説明

有機発光ダイオードのための2−アザトリフェニレン物質

2−アザトリフェニレンを含む化合物を提供する。特に、追加の芳香族基を有する2−アザトリフェニレン核を含む化合物を提供する。提供した化合物は、発光性又は非発光性物質でありうる。この化合物は有機発光ダイオードに、特にホスト物質、正孔阻止層物質、又は発光ドーパントとして用いることができる。2−アザトリフェニレンを含む化合物を含むデバイスは、向上した安定性と効率を示しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2009年5月12日に出願した米国仮出願No.61/177,435号に対する優先権を主張し、それらの開示を、その全体を参照により本明細書に明示して援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
[発明の分野]
本発明は、有機発光デバイスに有利に用いることができる新規な有機物質に関する。より詳細には、本発明は、新規な2−アザトリフェニレン含有化合物及びそのような化合物を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの材料はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対して、コスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機材料固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの材料と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本願に援用する。
【0006】
リン光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式を有する。
【化1】

【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特定に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性に寄与しない場合には「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の性質を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占軌道」(HOMO)又は「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合は、第二のHOMO又はLUMOのエネルギー準位よりも大きいか又は高い。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIP(より少ない負のIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)(より少ない負のEA)に相当する。従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、上端(トップ)を真空準位とし、物質のLUMOエネルギー準位は、同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも上である。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのようなダイヤグラムの上端(トップ)近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「仕事関数」は、その第一の仕事関数がより大きな絶対値を有する場合には第二の仕事関数「より大きい」あるいは「より高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より大きな」仕事関数は、より負である(よりマイナスである)ことを意味する。上端(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下の方向へ、より離れたものとして図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣習に従う。
【0015】
OLEDについてのさらに詳細、及び上に記載した定義は米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を本明細書に参照して援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【特許文献5】特開2007−189001号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0280965号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」, Nature, vol.395, 151〜154頁, 1998
【非特許文献2】Baldoら, 「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」, Appl. Phys. Lett., vol.75, No.3, 4〜6頁(1999)
【非特許文献3】Hewline, Mら,Synthesis, 14: 2157-2163, 2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[本発明のまとめ]
新規な有機化合物を提供する。この化合物は、OLEDに有利に用いることができる2−アザトリフェニレン含有化合物を包含する。特にこれらの化合物は、ホスト物質、正孔阻止物質、又は発光性金属錯体のための配位子として用いることができる。本明細書において提供される2−アザトリフェニレン化合物を含むデバイスは、向上した安定性と効率を有しうる。新規な化合物を提供し、その化合物は以下の構造:
【化2】

を含む。
【0019】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、及びRのうちの少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。好ましくは、Rは式中の窒素に対してオルト位の置換基である。
【0020】
化合物の一つの群を提供し、その化合物は式Iを有し、且つこの化合物は金属に配位していない。好ましくはこれらの化合物はOLEDにおける発光層中のホスト物質として又は様々なその他の非発光層中の非発光性物質として用いることができる。
【0021】
好ましくは、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。より好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。好ましくは、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。より好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。好ましくは、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。より好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。好ましくは、R、R、及びRのそれぞれがアリール又はヘテロアリールである。
【0022】
式Iを有する特定の化合物を提供し、それには化合物1G〜化合物70Gからなる群から選択される化合物が含まれる。R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R’、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。式Iを有する具体的な化合物をさらに提供する。例えば、化合物1〜化合物70からなる群から選択される化合物のように、R、R、R、R、R、R、R、及びRのそれぞれは水素である。
【0023】
シクロメタル化された配位子を含む別の群の化合物を提供する。この化合物は下記式:
【化3】

を有する配位子Lを含む。
【0024】
Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環である。Rはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。Rは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属に配位されている。好ましくはこの金属はIrである。
【0025】
これらの化合物は発光性物質として用いることができ、なぜなら配位子としてのそのような化合物のシクロメタル化錯体は、発光特性をもたらすことが予測されるからである。好ましくはこれらの化合物はOLEDの発光層中の発光ドーパントとして用いることができる。これらの化合物はまた、非発光性物質として用いることもできる。特に、これらの化合物はその化合物の発光特性が用いられないデバイスの部分、例えば正孔阻止層において用いることができる。
【0026】
一つの側面では、配位子Lがホモレプティック化合物中に含まれる化合物群を提供する。別の側面では、配位子Lがヘテロレプティック化合物中に含まれる化合物群を提供する。特に、その化合物が式(L)(L’)3−nIrを有する化合物群を提供する。nは1又は2である。一つの側面では、好ましくはnは1である。別の側面では好ましくはnは2である。L′は以下のものからなる群から選択される。
【化4】

R’及びR’はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R’及びR’は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。LはL’とは異なる構造を有する。
【0027】
特定の配位子を含む化合物も提供し、それには化合物71G〜化合物78Gからなる群から選択される、配位子Lを有する化合物が含まれる。R及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。具体的な配位子も提供し、それには化合物71〜化合物78からなる群から選択される配位子L(すなわち、R、R、R、R、及びRはそれぞれ水素である)が含まれる。
【0028】
2−アザトリフェニレン配位子を含むIr錯体を含む特定の化合物群も提供し、これには化合物79G〜化合物96Gからなる群から選択される化合物が含まれる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。2−アザトリフェニレン配位子を含むIr錯体を含む具体的化合物も提供し、それには化合物79〜化合物96からなる群から選択される化合物(すなわち、R、R、R、R、R、R’、及びR’はそれぞれ水素である)が含まれる。
【0029】
さらに、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された第一の有機層を含む。第一の有機層は、上述した下記の構造:
【化5】

を含む化合物をさらに含む。式Iの構造を含む化合物について好ましいとして記載した置換基についての選択は、式Iの構造を含む化合物を含むデバイスにおいて用いるにも好ましい。これらの選択は、R、R、R、及びAについて記載したものを含む。
【0030】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、及びRのうち少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。
【0031】
一つの側面では、上記デバイスは式Iを有する化合物を含み、その化合物は金属に配位していない。そのようなデバイスに用いられる特定の化合物には、化合物1G〜化合物70Gからなる群から選択される化合物が含まれる。R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R’、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。化合物1〜化合物70からなる群から選択される化合物(すなわち、R、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ水素である)を含む特定のデバイスも提供する。
【0032】
別の側面では、上記第一の有機層が発光層であり、式Iの構造を含む化合物がホストであるデバイスを提供する。さらに、第一の有機層は、発光ドーパントをさらに含むことができる。好ましくは、発光ドーパントは下記式を有する。
【化6】

及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0033】
さらに、下記式:
【化7】

を有する配位子Lを含む化合物を含むデバイスを提供する。
【0034】
Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環である。Rは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。Rは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0035】
そのようなデバイスに用いるための特定の配位子は、化合物71G〜化合物78Gからなる群から選択される配位子Lを含む。R及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。化合物71〜化合物78からなる群から選択される配位子Lを有する化合物(すなわち、R、R、R、R、及びRはそれぞれ水素である)を含む特定のデバイスを提供する。
【0036】
そのようなデバイスに用いるための特定の化合物には、化合物79G〜化合物96Gからなる群から選択される化合物が含まれる。R及びRは独立に、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。化合物79〜化合物96からなる群から選択される化合物(すなわち、R、R、R、R、R、R’、及びR’はそれぞれ水素である)を含む特定のデバイスを提供する。
【0037】
一つの側面では、上記第一の有機層が発光層であり、式IIの構造を含む化合物が発光ドーパントであるデバイスを提供する。好ましくは、第一の有機層はホスト物質をさらに含む。
【0038】
別の側面では、非発光層である第二の有機層を含むデバイスを提供する。式IIの構造を含む化合物は、第二の有機層中の非発光性物質である。好ましくは、第二の有機層は正孔注入層又は正孔輸送層であり、式IIの構造を含む化合物は正孔注入又は正孔輸送物質である。
【0039】
さらに、デバイスを含む消費者製品も提供する。さらにこのデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードの間に配置された第一の有機層を含む。さらにこの第一の有機層は上述した式Iの構造を含む化合物を含む。式Iを含む化合物のために好ましいと記載した置換基に関する選択は、式Iの構造を含む化合物を含むデバイスに用いるためにも好ましい。これらの選択はR、R、R、及びAについて記載したものを含む。
【0040】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換であることができる。R、R、及びRは独立に、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、ヘテロアリール、及び水素からなる群から選択される。R、R、及びRのうち少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。
【0041】
一つの側面では、消費者製品のデバイスは、式IIを有する2−アザトリフェニレン化合物を含むことができる。別の側面では、消費者製品のデバイスは、40より大きな原子番号を有する金属に配位した2−アザトリフェニレン含有配位子を含む化合物を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、2−アザトリフェニレン化合物を示す。
【図4】図4は、2−アザトリフェニレンを含む配位子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[詳細な説明]
一般にOLEDは、アノードとカソードの間に配置され且つこれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、その有機層(一つ又は複数)中にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔が局在した場合、励起エネルギー状態を有する、局在化した電子-正孔対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構によって緩和する時に光が発せられる。ある場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在することもできる。非放射機構、例えば熱緩和も起こることがあるが、通常は好ましくないと考えられている。
【0044】
初期のOLEDでは、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(その全体を参照により援用する)に開示されているように、一重項状態から発光する(「蛍光」)発光分子を用いた。蛍光発光は一般に、10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0045】
より最近、三重項状態から光を発する(「リン光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。リン光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5〜6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0046】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0047】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材及びアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0048】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0049】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0050】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0051】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0052】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0053】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0054】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0055】
新規な化合物を提供し、この化合物は2−アザトリフェニレン(図3に示している)を含む。特に、この化合物は、追加の芳香族置換基(すなわち、アリール又はヘテロアリール)を有する2−アザトリフェニレンを含む。これらの化合物は、向上した安定性と効率を有するデバイスを提供するためにOLEDに有利に用いることができる。
【0056】
新規化合物の一つの群には、配位した金属をもたない式Iを有する化合物が含まれる。好ましくは、これらの化合物は、非発光性化合物、例えば、ホスト物質及び/又は正孔阻止層物質として用いられる。
【0057】
新規化合物の別の群を提供し、これには上記2−アザトリフェニレン構造が、金属に配位した配位子に組み込まれている化合物が含まれる(図4に示している)。これらの化合物は、シクロメタル化された配位子による燐光発光特性を示すことが予期できる。したがって、これらの化合物は発光物質として好ましく用いることができる。さらに、これらの化合物は、そのような化合物の発光特性を必要としない層(デバイスの層)(例えば正孔阻止層)の非発光性物質としても用いることもできる。化合物に含まれる特定の2−アザトリフェニレン配位子を提供する。
【0058】
1−アザトリフェニレン含有化合物は文献に報告されてきた(特開2007−189001号公報を参照されたい)。しかし、本明細書に提供した化合物の群は、新規な構造を含む。提供されている合成は、2−アザトリフェニレン化合物を作るための方法ではなく、むしろ1−アザトリフェニレン化合物を作ることを目的としている。さらに、その1−アザトリフェニレンの合成法は、2−アザトリフェニレン化合物を作るために必ずしも適用可能ではない。
【0059】
本明細書において提供する方法は、2−アザトリフェニレン化合物を目的とするものである。
【0060】
2−アザトリフェニレン化合物の少なくとも1つの例が文献に報告されている(Hewline, Mら,Synthesis, 14: 2157-2163, 2007を参照されたい)。しかし、この文献は、本明細書で提供した追加の芳香族基を有する化合物を提供しておらず、OLEDとの関連において2−アザトリフェニレン化合物を示唆していない。この追加の芳香族置換基をもたない2−アザトリフェニレン化合物は、OLEDに用いるためには適していない可能性がある。本化合物の2−アザトリフェニレン核上のR、R、及び/又はRにおける追加の芳香族置換基は新規な構造をもたらし、有利な特性をももたらすことができる。特に、この追加の芳香族置換基(すなわち、アリール又はヘテロアリール)は、追加の共役による化合物の安定性のさらなる向上をもたらすことができる。さらに、2−アザトリフェニレン化合物を作るための合成法を提供している公知の文献は存在しない。したがって、少なくともこれらの理由によって、本明細書に提供した化合物は特に望ましいであろう。本化合物の有利な特性は、発光性及び非発光性化合物の両方に応用することができる。
【0061】
さらに、これまでに報告されたアザトリフェニレン化合物のほとんどは、1−アザトリフェニレン化合物である。1−アザトリフェニレン類の合成は周知であると考えられるが、1−アザトリフェニレン類を作るための合成法は、2−アザトリフェニレン化合物を作るために必ずしも適応していない。アザトリフェニレン化合物のこれまでの報告にもかかわらず、本明細書で提供したもののような2−アザトリフェニレン化合物を作るための合成法に関するいかなる報告も存在しなかった。提供した新規な2−アザトリフェニレン化合物の多くは、本明細書に記載した方法を用いて合成することができる。
【0062】
トリフェニレンは、高い三重項エネルギー、なおも高いπ共役、及び最初(第一)の一重項と最初(第一)の三重項準位との間の比較的小さなエネルギー差をもつ多環式芳香族炭化水素である。このことは、同様の三重項エネルギーをもつ他の芳香族化合物(例えばビフェニル)と比べて、トリフェニレンが比較的容易に利用できるHOMOとLUMO準位を有することを示唆している。トリフェニレンとその誘導体は、少なくとも、これらの化合物が赤及び緑色燐光ドーパント、並びに青色燐光ドーパントにさえ適合して、エネルギーの失活なし高い効率をもたらすことができるので、特に良好なホストでありうる。トリフェニレンホストを用いた高効率且つ高安定性のPHOLEDは、これまでの研究によって実証されている(米国特許出願公開第2006/0280965号公報及びPCT/US2008/072499を参照されたい)。
【0063】
トリフェニレン誘導体アザトリフェニレンを含む化合物は特に有利でありうる。アザトリフェニレンはトリフェニレンよりも低いLUMOをもち(すなわち、トリフェニレンのLUMOよりもさらに利用可能なLUMO)、したがって、アザトリフェニレンはOLEDデバイス中での電子輸送を向上させうる。さらに、アザトリフェニレンは、寿命、効率、及び低電圧に関してデバイス性能の向上をもたらす改善された電荷バランスをもたらすことができる。さらに、これまでの研究は、その他のホスト物質(例えば、アザ-ジベンゾチオフェン)の2位の窒素が改善をもたらしうることを示している。本発明がどうして作用するかについてのいかなる理論にも限定をうけないが、アザトリフェニレン含有化合物の2位の窒素(すなわち2−アザトリフェニレン)も有利な特性をもたらしうると考えられる。
【0064】
さらに、提供した化合物は特に有利であることができ、なぜなら、この2−アザトリフェニレン含有化合物は、これまでに報告されたトリフェニレン化合物及び誘導体よりも容易に還元されることができるからである。表1は、トリフェニレン及びその誘導体のDFT計算による特性を示している。特に、表1には、トリフェニレン、1−アザトリフェニレン、及び2−アザトリフェニレンについて計算したLUMO準位が含まれている。表1に示されたDFT計算結果は、2−アザトリフェニレンは−1.34eVのLUMOを有しており、これは−0.93eV及び−1.23eVのLUMO準位をそれぞれ有するトリフェニレン及び1−アザトリフェニレンよりも顕著に低いことを示している。さらに、表1に示したDFT計算は、2−アザトリフェニレンの三重項エネルギーはトリフェニレン及び1−アザトリフェニレンの三重項エネルギーと類似していることを示唆しており、このことは化合物1の試験結果によって確かめられた。したがって、2−アザトリフェニレン含有化合物はより容易に還元されることができ、それによって低い作動電圧をもつデバイスをもたらす。
【0065】
【表1】

【0066】
新規な2−アザトリフェニレン含有化合物を本明細書において提供する。これらの化合物は、OLEDに有利に用いることができる新しいタイプの物質を提供する。特に、これらの化合物は、蒸着又は溶液法の両方によって作製されるOLEDに用いることができ、それによって安定且つ効率的なデバイスが得られる。
【0067】
新規な化合物を提供し、その化合物は下記構造:
【化8】

を含む。
【0068】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、及びRのうちの少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。
【0069】
一つの側面では、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。別の側面では、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。なお別の側面では、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。さらなる側面では、R、R、及びRのそれぞれがアリール又はヘテロアリールである。
【0070】
提供する化合物の一つの群には、下記式:
【化9】

を有する化合物が含まれる。この化合物は金属に配位していない。
【0071】
そのような化合物は、上述したR、R、及びRでさらに置換されていることができる。これらの化合物は、デバイス構造中の発光性及び非発光性の両方の様々な層に用いることができる。好ましくは、これらの化合物はOLEDの発光層中のホストとして用いることができる。そのような化合物は、OLEDのその他の非発光性の層(例えば、正孔阻止層)において非発光性物質として好ましく用いることもできる。
【0072】
好ましくは、Rは、式の窒素に対してオルト位に置換している。窒素の隣の炭素(すなわち、窒素のオルト位)にR置換基を加えることによって、その化合物の安定性を向上できる。理論に縛られないが、窒素原子のオルト位に置換基がないピリジン環は、分解に対して特に弱く、したがって安定性が低いおそれがある。特に、理論に縛られないが、その窒素に対してオルト位の置換基がなく無防備な窒素の結合は、可能性のある分解経路において弱い結合でありうる。したがって、窒素に対してオルト位の置換はそのピリジン環に立体的な保護をもたらし、それによってその化合物の安定性を向上させることができる。したがって、窒素に対してオルト位の置換としてRを有する化合物は、その2−アザトリフェニレン化合物の安定性を向上させることができる。
【0073】
式Iを有する特定の化合物を提供し、その化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0074】
【化10】

【0075】
【化11】

【0076】
【化12】

【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R’、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0084】
さらに式Iを有する化合物の具体例も提供する。置換基R1、2、、R’、R、R、R、R、及びRは水素である。提供した具体的な化合物には以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0085】
【化19】

【0086】
【化20】

【0087】
【化21】

【0088】
【化22】

【0089】
【化23】

【0090】
【化24】

【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
上で論じた化合物(すなわち、配位した金属をもたない式Iを有する化合物)は、室温で燐光性ではない。これらの化合物は、デバイス中で非発光物質として用いることができる。好ましくは、これらの化合物は、OLEDの発光層中のホストとして用いることができる。さらに好ましくは、これらの化合物は燐光OLEDの発光層中のホストとして用いることができる。これらの化合物は、そのデバイス構造内の様々な他の非発光層の物質、例えば、正孔阻止層内の正孔阻止物質として用いることもできる。
【0095】
本明細書で提供する新規な化合物の別の群は、シクロメタル化配位子を含む2−アザトリフェニレン化合物である。これらの化合物は、配位した金属の結果として発光特性を有することが予測できる。好ましくは、これらの化合物はOLEDの発光層中の発光物質として用いることができる。これらの化合物は、その化合物の発光特性を必要としないデバイスの他の層において非発光物質として用いることもできる。特に、これらの化合物は正孔注入又は正孔輸送層の物質として用いることができる。
【0096】
この化合物は下記式:
【化28】

を有する配位子Lを含む。
【0097】
配位子Lは、式Iで表される2−アザトリフェニレン構造を、その化合物のアザ環の窒素原子のオルト位の芳香族置換基Aとともに含む。
【0098】
Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環である。Rはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。Rは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属に配位される。好ましくはこの金属はIrである。
【0099】
一つの側面では、2−アザトリフェニレンを含むホモレプティックIr錯体を提供する。特に、配位子Lがホモレプティック化合物中に含まれる化合物群を提供する。別の側面では、ヘテロレプティックIr錯体を提供する。特に、配位子Lがヘテロレプティック化合物中に含まれる化合物群を提供する。なお別の側面では、式(L)(L’)3−nIrを有する化合物群を提供する。nは1又は2である。一つの側面では、好ましくはnは1である。別の側面では好ましくはnは2である。L’は以下のものからなる群から選択される。
【化29】

【0100】
R’及びR’はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R’及びR’は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキルアリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0101】
LはL’とは異なる構造を有する。
【0102】
特定の2−アザトリフェニレン配位子を含む化合物を提供する。この化合物は以下のものからなる群から選択される配位子Lを含む。
【化30】

【0103】
及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0104】
さらに、具体的な2−アザトリフェニレン配位子を含む化合物を提供する。この配位子Lは以下のものからなる群から選択される。
【化31】

【0105】
2−アザトリフェニレン配位子を含むIr錯体を含む特定の化合物群も提供する。配位子Lは以下のものからなる群から選択される。
【0106】
2−アザトリフェニレン配位子を含むIr錯体を含む特定の化合物を提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0107】
【化32】

【0108】
【化33】

【0109】
【化34】

【0110】
、R、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R、R、R’、及びR’は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0111】
さらに、2−アザトリフェニレンを含む特定のイリジウム錯体も提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0112】
【化35】

【0113】
【化36】

【0114】
【化37】

【0115】
さらに、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された第一の有機層を含む。第一の有機層は、上で論じた式Iの構造を含む化合物を含む。式Iの構造を含む化合物について好ましいとして記載した置換基についての選択は、式Iの構造を含む化合物を含むデバイスにおいて用いるにも好ましい。これらの選択は、R、R、R、及びAについて記載したものを含む。
【0116】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、及びRのうち少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。
【0117】
一つの側面では、Rがアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。別の側面では、Rがアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。なお別の側面では、Rがアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。さらなる側面では、R、R、及びRがアリール又はヘテロアリールである化合物を含むデバイスを提供する。
【0118】
下記式:
【化38】

を有する化合物を含むデバイスを提供する。この化合物は金属に配位していない。
【0119】
特定のデバイスを提供し、そのデバイスは化合物1G〜化合物70Gからなる群から選択される化合物を含む。R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R’、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。化合物1〜化合物70からなる群から選択される化合物(すなわち、R、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ水素である)を含む特定のデバイスも提供する。
【0120】
好ましくは、Rは窒素のオルト位に置換している。
【0121】
さらに、上記第一の有機層が発光層であり、式Iの構造を含む化合物がホストであるデバイスを提供する。さらに、そのようなデバイスの第一の有機層は、発光ドーパントをさらに含むことができる。特に、第一の有機層は下記式:
【化39】

を有する発光ドーパントを含むことができる。
式中、R及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0122】
さらに、上記第一の有機層が発光層であり、且つ式IIの構造を含む化合物が発光ドーパントであるデバイスも提供する。さらに、そのようなデバイスの第一の有機層はホスト物質をさらに含んでいてもよい。
【0123】
さらに、非発光層である第二の有機層を含み、且つ式IIの構造を含む化合物がその第二の有機層中の非発光性物質であるデバイスも提供する。好ましくは、第二の有機層は正孔注入層又は正孔輸送層であり、式IIの構造を含む化合物は正孔注入又は正孔輸送物質である。
【0124】
別な側面では、下記式:
【化40】

を有する配位子Lを含む化合物を含むデバイスを提供する。
【0125】
Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環である。Rはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。Rは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属に配位される。好ましくはこの金属はIrである。
【0126】
配位子Lが以下のものからなる群から選択される特定のデバイスを提供する。
【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0130】
化合物71〜化合物78からなる群から選択される配位子を含む化合物を含むデバイスも提供する。
【0131】
2−アザトリフェニレン配位子を含むIr錯体を含む化合物を含むデバイスも提供し、それには化合物79G〜化合物96Gからなる群から選択される化合物を含むデバイスが含まれる。特定の化合物を含むデバイスも提供し、それには化合物79〜化合物96からなる群から選択される化合物を含むデバイスが含まれる。
【0132】
さらに、デバイスを含む消費者製品も提供する。さらにこのデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードの間に配置された第一の有機層を含む。さらにこの第一の有機層は上述した式Iの構造を含む化合物を含む。式Iを含む化合物のために好ましいと記載した置換基に関する選択は、式Iの構造を含む化合物を含むデバイスに用いるためにも好ましい。これらの選択はR、R、R、R、R、R、R、R、R’、R’、及びAについて記載したものを含む。
【0133】
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換であることができる。R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、及びRのうち少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。
【0134】
有機発光デバイスの特定の層のために有用であると本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在する広範囲の他の物質と組み合わせて用いてもよい。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に説明又は言及する物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0135】
本明細書に開示した物質に加えて及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いることができる。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDにおいて用いることができる物質の非限定的な例を以下の表2に挙げた。表2には、非限定的な物質群、各群の化合物の非限定的な例、及びそれらの物質を開示している参考文献を挙げている。
【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
【表10】

【0145】
【表11】

【0146】
【表12】

【0147】
【表13】

【0148】
【表14】

【0149】
【表15】

【実施例】
【0150】
[化合物例]
例1.化合物1の合成
【化43】

【0151】
工程1.4-(ビフェニル-2-イル)-2-メトキシピリジンの合成
4-クロロ-2-メトキシピリジン(3.0 g, 21.03 mmol)、2-ビフェニルボロン酸(5.0g, 25.23 mmol)、Pd(dba)(381 mg, 0.414 mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(681 mg, 1.66 mmol)、トルエン(250 mL)、及び水(25 mL)中のKPO・HO(14.57 g, 63.09 mmol)の混合物(窒素でフラッシュしたもの)を18時間還流させた。この混合物を室温まで冷やした後、有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカ(ヘキサン:酢酸エチル)上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、酢酸エチルから再結晶して4-(ビフェニル-2-イル)-2-メトキシピリジン(4.2 g、76.5%)を得た。
【0152】
【化44】

【0153】
工程2.3-メトキシジベンゾ[f,h]イソキノリンの合成
4-(ビフェニル-2-イル)-2-メトキシピリジン(2.9 g, 10.9 mmol)、ヨウ素(281 mg, 1.1 mmol)、及びトルエンを、磁気撹拌機、空気バブラー、及び紫外線ランプを備えた二重壁石英製光化学反応装置に仕込んだ。その溶媒中に穏やかに空気をバブリングさせながら、15時間光照射した。反応混合物をシリカ(ヘキサン:酢酸エチル)上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、MeOH中で超音波照射して3-メトキシジベンゾ[f,h]イソキノリンを得た(0.5 g, 17%)。
【0154】
【化45】

【0155】
工程3.ジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-オールの合成
3-メトキシジベンゾ[f,h]イソキノリン(1.0 g, 3.9 mmol)とピリジン塩酸塩(4.5 g, 39 mmol)を約220℃で1.5時間加熱した。反応物を冷やし、水を添加した。得られた固体を濾過し、水で洗い、真空乾燥してジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-オール(0.91 g, 95%)を得た。
【0156】
【化46】

【0157】
工程4.ジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-イル トリフルオロメタンスルホネートの合成
無水トリフルオロメタンスルホン酸(5.2 g, 19 mmol)を、ジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-オール(0.91 g, 3.7 mmol)、ピリジン(1.2 g, 15 mmol)、及びジクロロメタン100mLの混合物に窒素下で0℃にて添加し、室温で夜通し撹拌した。反応を飽和NaHCOで止めた。有機層を水で洗い、NaSO上で乾燥させた。残留物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)で精製し、生成物を得た(1.1 g, 79%)。
【0158】
【化47】

【0159】
工程5.4-(3-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェンの合成
1,3-ジブロモベンゼン(18.63 g, 78.92 mmol)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イルボロン酸(6.0 g, 26.3 mmol)、Pd(PPh)(304 mg, 0.414 mmol)、トルエン(200 mL)、及び水(20 mL)中のKCO(10.9 g, 78.92 mmol)の混合物(窒素をフラッシュさせたもの)を23時間還流させた。混合物を室温まで冷やした後、有機層を水で洗い、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を減圧蒸留(Kugelrohr)と続いてのシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン)によって精製して、4-(3-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(3.5 g, 39.2%)を得た。
【0160】
【化48】

【0161】
工程6.2-(3-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランの合成
4-(3-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(2.4 g, 7.70 mmol)、4,4,4’, 4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(3.58 g, 14 mmol)、Pd(dppf)Cl(114 mg, 0.14 mmol)、及びKOAc(2.08
g, 21.2 mmol)をジオキサン(100 mL)中、90℃にて18時間加熱した。混合物を室温に冷やした後、酢酸エチルを添加し、有機層を水で洗い、食塩水で洗い、無水NaSO上で乾燥させ、濾過した。セライトをろ液に添加し、次に減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン)とそれに続く減圧蒸留(Kugelrohr)により、過剰な4,4,4’, 4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)を除去し、次にヘキサン:酢酸エチルから再結晶して、2-(3-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.62 g, 59%)を得た。
【0162】
【化49】

【0163】
工程7.3-(3-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)ジベンゾ[f,h]イソキノリンの合成
工程4の生成物であるジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-イル トリフルオロメタンスルホネート(1.1 g, 2.9 mmol)、工程6の生成物である2-(3-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.5 g, 3.8 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(2.0 g, 8.8 mmol)、150mLのトルエン、及び15mLの水の混合物を調製し、20分間窒素でバブリングした。次にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(27 mg, 0.029 mmol)及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(48 mg, 0.12 mmol)をその混合物に添加した。反応混合物を窒素でさらに20分間バブリングし、次に夜通し還流させた。室温まで冷やした後、2-(3-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.3 g, 3.4 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(60 mg, 0.066 mmol)、及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(100 mg, 0.24 mmol)をその混合物に添加した。反応混合物に窒素を30分間バブリングし、次に夜通し還流させた。この混合物を次に室温まで冷やした。有機層を集めて、MgSOで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムで精製して、白色固体の化合物1を得た(1.0 g, 71%収率)。
【0164】
例2.化合物79の合成
【0165】
配位子3-フェニルジベンゾ[f,h]イソキノリンの合成
化合物1の合成の上記工程4で合成したジベンゾ[f,h]イソキノリン-3-イル トリフルオロメタンスルホネート化合物を、化合物1の合成の工程7に記載した鈴木反応条件下でフェニルボロン酸と反応させて、配位子3-フェニルジベンゾ[f,h]イソキノリンを得た。
【0166】
【化50】

【0167】
イリジウム錯体化合物79の合成
エチレングリコール中でIr(acac)と混合した3-フェニルジベンゾ[f,h]イソキノリン配位子を加熱して、窒素下で夜通し還流させて化合物79を得た。配位子とIr(acac)のモル比は約3.5対1である。
【0168】
[デバイス例]
【0169】
全ての例のデバイスは高真空(<10-7 Torr)熱蒸着によって作製した。アノード電極は約800Å又は1200Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFとそれに続く1000ÅのAlとからなる。全てのデバイスは作製後直ちに窒素グローブボックス(< 1 ppmのH2O及びO2)中でエポキシ樹脂を用いて封止したガラス蓋で密閉し、水分ゲッターをそのパッケージ内に組み込んだ。
【0170】
本発明の化合物である化合物1がホスト物質及び阻止層物質であり、E1が発光ドーパントである特定のデバイスを準備した。デバイス例1〜4の有機積層部は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)としての100ÅのE1、正孔輸送層(HTL)としての300Åの4,4’-ビス-[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)として10〜15%のE1(Ir燐光化合物)でドープした300Åの化合物1、阻止層なし(0Å)又は阻止層(BL)として50Åの化合物1、及び電子輸送層(ETL)として450Å又は500ÅのAlq(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウムからなる。
【0171】
比較例1及び2は、ホストとしてCBPを用い、BL物質としてHPTを用いるか又は阻止層がないことを除いて、上記デバイス例と同様にして作製した。
【0172】
本明細書で用いるとおり、以下の化合物は以下の構造を有する。
【化51】

【0173】
デバイス構造及びデバイスデータを表3及び表4に以下にまとめた。表3はデバイス構造を示し、表4はこれらのデバイスについて対応する測定結果を示している。
【0174】
以下の用語を表4で用い、以下のように定義される。
LEは発光効率であり、これはOLEDの輝度を駆動電流密度で割ったものとして定義される。EQEは外部量子効率であり、これは接合(ジャンクション)を通過した電子に対する光子の測定数の割合として定義される。PEは電力効率であり、発した全光束を全電力入力で割ったものとして定義される。Lは初期輝度であり、これは特定の電流密度における初期の明るさとして定義される。RT80%は寿命の尺度であり、これは40mA/cmの一定電流密度において室温で、初期輝度Lがその値の80%に低下するのに必要な時間として定義される。
【0175】
【表16】

【0176】
【表17】

【0177】
比較例1及び比較例2のデバイスは、これまでのデバイスの試験において用いた物質の組み合わせに対して最適化した厚さ及びドーパント濃度を用いている。デバイス例1及びデバイス例2は、比較例1及び比較例2で用いたものと同じデバイス構造と物質の濃度を有するが、本明細書で提供した新規な2−アザトリフェニレン化合物で、ホスト物質としてのCBPと阻止層物質としてのHPTとが置き換えられている。これらのデバイス例から、緑色燐光OLEDのホストとして化合物1は高いデバイス効率(1000cd/mにおいてLE>40cd/A)を与え、ジベンゾチオフェンと連結されたアザトリフェニレン類は効率的な緑色エレクトロフォスフォレッセンスのために充分に高い三重項エネルギーを有することを示唆している。これは、緑色燐光ドーパントに適合するために充分に高い化合物1の三重項エネルギー(T1:476nm)という試験結果と一致している。
【0178】
デバイス例2及び比較例2の結果は、予測したように、化合物1のホストが正孔阻止層なしで効率を顕著に高めることができることを示唆しており、なぜなら、化合物1はその2−アザトリフェニレン基の比較的低いLUMOによって示されているように、より電子輸送性の物質だからである。
【0179】
本明細書で提供した新規な2−アザトリフェニレン化合物の一般的に好ましい特性を実証している一方で、デバイス例1及び2は寿命解析に対して最適化されていなかった。デバイス例3及びデバイス例4では、ドーパント濃度を、デバイス寿命を測定するためにこれらの物質に対して適切に調節した。デバイス例3及び4において、比較例1及び比較例2とそれぞれ比較して、2−アザトリフェニレン化合物は寿命を顕著に向上させていることがわかる。加えて、デバイス例3及び4は、良好な効率を保っていると同時に寿命を向上させている。
【0180】
ホストとして化合物1を組み込んだデバイスの高い安定性は、デバイス3及び4において顕著である。デバイス例3及び比較例1の寿命T80%(40mA/cmの一定電流密度において室温で、初期輝度Lがその値の80%に低下するのに必要な時間として定義される)は、それぞれ136時間及び105時間であり、デバイス例1はわずかに高いLを有している。
【0181】
このデータは、アザトリフェニレン類を含むホストは燐光OLEDのための良好なホスト及び増強層(エンハンスメント層)物質であり、ホストとして一般的に用いられているCBPと比較して少なくとも同様の効率と、安定性の改善をもたらしている。トリフェニレン含有ベンゾセレノフェン類のさらに共役したもの、例えば、p−フェニレン(例えば4,4’-ビフェニル)を介して連結されたトリフェニレン単位及びジベンゾセレノフェン単位は、より低いエネルギー(黄色から赤色)の燐光OLEDに非常に適している可能性がある。
【0182】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の思想から離れることなく別の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、これは当業者に明らかなとおりである。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】

(式中、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;且つ、
、R、及びRのうちの少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。)
を含む化合物。
【請求項2】
下記式:
【化2】

を有し、且つ金属に配位していない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、窒素のオルト位に置換している、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がアリール又はヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がアリール又はヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がアリール又はヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
、R、及びRのそれぞれがアリール又はヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(式中、R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;
R’、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
【請求項12】
、R、R、R、R、R、R、及びRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1記載の化合物であって、下記式を有する配位子Lを含む化合物。
【化12】

(式中、Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環であり;
はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
前記配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属に配位されている。)
【請求項14】
前記金属がIrである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記配位子Lがホモレプティック化合物に含まれている請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記配位子がヘテロレプティック化合物に含まれている請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が式(L)(L’)3−nIrを有し;
nは1又は2であり;
L’は以下のもの:
【化13】

(R’及びR’はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
R’及びR’は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
LはL’とは異なる構造を有する。)
からなる群から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
nが1である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
nが2である、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
前記配位子Lが以下のものからなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【化14】

【化15】

(式中、R及びRはそれぞれ、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;
及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
【請求項21】
前記配位子Lが以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化16】

【化17】

【請求項22】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【請求項23】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化22】

【化23】

【化24】

【請求項24】
アノード;カソード;及び前記アノードとカソードの間に配置された第一の有機層を含み、さらに前記第一の有機層が以下の構造を含む化合物を含む有機発光デバイス。
【化25】

(式中、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
、R、及びRのうちの少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。)
【請求項25】
前記化合物が下記式:
【化26】

を有し、且つ前記化合物が金属に配位していない、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項25に記載のデバイス。
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

式中、R’、R、R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;且つ
R’、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【請求項27】
前記第一の有機層が発光層であり、且つ式Iの構造を含む前記化合物がホストである、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
さらに前記第一の有機層が発光ドーパントを含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記発光ドーパントが下記式:
【化36】

(R及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;且つ
及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。)
を有する、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記化合物が下記式を有する配位子Lを含む、請求項24に記載のデバイス。
【化37】

(Aは5員又は6員のアリール又はヘテロアリール環であり;
はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;且つ
前記配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属に配位されている。)
【請求項31】
前記配位子Lが以下のものからなる群から選択される、請求項30に記載のデバイス。
【化38】

【化39】

(R及びRは、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;
及びRは、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
【請求項32】
前記化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項30に記載のデバイス。
【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【請求項33】
前記第一の有機層が発光層であり、且つ式IIの構造を含む前記化合物が発光ドーパントである、請求項30に記載のデバイス。
【請求項34】
さらに前記第一の有機層がホスト物質を含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
非発光層である第二の有機層を有し、且つ式IIの構造を含む前記化合物が前記第二の有機層中の非発光性物質である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項36】
前記第二の有機層が正孔注入層又は正孔輸送層であり、式IIの構造を含む前記化合物が前記第二の有機層中の正孔注入物質又は正孔輸送物質である、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
アノード;カソード;及び前記アノードとカソードの間に配置された第一の有機層を含み、さらに前記第一の有機層が以下の構造を含む化合物を含むデバイスを含む消費者製品。
【化44】

(式中、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、ヘテロアリール、及び水素からなる群から選択され;
、R、及びRのうちの少なくとも1つはアリール又はヘテロアリールである。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−526833(P2012−526833A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510966(P2012−510966)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/034479
【国際公開番号】WO2010/132524
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】