酸化反応器に供給する酸素ガス供給装置6を主に構成される。
【0022】
被処理物供給装置4は、被処理物である有機物を含む液体を酸化反応器2に供給する装置で、被処理物を貯留する被処理物貯槽40、被処理物貯槽40内の有機物含有液体を定量供給する供給ポンプ42、供給ポンプ42の吐出部に設けられた熱交換器44を含み構成される。被処理物貯槽40は、有機物含有液体を撹拌混合し均一化すると共に、有機物が沈殿することを防止するための撹拌機41を備え、被処理物貯槽40内には、予め固形分が十分に粉砕されスラリー状に調整された有機物含有液体が貯留されている。供給ポンプ42は、被処理物を酸化反応器2に供給するため、酸化反応器2と同一の圧力以上に昇圧可能な性能を有するポンプであり、スラリー状の液体を供給可能な型式のポンプである。なお、供給ポンプ42は、必ずしもスラリー状の液体を供給可能なポンプである必要はなく、被処理物の性状に応じて適宜選択することができる。熱交換器44は、供給ポンプ42を介し酸化反応器2へ送る被処理物と、酸化反応器2から排出される処理物とを熱交換させ、被処理物を昇温する。ここで使用可能な熱交換器としては、多管式熱交換器など隔壁式熱交換器が例示され、被処理物の固形濃度が高い場合は、閉塞、保守を考慮した型式の熱交換器44とすることが好ましい。
【0023】
酸化反応器2は、撹拌機11を備える塔型反応器からなる第一酸化反応器10と、塔型反応器の下流側に位置する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器30とからなる。第一酸化反応器10は、撹拌機11を備えるため、気液接触性能に優れ、かつ塔型反応器であるため、反応容器12内が撹拌機11で撹拌混合されつつも、全体として押出し流れ性を有する。一方、第二酸化反応器30は、固定床触媒反応器であり、積極的に内容物を撹拌する手段を有さず、押出し流れ性に優れた酸化反応器である。このように本実施形態に示す酸化反応器2では、特性の異なる2つの酸化反応器を直列に組合せて使用している。
【0024】
第一酸化反応器10は、細長い反応容器12の長手方向に複数の仕切板14を有し、仕切板14により内部が多数の段、ここでは5段に仕切られている。各段には各々、撹拌翼としてタービン翼13が設置されている。仕切板14は、4本の支持棒17及び支持棒17に挿入されたスリーブ18からなる支持体16を介して上部フランジ15から吊り下げられた状態で固定されている。仕切板14は、中央部に液及びガスが流通するための開口部19が設けられている。また、仕切板14の外縁は、反応容器内壁27と僅かなクリアランスδ1を有する状態で取付けられている。同様に、支持体16も反応容器内壁27と僅かなクリアランスδ2を有している。タービン翼13は、各仕切板14の開口部19を貫通するように取付けられた撹拌軸20に固定され、その撹拌軸20は、上部フランジ15に軸封装置24を介して回転可能に取付けられている。タービン翼13は、従来から一般的に使用されるタービン翼と同様の形状であり、タービン翼13は、気泡を微細化可能で、気液接触性能に優れることから好ましい撹拌翼である。但し、気液接触性能に優れた撹拌翼であれば、タービン翼13に限定する必要はない。また本実施形態では、塔型反応器10の各段の撹拌翼を全て同じ形状の撹拌翼としたけれども、必ずしも全て同じ形状の撹拌翼でなくてもよい。ここで、気液接触性能とは、気泡を微細化し、又は気泡を液中に巻き込み、気液接触面積を増大させる性能を言う。
【0025】
反応容器12の下部には、被処理物及び酸素含有ガスを導入するための管路25が接続され、上部フランジ15には、処理物及びガスを排出するための管路26が接続されている。なお、酸素含有ガスは、反応容器12の下部に直接供給してもよい。また、外側には、長手方向に2分割されたジャケット22、23が取付けられている。塔型反応器10の場合、塔長が大きくなると、長手方向に温度分布が生じやすくなるが、このようにジャケットを長手方向で2分割し、ここに図示を省略した熱媒体供給装置から温度の異なる熱媒体を供給することで、温度分布を均一化することができる。酸化反応熱が大きく、除熱する必要がある場合は、温度の低い熱媒体を、酸化反応熱が小さく、加熱する必要がある場合は、温度の高い熱媒体を供給する。なお、ジャケットの分割数は2つに限定されるものではなく、必要に応じて分割数を変更可能なことは当然である。塔型反応器10の長さL1と反応容器の内径D1との比であるL1/D1の値は、特に限定されないけれども、L1/D1が大きいほど、反応容器内12全体の流れが押出し流れに近づき、未処理、未分解の被処理物が排出されにくくなるため好ましい。仕切板14の設置枚数も多いほど、反応器内12全体の流れが押出し流れに近づき、未処理の被処理物が排出されにくくなる。
【0026】
上記の通り、支持棒17と支持棒17に挿入され、仕切板14の位置決めを行うスリーブ18からなる支持体16は、仕切板14を所定の位置に固定することを主目的とするけれども、本発明では、反応容器12内の内容物の撹拌混合性能を高めるじゃま板としても機能させる。じゃま板は周知のように、撹拌混合性能を高めるために使用される部材であり、一般には、平板が使用されるけれども、本発明では、断面形状が円の支持体16をじゃま板とする。支持体16をじゃま板として機能させるためには、極端に細い支持体は避けるべきであり、支持体16は所定の大きさ以上であることが好ましく、実質的に支持体16の外径となるスリーブ18の外径をB、反応容器12の内径をD1、支持体16の数をnとしたとき、(B/D1)1.2が0.2〜0.35であることが好ましい。これより撹拌性能を大きく上昇させることができる。なお、支持棒とナットで仕切板を固定する場合は、支持棒が実質的にじゃま板として機能するので、支持棒を上記の支持体と考えればよい。
【0027】
本実施形態においては、仮に比較的大きな固形分が第一酸化反応器10に流入しても、支持体16は、反応容器12と僅かながらクリアランスδ2を有していることから、反応容器内壁27と直接接することがなく、この部分に固形分が堆積しないことも有利な点である。一般的に仕切板14が反応器内壁27に隙間なく、取付けられていると、仕切板14の裏面であって、反応容器12との接触部分にガスが溜まりやすいけれども、本実施形態に示す酸化反応器においては、仕切板14の外縁と反応器内壁27との間に僅かながらクリアランスδ1を有するので、仕切板14の裏面に気泡が滞留することがない。なお、必要に応じて、仕切板14の外縁部にガス抜き用の切欠部28を設けてもよい。
【0028】
仕切板14の中央部に開口された開口部19の大きさは、撹拌翼13の外径よりも小さいため、仕切板14及び撹拌翼13は、以下の要領で固定する。上部フランジ15に支持棒17を溶接などで固定する。撹拌棒20は、上部フランジ15の中心部に設けられた貫通孔(図示を省略)から、一端部を上部フランジ15から突出させ、上部フランジ15に取付けられた軸封装置24に固定する。軸封装置24は、反応容器12とのシール性が確保されれば、特定の種類のものに限定されることなく、周知の軸封装置を使用することができる。磁力誘導撹拌機で使用される磁力誘導シール、メカニカルシールなどが例示される。
【0029】
支持棒17、及び撹拌軸20を取付けた後、上部フランジ15を下に、上下逆の状態とする。まず、一番上部の撹拌翼13を撹拌軸20に取付ける。撹拌翼13は、中央にボス21を有し、ボス21には、撹拌翼13を撹拌軸20に固定するための固定ネジ(図示を省略)が設けられているため、撹拌軸20にボス21を通し、所定の位置で撹拌軸20に固定する。次に支持棒17に仕切板14の位置を決めるための所定の長さを有するスリーブ18を挿入する。挿入されたスリーブ18は、自重で落下し、上部フランジ15に当接した状態となる。次ぎに仕切板14を支持棒17に挿入する。挿入された仕切板14も自重で落下し、先に挿入したスリーブ18に当接する。以降同じ要領で、各段の撹拌翼13を固定し、仕切板14を支持棒17に挿入する。最後の仕切板14を挿入した後、支持棒17の先端部に設けられたネジ部に、ナットを嵌め入れ、支持棒17に挿入した全てのスリーブ18及び仕切板14が動かないようにナットで締め付ける。以上により、上部フランジ15に撹拌翼13、仕切板14を固定することができる。なお、仕切板14の固定は、支持棒を全ネジとし、ナットで各仕切板を挟み込み固定してもよいことはもちろんである。
【0030】
上記のような構成からなる第一酸化反応器10は、熱交換器44により加熱された被処理物、及び酸素ガス供給装置6から供給される酸素含有ガスを管路25を通じて受入れ、反応容器12内で被処理物である有機物を酸素含有ガスで湿式酸化させる。このときの第一酸化反応器10内の温度は、200℃以上水の臨界温度(374℃)以下とするのが望ましい。温度の下限は十分な反応速度が得られる温度で決まり、上限は被処理液が液状で取扱えることにより決まる。また圧力は、第一酸化反応器10内の温度において被処理液が充分に液体として存在し得る圧力以上とする。第一酸化反応器10で有機物の大半が酸化分解された被処理物は、消費されなかった酸素含有ガスと共に、第二酸化反応器30へ送られる。
【0031】
第二酸化反応器30は、第一酸化反応器10の下流側に管路26を介して直列に接続され、第一酸化反応器10で未処理、未分解であった有機物を酸化分解する。第二酸化反応器30は、縦長の反応容器31内に触媒32を充填した固定床触媒反応器である。反応容器31の外側には、反応容器31内の温度を調整するためのジャケット33が設けられている。ここで使用可能な触媒32としては、従来から使用されている、粒状あるいはペレット状のチタニア及びアルミナに、ルテニウム、パラジウム、白金などの貴金属を担持したものやゼオライトのような触媒を使用することができる。ここで、未処理、未分解であった有機物とは、第一酸化反応器10をショートパスし、全く酸化分解反応が起こっていない有機物、酸化分解反応が不完全な有機物、酸化分解したものの他の有機物に変化した有機物、例えば酢酸、無害化するまで酸化分解していない有機物を言う。
【0032】
第二酸化反応器30では、第一酸化反応器10では使用しなかった触媒を使用すると共に、積極的な気液混合を抑制し、反応容器31内の流れを押出し流れとすることで、均一な滞留時間を確保し、未分解物、未処理物のショートパスを抑制し、処理物を水質基準値を満足する程度まで無害化する。ここで反応容器31の長さL2と内径D2とのL2/D2比は、特定の値に限定されないけれども、上記の通り均一な滞留時間の確保、未処理物、未分解物のショートパスを抑制する観点から、大きい方が好ましい。第二酸化反応器30から排出される処理液は、熱交換器44で被処理物と熱交換し、自らの温度を下げ、処理液を回収する回収装置5へ送られる。第二酸化反応器30内の温度、圧力は第一酸化反応器10とほぼ同一である。
【0033】
回収装置5は、熱交換器44の出口に配設され、さらに処理液の温度を低下させる熱交換器53、熱交換器53の出口側に設置される圧力調整弁52、圧力調整弁52の出口側に設置される気液分離器51を含み構成される。供給ポンプ42から供給される被処理物と熱交換し、温度を低下させた処理液は、十分に温度を低下させるために熱交換器53で冷却される。この冷却媒体には、工業用水などを使用することが可能で、熱交換し温度を上昇させた冷却媒体を通じて熱エネルギの回収を行うことができる。圧力調整弁52は、酸化反応器2などの圧力を維持すると共に、この圧力を大気圧近傍まで減圧する。圧力調整弁52で大気圧近傍まで減圧された処理液は、気液分離器51で気体と液体とに分離された後、気体は大気に放散され、液体は回収される。回収された液体は、水質検査の後、必要に応じて下水道に放流される。
【0034】
第一酸化反応器10に供給する酸素含有ガスは、酸素ガス供給装置6を通じて行われる。酸素ボンベ61に充填された圧縮酸素を減圧弁62で減圧し圧力を調整した後、圧縮機63に導き、ここで所定の圧力まで昇圧する。圧縮機63の吐出部には、圧力変動を防止するためのバッファタンク64が設けられ、ここで圧力の均一化が図られた後、酸素ガスは、圧力調整弁65、流量調整弁66を介して第一酸化反応器10へ供給される。第二酸化反応器30で使用する酸素含有ガスは、第一酸化反応器10に第二酸化反応器30で使用する酸素含有ガスを余分に供給することで行う。これにより第二酸化反応器30で使用する酸素含有ガスは、第一酸化反応器10の処理物と一緒に第二酸化反応器30へ送られる。このように、第二酸化反応器30で使用する酸素含有ガスを、第一酸化反応器10を経由して送ることで、第一酸化反応器10への酸素ガス量が増加し、酸化分解反応が促進される。さらに、第二酸化反応器で30使用する酸素が液と十分に撹拌混合される効果もある。もちろん、第二酸化反応器30についても、第一酸化反応器10と同様、直接酸素含有ガスを供給してもよいことは言うまでもない。
【0035】
本実施形態では、酸素ガスボンベ61を使用して酸素ガスを第一酸化反応器10へ供給する例を示しているけれども、酸素含有ガス源としては、この他、空気、酸素富化膜などで酸素濃度を上昇させた空気、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式の酸素ガス発生装置を利用し製造した高濃度酸素ガス、液体酸素を蒸発させた酸素ガス及びこれらを混合したガスを利用することができる。
【0036】
以上のように本実施形態に示す有機物酸化分解装置1を使用することで、充分高い酸化率が得られかつ効率的に、液体中の有機物を湿式酸化し無害化することができる。特に酸化反応器2を、撹拌機11を備える塔型反応器からなる第一酸化反応器10、塔型反応器10の下流側に位置する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器30と、特性の異なる2つの酸化反応器2を直列に組合せて使用することで、効率的に液体中の有機物を湿式酸化することが可能となり、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0037】
酸化反応器2は、有機物酸化分解装置1の中心をなし、この酸化反応器2の性能が、有機物の分解率、装置の仕様に大きく影響する。湿式酸化法により有機物の分解を短時間にかつ高分解率とするためには、酸化分解速度を大きくすると共に、酸化反応器2内での平均滞留時間が均一で、ショートパスのない酸化反応器とする必要があり、これらを第一酸化反応器及び第二酸化反応器において実用的かつ効率的に実現する必要がある。酸化反応を2段に分けて行うことが効率的なことは、前記特許第2879199号公報に記載の通りである。酸化分解速度を大きくするためには、気液接触性能を高め、適正な反応温度に制御する必要がある。このためには、気液接触手段、例えば撹拌機を備える酸化反応器が好ましい。一方、酸化反応器内での平均滞留時間が均一で、ショートパスのない酸化反応器とするためには、反応器内で出きるだけ液の乱れを少なくする必要がある。
【0038】
このように相反する要求を取り込み、かつ装置全体を効率的かつコンパクトにするためには、第一酸化反応器及び第二酸化反応器において適正な反応器形式を選択する必要がある。本発明では、前段の酸化分解工程で使用する第一酸化反応器10に、撹拌機11付の反応器を使用することで、高い酸化分解速度、及び高い温度制御性を確保した。撹拌機11付の反応器を使用すると、反応容器12内の流れが、完全混合流れに近づき、被処理物がショートパスし未分解、未処理のまま排出する恐れがあるため、次ぎの2点により被処理物が未分解のまま排出されることを防止した。第一酸化反応器10を塔型反応器とすることで、反応器内の流れを全体として押出し流れに近づけ、未処理物、未分解物のショートパスを抑制した。
【0039】
第二酸化反応器30では、反応速度よりも未処理物、未分解物のショートパス、滞留時間の短い有機物を抑制する点を重視し、固定床触媒充填反応器とした。第二酸化反応器30では、積極的に気液接触させる手段を設けていないため、酸化分解速度の低下が懸念されるけれども、固体触媒の助けにより酸化分解速度を確保する。さらに温度制御性も懸念されるが、第二酸化反応器30の入口部おける有機物濃度は低く、第一酸化反応器に比較すると温度制御は容易である。以上のように前段に気液接触性能に優れる酸化反応器10を配置し、後段に押出し流れ性に優れる酸化反応器30を配置することで、全体として高い分解率を確保するとともに装置をコンパクト化することが可能となる。また装置全体を安価に製造することができる。
【0040】
第一酸化反応器では、特に気液接触性能が重視され、反応器内の流れが押出し流れに近いことが望ましい。第一酸化反応器で求められるこれら性能のレベルは、被処理物の有機物濃度、酸化分解速度、必要な滞留時間などにより異なる。よって、上記実施形態に示すように、塔型反応器を用い、塔型反応器の内部を多段に仕切り、各段毎に撹拌翼を設置することが好ましいけれども、仕切板を設けることなく、撹拌軸に多段の撹拌翼を取付ける方法であってもよい。また、気液接触手段として、充填物を使用し、これを充填した反応器を第一酸化反応器としてもよい。さらに撹拌機付槽型反応器を複数直列に接続する方法であってもよい。これらは、求められる性能のレベル、装置コスト等を考慮し、適宜選択すればよい。
【0041】
本発明の有機物酸化分解装置1では、有機物が完全に水に溶解した排水、スラリー状の有機物を含有する排水に限らず、有機物を水に混合した有機物含有液体であってもよい。例えば、食品、アルコール類などの製造過程において、含水率の高い有機物からなる脱水ケークが排出される場合がある。この脱水ケークは、排水ではないけれども、含水率が高く処理が容易ではない。このような有機物にあっては、これに水を加え、スラリーとすることで、本発明の有機物酸化分解装置で処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の一形態としての有機物酸化分解装置1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】図1の有機物酸化分解装置1に含まれる第一酸化反応器10の一部を示す部分断面図である。
【図3】図1の有機物酸化分解装置1に含まれる第一酸化反応器10の仕切板14の変形例の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 有機物酸化分解装置
6 酸素ガス供給装置
10 第一酸化反応器
11 撹拌機
12 反応容器
13 タービン翼
14 仕切板
16 支持体
30 第二酸化反応器
32 触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する液体に酸素含有ガスを供給し、前記有機物を湿式酸化させ無害化する有機物酸化分解装置であって、
気液混合手段を備え、前記有機物を高温高圧下で酸化分解する第一酸化反応器と、
前記第一酸化反応器から排出される有機物を高温高圧下で酸化分解する固定床触媒反応器からなる第二酸化反応器と、
を含むことを特徴とする有機物酸化分解装置。
【請求項2】
前記第一酸化反応器へ供給する前記酸素含有ガスの量は、前記第一酸化反応器で必要とする酸素の量と前記第二酸反応器で必要とする酸素の量とを供給可能な量とし、
前記第二酸化反応器へは、前記第一酸化反応器経由で、前記酸素含有ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の有機物酸化分解装置。
【請求項3】
前記第一酸化反応器は、撹拌機を備える塔型酸化反応器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機物酸化分解装置。
【請求項4】
前記塔型酸化反応器は、内部を長手方向に多段に仕切る仕切板と、
前記仕切板を支持固定する支持体と、
各段毎に装着された撹拌翼と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の有機物酸化分解装置。
【請求項5】
前記撹拌翼は、気泡を微細化可能な撹拌翼であることを特徴とする請求項4に記載の有機物酸化分解装置。
【請求項6】
前記支持体の外径をB、前記塔型酸化反応器の内径をD1、前記支持体の数をnとしたとき、(B/D1)1.2が0.2〜0.35であることを特徴とする請求項4又は5に記載の有機物酸化分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221096(P2008−221096A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61208(P2007−61208)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【Fターム(参考)】