説明

有機電界発光素子およびその製造方法、並びに画像表示媒体

【課題】十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、大面積化が可能であり、且つ製造容易な有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】一対の電極間に有機化合物層を有し、該有機化合物層が下記一般式(I−1)および(I−2)で示される繰り返し構造を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の電荷輸送性ポリウレタンを用いた有機電界発光素子、該有機電界発光素子の製造方法、並びに該有機電界発光素子を用いた画像表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光素子(以下、「EL素子」ということがある)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機蛍光体を用いたものが主流であるが、駆動に200V以上の交流電圧が必要なために製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
これに対し、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また膜中における電子・正孔キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。ところが近年、正孔輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるものが報告されており(例えば、非特許文献2参照)、以来、積層型EL素子の研究・開発が活発に行われている。これら積層型素子は、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介して正孔と電子のキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた正孔と電子が再結合することにより高輝度の発光を実現している。
【0004】
しかしながら、このタイプのEL素子では実現に向けて下記に示す課題が示されている。
(1)数mAという高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜された正孔輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化し、最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多くみられ、その結果素子の寿命が低下するという問題を有している。
【0005】
(2)低分子有機化合物を複数の蒸着工程において0.1μm以下の膜厚を形成していくため、ピンホールを生じやすく、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って生産性が低く大面積化が困難である。
【0006】
上記(1)に示す課題の解決のためには、正孔輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(例えば、非特許文献3参照)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入した高分子化合物を用いた(例えば、非特許文献4参照)EL素子が報告されている。しかし、これら単独では正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からの正孔注入性あるいは発光層への正孔注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいため、精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者の高分子化合物の場合、高い電流密度が得られず、十分な輝度が得られていない等の問題も存在する。
【0007】
次に(2)に示す課題の解決のためには、工程を短縮できる単層構造の有機EL素子について研究・開発が進められており、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いた素子(例えば、非特許文献5参照)や、正孔輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した(例えば、非特許文献6参照)素子が提案されているが、未だ輝度、発光効率が有機低分子化合物を用いた積層型有機EL素子には及ばない。
【0008】
また、作製法という観点から、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の面で湿式による塗布方式が検討されており、キャスティング法によっても素子が得られることが報告されている(例えば、非特許文献7および8参照)。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性、相溶性が悪いため結晶化しやすく、製造上あるいは特性上に問題があった。
【非特許文献1】Thin Solid Films,Vol.94,171,(1982)
【非特許文献2】Applied Physics Letter,Vol.51,913(1987)
【非特許文献3】第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)
【非特許文献4】第42回高分子討論会予稿集20J21(1993)
【非特許文献5】Natue,Vol.357,477(1992)
【非特許文献6】第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−g−12(1991)
【非特許文献7】第50回応用物理学会学術講演予稿集29p−ZP−5(1989)
【非特許文献8】第51回応用物理学会学術講演予稿集28a−PB−7(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来における問題点に鑑みてなされた発明であって、その目的は、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、大面積化が可能であり、且つ製造容易な有機電界発光素子およびその製造方法、並びに該有機電化発光素子を用いた画像表示媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の繰り返し構造を有する電荷輸送性ポリウレタンを用いることにより、有機電界発光素子として好適な電荷移動度、薄膜形成能が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
<1> 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に、一層以上の有機化合物層を有してなり、前記有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
【0012】
【化1】

【0013】
〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、Xは、下記一般式(II)で表される基を表す。〕
【0014】
【化2】

【0015】
〔一般式(II)中、Arは、置換もしくは未置換の2価のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1〜10の整数を表す。〕
【0016】
<2> 前記有機化合物層が少なくとも発光層および電子輸送層を有してなり、前記発光層および電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<3> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする前記<2>に記載の有機電界発光素子である。
<4> 前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層、発光層および電子輸送層を有してなり、前記正孔輸送層、発光層および電子輸送層の少なくとも何れか1層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<5> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする前記<4>に記載の有機電界発光素子である。
<6> 前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層および発光層を有してなり、前記正孔輸送層および発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<7> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする前記<6>に記載の有機電界発光素子である。
<8> 前記有機化合物層が電荷輸送能を有する発光層のみから構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有し、前記電荷輸送能を有する発光層と陽極との間にバッファ層を有してなることを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<9> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする前記<8>に記載の有機電界発光素子である。
【0017】
<10> 前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンが下記一般式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性ポリウレタンであることを特徴とする前記<1>〜<9>のいずれか一項に記載の有機電界発光素子である。
【0018】
【化3】

【0019】
〔一般式(III−1)および(III−2)中、Aは、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、YおよびZは、置換もしくは未置換の2価のアルキレン基または置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、mは、0または1を表し、pは、5〜5,000の整数を表す。〕
【0020】
<11> 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に、一層以上の有機化合物層を有してなる前記<1>〜<10>のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を製造する有機電界発光素子の製造方法であって、前記有機化合物層の構成成分を溶媒中に溶解させた塗布溶液をインクジェット印刷により塗布する塗布工程を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。
【0021】
<12> 前記<1>〜<10>のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を、マトリクス状およびセグメント状の少なくともいずれか一方の形状に配置したことを特徴とする画像表示媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、大面積化が可能であり、且つ製造容易な有機電界発光素子およびその製造方法、並びに該有機電界発光素子を用いた画像表示媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に狭持された一つまたは複数の有機化合物層を有してなる電界発光素子であって、該有機化合物層の少なくとも一層が下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする。
【0024】
この有機電界発光素子は、有機化合物層の少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリウレタンを含有することで、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れる。さらに、前記電荷輸送性ポリウレタンを用いることで、大面積化可能であり、容易に製造することができる。
【0025】
【化4】

【0026】
〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、Xは、下記一般式(II)で表される基を表す。〕
【0027】
【化5】

【0028】
〔一般式(II)中、Arは、置換もしくは未置換の2価のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1〜10の整数を表す。〕
【0029】
前記電荷輸送性ポリウレタンは後述する構造を適宜選択することで、正孔輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与することができるため、目的に応じて正孔輸送層、発光層、電子輸送層等のいずれの層にも用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明するにあたり、まず本発明における前記電荷輸送性ポリウレタンについて詳述する。
【0030】
−電荷輸送性ポリウレタン−
前記一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表す。尚、一般式(I−1)および(I−2)中に2つ存在するArは、同一であっても異なっていても構わないが、製造容易性という観点からは同一であることが好ましい。
【0031】
また、一般式(I−1)および(I−2)中、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素および縮合芳香族炭化水素を構成する芳香環の数は、さらに2〜5のものが好ましく、また縮合芳香族炭化水素においては全ての芳香環が縮合している芳香族炭化水素が好ましい。尚、当該多核芳香族炭化水素および縮合芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
即ち、「多核芳香族炭化水素」とは炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が炭素−炭素結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体的にはビフェニル、ターフェニル、スチルベン等が挙げられる。また、「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等が挙げられる。
【0032】
さらに一般式(I−1)および(I−2)中において、Arを表す構造として選択される芳香族複素環は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)はNr=5および/または6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類および数は限定されないが、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が好ましく用いられ、前記環骨格中に2種以上および/または2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に、5員環構造を有する複素環としてはチオフェン、チオフィン、ピロール、フラン、もしくはこれらの3位および4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造を有する複素環としてはピリジン環が好ましく用いられる。
これらは全てが共役系で構成されたもの、あるいは一部が共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、全てが共役系で構成されたものが好ましい。
【0033】
一般式(I−1)および(I−2)中、Arで表される各基に置換する置換基としては、例えば水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、トルイル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。前記置換アミノ基における置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、具体例は前述と同様である。
【0034】
一般式(I−1)および(I−2)中、Xは、前記一般式(II)で表される置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
【0035】
一般式(II)中において、Arは、置換もしくは未置換の2価のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表す。ここで、該「多核芳香族炭化水素」、「縮合環芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」については既に前記Arの項において示した通りである。また、該2価のフェニレン基、2価の多核芳香族炭化水素、2価の縮合芳香族炭化水素および2価の芳香族複素環の好ましい具体例は、Arの項において列挙した1価の具体例から水素1原子を取り去って2価としたものが挙げられる。
尚、一般式(II)中に2つ存在するArは、同一であっても異なっていても構わないが、製造容易性という観点からは同一であることが好ましい。
【0036】
一般式(II)中において、Xで表される炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
また、該アルキレン基に置換する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
これらの(置換)アルキレン基の中でも、より好ましくは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基である。
【0037】
尚、一般式(II)においてn=2以上のとき、2つ存在するXは同一であっても異なっていても構わないが、製造容易性という観点からは同一であることが好ましい。ここで、上記「同一」とは、下記表2に示す〔構造25〕のように、置換基を有する場合において、その置換位置が線対称の配置となっている場合を含む。
【0038】
一般式(II)中において、nは、1〜10の整数を表し、更に2〜5であることが好ましい。
【0039】
ここで、前記一般式(I−1)で示される構造の好ましい具体例を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
【表17】

【0057】
【表18】

【0058】
また、以下に前記一般式(I−2)で示される構造の好ましい具体例を示す。
【0059】
【表19】

【0060】
【表20】

【0061】
【表21】

【0062】
【表22】

【0063】
【表23】

【0064】
【表24】

【0065】
【表25】

【0066】
【表26】

【0067】
【表27】

【0068】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンとしては、下記一般式(III−1)および(III−2)で示されるポリウレタンが好適に使用される。
【0069】
【化6】

【0070】
〔一般式(III−1)および(III−2)中、Aは、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、YおよびZは、置換もしくは未置換の2価のアルキレン基または置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、mは、0または1を表し、pは、5〜5,000の整数を表す。〕
【0071】
一般式(III−1)および(III−2)中、Aは、上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、一般式(III−1)および(III−2)で表されるポリウレタン中に存在する複数のAは、同一の構造であっても、異なった構造であってもよい。
【0072】
一般式(III−1)および(III−2)中、Rは水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
上記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコシキ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0073】
一般式(III−1)または(III−2)中、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、好ましくは炭素数2〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。これらの中でもより具体的には、以下に示す2価の炭化水素基が特に好ましい。
【0074】
【化7】

【0075】
尚、一般式(III−1)及び(III−2)中において、Aをはさんで存在する2個の−(T)−は、それぞれmの値およびTが同一であっても異なっていても構わない。また、一般式(III−1)及び(III−2)中において、複数存在する−(T)−も、同一であっても異なっていても構わない。但し、製造容易性という観点からは、一般式(III−1)及び(III−2)中の−(T)−がいずれも同一であることが好ましい。
【0076】
一般式(III−1)および(III−2)中、YおよびZは、置換もしくは未置換の2価のアルキレン基または置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
より具体的には、上記ポリウレタンが後述の方法によって合成されたものである場合、Yは、ジイソシアネート残基またはジアミン残基を表し、Zは、2価アルコール残基またはビスクロロホルメート残基を表す。
上記YおよびZとしては、具体的には下記式(IV−1)〜(IV−7)から選択される基が挙げられる。
【0077】
【化8】

【0078】
〔上記式中、R11およびR12は、それぞれ水素原子、置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、置換または未置換のフェニル基、置換または未置換のアラルキル基を表し、aおよびbは、それぞれ独立に1〜5の整数を意味し、dおよびfは、それぞれ独立に0または1を表し、cおよびeは、それぞれ独立に0〜2の整数を表し、Vは、下記式(V−1)〜(V−11)で表される基を表す。〕
【0079】
【化9】

【0080】
〔上記式(V−1)、(V−10)および(V−11)中、gは1〜5の整数、hおよびiは0〜5の整数を表す。〕
【0081】
一般式(III−1)および(III−2)中、mは0または1を表し、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
【0082】
ここで、一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリウレタンの好ましい具体例を示すが、本発明はこれら具体例に限定されるわけではない。尚、下記表において、モノマーの列のAの欄の番号は、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造の具体例の構造番号に対応している。また、Zの欄が「−」であるものは一般式(III−1)で示される電荷輸送性ポリウレタンの具体例を示し、その他は(III−2)で示される電荷輸送性ポリウレタンの具体例を示す。
下記表においてポリマーの欄に化合物番号を付した電荷輸送性ポリウレタンの各具体例に関し、例えば、15の番号を付した具体例については、以下「電荷輸送性ポリウレタン(15)」と称す。
【0083】
【表28】

【0084】
【表29】

【0085】
【表30】

【0086】
【表31】

【0087】
前記電荷輸送性ポリウレタンの重量平均分子量Mwは5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲にあるのがより好ましい。
尚、ここで、上記重量平均分子量Mwは以下の方法により測定することができる。
電荷輸送性ポリウレタンをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、0.1質量%溶液とした後、0.1μmのPTFEフィルターでろ過し、調液した溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC/東ソー社製、HLC−8120GPC、スチレン換算)にて測定する。
【0088】
(電荷輸送性ポリウレタンの合成法)
次いで、一般式(III−1)および(III−2)で表される電荷輸送性ポリウレタンは、例えば、下記構造式(VI−1)〜(VI−4)で示される電荷輸送性モノマーを、第4版実験化学講座28巻(日本化学会編、丸善、1992)、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995)などに記載された公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0089】
【化10】

【0090】
〔構造式(VI−1)〜(VI−4)中、A、T、mは、前記一般式(III−1)または(III−2)におけるA、T、mと同様である。〕
【0091】
ここでまず、上記構造式(VI−1)〜(VI−4)で示される電荷輸送性モノマーの合成法について説明する。尚、本発明の電荷輸送性ポリマーの原料となるモノマーは公知の方法により合成することができ、例えば、下記の合成経路に従って得ることができる。
【0092】
【化11】

【0093】
〔上記合成経路中、Arは、前記一般式(I−1)および(I−2)におけるArと、XおよびArは、前記一般式(II)におけるXおよびArと同様である。また、Gはヨウ素または臭素原子を、Bは水素原子、−(T)−OH、−(T)−NCO、−(T)−OC(=O)Clまたは−(T)−NHを、n’は1〜10の整数の内の偶数を、kは1または2を表す。また、NBSはN−ブロモこはく酸イミドを、NCSはN−クロロこはく酸イミドを表す。〕
【0094】
特に、構造式(VI−1)で示される化合物を用いる場合は、上記合成経路において、Bが水素原子である場合に、例えば、第4版実験化学講座第21巻、特開平7−61955号公報等に記載されているように、ヴィルスマイヤー法によりホルミル体を得た後、水素化ホウ素塩または水素化アルミニウム塩等の還元剤で還元することにより容易に合成することができ、化合物安定性も高いことから好ましい。
【0095】
上記のようにして得られた構造式(VI−1)〜(VI−4)で示される電荷輸送性モノマーを用い、公知の方法で重合することにより、前記一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリウレタンを合成することができる。具体的には、以下のような合成法が挙げられる。
【0096】
[1]構造式(VI−1)および(VI−2)の場合
電荷輸送性モノマーが構造式(VI−1)で示される2価アルコールの場合には、OCN−Y−NCOで示されるジイソシアネート類と当量混合し、また、電荷輸送性モノマーが構造式(VI−2)で示されるジイソシアネート類の場合には、HO−Z−OHで示される2価アルコール類と当量混合し、何れも触媒を用いて重合する。ここで、上記YおよびZは、一般式(III−1)または(III−2)におけるYおよびZと同様であり、以下においても同様である。
【0097】
触媒としては、ジラウリル酸ジブチルスズ(II)、二酢酸ジブチルスズ(II)、ナフテン酸鉛等の有機金属化合物といった、通常のポリウレタン合成反応に用いられるものが使用できる。また、芳香族系のジイソシアネートを電荷輸送性ポリウレタンの合成に用いる場合には、トリエチレンジアミン等の第三級アミンを触媒として用いることができる。これら有機金属化合物と第三級アミンは混合して用いてもよい。触媒の量は、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1/10,000〜1/10質量部、好ましくは1/1,000〜1/50質量部の範囲で用いられる。
【0098】
溶剤は、電荷輸送性モノマーとジイソシアネート、もしくは2価アルコール類を溶解するものであれば、任意の溶剤を用いることができるが、反応性の点から極性の低い溶剤やアルコールとの水素結合を生じない溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。溶剤の量は、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。また、反応温度は任意に設定できる。
【0099】
反応終了後は、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリウレタンが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリウレタンを析出させて、分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリウレタンを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリウレタンを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリウレタン1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリウレタン1質量部に対して、1〜1,000質量部、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
【0100】
[2]構造式(VI−3)および(VI−4)の場合
電荷輸送性モノマーが構造式(VI−3)で示されるビスクロロホルメートの場合には、HN−Y−NHで示されるジアミン類と当量混合し、また電荷輸送性モノマーが構造式(VI−4)で示されるジアミン類の場合には、ClOCO−Z−OCOClで示されるビスクロロホルメート類と当量混合し、何れも触媒を用いて重合する。
【0101】
溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。また、反応温度は任意に設定できる。反応終了後は、前述と同様に再沈殿処理により精製することができる。
【0102】
また、HN−Y−NHで示されるジアミン類の塩基性度が高い場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、ジアミン類を水に加え、当量の酸を加えて溶解させた後、激しく攪拌しながらジアミン類と前述の構造式(IV−3)で示される当量の電荷輸送性モノマー溶液を加えることによって重合することができる。この際、水はジアミン類1質量部に対して、1〜1,000質量部、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
【0103】
電荷輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲で用いられる。
【0104】
−有機電界発光素子−
次に、本発明の有機電界発光素子について詳述する。
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層に上記に説明したような電荷輸送性ポリウレタンを少なくとも1種含有してなるものであればその層構成は特に限定されない。
【0105】
本発明の有機電界発光素子においては、有機化合物層が1つの場合は、該有機化合物層は電荷輸送能を持つ発光層を意味し、該発光層が前記電荷輸送性ポリウレタンを含有してなる。一方、有機化合物層が複数の場合(即ち、各層が異なる機能を有する機能分離型の場合)は、少なくともいずれか一層が発光層からなり、この発光層は電荷輸送能を持つ発光層であってもよい。この場合、前記発光層あるいは前記電荷輸送能を持つ発光層と、その他の層からなる層構成の具体例としては、下記(1)〜(3)が挙げられる。
【0106】
(1)発光層と、電子輸送層および/または電子注入層と、から構成される層構成。
(2)正孔輸送層および/または正孔注入層と、発光層と、電子輸送層および/または電子注入層と、から構成される層構成。
(3)正孔輸送層および/または正孔注入層と、発光層と、から形成される層構成。
【0107】
これら層構成(1)〜(3)の発光層および電荷輸送能を持つ発光層以外の層は、電荷輸送層や電荷注入層としての機能を有する。
【0108】
なお、層構成(1)〜(3)のいずれの層構成においても、いずれか一層に前記電荷輸送性ポリウレタンが含まれていればよい。
【0109】
また、本発明の有機電界発光素子においては、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層は、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性化合物(正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物)を更に含んでもよい。このような電荷輸送性化合物の詳細については後述する
【0110】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、これらに限定されるわけではない。
図1〜図4は、本発明の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図3の場合は、それぞれ有機化合物層が複数の場合の一例であり、図4の場合は、有機化合物層が1つの場合の例である。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0111】
図1に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、発光層4、電子輸送層および/または電子注入層5並びに背面電極7が順次積層されたもので、前記層構成(1)に相当するものである。但し、符号5で示される層が、電子輸送層および電子注入層からなる場合には、発光層4の背面電極7側に、電子輸送層、電子注入層、背面電極7がこの順に積層される。
【0112】
図2に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層および/または正孔注入層3、発光層4、電子輸送層および/または電子注入層5並びに背面電極7が順次積層されたもので、前記層構成(2)に相当するものである。但し、符号3で示される層が、正孔輸送層および正孔注入層からなる場合には、透明電極2の背面電極7側に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層4がこの順に積層される。また、符号5で示される層が、電子輸送層および電子注入層からなる場合には、発光層4の背面電極7側に、電子輸送層、電子注入層、背面電極7がこの順に積層される。
【0113】
図3に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層および/または正孔注入層3、発光層4並びに背面電極7が順次積層されたもので、前記層構成(3)に相当するものである。但し、符号3で示される層が、正孔輸送層および正孔注入層からなる場合には、透明電極2の背面電極7側に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層4がこの順に積層される。
【0114】
図4に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6並びに背面電極7が順次積層されたものである。
【0115】
以下、各々を詳しく説明する。
本発明における前記電荷輸送性ポリウレタンには、含有される有機化合物層の機能によって、正孔輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与することができる。
例えば、前記電荷輸送性ポリウレタンは、図1に示される有機電界発光素子の層構成の場合、発光層4および電子輸送層5のいずれに含有されてもよく、発光層4および電子輸送層5としていずれも作用することができる。また、図2に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5のいずれに含有されてもよく、正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5としていずれも作用することができる。さらに、図3に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層3および発光層4のいずれに含有されてもよく、正孔輸送層3および発光層4としていずれも作用することができる。また更には、図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、電荷輸送能を持つ発光層6に含有し、電荷輸送能を持つ発光層6として作用することができる。
【0116】
図1〜図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられるがこれに限られるものではない。また、透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、且つ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、および蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられるがこれに限られるものではない。
【0117】
図1および図2に示される有機電界発光素子の層構成の場合、電子輸送層5は、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリウレタン単独で形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調節するために、前述した本発明の電荷輸送性ポリウレタン以外の電子輸送性化合物を1質量%ないし50質量%の範囲で分散混合して形成されていてもよい。このような電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記例示化合物(VII−1)〜(VII−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、単独ではなく複数の電子輸送材料と組み合わせてもよい。なお、前記電荷輸送性ポリウレタンを用いない場合、これら電子輸送材料を単独であるいは組み合わせて形成されこととなる。
【0118】
【化12】

【0119】
図2および図3に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層3は、目的に応じて機能(正孔輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリウレタン単独で形成されていてもよいが、電気的特性を更に改善する等の目的で、正孔移動度を調節するために、前述の本発明の電荷輸送性ポリウレタン以外の正孔輸送性化合物を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このような正孔輸送性化合物としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、好適な具体例としては、下記例示化合物(VIII−1)〜(VIII−9)が挙げられる。この中でも、電荷輸送性ポリウレタンとの相溶性がよいことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。また、他の汎用の樹脂等との混合でもよい。なお、前記電荷輸送性ポリウレタンを用いない場合は、これら正孔輸送性化合物を単独あるいは組み合わせて形成されることとなる。
【0120】
【化13】

【0121】
【化14】

【0122】
ここで、上記例示化合物(VIII−7)〜(VIII−9)中、xは5〜5,000の整数を表し、またnは5〜5,000の整数を表す。
【0123】
図1〜図3に示される有機電界発光素子の層構成の場合、発光層4は、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子化合物の場合、真空蒸着法、あるいは有機低分子化合物と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、有機高分子化合物の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。好適には有機低分子化合物の場合、キレート型有機金属錯体、多核・縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられ、高分子化合物の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(IX−1)〜(IX−17)が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
【化15】

【0125】
【化16】

【0126】
〔構造式(IX−13)〜(IX−17)中、nおよびxはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、yは0または1を表す。式(IX−16)および(IX−17)中、Arは置換もしくは未置換の1価または2価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。〕
【0127】
また、有機電界発光素子の耐久性向上あるいは発光効率向上を目的として、上記発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合には、共蒸着によってドーピングを行うことができ、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合には、溶液または分散液中に混合することでドーピングを行うことができる。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001質量%〜40質量%、好ましくは0.01質量%〜10質量%である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(X−1)〜(X−4)が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
【化17】

【0129】
また、発光層4は、前記発光材料単独で形成されていてもよいが、電気特性および発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光材料に前記本発明における電荷輸送性ポリウレタンを1質量%ないし50質量%の範囲で混合・分散して形成させてもよい。もしくは前記発光材料中に、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性化合物(電子輸送性化合物、正孔輸送性化合物)を1質量%ないし50質量%の範囲で混合・分散して形成させてもよい。また、前記本発明における電荷輸送性ポリウレタンが発光特性も兼ね備えたものである場合、発光材料として用いてもよく、その場合、電気特性および発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光材料に前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性化合物を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。
【0130】
図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、電荷輸送能を持つ発光層6は、目的に応じて機能(正孔輸送能、あるいは電子輸送能)が付与された本発明の前記電荷輸送性ポリウレタン単独で形成されるか、該電荷輸送性ポリウレタン以外の発光材料(好ましくは、前記発光材料(IX−1)〜(IX−17)から選ばれる少なくとも1種を50質量%以下)を分散させた有機化合物層であるが、有機電界発光素子に注入される正孔と電子のバランスを調節するために本発明の前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性化合物を10質量%ないし50質量%分散させてもよい。このような電荷輸送性化合物としては、電子移動度を調節する場合、電子輸送材料としてオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、上記例示化合物(VII−1)〜(VII−3)が挙げられる。
【0131】
また、本発明の前記電荷輸送性ポリウレタンと強い相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、より好ましくは下記例示化合物(XI)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0132】
【化18】

【0133】
同時に正孔移動度を調節する場合、正孔輸送性化合物として、好適にはテトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、特に好適な具体例としては上記例示化合物(VIII−1)〜(VIII−9)が挙げられ、更に電荷輸送性ポリウレタンとの相溶性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。
【0134】
図1〜図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が一般に使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金、もしくフッ化リチウムや酸化リチウム等の金属ハロゲン化合物や金属酸化物が挙げられる。また、背面電極7上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Alなどの金属、MgO、SiO、TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0135】
これら図1から図4に示される有機電界発光素子は、まず透明電極2の上に各有機電界発光素子の層構成に応じた個々の層を順次形成することにより作製される。なお、正孔輸送層および/または正孔注入層3、発光層4、電子輸送層および/または電子注入層5、或いは、電荷輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を真空蒸着法、もしくは、適切な有機溶媒に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極1上にスピンコーティング法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法等により形成される。尚、このうち、所望の画素の位置に必要な量だけのポリマー材料を塗布することができ、無駄になる材料が僅かであること、それに伴い地球環境にもやさしいこと、高精細なパターンニングが可能であること、大型パネル化が容易であること、印刷対象の自由度が大きいこと等の理由から、インクジェット法が特に好ましい。
【0136】
また、正孔輸送層および/または正孔注入層3、発光層4、電子輸送層および/または電子注入層5、並びに、電荷輸送能を持つ発光層6の膜厚は、各々10μm以下、特に0.001〜5μmの範囲であることが好ましい。上記各材料(前記非共役系高分子、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも微結晶などの微粒子状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、分子分散状態とするために分散溶媒は上記各材料の分散性および溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ホモジナイザー、超音波法等が利用できる。
【0137】
また、最後に、図1および図2に示す有機電界発光素子の場合には、電子輸送層および/または電子注入層5の上に背面電極7を真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することにより本発明の有機電界発光素子が完成される。また、図3に示す有機電界発光素子の場合には、発光層4の上に、図4に示す有機電界発光素子の場合には、電荷輸送能を持つ発光層6の上に、背面電極7を真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することにより本発明の有機電界発光素子が完成される。
【0138】
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cmの直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0139】
−画像表示媒体−
本発明の有機電界発光素子を用いた画像表示媒体について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、マトリクス状および/またはセグメント状の形状に配置することができ、これにより画像表示媒体を形成することができる。有機電界発光素子をマトリクス状に配置する場合、電極のみをマトリクス状に配置する態様であってもよいし、電極および有機化合物層の両方をマトリクス状に配置する態様であってもよい。また、有機電界発光素子をセグメント状に配置する場合、電極のみをセグメント状に配置する態様であってもよいし、電極および有機化合物層の両方をセグメント状に配置する態様であってもよい。
マトリクス状またはセグメント状に配置される有機化合物層は、前記インクジェット法を用いることにより容易に形成することができる。
【実施例】
【0140】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中において、特に断りのない限り「部」および「%」は質量基準である。
【0141】
〔合成例1−電荷輸送性ポリウレタン(6)〕
まず、ジアミン14〔下記モノマー(XII)〕を以下の合成経路に従って合成した。
【0142】
【化19】

【0143】
ジアミン14〔上記モノマー(XII)〕2.0g、クロロベンゼン30.0mlを50mlの三つ口フラスコに入れ溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート0.54gのクロロベンゼン(10ml)溶液を30分かけて滴下し、窒素気流下150℃で2時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をメタノール300mlを攪拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解し、この溶液をメタノール300mlに滴下する再沈殿処理を3回繰り返すことによって、1.7gの電荷輸送性ポリウレタン(6)を得た。この電荷輸送性ポリウレタン(6)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したところ、Mw=5.68×10(スチレン換算)、Mn/Mw=2.38であり、モノマーの分子量から求めた重合度pは68であった。
【0144】
〔合成例2−電荷輸送性ポリウレタン(8)〕
まず、前記合成例1におけるモノマー(XII)の合成において、ジフェニルアミンの代わりにフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2−イルアミンを用いた以外は同様にして、ジアミン18〔下記モノマー(XIII)〕を合成した。
【0145】
【化20】

【0146】
ジアミン18〔上記モノマー(XIII)〕2.0g、クロロベンゼン30.0mlを50mlの三つ口フラスコに入れ溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート0.52gのクロロベンゼン(10ml)溶液を30分かけて滴下し、窒素気流下150℃で2.5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をメタノール300mlを攪拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られたポリマーをTHF30mlに溶解し、この溶液をメタノール300mlに滴下する再沈殿処理を3回繰り返すことによって、1.8gの電荷輸送性ポリウレタン(8)を得た。この電荷輸送性ポリウレタン(8)の分子量をGPCにて測定したところ、Mw=9.85×10(スチレン換算)、Mn/Mw=2.91であり、モノマーの分子量から求めた重合度pは92であった。
【0147】
〔合成例3−電荷輸送性ポリウレタン(10)〕
まず、前記合成例1におけるモノマー(XII)の合成において、エチレンジオキシチオフェンの代わりに1−メチルエチレンジオキシチオフェンを用い、またジフェニルアミンの代わりにフェニル−4−チエニルフェニルアミンを用いた以外は同様にして、ジアミン27〔下記モノマー(XIV)〕を合成した。
【0148】
【化21】

【0149】
ジアミン27〔上記モノマー(XIV)〕2.0g、クロロベンゼン30.0mlを50mlの三つ口フラスコに入れ溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート0.52gのクロロベンゼン(10ml)溶液を30分かけて滴下し、窒素気流下150℃で2.0時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をメタノール300mlを攪拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られたポリマーをTHF30mlに溶解し、この溶液をメタノール300mlに滴下する再沈殿処理を3回繰り返すことによって、1.8gの電荷輸送性ポリウレタン(10)を得た。この電荷輸送性ポリウレタン(10)の分子量をGPCにて測定したところ、Mw=1.02×10(スチレン換算)、Mn/Mw=3.05であり、モノマーの分子量から求めた重合度pは89であった。
【0150】
〔合成例4−電荷輸送性ポリウレタン(84)〕
まず、前記合成例1におけるモノマー(XII)の合成において、ジヨードベンゼンの代わりに2,7−ジヨード−9,9−ジメチルフルオレンを用いた以外は同様にして、ジアミン49〔下記モノマー(XV)〕を合成した。
【0151】
【化22】

【0152】
ジアミン49〔上記モノマー(XV)〕2.0g、クロロベンゼン30.0mlを50mlの三つ口フラスコに入れ溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート0.50gのクロロベンゼン(10ml)溶液を30分かけて滴下し、窒素気流下150℃で2.0時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をメタノール300mlを攪拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られたポリマーをTHF30mlに溶解し、この溶液をメタノール300mlに滴下する再沈殿処理を3回繰り返すことによって、1.7gの電荷輸送性ポリウレタン(84)を得た。この電荷輸送性ポリウレタン(84)の分子量をGPCにて測定したところ、Mw=9.65×10(スチレン換算)、Mn/Mw=2.54であり、モノマーの分子量から求めた重合度pは85であった。
【0153】
〔合成例5−電荷輸送性ポリウレタン(52)〕
まず、前記合成例1におけるモノマー(XII)の合成において、ジフェニルアミンの代わりにビフェニルフェニルアミンを用いた以外は同様にして、ジアミン207〔下記モノマー(XVI)〕を合成した。
【0154】
【化23】

【0155】
ジアミン207〔上記モノマー(XVI)〕2.0g、クロロベンゼン30.0mlを50mlの三つ口フラスコに入れ溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート0.50gのクロロベンゼン(10ml)溶液を30分かけて滴下し、窒素気流下150℃で2.5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をメタノール300mlを攪拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られたポリマーをTHF30mlに溶解し、この溶液をメタノール300mlに滴下する再沈殿処理を3回繰り返すことによって、1.8gの電荷輸送性ポリウレタン(52)を得た。この電荷輸送性ポリウレタン(52)の分子量をGPCにて測定したところ、Mw=8.96×10(スチレン換算)、Mn/Mw=2.54であり、モノマーの分子量から求めた重合度pは91であった。
【0156】
次に、上記方法で合成された電荷輸送性ポリウレタンを使用し、以下のようにして素子を作製した。
【0157】
[実施例1]
2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板を、中性洗剤、超純水、アセトン(電子工業用、関東化学製)、および2−プロパノール(電子工業用、関東化学製)で順に超音波を各5分間加えて洗浄を行い、乾燥後、発光材料として発光性高分子〔下記例示化合物(XVII)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布して膜厚0.03μmの発光層を形成した。さらに、十分乾燥させた後、電子輸送性化合物として、上記合成例3で合成した電荷輸送性ポリウレタン(10)を5%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、発光層上にスピンコート法により塗布し、膜厚0.03μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0158】
【化24】

【0159】
[実施例2]
実施例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として電荷輸送性高分子〔前記例示化合物(VIII−9)、ポリエステル系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、バッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚0.03μmの正孔輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として、昇華精製したAlq3〔前記例示化合物(IX−1)〕をタングステンボードに入れ、真空蒸着法により蒸着して、正孔輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10−5Torr、ボード温度は300℃であった。さらに、電子輸送性化合物として、上記合成例4で合成した電荷輸送性ポリウレタン(20)を5%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、発光層上にスピンコート法により塗布し、膜厚0.03μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0160】
[実施例3]
発光材料として、発光性高分子〔上記例示化合物(XVII)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布して膜厚0.03μmの発光層を形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0161】
[実施例4]
正孔輸送性化合物として合成例1で合成した電荷輸送性ポリウレタン(6)を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、バッファ層上にスピンコート法により塗布し、膜厚0.01μmの正孔輸送層を形成した以外は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0162】
[実施例5]
実施例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として合成例2で合成した電荷輸送ポリウレタン(8)を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、バッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚0.01μmの正孔輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として、昇華精製したAlq3〔前記例示化合物(IX−1)〕をタングステンボードに入れ、真空蒸着法により蒸着して、正孔輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10−5Torr、ボード温度は300℃であった。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0163】
[実施例6]
発光材料として、発光性高分子〔下記例示化合物(XVIII)、PPV系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布して膜厚0.03μmの発光層を形成した以外は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0164】
【化25】

【0165】
[実施例7]
実施例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、電荷輸送性化合物として合成例5で合成した本発明の電荷輸送ポリウレタン(52)を0.5部と、発光性高分子〔上記例示化合物(XVIII)、PPV系、Mw≒10〕を0.1部混合し、10%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、バッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚0.05μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0166】
〔実施例8〕
2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板を、中性洗剤、超純水、アセトン(電子工業用、関東化学製)、および2−プロパノール(電子工業用、関東化学製)で順に超音波を各5分間加えて洗浄を行い、乾燥後、発光材料として発光性高分子〔前記例示化合物(XVIII)、PPV系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターでろ過した後に、インクジェット印刷法により塗布して膜厚0.03μmの発光層を形成した。さらに、十分乾燥させた後、電子輸送性化合物として、上記合成例4で合成した電荷輸送性ポリウレタン(20)を5%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、発光層上にインクジェット印刷法により塗布し、膜厚0.03μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0167】
[比較例1]
2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板を、中性洗剤、超純水、アセトン(電子工業用、関東化学製)、および2−プロパノール(電子工業用、関東化学製)で順に超音波を各5分間加えて洗浄を行い、乾燥後、発光材料として発光性高分子〔前記例示化合物(XVII)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布して膜厚0.03μmの発光層を形成した。さらに、十分乾燥させた後、電子輸送性化合物として、前記例示化合物(VII−1)より構成される厚さ0.05μmの電子輸送層を真空蒸着法により形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cmであった。
【0168】
[比較例2]
比較例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として前記例示化合物(VIII−2)より構成される厚さ0.05μmの正孔輸送層を、発光材料として昇華精製したAlq3〔前記例示化合物(IX−1)〕で構成される厚さ0.065μmの発光層を、電子輸送性化合物として前記例示化合物(VII−1)より構成される厚さ0.05μmの電子輸送層を、順次真空蒸着法により形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0169】
[比較例3]
比較例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として前記例示化合物(VIII−2)より構成される厚さ0.05μmの正孔輸送層を真空蒸着法により形成し、発光材料として発光性高分子(前記例示化合物(XVIII)、PPV系、Mw≒10)を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布し、十分乾燥させて膜厚0.03μmの発光層を形成し、さらに電子輸送性化合物として前記例示化合物(VII−1)より構成される厚さ0.05μmの電子輸送層を真空蒸着法により形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0170】
[比較例4]
比較例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として前記例示化合物(VIII−2)より構成される厚さ0.05μmの正孔輸送層を、発光材料として昇華精製したAlq3〔前記例示化合物(IX−1)〕で構成される厚さ0.065μmの発光層を、順次真空蒸着法により形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0171】
[比較例5]
比較例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として前記例示化合物(VIII−2)より構成される厚さ0.05μmの正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。続いて、発光材料として発光性高分子〔前記例示化合物(XVIII)、PPV系、Mw≒10〕を5%クロロベンゼン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過した後に、スピンコート法により塗布し、十分乾燥させて膜厚0.03μmの発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0172】
[比較例6]
比較例1と同様にして超音波洗浄後、乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、正孔輸送性化合物として前記例示化合物(VIII−2)を1部、発光材料として昇華精製したAlq3〔前記例示化合物(IX−1)〕を1部、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1部混合し、10%ジクロロエタンン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターでろ過し、ディップ法により塗布して膜厚0.05μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0173】
(評価)
以上のように作製した有機電界発光素子を、真空中〔133.3×10−3Pa(10−5Torr)〕でITO電極側をプラス、Mg−Ag側をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、この時の立ち上がり電圧、最高輝度、および最高輝度時の駆動電流密度を評価した。それらの測定結果を下記表に示す。
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の評価を行った。発光寿命の測定は、初期輝度が50cd/cmとなるように電流値を設定し、低電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(Hour)とした。この時の素子寿命も下記表に示す。
【0174】
【表32】

【0175】
上記表に記載の結果から、本発明の一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンは、有機電界発光素子に好適なイオン化ポテンシャル、電荷移動度を有し、スピンコーティング法、ディップ法、インクジェット法等を用いて、良好な薄膜を形成することが可能である。また、電荷の注入性や輸送性が向上することから、電荷バランスが改善され、安定して高輝度、高効率な特性を示す。したがって、本発明の有機電界発光素子は、ピンホール等の不良もなく、大面積化も容易であり、しかも、優れた耐久性と発光特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0177】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 正孔輸送層および/または正孔注入層
4 発光層
5 電子輸送層および/または電子注入層
6 電荷輸送能を持つ発光層
7 背面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に、一層以上の有機化合物層を有してなり、前記有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】

〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、Xは、下記一般式(II)で表される基を表す。〕
【化2】

〔一般式(II)中、Arは、置換もしくは未置換の2価のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1〜10の整数を表す。〕
【請求項2】
前記有機化合物層が少なくとも発光層および電子輸送層を有してなり、前記発光層および電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層、発光層および電子輸送層を有してなり、前記正孔輸送層、発光層および電子輸送層の少なくとも何れか1層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層および発光層を有してなり、前記正孔輸送層および発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機化合物層が電荷輸送能を有する発光層のみから構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンを含有し、前記電荷輸送能を有する発光層と陽極との間にバッファ層を有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリウレタン以外の電荷輸送性材料を含有することを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリウレタンが下記一般式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性ポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【化3】

〔一般式(III−1)および(III−2)中、Aは、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、YおよびZは、置換もしくは未置換の2価のアルキレン基または置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、mは、0または1を表し、pは、5〜5,000の整数を表す。〕
【請求項11】
少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に、一層以上の有機化合物層を有してなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を製造する有機電界発光素子の製造方法であって、
前記有機化合物層の構成成分を溶媒中に溶解させた塗布溶液をインクジェット印刷により塗布する塗布工程を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を、マトリクス状およびセグメント状の少なくともいずれか一方の形状に配置したことを特徴とする画像表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−78495(P2008−78495A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257707(P2006−257707)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】