説明

有機質廃棄物の発酵処理方法及び発酵処理装置

【課題】有機質廃棄物(汚泥、畜糞等)の発酵処理において、高温発酵の効率化並びに発酵終了物の低水分化を実現して後処理作業(乾燥工程)を容易にし、また大量処理を可能とする。
【解決手段】副資材として脱水製紙汚泥と裁断紙片等を混用して、高温発酵処理を効率的に行うと共に、第一発酵室1で発酵対象物を、所定期間低酸素高温発酵処理した後、前記処理後発酵物を、順次第二発酵室2へ攪拌移送して、攪拌によって解された発酵物内からの水分の水蒸気放出を行うと共に、第二発酵室内2で所定期間脱水熟成発酵処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水の有機質汚泥等の有機性廃棄物の発酵処理方法、並びに前記発酵処理方法に使用する発酵処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業からの有機性廃棄物である汚泥等は、例えば食品有機質汚泥のように水分が80%以上であるが、高タンパク質並びに炭水化物に富むが、発酵処理により肥料化すると、廃棄物の有効利用が図られる。このため従前より所定の条件下で発酵させてコンポスト化を実現することが種々提案されている。
【0003】
特に有機質汚泥の発酵処理手段として、80〜90%程度の水分含有の有機質汚泥に対して、約5%重量比程度の紙の細長裁断体を加え、紙の細長裁断体の攪乱状態での微小空間確保によって、汚泥の空気接触面積を拡大し、好気発酵可能とし発酵処理する手段が知られている(特公平7−91140号公報他)。
【0004】
前記細長裁断紙を使用して汚泥発酵処理においては、食品産業廃棄汚泥にしばしば見受けられる高い脂質を含有している汚泥の場合に、混合した裁断古紙が脂肪分を吸収し互いに密着し、あたかも一層の膜を形成するようになり、自由な空気の流通を妨げ、発酵を著しく遅延させ、且つ一部は嫌気発酵となってしまうため、良好な発酵処理が比較的困難であった。
【0005】
また汚泥の脱水工程(ケーキ化)から発酵処理工程への移行に際して、紙の細裁断片を攪乱状態にして使用する手段では、紙攪乱体に汚泥を少しずつ加えながらの攪拌作業や、逆に攪拌している状態を継続している汚泥に、細裁断片の攪乱体を加える必要があり、発酵工程開始時の作業が非常に煩雑である。即ち単に紙の裁断片を脱水汚泥(汚泥ケーキ)に混入したとしても、紙片は直ぐに吸水状態となり、汚泥内での空気流通路を形成せずに、好気発酵とならない。更に紙の細長裁断片は、攪乱作業時や汚泥混入作業に際して、軽量のために直ぐに飛散し、種々機器への付着侵入等の問題があり、発酵自動化(水分調整剤投入、発酵装置への搬入)に際しての障害要因となるなどの課題を有していた。
【0006】
そこで紙製ペレット体を採用すると、汚泥への混入作業等の発酵自動化に対応でき、且つ水分調整も容易であると共に、高脂質含有汚泥に対しても効果的な発酵がなされ、且つ発酵効率も良いことを知見し、2〜5mm径・2〜10mm長の紙製ペレット体とした水分調整材を混合して水分調整を行い、前記混合物に所定の空気供給を行いながら好気発酵させて処理する手段を、先に提案した(特許文献1:特開2002−263622号公報)。
【0007】
また前記の古紙裁断片や紙製ペレット体に変えて、脱水乾燥して水分10%程度とした製紙汚泥を採用し、処理対象物(有機質汚泥、畜糞、生ごみ等)に前記脱水製紙汚泥を適宜量混合撹拌し、前記混合物(発酵対象物)を、底方からの空気供給が可能で、且つ所定の断熱構造を備えた密閉型発酵容器内に収納し、容器底方からの大量の空気供給を行うと共に、容器上方から強制排気を行い、混合物を好気発酵させて処理する手段を提案した(特許文献2:特開2006−223976号公報)。
【0008】
更に前記特許文献1に開示されている発酵処理装置は、断熱構造の発酵槽に密閉蓋体を被冠し、発酵槽1の内部には、通気口を多数穿設した二重底となる内底部を設け、内底部の下方空間に、送風ブロワーを接続し、蓋体に排気口並びに排気口に接続した排気ブロワーを付設し、更に内底面上に攪拌機構を設けたもので、必要に応じて攪拌作動を行いながら発酵処理を行うものである。
【0009】
また特許文献2に開示されている発酵装置は、前記特許文献1記載の装置と基本的には同一であるが、非攪拌方式で、特に送風ブロワーによる送風量より排気ブロワーによる排気量を多くして発酵槽内を負圧状態として、発酵処理するようにしたものである。更に排気ブロワーに連続して冷却部(結露装置)、気水分離部(結露水貯留槽)、脱臭部を順次設けてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−263622号公報。
【特許文献2】特開2006−223976号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
含水率の高い有機質廃棄物(処理対象物)の発酵処理に際して、副資材(発酵促進資材)に古紙裁断片、紙ペレット、脱水製紙汚泥の何れを採用しても、高温菌(60℃以上で活発に働く菌)による高温発酵処理(60℃以上)を行い、高い温度維持によって水分の蒸発を促進して、短日数による処理対象物のコンポスト化(有機質分解並びに低含水分化)を図ることが望ましい。
【0012】
前記高温菌は低酸素状態(酸素濃度10〜13%)で活発に活動するが、大気に接触して酸素濃度が高まると、その活動が低下して、低中温菌が活発に活動することになり、低中温菌による発酵が進行し、適宜時間経過後に再度高温菌の活動が活発になって高温発酵が進行することになる。
【0013】
前記の高温発酵において、例えば処理対象物が含水汚泥(脱水ケーキ)の場合、発酵対象物は発酵の進行と同時に自重による圧密状態となり、発酵槽内において槽内壁面に密着したり、互いに結合して高温高水分を内部汚泥に抱え込むことになり(以下前記の現象を「ブリッジ化」という)、全体として送風と排気のみによる発酵処理における低水分化の阻害要因となっている。
【0014】
また単槽方式の発酵装置を採用した場合に、発酵対象物は、内部に副資材で形成した微細空隙を有するものの全体が塊状となり、発酵槽から取り出す発酵処理終了物の含有水分は60〜75%前後であり、処理対象物に対する容積比も70〜80%前後となり、発酵処理終了物を肥料として使用する場合には、更に自然乾燥(二次発酵も含める)や強制乾燥して低水分化しなければならなく、その乾燥負担が著しく大きい。
【0015】
更に前記した特許文献2に開示されているように、発酵槽内への空気供給を送風ブロワーと排気ブロワーの空気量を制御して、一定の負圧状態(実質的に低酸素状態といえる)を維持しながら発酵処理する場合には、必ずしも処理槽内における空気供給を受けて常時新鮮な大気と接触しているような部位は高温処理に至らず、全体の発酵処理から見た場合、当該個所の脱水作用が不十分であるといえる。
【0016】
また発酵槽を単体とした場合に、発酵対象物を発酵槽に投入し、所定日数発酵処理した後、これを取り出すという一定の期間を要するサイクルで処理を行うことになり、処理量は処理槽の容積によって決まり、大型化した場合の施設コストが高くなるので、大型化(大量処理)に適しない。
【0017】
そこで本発明は、高温発酵処理に適する所定の副資材を採用した有機質廃棄物の発酵処理方法並びに前記処理方法を実施する発酵処理装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明(請求項1)に係る有機質廃棄物の発酵処理方法は、処理対象物となる高含水率の有機質廃棄物に、所定量の脱水製紙汚泥、及び所定量の裁断紙片或いは紙製ペレットからなる副資材を加え混合した発酵対象物を、所定期間低酸素状態下で高温発酵処理を行ってなることを特徴とするものである。
【0019】
有機質廃棄物(処理対象物:食品汚泥:含水率86%)に、副資材を20重量%混合して、低酸素状態(負圧状態)で発酵処理を行う際に、副資材として裁断紙片(シュレッダーの裁断紙片:代替として紙製ペレットでも同様)を採用する場合(図1のa,b)と、脱水製紙汚泥(脱水パルプスラッジ)を採用する場合(図1c)と、脱水製紙汚泥と裁断紙片を混合して採用した場合(図1d)の発酵試験を行った結果が図1である。
【0020】
この結果から副資材として脱水製紙汚泥を採用した場合は、微細なセルロースを多量に含み、当該セルロースに高温菌の種菌も多量に付着しているので、高温菌のスターターとしての機能を備えていることが認められる。また脱水製紙汚泥は、無機物を多量に含み相応の重量を備えることになり、この重量によって発酵途中に発酵物のブリッジ化が生じた際、自重並びに汚泥結合力の弱体化によって、ブリッジを崩壊させる。更にコンポスト化した後においても、無機物の含有による肥料効果の増大並びに自己の重量による施肥時の土中安定性を得ることができる。
【0021】
他方裁断紙片(以下「紙製ペレット」の場合も含む)を採用した場合には、高温発酵に進行するには相応の時間を要することが認められるが、高温発酵継続期間が長くなる。更に裁断紙片には、発酵槽内において、裁断紙片が処理対象物に混ざり、微細空隙を形成して処理対象物同士の結合を阻害することで、発酵物のブリッジ化を防止し、当然前記の微細空隙形成は、発酵処理の主体となる微生物の増殖環境を整え、脱水製紙汚泥に問題となる臭気吸収機能も備えている。勿論前記空隙形成の阻害要因となる処理対象物の油脂成分(粘性物質)は、これを吸着し、粘性が解除され微細空隙が確実に形成される。
【0022】
従って高温発酵処理を速やかに行うために、副資材として脱水製紙汚泥のみを採用した場合に比較して、脱水製紙汚泥と裁断紙片を一緒に採用することで、速やかな高温発酵への進行がなされると共に、脱水製紙汚泥のみを採用した場合の問題点(脱臭機能・微細空隙形成機能)を補完することになり、有機質廃棄物(処理対象物)の高温発酵処理がスムーズになされるものである。
【0023】
また本発明(請求項2,3)は、前記請求項1記載の発明を効率的に実施するための有機質廃棄物の発酵処理方法並びに発酵処理装置で、請求項2に係る有機質廃棄物の発酵処理方法は、適宜間隔で順次副資材を混合した発酵対象物を第一発酵室内に供給すると共に、前記第一発酵室で発酵対象物を、所定期間低酸素高温発酵処理し、第一発酵室内の前記処理後の発酵物を、順次第二発酵室への攪拌移送し、第二発酵室において前記攪拌によって解された発酵物内からの水分の水蒸気放出を行うと共に、第二発酵室内で所定期間脱水熟成発酵処理し、第二発酵室から排出室に移行させた後、発酵終了物を外部に取出す連続発酵処理を行うものである。
【0024】
また請求項3記載の発明に係る有機質廃棄物の発酵処理装置は、開閉蓋を備えた第一発酵室と、第一発酵室の下方に攪拌移送機構部を介して設けた第二発酵室と、排出部を備えると共に、第二発酵室の下方に移送機構部を介して設けた排出室と、開閉蓋に臨設して発酵対象物を第一発酵室に投入する供給機構部と、適宜な密閉構造とした第一発酵室及び第二発酵室内に給気を行う給気機構部と、第一発酵室及び第二発酵室内から排気を行う排気機構部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0025】
而して供給機構部で、請求項1記載の発明のとおり処理対象物(各種汚泥等の有機質廃棄物)に、所定量の脱水製紙汚泥及び裁断紙片或いは紙製ペレット(各資材も含水率15%程度)を加え混合した発酵対象物を、開閉蓋を開放して第一発酵室内に、所定の日数間隔(発酵の進行度によって定まる3〜4日毎或いは毎日)で供給する。
【0026】
第一発酵室では、密閉状態で所定量の空気を供給し、同時に供給空気量の10〜20%増の排気を行って、発酵対象物の好気高温発酵を行うものである。特に前記の高温発酵処理は、脱水製紙汚泥に含まれる各種菌体によって速やかに高温発酵に移行し、且つ順次の第二発酵室に移されるので、第一発酵室においての高温発酵処理は、給気機構部及び排気機構部の配置個所に関らず、発酵対象物が順次移動することで、発酵ムラが生じ難い。勿論前記の第一発酵室においては、副資材に特定資材を採用しているので、ブリッジ化も生じ難い。
【0027】
第一発酵室における第一発酵物(第一高温発酵終了物)は、順次の第二発酵室に移送されるもので、この移送に際して攪拌され塊状の第一発酵物は解されことになり、この解し(攪拌粉砕)によって第一発酵物の内部に抱え込まれていた水分が放出されることなり、第一発酵物の含有水分が著しく低下することになる。
【0028】
従って第二発酵室に貯められる第二発酵物は、移送攪拌で水分を放出し、更に第二発酵室でも発酵(第二高温発酵:熟成発酵)がなされ、高温による含有水分の放出がなされ、その含有水分は、約50%となり従前の単槽発酵方式(60〜80%)に比較して著しく低下することになる。これに伴って処理対象物の容積も35〜40%に減容される。
【0029】
そして第二発酵室で所定期間発酵処理を終了した発酵終了物は順次排出室に移送され、排出口から外部に取り出されるものである。
【0030】
また本発明(請求項4)に係る有機質廃棄物の発酵処理装置は、特に前記の発酵処理装置に、第一発酵室及び第二発酵室と連通する導入口を備え、密閉構造とした結露室と、結露室内に配置した低温部と、結露室底部に設けた液封構造の液溜まり部とで構成した液肥製造機構を付設したものである。
【0031】
第一発酵室及び第二発酵室で発生した大量の水蒸気は、導入口より結露室に入り込むと低温部と接触して結露し、結露した液体は液溜まり部に溜まる。特に結露室においては水蒸気の結露で室内圧力が低下するので、自然に導入口から水上が結露室に侵入するので、自然に液溜まり部に結露液体が溜まり、この結露液体は、肥効成分を含有しているので、液肥として使用できるものである。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり本発明の構成は上記のとおりで、処理対象物に混合する副資材に脱水製紙汚泥と裁断紙片等を混合することで、非攪拌好気発酵によって生じ易い発酵対象物のブリッジ化現象を防止すると共に、速やかな高温発酵を実現したものであり、更に多段式発酵方式を採用すると共に、次室への移送に際して攪拌することで塊状の発酵物を解し、内部に保留される水分を放出することで、含水率の低い発酵終了物を容易に得ることができたもので、その後の製品化に際しての乾燥負担を著しく減少させたものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の副資材の発酵比較実験の結果グラフ。
【図2】本発明の発酵処理装置の実施形態の模式説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した有機質廃棄物の発酵処理装置は、縦長多段の発酵槽本体に各機構部を組み込んで形成したもので、発酵槽は、内部を第一発酵室1と、第二発酵室2と、排出室3とを多段に形成したもので、第一発酵室1と第二発酵室2との間に攪拌移送機構4を設け、第二発酵室2と排出室3の間に移送機構5を介設したものである。
【0035】
更に発酵対象物Aを発酵槽本体の第一発酵室1に供給する供給機構部6と、発酵用空気を供給する給気機構部7と、発酵槽内からの排気を行う排気機構部8と、液肥製造機構部9とを付設してなるものである。
【0036】
発酵槽全体は、日量廃棄物処理が10トンであれば、4×5mの高さ6.5m程度で、最下層の排出室3からの発酵終了物の排出作業を考慮して全体を適宜高さに設置したものであり、第一発酵室1は上方部分に設けられたもので、内高3m程度で、上部に開閉蓋11を形成したものである。
【0037】
第二発酵室2は、第一発酵室1の下方に連続して形成されるもので内高2m程度としたものである。また排出室3は、ホッパー形状にして、ホッパー下端に開閉排出口31を設けたものである。
【0038】
攪拌移送機構4は、第一発酵室1と第二発酵室2との仕切りとなるもので、第一発酵室1の底面(第二発酵室の天井面)に透孔を穿ち、当該透孔にロータリーバルブ様に作用する攪拌羽根で形成したものである。
【0039】
移送機構5は、第二発酵室2と排出室3との間の仕切りとしたもので、前記攪拌移送機構4と同様の構造としたものである。
【0040】
供給機構部6は、発酵対象物Aを発酵槽内に投入するためのもので、外部より運び入れた発酵対象物Aを第一発酵室1の開閉蓋11まで移送し投入するように形成したものである。
【0041】
給気機構部7は、槽外に配置した送風ブロワー71と、前記送風ブロワー71と風量調整弁72を介して接続して発酵槽内に配置した給気管73からなり、給気管73は第一発酵室1及び第二発酵室2の底方個所と、第一発酵室1の中間部分に配置したものである。
【0042】
排気機構部8は、槽外に配置した排気ブロワー81と、前記排気ブロワー81と接続した脱臭部82と、脱臭部82と風量調整弁83を介して接続して発酵槽内に配置した排気管84からなり、排気管84は第一発酵室1及び第二発酵室2の天井近傍個所と、第一発酵室1の中間部分の給気管73の下方に配置したものである。
【0043】
液肥製造機構部9は、発酵槽本体に添えて形成すると共に、第一発酵室1及び第二発酵室2と連通する導入口91を備えて密閉構造とした結露室92と、結露室92の底部に設けた液封構造(トラップ構造)の液溜まり部93と、前記液溜まり部93から滞留する液肥Eを取り出す吸い上げポンプ94と、下端を地中に埋設して前記結露室92に内置させると共に、外周部に多数の吸熱フィンを設けたヒートパイプで形成した低温部95で構成される。
【0044】
次に前記した実施形態として示した発酵処理装置を使用しての本発明方法の実施形態について説明する。
【0045】
処理対象物は、各種汚泥(下水道汚泥、食品工場排水の曝気処理汚泥等の脱水ケーキ)、畜産廃棄物(蓄糞他)、食品残渣のミンチ物等の高含水有機質廃棄物であり、発酵対象物Aは、前記処理対象物に副資材を添加混合したしたものである。
【0046】
副資材は、脱水製紙汚泥(脱水パルプスラッジ:含水率15%程度)と裁断紙片(含水率15%程度:紙粉を顆粒状固めた紙製ペレットに置き換えることもできる)を採用するもので、例えば処理対象物850kgに脱水製紙汚泥100kg及び裁断紙片50kgを添加混合したり、或いは処理対象物800kgに脱水製紙汚泥150kg及び裁断紙片50kgを添加混合する等、発酵対象物Aの15〜20%となる程度混合し、発酵処理物Aの含水率が60〜80%程度に調整するものである。
【0047】
前記の発酵対象物Aは、毎日或いは数日間隔で、日量10トンを目安として供給機構部6で開閉蓋11の位置まで運び、開閉蓋11から第一発酵室1内に、順次投入する。
【0048】
従って第一発酵室1内には、ある程度の時間差(日差)で順次発酵対象物Aが積み重なるように投入されることになり、第一発酵室1内では、投入された発酵対象物Aの発酵が進行し、処理対象物が所定の微生物で分解されるものである。
【0049】
前記の発酵は、給気機構部7からの送風と、排気機構部8による排気による好気発酵であり、特に送風量は、処理対象物容積の1m当たり80リットル/分程度とし、排気量は同88リットル/分(静圧1500mmgap)として、発酵槽内部の酸素濃度が10〜12%を維持するように調整する。
【0050】
第一発酵室1における発酵は、特に副資材として脱水製紙汚泥を採用しているので、低酸素状態に移行するにしたがい高温菌が活発に活動し、高温発酵(60℃以上)がなされる。
【0051】
この発酵過程では、副資材である脱水製紙汚泥が、無機物を多量に含み相応の重量を備えると共に、汚泥結合力を弱体化するので、発酵物のブリッジ化が生じ難いし、また裁断紙片をも一緒に副資材として採用しているので、好気発酵に必要な微細空隙の確保がなされる共に、微細空隙の形成による発酵物のブリッジ化を防止しているので、高温発酵状態が継続する。
【0052】
そして第一発酵室1の最下方に位置する第一発酵物(第一高温発酵終了物)Bが、第二発酵室2に移送されると、上方の発酵対象物Aは、順次その自重で何ら支障なく下方に移動するので、投入された発酵処理物Aは、一定日数間高温発酵を行いながら下方に移動し、最下方に至った場合、第一発酵室1における発酵が終了となる。
【0053】
即ち第一発酵室1に投入された発酵物Aが、第一発酵室1における最下方位置に達すると、発酵対象物Aは、一定期間(2〜4日間)の高温発酵処理が終了し、第一高温発酵物(第一発酵物)Bとなる。
【0054】
この第一発酵物Bは、移送攪拌機構4で次の第二発酵室2へ移送されるもので、移送攪拌機構4の攪拌羽根を回転動作させると、ある程度の塊状態であった第一発酵物Bは、第二発酵室2に掻き落とされると同時に細かく攪拌粉砕されることになる。
【0055】
前記の攪拌粉砕(解し)によって塊の内部に抱え込まれていた水分が一気に第二発酵室2内に放出されることになり、第一発酵物Bの含有水分は著しく低下して、解された第二発酵物Cとなる。
【0056】
次に第二発酵室2に貯められる第二発酵物Cは、解れた状態で更に高温発酵処理(第二発酵処理:脱水熟成発酵処理)が継続することになり、順次な内部水分を放出し含水率を低減していく。
【0057】
そして第二発酵室2で所定期間(2〜4日間)高温発酵を継続するが、第二発酵室2においても順次第一発酵室1から第一発酵物Bを解して移送されてくるので、第二発酵室2において第二発酵処理を終了した発酵終了物Dは、第二発酵室2の最下方に位置することになるので、順次排出室3に移送する。
【0058】
排出室3に移送された発酵終了物Dは、含水率が50%程度で、容積が30%程度まで減容されているもので、適時発酵終了物Dを開閉排出口31から外部に取出し、更に乾燥造粒して、肥料として利用するものである。
【0059】
また第一発酵室1も含め、特に第二発酵室2で発生する大量の水蒸気(放出水分)は、当然に肥効成分を含有している。そこで発酵槽に付設した液肥製造機構部9で液肥Eを取り出すようにしたものである。
【0060】
液肥製造機構部9の構成は前記したとおりで、第一発酵室1及び第二発酵室2で発生した大量の水蒸気Fは、一部は排気管83から外部に放出されるが、一部は導入口91より結露室92に入り込む。
【0061】
そして結露室92内には、下端を地中に埋設したヒートパイプを備えた低温部95が配置されており、前記低温部95は一方端側で温度が高められても他方端側(地中埋設側)が冷却され、約地中温度に一定に保たれている。このため結露室92に入り込んだ水蒸気Fは、低温部95に接触して容易に結露することになる。
【0062】
結露液はそのまま滴下或いは流下して、液溜まり部93に溜まり、液肥Eとして採取されるものである。特に結露室92においては、水蒸気Fの結露で室内圧力が低下するので、自然に導入口91から水蒸気Fを含む発酵室1,2の雰囲気が自然に結露室92に侵入するので、自然に液溜まり部93に液肥Eが溜まるものである。
【0063】
以上のとおり本発明の実施形態について述べたが、本発明は有機室廃棄物の発酵処理において、副資材として脱水製紙汚泥と裁断紙片等を混用して、高温発酵処理を効率的に行うようにしたものであり、また前記の副資材を採用しての発酵処理を、多段式発酵槽を採用して、高温発酵の利点である高温による発酵物の脱水作用をより効果的に実現するように、高温発酵処理をなす第一発酵室から第二発酵室に移行する際に、発酵物を攪拌粉砕することが特徴であり、副資材の添加混合量や、発酵槽の具体的構造、発酵制御を行うための日数、給排気量の制御等は、処理対象物の性状に応じて適宜定められるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 第一発酵室
11 開閉蓋
2 第二発酵室
3 排出室
31 開閉排出口
4 攪拌移送機構
5 移送機構
6 供給機構部
7 給気機構部
71 送風ブロワー
72 風量調整弁
73 給気管
8 排気機構部
81 排気ブロワー
82 脱臭部
83 風量調整弁
84 排気管
9 液肥製造機構部
91 導入口
92 結露室
93 液溜まり部
94 吸い上げポンプ
95 低温部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物となる高含水率の有機質廃棄物に、所定量の脱水製紙汚泥、及び所定量の裁断紙片或いは紙製ペレットからなる副資材を加え混合した発酵対象物を、所定期間低酸素状態下で高温発酵処理を行ってなることを特徴とする有機質廃棄物の発酵処理方法。
【請求項2】
適宜間隔で順次副資材を混合した発酵対象物を第一発酵室内に供給すると共に、前記第一発酵室で発酵対象物を、所定期間低酸素高温発酵処理し、第一発酵室内の前記処理後の発酵物を、順次第二発酵室への攪拌移送し、第二発酵室において前記攪拌によって解された発酵物内からの水分の水蒸気放出を行うと共に、第二発酵室内で所定期間脱水熟成発酵処理し、第二発酵室から排出室に移行させた後、発酵終了物を外部に取出す連続発酵処理を行う請求項1記載の有機質廃棄物の発酵処理方法。
【請求項3】
開閉蓋を備えた第一発酵室と、第一発酵室の下方に攪拌移送機構部を介して設けた第二発酵室と、排出部を備えると共に、第二発酵室の下方に移送機構部を介して設けた排出室と、開閉蓋に臨設して発酵対象物を第一発酵室に投入する供給機構部と、第一発酵室及第二発酵室内に給気を行う給気機構部と、適宜な密閉構造とした第一発酵室及び第二発酵室内から排気を行う排気機構部とを備えてなることを特徴とする有機質廃棄物の発酵処理装置。
【請求項4】
第一発酵室及び第二発酵室と連通する導入口を備え、密閉構造とした結露室と、結露室内に配置した低温部と、結露室底部に設けた液封構造の液溜まり部とで構成した液肥製造機構部を付設してなる請求項3記載の有機質廃棄物の発酵処理装置。
【請求項5】
低温部を、下端を地中に埋設し、露出部に多数の吸熱フィンを設けたヒートパイプで形成してなる請求項4記載の有機質廃棄物の発酵処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−25147(P2011−25147A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173065(P2009−173065)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(500016763)
【Fターム(参考)】