説明

有機薄膜太陽電池素子および光電変換層形成用塗工液

【課題】本発明は、エネルギー変換効率の高い有機薄膜太陽電池素子を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成される光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、上記光電変換層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とする有機薄膜太陽電池素子を提供することにより、上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子受容性および電子供与性の機能を一組として、pn接合を利用したヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、その素子内部に光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換層を有し、光電変換層として結晶シリコンやアモルファスシリコン等の無機物を使用した無機太陽電池と、導電性高分子等の有機物を使用した有機太陽電池とに大別される。有機太陽電池の中でも、光電変換層として有機薄膜を使用した有機薄膜太陽電池は、無機太陽電池に比べて、製造工程が容易なこと、低コストで大画面化が可能なこと等から注目されている。さらに、有機薄膜太陽電池は、ドナー・アクセプター電子移動速度が40fsと速く、内部量子効率も最適な条件下で100%近い値を示すことから、太陽電池の変換効率向上の観点からみても大いなるポテンシャルを秘めているといえる。
【0003】
しかしながら、有機薄膜太陽電池はエネルギー変換効率が悪く、実用化をする上での課題となっている。この原因としては、上記内部量子効率は非常に高いにもかかわらず、光電変換層内部で実際に光電変換に寄与できる部位が限られていること(光利用効率の悪さ)、実際に電気として外部に取り出せる電気量が低いこと(キャリア輸送効率の悪さ)等が挙げられる。
【0004】
これらの課題に対して、無機材料にはない有機材料ならではの特徴を活かした有機薄膜太陽電池素子の開発が盛んに行なわれている(非特許文献1および非特許文献2)。
【0005】
例えば、上記非特許文献1には、光電変換層が電子輸送層および正孔輸送層を有するバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子が示されている。一般に、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、透明基板と、上記透明基板上に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成され、電子供与体として機能する正孔輸送層および電子受容体として機能する電子輸送層を有する光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記透明電極と対向する電極である対向電極とを有している。上記バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、p型有機半導体が存在する正孔輸送層と、n型有機半導体が存在する電子輸送層とを接合させることにより、2つの層の界面でpn接合を形成させ、光電変換を起こすものである。
【0006】
このようなバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子が非特許文献1に例示されており、p型有機半導体としてペリレン誘導体(PTCBI)を用い、n型有機半導体として銅フタロシアニン(CuPc)を用いたもの等が挙げられている。
【0007】
また一方では、光電変換層をバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子のような積層構造にするのではなく、p型有機半導体とn型有機半導体とが混在した電子正孔輸送層という単一層構造にした有機薄膜太陽電池素子の開発も行なわれている。このような有機薄膜太陽電池素子はバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子と呼ばれ、光電変換層中で分子レベルのpn接合を広く形成させることが可能であり、光電変換に寄与できる体積を増大させることができるという利点を有する。
【0008】
このようなバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子もまた非特許文献1に例示されており、p型有機半導体としてポリフェニレンビニレン系の共役高分子(MEH−PPV)を用い、n型有機半導体としてフラーレン誘導体[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル(以下、PCBMという場合がある。)を用いたもの等が挙げられている。
【0009】
上記の例で示したように、有機薄膜太陽電池素子の性能向上を目的として、様々な有機材料が検討されているが、これらに共通した問題点が存在している。その問題点とは、良好な特性を持つn型有機半導体が不足しているということであり、これは光電変換層で使用される多くの有機材料はp型半導体的性質を示すことに起因するものである。n型有機半導体は電子の輸送に関して主要な働きをしており、電子輸送能が不足している太陽電池では、光照射によって電圧は得られても、十分な電流が得られず、結果としてエネルギー変換効率を落とす場合がある。従って、有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を向上させるためには、優れた電子輸送能を有するn型有機半導体が不可欠であり、その開発が強く望まれている。
【0010】
【非特許文献1】MATERIAL STAGE vol.2,No.9 2002 p.37-42 中村潤一ら著「有機薄膜太陽電池 ドナー・アクセプター相互作用の活用」
【非特許文献2】応用物理 第71巻 第4号(2002)p.425-428 昆野昭則著「有機太陽電池の現状と展望」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー変換効率の高い有機薄膜太陽電池素子を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者らは、光電変換層の形成材料として、電子輸送能の高い材料を検討することにより、光電変換層における電子輸送性を向上させ、エネルギー変換効率の高い有機薄膜太陽電池素子を得ることができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層を有する光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、上記電子輸送層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とする有機薄膜太陽電池素子を提供する。
【0014】
本発明においては、上記光電変換層を形成する電子輸送層のn型有機半導体としてフラーレンナノウィスカを使用することによって、電子輸送層における電子輸送能が向上し、有機薄膜太陽電池素子のエネルギー変換効率を高めることができる。
【0015】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、電子正孔輸送層である光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、上記電子正孔輸送層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とする有機薄膜太陽電池素子を提供する。
【0016】
本発明においては、上記光電変換層を形成する電子正孔輸送層のn型有機半導体としてフラーレンナノウィスカを使用することによって、電子輸送層における電子輸送能が向上し、有機薄膜太陽電池素子のエネルギー変換効率を高めることができる。
【0017】
また、上記発明においては、上記フラーレンナノウィスカが、フラーレンC(n=60以上)、上記フラーレンC(n=60以上)の誘導体、および上記フラーレンC(n=60以上)もしくは上記フラーレンC(n=60以上)の誘導体を骨格とし炭素ゲージ内に金属原子を内包した金属内包フラーレン、からなる群から選択される少なくとも1つの化合物から構成されることが好ましい。上記フラーレンナノウィスカが上記化合物から構成されることにより、良好な電子輸送性を持った光電変換層を形成することができるからである。
【0018】
また、上記発明においては、上記フラーレンC(n=60以上)が、C60またはC70であることが好ましい。C60およびC70は、工業的に製造が容易であり、有機薄膜太陽電池素子の製造コストを削減することができるからである。
【0019】
また、上記発明においては、上記フラーレンC(n=60以上)の誘導体が、上記フラーレンC(n=60以上)の水素付加体、臭素付加体、アルキル鎖付加体、水酸基付加体、アミノ基付加体、シアノ基付加体、フェニル基付加体、およびPCMB([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)からなる群から選択される化合物であることが好ましい。このような誘導体を使用することにより、有機溶媒に対する可溶性が高くなり、取扱い性が向上するからである。
【0020】
本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層を有する光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子に用いられる上記電子輸送層を形成するための光電変換層形成用塗工液であって、溶媒と、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカとを有することを特徴とする光電変換層形成用塗工液を提供する。
【0021】
本発明においては、上記電子輸送層を形成する光電変換層形成用塗工液にフラーレンナノウィスカを含有させることにより、電子輸送能が向上した電子輸送層を形成することができ、有機薄膜太陽電池素子のエネルギー変換効率を高めることができる。
【0022】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、電子正孔輸送層である光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子に用いられる上記電子正孔輸送層を形成するための光電変換層形成用塗工液であって、溶媒と、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカおよびp型有機半導体とを有することを特徴とする光電変換層形成用塗工液を提供する。
【0023】
本発明においては、上記電子正孔輸送層を形成する光電変換層形成用塗工液にフラーレンナノウィスカを含有させることにより、電子輸送能が向上した電子正孔輸送層を形成することができ、有機薄膜太陽電池素子のエネルギー変換効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、有機薄膜太陽電池素子を構成する光電変換層において、n型有機半導体としてフラーレンが規則正しく整列したフラーレンナノウィスカを使用することで、電子輸送能を向上させ、高いエネルギー変換効率を有する有機薄膜太陽電池素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明における有機薄膜太陽電池素子および光電変換層形成用塗工液について詳細に説明を行なう。
【0026】
A.有機薄膜太陽電池素子
まず、本発明の有機薄膜太陽電池素子について説明する。
【0027】
本発明の有機薄膜太陽電池素子は、電子受容性および電子供与性の機能を一組として、pn接合を利用したヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池素子であり、光電変換層の構成により2つの態様に分けることができる。すなわち、光電変換層が、電子供与体として機能する正孔輸送層および電子受容体として機能する電子輸送層を有する態様と、電子供与体および電子受容体の両方の機能を持つ電子正孔輸送層を有する態様とに分けることができる。本発明においては、前者の正孔輸送層および電子輸送層を有する態様をバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子と呼び、後者の電子正孔輸送層有する態様をバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子と呼ぶことにする。
【0028】
なお、本発明において光電変換層とは、有機薄膜太陽電池素子の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向って輸送させる機能を有する部材を意味する。
【0029】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池素子を、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の態様とバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池素子の態様とに分けて説明する。
【0030】
1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子
本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層を有する光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、上記電子輸送層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とするものである。
【0031】
次に、本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子について、図面を用いて説明する。図1は、本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、基板1と、上記基板1上に形成された第1電極層2と、上記第1電極層2上に形成され、正孔輸送層4および電子輸送層5を有する光電変換層3と、上記光電変換層3上に形成され、上記第1電極層2と対向する電極である第2電極層7とを有するものである。
本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、光電変換層3が、電子受容性の機能を有する電子輸送層5および電子供与性の機能を有する正孔輸送層4から形成され、それらの界面において形成されるpn接合を利用して光電荷分離を生じさせ、電流を得るものである。
【0032】
本態様においては、電子輸送層中のフラーレンナノウィスカがn型有機半導体として効率良く電子輸送に寄与することにより、電子輸送性が向上し、高いエネルギー変換効率を有する有機薄膜太陽電池素子が得られるのである。
【0033】
次に、このようなバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の各構成について説明する。以下、本態様で最も特徴のある光電変換層を最初に説明し、続いて基板、第1電極層、第2電極層を説明する。
【0034】
(1)光電変換層
本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子に用いられる光電変換層について説明する。本態様における光電変換層は、上記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層から構成されるものである。
【0035】
本態様においては、上記正孔輸送層がp型有機半導体を有し、上記電子輸送層がn型有機半導体として電子輸送性に優れたフラーレンナノウィスカを有することにより、電子輸送効性が向上し、高いエネルギー変換効率を有する有機薄膜太陽電池素子が得られるのである。
以下、このような光電変換層を構成する正孔輸送層および電子輸送層に分けて説明する。
【0036】
(正孔輸送層)
本態様において、正孔輸送層はp型有機半導体を有するものである。本態様における正孔輸送層を形成する有機材料はp型有機半導体的性質を示すものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマー等が挙げられ、中でも、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体が好ましい。また、上記有機材料の混合物であってもよい。
【0037】
(電子輸送層)
本態様において、電子輸送層は、n型有機半導体として少なくともフラーレンナノウィスカを有するものである。
【0038】
本態様におけるフラーレンナノウィスカは、フラーレンC(n=60以上)、上記フラーレンC(n=60以上)の誘導体、および上記フラーレンC(n=60以上)もしくは上記フラーレンC(n=60以上)誘導体を骨格とし炭素ゲージ内に金属原子を内包した金属内包フラーレン、からなる群から選択される少なくとも1つの化合物から構成されることを特徴とするものである。ここで、フラーレンナノウィスカとは、上述したフラーレン等が、ひげ状に連なり線状の単結晶となったものであり、その直径がナノメートルサイズであるものをいう。
【0039】
通常、結晶は転位といわれる結晶の乱れを有しているが、フラーレンナノウィスカは、この転位をほとんど有さないことから、従来にない力学的性質、光学的性質、電気的性質を示す物質として、広範囲の分野への応用が期待されている。本発明においては、規則正しく整列したフラーレンが、光電分離によって発生した電子を効率よく電極まで伝えることができることを意図したものである。
以下、フラーレンナノウィスカを構成するフラーレン等について詳細に説明する。なお、本明細書中において、フラーレンCを単にCと記載する場合がある。
【0040】
本態様において使用されるフラーレンCは、n=60以上であり、フラーレン構造を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばC60、C70、C84、C90等を挙げることができ、中でも、C60およびC70は工業上容易に製造可能で、製造コストを抑えることができる点から好ましいといえる。
【0041】
上記フラーレンナノウィスカは、上記フラーレンC1種類から構成されていてもよく、2種類以上から構成されていてもよい。好適な組合せとしては、例えばC60とC70とを用いた場合を挙げることができる。この場合、両者の割合としては、重量比でC60:C70=1:0.001〜10が好ましく、C60:C70=1:0.1〜1がさらに好ましい。
【0042】
また、本態様において使用されるフラーレンCの誘導体は、上記フラーレンCを化学的に修飾したものであれば特に限定されるものではないが、例えば、[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル(PCBM);1,9−ジヒドロ(C60―Ih)[5,6]フラーレン、1,9−ジヒドロ[5,6]フラーレン−C60―Ih、1,2−ジヒドロ[60]フラーレン等のフラーレン水素付加体;1−ブロモ−1,9−ジヒドロ(C60―Ih)[5,6]フラーレン、1−ブロモ−1,9−ジヒドロ[5,6]フラーレン−C60―Ih、1−ブロモ−1,2−ジヒドロ[60]フラーレン等のフラーレン臭素付加体;1,9−ジメチル−1,9−ジヒドロ(C60―Ih)[5,6]フラーレン、1,9−ジヒドロ−1,9−ジメチル[5,6]フラーレン−C60―Ih、1,2−ジエチル−1,2−ジヒドロ[60]フラーレン等のフラーレンアルキル鎖付加体;(C60−Ih)[5,6]フラーレン−1(9H)−オール、[5,6]フラーレン−C60−Ih−1(9H)−オール、1,2ジヒドロ[60]フラーレン−1−オール等のフラーレン水酸基付加体;(C60−Ih)[5,6]フラーレン−1(9H)−アミン、[5,6]フラーレン−C60−Ih−1(9H)−アミン、1,2ジヒドロ[60]フラーレン−1−アミン等のフラーレンアミノ基付加体;(C60−Ih)[5,6]フラーレン−1,9−ジカルボニトリル、[5,6]フラーレン−C60−Ih−1,9−ジカルボニトリル、1,2ジヒドロ[60]フラーレン−1,2−ジカルボニトリル等のフラーレンシアノ基付加体等が挙げられる。中でも、溶媒への可溶性が高いPCBMを使用することが好ましい。
【0043】
上記フラーレンナノウィスカは、上記フラーレンCの誘導体1種類から構成されていてもよく、2種類以上で構成されていてもよい。好適な組合せとして、例えばPCBMと、さらに溶解性良好なフラーレンCの誘導体とを用いた場合を挙げることができる。
【0044】
また、本態様において使用される金属内包フラーレンは、上記フラーレンCおよび上記フラーレンCの誘導体をフラーレン骨格として、その炭素ゲージ内に金属原子を含有するものである。上記金属原子としては、上述したフラーレン骨格との組み合わせにより、フラーレン骨格の電子輸送性をさらに向上させることができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えばSc、Y、La、Sm等のランタノイド元素;Ac、U等のアクチノイド元素;Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属元素;Ca、Sr、Ba、Mg等のアルカリ土類金属元素;Fe、Pb、Co等の遷移金属元素等が挙げられる。
【0045】
上記フラーレンナノウィスカは、上記金属内包フラーレン1種類から構成されていてもよく、2種類以上から構成されていてもよい。
【0046】
以上のように、本態様におけるフラーレンナノウィスカを構成する成分として、フラーレンC、フラーレンCの誘導体、および金属内包フラーレンを挙げたが、本態様のフラーレンナノウィスカは、これらの中から選択される2種類以上の化合物から構成されていてもよい。例えばフラーレンC60とフラーレン誘導体PCBMとを組み合わせた場合等が挙げられる。
【0047】
また、本態様における電子輸送層は、2種類以上のフラーレンナノウィスカを有していてもよく、フラーレンナノウィスカとその他のn型有機半導体とが混在していてもよい。その他のn型有機半導体としては、例えば、C60などのフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、CN基またはCF基含有ポリマー(CN−PPV、MEH−CN−PPV)、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等が挙げられる。
【0048】
また、本態様において、上記電子輸送層中に上記フラーレンナノウィスカが、70重量%〜100重量%の範囲内、中でも90重量%〜100重量%の範囲内で含まれることが好ましい。上記範囲内に上記フラーレンナノウィスカが含まれることによって、良好な電子輸送性を持った電子輸送層を得ることができるからである。
【0049】
また、本態様において、上記フラーレンナノウィスカの長さとしては、特に限定されるものではないが、中でも数μm程度であることが好ましい。また、上記フラーレンナノウィスカの直径としては、特に限定されるものではないが、例えば数nm程度、中でも2nm程度であることが好ましい。
【0050】
次に、本態様におけるフラーレンナノウィスカの合成方法について説明する。
本態様におけるフラーレンナノウィスカの合成方法としては、上記フラーレンナノウィスカを合成することができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば液−液界面析出法を挙げることができる。この液−液界面析出法の一例としては、C60をトルエンに溶解させ飽和溶液とし、この飽和溶液にイソプロピルアルコールを添加し、静置することにより、液−液界面にC60ナノウィスカを形成させ、更に静置することで同沈殿を得る方法が挙げられる。また、例えばC60およびフラーレン誘導体の飽和トルエン溶液を作製し、上記と同様にイソプロピルアルコールを添加し、静置することでC60およびフラーレン誘導体からなるフラーレンナノウィスカを得ることができる。
【0051】
本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子においては、光電変換層が、図1に示すように正孔輸送層4および電子輸送層5が各々一層からなる場合でもよく、図3に示すように、正孔輸送層4および電子輸送層5を各々複数層有する場合であってもよい。
【0052】
また、電子輸送層および正孔輸送層の膜厚は特に限定はされないが、具体的には、各々の膜厚が0.1nm〜1500nmの範囲内、その中でも、5nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。電子輸送層および正孔輸送層の膜厚が上記範囲よりも厚い場合には、電子輸送層および正孔輸送層における膜抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、電子輸送層および正孔輸送層の膜厚が上記範囲よりも薄い場合、第1電極層と第2電極層との間で短絡が生じる可能性があるからである。
【0053】
上記電子輸送層または正孔輸送層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定はされない。例えば電子輸送層または正孔輸送層の形成材料を溶媒に溶解または分散させた光電変換層形成用塗工液を使用する湿式塗工法等がある。このような湿式塗工法としては、具体的に、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、インクジェット法等を挙げることができる。その中でも、スピンコート法またはダイコート法であることが好ましい。これらの方法は、光電変換層を上記範囲内の膜厚となるように精度良く形成することができるからである。なお、上記方法等で使用する光電変換層形成用塗工液の一例として、後述する「B.光電変換層形成用塗工液」で説明するものを挙げることができる。
【0054】
(2)基板
次に、本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子に用いられる基板について説明する。本態様において、基板は、透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、例えば、この基板側が光の受光面となる場合には、透明基板であることが好ましい。この透明基板としては、特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
【0055】
本態様においては、上記の中でも基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等の種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
【0056】
(3)第1電極層
次に、本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子に用いられる第1電極層について説明する。本態様において、第1電極層は、上記基板上に形成されるものである。
【0057】
このような第1電極層を形成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定はされないが、光の照射方向や、後述する第2電極層を形成する材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば、第2電極層を形成する材料を、仕事関数が低い材料とした場合には、第1電極層を形成する材料は、仕事関数が高い材料が好ましい。仕事関数が高い材料としては、例えばAu、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。また、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の基板を受光面とした場合には、第1電極層を透明電極とすることが好ましく、この場合、一般的に透明電極として使用されているものを用いることができる。具体的には、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。
【0058】
本態様おいては、第1電極層の全光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の基板を受光面とした場合、第1電極層の全光線透過率が上記範囲であることにより、第1電極層では光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
【0059】
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験株式会社製 全光線透過率装置(COLOUR S&M COMPUTER MODEL SM−C:型番)を用いて測定した値である。
【0060】
また、本態様においては、第1電極層のシート抵抗が20Ω/□以下、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きい場合、発生した光電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
【0061】
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0062】
上記第1電極層は、単層からなる場合であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用い、積層されてなる場合であってもよい。このような第1電極層の膜厚としては、単層からなる第1電極層の場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1〜500nmの範囲内、その中でも、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第1電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した光電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚い場合には、全光線透過率が低下し、エネルギー変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0063】
また、上記第1電極層は、基板上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0064】
さらに、上記第1電極層の形状としては、フラットな形状であってもよく、テクスチャー構造、ピラミッド構造、波型構造、くし型構造、ナノピロー構造等の凹凸状であってもよい。例えば第1電極層の形状が凹凸状である場合は、入射光が第1電極層の凹凸形状により散乱されるため、後述する光電変換層は光を多く取り込むことができる。これにより、光を有効に利用することができるため、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0065】
上記第1電極層の形成方法としては、一般に用いられている方法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法、およびITO微粒子を含有する塗工液等を塗布する湿式塗工法を挙げることができる。また、第1電極層をパターン状に形成する場合のパターニング方法としては、第1電極層を所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定はされないが、具体的には、フォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
【0066】
(4)第2電極層
本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子に用いられる第2電極層について説明する。本態様のバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子における第2電極層は、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である。
【0067】
このような第2電極層を形成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定はされないが、光の照射方向や、上記第1電極層を形成する材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば、上記基板を受光面とした場合には、上記第1電極層が透明電極となり、このような場合には、第2電極層は透明でなくともよい。また、第1電極層を仕事関数が高い材料を用いて形成した場合には、第2電極層は仕事関数が低い材料を用いて形成することが好ましく、具体的に仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。また、第2電極層は、単層からなる場合であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用い、積層されてなる場合であってもよい。
【0068】
上記第2電極層の膜厚は、第2電極層が単層からなる場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第2電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した光電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚い場合には光の透過率が低下し、光の変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0069】
また、上記第2電極層は、光電変換層上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0070】
このような第2電極層の形成方法としては、一般に使用される方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法、およびAg等の金属コロイドを含有する金属ペースト等を用いて塗布する湿式塗工法を挙げることができる。
【0071】
また、第2電極層をパターン状に形成する場合のパターニング方法としては、第2電極層を所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定はされないが、具体的には、フォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
【0072】
2.バルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子
次に、本発明の有機薄膜太陽電池素子がバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子である態様について説明する。
【0073】
本態様のバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、電子正孔輸送層である光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、上記電子正孔輸送層がフラーレンナノウィスカを含有することを特徴とするものである。
【0074】
本態様のバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子について、図面を用いて説明する。図2は、本態様のバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子の一例を示す概略断面図である。図2に示すように、本態様のバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子は、基板1と、上記基板1上に形成された第1電極層2と、上記第1電極層2上に形成され、電子正孔輸送層6である光電変換層3と、上記光電変換層3上に形成され、上記第1電極層2と対向する電極である第2電極層7とを有するものである。
本態様のバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子は、光電変換層3として、電子受容性および電子供与性の両方の機能を有する電子正孔輸送層6とし、電子正孔輸送層内で形成されるpn接合を利用して光電荷分離を生じさせ、電流を得るものである。
【0075】
本態様においては、電子正孔輸送層中のフラーレンナノウィスカがn型有機半導体として効率よく電子輸送に寄与することにより、電子輸送性が向上し、高いエネルギー変換効率を有する有機薄膜太陽電池素子が得られるのである。
【0076】
次に、このようなバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子の各構成について説明する。なお、本態様で用いられる基板、第1電極層、第2電極層に関しては、上述した「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本態様において最も特徴のある光電変換層について説明する。
【0077】
(1)光電変換層
本態様における光電変換層は、上記第1電極層上に形成されるものであり、電子受容性および電子供与性の両方の機能を有する電子正孔輸送層から構成されるものである。
【0078】
本態様においては、上記電子正孔輸送層がp型有機半導体およびn型有機半導体を有し、かつn型有機半導体として少なくともフラーレンナノウィスカを用いることにより、電子輸送性が向上し、高いエネルギー変換効率を有する有機薄膜太陽電池素子が得られるのである。
以下、このような光電変換層を構成する電子正孔輸送層について説明する。
【0079】
本態様の電子正孔輸送層を構成する有機材料として、p型有機半導体、およびフラーレンナノウィスカ、さらには、必要に応じてフラーレンナノウィスカ以外のn型有機半導体等を使用することができるが、「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載した有機材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
本態様において、上述した電子正孔輸送層に用いるp型有機半導体とn型有機半導体の
混合比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものではないが、具体的には、重量比で、p型有機半導体:n型有機半導体=5:1〜5:6の範囲内にあることが好ましい。なお、上記電子正孔輸送層における有機材料の混合比としては、各材料の種類や、第1電極層および第2電極層との組み合わせによっても異なるため、用いる材料により最適な混合比に適宜調整することが好ましい。
【0081】
また、本態様における電子正孔輸送層は、2種類以上のp型有機半導体を有していてもよく、2種類以上のn型有機半導体を有していてもよい。n型有機半導体の組み合わせとしては、2種類以上のフラーレンナノウィスカであってもよく、フラーレンナノウィスカと、その他のn型有機半導体との組み合わせであってもよい。
【0082】
また、本態様において、上記電子正孔輸送層中に上記フラーレンナノウィスカが、10重量%〜70重量%の範囲内、中でも30重量%〜50重量%の範囲内で含まれることが好ましい。上記フラーレンナノウィスカを上記濃度範囲に含有させることにより、良好な電子輸送性を持った光電変換層を形成することができるからである。
【0083】
このような電子正孔輸送層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型において採用されている膜厚であれば特に限定はされないが、具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内、その中でも、10nm〜600nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より厚い場合には、電子正孔輸送層における膜抵抗が高くなる可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より薄い場合には、第1電極層および第2電極層に短絡が生じる可能性があるからである。
【0084】
また、電子正孔輸送層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定はされないが、例えば上述した電子正孔輸送層の形成材料を溶媒に溶解または分散させた光電変換層形成用塗工液を使用する湿式塗工法等がある。このような湿式塗工法としては、具体的に、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、インクジェット法等を挙げることができる。その中でも、スピンコート法またはダイコート法であることが好ましい。これらの方法は、光電変換層を上記範囲内の膜厚となるように精度良く形成することができるからである。なお、上記方法等で使用する光電変換層形成用塗工液の一例として、後述する「B.光電変換層形成用塗工液」で説明するものを挙げることができる。
また、電子正孔輸送層における層の数は、一層であってもよく、複数層であってもよい。
【0085】
3.その他
本発明の有機薄膜太陽電池素子は、素子内部に正孔取出し層および電子取出し層を形成していてもよい。これらの層を形成することによって、正孔および電子が電極にスムーズに移動することができ、エネルギー変換効率を向上させることができるからである。また、本発明の有機薄膜太陽電池素子の光電変換層は、複数の層構成を有していてもよい。光電変換層が複数の層構成を有することによって、さらなるエネルギー変換効率の向上が望めるからである。
以下、正孔取出し層、電子取出し層、および光電変換層の層構成について説明する。
【0086】
(正孔取出し層)
本発明の有機薄膜太陽電池素子は、上記第1電極層と上記光電変換層との間に正孔取出し層が形成されていてもよい。ここで、正孔取出し層とは、上記光電変換層から上記第1電極層への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から第1電極層への正孔取出し効率が高められるため、エネルギー変換効率を向上させることが可能となる。
【0087】
このような正孔取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から第1電極層への正孔の取出しを安定化させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(電子取出し層)
本発明の有機薄膜太陽電池素子は、上記光電変換層と上記第2電極層との間に電子取出し層が形成されていてもよい。ここで、電子取出し層とは、上記光電変換層から上記第2電極層への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から第2電極層への電子取出し効率が高められるため、エネルギー変換効率を向上させることが可能となる。
【0089】
このような電子取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から第2電極層への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定はされない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適な材料としては、BCP(バソキュプロイン)または、Bphen(バソフェナントロン)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
【0090】
(光電変換層の層構成)
本発明の有機薄膜太陽電池素子は、上記第1電極層および上記第2電極層間に光電変換層が配置されているものであれば特に限定はされない。例えば、光電変換層を単層のみならず、複数層設ける場合であってもよく、また、光電変換層を複数層形成した場合には、光電変換層間に、別個電極層を設ける場合であってもよい。具体的には、図4に示すように、2層の光電変換層3間に別個、第2電極層7を形成するような場合である。
【0091】
B.光電変換層形成用塗工液
次に本発明の光電変換層形成用塗工液について説明する。
本発明の光電変換層形成用塗工液は、基板と、上記記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、上記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子に用いられる上記光電変換層を形成するための光電変換層形成用塗工液であって、溶媒と、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカを有することを特徴とするものである。
【0092】
本発明においては、光電変換層形成用塗工液が、フラーレンナノウィスカを有することにより、優れた電子輸送性を有する光電変換層を得ることができる。
【0093】
本発明の光電変換層形成用塗工液は、溶媒と、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカを有するものであるが、形成する光電変換層の構成により2つの態様に分けることができる。すなわち、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子の光電変換層を構成する正孔輸送層および電子輸送層のうち、電子受容体として機能する電子輸送層を形成する塗工液である態様と、バルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子の光電変換層を構成する電子正孔輸送層を形成する塗工液である態様とに分けることができる。
以下、それぞれの態様について詳細に説明する。
【0094】
1.電子輸送層形成に用いる光電変換層形成用塗工液
本態様における光電変換層形成用塗工液は、溶媒および上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカを有することを特徴とするものである。なお、電子輸送層を形成することを目的としているため、p型有機半導体は通常含有されない。
以下、本態様における光電変換層形成用塗工液の構成成分について詳細に説明する。
【0095】
(1)溶媒
本態様に用いられる溶媒は、フラーレンナノウィスカを分散させることができる溶媒であれば特に限定されるものではないが、具体的には、クロロホルム、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、THF、キシレン等が挙げられる。中でも、ジクロロベンゼンを使用することが好ましい。
【0096】
(2)フラーレンナノウィスカ
本態様におけるフラーレンナノウィスカは、上述した「A.有機薄膜太陽電池素子」の「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載され、上記溶媒に分散するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、C60ナノウィスカ、C70ナノウィスカ、(C60+C70)ナノウィスカ、(C60+PCBM)ナノウィスカ、(C60+金属内包フラーレン)ナノウィスカ等のフラーレンナノウィスカが挙げられる。なお、ナノウィスカの表記方法として、例えば(C60+C70)ナノウィスカとは、C60およびC70からなるナノウィスカであることを意味するものとする。
【0097】
(3)フラーレンナノウィスカ含有量
また、本態様においては、光電変換層形成用塗工液の固形分中に上記フラーレンナノウィスカが、70重量%〜100重量%の範囲内、中でも90重量%〜100重量%の範囲内で含まれることが好ましい。上記範囲内に上記フラーレンナノウィスカが含まれることによって、良好な電子輸送性を持った電子輸送層を得ることができるからである。
【0098】
また、本態様における光電変換層形成用塗工液は、上記溶媒に分散することができれば、2種類以上のフラーレンナノウィスカを有していてもよく、フラーレンナノウィスカと、その他のn型有機半導体とを有していてもよい。その他のn型有機半導体としては、上述した「A.有機薄膜太陽電池素子」の「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載されたものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
(3)光電変換層形成用塗工液の製造方法
次に、本態様における光電変換層形成用塗工液の製造方法について説明する。本態様における光電変換層形成用塗工液の製造方法としては、少なくとも上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカを有し、かつp型有機半導体を通常含有しない光電変換層形成用塗工液を製造する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、所定量のフラーレンナノウィスカ及びn型有機半導体を固体粉末として準備し、これらをまとめて、あるいは別々に選択された溶媒へ添加し、必要に応じて、加熱・撹拌して充分に溶解させた後、別々であれば混合して塗工液とする工程を行うことによって、光電変換層形成用塗工液を得ることができる。
【0100】
また、本態様における光電変換層形成用塗工液の物性としては、充分に溶解されており、1次粒子としても最小単位を取っている状態が好ましい。
【0101】
2.電子正孔輸送層形成に用いる光電変換層形成用塗工液
本態様における光電変換層形成用塗工液は、溶媒、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカおよびp型有機半導体を有することを特徴とするものである。
以下、本態様における光電変換層形成用塗工液の構成成分について詳細に説明する。
【0102】
本態様に用いられる溶媒およびフラーレンナノウィスカは、上述した「B.光電変換層形成用塗工液」の「1.電子輸送層形成に用いられる光電変換層形成用塗工液」に記載した材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様に用いられるp型有機半導体についても、上述した「A.有機薄膜太陽電池素子」の「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載した材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
(1)フラーレンナノウィスカ含有量
また、本態様における光電変換層形成用塗工液の固形分中に上記フラーレンナノウィスカが、10重量%〜70重量%の範囲内、中でも30重量%〜50重量%の範囲内で含まれることが好ましい。上記範囲内に上記フラーレンナノウィスカが含まれることによって、良好な電子輸送性を持った電子正孔輸送層を得ることができるからである。
【0104】
(2)p型およびn型有機半導体混合比率
また、本態様における光電変換層形成用塗工液に用いるp型有機半導体とn型有機半導体の混合比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものではないが、例えば、重量比で、p型有機半導体:n型有機半導体=5:1〜5:6の範囲内であることが好ましい。
【0105】
また、本態様における光電変換層形成用塗工液は、上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカおよびp型有機半導体を少なくとも有していれば、2種類以上のp型有機半導体を有していてもよく、2種類以上のn型有機半導体を有していてもよい。フラーレンナノウィスカ以外のn型有機半導体は、上述した「A.有機薄膜太陽電池素子」の「1.バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子」に記載されたものと同じであるので、ここでの説明は省略する。なお、上記電子正孔輸送層における有機材料の混合比としては、各材料の種類や、第1電極層および第2電極層との組み合わせによっても異なるため、用いる材料により最適な混合比に適宜調整することが好ましい。
【0106】
(3)光電変換層形成用塗工液の製造方法
次に、本態様における光電変換層形成用塗工液の製造方法について説明する。本態様における光電変換層形成用塗工液の製造方法としては、少なくとも上記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカおよびp型有機半導体を有する光電変換層形成用塗工液を製造する方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記「1.電子輸送層形成に用いる光電変換層形成用塗工液」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本態様における光電変換層形成用塗工液の物性としては、充分に溶解されており、1次粒子としても最小単位を取っている状態が好ましい。
【0107】
C.太陽電池モジュール
本発明における有機薄膜電池素子を使用した太陽電池モジュールについて説明する。一般的に太陽電池モジュールは透明前面基板、充填材シート、太陽電池素子、充填材シート、裏面保護シートを順次積層した構造等を有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0108】
(透明前面基板)
本発明の有機薄膜太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいて、透明前面基板は、モジュール内部を風雨や外部衝撃、火災などから保護し、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保する機能を有するものである。
【0109】
このような透明前面基板としては、太陽光の透過性、電気絶縁性を有し、かつ、機械的もしくは化学的ないし物理的強度に優れているものであれば特に限定されるものではなく、一般に太陽電池モジュール用の透明前面基板として用いられている公知のものを使用することができる。例えば、ガラス板、フッ素系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シート、またはポリエステル系樹脂シートなどが挙げられる。
【0110】
(充填材シート)
本発明の有機薄膜太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいて、充填材シートは、有機薄膜太陽電池素子の両電極層に設置され、有機薄膜太陽電池素子を封止するために設けられる層である。このような充填材層としては、一般に太陽電池の充填材層として使用されているものであればよく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。
【0111】
(裏面保護シート)
本発明の有機薄膜太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいて、裏面保護シートは、太陽電池モジュール裏面を外界から保護する耐候性フィルムである。裏面保護シートの材質としては、上記目的を達成することができる限り限定されるものではないが、例えばアルミニウム等の金属板もしくは金属箔、フッ素系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、または耐候性フィルムとバリアフィルムとをラミネート積層した複合シートなどが挙げられる。
【0112】
(バリア層)
本発明の有機薄膜太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいて、バリア層が素子の基板表面、または上記裏面保護シートの表面に形成されていてもよい。また、上記基板または上記裏面保護シートが複数層からなる場合は、各層の間にバリア層が形成されていてもよい。本態様に用いられるバリア層は、透明な層であり、かつ外部からの酸素や水蒸気の侵入を妨げ、本発明の有機薄膜太陽電池素子を保護するために設けられる層である。本態様に用いられるバリア層は、酸素透過率が、5cc/m・day以下であり、中でも10−1cc/m・day以下であることが好ましい。また水蒸気透過率は、1g/m・day以下であり、中でも10−1g/m・day以下であることが好ましい。
【0113】
(その他の構成部材)
本発明の有機薄膜太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいて、上記のほか、太陽光の吸収性、補強、その他の目的のもとに、さらに他の部材を任意に加えることもできる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0115】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0116】
[実施例1]
(フラーレンナノウィスカの合成)
フラーレンC60をトルエン溶液中に溶解させ、C60の飽和トルエン溶液を作製した。この飽和トルエン溶液にIPA(イソプロピルアルコール)を添加し、静置することによって、液−液界面にC60ナノウィスカを形成させた。更に静置することによりC60ナノウィスカの沈殿を得た。
(第1電極層の形成)
超バリア性フィルム基板の表面にSiOによるバリア層を形成し、このバリア層上に透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:15Ω/□)をスパッタリング法によりテクスチャー構造となるように成膜し、パターニングした。次いで、上記ITO膜付基板をアセトンで洗浄し、IPAを用いて洗浄して、第1電極層を形成した。
【0117】
(正孔取出し層の形成)
上記第1電極層上に、PEDOT:PSS(ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート水分散液)(Bayer社製、品名BaytronP)をスピンコートし、150℃で30分間乾燥させ、膜厚40nmの正孔取出し層を形成した。
【0118】
(光電変換層の形成)
電子正孔輸送層として、ポリフェニレンビニレン誘導体(MEH−PPV)と、上記C60ナノウィスカとをクロロホルム溶媒中に、重量比が1:4となり、濃度が0.5重量%となるように溶解させ、この溶液を振揺撹拌器にて光電変換層形成用塗工液を調製した。この塗工液を、上記正孔取出し層上にスピンコートし、110℃で10分間乾燥させ、膜厚100nmの電子正孔輸送層を形成した。
【0119】
さらに、上記電子正孔輸送層を形成した基板を150℃の条件で60分アニール処理し、塗工成分のパッキングや配向性を向上させた。
【0120】
(第2電極層の形成)
上記電子正孔輸送層上に、Caを蒸着法により10nmの膜厚となるように成膜し、さらにその上にAlを蒸着法により50nmの膜厚となるように成膜して、第2電極層を形成した。
【0121】
最後に、裏面保護シートおよび接着性封止材により、上記第2電極層側から封止して、バルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池モジュールを作製した。
【0122】
[実施例2]
(フラーレンナノウィスカの合成)
フラーレン誘導体PCBM([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)をトルエン溶液中に溶解させ、PCBMの飽和トルエン溶液を作製した。この飽和トルエン溶液にIPA(イソプロピルアルコール)を添加し、静置することによって、液−液界面にPCBMナノウィスカを形成させた。更に静置することによりPCBMナノウィスカの沈殿を得た。
【0123】
(有機薄膜太陽電池モジュールの作製)
フラーレンナノウィスカとして、上記方法で合成したPCBMナノウィスカを使用した以外は、上記実施例1と同様にしてバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池モジュールを作製した。
【0124】
[実施例3]
(フラーレンナノウィスカの合成)
フラーレンC60およびフラーレン誘導体PCBM([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)を、重量比10:1の割合でトルエン溶液中に溶解させ、飽和トルエン溶液を作製した。この飽和トルエン溶液にIPA(イソプロピルアルコール)を添加し、静置することによって、液−液界面に(C60+PCBM)ナノウィスカを形成させた。更に静置することにより、(C60+PCBM)ナノウィスカの沈殿を得た。
【0125】
(有機薄膜太陽電池モジュールの作製)
フラーレンナノウィスカとして、上記方法で合成した(C60+PCBM)ナノウィスカを使用した以外は、上記実施例1と同様にしてバルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池モジュールを作製した。
【0126】
[評価]
本実施例の評価として、フラーレンナノウィスカの電子輸送性の評価、およびこれらを用いて作製した有機薄膜太陽電池素子のエネルギー変換効率の評価を行なった。
キャリアの輸送速度の評価方法としては、基準となるSiウエハ上へ該有機薄膜を所定膜厚で形成し、さらにその上に評価用電極として通常はAu電極を形成し、FETを形成することで評価した。
また、上記エネルギー変換効率は、AM1.5、擬似太陽光(100mW/cm)を照射光源として有機薄膜太陽電池素子に照射し、ソースメジャーユニット(HP社製、HP4100)にて電流電圧特性を測定することによって求めた。評価結果を下記表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1より明らかなように、フラーレンナノウィスカの電子輸送性は、いずれの場合も良好であることがわかる。また同様に、エネルギー変換効率ηに関してもフラーレンナノウィスカを使用することにより良好な結果が得られた。このことから、フラーレンナノウィスカは、優れたn型有機半導体であり、エネルギー変換効率向上の観点から見て、非常に有用であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池素子の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜太陽電池素子の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機薄膜太陽電池素子の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機薄膜太陽電池素子の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1 … 基板
2 … 第1電極層
3 … 光電変換層
4 … 正孔輸送層
5 … 電子輸送層
6 … 電子正孔輸送層
7 … 第2電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層を有する光電変換層と、前記光電変換層上に形成され、前記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、
前記電子輸送層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とする有機薄膜太陽電池素子。
【請求項2】
基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、電子正孔輸送層である光電変換層と、前記光電変換層上に形成され、前記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子であって、
前記電子正孔輸送層が、フラーレンナノウィスカを含有することを特徴とする有機薄膜太陽電池素子。
【請求項3】
前記フラーレンナノウィスカが、フラーレンC(n=60以上)、前記フラーレンC(n=60以上)の誘導体、および前記フラーレンC(n=60以上)もしくは前記フラーレンC(n=60以上)の誘導体を骨格とし炭素ゲージ内に金属原子を内包した金属内包フラーレン、からなる群から選択される少なくとも1つの化合物から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項4】
前記フラーレンC(n=60以上)が、C60またはC70であることを特徴する請求項3に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項5】
前記フラーレンC(n=60以上)の誘導体が、前記フラーレンC(n=60以上)の水素付加体、臭素付加体、アルキル鎖付加体、水酸基付加体、アミノ基付加体、シアノ基付加体、フェニル基付加体、およびPCMB([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)からなる群から選択される化合物であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の有機薄膜太陽電池素子。
【請求項6】
基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、正孔輸送層および電子輸送層を有する光電変換層と、前記光電変換層上に形成され、前記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子に用いられる前記電子輸送層を形成するための光電変換層形成用塗工液であって、
溶媒と、前記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカとを有することを特徴とする光電変換層形成用塗工液。
【請求項7】
基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、電子正孔輸送層である光電変換層と、前記光電変換層上に形成され、前記第1電極層と対向する電極である第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池素子に用いられる前記電子正孔輸送層を形成するための光電変換層形成用塗工液であって、
溶媒と、前記溶媒に分散したフラーレンナノウィスカおよびp型有機半導体とを有することを特徴とする光電変換層形成用塗工液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−91575(P2008−91575A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270067(P2006−270067)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】