説明

有機金属遷移金属化合物、触媒系、及びポリオレフィンの製造

本発明は、式(I):


(式中、R及びRは、同一か又は異なり、それぞれ1〜40個の炭素原子を有する置換又は非置換の有機基である)の化合物の非対称有機金属遷移金属化合物、本発明の少なくとも1種類の有機金属遷移金属化合物を含む触媒系、及び本発明の1種類の触媒系の存在下で少なくとも1種類のオレフィンを重合又は共重合することによってポリオレフィンを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機金属遷移金属化合物に関する。本発明は更に、本発明の少なくとも1種類の有機金属遷移金属化合物を含む触媒系、及び本発明の少なくとも1種類の触媒系の存在下でエチレンと3〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種類のα−オレフィンを共重合することによってLLDPE(線状低密度ポリエチレン)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンと、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンのようなα−オレフィンとのLLDPE−コポリマーは、例えばチタンをベースとする伝統的なチーグラー・ナッタ触媒を用いるか、或いはメタロセンを用いて製造することができる。
【0003】
米国特許5,420,220においては、流動床反応器内において、触媒活性ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを用いてエチレンとヘキセンを共重合することによって製造される単峰性LLDPEが開示されている。より高級なα−オレフィンコモノマーを用いるとコモノマー導入の効率が低下するという問題を伴い、即ちα−オレフィンがより高級であるとコモノマー導入量がより低くなる。
【0004】
これを考慮して、WO−03/066699−A1においては、エチレンを少なくとも2種類のC4〜12−α−オレフィンと共重合するシングルサイト触媒によって触媒する重合が記載されている。
【0005】
WO−2007/037836−A1及びWO−2007/101053−A1は、2種類の異なるメタロセン触媒を用いる二峰性ポリエチレン製造用の複合触媒系に関する。この発明は、低いレベルの長鎖分岐度を有する高分子量ポリエチレンを製造することができるメタロセンベースの触媒系、並びに水素に対してより応答性が高く、低分子量のポリエチレンを製造する他のメタロセンベースの触媒系に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5,420,220
【特許文献2】WO−03/066699−A1
【特許文献3】WO−2007/037836−A1
【特許文献4】WO−2007/101053−A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、より高級のα−オレフィンを用いる場合でもコポリマーの高いモル質量と高いコモノマー導入量との組合せにおける改良を達成することができ、より低い分子量のポリマー用の触媒として好適な他の遷移金属化合物との複合触媒系のために特に好適な新規なメタロセン触媒系を見出す必要性が継続して存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、触媒成分として用いると、公知のメタロセンと比べて、高いコモノマー導入量を達成することができ、同時に高い分子量を有するエチレンコポリマーを与えることを可能にする有機金属遷移金属化合物を見出すことである。更に、この有機金属遷移金属化合物は経済的な方法で得ることができなければならない。
【0009】
本発明者らは、この目的が、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
は、元素周期律表の第3、4、5、又は6族、或いはランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれハロゲン又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、2つの有機基Xはまた互いに結合していてもよく;
nは、1〜4の自然数であり;
、R、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ水素又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ水素又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に、5〜40個の炭素原子を有し、元素N、O、及びS、特にS及びNからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい単環又は多環の置換又は非置換環系を形成し;
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ3〜40個の炭素原子を有する有機基である)
の有機金属遷移金属化合物によって達成されることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
は、元素周期律表の第3、4、5、又は6族、或いはランタニド族の元素、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである、Mはジルコニウム又はハフニウム、特にジルコニウムであることが特に好ましい。
【0013】
基Xは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、ハロゲン又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、2つの有機基Xはまた互いに結合していてもよい。Xは、好ましくは、C〜C20−、特にC〜C−アルキル、C〜C20−、特にC〜C−アルケニル、C〜C30−、特にC〜C22−アリール、C〜C30−、特にC〜C22−アリールアルキル基、−OR10又は−NR1011、特に−OR10であり、ここで2つの基Xはまた互いに結合していてもよい。また、2つの基Xは置換若しくは非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成していてもよい。基R10及びR11は、それぞれ、C〜C10−、好ましくはC〜C−アルキル、C〜C30−、好ましくはC〜C22−アリール、C〜C30−、好ましくはC〜C22−アリールアルキル、C〜C10−、好ましくはC〜C−フルオロアルキル、又はC〜C30−、好ましくはC〜C20−フルオロアリールである。また、Xは、ハロゲン、例えばフッ素、臭素、塩素、ヨウ素であることも好ましい。最も好ましくは、Xは同一であり、それぞれメチル又は塩素である。
【0014】
指数nは、一般にMの酸化数から2を減じた数に等しい1〜4の自然数である。元素周期律表の第4族の元素の場合には、nは2である。
、R、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えばC〜C40−アルキル、C〜C10−フルオロアルキル、C〜C40−アルケニル、C〜C40−アリール、C〜C22−フルオロアリール、C〜C40−アリールアルキル、又は元素O、N、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC〜C40−ヘテロ芳香族基である。R及びRは好ましくは同一であり、それぞれ水素である。Rは、好ましくは水素又はC〜C−アルキル基である。R及びRは、好ましくは同一か又は異なり、それぞれ、水素、C〜C10−アルキル、C〜C40−アリール基、又はO、N、S、及びPからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC〜C40−ヘテロ芳香族基から選択される。R及びRは同一であってそれぞれ水素であることが特に好ましい。
【0015】
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐、又は非分岐のC〜C20−、好ましくはC〜C−アルキル基、C〜C20−、好ましくはC〜C−アルケニル基、C〜C30−、好ましくはC〜C22−アリール基、C〜C30−、好ましくはC〜C22−アリールアルキル基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に、5〜40個の炭素原子を有し、また、元素N、O、及びS、特にS及びNからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい単環又は多環の置換又は非置換環系を形成する。R及びRは、一緒に、置換又は非置換、特に非置換のプロピレン又はプロペニレン基を形成し、したがってインデニル系と一緒にヒドロインダセニル又はインダセニル系を形成することが好ましい。
【0016】
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ3〜40個の炭素原子を有する有機基である。基R及びRと成長ポリマー鎖との立体相互作用は重合挙動及び得ることができるポリマーの得られる特性のために特に重要であるので、基R及びRの両方が同一か又は異なり、それぞれ、C〜C40−アリール基又はC〜C40−アリールアルキル、或いはα−位において分岐しているC〜C40−脂肪族基、例えばC〜C20−、好ましくはC〜C−アルキル基、C〜C20−、好ましくはC〜C−アルケニル基、又はC〜C20−、好ましくはC〜C−シクロアルキル基である式(I)の有機金属遷移金属化合物が好ましい。基R及びRが同一である式(I)の有機金属遷移金属化合物、特にR及びRが芳香族系、特に好ましくはフェニルである有機基である化合物が特に好ましい。
【0017】
更に、本発明による置換基は、更に限定しない限りにおいては以下のように定義される。
本明細書において用いる「1〜40個の炭素原子を有する有機基」という用語は、例えばC〜C40−アルキル基、C〜C10−フルオロアルキル基、C〜C12−アルコキシ基、飽和C〜C20−複素環式基、C〜C40−アリール基、C〜C40−ヘテロ芳香族基、C〜C10−フルオロアリール基、C〜C10−アリールオキシ基、C〜C18−トリアルキルシリル基、C〜C20−アルケニル基、C〜C20−アルキニル基、C〜C40−アリールアルキル基、又はC〜C40−アリールアルケニル基を指す。
【0018】
本明細書において用いる「アルキル」という用語は、線状又は単分岐若しくは多分岐飽和炭化水素を包含し、これは環式であってもよい。メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、又はtert−ブチルのようなC〜C18−アルキルが好ましい。
【0019】
本明細書において用いる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つのC−C二重結合、所望の場合には累積型であっても交互型であってもよい複数のC−C二重結合を有する線状又は単分岐若しくは多分岐炭化水素を包含する。
【0020】
本明細書において用いる「アリール」という用語は、例えば、線状又は分岐のC〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、C〜C10−アルケニル、又はハロゲン、特にフッ素によって単置換又は多置換されていてもよい、芳香族及び縮合若しくは非縮合多環芳香族炭化水素置換基を指す。置換及び置換アリール基の好ましい例は、特に、フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−n−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−アントリル、9−フェナントリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、又は4−トリフルオロメチルフェニルである。
【0021】
本明細書において用いる「アリールアルキル」という用語は、例えば、そのアリール基
がアルキル鎖を介して分子の残りの部分に結合しているアリール含有置換基を指す。好ましい例は、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチルなどである。
【0022】
式(I)の新規な有機金属遷移金属化合物の代表例(しかしながら、これらは本発明の範囲を限定しない)は、
1,3−ジフェニルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジイソプロピルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジフェニルシクロペンタジエニルインダセニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジイソプロピルシクロペンタジエニルインダセニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジシクロペンチルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジシクロヘキシルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−ジ−2−ブチルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−2−ペンチルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド、1,3−2−ヘキシルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド;
である。
【0023】
従来公知のメタロセンと比べて、式(I)の新規な有機金属遷移金属化合物は、エチレンとコモノマーとの共重合中に従来達成することができたコモノマー含量を増加させ、同時に満足できるモル質量を与える。
【0024】
式(I)の新規な有機金属遷移金属化合物は、特に好適な共触媒の存在下において、オレフィンの重合用の高活性触媒成分として機能する。
本発明の好ましい態様においては、触媒系は少なくとも1種類の活性化化合物を含む。これらは、好ましくは、それらが活性化する触媒を基準として過剰又は化学量論量で用いる。一般に、触媒と活性化化合物とのモル比は、1:0.1〜1:10000であってよい。かかる活性化化合物は、一般に、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物である。本発明の重合触媒の好適な活性化剤、特に非荷電の強ルイス酸及びルイス酸カチオンの定義、及びかかる活性化剤の好ましい態様、それらの製造方法、並びにそれらの使用の特殊性及び化学量論に関する更なる詳細は、同じ出願人のWO−05/103096−A1において既に詳細に示されている。例は、アルミノキサン、ヒドロキシアルミノキサン、ボラン、ボロキシン、ボロン酸、及びボリン酸である。活性化化合物として用いるための非荷電の強ルイス酸の更なる例は、WO−03/31090−A1及びWO−05/103096−A1(参照として本明細書中に包含する)に与えられている。
【0025】
好適な活性化化合物は、例として及び非常に好ましい態様としての両方で、アルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、又は含有イオン性化合物のような化合物である。アルミノキサンとして、例えばWO−00/31090−A1(参照として本明細書中に包含する)に記載の化合物を用いることができる。特に有用なアルミノキサンは、一般式(III)又は(IV)
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、R1B〜R4Bは、それぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル基、好ましくはメチル、エチル、ブチル、又はイソブチル基であり、lは、1〜40、好ましくは4〜25の整数である)
の開鎖又は環式アルミノキサン化合物である。
【0028】
特に有用なアルミノキサン化合物はメチルアルミノキサン(MAO)である。
更に、炭化水素基の幾つかが水素原子、又はアルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、若しくはアミド基によって置換されている変性アルミノキサンを、活性化化合物として式(III)又は(IV)のアルミノキサン化合物に代えて用いることもできる。ボラン類及びボロキシン類、例えばトリアルキルボラン、トリアリールボラン、又はトリメチルボロキシンが、活性化化合物として特に有用である。少なくとも2つのペルフッ素化アリール基を有するボラン類を用いることが特に好ましい。より好ましくは、トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、又はトリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボランからなるリストから選択される化合物を用い、最も好ましくは、活性化化合物はトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。また、ペルフッ素化アリール基を有するボリン酸類、例えば(CBOHも特に言及される。活性化化合物として用いることができる好適なホウ素ベースのルイス酸化合物のより包括的な定義は、上記のWO−05/103096(参照として本明細書中に包含する)に与えられている。WO−97/36937(参照として本明細書中に包含する)に記載されているようなアニオン性ホウ素複素環を含む化合物、例えばジメチルアニリノボラトベンゼン又はトリチルボラトベンゼンもまた、活性化化合物として好適に用いることができる。
【0029】
更なる好適な活性化化合物は、WO−00/31090及びWO−99/06414(参照として本明細書中に包含する)に列記されている。
式(I)の触媒活性化合物は、第2の活性触媒化合物を含む複合触媒系のために特に好適である。これらの活性触媒化合物の例は、他の前周期遷移金属化合物又は後周期遷移金属化合物である。好ましくは、触媒系は、式(I)の化合物、及び後周期遷移金属化合物、特に鉄化合物を含む。
【0030】
特に好ましい化合物は、2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニル)鉄ジクロリド、2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)鉄ジクロリド、2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリドである。
【0031】
触媒系には、更なる成分として、WO−05/103096(参照として本明細書中に包含する)において一般式、その使用の形態及び化学量論、並びに具体例の両方を用いて定義されている金属化合物を更に含ませることができる。金属化合物は更に、触媒成分(A)及び(B)、並びに場合によっては活性化化合物及び担体と任意の順番で反応させることができる。
【0032】
本発明のポリエチレンを製造するためには、エチレンを、場合によっては3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンと共に重合する。
3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンは、好ましくは、特に線状のC〜C10−1−アルケン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、又は分岐C〜C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテンである。特に好ましいα−オレフィンは1−ブテン及び1−ヘキセンである。また、種々のα−オレフィンの混合物を重合することもできる。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、及び1−デセンからなる群から選択される少なくとも1種類のα−オレフィンを重合することが好ましい。少なくとも50モル%のエテンを含むモノマー混合物が好ましく用いられる。
【0033】
重合は、公知の方法で、バルク中、懸濁液中、気相中、又は超臨界媒体中において、オレフィンの重合のために用いられる通常の反応器内で行うことができる。これは、バッチ式か、又は好ましくは1以上の段階で連続的に行うことができる。溶液法、懸濁法、撹拌気相法、又は気相流動床法が全て可能である。溶媒又は懸濁媒体としては、不活性炭化水素、例えばイソブタン、或いはモノマーそれ自体を用いることができる。
【0034】
重合は、通常は−60〜350℃の範囲、好ましくは20〜300℃の範囲の温度において、0.5〜4000barの圧力下で行う。平均滞留時間は、通常は0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。重合を行うために有利な圧力及び温度の範囲は、通常は重合法によって定まる。通常は1000〜4000bar、特に2000〜3500barの圧力で行う高圧重合プロセスの場合には、一般に高い重合温度も設定される。これらの高圧重合プロセスのために有利な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合プロセスの場合には、ポリマーの軟化温度よりも少なくとも数度低い温度を設定することが通常である。特に、これらの重合プロセスにおいては、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度を設定する。懸濁重合の場合には、重合は、通常は懸濁媒体、好ましくはイソブタン又は複数の炭化水素の混合物のような不活性炭化水素の中、或いはモノマーそれ自体の中で行う。重合温度は一般に−20〜115℃の範囲であり、圧力は一般に1〜100barの範囲である。懸濁液の固形分含量は一般に10〜80%の範囲である。重合は、例えば撹拌オートクレーブ内においてバッチ式で、或いは例えば管状反応器、好ましくはループ反応器内において連続的に行うことができる。US−A−3,242,150及びUS−A−3,248,179に記載されているようなフィリップスPFプロセスを用いることが特に好ましい。気相重合は、一般に30〜125℃の範囲において、1〜50barの圧力で行う。
【0035】
上記記載の重合法の中で、特に気相流動床反応器内での気相重合、特にループ反応器及び撹拌タンク反応器内での溶液重合及び懸濁重合が特に好ましい。気相重合はまた、循環気体の一部を露点より低く冷却して二相混合物として反応器に再循環する凝縮又は超凝縮モードで行うこともできる。更に、2つの重合区域が互いに接続されており、ポリマーが、これらの2つの区域を複数回交互に通過する多区域反応器を用いることができる。2つの区域が異なる重合条件を有するようにすることもできる。かかる反応器は、例えばWO−97/04015に記載されている。
【0036】
二峰性ポリエチレンの重要な用途は、気体、飲用水、及び排水を輸送するための圧力管を製造するためにそれらを用いることである。ポリエチレンで製造される圧力管は、次第に金属管に取って代わっている。このタイプの用途のためには、管材は、経時劣化及び脆性破壊を恐れる必要なしに非常に長い運転寿命を有することが重要である。圧力管における小さい欠陥又はノッチでさえも、低圧下においてもより大きく成長して脆性破壊を引き起こす可能性があり、このプロセスは上昇した温度及び/又は攻撃的な化学物質によって加速する可能性がある。したがって、管材中の欠陥、例えば小さい傷又は「白点」の数及び寸法を可能な限り大きく減少させることが非常に重要である。
【0037】
反応器内での本発明のポリエチレンの製造は、エネルギー消費を減少させ、その後のブレンドプロセスが必要なく、種々のポリマーの分子量分布及び分子量フラクションを簡単に制御することを可能にする。更に、ポリエチレンの良好な混合が達成される。
【0038】
本発明を以下の非限定的な実施例によって示す。
【実施例】
【0039】
融点の測定:
融点Tは、ISO標準規格3146にしたがって、DSC測定を用いて、20℃/分の加熱速度での200℃への第1の加熱段階、20℃/分の冷却速度での25℃への動的結晶化、及び20℃/分の加熱速度での200℃への第2の加熱段階で求めた。融点は、第2の加熱段階において測定されたエンタルピーvs温度の曲線が最大値を示した温度であった。
【0040】
ゲル透過クロマトグラフィー:
145℃において、1,2,4−トリクロロベンゼン中で、Waters 150CGPC装置を用いてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を行った。データの評価は、HS-Entwicklungsgesellschaft fur wissenschaftliche Hard- und Software mbH, Ober-HibersheimからのソフトウエアWin-GPCを用いて行った。カラムは、100〜10g/モルの範囲のモル質量を有するポリプロピレン標準試料を用いて較正した。ポリマーの質量平均モル質量(M)及び数平均モル質量(M)を求めた。Q値は、数平均モル質量(M)に対する質量平均モル質量(M)の比である。
【0041】
粘度数(IV)の測定:
S5測定ヘッドを取り付けたUbbelohde粘度計PVS1(両方ともLaudaから)内で、デカリン中135℃において粘度数を求めた。試料を調製するために、20mgのポリマーを、135℃において2時間かけて20mLのデカリン中に溶解した。15mLの溶液を粘度計内に配置し、装置によって一貫性のある結果が得られるまで最小で3回の流出時間測定を行った。関係式:IV=(t/t−1)*1/c(ここで、t=溶液の流出時間の平均値、t=溶媒の流出時間の平均値、c:溶液の濃度(g/mL)である)を用いて、IVを流出時間から算出した。
【0042】
実施例1、C2、C3:非担持触媒系
実施例1:メタロセン1の製造
【0043】
【化3】

【0044】
メタロセン1:2,5−ジフェニルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド:
【0045】
【化4】

【0046】
4.35g(0.02モル)のPhCpHを255mLのEtO中に溶解した。得られた溶液を−50℃に冷却し、ヘキサン中の1.6Mのn−ブチルリチウム(12.9mL、0.02モル)を撹拌しながら10分間かけて加えた。次に、溶液を室温に加温し、室温において更に3時間撹拌した。この時間の間にリチウム塩が沈殿した。得られた懸濁液を再び−50℃に冷却し、IndZrCl・DME(トルエン、DME、及び無機不純物との混合物として12.6g:0.023モルのIndZrClを含むように意図した)を加えた。得られた混合物を室温に加温し、次に一晩撹拌した。翌日に沈殿物を濾過し、EtOによって洗浄し、2.5/1の比のn−ペンタン/CHClの混合物から再結晶させて、4.5g(45%)の純粋なメタロセン1(2,5−ジフェニルシクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロリド)を黄色の粉末として与えた。
【0047】
NMR 1H (CDCl3): 7.68 (d,4H); 7.49-7.46 (複数の信号の群, 6H); 7.36 (m, 2H); 7.21-7.18 (複数の信号の群, 3H); 6.70 (d,2H); 6.38 (t,1H); 6.14 (d,2H)。
担体なしの重合:
触媒1:
11.6mgのメタロセン1を、40℃において300mLのトルエン中に溶解した。溶液の色は明黄色であった。2.5mLの30%MAO及び3mLのヘキセンを溶液に加えた。
【0048】
重合:
エチレンを40℃及び雰囲気圧力において触媒溶液に通し、重合中に1mLのヘキセンを加えた。温度は、氷浴による冷却によって手動で制御して、目標温度の+5℃の範囲内に保持した。10分後、50mLのメタノール及び30mLのHClを用いて重合を停止した。250mLのメタノールを加えた後、混合物を濾過し、メタノールで洗浄した。
【0049】
ポリマーを70℃において4時間乾燥した。収量は14gであり、これは3582kg−ポリエチレン/(モル−Zr・時)であった。重合条件及び結果を下表1に示す。
比較例C2
【0050】
【化5】

【0051】
比較メタロセン:ビス(2,5−ジフェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド:
メタロセン1に代えて比較メタロセン2を用いた他は触媒1に関して実施例1に記載したようにして比較触媒2を製造した。
【0052】
重合:
実施例1と同じようにして重合を行った。相違点は、触媒1に代えて比較触媒2を用いたことであった。
【0053】
ポリマーを70℃において4時間乾燥した。収量は5gであり、これは1013kg−PE/(モル−Zr・時)であった。重合条件及び結果を下表1に示す。
比較例3
【0054】
【化6】

【0055】
比較メタロセン3:ビスインデニルジルコニウムジクロリド:
メタロセン1に代えて比較メタロセン3を用いた他は触媒1に関して実施例1に記載したようにして比較触媒3を製造した。
【0056】
重合:
実施例1と同じようにして重合を行った。相違点は、触媒1に代えて触媒3を用いたことであった。
【0057】
ポリマーを70℃において4時間乾燥した。収量は17.3gであり、これは2563kg−ポリエチレン/(モル−Zr・時)であった。重合条件及び結果を下表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例4:担持触媒系
担持触媒を製造するために、600℃において6時間カ焼したGraceからのシリカSylopol XPO2107を用いた。
【0060】
実施例4A
触媒4:
626.1mgのメタロセン1を26.7mLのMAO中に溶解した。得られた溶液を21.1gの上記のカ焼したXPO2107に加え(装填量:61.6マイクロモル/g)、10℃において2時間撹拌した。得られた粉末は黄褐色を有していた。
【0061】
1.7Lオートクレーブ内での重合:
1.7Lのスチール製オートクレーブに、アルゴン下、70℃において、>1mmの粒径を有する100gのポリエチレン粉末(ポリエチレン粉末は、既に真空下80℃において8時間乾燥し、アルゴン雰囲気下で貯蔵していた)を充填した。125mgのトリイソブチルアルミニウム(ヘプタン中TiBAl、50mg/mL)、6.5mLのヘプタン、並びに50mgのCostelan AS100(ヘプタン中Costelan、50mg/mL)を加えた。5分間撹拌した後、触媒4を加え、触媒投与ユニットを2mLのヘプタンですすいだ。まず、窒素を加えることによって圧力を70℃において10barに上昇させ、次にエチレン及びエチレンに対して一定比のヘキセン(0.1mL/g)を供給することによって20barの圧力を調節した。重合中においては、更なるエチレン及びエチレンに対して一定比(0.1mL/g)で供給するヘキセンを加えることによって、70℃において20barの圧力を1時間一定に保持した。1時間後に圧力を解放した。ポリマーをオートクレーブから取り出し、ポリマー床を除去するために篩別した。
【0062】
実施例4B
240Lオートクレーブ内での重合:
240Lのスチール製オートクレーブに、窒素下、83℃において、240LのExxsol D140/170を充填した。次に、75ミリモルのトリエチルアルミニウム(89.7mLのExxsol中の10.3mLの100%TEA)、及び500mLのヘキセンを83℃において加えた。エチレンを供給することによって圧力を83℃において8barに上昇させた。次に、触媒4を70mLのExxsolですすぎ、重合を開始した。最初の10分間の間は、圧力を10barに段階的に上昇させ、重合中は更なるエチレン及びヘキセンを加えることによって3時間一定に保持した。重合後、圧力を解放した。ポリマーをオートクレーブから取り出し、窒素下で8時間乾燥した。
【0063】
【表2】

【0064】
新規な非対称触媒は、コモノマーの良好な導入量を有する高分子量ポリエチレンを製造するのになお好適であると同時に、驚くべき高い活性を示す。非担持触媒系に関しては、固有粘度の低下を観察することができないことは注目に値する。
【0065】
実施例5:複合触媒系
【0066】
【化7】

【0067】
複合触媒5:
590mgのメタロセン1及び89.4mgの鉄コンプレックス5を28.5mLのMAO中に溶解した。得られた溶液を16.5gの上記のXPO2107に加え(装填量:68マイクロモル/g)、10℃において2時間撹拌した。得られた粉末は淡黄色を有していた。
【0068】
実施例5A
1.7Lオートクレーブ内での重合:
1.7Lのスチール製オートクレーブに、アルゴン下、70℃において、>1mmの粒径を有する100gのPE粉末(既に真空下80℃において8時間乾燥し、アルゴン雰囲気下で貯蔵していた)を充填した。200mgのイソプレニルアルミニウム(ヘプタン中IPRA、50mg/mL)、及び50mgのCostelan AS100(ヘプタン中Costelan、50mg/mL)を加えた。5分間撹拌した後、触媒を加え、触媒投与ユニットを7mLのヘプタンですすいだ。まず、アルゴン圧を70℃において10barに上昇させ、次にエチレンを用いて20barの圧力を調節した。重合中においては、更なるエチレンを加えることによって20barの圧力を1時間一定に保持した。1時間後に圧力を解放した。ポリマーをオートクレーブから取り出し、ポリマー床を除去するために篩別した。
【0069】
実施例5B
240Lオートクレーブ内での重合:
240Lのスチール製オートクレーブに、窒素下、83℃において、240LのExxonからのExxsol D140/170を充填した。次に、75ミリモルのトリエチルアルミニウム(89.7mLのExxsol中の10.3mLの100%TEA)、及び500mLのヘキセンを83℃において加えた。まず、エチレン圧を83℃において8barに上昇させた。次に、触媒を70mLのExxsolですすぎ、重合を開始した。最初の10分間の間は、圧力を10barに段階的に上昇させ、重合中は更なるエチレン及びヘキセンを加えることによって3時間一定に保持した。重合後、圧力を解放した。ポリマーをオートクレーブから取り出し、窒素下で8時間乾燥した。
【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
は、元素周期律表の第3、4、5、又は6族、或いはランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれハロゲン又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、2つの有機基Xはまた互いに結合していてもよく;
nは、1〜4の自然数であり;
、R、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ水素又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ水素又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に、1〜40個の炭素原子を有し、元素N、O、及びS、特にS及びNからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい単環又は多環の置換又は非置換環系を形成し;
及びRは、同一か又は異なり、それぞれ3〜40個の炭素原子を有する有機基である)
の有機金属遷移金属化合物。
【請求項2】
及びRが、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C40−アリール基、又はC〜C40−アリールアルキル、或いはα−位において分岐しているC〜C40脂肪族基である、請求項1に記載の式(I)の有機金属遷移金属化合物。
【請求項3】
及びRが同一であり、それぞれC〜C22−アリール基である、請求項1又は2に記載の式(I)の有機金属遷移金属化合物。
【請求項4】
がZr又はHfであり;
nが2であり;
、Rがそれぞれ水素であり;
が水素又はC〜C−アルキル基であり;
、Rが、同一か又は異なり、それぞれ、水素、C〜C10−アルキル、C〜C40−アリール基、或いはO、N、S、及びPからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC〜C40−ヘテロ芳香族基から選択され;
、Rが、同一か又は異なり、それぞれ水素から選択されるか、或いはR及びRはそれらを結合する原子と一緒にC又はC環系を形成する;
請求項1〜3のいずれかに記載の式(I)の有機金属遷移金属化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1種類の式(I)の有機遷移金属化合物、及び少なくとも1種類の活性化化合物を含む、オレフィン重合用の触媒系。
【請求項6】
更なる触媒活性有機遷移金属化合物を含む、請求項5に記載のオレフィン重合用の触媒系。
【請求項7】
更なる触媒活性有機遷移金属化合物が後期遷移金属化合物である、請求項5に記載の触媒系。
【請求項8】
後期遷移金属化合物が鉄化合物である、請求項6に記載の触媒系。
【請求項9】
担体を更に含む、請求項4〜8のいずれかに記載の触媒系。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれかに記載の触媒系の存在下で少なくとも1種類のオレフィンを重合又は共重合することによってポリオレフィンを製造する方法。
【請求項11】
1.9dL/gより大きい粘度数IV及び5重量%より大きいポリマー中のヘキセン含量を有するコポリマーを製造するための、請求項10に記載の触媒系の存在下で少なくとも1種類のオレフィンを重合又は共重合することによってポリオレフィンを製造する方法。

【公表番号】特表2013−500283(P2013−500283A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522004(P2012−522004)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004436
【国際公開番号】WO2011/012245
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】