説明

有機発光材料

【課題】ポリマー材料を用いた有機EL素子に関し、発光層の平坦性、発光層構成材料の溶解性を高くすること。
【解決手段】化学式(6)で表される有機発光材料。但し、化学式(6)において、Ar3 は第1のアリーレン基、Ar4 は第2のアリーレン基を示し、R11は第1の置換基、R12は第2の置換基、R13は第3の置換基、R14は第4の置換基を示し、x、y、zは共重合比を示し、nは重合比を示す。
【化6】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型ディスプレイパネル、携帯表示機等に適用される有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子を用いた表示装置は、高輝度、低電圧駆動、フルカラーが可能である。しかも、有機EL素子から構成される表示装置は、自発光型であって視野角依存性がなく、高コントラストでバックライトが不要であり、応答速度が速く、成膜が容易であり、さらに全体が固体から構成されて衝撃に強く、軽量で低価格の製品の提供が可能であるというように、液晶表示装置(LCD)とは異なる特徴を有している。
【0003】
有機EL素子は、例えば、透明導電材よりなる下部電極と、有機薄膜(発光層)と、マグネシウム、カリウム等よりなる上部電極とをガラス基板上に順に形成した構造を有し、その全体の厚さを数mm程度まで薄くすることが可能である。そして、下部電極と上部電極の間に直流電圧を印加することによって発光層を発光させ、その光は下部電極及びガラス基板を透過して外部に出力される。有機EL素子は、電極からのキャリア注入により、作動時のみキャリアの数を増加させて再結合により発光させるという、注入型電界発光素子である。なお、有機ELは、有機LEDと呼ばれることもある。
【0004】
有機EL素子の有機薄膜に用いられる発光材料には、モノマー系材料とポリマー系材料がある。モノマー系材料は、一般に真空蒸着法により成膜され、ポリマー系材料は一般にコーティング法により成膜される。コーティング法は、高価な装置を必要とせず、素子形成にとって現実的である。ポリマー系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV(poly p-phenylenevinylene))を用いることが知られ、そのような材料を使用したEL素子が例えば特開平10-326675 公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−326675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光層として使用されるPPVのような従来の共役系ポリマー材料は、一般的なポリマー材料とは異なり、常温で結晶性の高い状態にある。従って、そのような共役系ポリマー材料を基板上に形成すると、そのポリマーから構成される発光層の表面には凹凸が発生し易くなる。
【0007】
発光層表面に凹凸がある状態で下部電膜と上部電極の間に電圧を印加すると、発光層表面の凹部で電界が集中し易くなり、発光層を破壊して下部電極と上部電極が短絡するおそれがある。また、結晶化し易い従来の発光層用ポリマーは有機溶媒に溶け難いので、基板上にそのポリマーを塗布する際に、加熱しながら有機溶媒に混合させる等の工夫を施こす必要があり、その取り扱いは容易ではない。しかも、有機溶媒に溶かした従来の共役系ポリマー材料であっても、冷却した後に結晶化し易いことには変わりがない。
【0008】
本発明の目的は、従来のポリマー系材料膜に比べて、より平坦化が可能で、しかも溶解性も高いポリマー系材料からなる発光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題に関し、下部電極と、この下部電極の上に形成されて次の化学式(3)で示されるポリマーよりなる発光層と、この発光層の上に形成される上部電極とを有する有機発光素子がある。
【0010】
【化7】

但し、化学式(7)において、Ar1 は第1のアリーレン基、Ar2 は第2のアリーレン基を示し、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ第1、第2、第3、第4の置換基を示し、nは共重合比を示す。そのnは、0<n≦0.9が好ましい。
【0011】
各アリーレン基を構成するする芳香環は、例えばベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセンのいずれか、又はそのいずれかの誘導体である。また、第1のアリーレン基は例えばパラフェニレン基であり、第2のアリーレン基は例えばメタフェニレン基である。
【0012】
各置換基は、例えば水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基である。さらに、第1、第2、第3、第4の置換基は、それぞれ、全てが異種、それらのうちの幾つかが同種、又は全てが同種である。
【0013】
有機発光素子の発光層として使用される化学式(7)のポリマーは、従来の発光層用のポリマーに比べて、常温、室温での結晶性が低下し、溶解性も高い。
【0014】
このため、化学式(7)で示したポリマーを溶媒に溶解し、これを基板上に塗布し、ついで溶媒を除去した後にそのポリマーは平坦な膜として残る。従って、化学式(7)で示したポリマーを上部電極と下部電極により挟んで有機発光素子を形成した場合に、局所的な電界集中が生じにくくなって上部電極と下部電極のショートが発生しにくくなり、素子の歩留まりが向上する。
【0015】
そのような有機発光素子において、第1のアリーレン基はパラフェニレン基であり、第2のアリーレン基はメタフェニレン基であって前記ポリマーが次の化学式(8)で示される場合に、発光層以外の構造を同じにしても、化学式(8)で示したポリマーのnの値の違いによって発光層の発光強度に違いが生じ、nを0.66とするか、或いはn:(1−n)=2:1とする場合に発光強度が最も高くなる。
【0016】
【化8】

化学式(8)は、緑色又はその近くの波長帯で発光する材料である。フルカラー表示装置に発光材料を使用するためには、赤色又はその近くの波長帯で発光する材料、又は、青色又はその近くの波長帯で発光する材料が必要となる。
【0017】
赤色又はその近くの波長帯で発光する発光材料として、化学式(7)の第1のアリーレン基を構成する芳香環としてベンゼン環を適用して化学式(9)で表される材料がある。
【0018】
【化9】

但し、化学式(9)において、Ar2 はアリーレン基を示し、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基、R3 は第3の置換基、R4 は第4の置換基を示し、mとkは共重合比を示し、nは重合比を示す。そのアリーレンを構成する芳香環はチオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかである。第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかである。
【0019】
その他に、赤色又はその近くの発光波長帯で発光する発光材料として、化学式(10)で表される材料がある。
【0020】
【化10】

但し、化学式(10)において、Arはアリーレン基を示し、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基を示し、nは重合比を示す。アリーレンを構成する芳香環はチオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかであり、置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかである。
【0021】
また、青色又はその近くの発光波長帯で発光する発光材料として、化学式(11)で表される材料がある。
【0022】
【化11】

但し、化学式(11)において、Arはアリーレン基を示し、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 はそれぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6の置換基を示し、mとkは共重合比、nは重合比を示す。アリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかである。また、前記第1〜第6の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかである。
【0023】
その他に、青色又はその近くの発光波長帯で発光する発光材料として、化学式(12)で表される材料がある。上記した課題は、化学式(12)で表される材料によって解決される。
【0024】
【化12】

但し、化学式(12)において、Ar3 は第1のアリーレン基、Ar4 は第2のアリーレン基を示し、R11は第1の置換基、R12は第2の置換基、R13は第3の置換基、R14は第4の置換基を示し、x、y、zは共重合比を示し、nは重合比を示す。第1又は第2のアリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかである。また、第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL素子の製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子に用いられる発光層の製造過程による発光波長の変化を示す蛍光スペクトル図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子に用いられる発光層による発光波長に対するELスペクトルの分布を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子に用いられる赤色発光層の蛍光スペクトル図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子に用いられる赤色発光層の蛍光スペクトル図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る有機EL素子に用いられる青色発光層の蛍光スペクトル図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る有機EL素子に用いられる青色発光層の蛍光スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1(a) 〜(d) は、本発明の実施形態の有機EL素子を示す断面図である。
【0028】
図1(a) において、ガラス(透明)基板1上に下部電極(陽極)2としてITO(インジウム錫酸化物)膜を200nmの厚さにスパッタ法により形成する。ITO膜は、その表面の清浄のために、その表面を酸素又はオゾンプラズマ等に曝されることもある。
【0029】
なお、下部電極2の構成材料はITOに限られるものではなく、IDIXO(インジウム亜鉛酸化物)その他の透明導電材を用いてもよい。次に、発光層3として次の化学式(13)で示されるポリマーをスピンコーティング法により下部電極2上に例えば150nmの厚さに形成する。なお、化学式(13)において、例えばn=0.5である。
【0030】
【化13】

そのポリマーをスピンコートするためには、そのポリマーを溶媒、例えばクロロホルム(CHCl3) に常温で溶解して溶液を作成し、その溶液3aを図1(b) に示すように下部電極2上に塗布した後に、溶媒を乾燥により除去する。乾燥の温度は、溶媒の気化温度以上であって150℃以下であり、150℃で乾燥する場合には、約30分の乾燥時間とする。より好ましい乾燥条件は、温度90℃で乾燥時間60分である。
【0031】
これにより、下部電極2上に残った化学式(13)のポリマーは図1(c) に示すように発光層3として使用される。
【0032】
次に、図1(d) に示すように、上部電極(陰極)4としてマグネシウム銀(MgAg)を発光層3上に共蒸着法により300nmの厚さに形成する。マグネシウム銀の形成に使用される共蒸着法は、その構成元素毎に蒸着源を蒸着室内で別々に配置してそれらを同一基板に向けて蒸着して合金を形成する方法である。この実施形態の上部電極4は、マグネシウムを1とした場合に銀が10となるような割合で合金化したMgAg膜から構成される。なお、上部電極4を蒸着する際に、蒸着源と基板との間にメタルマスクを置くことによって上部電極4をパターニングしながら成長してもよい。上部電極4の材料としては、その他に、Na、NaK 、Mg、Li、CaMg/Cu混合物、Mg/In合金等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む金属を用いても良い。
【0033】
以上のような工程によって形成された発光素子において、下部電極2を正側に、上部電極4を負側にして電圧を印加して電流を流すと、発光素子から緑の光が発光し、その光は下部電極2及びガラス基板1を透過して外に出射される。
【0034】
上記した実施形態において、化学式(13)で示されるポリマーは、常温、室温での結晶性が低く、溶媒への溶解性も良いために、乾燥後に残ったポリマー膜の表面は従来よりも平坦であり、上下電極間の短絡が防止され、素子の歩留まりが向上する。
【0035】
なお、化学式(13)のポリマーをクロロホルムに溶解した状態の蛍光スペクトルは図2の破線で示すプロファイルであり、また、クロロホルムを除去した後の膜状態のポリマーの蛍光スペクトルは図2の実線で示すプロファイルである。即ち、膜状態のポリマーは、500〜550nmの範囲で発光可能なことがわかる。
【0036】
次に、化学式(13)に示したポリマーの合成方法について以下に説明する。
【0037】
まず、180ミリリットル(mL)のテトラヒドロフラン(THF)溶液中に150mg(1.5mmol)の塩化第一銅と180mg(1.5mmol)のN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)とを加える。そして、それらの混合物に酸素を10分間通気して触媒を形成する。
【0038】
1.48g(3mmol)の2,5-ジドデシルオキシ -1,4-ジエチニルベンゼンと、0.93g(3mmol)の4-ドデシルオキシ-1,3ジエチニルベンゼンとを180mLのテトラヒドロフラン溶液に溶解させ、これを上記した触媒を含むTHF溶液に加える。そして、それらの混合溶液内の物質を酸素雰囲気中で2日間反応させる。その反応は、酸化的縮合重合反応である。
【0039】
2,5-ジドデシルオキシ -1,4-ジエチニルベンゼンは、次のような化学式(14)で示される。
【0040】
【化14】

また、4-ドデシルオキシ-1,3ジエチニルベンゼンは、次のような化学式(15)で示される。
【0041】
【化15】

酸化的縮合重合反応により得られたTHF反応溶液を10mL程度に濃縮した後に、激しく攪拌された1リットルの2N-HCL/MeOH 溶液中にその濃縮物を滴下する。そして、酸化的縮合重合反応により生成されたポリマーを2N-HCL/MeOH 溶液中に沈殿させ、ついで、触媒を除去し、さらにポリマーを精製する。
【0042】
次に、析出したポリマーをガラスフィルタを用いて濾過回収し、これを再び少量、例えば10mLのTHF溶液中に溶解し、さらに、これを大量、例えば1リットルのMeOH液中に滴下することによりポリマーの再沈殿化を行う。MeOH液は、激しく攪拌した状態で使用される。
【0043】
再沈殿化されたポリマーを再度ガラスフィルタで濾取回収を行うことにより生成物を精製する。その後に、ポリマーを真空乾燥させる。収率(yield) は95%であった。
【0044】
上記した2,5-ジドデシルオキシ -1,4-ジエチニルベンゼンと4-ドデシルオキシ-1,3ジエチニルベンゼンとの反応式は次式(16)のようになり、その反応によってポリマーが得られた。反応式(16)において、cat.は触媒を示している。そのポリマーの共重合体比は、収率によれば、化学式(14),(15)の仕込比とほぼ同様で、x:y=1:1となり、化学式(13)のnが0.5となるポリマーが得られた。
【0045】
【化16】

反応式(16)において3で示したポリマーは合成の進行を表す構造であって、化学式(13)のポリマーと同じ物質である。
【0046】
ところで、有機EL素子の発光層3として、上記した例では化学式(13)で示したポリマーを使用したが、そのポリマーの一般式は、次の化学式(17)で示される。
【0047】
【化17】

化学式(17)において、Ar1 、Ar2 は、それぞれアリーレン基(2価の芳香環)を示している。アリーレン基を構成する芳香環としては、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、または、それらいずれかの誘導体などがある。また、Ar1 を含む主鎖中には三重結合した炭素を2つ有し、Ar2 を含む主鎖中には三重結合した炭素を2つ有している。
【0048】
アリーレン基として、例えば、ビフェニル、ターフェニル、ペリレン、クマリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェナントレン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェニルアゾベンゼン、ジフェニルアゾベンゼン、アントラキノン、アクリジノン、キナクリドン、スチルベンゼン、又は、それらのうちいずれかの誘導体がある。
【0049】
例えば、Ar1 としてはポリマーの剛直性を高めるような構造を有する1,4-フェニレン(パラ(p-)フェニレン)基、1,5 ナフタレン基等のアリーレン基があり、また、Ar2 としてはポリマーの剛直性を軽減するような構造を有する1,3-フェニレン(メタ(m-)フェニレン)基、1,2 ナフタレン基などのアリーレン基がある。
【0050】
1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基その他の置換基である。また、R1 、R2 、R3 、R4 は、全てが異種であったり、それらのうちの幾つかが同じあったり、又は全てが同種であったりする。
【0051】
また、化学式(17)のnは共重合比であって、好ましくは0<n≦0.9である。n=1のポリマーとしては例えばポリアリーレンブタジイニレンがあり、この場合にも、常温での結晶性が従来よりも低下し、溶解性も従来よりも高くなることが確認された。
【0052】
以上のR1 、R2 、R3 、R4 、Ar1 、Ar2 を適宜選択することによって発光層3での発光波長が変化する。したがって、カラー画像を得る場合には、画像の画素毎にポリマーの構成を変更するようなパターンを形成することになる。
【0053】
発光層3の発光色の微調整のために、複数種のポリマーを含ませることも可能である。
【0054】
ところで、化学式(17)において、1番目のユニットをAと定義し、2番目のユニットをBと定義する。そして、A、Bが化学式(13)に示したような構造をとる場合、即ちAのユニットがパラ置換体の構造を採り、Bのユニットがメタ置換体の構造を採る場合において、発光層3を構成する化学式(13)のポリマーの共重合比nと発光層3の発光強度との関係を実験により調べた。その結果、ポリマーの膜厚、形成工程が同じであっても、nの値の違いによって発光強度も異なっていることがわかり、n=0.66、又はn:(1−n)=2:1の場合に、発光層3の発光強度が最も高くなった。
【0055】
化学式(13)でn:(1−n)=2:1としたポリマーから構成される発光層3の発光強度と、化学式(13)でn:(1−n)=1:1としたポリマーから構成される発光層3の発光強度とを対比したところ、図3に示すようなELスペクトラが得られた。図3に示した波長とEL強度の関係を示すプロファイルは、図2に示した蛍光スペクトラのプロファイルを反映している。
【0056】
図3において、n=0.5のポリマーからなる発光層3の駆動電圧を40Vとし、n=0.66のポリマーからなる発光層3の駆動電圧を26Vとしている。このような駆動電圧の違いがあっても、n=0.66のポリマーは、n=0.5のポリマーに比べて40倍程度の強い発光が得られた。
【0057】
化学式(13)においてn=0.66とするため、即ち化学式(16)でx=2、y=1とするためには、化学式(16)の符号1で示されるパラ体を2.96g(6mmol)、化学式(16)の符号2で示されるメタ体を0.93g(3mmol)の仕込比としてテトラヒドロフラン溶液に溶解し、酸化的縮合重合反応を生じさせる。その後に、n=0.5のポリマーを形成する場合と同じように、触媒除去、ポリマー精製、濾過回収、ポリマー再沈殿化、濾過回収、真空乾燥といった処理を順に行う。
【0058】
なお、上記した有機EL素子では、ガラス基板側から光を出力するような構造となっているが、電極の構成を逆にして上側に光透過導電膜を形成して、上側から光を出力するようにしてもよい。また、上記した有機EL素子では、発光層を直に一対の電極により挟んだ構造を示したが、発光層と負側電極の間に有機物の電子伝送層を形成するか、発光層と正側電極の間に有機物よりなる正孔伝送層を形成してもよい。
【0059】
ところで、化学式(13)で示したポリマーは500〜550nmの発光波長範囲、即ち緑又はその近くの波長で発光する。
【0060】
そこで、表示装置をフルカラーで表示するためには、さらに赤色、青色で発光するポリマーが必要になる。そこで、以下に赤色波長帯で発光するポリマーについて説明する。
【0061】
まず、赤色発光の発光層3に使用される共重合ポリマーは化学式(18)で表される。化学式(18)の共重合ポリマーは、化学式(17)のAr1 の芳香環がベンゼン環であり、置換基R4 は水素原子であり、Ar2 はアリーレン基であって芳香環がチオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかである。化学式(18)においてR1 ,R2 ,R3 ,R4 は、それぞれ置換基であって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のいずれかである。また、mとkは共重合比、nは重合比を示している。
【0062】
【化18】

化学式(18)のR1 、R2 がそれぞれアルコキシ基、Ar2 を構成する芳香族がチオフェンであり、R3 がカルボキシル基、R4 は水素原子であるポリマーは、コポリ(2,5- ジドデシルオキシ-1,4- フェニレンブタジニレン)3-ドデシルオキシカルボニルチニレンブタジニレン)(2:1)(copoly(2,5-didodecyloxy-1,4-phenylenebutadiynylene)(3-dodecyloxycarbonylthienylenebutadiynylene)(2:1) )と呼ばれ、化学式(19)で示される。
【0063】
【化19】

化学式(19)で示した共重合ポリマーからなる発光層3は、図4に示すようなスペクトルを有し、発光波長帯のピークは574nmとなっている。
【0064】
化学式(19)に示したポリマーは、化学式(15)で示した4-ドデシルキオキシ-1,3ジエチニルベンゼンの代わりに、3-ドデシルオキシカルボニル-2.5- ビス(トリメチルシリルエチニル)チオフェン(3-dodecyloxycarbonyl-2,5-bis(trimethylsilylethynyl)thiophe)を用いて上記したと同様な方法により合成される。
【0065】
(第2の実施の形態)
赤色発光の発光層3を構成する材料として上記した共重合ポリマーでなくホモポリマーを使用してもよい。ホモポリマーとして、例えば、化学式(20)で表されるポリ(3-ドデシロキシカルボニル-2,5- チエニレンブタジイニレン)(poly(3-dodecyloxycarbonyl-2,5-thienylenebutadiynylene))がある。化学式(19)に示したホモポリマーのスペクトルは、図5に示すようになり596nmにピークを有する発光波長帯となる。
【0066】
【化20】

化学式(20)に示すホモポリマーは次のようにして合成される。
【0067】
まず、遮光されたアルゴン雰囲気において、チオフェンカルボン酸(thiophenecarboxylic acid)とも呼ばれる3-テノ酸(3-thenoic acid) を5.12g(40mmmol )の量で50mLのジメチルホルムアミド(dimethylfolmamide ;DMF)に加え、それらにNブロモスクシンイミド(N-bromosuccinimide)を14.6g(82mmol)加える。
【0068】
そして、それらを一晩攪拌することにより化学式(21)の反応が生じた反応溶液を、100mLの飽和硫酸ナトリウム水と600mLの水との混合液中に注入し、これにより得られた析出物を回収する。さらに、析出物をエタノール・水混合液中で再結晶させて白色針状結晶を9.38g、収率82.0%で得た。白色針状結晶は、反応式(21)の右側に示した2,5-ジブロモ-3- テノ酸(2,5-dibromo-3-thenoic acid)の結晶である。
【0069】
【化21】

次に、4.13g(20mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と2.44g(20mmol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)を良く真空乾燥させた後、それらの混合物にアルゴン雰囲気下でジクロロメタン(CH2Cl2)を加える。それらに2,5-ジブロモ-3- テノ酸を5.72g(20mmol)、ドデカノール(dodecanol;C12H25OH)を3.73g(20mmol)加えて3日間攪拌すると、反応式(22)に示す反応が起きる。
【0070】
【化22】

そして、反応塩を濾過し、さらにジクロロメタンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムにより精製し、白色結晶を8.56g(18.8mmol)、収率94.2%で得た。白色結晶は、化学式(22)の右側に示した2,5-ジブロモ-3- ドデシルオキシカルボニルチオフェン(2,5-dibromo-3-dodecyloxycarbonylthiophene)、別名ドデシル2,5-ジブロモ-3- テノエート(dodecyl2,5-dibromo-3-thenoate)の結晶である。
【0071】
次に、アルゴン雰囲気下でドデシルエステル2,5-ジブロモチオフェン(3-dodecylester-2,5-dibromothiophene)を6.81g(15mmol)、ヨウ化銅(CuI)を103mg(0.54mmol)、トリフェニルフォスフィン(triphenylphosphine;PPh3)を210mg(0.8mmol)の量で、27mLのトリエチルアミン(Et3N)と18mLのピリジン(pyridine)の混合液中に添加する。そして、その液をアルゴンバブリングしながら攪拌を20分行う。その後に、その液中に、トリメチルシリルアセチレン(trimethylsilylacetylnene;(CH3)3SiC≡C-H)を3.44g(35mmol)、ビス・トリフェニルフォスフィン・パラジウムジクロライド(bis(triphenylphosphine)palladium dichloride;Pd(PPh3)2Cl2) を105mg(0.15mmol)の量で加える。この液を85℃に保持しながら一晩攪拌した後に、ジクロロメタンと水を用いて抽出する。これによって得られた油層を、ジクロロメタンとヘキサンをそれぞれ1と3の割合で含む展開溶媒を用いたシリカゲルカラムにより精製して黄色オイルを5.93g(11.8mmol)、収率78.9%で得た。
【0072】
黄色オイルは、反応式(23)に示した反応によって得られた3-ドデシルオキシカルボニル-2,5- ビス(トリメチルシリルエチニル)チオフェン(3-dodecyloxycarbonyl-2,5-bis(trimethylsilylethynyl)thiophene) 、別名ドデシル2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)-3- テノアート(dodecyl2,5-bis(trimethylsilylethynyl)-3-thenoate) である。
【0073】
【化23】

次に、黄色オイルを0.500g(1mmol)の量で20mLのTHFに溶かし、さらに別のTHF中の1Mテトラブチルアンモニウムフロライド(1M tetrabutylammonium flouride;Bu4NF)を0.5mL(0.5mmol)の量で加える。これを5分間攪拌した後に、THFを展開溶媒としたシリカゲルカラムにより精製して精製物を得た。次に、別の容器に塩化第一銅を10mg(0.1mmol)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を12mg(0.1mmol)、THFを8mL、ピリジンを2mLの量で加えた後に、その容器内の液中に酸素を通して触媒溶液を形成する。そして、先の精製物を含むTHFを10mLの量で触媒溶液中に加え、これを酸素雰囲気中で2日間攪拌して反応式(24)の反応を生させる。
【0074】
【化24】

その後に、反応が生じた溶液を500mLの2規定(N)の塩酸メタノールに滴下し、これによって得られた沈殿物を回収する。そして、その沈殿物をさらにクロロホルムに溶かし、この液を500mLのメタノールに滴下し、これにより生じた沈殿物を回収して赤色粉末を203g(0.59mmol)、収率59.5%で得た。その赤色粉末は化学式(24)の右側の物質、即ち化学式(20)に示すホモポリマーである。
【0075】
赤色又はその近くの波長帯で発光する本実施形態に係るホモポリマーの一般式は、化学式(25)で示される。化学式(25)において、アリーレン基Arを構成する芳香環は、チオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかである。R1 、R2 は置換基であって、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のいずれかである。
【0076】
【化25】

(第3の実施の形態)
第1、第2実施形成では、緑色或いはその近くの波長帯、又は赤或いはその近くの波長帯で発光するポリマーについて説明した。有機EL表示装置をフルカラーで表示するためには、さらに青色で発光するポリマーが必要になる。そこで、以下に青色波長帯で発光するポリマーについて説明する。
【0077】
青色発光の発光層3を構成する共重合ポリマーとして、例えば、化学式(26)に示すようなコポリ(4,4'-ビフェニリイレンブタジイニリレン)(4-ドデシロキシ-m- フェニレンブタジイニレン)(copoly((4,4'-biphenylylenelbutadiynylene)(4-dodecyloxy-m-phenylenebutadiynylene)がある。化学式(26)に示したポリマーのスペクトルは、図6に示すようになり428nm、450nmにピークを有する発光波長帯となる。
【0078】
【化26】

化学式(26)に示すポリマーは次のようにして合成される。まず、反応式(27)に示す反応により4,4'- ビス(トリメチルシリルエチニール)ビフェニール(4,4'-rimethylsilylethynyl)biphenyl)を合成する。
【0079】
【化27】

即ち、アルゴン雰囲気下で、トリエチルアミンを100mL、THFを130mLの量で含む液に、4,4'- ジブロモビフェニール(4,4'-dibromobiphenyl)を6.24g(20mmol)、塩化パラジウムを354mg(2mmol)、酢酸銅(Cu(CH 3COO)2) を364mg(2mmol)、トリフェニルフォスフィンを1.73g(6.6mmol)、トリメチルシリルアセチレンを3.24g(3.3mmol)の量で加え、85℃で一晩還流させて化学式(27)の反応を生じさせる。そして、その液をジクロロメタンと水で抽出し、これによって得られた油層を、ジクロロメタン展開溶媒を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで処理し、さらにメタノールを用いる再結晶により精製し、これにより白色板状結晶を5.90g(17mmol)、収率85.0%で得た。その白色板状結晶は、化学式(27)の右に示される,4'-ビス(トリメチルシリルエチニール)ビフェニールである。
【0080】
次に、その白色板状結晶を用いて、反応式(28)に示す反応により、4,4'-ジエチルビフェニル(4,4'- diethylbiphenyl )を合成する。
【0081】
【化28】

即ち、白色板状結晶を5.9g(17mmol)の量で10mLのTHFに溶かし、これに6mLのメタノール(CH3OH; MeOH )に1.83g(34mmol)の量で溶かされたナトリウムメトキシド(NaOCH3)を加えた後に、室温で3時間反応させる。そして、ジクロロメタンと10%塩酸水を使用した抽出により油層を得る。
【0082】
ジクロロメタンとヘキサンを1と1の割合で含む展開溶媒を使用するシリカゲルカラムで油層を精製し、これにより白色粉末を1.20g(5.9mmol)、収率34.8%で得た。その白色粉末が化学式(28)の右に示す4,4'- ジエチルビフェニルである。
【0083】
次に、その白色粉末を用いて反応式(29)に示す反応により、コポリ(4,4'-ビフェニリレンブタジニリレン)(4-ドデシロキシ-m- ペニレンブタジニレン)(copoly((4,4'-biphenylylnelbutadiynylene)(4-dodecyloxy-m-phenylenebutadiynylene))を合成する。
【0084】
【化29】

即ち、20mg(0.2mmol)の塩化第1銅と24mg(0.2mmol)のTMEDAと40mLのTHFを容器に入れて反応させ、その反応溶液に酸素を通気して触媒溶液を形成する。その後に、40mLのTHFに溶かした24mgの4,4'- ジエチルビフェニルと311mg(1mmol)の4-ドデシロキシ-m- ジエチニールベンゼン(4-dodecyloxy-m-diethynylbenzene)をそれぞれ触媒溶液に加え、これを酸素雰囲気下で2日間攪拌する。4-ドデシロキシ-m- ジエチニールベンゼンは、化学式(29)の左から2つ目の化学構造式で表される。その攪拌の最中に化学式(29)の反応が進み、これにより得られた反応溶液を500mLの2規定の塩酸メタノールに滴下し、これにより得られた沈殿物を回収する。さらに、沈殿物をクロロホルムに溶かし、不溶成分を除去した後に、これを500mLのメタノールに滴下し、これによって得られた沈殿物を回収することにより、白色粉末を248g(0.98mmol)、収率48,7%で得た。その白色粉末は、化学式(26)に示したポリマーであり、これを第1実施形態と同様に発光層3として用いると、発光層3は青色又はこれに近い色の光を発する。
【0085】
化学式(26)で示したポリマーの一般式は化学式(30)で表される。
【0086】
【化30】

化学式(30)において、Arはアリーレン基で、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、又はそのいずれかの誘導体である。また、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基R3 は第3の置換基、R4 は第4の置換基、R5 は第5の置換基、R6 は第6の置換基であり、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかである。また、mとkは共重合比、nは重合比である。
【0087】
(第4の実施の形態)
第3実施形態に示したポリマーとは異なる青色発光のポリマーについて説明する。
【0088】
青色発光の発光層を構成する共重合ポリマーとして、例えば、化学式(31)に示すような構造のものがある。化学式(31)に示したポリマーのスペクトルは、図7に示すようになり405nm、495nm、512nmにピークを有する発光波長帯となる。化学式(31)においてx:y:zは6:3:1である。
【0089】
【化31】

化学式(31)に示すポリマーは次のようにして合成される。
【0090】
まず、塩化第一銅を10mg(0.1mmol)、TMEDAを12mg(0.1mmol)、THFを20mLの量で混合した反応溶液に酸素を通気し、これにより触媒溶液を形成する。その後に、2,5-ジドデシルオキシ-p- ジエチニールベンゼン(2,5-didodecyloxy-p-diethynylbenzene )を297mg(0.6mmol)、4-ドデシロキシ-m- ジエチニールベンゼンを93mg(0.3mmol)、1,3,5-トリエチニールベンゼン(1,3,5-triethynylbenzene )を15mg(0.1mmol)を20mLのTHFに加え、さらにその溶液を先の触媒溶液に加えて酸素雰囲気下で2日間攪拌する。これにより、反応式(32)の反応が生じる。
【0091】
そして、反応溶液を500mLの2規定の塩酸メタノールに滴下し、これにより生じた沈殿物を回収する。さらに、沈殿物をクロロホルムに溶かし、不溶成分を除去した液を500mLのメタノールに滴下し、これにより生じた沈殿物を回収して黄色粉末を304g、収率75.4%を得た。
【0092】
【化32】

青色又はその近くの波長帯で発光する本実施形態に係る共重合ポリマーの一般式は、化学式(33)で示される。化学式(33)において、Ar3 、Ar4 は、それぞれアリーレン基(2価の芳香環)を示している。アリーレン基を構成する芳香環としては、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、または、それらいずれかの誘導体などがある。
【0093】
【化33】

アリーレン基として、例えば、ビフェニル、ターフェニル、ペリレン、クマリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェナントレン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェニルアゾベンゼン、ジフェニルアゾベンゼン、アントラキノン、アクリジノン、キナクリドン、スチルベンゼン、又は、それらのうちいずれかの誘導体がある。
【0094】
11、R12、R13、R14は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基その他の置換基である。また、R11、R12、R13、R14は、全てが異種であったり、それらのうちの幾つかが同じあったり、又は全てが同種であったりする。また、xとyとzは共重合比を示し、nは重合比を示している。
【0095】
(付記1) 下部電極と、前記下部電極の上に形成され、化学式(17)で示されるポリマーの発光層と、前記発光層の上に形成される上部電極とを有する有機発光素子。但し、化学式(17)において、Ar1 は第1のアリーレン基、Ar2 は第2のアリーレン基を示し、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基、R3 は第3の置換基、R4 は第4の置換基を示し、nは共重合比を示す。
【0096】
(付記2) 前記第1又は第2のアリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかであることを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0097】
(付記3) 前記第1のアリーレン基はパラフェニレン基であり、前記第2のアリーレン基はメタフェニレン基であることを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0098】
(付記4) 前記第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0099】
(付記5) 前記第1、第2、第3、第4の置換基は、全てが異種、それらのうちの幾つかが同種、又は全てが同種であることを特徴とする付記4に記載の有機発光素子。
【0100】
(付記6) 前記化学式(17)において、前記R1 と前記R2 と前記Ar1 はパラ体を構成し、前記R3 と前記R4 と前記Ar2 はメタ体を構成することを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0101】
(付記7) 前記ポリマーの前記第1のアリーレン基はパラフェニレン基であり、前記第2のアリーレン基はメタフェニレン基であって前記ポリマーが化学式(13)で示されることを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0102】
(付記8) 前記nは0.66、又は、前記nは、n:(1−n)=2:1を満たす値であることを特徴とする付記7に記載の有機発光素子。
【0103】
(付記9) 前記nは、0<n≦0.9であることを特徴とする付記1又は付記7に記載の有機発光素子。
【0104】
(付記10) 前記上部電極又は前記下部電極の一方は、光透過性導電材料から形成されることを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0105】
(付記11) 前記上部電極又は前記下部電極の他方は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属またはそのような金属を含むことを特徴とする付記1に記載の有機発光素子。
【0106】
(付記12) 化学式(18)で表される有機発光材料。但し、化学式(18)において、Ar2 はアリーレン基を示し、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基、R3 は第3の置換基、R4 は第4の置換基を示し、mとkは共重合比を示し、nは重合比を示す。
【0107】
(付記13) 前記アリーレンを構成する芳香環はチオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかであり、前記第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする付記12に記載の有機発光材料。
【0108】
(付記14) 化学式(25)で表される有機発光材料。但し化学式(25)において、Arはアリーレン基を示し、R1 とR2 はそれぞれ置換基を示し、nは重合比を示す。
【0109】
(付記15) 前記アリーレンを構成する芳香環はチオフェン、アントラセン、ピリジン、フェノール、アニリン、その誘導体のいずれかであり、前記置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする付記14に記載の有機発光材料。
【0110】
(付記16) 化学式(30)で表される有機発光材料。但し、化学式(30)において、Arはアリーレン基を示し、R1 は第1の置換基、R2 は第2の置換基R5 は第1の置換基、R3 は第3の置換基、R4 は第4の置換基、R5 は第5の置換基、R6 は第6の置換基を示し、mとkは共重合比、nは重合比を示す。
【0111】
(付記17) 前記アリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかであることを特徴とする付記16に記載の有機発光材料。
【0112】
(付記18) 前記第1〜第6の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする付記16に記載の有機発光材料。
【0113】
(付記19) 化学式(33)で表される有機発光材料。但し、化学式(33)において、Ar3 は第1のアリーレン基、Ar4 は第2のアリーレン基を示し、R11は第1の置換基、R12は第2の置換基、R13は第3の置換基、R14は第4の置換基を示し、x、y、zは共重合比を示し、nは重合比を示す。
【0114】
(付記20) 前記第1又は第2のアリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかであることを特徴とする付記19に記載の有機発光材料。
【0115】
(付記21) 前記第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする付記19に記載の有機発光材料。
【0116】
(付記22) 付記12乃至付記21のいずれかの有機発光材料を上部電極と下部電極により挟むことを特徴とする有機発光素子。
【0117】
以上述べたように本発明によれば、上記した化学式(17)、(18)、(25)、(30)、(33)で示されるポリマーよりなる発光層を下部電極と上部電極の間に形成した。そのポリマーは、従来の発光層に用いられるポリマーに比べて、常温での結晶化しにくく、しかも、溶媒への溶解性が高い。
【0118】
従って、それらのポリマーを発光層に適用することにより、発光層の平坦化が容易となり、上部電極と下部電極とのショートが発生しにくくなって歩留まりが向上する。
【0119】
また、反応式(16)において、パラ体とメタ体の置換比がx:y=2:1となるように合成すると、特に強い発光の発光層が得られる。
【符号の説明】
【0120】
1…ガラス基板(透明基板)、
2…下部電極(透明導電膜)、
3…発光層、
4…上部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化6】

化学式(6)で表される有機発光材料。
但し、化学式(6)において、Ar3 は第1のアリーレン基、Ar4 は第2のアリーレン基を示し、R11は第1の置換基、R12は第2の置換基、R13は第3の置換基、R14は第4の置換基を示し、x、y、zは共重合比を示し、nは重合比を示す。
【請求項2】
前記第1又は第2のアリーレン基を構成する芳香環は、ベンゼン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、フラン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、その誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光材料。
【請求項3】
前記第1、第2、第3、第4の置換基は、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−99114(P2011−99114A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14218(P2011−14218)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2001−125359(P2001−125359)の分割
【原出願日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】