説明

有機発光装置及びその製造方法

【課題】有機発光素子への水分、酸素の進入を防止すると共に、TFT及び信号配線による凹凸、有機保護層端部に付着した異物、下地の傷等に起因する欠陥を無くし、生産コストの低減が可能な有機発光装置を提供する。
【解決手段】基板1上に、画素エリア20が設けられている第一有機平坦化層5とは離隔して第二有機平坦化層15が設けられ、少なくとも第一有機平坦化層5と第二有機平坦化層15との間の領域8及び第二有機平坦化層15上に、少なくとも第一無機保護層12と、有機保護層13と、第二無機保護層14と、を有する保護部材が設けられており、第二有機平坦化層15の上部において、第一無機保護層12と第二無機保護層14とが接していることを特徴とする、有機発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型デバイスである有機発光素子を有する有機発光装置が、現在注目されている。ここで有機発光装置の構成部材である有機発光素子は、大気中の水分や酸素により特性劣化を招き易い。例えば、大気中に含まれるわずかな水分により、有機化合物層と電極層との剥離が生じダークスポットの発生の原因となる。このため、有機発光素子をエッチングガラスカバーで覆い、シール剤により周辺を貼り付けると共に、内部に吸湿剤を装着して、シール面から浸入する水分を吸収することで、有機発光素子の寿命を確保している。
【0003】
しかし、薄型の有機発光装置による省スペースのフラットパネルディスプレイを実現するためには、最終的には、画素エリア周辺に設けられる吸湿剤のスペースを無くす必要がある。そしてこれを実現するための方法、即ち、大量の吸湿剤を必要としない有機発光装置の封止方法が要求される。従って、有機化合物層への水分や酸素の浸入を防止する機能を有する保護部材による固体封止が要求されている。
【0004】
ところで、有機発光素子上には、素子分離膜やスルーホールによる凹凸が存在する。このような凹凸をカバーしつつ、水分や酸素の浸入を防止する具体的な手段として、二種類の保護部材を使用する方法が提案されている。より具体的には、有機発光素子上に有機材料からなる有機保護層を形成し、さらに無機材料からなる無機保護層を積層して覆った有機発光装置が提案されている。ここでこの有機発光装置は、有機保護層をスピンコート法やディップ法により有機発光装置の全面に形成した後、外部接続端子上に被膜した有機保護層を、エッチング法により選択的に除去する必要がある。しかし、エッチングにより露出された有機保護層の端部の形状は、垂直に切立っていたり逆テ−パー状になったりする。この有機保護層の端部の形状が原因で、有機保護層上に無機保護層を形成したとしても当該有機保護層の端部は無機保護層によって十分被膜できない。このため、当該有機保護層の端部から水分や酸素が浸入しやすくなる。
【0005】
そこで、特許文献1には、画素エリアを囲繞する仕切りを設け、当該仕切りによって囲繞された領域に画素エリアを被覆する有機保護層が形成され、次いで有機保護層及び仕切りを被覆する無機保護層が形成されている有機発光装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−323974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで特許文献1の有機発光装置は、画素エリアを囲繞する仕切りを被覆している無機保護層により、画素エリア周囲から有機発光素子への水分の浸入を防止するものである。しかし、有機発光装置の狭額縁化を行うと、TFTや、有機発光素子を駆動する信号配線による凹凸が仕切りの外側にある封止領域に存在する可能性がある。
【0008】
また画素エリアの周囲に設けられる封止領域には、膜片等の異物が付着する場合が多い。これは、有機化合物層を形成するマスク蒸着工程や、上部電極を形成するスパッタ工程で異物が発生するためである。また、有機平坦化層や画素エリアを囲繞する仕切りを、有機化合物層を形成する工程(蒸着工程)よりも前に形成すると、この仕切りと、マスク蒸着時に使用するマスクとが接触し、仕切りに傷が発生する場合がある。
【0009】
このように、画素エリアを囲繞する仕切りに、上述した凹凸、異物、傷がある状態では、有機保護層及び仕切り全体を被覆するように形成する無機保護層によって当該異物等を被膜して封止することは容易ではない。なぜならば、上述した異物及び傷は、形状が複雑で、具体的には、側面の形状が切立っていたり、逆テーパー状になっていたり、溝形状であったりするためである。
【0010】
よって、特許文献1にて開示されている方法では、有機保護層の端部で生じ得る凹凸は、無機保護層のみでは十分カバレッジできない。このため、有機保護層の端部からの水分及び酸素の浸入を十分防止するには、無機保護層の膜厚を厚くする必要があり、大幅な設備投資が必要となる。
【0011】
本発明の目的は、有機発光素子への水分、酸素の進入を防止すると共に、TFT及び信号配線による凹凸、有機保護層端部に付着した異物、下地の傷等に起因する欠陥を無くし、生産コストの低減が可能な有機発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機発光装置は、基板と、
該基板上に設けられる第一有機平坦化層と、
該第一有機平坦化層上に設けられる画素エリアと、
該画素エリアを被覆し、複数の層からなる保護部材と、
該基板上に、該第一有機平坦化層とは離隔して設けられる第二有機平坦化層と、から構成され、
該画素エリアには、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、からなる有機発光素子が複数配列され、
前記保護部材が、少なくとも第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、を有しており、
少なくとも該第一有機平坦化層と該第二有機平坦化層との間の領域及び第二有機平坦化層上に、第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、がこの順で設けられており、
該第二有機平坦化層の上部において、該第一無機保護層と該第二無機保護層とが接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機発光素子への水分、酸素の進入を防止すると共に、TFT及び信号配線による凹凸、有機保護層端部に付着した異物、下地の傷等に起因する欠陥を無くし、生産コストの低減が可能な有機発光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機発光装置における第一の実施形態を示す模式図であり、(a)は、平面模式図であり、(b)は、(a)のAB間の断面模式図である。
【図2】本発明の有機発光装置における第二の実施形態を示す模式図であり、(a)は、平面模式図であり、(b)は、(a)のCD間の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の有機発光装置の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の有機発光装置は、基板と、該基板上に設けられる第一有機平坦化層と、該第一有機平坦化層上に設けられる画素エリアと、該画素エリアを被覆し、複数の層からなる保護部材と、該基板上に設けられる第二有機平坦化層と、から構成される。尚、第二有機平坦化層は、第一有機平坦化層とは離隔して設けられると共に第一有機平坦化層とは別個の部材である。即ち、第二有機平坦化層は、第一有機平坦化層の一部を加工して形成されたものではなく、第一有機平坦化層とは独立して形成される部材である。
【0017】
ここで、我々は、第一有機平坦化層の一部を加工して第二有機平坦化層を形成した場合について実験を行った。具体的には、画素エリアが設けられている第一有機平坦化層であって、画素エリア外縁に相当する領域に、特定の幅の溝(第一有機平坦化層の除去領域)を設けた。そして、この溝の上に第一無機保護層、有機保護層及び第二無機保護層からなる保護部材を設けた上で、当該溝の外側にある第二有機平坦化層上で二種類の無機保護層(第一無機保護層、第二無機保護層)が接するように構成した有機発光装置を作製した。そして二種類の保護層が接する封止領域において水分、酸素の浸透を評価した。
【0018】
その結果、当該溝の外側にある有機平坦化層上に異物が付着していたり、傷があったりする等の理由により、有機発光装置の封止領域における水分、酸素の浸透の抑制効果が、十分ではなかった。この結果から、第二有機平坦化層は、第一有機平坦化層の一部を加工して形成されたものではなく、第一有機平坦化層とは独立して形成される部材であることを要する。
【0019】
本発明の有機発光装置において、画素エリアには、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、からなる有機発光素子が複数配列されている。
【0020】
また保護部材は、少なくとも第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、を有している。少なくとも該第一有機平坦化層と該第二有機平坦化層との間の領域及び第二有機平坦化層上には、第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、がこの順で設けられている。
【0021】
また第二有機平坦化層の上部において、第一無機保護層と第二無機保護層とが接している。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機発光装置の実施形態について説明する。
【0023】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の有機発光装置における第一の実施形態を示す模式図であり、(a)は、平面模式図であり、(b)は、(a)のAB間の断面模式図である。
【0024】
以下に、図1の有機発光装置の構成部材について説明する。
【0025】
基板1は、透明な基板であってもよく不透明な基板であってもよい。また、合成樹脂等からなる絶縁性基板、表面に酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁層を形成した導電性基板若しくは半導体基板のいずれでもよい。尚、有機発光装置に含まれる有機発光素子が複数ある場合は、基板1上に、各々の有機発光素子を駆動するためのTFT2が形成されるのが望ましい。
【0026】
基板1上にTFT2が形成されている場合、このTFT2及び(TFTの)信号配線3を覆うように、無機材料からなる絶縁層4が形成される。絶縁層4の構成材料としては、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等を使用することができる。
【0027】
また絶縁層4上には、TFT2を設けることで生じた凹凸を平らにするための第一有機平坦化層5を形成する。第一有機平坦化層5の構成材料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。尚、後述する第二有機平坦化層15を設ける領域を確保するために、第一有機平坦化層5を設ける領域を適宜調整する必要がある。具体的には、基板1の外縁から幅0.2mm以上の領域には、第一有機平坦化層5が設けられていない領域8が確保できるようにする。この領域8は、第一有機平坦化層5の一部が除去されたこと、もしくは初めから形成されていないことによって設けられる領域である。尚、この領域8には、信号配線3及び絶縁層4を被覆する無機材料からなる薄膜8aが設けられている。
【0028】
第一有機平坦化層5上には、画素エリア20が設けられている。この画素エリア20内であって各画素に相当する位置には下部電極6が形成されている。ここで下部電極6と信号配線3とは、絶縁層4及び第一有機平坦化層5に形成されたコンタクトホール3aを介して電気的に接続されている。
【0029】
一方、基板1上に別途設けられる外部接続端子9は、信号配線3と直接的に電気接続されているように、絶縁層4及び第一有機平坦化層5を除去する等の方法により設けられている。
【0030】
第一有機平坦化層5の外縁には、下部電極6の周縁部を被覆するための画素分離膜7が形成されている。画素分離膜7の構成材料として、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機系の絶縁材料やアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。
【0031】
下部電極6上には、有機化合物層10が形成される。有機化合物層10は、発光層が含まれていれば、発光層のみの一層構成であってもよいし、発光層に加えて正孔輸送層、電子輸送層等を含めた複数層の構成であってもよい。また、有機化合物層10を構成する各層の構成材料として、公知の材料を使用することができる。
【0032】
有機化合物層10上には、上部電極11が形成される。上部電極11の構成材料としては、IZO(インジウム亜鉛酸化物)や、ITO(インジウム錫酸化物)等の酸化物透明導電膜、銀、アルミ、金等の金属半透過膜等が挙げられる。
【0033】
そして、第一有機平坦化層5が形成されていない領域8には、第二有機平坦化層15が形成される。第二有機平坦化層15は、薄膜8aの下方にあるTFT2及びTFTの信号配線3による凹凸や異物を覆い、平坦化する役割を担う。また、第二有機平坦化層15は、後の工程で形成される第二無機保護層14に、亀裂やカバレッジ不良が発生しないようにするための部材である。このとき図1(b)に示されるように、第二有機平坦化層15は、第一有機平坦化層5とは離隔して(一定の距離を置いて)設けられる。
【0034】
第二有機平坦化層15の構成材料としては、熱硬化性又はUV硬化性の高分子材料が挙げられる。例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、シリコーン樹脂等を使用することができる。
【0035】
第二有機平坦化層15の形成方法としては、真空中又は低露点下の窒素雰囲気中で、例えば、ディスペンサーを用いて上述した高分子材料を塗布する。ディスペンサーの代わりに、スクリーン印刷、スリットコーター等を用いてもよい。また、塗布する位置は、第一有機平坦化層5とは一定の距離を置いた位置にする。当該高分子材料を塗布した後、基板1の画素エリア20の温度を120℃程度以下になるように、当該高分子材料に対して局所的加熱又は局所的光照射を行う。このとき第二有機平坦化層15の構成材料として熱硬化性高分子材料を使用した場合は、真空ベーク炉や赤外線ランプを用いて当該高分子材料を局所的に加熱する。一方、第二有機平坦化層15の構成材料としてUV硬化性の高分子材料を使用した場合は、UV光源を用いて当該高分子材料を局所的に照射する。
【0036】
また、第二有機平坦化層15の形成工程は、上部電極11の形成後、即ち、有機発光素子が形成された後に行う。こうすることで、第二有機平坦化層15を形成する前に存在し得る凹凸、異物、傷等を平坦化させることができる。
【0037】
本発明の有機発光装置の構成部材である有機発光素子は、第一無機保護層12、有機保護層13及び第二無機保護層14からなる保護部材によって大気中に含まれる水分や酸素から保護される。
【0038】
保護部材の一部である第一無機保護層12は、領域8の端部から浸透し得る水分、酸素から有機発光素子を保護するために設けられる部材である。本実施形態において、第一無機保護層12は、図1(b)に示されるように、外部接続端子9を設けた領域を除いた領域のほぼ全域に形成される。即ち、画素エリア20を含んだ第一有機平坦化層5、領域8及び第二有機平坦化層15を被覆するように形成される。
【0039】
図1(b)に示されるように、第一無機保護層12を、外部接続端子9を設けた領域を以外の領域に形成する場合は、後述する有機保護層13を形成する際に、これまで形成した部材を保護する機能を担うことになる。即ち、有機保護層13の構成材料を有機発光素子上に塗布した時に、有機保護層13の構成材料に含まれる水分から有機発光素子等の部材を保護する機能を担うことになる。同時に、有機保護層13となる薄膜をベークする時に発生するガス及びベーク時に生じ得る応力による膜剥れから有機発光素子等の部材を保護する機能を担うことになる。第一無機保護層12の構成材料として、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン等が挙げられる。またこれらの構成材料を複数使用し積層体としてもよい。第二無機保護層12の形成方法としては、スパッタ法やCVD法を用いることができる。
【0040】
有機保護層13は、第一無機保護層12まで形成したときに第一有機平坦化層5と第二有機平坦化層15との間の領域に発生し得る異物や凹凸を平坦化するために設けられる保護部材である。尚、有機保護層13の外縁は、第二有機平坦化層15の内縁には重なるが外縁には重ならない。このため有機保護層13の外縁に生じ得る凹凸や異物は、第二有機平坦化層15により平坦化される。
【0041】
有機保護層13の構成材料としては、有機発光素子上に直接形成したときにダークスポットが発生しない低含水率の高分子材料であれば特に限定されるものではない。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、シリコーン樹脂を使用することができる。また有機保護層13は、真空中又は低露点下の窒素雰囲気中で、例えば、ディスペンサーを用いた塗布法によって形成される。ディスペンサーに代えて、スクリーン印刷、スリットコーター等を用いてもよい。
【0042】
第二無機保護層14は、水分及び酸素の進入から有機発光素子を保護する保護部材である。本実施形態の有機発光装置は、二種類の無機保護層(第一無機保護層12、第二無機保護層14)で有機発光素子を包み込むことにより、水分及び酸素の進入から有機発光素子を保護することができる。
【0043】
第二無機保護層14の構成材料としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等が挙げられる。好ましくは、窒化シリコンである。窒化酸化シリコンに比べて、窒化シリコンの方が水分透過性が低いからである。また第二無機保護層14は、プラズマCVD法や、スパッタ法等によって形成することができる。
【0044】
本発明においては、画素エリア20の外縁を封止する二種類の無機保護層(第一無機保護層12、第二無機保護層14)が、第二有機平坦化層15で平坦化される。このため、第二無機保護層14は、カバレッジ性能を付与させる必要が殆どなく、その膜厚を大幅に薄くすることができる。従って、第二無機保護層14の膜厚は0.2μm以上であればよい。ただし、第二無機保護層14の膜厚を厚くすると光透過率が低下し、設備投資が増加するため、膜厚の上限は、1μm以下が好ましい。
【0045】
第二無機保護層14を設けた後は、図1(b)に示すように、基板1上に設けられる外部接続端子9とフレキシブル配線基板(以下、FPC)17とを電気接続する。具体的には、まず外部接続端子9上に異方性導電フィルム(以下、ACF)16を仮圧着する。仮圧着を行うときは、低温圧着を行うとよい。次に、ACF16上の保護シートを除去し、FPC17を外部接続端子9と位置あわせする。位置合わせは、自動アライメントでもよい。その後加熱したヒーターヘッドをFPC17上に当て、熱加圧することで外部接続端子9とFPC17の接合を完了する。
【0046】
一方、画素エリア20を含む領域、具体的には、第二無機保護層14上には、必要に応じて粘着剤18を介して円偏光板19を貼り付けてもよい。円偏光板19は、例えば、通例の円偏光板と同様に、偏光板と1/4λ板(位相差板)とを組み合わせた構成が挙げられる。
【0047】
[第二の実施形態]
図2は、本発明の有機発光装置における第二の実施形態を示す模式図であり、(a)は、平面模式図であり、(b)は、断面模式図である。
【0048】
以下、第一の実施形態を相違する事項を中心に説明する。
【0049】
本実施形態において、第一無機保護層12は、図2(b)に示されるように、第二有機平坦化層15と、第一有機平坦化層5と第二有機平坦化層15との間の領域(領域8)とを被覆するように形成される。
【0050】
図2(b)のように、有機発光素子上に第一無機保護層12を設けずに有機保護層13が直接形成されたとしても、第二有機平坦化層15上で第一無機保護層12及び第二無機保護層14が接していることにより、有機発光素子を外気から遮断することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0052】
<実施例1>
図1に示される有機発光装置を、以下に示す方法により作製した。
【0053】
ガラス基板1上に、TFT2、絶縁層4及び第一有機平坦化層5を、この順で、それぞれ所望の形状に積層形成した。次に、第一有機平坦化層5上に、画素単位でアルミ(Al)とインジウム錫酸化物(ITO)とを順次成膜することにより下部電極6を形成した。このとき下部電極6の層膜厚を150nmとした。次に、薄膜8aを形成した後、各画素の周囲をポリイミド製の画素分離膜7で覆った。このように画素分離膜7まで形成されたガラス基板を電極付基板として、次に工程で使用した。
【0054】
次に、上記電極付基板を、純水で約5分間洗浄した後、約200℃、2時間のベーク条件で、脱水処理した。次に、下部電極6にUV/オゾン洗浄を施した。
【0055】
次に、以下に示す方法により、下部電極6上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層からなる有機化合物層10を形成した。
【0056】
具体的には、まず真空蒸着装置に上記基板及び有機化合物層の構成材料を所定の場所に取り付けた後、下部電極6上にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を成膜し正孔輸送層を形成した。このとき正孔輸送層の膜厚を40nmとし、圧力条件を1×10-3Paとした。
【0057】
次に、正孔輸送層上に、緑色発光するクマリン色素とトリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)とを、体積混合比で1:99となるように共蒸着して発光層を形成した。このとき発光層の膜厚を30nmとした。
【0058】
次に、発光層上に、下記式で示されるフェナントロリン化合物を成膜して電子輸送層を形成した。このとき電子輸送層の膜厚を10nmとした。
【0059】
【化1】

【0060】
次に、電子輸送層上に、炭酸セシウムと上記フェナントロリン化合物とを、体積混合比で2.9:97.1となるように共蒸着して電子注入層を形成した。このとき電子注入層の膜厚を40nmとした。
【0061】
次に、電子注入層まで形成した基板を、スパッタ装置へ移動させた。次に、スパッタ法により、電子注入層上に、インジウム錫酸化物(ITO)を成膜して上部電極11を形成した。このとき上部電極11の膜厚を60nmとした。
【0062】
次に、第一有機平坦化層5の外縁から0.5mm離れた位置に、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を膜厚約10μm、幅約1mmで塗布した。尚、当該熱硬化性エポキシ樹脂は、図1(a)に示されるように、第一有機平坦化層5の周囲を囲む領域に塗布した。次に、基板1を真空ベーク炉で110℃30分加熱して、熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させることにより、第二有機平坦化層15を形成した。
【0063】
次に、スパッタ法により、外部接続端子9を除いた部材の全てを覆うように、基板1の略全域に第一無機保護層12を形成した。
【0064】
具体的には、まず、装置内にSiターゲットを取り付け、Arガス及び窒素ガスを流し、装置内の圧力が0.7Pa程度となるように調整した。次に、直流電力を供給し、プラズマを生起させることにより、第一無機保護層12を堆積形成した。このとき第一無機保護層12の膜厚を0.1μmとした。
【0065】
次に、第一無機保護層12上に、有機保護層13を形成した。
【0066】
具体的には、約50Paの圧力条件下で、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を成膜した。このとき当該樹脂の膜厚を約10μmとした。尚、有機保護層を形成する際に、その外縁が第二有機平坦化層15の内縁に掛かるようにした。
【0067】
次に、真空中において、110℃で30分間ベークを行い、有機保護層13を硬化させた。
【0068】
次に、VHFプラズマCVD法により、有機保護層13及び第二有機平坦化層15を覆い、外部接続端子9を除いた基板1の略全域に第二無機保護層14を形成した。
【0069】
具体的には、まず、堆積膜形成装置の高周波電極と、それに対向する接地電極とが基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスをフローしながら高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を100Paに制御した。そして、高周波電力を高周波電極に供給することにより、第二無機保護層14を堆積形成した。このとき第二無機保護層14の膜厚を約1μmとした。
【0070】
次に、基板1に設けられている外部接続端子9上に異方導電接着剤16を塗布した。次に、FPC17を異方導電接着剤16上に設置し貼り付けたあと、外部接続端子9とFPC17との間を熱圧着した。
【0071】
最後に第二無機保護層14上に粘着剤18を塗布した後、円偏光板19を貼り付けることにより、有機発光装置を得た。
【0072】
また上記の方法により合計10枚の有機発光装置を製造した。
【0073】
得られた有機発光装置について耐久試験を行った。具体的には、60℃90%RHの環境に1000時間放置したときの耐久性の評価を行った。また具体的な評価方法は、60℃90%RHの環境に所定の時間(250時間、500時間、1000時間)放置させた後で、有機発光素子を発光させたときに、有機発光素子の周囲から、画素の輝度低下が広がるか否かで評価した。結果を表1に示す。尚、下記表1において、×は、有機発光素子の周囲から輝度低下が発生した場合を示し、○は、周囲から輝度低下が発生せず正常に点灯した場合を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示す通り、本実施例の有機発光装置は、60℃90%RHの環境下で1000時間放置したとしても、輝度低下の発生する有機発光装置はなく、正常に点灯した。
【0076】
<実施例2>
図2で示される有機発光装置を、以下に示す方法により作製した。
【0077】
まず実施例1と同様の方法により、ガラス基板1上に、上部電極11までの部材を形成した。
【0078】
次に、第二有機平坦化層15を、以下の方法で形成した。
【0079】
次に、第一有機平坦化層5の外縁から1mm離れた位置に、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を膜厚約10μm、幅約1mmで塗布した。尚、当該熱硬化性エポキシ樹脂は、図2(a)に示されるように、第一有機平坦化層5と外部接続端子9との間の領域にのみ塗布した。次に、基板1を真空ベーク炉で110℃30分加熱して、熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させることにより、第二有機平坦化層15を形成した。
【0080】
次にスパッタ法により、第二有機平坦化層15、及び第一有機平坦化層5と第二有機平坦化層15との間の領域を覆うように、第一無機保護層12を選択的に形成した。
【0081】
具体的には、シリコンターゲットを用い、アルゴンガスと窒素ガスを流しながら、チャンバー圧力を0.7Paに制御し、DC電力を供給してプラズマを発生させることにより、第一無機保護層12を形成した。このとき第一無機保護層12の膜厚を0.1μmとした。
【0082】
次に、第一無機保護層12上に、有機保護層13を形成した。
【0083】
具体的には、約50Paの圧力条件下で、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を成膜した。このとき当該樹脂の膜厚を約10μmとした。尚、有機保護層を形成する際に、その外縁が第二有機平坦化層15の内縁に掛かるようにした。
【0084】
次に、真空中において、110℃で30分間ベークを行い、有機保護層13を硬化させた。
【0085】
次に、VHFプラズマCVD法により、有機保護層13及び第二有機平坦化層15を覆い、外部接続端子9を除いた基板1の略全域に第二無機保護層14を形成した。
【0086】
具体的には、まず、堆積膜形成装置の高周波電極と、それに対向する接地電極とが基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスをフローしながら高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を100Paに制御した。そして、高周波電力を高周波電極に供給することにより、第二無機保護層14を堆積形成した。尚、本実施例においては、第二有機平坦化層15が形成されていない有機保護層13端部の異物や傷からの影響をなくすため第二無機保護層14の膜厚を約2μmとした。
【0087】
次に、基板1に設けられている外部接続端子9上に異方導電接着剤16を塗布した。次に、FPC17を異方導電接着剤16上に設置し貼り付けた後、外部接続端子9とFPC17との間を熱圧着した。
【0088】
最後に第二無機保護層14上に粘着剤18を塗布した後、円偏光板19を貼り付けることにより、有機発光装置を得た。
【0089】
また上記の方法により合計10枚の有機発光装置を製造した。
【0090】
得られた有機発光装置について、実施例1と同様に耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2に示す通り、本実施例の有機発光装置は、60℃90%RHの環境下で1000時間放置したとしても、輝度低下の発生する有機発光装置はなく、正常に点灯した。
【0093】
<実施例3>
実施例1において、第二無機保護層14の膜厚を、0.1μmから2μmまでの5種類に設定したこと以外は、実施例1と同様の方法により有機発光装置を得た。
【0094】
また第二無機保護層14の膜厚を、0.1μmから2μmまでに設定したサンプルをそれぞれ、各6枚作製した。
【0095】
得られた有機発光装置について、実施例1と同様に耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
表3に示す通り、本実施例の有機発光装置は、第二無機保護層の膜厚が0.2μm以上であれば、60℃90%RHの環境下で1000時間放置したとしても、輝度低下の発生する有機発光装置はなく、正常に点灯した。
【0098】
以上ように、第二有機平坦化層15を形成することにより、TFT及び有機発光素子を駆動する信号配線による凹凸や、有機保護層端部に付着した異物や下地の傷の影響で生じる封止不良を大幅に減少させることができ、封止端部の封止性能を得ることができる。特に、本発明の製造方法で示されるように、マスクを用いた有機発光素子の作製工程後に、第二有機平坦化層を形成する工程を行うことにより、有機発光素子の作製工程において付着した異物や下地の傷を平坦化することができるため、効果は絶大である。これにより、有機発光素子への水分や酸素の浸入を防止することができるとともに、ローコストの有機発光装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の有機発光装置は表示装置として好ましく用いることができ、特にテレビ受像機、携帯電話の表示部、撮像装置の表示部に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 TFT(薄膜トランジスタ)
3 信号配線
4 絶縁層
5 第一有機平坦化層
6 下部電極
7 画素分離膜
8 (第一有機平坦化層が形成されていない)領域
9 外部接続端子
10 有機化合物層
11 上部電極
12 第一無機保護層
13 有機保護層
14 第二無機保護層
15 第二有機平坦化層
16 異方性導電フィルム(ACF)
17 フレキシブル配線基板(FPC)
18 粘着剤
19 円偏光板
20 画素エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられる第一有機平坦化層と、
該第一有機平坦化層上に設けられる画素エリアと、
該画素エリアを被覆し、複数の層からなる保護部材と、
該基板上に、該第一有機平坦化層とは離隔して設けられる第二有機平坦化層と、から構成され、
該画素エリアには、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、からなる有機発光素子が複数配列され、
前記保護部材が、少なくとも第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、を有しており、
少なくとも該第一有機平坦化層と該第二有機平坦化層との間の領域及び第二有機平坦化層上に、第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、がこの順で設けられており、
該第二有機平坦化層の上部において、該第一無機保護層と該第二無機保護層とが接していることを特徴とする、有機発光装置。
【請求項2】
前記第二無機保護層の膜厚が0.2μm以上であり1μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項3】
基板と、
該基板上に設けられる第一有機平坦化層と、
該第一有機平坦化層上に設けられる画素エリアと、
該画素エリアを被覆し、複数の層からなる保護部材と、
該基板上に、該第一有機平坦化層とは離隔して設けられる第二有機平坦化層と、から構成され、
該画素エリアには、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、からなる有機発光素子が複数配列され、
前記保護部材には、少なくとも第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、が含まれており、
少なくとも該第一有機平坦化層と該第二有機平坦化層との間の領域及び第二有機平坦化層上に、第一無機保護層と、有機保護層と、第二無機保護層と、がこの順で設けられており、
該第二有機平坦化層の上部において、該第一無機保護層と該第二無機保護層とが接している有機発光装置の製造方法において、
該有機発光素子を形成した後、該第一有機平坦化層から一定の距離を置いた領域に第二有機平坦化層を形成することを特徴とする、有機発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−218940(P2010−218940A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65711(P2009−65711)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】