説明

有機発光素子およびその製造方法

本発明は、有機発光素子、特に有機発光ダイオードに関する。該有機発光素子では、ベース電極、カバー電極、および、有機層領域を有する構成が形成されており、上記有機層領域は、上記ベース電極と上記カバー電極との間に配置され、上記ベース電極と上記カバー電極とに電気接触しており、少なくとも1つの正孔輸送層と、少なくとも1つの電子輸送層と、少なくとも1つの発光領域とを備えている。上記ベース電極は、分散剤から、湿式化学堆積法によって、ベース電極材料、すなわち光透過性の導電性酸化物から成る、パターニングされた、接着剤を含まない光透過性のベース電極層として形成されている。上記ベース電極層は、約500Ω/□未満のシート抵抗を有すると共に、1.8未満の光屈折率を有し、上記構成に約−3Vの電圧が印加された場合の上記構成の電流電圧特性では、逆電流は、約10−2mA/cm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途において、有機発光ダイオード(OLED)のような有機発光素子が、電圧を印加すると発光する素子として用いられている。特定の用途では、高効率で寿命の長い有機発光素子を、パターニングが容易な、可能な限り多くの光を散乱させる、導電性且つ透明なベースコンタクト上に堆積させることが求められている。このベースコンタクトは、上記有機発光素子のベース電極を形成するものである。
【0003】
重要な点は、このようなベース電極の製造工程を、大規模製造プロセスと単純に組み込んで、材料を節減しながら製造することである。通常、このような製造プロセスは、ベースコンタクトの好ましい物理的特性を確保することに加えて、さらに、材料歩留まりが最適であること、プロセスステップの数が可能な限り少ないこと、素子構造のレイアウトおよびデザインを変更可能であること、基板サイズを変更可能であること、および、広面積のアプリケーションに容易に拡張可能であることといった要件を満たしている必要がある。
【0004】
公知の有機発光素子では、ベース電極用のベース電極材料として、インジウムスズ酸化物(ITO)を用いている場合が多い。ここでITOは、真空において、例えばスパッタリング技術によって、例えばガラスのような基板上に広面積に亘って成長される。その後、塗布された光に敏感なニスに光を当て、マスクを用いて該ニスをパターニングし、次に必要とされなかったITOをエッチングによって除去することによって、所望のベース電極パターンを形成する。この標準的なリソグラフィーステップの大きな欠点は、真空において広い面積に亘って成長させたベース電極材料の一部は、後から再びエッチング時に除去され、除去された材料は、再びベース電極材料としては使用されないという点にある。つまり材料の無駄である。さらなる欠点は、パターニング方法が複雑な点である。個々の各ステップに高価な技術的装置が必要であり、さらなる製造コストの原因となっている。
【0005】
あるいはシャドーマスクによって、所望のITO金属導体を成長することも可能である。しかしここでは、散乱効果によって、いわゆるアンダースパッタリングが生じる。このアンダースパッタリングは、所望のベース電極パターンのエッジをぼやけさせ、結果的にラインエッジを不正確に輪郭付ける。この高価なベース電極材料は、ここでも、不適切な方法でのみ利用されている。なぜなら、ベース電極材料の大部分は、真空槽において、シャドーマスク上、または他の表面に成長されるからである。
【0006】
ベース電極パターンのレイアウトを変更する必要があるならば、上述の方法では、新たなマスクを作成しなければならない。これは、ベース電極のパターニングは常にマスクのデザインと結びついていることを意味している。このため、利用可能な基板サイズの種類に関しても制限されることになる。
【0007】
光透過性のベース電極を光透過性のベース電極層の形に形成するために利用され得る、ITOのような導電性酸化物を成長させるための公知のさらなる方法は、PVD(「物理気相成長法」)、CVD(「化学気相成長法」)、蒸着法、噴霧熱分解法、パルスレーザアブレーション、および、イオンビーム蒸着である。さらに、湿式化学プロセスに基づいた、例えばゾルゲル技術(Aergeter et al., Journal of Sol-Gel Science and Technology 27, 81頁, 2003年を参照)のような方法も提案されている。ここでは、特に液組成をスピンコーティングすることによって、パターニングされていない層を基板上に形成する。この層は、特に赤外反射する表面として構成されることが可能である。さらに、サブミクロンの範囲にエンボス加工することによって形成する表面を、導電性酸化物から形成することも実現されている。
【0008】
有機発光素子用ベース電極をITOにより製造する公知の技術では、要件および素子の機能に影響を与えるパラメータが十分に満たされていない場合が多い。これについては、以下にさらに詳細に説明する。このため、以下に、まずいくつかの概念について詳細に定義する。
【0009】
粗度とは、本願の意味では、2乗平均平方根粗度(RMS「2乗平均平方根」)を指しており、これは平均高さレベルからの平均平方の高さの偏差をナノメータ(nm)で示すものである。ここで、高いパターンの走査は、例えば原子間力顕微鏡によって、10μm×10μmの測定面で行われる。
【0010】
シート抵抗とは、本願の意味では、任意の大きさの四角形の領域が向かい合う2つのエッジに接触し、電流が(直流)電圧に応じて検出される場合の、層厚が均一な1つの層で測定されるオーム抵抗を指している。シート抵抗は、オーム(Ω)で測定され、Ω/□で表される。このシート抵抗は、例えば4点測定を用いた他の方法でも測定可能である。
【0011】
透過率とは、本願の意味では、所定の波長の光が本体を透過する能力を指している。可視波長帯は、通常、380nmから750nmの波長帯である。コーティングされたガラスの透過率と、コーティングされていない同一のガラスの透過率とを、パーセンテージ値を示して比較することができる。
【0012】
空隙率とは、本願の意味では、細孔を設けることが可能且つ透過性であり得る材料の特性を指している。この空隙率はパーセントの数値で示され、当該材料の全容積における細孔容積が占める割合を定義するものである。
【0013】
ベース電極の電気伝導率は、その層厚と共にスケーリングされることが一般的である。しかしながら、層厚が増加するにつれ、発光素子の有機領域において生成される光の吸収が増え、透過率は減少する。市販の、真空で成長させたITO金属導体は、これら2つの見地を考慮して、OLEDアプリケーションに最適化されたものである。厚さが100nmである極めて良質なITO層の場合、シート抵抗は20〜50オーム/□に達する。このようなベース電極の透過率は、可視スペクトル域において、通常90%〜95%である。このようなベース電極は、マグネトロンスパッタリング技術によって、高い温度(>200℃)において成長される。
【0014】
従来技術に係る、スパッタリング法によって製造された光透過性のベース電極は、通常1nmRMS未満の極めて平滑な表面を有している。これに関する情報が、製造業者による仕様書、例えばThin Film Devices Inc社のITO仕様書に記載されている。ここには、光透過性の電極をディスプレイ(LCD、OLED、FED、プラズマ)領域において用いる場合の厚さ150nmのITO層の表面粗度は、1nm未満である旨が記載されている。従って、例えばApplied Films社のITO材料も用いられる。この材料のシート抵抗は13オーム/□であり、測定RMS粗度は0.8nmである(Langmuir, 18, 2002, 450-457参照)。
【0015】
粗度が低いにも関わらず、スパッタリング法によって製造された透明なベース電極には、局所的に、高さに数ナノメータ(>10nm)の差(「スパイク」)がある場合が多い。このスパイクの数は、特に層厚が増大するにつれて増える。この局所的な高さの偏差の大きさは、OLEDが形成される有機層の厚さと同じオーダである場合が多い。この場合、ショートが起こる確率、局所的に電流密度がピークになる確率、および、漏れ電流が上昇する確率が高くなり、このため、有機発光素子の効率は低下すると共に、耐用年数は短縮される場合が多い。追加的な研磨ステップを設けて、成長させたITOベース電極を機械的に後処理することによって、この作用を低減させることが可能である。しかしこれには、時間もコストも多大にかかってしまう。
【0016】
表面特性のこの問題を議論している文献もある(Tak et al., Thin Solid Films, 411, 2002, 12-16)。寿命の長いOLEDを製造することを可能にするには、極めて平滑なITO表面が必要である。表面粗度は、OLEDの安定性と相関している。特にOLEDアプリケーションではITOの表面粗度が重要な要素であることもまた議論されている(J Vac Sc Tech A, 21 (4), 2003参照)。この業界で求められるRMS値は、<1nmである。従って、漏れ電流路を排除するには、可能な限り原子的に平滑な表面を製造する必要がある。これに関して、湿式化学の微粒子状のITOに基づいた、極めて平滑な表面を有する電極が実現されている。この電極の層平滑性は、特に優れていることが実証されている。このため、使用するITO層は、従来技術に属するものである。
【0017】
従来技術に従って、ITOベースコンタクトの後処理を行うことが可能である。有機発光素子による光の生成を効果的に行うには、これら2つの電極に隣接する電荷キャリア輸送層内に、正の電荷キャリアおよび負の電荷キャリアを良好に注入することが特に不可欠である。従って、この電荷キャリア、つまり正孔および電子を注入するためのエネルギー障壁は、可能な限り小さくなければならない。ドープされた電荷キャリア輸送層を有していない通常の有機発光ダイオードでは、ITOベース電極を適切に処理して、例えばベース電極から隣接する電荷キャリア輸送層の中への正孔注入を大幅に改善する必要がある。この処理は、例えば酸素プラズマまたはUVオゾンプラズマによって行われる。解決のためのさらなる提案では、重合すると共にフッ素化した炭素化合物から成る中間層、または、他の有機正孔注入層が用いられている。酸化モリブデンまたは金等から成る薄い電荷キャリア注入層も用いられている。
【0018】
電荷キャリア輸送層を電気的にドープすることによって、電極から発光素子の有機領域内への電荷キャリア注入の大幅な改善が実現される。その後、隣接する表面では、特に電圧損失は生じない。従って、通常なら正孔注入を改善するために行う追加的なITO処理を省くことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、特にパターニングしたベース電極について、材料を節減しながら且つ低コストで製造することを助長する、高効率且つ寿命の長い有機発光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題を、本発明に従って、独立請求項1に記載の有機発光素子、独立請求項15に記載の製造方法、および、独立請求項25に記載の対象によって解決する。本発明の有効な実施形態は、従属請求項に明記している。
【0021】
所定の屈折率と、高い透明度と、散乱効果を利用することとによって、有機発光素子の効率の良い光の出射を確保する。接着剤を使わずにベース電極を形成することによって、ベース電極層内部の空隙率を向上させる。この材料の空隙は、散乱効果を生じさせるが、その一方で、ベース電極内の導波モードを回避するために有効な媒質の屈折率をn<1.8まで低減させる。このため、可視域内に生成された光は、上記素子からより良好に出射される。さらに、接着剤を使わずに形成した多孔性のベース電極は、透明度が高い。このようにして、有機発光素子の発光効率を上げることが可能である。通常よりも短波長にシフトする際に現れ、視野角にわずかに左右される発光波長は、生成されたこの空隙によって阻止される。
【0022】
このような素子では、層厚が、生成された光の波長と同じオーダにあり、さらに、隣接し合う層の表面が著しい屈折率差を有するならば、導波モードが作用する。これは例えば、有機領域(典型的な屈折率はn=1.7)と一般的なITOベース電極(n=2.2)との間の境界、または、該ITOベース電極(n=2.2)とガラス基板(n=1.5)との間の境界などの場合である。このような構成では、ITOベース電極への境界面への全反射によって、ベース電極において、ガラス基板から直接順方向に出射されずに、吸収されるか、または、ベース電極のエッジにおいて現れる一部のファイバモードが導かれ得る。この作用を、例えば、層厚約20nm程に層厚を低減させたITOベース電極を設けることによって回避することが可能である。しかしこのようなITOベース電極の電気伝導率は、低すぎる。屈折率がn<1.8であるベース電極が形成されているため、ベース電極層内部の導波モードは回避される。
【0023】
さらなる特徴と組み合わせて、導電性が良好なベース電極をシート抵抗が500Ω/□未満である透明な導電性酸化物から形成することによって、さらに、リード抵抗を確実に低減させる。加えて、上記素子内に電気損を引き起こす高い漏れ電流が回避されるならば、高効率且つ寿命の長い発光素子を製造することが可能になる。このため、上記構成に約−3Vの電圧が印加された場合、この構成の電流電圧特性では、逆電流は約10−2mA/cm未満である必要がある。
【0024】
寿命の長いOLEDという用語は、本願の意味では、典型的なアプリケーション範囲での特定の輝度(約500cd/m)の場合に、耐用年数が1000時間を越える有機発光ダイオードのことを指している。この耐用年数は、劣化過程によって輝度が初期値の50%に低下するまでの時間として定義されるものである。
【0025】
上記ベース電極を分散剤から析出させることを提供する。この分散剤という概念は、本願の意味では、互いに溶け合わない、若しくはほとんど溶け合わない、または、互いに化学的に結合しない、少なくとも2つの成分の混合物を指す。ここでは、1つの成分は、別の成分、つまりいわゆる分散媒中に、可能な限り細かく分布されている。個々の分散相は、他の相と明確に区別されており、一般的には、物理的方法によって再び分離されることが可能である。この分散剤は、関連する成分の凝集状態の種類、および、分散された成分の粒径によって区別されている。固体の粒子が液体内に分散されているならば、懸濁液と呼ばれる。成分を分散媒中により良好に分布させる、いわゆる解膠剤を添加して、例えば、分散させる粒子の湿潤性または該粒子の静電反発力を高めることができる。
【0026】
ベース電極層を、接着剤を使わずに仕上げる。この接着剤という概念は、本願の意味では、同じ成分または異なる成分を互いに接合させる製品の集合概念である。用途に応じて、無機接着剤、有機接着剤、天然接着剤、または、合成接着剤が用いられる。この接着は、物理的に乾燥させること、硬化させること、若しくは粘度を大幅に増加させること、化学反応、または、水和反応によって行われる。
【0027】
光学素子は、本願の意味では、例えば、電極および電荷キャリア輸送層の電気抵抗が低いといった、構成内の抵抗損が最小である場合、および、発光または光の出射にとって最も有効な光学条件が満たされている場合に、特に高効率であると評価される。
【0028】
本発明の有効な実施形態では、ベース電極材料を導電性材料のナノ粒子から形成することを提供する。ナノ粒子とは、1nm〜999nmの直径を有する粒子のことである。粒径分布は、動的光散乱器、例えばHoriba社のLB550型装置によって測定可能である。ナノ粒子は、少なくともこれらが成長させる層厚よりも小さい平均粒径を有するまで分散されていることが好ましい。分散剤の内部の粒径分布に関しては制限がない。これは、特に特定の粒径のモード混合比を優先的に生成する必要がないことを意味しており、このため、用いるナノ粒子の製造方法、または、該ナノ粒子から成る分散剤は、簡素化される。
【0029】
本発明の有効な一実施形態では、ベース電極材料は、三元系材料(例えば、In:Sn(ITO)、SnO:Sb(ATO)、SnO:F、ZnO:Al、ZnO:In、Zn−Sn−O、Mg−In−O、Ga−In−O、Zn−In−O)、四元系材料(例えば、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Zn−In−Li−O)、上記三元系材料の化学修飾されたバリエーション、上記四元系材料の化学修飾されたバリエーション、上記三元系材料の物理的に変更されたバリエーション、上記四元系材料の物理的に変更されたバリエーション、および、これらを組み合わせたものから成る材料区分の群から選択された、少なくとも1つの材料区分から成る材料であることが可能である。
【0030】
本発明の好ましい発展形態では、ベース電極層は、約0.05μmと約20μmとの間の層厚、好ましくは約0.1μmと約2μmとの間の層厚を有していることが可能である。特にITOから成る印刷されたベース電極を用いると、ITO層の層厚が上昇しても、有機層領域の層厚が、上記素子の効率を左右するということがほぼなくなるという利点がもたらされる。これによって、有機質の電荷キャリア輸送層の層厚には、広域のプロセスウィンドが可能になる。同様に、質の高い特性データを実現する一般化されたパターンを、容易に、いわゆる「統一されたRGBスタック」に用いることが可能になる。この統一されたRGBスタックでは、同一の層厚を有する均一な層構成が、3つの全色に用いられている。従って方法技術的にも、多色のRGBパターン用の、簡素な有機層パターニングおよびマスキングがもたらされる。
【0031】
本発明のさらなる一形態では、ベース電極層は、最小約2nmから最大でも約20nm、好ましくは最大でも10nmの範囲のRMS粗度を有していてよい。実験では、予測に反し、寿命の長い高効率の有機発光素子が製造できたことが示された。従来技術ではこれまで、ベース電極は特に平滑でなければならない、つまり<1nmRMSで製造しなければならないと考えられていた。
【0032】
本発明の有効な一実施形態では、ベース電極層のシート抵抗は約100Ω/□未満であることが可能である。
【0033】
本発明の有効な一実施形態では、ベース電極層の光屈折率を約1.5未満にする。この素子の内部では、上述の説明に従って導かれるファイバモードを回避する必要があるため、屈折率がn<1.5であるベース電極を形成することが好ましい。これは、有機層領域において発光する入射光線が、ベース電極/ガラス基板(典型的にはn=1.5)の境界面にさらに全反射することはないからである。従って(ガラス)基板では、生じたとしてもせいぜい導波モードだけであって、しかしこれは、従来の出射法によって、例えば基板の粗い底部、出射箔等によって回避することが可能であり、その後この光は放射される。
【0034】
本発明の一発展形態では、ベース電極層は、有機層領域において生成される光を散乱させ、このため、約1%と約99%との間、好ましくは約20%と約60%との間の材料空隙率で形成されていることが好ましい。材料空隙率の程度および質は、ベース電極の形成時に好適なプロセスパラメータを選択することによって左右され得る。従って、選択されたコーティング方法が、導電性酸化物の粒子の実装密度、従って空隙率に影響を与えることになる。例えばスピンコーティング法では、充満度は、インクジェット法よりも約10%も高い。従って特に、所望の層厚を有していると共に、発光領域において生成される光に対して優れた透過性を有するベース電極を製造することが可能である。視野角にわずかに左右される、通常はより短い波長にシフトする発光波長において現れる発光波長は、この生成された空隙によっても回避される。
【0035】
本発明の有効な一実施形態では、ベース電極層は、可視光の波長帯において、少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%の透過率を有することが可能である。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態では、ベース電極と発光領域との間の有機層領域は、電荷キャリアを輸送する少なくとも1つの層を備えており、この層は、選択的に電気的にドープされていると共に少なくとも100nmの層厚を有している。この層によって、ベース電極層の表面粗度は、少なくとも部分的に補償される。
【0037】
本発明の有効な一実施形態では、次の種類の群から選択された少なくとも1つの種類の構造に係る構成が形成されている。透明な構造、カバー電極を介して発光する構造、ベース電極を介して発光する構造、ベース電極がアノードである非反転型構造の層構成を有する構造、および、ベース電極がカソードである反転型構造の層構成を有する構造から成る構造。
【0038】
本発明のさらなる一発展形態では、上記有機層領域は、任意により多数個形成され、電気的に非ドープの電荷キャリア輸送層、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層(例えば、p型ドープおよびn型ドープされた電荷キャリア輸送層)、ブロック層、電気的に非ドープの電荷キャリア注入層、および、電気的にドープされた電荷キャリア注入層から成る層の群から選択された、1つまたはそれ以上の層を含む。ドープされた層を使用することによって、有機質の領域中へのより良好な電荷キャリア注入を行うことができる。さらにこれによって、より厚い層厚を用いることが可能になり、ベース電極の表面粗度を可能な限り補償することが可能となる。ドープされた電荷キャリア輸送層の場合には、この極めて良好な電気伝導率が利用される。従って非ドープ材料の場合に起こり得る、導電性が悪い層上への著しい電圧降下が回避される。より大きな層厚を選択することによっても、OLEDの電気特性(IV特性曲線)は妨げられない。しかしながら、層厚の大きさを決定する際に、発光素子の層構成における光の干渉の効果が考慮されるなら、発光領域内に生成された光を所望の波長帯に増大させ(構造的干渉)、これによって効率を増大させるような層厚を選択することが可能である。
【0039】
本発明の有効な一実施形態では、上記構成は、ガラス、可撓性基材、金属性基材、および、プラスチックから成る基材の群から選択された、1つの基材上に形成されることが可能である。
【0040】
以下に、有機発光素子の製造方法の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
【0041】
本発明のさらなる一発展形態は、インクジェット法、オフセットオフセット印刷、写真版印刷、凹版、熱転写印刷、レーザー印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、および、タンポ印刷法といったパターンニング法から成る群から選択された1つのパターンニング法によって、パターニングしながらベース電極層をインプリントする。これによって、ベース電極材料を、所望のパターンで包囲された基板上の領域だけに正確に堆積させることが可能になる。従って、実際に必要な量のベース電極材料だけを基板上に堆積させることが可能である。ベース電極材料用の印刷方法を制御することによって、印刷されたパターンのレイアウトを、形状および層厚について正確に設定することが可能となる。このため、マスキングステップおよび/またはリソグラフィーステップを省くことができる。従って、個数を少なく製造したり、それぞれを個別に製造したりする特別な加工も、技術的な手間をさらにそれほどかけることなく、効率良く製造可能である。さらにこれによって、製造工程を、1つまたはそれ以上の有機発光素子、例えばベース電極がインプリントされた発光ダイオード用の、広面積の基板領域に容易にスケーリングすることが可能になる。特に、従来技術では一般的な真空システム内の加工を行う必要はなく、結果的に、基板を、ベース電極材料を載せるための任意のフォーマットおよび形状に加工することが可能である。
【0042】
本発明のさらなる一形態では、湿式化学堆積法の後、ベース電極層を、ベース電極材料の分散剤から後処理することが可能である。
【0043】
本発明の好ましいさらなる一形態では、上記後処理の間に、ベース電極層を、気体雰囲気の下で、約200℃と約1500℃との間、好ましくは約200℃と約800℃との間、より好ましくは約300℃と約650℃との間の温度で焼結させる。
【0044】
本発明の有効なさらなる一形態では、上記焼結工程中の気体雰囲気には、外気、少なくとも1つの保護ガス(アルゴン、CO2、窒素、希ガス)、および、他の非反応性ガス(過ハロゲン化された炭化水素)から成る気体の群から選択された、少なくとも1つの気体が含まれる。
【0045】
本発明の有効な一実施形態は、上記後処理の間に、ベース電極層を、任意により上記気体雰囲気と同様に構成したさらなる気体雰囲気下で、99.9:0.1〜0.1:99.9の比率において、約20℃と約500℃との間、好ましくは約150℃と約400℃との間の温度で成形することが可能である。
【0046】
本発明の一さらなる形態では、上記成形工程時のさらなる気体雰囲気には、水素、および、少なくとも1つの保護ガス(アルゴン、CO、窒素、希ガス)から成る気体の群から選択された、少なくとも1つの気体が含まれ得る。
【0047】
焼結工程または成形工程による後処理は、ナノ粒子との密接なコンタクトを形成し、従って、該ナノ粒子間の接触抵抗を低減させる。これは、本来の空隙率およびナノ粒子のパッケージを最大限に維持し、焼結状態の最初の状態だけで処理される好適なプロセス制御によって実現される。焼結工程および成形工程中の加熱時間および冷却時間を最適化することによって、層内の裂溝形成、および他の妨害を回避することが可能であった。また同時に導電性を最大化することが可能であった。
【0048】
好ましくは、本発明の一発展形態では、有機層領域を蒸着させた低分子層だけから構成して形成する。
【0049】
本発明の有効な一発展形態では、カバー電極材料をスパッタリングまたは熱蒸発させることによって、カバー電極を形成する。
【0050】
好ましくは、本発明の一発展形態では、有機発光素子をオープンリール式プロセスで製造する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造の層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図である。
【図2】印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造である層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図であり、ここでは、ベースコンタクトに隣接して、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層が設けられている。
【図3】印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造である層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図であり、ここでは、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層が設けられている。
【図4】ITO分散剤から成る、印刷されたベースコンタクトの透過率を、波長に応じて示すグラフである。
【図5】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、OLEDのダイオード特性曲線j(V)を示すグラフである。
【図6】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの輝度曲線L(V)を示すグラフである。
【図7】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、OLEDの電流効率を示すグラフである。
【図8】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【図9】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの発光スペクトルを、視野角に応じて示したグラフである。
【図10】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの放射された光の強度を視野角に応じて示したグラフである(極座標図)。
【図11】分散剤から印刷されたITOベース電極の屈折率nおよび吸収係数kを波長に応じて示したグラフである。
【図12】p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する赤色OLEDの、約2460cd/m、1720cd/m、および、1100cd/mのスタート輝度における耐用年数測定値を示すグラフであり、推定耐用年数の両対数の図は、500cd/mまで選択されている。
【0052】
本発明を、以下に、典型的な実施形態を用いて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図1は、印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造の層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図である。
【0054】
図2は、印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造である層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図であり、ここでは、ベースコンタクトに隣接して、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層が設けられている。
【0055】
図3は、印刷されたベース電極をアノードとして構成した、非反転型構造である層構成を有する有機発光素子を概略的に示す図であり、ここでは、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層が設けられている。
【0056】
図4は、ITO分散剤から成る、印刷されたベースコンタクトの透過率を、波長に応じて示すグラフである。
【0057】
図5は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、OLEDのダイオード特性曲線j(V)を示すグラフである。
【0058】
図6は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの輝度曲線L(V)を示すグラフである。
【0059】
図7は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、OLEDの電流効率を示すグラフである。
【0060】
図8は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【0061】
図9は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの発光スペクトルを、視野角に応じて示したグラフである。
【0062】
図10は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する、赤色OLEDの放射された光の強度を視野角に応じて示したグラフである(極座標図)。
【0063】
図11は、分散剤から印刷されたITOベース電極の屈折率nおよび吸収係数kを波長に応じて示したグラフである。
【0064】
図12は、p型ドープされた電荷キャリア輸送層およびn型ドープされた電荷キャリア輸送層と印刷されたITOベースコンタクトとを有する赤色OLEDの、約2460cd/m、1720cd/m、および、1100cd/mのスタート輝度における耐用年数測定値を示すグラフであり、推定耐用年数の両対数の図は、500cd/mまで選択されている。
【0065】
図1は、非反転型構造の層構成を有する有機発光ダイオード(OLED)として構成された有機発光素子を概略的に示す図である。
【0066】
基板1上にインジウムスズ酸化物(ITO)から成るベース電極2を堆積させる。ベース電極2の上には、有機層を有する積層3が続いている。最後には、カバー電極4が堆積されている。基板1は、基材として機能しており、図示した典型的な実施形態ではガラスである。ITOから成るベース電極2は、正孔を注入する電極(アノード)として形成されている。このベース電極は、接着剤を使用しないで透明に構成されており、約0.05μmと20μmとの間、好ましくは約0.1μmと2μmとの間の層厚を有している。層の屈折率は1.8未満である。表面粗度は2nmと約20nmRMSとの間、好ましくは約10nmRMS未満である。ベース電極材料ITOは、分散剤から、印刷法によってインプリントされている。
【0067】
有機発光ダイオード用のITOベースコンタクトを、分散剤から、基板上にインプリントする。実験では、ITO、湿潤剤、および保湿剤の比率を体系的に変動させて、これによって分散を、それぞれのコーティング法に合わせて最適化した。印刷動作に重要な点は、粘性およびレオロジー、ゼータ電位、並びに、表面張力である。
【0068】
最初に、例えばパターニングを行うコーティング法において、導電性酸化物、例えばITOから成るナノ粒子の、含水性または溶剤型分散剤を塗布する。パターニングを行うコーティング法の例は、特に、オフセット印刷、凹版印刷/写真版印刷、熱転写印刷、レーザー印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、タンポ印刷法、およびインクジェット法である。
【0069】
その後、用いるTCOに応じて、つまり光透過性の層を形成可能な導電性酸化物材料に応じて、焼結プロセスを行う。この焼結プロセスは、例えばITOの場合、雰囲気下で、または、例えば窒素若しくはアルゴンといった保護ガスの下において、400℃から600℃で30分〜5時間行うことが可能である。その後、任意に、表面酸素含有量を低減させる工程(成形工程)を行う。このプロセスは、純粋な水素、または、水素と保護ガス(例えば窒素またはアルゴン、水素含有量99.9%〜0.1%)との混合物の下で、1000l/h未満の静気体流において10分から4時間行う。
【0070】
このようにして、例えば均一な層厚、高導電性、および、高透過率を有するITO層を得る。このようにして形成したITOコンタクトはさらに、X線蛍光分析(RFA)によって測定すると20%〜60%の空隙率を有している。一方、上述の、焼結工程および成形工程による後処理は、ナノ粒子の密接なコンタクトを生成し、このためナノ粒子間の接触抵抗を低減させる。測定された表面抵抗は、数オーダ分低減されているが、本来のナノ粒子のパッケージは残り、その微粒子特性は大部分が保持されている。これは、本来の空隙率およびナノ粒子のパッケージの大部分を保持すると共に、焼結状態の最初の範囲だけで処理される好適なプロセス制御によって行われる。焼結および成形工程中の加熱時間および冷却時間を最適化することによって、層内の裂溝形成および他の妨害を回避することができた。また同時に導電性を最大化することができた。
【0071】
保護ガスには、二酸化炭素、窒素、希ガス族、および、例えば過ハロゲン化された炭化水素といった非反応性ガスが特に適している。
【0072】
上記方法において用いる組成物を製造するには、TCOとして、例えば、三元系材料(In:Sn(ITO)、SnO:Sb(ATO)、SnO:F、ZnO:Al、ZnO:In、Zn−Sn−O、Mg−In−O、Ga−In−O、Zn−In−O)、または、四元系材料(Zn−In−Sn−O(ZITO)、Zn−In−Li−O)、または、これらナノ粒子の化学的および/または物理的に修飾および/または変更されたバリエーション、または、これらナノ粒子および/またはこれらシステムを組み合わせたものから選択された、好ましくは導電性のナノ粒子を用いる。
【0073】
上記方法では、組成物用の分散媒として、少なくとも1つの有機液体、プロトン性液体、非プロトン性液体、極性液体、若しくは無極性液体、または、無機液体を用いることが可能である。好ましくは、酸、グリコール、グリコールエーテル、C1〜C8の炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族または脂肪族のハロゲン化された炭化水素、S、P、若しくはSi−ヘテロ置換された炭化水素、または、超臨界溶媒、または、シリコーン、または、モノマー、オリゴマー、または、ポリマーから選択された有機化合物、色素、導電性有機化合物、無毒性無機化合物、有機金属化合物、過酸化ベンゾイルと、アゾ−ビス−イソブチロニトリルと、これらの有機化合物の混合物とから選択された反応性の中間段階を形成する有機化合物、または、これらの化合物の混合物を、本発明に係る方法において分散媒として用いてもよく、この分散媒は、いずれも、超臨界圧の範囲、および、超臨界温度の範囲で用いることが可能である。特に好ましくは、C1〜C12のアルコール、エステル、またはエーテルを、本発明に係る方法において分散媒として用いることが可能である。
【0074】
有機層の積層3は、説明する実施形態において次の層を含んでいる。
−CuPc(銅フタロシアニン)またはスターバースト誘導体から成る、約5nmと約1000nmとの間、好ましくは約5nmと200nmと間の層厚を有する正孔注入層。
−TPD(トリフェニルジアミン)から成る、約5nmと約1000nmとの間の層厚を有する正孔輸送層。
−発光層からの励起子拡散を回避すると共に発光層からの電荷キャリア漏れを回避するための、アルファ−NPB(ビス−ナフチル−フェニルアミノ−ビフェニル)から成る、約2nmと約50nmとの間、好ましくは約5nmと約30nmとの間の厚さを有する正孔側ブロック層。
−イリジウム−トリス−フェニルピリジン、Ir(ppy)、または、Alq(トリス−キノリナト−アルミニウム)といった燐光性の三重項発光体の形をした発光材料が添加された、約5nmと約100nmとの間、好ましくは約10nmと約30nmとの間の厚さを有する、CBP(カルバゾール誘導体)から成る発光層。
−BCP(バトクプロイン)から成る、約2nmと約50nmとの間、好ましくは約5nmと約30nmとの間の厚さを有する電子側ブロック層。
−Alq(トリス−キノリナト−アルミニウム)から成る約10nmと約500nmとの間、好ましくは約20nmと約200nmとの間の厚さを有する電子輸送層。
−無機塩化リチウム(LiF)から成る、0.5nmと5nmとの間の厚さを有する電子注入層。
【0075】
電子注入カバー電極4は、仕事関数が低い、例えばアルミニウムのような金属から構成されている。しかしながら、上記カバー電極は、導電性酸化物(TCO、例えばITO)、金属(Ba、Ca、Au、Ag、Cr、Mo、Ta、Ti、Ni、Pt、Zn、Zu、これら金属の合金/組み合わせ)、金属酸化物(Ni、Ti、PdOd、Pt、Al、Zn、Ta、MgO、Ca、V、Cu)、金属窒化物(Ti、Ni、Pd、Pt、Ga)から構成され、少なくとも約10nmの厚さを有していてもよい。
【0076】
図2は、ベース電極がアノードである、非反転型構造の層構成を有する有機発光ダイオード(OLED)として構成された有機発光素子を概略的に示す図である。
【0077】
図1の実施形態に従って、基板1、ベース電極2、および、カバー電極4を形成する。さらに、図2の有機発光素子は、約5nmと約1000nmとの間、好ましくは約40nmと約200nmとの間の層厚を有する、p型ドープされた、正孔を注入および輸送する層5を含む。電気ドーピングのために、受容体材料F4−TCNQをドープ剤として、マトリクス材料m−MTDATA内に導入する。このような電荷キャリア輸送層を電気ドーピングして、上記輸送層によって輸送される電荷キャリアの電気伝導率を改善することは、そのようなものとして公知である。
【0078】
図2の実施形態では、有機層の積層3は、次の構造を有している。
−アルファ−NPBから成る、約2nmと約50nmとの間、好ましくは約5nmと約30nmとの間の厚さを有する正孔側ブロック層。
−Ir(ppy)の形の発光材料が添加されたTCTAから成る、約5nmと約100nmとの間、好ましくは約10nmと約30nmとの間の層厚を有する発光層。
−BCPから成る、約2nmと約50nmとの間、好ましくは約5nmと約30nmとの間の厚さを有する電子側ブロック層、
−Alqから成る、約10nmと約500nmとの間、好ましくは約20nmと約200nmとの間の厚さを有する電子輸送層、
−無機塩化リチウム(LiF)から成る、0.5nmと5nmとの間の層厚を有する電子注入層。
【0079】
図3は、ベース電極がアノードである、非反転型構造の層構成を有する有機発光ダイオード(OLED)として構成された有機発光素子を概略的に示す図である。p型ドープされた電荷キャリア輸送層、および、n型ドープされた電荷キャリア輸送層が設けられており、これらは、電気伝導率を改善するためにドーピングを有している。
【0080】
図2の実施形態に拠れば、基板1、ITOから成るベース電極、有機層の積層3、カバー電極4、および、p型ドープされた正孔注入および輸送層5が形成されている。
【0081】
また、図3の実施形態に拠れば、約10nmと約500nmとの間、好ましくは約20nmと約200nmとの間の厚さを有する、n型ドープされた電子注入および輸送層6が形成されている。マトリクス材料BPhen(バソフェナントロリン)内には、電気伝導率を改善するために、セシウムが電気ドーピング材料として埋め込まれている。このような、電気伝導率を改善するための電荷キャリア輸送層のドーピングは、そのようなものとして、様々な実施形態において公知である。
【0082】
図1〜3に示した実施形態と異なり、上記有機発光素子を、ベース電極がカソードで、カバー電極がアノードとして構成された反転型構造の層構成を有する有機発光ダイオード(OLED)として形成してもよい。この場合は、電子輸送層が、印刷されたITOベース電極上に接している。当該実施形態でも、上記素子の性能パラメータを改善するために、ドープされた電荷キャリア輸送層を設けてもよい。
【0083】
ベース電極2およびカバー電極4を透明な電極として構成するならば、これによって、透明な有機発光素子が形成される。このような透明な素子は、典型的には、薄い金属層、例えば、銀、金、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等、または、これらを組み合わせたものを用いることによって形成可能である。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物)といった透明な導電性酸化物を、単一層、または多層として用いてもよい。さらに、有機発光素子からの光の出射をより良好にするために、反射防止コーティングを設けてもよい。
【0084】
以下に、有機層の積層3に関連する好ましい形態について詳細に説明する。
【0085】
有機層の積層3内の有機材料の特性を、エネルギーレベルによって、特に最低非占有分子軌道(LUMO)、および最高占有分子軌道(HOMO)を参照することによって詳細に説明する。正孔輸送層は、通常、真空準位では、4.5〜5.5eVの範囲のHOMO、および、1.5〜3eVの範囲のLUMOを有している。発光領域用の有機材料は、通常、5〜6.5eVの範囲のHOMO、および、2〜3eVの範囲のLUMOを有している。電子輸送層用の有機材料は、通常、5.5〜6.8eVの範囲のHOMO、および、2.3〜3.3eVの範囲のLUMOを有している。電極材料に関連する仕事関数は、アノードの場合には4〜5eVの範囲にあり、カソードの場合には3〜4.5eVの範囲にある。
【0086】
以下に、n型ドーピングまたはp型ドーピングに利用可能な材料について詳細に説明する。
【0087】
供与体材料(n型ドープ剤)は、3.3eV未満、好ましくは2.8eV未満、より好ましくは2.6eV未満のHOMOレベルを有する、分子または中性ラジカルである。この供与体のHOMOレベルは、酸化電位のサイクロボルタンメトリー測定によって測定可能である。この供与体は、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元対)に対して、約−1.5V以下、好ましくは約−2.0V以下、より好ましくは約−2−2V以下の酸化電位を有している必要がある。供与体のモル質量は、100g/molと2000g/molとの間、好ましくは200g/molと1000g/molとの間である。モルドーピング濃度は、1:1000(受容体分子:マトリクス分子)と1:2との間、好ましくは1:100と1:5との間、より好ましくは1:100と1:10との間である。
【0088】
受容体分子(p型ドープ剤)は、4.5eVよりも大きく、好ましくは4.8eVよりも大きく、より好ましくは5.04eVよりも大きいLUMOレベルを有する、分子または中性ラジカルである。この受容体のLUMOレベルは、還元電位のサイクロボルタンメトリー測定によって測定可能である。この受容体は、Fc/Fc+に対して、約−0.3V以上、好ましくは約0.0V以上、より好ましくは約0.24V以上の還元電位を有している。上記受容体のモル質量は、100g/molと2000g/molとの間、好ましくは200g/molと1000g/molとの間にある。モルドーピング濃度は、1:1000(受容体分子:マトリクス分子)と1:2との間、好ましくは1:100と1:5との間、より好ましくは1:100と1:10との間である。
【0089】
有機層の積層の層を、真空蒸着法、例えばVTE法(「真空熱蒸着」)、またはOVPD法(「有機気相成長法」)によって成長させる。さらに、真空スプレー法を利用してもよい。さらなる他の成長法の種類には、材料を基材から実際の基板の上に熱的または光学的に誘導させて移転させること、例えばLITI(「レーザー誘起サーマルイメージング」)が含まれる。
【0090】
有機層の積層3内のドープされた層を、真空において、混合蒸着法によって、2つの独立して調節される蒸発源、すなわちマトリクス材料用の蒸発源とドーピング材料用の蒸発源とから形成する。あるいは、これらのドープされた層を、相互拡散法によって、ドープ剤層からマトリクス材料層内に形成してもよい。ここでは、これら2つの材料を、真空で順番に蒸着させる。この相互拡散法は、熱によって制御することが可能である。
【0091】
以下に、有機発光素子の、ITOから成るベース電極を形成するためのさらなる実施形態について詳細に説明する。ITOから成る分散剤は、インクジェット法によってベース電極を形成するために用いられると共に、様々な方法で製造可能である。以下に、ITO分散剤を製造するための3つの実施形態について説明する。
【0092】
上記ITO分散剤を、一実施形態に従って、VMA-Getzmann GmbH社の「Dispermat CA」装置を用いて製造する。分散剤容器は、1リットルの容積を有している。イットリウムを基にした直径0.65mmのYTZボールを、研磨ボールとして用いる。分散時間は、約2時間である。必要ならば温度調節を行ってもよい。
【0093】
遊離体としては、以下の材料の組み合わせが好ましい。
【0094】
a)
300gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
10gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酸酸
290gのエタノール:イソプロポキシエタノール(3:1の比率)
b)
200gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
25.3gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酸酸
50gの1.2プロパンジオール
c)
250gの AdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
10gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酸酸
216gのエタノール
104gの1.2プロパンジオール
d)
250gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
10gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酸酸
216gのエタノール:Methyエチルケトン(1:1の比率)
e)
125gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
375gの水
18.75gのAir-ProductsによるCT231
f)
200gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
100gのDegalan P 26 Rohm(「o」はウムラウト付)
700gのメチルエチルケトン
g)
200gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
100gのDegalan P 26 Rohm(「o」はウムラウト付)
700gの酢酸エチル
h)
120gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
5gのWalocel MT 10000GO
875gの水
i)
30gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
2.5gのWalocel MT 10000GO
67.5gのイソプロポキシエタノール
j)
250gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
20gのDisperbyk 163
210gの酢酸エチル
k)
250gのAdNano(登録商標)ITO(製造社Degussa GmbH)
10gのDisperbyk 180
216gの プロパンジオール
最初にITO混合物を、4000rpmのUltaturaxで10分間、事前分散させる。
【0095】
ITO分散剤を充填する前に、最高動作範囲および最低動作範囲(最小高さよりも約2cm上)を設定する必要がある。研磨バスケットを、YTZボール(40ml)で充填する。液浸ミルの開口部は良好に覆われている必要がある。そうでなければ、最適な分散速度が確保されない。ここで回転速度を、2200rpmに設定する。
【0096】
全分散工程の間に、上記混合物を8〜11℃に冷却する。2時間後、1つのサンプルを取り出して、Horiba社のLB550型装置で粒径分布を測定する。D50値が約100nmになったところで、分散工程を終了する。次に上記混合物を、4000rpmで10分間、遠心分離機によって分離する。その後、ITO分散剤のろ過を、0.5μmのパルフィルタで行い、粒径分布を再びHoriba社の上記装置で測定する。上記ろ過の前後は、次の測定値が得られた。
ろ過の前
D50:100.9nm
D10:69.4nm
D90:135.9nm
ろ過の後
D50:86.9nm
D10:59.8nm
D90:116.3nm
粘性は約5〜10mPaである。この分散剤は均質な紺色をしている。
【0097】
他の一実施形態に従って、上記ITO分散剤を、超音波を利用して、例えばultrasonicfinger(TYPE Dr. Hilscher UP 200S, microtip S7 音響出力密度 300 W/cm2)を用いて製造する。遊離体には、上述の材料組み合わせを用いることが好ましい。分散剤の製造を、超音波分散によって行う。最終的に、光学顕微鏡において得られる粒径は(約0.1〜0.2μm)である。この超音波処理にかかる時間は、20分である。
【0098】
さらなる一実施形態に従って、上記ITO分散剤を、フローセルを用いて製造する。この場合、例えば、Dr. Hilscher社の装置UIP 100をsonotrode BS 34と共に用いる(正面直径34mm、音響出力密度95W/cm)。ここでも、上述の材料組み合わせを、遊離体として用いることが好ましい。
【0099】
上記混合物を、上述の比率で、1lの容積を有するビーカーにおいて混合し、その後、ホースポンプでフローセルを介して送り出す。全ポンプ時間は、100%の振幅で75分であり、最初の15分では、分散剤は円を描いてポンプで送り出される。その後上記混合物を、1時間に亘って、1つのビーカーから別のビーカー内にポンプで送り込み、全粒子に確実に少なくとも1回の超音波処理を行う。この超音波処理の後、Horiba社のLB550型装置を用いて、粒径分布を測定する。この値の45分後の典型的な値はD50=115nmであり、75分後の典型的な値はD50=76nmである。
【0100】
製造したITOの分散剤を、その後、きれいにしたガラス基板上に、プリンターでパターンニングしながらインプリントする。ここでは、例えばPixdro社のプリンター、PixDro LabP 150を用いることが可能である。用いるプリントヘッドは、次のパラメータを有している。解像度-cross scan 838.45 dpi / in scan 846.67 dpi、線質係数3、刻み幅(Schrittweite)32、マスクファイルQF31x1、張力60、GAP1.00、T Chuk 26.8、空気湿度 27%、および、印刷方向−第1の方向。
【0101】
この印刷工程の後、該工程によって形成した層を、100℃で1時間乾燥させる。次にこれらの層を、Nabertherm社のマッフル炉(C40)において、550℃で1時間焼結させ、その後、窒素混合物/水素混合物(95:5)において、200l/hの気体流で300℃で2時間成形する。上記焼結工程後のシート抵抗は、
Field1:610Ω/□、Field2:602Ω/□、Field3:592Ω/□であり、
上記成形工程後のシート抵抗は、
Field1:58Ω/□、Field2:61Ω/□、Field3:63Ω/□である。
【0102】
このようにして形成した、0.6〜2μmの層厚を有するITOのベース電極は、典型的には、4〜6nmRMSの粗度を有している。約30〜50%の空隙率の場合、透過率は、可視光(図4参照)の波長帯では90%よりも高い。偏光測定法によって、屈折率n=1.38が測定された(図11参照)。
【0103】
ITOベース電極を、分散剤から、きれいにしたガラス基板上にインクジェット法によってインプリントして、焼結させ、その後成形した。
【0104】
さらなる処理ステップは行わずに、ダイオードの形をした赤色に発光する有機発光素子を、ドープされた電荷キャリア輸送層と共に、真空蒸着プロセスにおいてベース電極上に成長させた。この場合、上記ITOベース電極上には、280nmの厚さの正孔輸送層を直接成長させた。この正孔輸送層は、分子から成るp型ドープ剤F4−TCNQ(テトラフルオロテトラシアノ−キノジメタン)が1.5重量%ドーピングされたスピロ−TTBから構成されている。その上には、上記において一般的に記載した、正孔側中間層NPD(10nm)と、発光体((トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、例えばAmerican DyeSource社から入手可能)(20重量%)が添加されたNPDから成る発光層(20nm)と、電子側中間層BPhen(10nm)とによる構成を成長させた。50nmの厚さの電子輸送層はBphenから成り、該電子輸送層中には、セシウム原子が、3:1の比率でドープされている。反射するカバー電極には、150nmに蒸着させたアルミニウムから成る層が用いられる。
【0105】
この構成要素を、小型のカバーガラスおよびUV−硬化接着剤で包み、電気光学的に特徴付けた。発光面積は6.7mmである。
【0106】
このように形成した素子の電流電圧曲線は、明らかなダイオード反応を示しており、5Vでは逆比が70000、−3Vでは10−3mA/cm未満のわずかな逆電流となっている(図5)。これによって、電極間にはショートが発生していないことが証明される。色度座標が0.68/0.32である赤色光(図8)は、5.5cd/Aの電流効率(図7)で放射される。既に3.75Vの電圧で、1000cd/mの輝度に達する(図6)。この色度座標は、他の視野角でも変化しない(図9)。強度を変更することは、コサイン依存を有する典型的なランベルト式の発光体を変更することである(図10)。この有機発光素子の耐用年数は、500cd/mで2000hである(図12)。
【0107】
本発明をその様々な実施形態において実現するには、本明細書、特許請求の範囲、および、図面において開示した本発明の特徴を単独で用いても、組み合わせて用いても有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース電極、カバー電極、および、有機層領域を有する構成が形成されており、
上記有機層領域は、上記ベース電極と上記カバー電極との間に配置され、上記ベース電極と上記カバー電極とに電気接触しており、上記有機層領域は、少なくとも1つの正孔輸送層と、少なくとも1つの電子輸送層と、少なくとも1つの発光領域とを備えており、
上記ベース電極は、分散剤から、湿式化学堆積法によって、ベース電極材料、すなわち光透過性の導電性酸化物から成ると共に、パターニングされ、接着剤を含まない、光透過性のベース電極層として、形成されており、
上記ベース電極層は、約500Ω/□未満のシート抵抗を有し、
上記ベース電極層は、1.8未満の光屈折率を有し、
上記構成に約−3Vの電圧が印加された場合の上記構成の電流電圧特性では、逆電流は、約10−2mA/cm未満である、有機発光素子、特に有機発光ダイオード。
【請求項2】
上記ベース電極材料は、導電性材料のナノ粒子によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
上記ベース電極材料は、三元系材料(例えば、In:Sn(ITO)、SnO:Sb(ATO)、SnO:F、ZnO:Al、ZnO:In、Zn−Sn−O、Mg−In−O、Ga−In−O、Zn−In−O)、四元系材料(例えば、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Zn−In−Li−O)、上記三元系材料の化学修飾されたバリエーション、上記四元系材料の化学修飾されたバリエーション、上記三元系材料の物理的に変更されたバリエーション、上記四元系材料の物理的に変更されたバリエーション、および、これらの組み合わせから成る材料区分の群から選択された、少なくとも1つの材料区分からなる材料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
上記ベース電極層は、約0.05μmと約20μmとの間、好ましくは約0.1μmと約2μmとの間の層厚を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項5】
上記ベース電極層は、最小約2nm〜最大約20nm、好ましくは最大約10nmの範囲のRMS粗度を有していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項6】
上記ベース電極層のシート抵抗は、約100Ω/□未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
上記ベース電極層の光屈折率は、約1.5未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
上記ベース電極層は、光を散乱させると共に、約1%と約99%との間、好ましくは約20%と約60%との間の材料空隙率で形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
上記ベース電極層は、可視光の波長帯において、少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%の透過率を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
上記ベース電極と上記発光領域との間の有機層領域は、少なくとも約100nmの層厚を有する少なくとも1つの電荷キャリア輸送層を含み、上記電荷キャリア輸送層によって、上記ベース電極層の表面粗度は、少なくとも部分的に補償されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
上記少なくとも1つの電荷キャリア輸送層は、電気的にドープされていることを特徴とする、請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
上記構成は、透明な構造、カバー電極を介して発光する構造、ベース電極を介して発光する構造、ベース電極がアノードである非反転型構造の層構成を有する構造、および、ベース電極がカソードである反転型構造の層構成を有する構造から成る構造の種類の群から選択された、少なくとも1つの構造の種類に従って形成されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
上記有機層領域は、任意により多数個形成されると共に、電気的に非ドープの電荷キャリア輸送層、電気的にドープされた電荷キャリア輸送層(例えば、p型ドープおよびn型ドープされた電荷キャリア輸送層)、ブロック層、電気的に非ドープの電荷キャリア注入層、および、電気的にドープされた電荷キャリア注入層から成る層の群から選択された、1つまたはそれ以上の層を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
上記構成は、ガラス、可撓性基材、金属性基材、プラスチックから成る基材の群から選択された、1つの基材上に形成されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
ベース電極、カバー電極、および、有機層領域を有する構成が形成されており、
上記有機層領域は、上記ベース電極と上記カバー電極との間に配置され、上記ベース電極と上記カバー電極とに電気接触しており、上記有機層領域は、少なくとも1つの正孔輸送層と、少なくとも1つの電子輸送層と、少なくとも1つの発光領域とを備えている、有機発光素子、特に有機発光ダイオードの製造方法において、
上記ベース電極を、ベース電極材料の分散剤から、湿式化学堆積法によって、ベース電極材料、すなわち光透過性の導電性酸化物から成る、パターニングされた、接着剤を含まないベース電極層として形成し、
上記ベース電極層および上記構成は、(i)上記ベース電極層のシート抵抗が約500Ω/□未満であること、(ii)上記ベース電極層の光屈折率が1.8未満であること、(iii)上記構成に約−3Vの電圧が印加された場合の上記構成の電流電圧特性では、逆電流が約10−2mA/cm未満であるという特徴に従って構成されている、有機発光素子、特に有機発光ダイオードの製造方法。
【請求項16】
上記ベース電極層を、インクジェット法、オフセット印刷、写真版印刷、凹版、熱転写印刷、レーザー印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、および、タンポ印刷法から成るパターニング法の群から選択された、1つのパターニング法によってパターニングしながらインプリントすることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ベース電極材料の分散剤からの上記湿式化学堆積法を行った後、上記ベース電極層を、後処理することを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
上記後処理では、上記ベース電極層を、気体雰囲気下で、約200°Cと約1500°Cとの間、好ましくは約200°Cと約800°Cとの間、より好ましくは約300°Cと約650°Cとの間の温度範囲において焼結させることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記焼結工程時の気体雰囲気には、外気、少なくとも1つの保護ガス(例えば、アルゴン、CO、窒素、希ガス)、および、他の非反応性ガス(例えば、過ハロゲン化された炭化水素)から成る気体の群から選択された、少なくとも1つの気体が含まれることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記後処理では、上記ベース電極層を、任意により上記気体雰囲気と同様に構成したさらなる気体雰囲気下で、99.9:0.1〜0.1:99.9の比率において、約20°Cと約500°Cとの間、好ましくは約150°Cと約400°Cとの間の温度範囲において成形することを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記成形工程の間のさらなる気体雰囲気には、水素、および、少なくとも1つの保護ガス(例えば、アルゴン、CO、窒素、希ガス)から成る気体の群から選択される少なくとも1つの気体が含まれることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記有機層領域を、蒸着させた低分子層だけから構成して形成することを特徴とする、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記カバー電極を、カバー電極材料をスパッタリングするか、または、熱蒸着させることによって形成することを特徴とする、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
上記有機発光素子を、オープンリール式プロセスで製造することを特徴とする、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
照明装置と、ディスプレイまたは接触過敏性表面といった画像表示装置と、ラベルまたはアイコンといった識別装置とから成る構造の種類の群から選択された1つの構造の種類における、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの有機電子素子によって特徴付けられる対象。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−511970(P2010−511970A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527043(P2009−527043)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007673
【国際公開番号】WO2008/028611
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【出願人】(509062963)エヴォニック デグッサー ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1,45764,Marl,Germany
【Fターム(参考)】