説明

有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置と、それを利用した蒸着及び検査方法

【課題】有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置を提供する。
【解決手段】パネルに、アノード層、有機膜層及びカソード層を備える薄膜層を蒸着する蒸着器と、薄膜層に光を照射し、その反射光のスペクトルを測定し、そのスペクトルから各薄膜層の良否を判別する検査器150と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置と、それを利用した蒸着及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレイ装置は、携帯可能な薄型の平板ディスプレイ装置に代替されている。平板ディスプレイ装置のうちでも、電界発光ディスプレイ装置は、自発光型ディスプレイ装置であって、視野角が広く、コントラストが優秀であるだけでなく、応答速度が速いという長所を有し、次世代ディスプレイ装置として注目されている。また、発光層の形成物質が有機物で構成される有機発光ディスプレイ装置は、無機発光ディスプレイ装置に比べて、輝度、駆動電圧及び応答速度特性が優秀であり、多色化が可能であるという長所を有する。
【0003】
このような有機発光ディスプレイ装置は、薄膜トランジスタと、その薄膜トランジスタによって発光駆動される有機発光素子とを備え、前記有機発光素子は、基本的にアノード層と有機膜層及びカソード層が順次に積層された構造を有する。したがって、薄膜トランジスタの駆動によって、前記有機発光素子のアノード層とカソード層との間に電圧が印加されると、適当なエネルギーの差が有機膜層に形成され、これにより、有機膜層に含まれた発光層から光として発生する。
【0004】
ここで、前記有機発光素子の各層は、通常、蒸着工程を通じて形成されるが、この時、成膜される厚さが正確でないと、発光する光の特性が設計値と異なってしまう。それにより、所望の正確な色相を具現できなくなる。
【0005】
しかし、これまでは、有機発光素子の蒸着工程をすべて終え、密封のための封止基板まで全部設置した後に、発光試験を実施して製品の良否を判別していた。したがって、もし不良が発見されれば、それまで蒸着工程が進められていたパネルは、いずれも不良になるという問題が生じる。したがって、不良率を減らすためには、有機発光素子の良否を予め知ることができる方案が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
再表2008−120314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、有機発光素子の蒸着工程中に蒸着厚の良否を判別可能にする有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置と、それを利用した蒸着及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、本発明の実施形態による有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置は、パネルに、アノード層、有機膜層及びカソード層を備える薄膜層を蒸着する蒸着器と、前記薄膜層に光を照射してその反射光のスペクトルを測定し、その反射光から各薄膜層の良否を判別する検査器と、を備える。
【0009】
ここで、前記検査器は、前記薄膜層に光を照射し、その反射光を受光するリフレクトメータと、前記リフレクトメータから受光された反射光のスペクトルを分析して前記薄膜層の良否を判別するコンピュータと、前記コンピュータで分析された結果によって、蒸着工程を制御するコントローラと、を備えうる。
【0010】
前記コンピュータは、既設定の基準スペクトルと前記リフレクトメータに受光された測定スペクトルとを比較し、前記スペクトルのうち、ピーク波長の位置変化、最低反射率のサイズ変化及び、半値幅のサイズ変化のうちいずれか一つを感知して良否を判別できる。
【0011】
前記コントローラは、前記コンピュータの不良判定時、当該パネルを蒸着工程から取り出し、不良発生を作業者に知らせることができる。
【0012】
前記蒸着器は、前記各薄膜層の蒸着が進められる工程チャンバと、前記各工程チャンバに前記パネルを移送するための搬送機が備えられた搬送チャンバと、隣接した他の搬送チャンバへの連結のためのバッファチャンバと、を備え、前記検査器は、これらのうちいずれか1ケ所に設置される。
【0013】
本発明の実施形態による有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法は、パネルに、アノード層、有機膜層及びカソード層を備える薄膜層を蒸着する蒸着ステップと、前記薄膜層に光を照射し、その反射光のスペクトルを測定する測定ステップと、前記測定された反射光スペクトルを基準スペクトルと比較して、当該薄膜層の良否を判別する判別ステップと、を含む。
【0014】
前記判別ステップは、前記基準スペクトルと前記測定スペクトルとを比較して、ピーク波長の位置変化、最低反射率のサイズ変化及び、半値幅のサイズ変化のうち一つから良否を判別できる。
【0015】
前記判別ステップでの良否によって、蒸着工程を制御する制御ステップをさらに含みうる。
【0016】
前記制御ステップは、不良判定時、当該パネルを蒸着工程から取り出し、不良発生を作業者に知らせるステップを含みうる。
【0017】
前記蒸着ステップで、前記アノード層、前記有機膜層及び前記カソード層が順次に蒸着され、前記測定ステップと前記判別ステップ及び前記制御ステップは、前記有機膜層以後から各薄膜層が蒸着される度に行われうる。
【0018】
前記蒸着ステップで、前記カソード層上に保護用キャッピング層を蒸着するステップをさらに含みうる。
【0019】
前記測定ステップで、前記薄膜層に照射される光は、前記カソード層から前記アノード層に向かう方向に照射されうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置とそれを利用した蒸着及び検査方法によれば、有機発光素子の薄膜層蒸着工程中に製品の良否を予め知ることができるために、それに対して速かに措置して、結局、製品の不良率を低めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】一般的な前面発光型有機発光素子の構造を示す断面図である。
【図1B】一般的な背面発光型有機発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイパネル蒸着及び検査装置を示す図面である。
【図3】図2に示された装置のうち、検査器の構造を示す図である。
【図4A】グリーン発光層を備える有機発光素子のスペクトルを、図3の検査器で測定して示すグラフである。
【図4B】グリーン発光層を備える有機発光素子のスペクトルを、図3の検査器で測定して示すグラフである。
【図4C】グリーン発光層を備える有機発光素子のスペクトルを、図3の検査器で測定して示すグラフである。
【図5A】レッド発光層を備える有機発光素子のスペクトルを、図3の検査器でそれぞれ測定して示すグラフである。
【図5B】ブルー発光層を備える有機発光素子のスペクトルを、図3の検査器でそれぞれ測定して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1A及び図1Bは、有機発光ディスプレイパネルに備えられる一般的な有機発光素子の構造を示した断面図であって、図1Aは、前面発光型を、図1Bは、背面発光型をそれぞれ示す図である。
【0023】
そして、図2及び図3は、前記の有機発光素子を蒸着しながら薄膜層の良否を検査するための本発明の一実施形態による蒸着及び検査装置を示した図である。
【0024】
まず、前面発光型有機発光素子10は、図1Aに示したように、アノード層11、有機膜層12、カソード層13及び、キャッピング層14が順次に蒸着された構造で形成されている。
【0025】
アノード層11は、ITO(Indium Tin Oxide)層11aとAg層11bとが交互に積層されており、Ag層11bが有機膜層12から発生した光を前面、すなわち、キャッピング層14側に発光させるための反射層の役割をする。
【0026】
有機膜層12は、図では詳細に示していないが、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)、正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)を備えており、前記発光層で正孔と電子とが結合する過程を通じて発光がなされる。前記発光層は、発光する光の色相によって、レッド発光層、グリーン発光層、ブルー発光層のうちいずれか一つで形成され、これらの3色の発光層をそれぞれ有する有機発光素子を隣接配置して光を組み合わせることによって、カラー画像を具現する。
【0027】
カソード層13は、Mg(マグネシウム)とAg(銀)との合金で構成された半透過層であって、有機膜層12から発光した光をほぼ透過させる。
【0028】
そして、カソード層13上に形成されたキャッピング層14も、透明層であって、光を透過させる。参照符号15は、密封用封止基板を表す。
【0029】
一方、図示していないが、アノード層11の下部には、有機発光素子10を駆動させるための薄膜トランジスタが配される。
【0030】
したがって、薄膜トランジスタによって、アノード層11とカソード層13との間に電圧が印加されれば、有機膜層12から発光がなされ、その光がキャッピング層14側に行く。
【0031】
次いで、背面発光型有機発光素子20は、図1Bに示したように、アノード層21、有機膜層22及び、カソード層23が順次に積層された構造を有する。
【0032】
アノード層21は、ITO層21aとAg層21bとが交互に積層されているが、Ag層21bが前面発光型に比べて、非常に薄く形成されており、有機膜層22から発生した光を背面、すなわち、図のアノード層21の下側方向にほぼ透過させる。
【0033】
有機膜層22も、前面発光型と同様に、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)を備えており、前記発光層で正孔と電子とが結合する過程を通じて発光がなされる。前記発光層は、発光する光の色相によって、レッド発光層、グリーン発光層、ブルー発光層のうちいずれか一つで形成され、これらの3色の発光層をそれぞれ有する有機発光素子を隣接配置して光を組み合わせることによって、カラー画像を具現する。
【0034】
カソード層23は、Al(アルミニウム)で構成された反射層であって、有機膜層22から発光した光をアノード層21側に反射させる。
【0035】
参照符号25は、密封用封止基板を表し、アノード層21の下部には、有機発光素子20を駆動させるための薄膜トランジスタが配される。
【0036】
したがって、薄膜トランジスタによってアノード層21とカソード層23との間に電圧が印加されれば、有機膜層22から発光がなされ、その光がアノード層21側に行く。
【0037】
既存には、図1A及び図1Bのような有機発光素子10、20の製造過程をいずれも完了した後に、アノード層11、21とカソード層13、23とに電圧を印加して発光させつつ薄膜層の良否を確認した。この時の不良は、有機発光素子10、20に積層される各層の厚さが所望の範囲内で形成されず、発光する光の特性が変わることを意味する。しかし、このようにすれば、不良が確認された時、既に蒸着工程が進行中である中間製品は、いずれも不良になる可能性が高い。すなわち、同じ工程で蒸着が続けて進められているので、製造が完了した製品の不良が確認される時点で、そのような工程を既に進めた中間の製品は、ほとんど不良になる。
【0038】
したがって、図2及び図3に示された本実施形態の有機発光ディスプレイパネルの製造及び検査装置100は、このような短所を解消するために、積層ステップごとに良否を判別できるようにする。
【0039】
まず、本装置100は、蒸着を進める蒸着器と、検査を進める検査器とを備えている。まず蒸着器について説明する。
【0040】
図2を参照すれば、搬送機111a、121aが装着された搬送チャンバ111、121を中心に、複数の工程チャンバ112、113、114、115、122が備えられている。搬送機111a、121aは、回転及び直線運動の可能な一種のロボットアームであって、各工程チャンバ112、113、114、115、122にパネル30を移送する役割をする。したがって、パネル供給部140からパネル30が供給されれば、搬送機111a、121aがそのパネル30を各工程チャンバ112、113、114、115、122に投入しつつ、蒸着工程を行う。ここでは、搬送チャンバ111、121がバッファチャンバ130に連結された構造を例示したが、以下には、バッファチャンバ130の左側の搬送チャンバ111と工程チャンバ112、113、114、115との組合わせを第1クラスタ110と称し、右側の搬送チャンバ121と工程チャンバ122との組合わせを第2クラスタ120と称す。したがって、第1クラスタ110で蒸着工程が終われば、バッファチャンバ130にパネル30が移され、再び第2クラスタ120からそのパネル30を受けて、次の蒸着工程を進める。もちろん、クラスタの数は、蒸着工程の数によって、さらに増やすこともある。
【0041】
前記した図1Aの前面発光型有機発光素子10を薄膜トランジスタが形成されたパネル30に蒸着する場合を例示すれば、例えば、第1クラスタ110の112番及び113番工程チャンバでは、アノード層11のITO層11aとAg層11bとをそれぞれパネル30に蒸着し、114番工程チャンバでは、有機膜層12を、115番工程チャンバでは、カソード層13を蒸着する。もちろん、有機膜層12も、前述したように、色々な層の積層構造であるが、工程チャンバの数とクラスタの数とは、必要に応じて増やせばよいので、簡単な例として、114番工程チャンバで、有機膜層12が全部形成されると仮定する。そして、第2クラスタ120の122番工程チャンバでは、キャッピング層14が形成されると仮定する。それにより、パネル供給部140から第1クラスタ110に入ったパネル30は、搬送チャンバ111の搬送機111aによって112番工程チャンバから115番工程チャンバまで順次に移送されつつ、アノード層11、有機膜層12、カソード層13が順次に蒸着され、次いで、第2クラスタ120に移されて122番工程チャンバでキャッピング層14が蒸着される。
【0042】
ここで、搬送チャンバ111、121には、蒸着厚が正常に形成されたか否かを検査する検査器150が備えられている。この検査器150の設置位置は、搬送チャンバ111に必ずしも限定されるものではなく、工程チャンバ112、113、114、115、122やバッファチャンバ130にも設置できる。
【0043】
検査器150は、検査対象体に光を照射した後、その反射光を感知して良否を判断する原理が利用されている。すなわち、蒸着層ごとに反射光の特定スペクトルが出るが、蒸着厚が変われば、この反射光のスペクトルも変わる。これを感知して蒸着の良否を判別する。
【0044】
図3を参照すれば、検査器150は、対象体であるパネル30に光を照射し、その反射光を受光するリフレクトメータ151と、リフレクトメータ151から受光された反射光のスペクトルを分析して良否を判別するコンピュータ152と、コンピュータ152で分析された結果によって、蒸着工程を制御するコントローラ153と、を備えている。したがって、リフレクトメータ151から反射光が受光されれば、その反射光のスペクトルをコンピュータ152が分析して正常如何を判別し、もし不良と判定されれば、コントローラ153が当該パネル30を工程から直ぐ取り出すように制御する。そして、現在進行中である蒸着工程に対しても措置を行えるように、作業者に警報メッセージを送りうる。
【0045】
ここで、コンピュータ152には、リフレクトメータ151から受光された反射光と比較する基準スペクトルが保存されている。すなわち、蒸着工程で当該層の厚さが正常の範囲で形成される場合、前記反射光のスペクトルをコンピュータ152に保存しておき、実際に測定されたスペクトルと比較して、基準範囲を逸脱するか否かを判断する。
【0046】
図4Aないし図4Cは、グリーン発光層を有する有機膜層12と、カソード層13及びキャッピング層14を形成しつつ測定した反射光のスペクトルを例示した図である。
【0047】
まず、有機膜層12の反射光スペクトルを測定するためには、図2の114番工程チャンバでグリーン発光層を有する有機膜層12を蒸着した後、搬送機111aに取り出して搬送チャンバ111に持ってくる。そして、この搬送チャンバ111に設けられた検査器150を利用して、有機膜層12の上方からリフレクトメータ151の光を照射する。それにより、有機膜層12を透過してアノード層11から反射された反射光がリフレクトメータ151に受信され、その結果をコンピュータ152が分析すれば、図4Aのような結果を得る。図は、基準スペクトル(Ret)に比べて、有機膜層12の厚さが50Åより厚い場合と、50Åより薄い場合の反射光スペクトルを示したものであるが、図から分かるように、有機膜層12の厚さが変われば、反射光の最低反射率に当たるピーク波長の位置が約10nmほどシフトすることが分かる。したがって、もし50Å以上の厚さ差が生じる時、不良と判定するように設定すれば、前記のように、反射光のピーク波長が10nm以上シフトする時、コンピュータ152が不良と判定する。すなわち、反射光のスペクトルが基準スペクトルと異なる特定ポイントを感知して不良を判定し、有機膜層12の場合は、このピーク波長の比較が不良判別に有効に活用されうる。
【0048】
次いで、カソード層13の反射光スペクトルを測定するためには、図2の115番工程チャンバでカソード層13を蒸着した後、搬送機111aに取り出して搬送チャンバ111に持ってくる。そして、この搬送チャンバ111に設けられた検査器150を利用して、カソード層13の上方からリフレクトメータ151の光を照射する。そうすれば、カソード層13と有機膜層12とを透過してアノード層11から反射された反射光がリフレクトメータ151に受信され、その結果をコンピュータ152が分析すれば、図4Bのような結果を得る。図は、基準スペクトルに比べて、カソード層13の厚さが30Åより厚い場合と、30Åより薄い場合との反射光スペクトルを示したものであるが、図面から分かるように、カソード層13の厚さが変われば、反射光のピーク波長での最低反射率の大きさが増減することが分かる。また、ピーク波長での半値幅Wも増減する。したがって、前記のように、反射光の最低反射率の大きさや半値幅Wが設定範囲以上に増減するかを見て、コンピュータ152が良否を判定する。すなわち、カソード層13の場合は、反射光の最低反射率の大きさや半値幅Wの比較が不良判別に有効に活用されうる。
【0049】
次いで、キャッピング層14の反射光スペクトルを測定するためには、図2の122番工程チャンバでキャッピング層14を蒸着した後、搬送機121aに取り出して搬送チャンバ121に持ってくる。そして、この搬送チャンバ121に設けられた検査器150を利用して、キャッピング層14の上方から前記リフレクトメータ151の光を照射する。それにより、キャッピング層14とカソード層13及び有機膜層12を透過して、アノード層11から反射された反射光がリフレクトメータ151に受信され、その結果をコンピュータ152が分析すれば、図4Cのような結果を得る。図は、基準スペクトルに比べて、キャッピング層14の厚さが50Åより厚い場合と、50Åより薄い場合との反射光スペクトルを示したものであるが、図から分かるように、キャッピング層14の厚さが変われば、反射光のピーク波長位置と、最低反射率の大きさ及び半値幅がいずれも変わる。したがって、前記のように、反射光のピーク波長位置と最低反射率の大きさ及び半値幅の広さが設定範囲以上に増減するかを見て、コンピュータ152が良否を判定する。すなわち、キャッピング層14の場合は、反射光のピーク波長位置と最低反射率の大きさ及び半値幅の同時比較が不良判別に有効に活用されうる。
【0050】
このような方法で蒸着工程ごとに反射光を分析して良否を判別すれば、蒸着が完了する前に、製造過程中で予め不良が分かるため、それに対する措置を速かに取ることができ、不良率を低減できる。
【0051】
参考までに、図5Aは、レッド発光層を有する有機膜層の場合、図4Aのように基準スペクトルと50Å厚い場合及び薄い場合のスペクトルとをそれぞれ比較図示したものであり、図5Bは、ブルー発光層を有する有機膜層の場合、基準スペクトルと50Å厚い場合及び薄い場合のスペクトルとをそれぞれ比較図示したものである。いずれも反射光のスペクトルに変化を示し、これを比較して良否を判別すればよい。
【0052】
このような有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置を利用した蒸着及び検査方法を整理すれば、次の通りである。
【0053】
まず、図2のパネル供給部140から薄膜トランジスタが形成されたパネル30が第1クラスタ110の搬送チャンバ111に供給される。それにより、この搬送チャンバ111の搬送機111aが当該パネル30を112番工程チャンバから115番工程チャンバまで順次にローディングする。この時、112番及び113番工程チャンバでアノード層11を形成し、114番チャンバで有機膜層12を形成した後に、搬送チャンバ111にパネル30を持ってきて、検査器150で反射光スペクトルを測定する。ここで、もしコンピュータ152によって有機膜層12が不良であると判別されれば、当該パネル30は、コントローラ153がそれ以上蒸着工程を進めず、ラインから取り出すように工程を制御する。もちろん、不良でないと判別されれば、パネルを次の115番工程チャンバにローディングして、カソード層13を蒸着する。そして、カソード層13の形成後にも、搬送チャンバ111において検査器150で反射光スペクトルを測定して不良を判別し、異常がなければ、当該パネルを第2クラスタ120の122番工程チャンバにローディングして、キャッピング層14を蒸着する。同様に、キャッピング層14の形成後に搬送チャンバ121において検査器150で反射光スペクトルを測定して不良を判別し、異常がなければ、当該パネル30を以後の封止基板15を覆う工程へ移送する。もちろん、封止基板15を覆った後にも、反射光スペクトルをもう一度測定して、そのステップで良否を判別することもできる。
【0054】
このように、蒸着工程の中間ごとに良否を監視し続けるので、不良発生時、不良品を直ぐ取り出して作業者に不良発生を知らせるなどの迅速な措置を行って、結果的に不良率を低減できる。
【0055】
一方、本実施形態では、図1Aのような前面発光型有機発光素子を積層するパネルの場合を例示したが、図1Bに示された背面発光型有機発光素子を積層するパネルの場合にも、同一に適用できる。但し、背面発光型の場合は、アノード層21の下方から光を照射して反射光を測定せねばならないので、検査器150のリフレクトメータ151の位置を、図3と反対側に設置するか、そうでなければ、搬送機111a、121aがパネル30を反転してリフレクトメータ151の下方に位置させればよい。
【0056】
また、前述したように、検査器150の位置は、搬送チャンバ111、121以外にも、反応チャンバ112、113、114、115、122内に直接設置することもあり、バッファチャンバ130に設置することもある。すなわち、工程上、パネル30が通過するいずれの所でも設置して使用し、その設置位置に制限はない。
【0057】
また、ここでは、蒸着装置として搬送チャンバ111、121を複数の反応チャンバ112、113、114、115、122が取り囲んでいるクラスタ型構造を例示したが、蒸着工程が一列に配されたインライン型構造である場合でも良く、この場合、パネル30が通過する位置のうち、いずれの所でも検査器150を設置して、反射光スペクトルを分析して、不良を判別すればよい。
したがって、前述した蒸着及び検査装置を利用すれば、蒸着装置の形態や有機発光素子の種類に関係なく、蒸着工程中に反射光スペクトルを分析して良否を判別し、それにより、速かに措置を行い、不良率を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
30 パネル、
100 有機発光ディスプレイパネルの製造及び検査装置、
110 第1クラスタ、
111、121 搬送チャンバ、
111a、121a 搬送機、
112、113、114、115、122 工程チャンバ、
120 第2クラスタ、
130 バッファチャンバ、
140 パネル供給部、
150 検査器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに、アノード層、有機膜層及びカソード層を備える薄膜層を蒸着する蒸着器と、
前記薄膜層に光を照射し、その反射光のスペクトルを測定し、その反射光から各薄膜層の良否を判別する検査器と、
を備える有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置。
【請求項2】
前記検査器は、
前記薄膜層に光を照射し、その反射光を受光するリフレクトメータと、前記リフレクトメータから受光された反射光のスペクトルを分析して前記各薄膜層の良否を判別するコンピュータと、
前記コンピュータで分析された結果によって、蒸着工程を制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、
既設定の基準スペクトルと前記リフレクトメータに受光された測定スペクトルとを比較し、
前記スペクトルのうち、ピーク波長の位置変化、最低反射率のサイズ変化及び、半値幅のサイズ変化のうちいずれか一つを感知して前記各薄膜層の良否を判別することを特徴とする請求項2に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記コンピュータの不良判定時、当該パネルを蒸着工程から取り出して不良発生を作業者に知らせることを特徴とする請求項2または3に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置。
【請求項5】
前記蒸着器は、
前記各薄膜層の蒸着が進められる工程チャンバと、
前記各工程チャンバに前記パネルを移送するための搬送機が備えられた搬送チャンバと、
隣接した他の搬送チャンバへの連結のためのバッファチャンバと、を備え、
前記検査器は、これらのうちいずれか1ケ所に設置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査装置。
【請求項6】
パネルに、アノード層、有機膜層及びカソード層を備える薄膜層を蒸着する蒸着ステップと、
前記薄膜層に光を照射し、その反射光のスペクトルを測定する測定ステップと、
前記測定された反射光スペクトルを基準スペクトルと比較して、当該薄膜層の良否を判別する判別ステップと、
を含む有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項7】
前記判別ステップは、前記基準スペクトルと前記測定スペクトルとを比較し、ピーク波長の位置変化、最低反射率のサイズ変化及び、半値幅のサイズ変化のうちいずれか一つから前記薄膜層の良否を判別することを特徴とする請求項6に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項8】
前記判別ステップでの良否の判別によって、蒸着工程を制御する制御ステップをさらに含むことを特徴とする請求項6または7に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、不良判定時、当該パネルを蒸着工程から取り出して不良発生を作業者に知らせるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項10】
前記蒸着ステップで、前記アノード層、前記有機膜層及び前記カソード層が順次に蒸着され、前記測定ステップと前記判別ステップ及び前記制御ステップは、前記有機膜層以後から各薄膜層が蒸着される度に行われることを特徴とする請求項9に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項11】
前記蒸着ステップで、前記カソード層上に保護用キャッピング層を蒸着するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項12】
前記測定ステップで、前記薄膜層に照射される光は、前記カソード層から前記アノード層に向かう方向に照射されることを特徴とする請求項10に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。
【請求項13】
前記測定ステップで、前記薄膜層に照射される光は、前記アノード層から前記カソード層に向かう方向に照射されることを特徴とする請求項10に記載の有機発光ディスプレイパネルの蒸着及び検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2011−171280(P2011−171280A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248667(P2010−248667)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】