説明

有機電界発光素子およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、駆動安定性が改良された有機電界発光素子およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に伝熱層を有し、該伝熱層が少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーの蒸着重合ポリマーを含有することを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子およびその製造方法に関する。特に駆動耐久性が改良された有機電界発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料を用いた有機電界発光素子が知られている。有機電界発光素子は、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および省電力のなどの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来ディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、安価で大量生産性など多くの技術改良が課題となっている。
【0003】
有機電界発光素子の重要な課題の一つとして、断続的もしくは継続的に長時間発光を続けると発光輝度の減少、およびダークスポット(非発光欠陥)等が発生し、十分な信頼性を保てない問題があった。また、有機電界発光素子の別の課題として、水分や酸素に極めて弱く、具体的には、金属電極と有機層との界面が水分の影響で変質したり、電極が剥離したり、金属電極が酸化して高抵抗化したり、有機材料自体が水分により変質したりというような問題があった。
【0004】
基板上に有機電界発光素子を担時して後、さらにその表面を保護層として無機材料層を蒸着して水分に対する封止層を形成する試みも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。無機材料として、窒化珪素、酸化窒化珪素、炭化珪素、およびアモルファスシリコンが開示されている。しかしながら、有機化合物層の上に形成される蒸着膜はピンホールやクラックなどの欠陥が多く発生する問題があった。これらの欠陥を除くには無機材料の蒸着厚みをかなり厚くするか、あるいは複数回蒸着を繰り返した重層膜にするなどの手段があるがコストと生産性の点で好ましくない。
また、水分の侵入を封止するために保護層として金属ハロゲン化物層をイオンプレーテイング法により設けること(例えば、特許文献2参照。)、あるいは金属ハロゲン化物を含有するエポキシ樹脂を有機溶媒を用いて塗布すること(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。金属ハロゲン化物としてフッ化リチウムなどが開示されているが、これらの金属ハロゲン化物は吸湿性であって外部からの水分の進入を金属ハロゲン化物が吸湿することによって防止するが、反面、吸湿した水分が飽和量に近づくと徐々に水分を放出して発光層に拡散させるため、発光層が水分のダメージを受ける問題を有する。このように保護層として金属ハロゲン化物層を設けることは十分な解決策ではなかった。また、イオンプレーテイング法では、素子が高温度に曝されるため、発光層がダメージを受け、有機溶媒を用いて塗布する場合、有機溶媒が残留し、いずれも有機電界発光素子の発光性能に悪影響を与える問題を有する。
【0005】
一方、素子表面を傷やひび割れなどの物理的損傷から保護するために有機ポリマー皮膜で保護することが知られている。例えば、保護層形成ポリマーを蒸着重合によって素子表面に形成することが開示されている(例えば、特許文献4〜8参照。)。
【0006】
さらに、長時間連続駆動すると、発熱した熱が素子内に蓄積し、次第に素子の温度が上昇し、素子特性が変動したり、素子部材が劣化して、破壊される問題もあった。従来の水分や酸素に対するバリアを形成する封止層は、放熱を妨げ、さらに素子の加熱上昇をもたらすことはあっても素子の温度上昇を解決する手段とはならなかった。
【0007】
封止層にダイアモンド状の炭素膜を設けて放熱性を高めることが開示されている(例えば、特許文献9参照。)。該炭素膜は、光取りだし面上に設けられるため光透過性を阻害しないよう薄層で用いられ、炭素膜の熱伝導性を利用して放熱効果があることが記載されている。封止層には絶縁性も要求される。しかしながら、炭素膜は、熱伝導性が優れる膜ほど電気伝導性も高くなる基本的物性を有するため、炭素膜の形成条件制御によって膜の熱伝導性がコントロールされたとしても、熱伝導性と絶縁性を高いレベルで両立するのは困難である。
【特許文献1】特許3170542号公報
【特許文献2】特開平6−96858号公報
【特許文献3】特開2000−338755号公報
【特許文献4】特開平7−169569号公報
【特許文献5】特開平5−78502号公報
【特許文献6】特開平8−222368号公報
【特許文献7】特開2004−103442号公報
【特許文献8】特開2004−281247号公報
【特許文献9】特開2001−52873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、駆動安定性が改良された有機電界発光素子およびその製造方法を提供するものであり、特に長時間連続駆動時の素子の温度上昇が防止でき、耐久性の強い有機電界発光素子およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
<1> 基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に伝熱層を有し、該伝熱層が少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーの蒸着重合ポリマーを含有することを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記熱伝導材料が、黒色カーボン材料であることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 前記蒸着重合ポリマーが、前記少なくとも2種のモノマーを真空中で加熱して蒸発させ、化学反応により前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に形成されたものであることを特徴とする<1>または<2>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記化学反応が水を生成しない化学反応であることを特徴とする<3>に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記水を生成しない化学反応がエーテル結合、尿素結合、ウレタン結合、もしくはイミド結合を形成する反応であることを特徴とする<4>に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記2種のモノマーが少なくとも分子内に少なくとも2つのエポキシ基もしくはシアノ基を有するモノマーとアミノ基を有するモノマーであることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<7> 前記蒸着重合ポリマーがエポキシポリマー、ポリ尿素、またはポリウレタンであることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<8> 前記伝熱層に隣接して放熱層を有することを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<9> 前記放熱層がセラミック材料を含有することを特徴とする<8>に記載の有機電界発光素子。
<10> 前記セラミック材料がアルミナ、又はジルコニアを含有することを特徴とする<9>に記載の有機電界発光素子。
<11> 基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子の製造方法であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に、少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーを蒸発させ、化学反応により重合させ、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に熱伝導材料と蒸着重合ポリマーを含有する伝熱層を形成する工程を有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
<12> 前記伝熱層を形成する工程が少なくとも前記熱伝導材料の蒸発工程、および前記2種のモノマーをそれぞれ独立に蒸発させる工程を有することを特徴とする<11>に記載の有機電界発光素子の製造方法。
<13> 前記2種のモノマーをそれぞれ独立に蒸発させる工程を有し、前記2種のモノマーの少なくとも一方が前記熱伝導材料を予め混合して有し、該モノマーの蒸着に伴って該熱伝導材料を蒸着することを特徴とする<11>に記載の有機電界発光素子の製造方法。
<14> 前記化学反応がエポキシ基形成反応、ウレタン結合形成反応、または尿素結合形成反応であることを特徴とする<11>〜<13>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
<15> 前記2種のモノマーの一方が分子内に少なくとも2つのエポキシ基又はシアノ基を有するモノマーであり、他方が分子内に2つのアミノ基を有するモノマーであることを特徴とする<11>〜<14>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、耐久性の強い有機電界発光素子およびその製造方法が提供される。特に長時間連続駆動時の素子の温度上昇が防止され、耐久性の強い有機電界発光素子およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に伝熱層を有する。該伝熱層は、少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーの蒸着重合ポリマーを含有する。
【0012】
好ましくは、前記熱伝導材料が、黒色カーボン材料であることを特徴とする<1>記載の有機電界発光素子。
好ましくは、前記蒸着重合ポリマーが、前記少なくとも2種のモノマーを真空中で加熱して蒸発させ、化学反応により前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に形成されたものである。
好ましくは、前記化学反応が水を生成しない化学反応である。より好ましくは、前記水を生成しない化学反応がエーテル結合、尿素結合、ウレタン結合、もしくはイミド結合を形成する反応である。
好ましくは、前記2種のモノマーが少なくとも分子内に少なくとも2つのエポキシ基もしくはシアノ基を有するモノマーとアミノ基を有するモノマーである。好ましくは、前記蒸着重合ポリマーがエポキシポリマー、ポリ尿素、またはポリウレタンである。
【0013】
好ましくは、前記伝熱層に隣接して放熱層を有する。好ましくは、前記放熱層がセラミック材料を含有する。前記セラミック材料として好ましくは、アルミナ、又はジルコニアを含有する。
【0014】
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0015】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
本発明における伝熱層は、基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有する従来の素子層構成において、素子の光を取り出さない面側に設置される。即ち透明で光り取りだし電極となる電極に対し、他方の電極の外側に設置される。例えば、透明基板上に透明陽極を配し、順に発光層を含む有機化合物層の積層構造および陰極を配する構造(ボトムエミッション型構造)においては、陰極の前記有機化合物層の積層構造体とは反対面に本発明における伝熱層が設けられる。
一方、不透明もしくは反射基板上に陽極、発光層を含む有機化合物層の積層構造および透明陰極を配する構造(トップエミッション型構造)においては、基板の前記陽極を有する面とは反対面に本発明における伝熱層が設けられる。
【0016】
2)伝熱層
本発明における伝熱層は、少なくとも熱伝導材料と蒸着重合ポリマーを含有し、素子の駆動に伴って生成した熱を素子外部に放熱を促進する層である。
前記伝熱層は、前記熱伝導材料の蒸発工程、および蒸着重合ポリマーを形成するモノマーをそれぞれ独立に蒸発させて、基材上に蓄積されることができる。
別の製造手段として、蒸着重合ポリマーを形成する2種以上のモノマーをそれぞれ独立に蒸発させる工程を有し、前記2種のモノマーの少なくとも一方が前記熱伝導材料を予め混合して有し、該モノマーの蒸着に伴って該熱伝導材料を蒸着させる手段も用いることができる。
(1)熱伝導材料
本発明における熱伝導材料は、透明であっても不透明であっても、あるいは無色であっても有色であっても、熱伝導性であれば特に制限無く用いることができる。
例えば、カーボン、フラーレンC60、カーボンナノチューブ、各種金属、金属酸化物、および金属フッ化物などを挙げることが出来る。好ましくは、黒色カーボン材料である。
【0017】
(2)蒸着重合ポリマーおよび蒸着重合法
本発明に用いられる蒸着重合とは、真空蒸着の際の加熱によりモノマーの重合が起こる現象のことをいい、例えばモノマー材料を、圧力が10−2Pa〜10−8Paの真空中で、300℃以下の温度で加熱し、昇華させ、その昇華の際にモノマーを重合させて、基材上に積層させることをいう。また、他の具体例としてはボートにシャッターを取り付けておき、ボートを加熱してモノマーが重合を始めた時にシャッターを開け、それを前記基材上に積層させることを挙げることができる。さらに他の具体例としては、モノマー、またはオリゴマーを前記基材上に積層させ、それを200℃以下で加熱することを挙げることができる。この場合加熱しないで重合させてもよい。
【0018】
本発明における蒸着重合ポリマーは、少なくとも2種のモノマーを真空中で加熱して蒸発させ、重合反応により形成される。重合反応は、蒸着工程で進行しても、蒸着工程の後に追加加熱もしくは光照射などの追加重合手段もしくはアニール手段により進行させても良い。
本発明においては、好ましくは、水を生成しない重合反応が用いられる。重合により水を生成すると、生成した水が素子を劣化させるからである。
本発明に用いられるモノマーとしては、エポキシ基を有するモノマー、桂皮酸エステルモノマー、カルベンモノマー、イソシアネート基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に用いられる重合反応により形成される結合として、エーテル結合、尿素結合、ウレタン結合、及びイミド結合が挙げられる。
具体的好ましい重合反応としては、ジグリシジルエーテル類などの2つ以上のエポキシ基を有するモノマーとアミノ基を有するモノマーの共重合、2つ以上のイソシアネート基を有するモノマーと2つ以上のアミノ基を有するモノマーの共重合、2つ以上のイソシアネート基を有するモノマーと2つ以上のヒドロキシ基を有するモノマーの共重合が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられるモノマーとしては、上記蒸着重合によって基材上に積層され、伝熱層を形成しうるものであれば特に制限はないが、たとえばエポキシ系モノマー、光重合をするケイ皮酸エステル類モノマー、および熱重合をするカルベン類モノマーからなる群から選ばれる一以上のモノマーからなるものを挙げることができる。たとえば、エポシキ系モノマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、ケイ皮酸エステル類モノマーとしてはケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ベンゾエイト等を挙げることができ、カルベン類モノマーとしては、イソシアノ酢酸エチル、フェニルイソシアナート、及びジアゾブタン等を挙げることができる。
【0020】
蒸着重合による製造方法については、特開平7−169569号公報に詳細に説明されていて、該公報に記載の蒸着重合手段を備えた有機EL製造装置を用いて、蒸着重合ポリマー膜の形成および有機EL素子の製造を行うことができる。
【0021】
重合条件については、特に制限はなく、伝熱層形成モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。たとえば、伝熱層形成モノマーとして光重合するケイ皮酸エステルモノマーを用いる場合には紫外線を照射しながら積層、形成(蒸着)し、熱重合するカルベン類モノマーを用いる場合には蒸着時にボートを50℃〜200℃で加熱しながら蒸着することを挙げることができる。
【0022】
エポキシ系モノマーを用いる場合には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、スチレンオキシド等をボートの温度を20℃〜200℃で加熱しながら蒸着することを挙げることができる。重合により激しい発熱反応が起る場合、原料を加熱する必要がないこともある。重合反応の起る場所はボート内、ガス状態時、積層時、形成時のいずれでもよく、継続して重合させてもよい。また、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれの状態で蒸着させてもよい。従来、エポキシ樹脂を溶剤塗布法を用いて積層し、封止層を形成してきたが、有機EL素子の場合には、溶媒の使用によって有機物質を含む構造体を汚染したり溶解させる問題があった。しかし、溶剤を使用しない本発明の方法を用いることにより、エポキシ樹脂を用いて伝熱層を形成することが可能である。
【0023】
蒸着される伝熱層の厚さについては、特に制限はないが1μm〜1mmが好ましい。
【0024】
本発明の1つの好ましい態様は、少なくとも1個のアミノ基を有する分子Aと、少なくとも2個のエポキシ基を有する分子Bとを、真空中で加熱して蒸発させ、エポキシ基とアミノ基との化学反応により基板上で高分子薄膜を形成させることを特徴とするエポキシ系ポリマー薄膜の形成方法である。
【0025】
本態様によれば、また、少なくとも1個のアミノ基を有する分子Aと、少なくとも2個のエポキシ基を有する分子Bであって、分子AおよびBのうちの少なくとも一方が分子分極を有するような分子AとBとを真空中で加熱して蒸発させ、電界を印加した状態で、エポキシ基とアミノ基との化学反応により基板上で高分子薄膜を形成させることを特徴とするエポキシ系ポリマー薄膜の形成方法が提供される。
【0026】
本態様において、分子Aのアミノ基は、芳香環などに直接結合しているアミノ基であってもよいが、分子Bのエポキシ基との反応性からみて、アルキレン基を介して結合しているアミノ基即ち脂肪族アミノ基もしくはアミノアルキル基であるのが好ましい。
【0027】
尚、蒸着重合を行うに際しては、特許2755272号において提案した如きMLD法を用いて、分子Aと分子Bとを交互に基板に飛来させ、成膜を行うこともできる。このMLD法によれば、構成分子単位で積層堆積された状態のポリマーを得ることができるという利点がある。
【0028】
本態様では、エポキシ基との反応性が高いアミノ基、特に脂肪族アミノ基を有するアミン化合物を用い、これとエポキシ化合物とをCVDにより反応させて、エポキシ系ポリマー薄膜を形成するものである。
【0029】
本態様の方法によれば、エポキシ系ポリマー薄膜を蒸着重合により形成することができるので、前述した如き、不純物の少ない膜が得られるため、膜本来の機能が向上すること、電場印加などによりモノマー状態で配向制御ができるため、膜に秩序構造を付与することができること、ドライプロセスであるため、スピンコート法と異なり、基板を空気中に取り出す必要がないので、有機EL素子製造プロセスにおいて全工程を真空中で行うことができることなどの利点が得られる。
【0030】
本発明に有用な分子Aおよび分子Bの具体例を下記に示す。
【0031】
分子Aの例
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
分子Bの例
【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
本態様においては、脂肪族アミノ基を有する、上記のような構造の脂肪族アミン分子は、低温でエポキシ基と反応するので、低い基板温度で、上記の如き構造を有するエボキシ化合物分子と反応してポリマー薄膜を与えるということが、図らずも見出されたのである。
【0046】
しかして、かかる本発明の方法によれば、製膜時に基板を高温にしなくてよいことから、プロセスの簡略化が可能であり、得られるポリマー薄膜から形成される有機EL素子関連部品への悪影響を排除することができ、また特にモノマーの配向制御を行う場合に、温度による分子配向の乱れを抑えることができるというメリットも得られる。
【0047】
また、別の態様として、真空中でポリ尿素原料モノマーを蒸発させ、これを基材上で蒸着重合させて、ポリ尿素膜を形成した後、該ポリ尿素膜に紫外線照射で架橋させてポリ尿素保護膜を形成することができる。
【0048】
また、前記ポリ尿素原料モノマーはジアミンモノマーと、ジイソシアナートモノマーとしてもよい。
【0049】
本態様における有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置は、真空中で有機化合物の原料モノマーを蒸発させる有機化合物蒸発源と、各蒸発源からの原料の蒸着で少なくとも発光層を備えた膜が形成される基板とを互いに対向して配置した成膜室と、基板上の少なくとも発光層を備えた膜の上に陰極材料を蒸発させる陰極材蒸発源を配置した陰極形成室と、陰極上にポリ尿素の原料モノマーを蒸発させる蒸発源を配置した保護膜形成室と、陰極上のポリ尿素膜に紫外線を照射する紫外線源を配置した紫外線処理室とをゲートバルブを介して連設したことを特徴とする。
【0050】
さらに別の態様として、ポリイミド膜を蒸着重合法により設けても良い。
ポリイミド膜はピロメリット酸二無水物とジアミンのモノマーを縮合重合することによって成膜される。ポリ尿素膜の原料には、例えば、MDI(4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート)とODA(4,4’ジアミンフェニルエーテル)などがある。二官能性モノマーなどの共蒸着によってポリイミド、ポリ尿素など薄膜を基材表面で重合するドライプロセスの蒸着重合法は、溶媒を使用しないため高純度の高分子薄膜が得られる。
【0051】
3)有機EL層
本発明における基板、陽極、陰極、および発光層を含む種々の機能層は、特に制限されることなく、従来公知の有機EL素子おける材料を公知の手段で利用することができる。
【0052】
以下、有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0053】
本発明における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層、及び発光層と電子輸送層の少なくとも一方との間に、電子輸送性中間層を有する。また、発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。
尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0054】
有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、およびスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0055】
次に、本発明の有機EL素子を構成する要素について、詳細に説明する。
【0056】
(基板)
本発明で使用する基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0057】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0058】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0059】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0060】
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0061】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0062】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0063】
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0064】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0065】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0066】
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0067】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0068】
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0069】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(例えば、LI、Na、K、又はCs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0070】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0071】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0072】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0073】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0074】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0075】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0076】
(有機化合物層)
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0077】
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等いずれによっても好適に形成することができる。
【0078】
(発光層)
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光性ドーパントの混合層とした構成でも良い。発光性ドーパントは蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0079】
本発明における発光性ドーパントとしては、燐光性発光材料、蛍光性発光材料等いずれもドーパントとして用いることができる。
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することができる。本発明における発光性ドーパントは、更に前記ホスト化合物との間で、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び1.2eV>△Ea>0.2eVの少なくとも一方の関係を満たすドーパントであることが駆動耐久性の観点で好ましい。
【0080】
《燐光発光性ドーパント》
前記燐光性の発光性ドーパントとしては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0081】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜20であり、特に好ましくは炭素数6〜12であり、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜20であり、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、さらに好ましくは炭素数2〜16であり、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、さらに好ましくは炭素数6〜20であり、フェノラト配位子など)、シリルオキシ配位子(例えば、好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは炭素数3〜20であり、例えば、トリメチルシリルオキシ配位子、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ配位子、トリフェニルシリルオキシ配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子、リン配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは炭素数3〜20、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルフォスフィン配位子など)、チオラト配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、さらに好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニルチオラト配位子など)、フォスフィンオキシド配位子(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数8〜30、さらに好ましくは炭素数18〜30、例えば、トリフェニルフォスフィンオキシド配位子など)であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0082】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、およびCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、またはRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、またはRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、またはRe錯体が特に好ましい。
【0083】
《蛍光発光性ドーパント》
前記蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、またはペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0084】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
【化13】

【0086】
【化14】

【0087】
【化15】

【0088】
【化16】

【0089】
【化17】

【0090】
【化18】

【0091】
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0092】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0093】
<ホスト材料>
本発明に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0094】
《正孔輸送性ホスト》
本発明に用いられる正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
好ましくは、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であり、より好ましくは、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましい。特に、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が好ましい。
【0095】
《電子輸送性ホスト》
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
【0096】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
【0097】
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物(A)は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、またはパラジウムイオンである。
【0098】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0099】
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、及びターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、及びヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、及び2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、及び4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
【0100】
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
【0101】
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0102】
本発明における発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起準位(T1)が、前記燐光発光材料のT1より高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0103】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0104】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0105】
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
【0106】
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、および三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0107】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
【0108】
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはフラーレンC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
【0109】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0110】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0111】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0112】
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることが出来る。
【0113】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0114】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0115】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0116】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0117】
(保護層)
本発明において、本発明の伝熱層もしくは放熱層を含む有機EL素子全体は、さらに保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、TI、NI等の金属、MgO、SIO、SIO、Al、GeO、NIO、CaO、BaO、Fe、Y、TIO等の金属酸化物、SIN、SIN等の金属窒化物、MgF、LIF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0118】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、又は転写法を適用できる。
【0119】
(封止)
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、およびシリコーンオイル類が挙げられる。
【0120】
また、下記に示す、樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
(樹脂封止層)
本発明の機能素子は樹脂封止層により大気との接触により、酸素や水分による素子性能の劣化を抑制することが好ましい。
<素材>
樹脂封止層の樹脂素材としては、特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、またはエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、または光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
<作製方法>
樹脂封止層の作製方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着または熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
<膜厚み>
樹脂封止層の厚みは1μm以上、1mm以下が好ましい。更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、最も好ましくは10μm以上50μm以下である。これよりも薄いと、第2の基板を装着時に上記無機膜を損傷する恐れがある。またこれよりも厚いと電界発光素子自体の厚みが厚くなり、有機電界発光素子の特徴である薄膜性を損なうことになる。
【0121】
(封止接着剤)
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
<素材>
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が好ましい。
【0122】
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。
封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)またはSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、および耐湿性が向上する。
【0123】
<乾燥剤>
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、または酸化ストロンチウムが好ましい。
封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
<封止接着剤の処方>
・ポリマー組成、濃度、
封止接着剤としては特に限定されることはなく、前記のものを用いることができる。例えば光硬化型エポキシ系接着剤としては長瀬ケムテック(株)製のXNR5516を挙げることができる。そこに直接前記乾燥剤を添加し、分散せしめれば良い。
・厚み
封止接着剤の塗布厚みは1μm以上1mm以下であることが好ましい。これよりも薄いと封止接着剤を均一に塗れなくなり好ましくない。またこれよりも厚いと、水分が侵入する道筋が広くなり好ましくない。
<封止方法>
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより機能素子を得ることができる。
【0124】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0125】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0126】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆる、トップエミッション方式であっても良い。
【0127】
本発明の有機EL素子は、発光効率を向上させるため、複数の発光層の間に電荷発生層が設けた構成をとることができる。
前記電荷発生層は、電界印加時に電荷(正孔及び電子)を発生する機能を有すると共に、発生した電荷を電荷発生層と隣接する層に注入させる機能を有する層である。
【0128】
前記電荷発生層を形成する材料は、上記の機能を有する材料であれば何でもよく、単一化合物で形成されていても、複数の化合物で形成されていてもよい。
具体的には、導電性を有するものであっても、ドープされた有機層のように半導電性を有するものであっても、また、電気絶縁性を有するものであってもよく、特開平11−329748や、特開2003−272860や、特開2004−39617に記載の材料が挙げられる。
【0129】
更に具体的には、ITO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電材料、C60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等などの導電性有機物、Ca、Ag、Al、Mg:Ag合金、Al:Li合金、Mg:Li合金などの金属材料、正孔伝導性材料、電子伝導性材料、及びそれらを混合させたものを用いてもよい。
前記正孔伝導性材料は、例えば2−TNATA、NPDなどの正孔輸送有機材料にF4−TCNQ、TCNQ、FeClなどの電子求引性を有する酸化剤をドープさせたものや、P型導電性高分子、P型半導体などが挙げられ、前記電子伝導性材料は電子輸送有機材料に4.0eV未満の仕事関数を有する金属もしくは金属化合物をドープしたものや、N型導電性高分子、N型半導体が挙げられる。N型半導体としては、N型Si、N型CdS、N型ZnSなどが挙げられ、P型半導体としては、P型Si、P型CdTe、P型CuOなどが挙げられる。
また、前記電荷発生層として、Vなどの電気絶縁性材料を用いることもできる。
【0130】
前記電荷発生層は、単層でも複数積層させたものでもよい。複数積層させた構造としては、透明伝導材料や金属材料などの導電性を有する材料と正孔伝導性材料、または、電子伝導性材料を積層させた構造、上記の正孔伝導性材料と電子伝導性材料を積層させた構造の層などが挙げられる。
【0131】
前記電荷発生層は、一般に、可視光の透過率が50%以上になるよう、膜厚・材料を選択することが好ましい。また膜厚は、特に限定されるものではないが、0.5nm〜200nmが好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、3nm〜50nmがさらに好ましく、5nm〜30nmが特に好ましい。
電荷発生層の形成方法は、特に限定されるものではなく、前述した有機化合物層の形成方法を用いることができる。
【0132】
電荷発生層は前記二層以上の発光層間に形成するが、電荷発生層の陽極側および陰極側には、隣接する層に電荷を注入する機能を有する材料を含んでいても良い。陽極側に隣接する層への電子の注入性を上げるため、例えば、BaO、SrO、LiO、LiCl、LiF、MgF、MgO、又はCaFなどの電子注入性化合物を電荷発生層の陽極側に積層させてもよい。
【0133】
以上で挙げられた内容以外にも、特開2003−45676号公報、米国特許第6337492号、同第6107734号、同第6872472号等に記載を元にして、電荷発生層の材料を選択することができる。
【0134】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明または半透明電極、発光層、および金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明または半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0135】
有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機EL素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機EL素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
また、上記方法により得られる異なる発光色の有機EL素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色および黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0136】
(本発明の用途)
本発明の有機電界発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
【実施例】
【0137】
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載する実施例によって制限されるものではない。
【0138】
実施例1
1.有機EL素子の作製
下記に従ってボトムエミッション型有機電界発光素子を作製した。
基板として厚み0.7mmで2.5cm角の酸化インジウム錫(ITO)膜付ガラス板(ITO厚み:150nm)を用いた。ITO電極(陽極)幅は2mmとした。
この上に以下の機能層をいずれも抵抗加熱式真空蒸着法により順次設けた。
機能層:170nmの4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)層/10nmのN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(NPD)層/50nmのトリス(8−ヒドロキシキノニナート)アルミニウム(Alq)層/0.5nmのフッ化リチウム(LiF)層
この上に、陰極として100nmのアルミニウム(Al)を抵抗加熱式真空蒸着法により蒸着した。Al電極幅は2mmとした。
【0139】
この上に下記伝熱層を設けた。
<本発明の素子No.1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
分子Aおよび分子Bは抵抗加熱、カーボンはカーボンロッドへの電流通電により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボン=1:1:2とし、全体の蒸着レートを1nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0140】
<本発明の素子No.2:ポリ尿素とカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
素子No.1における分子Aを4,4’−Diphenylmethane Diisocyanate、分子Bを1,3−Di−4−piperidylpropaneとして、素子No.1と同条件で製膜した。
【0141】
【化19】

【0142】
<本発明の素子No.3:ポリウレタンとカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
素子No.1における分子Aを4,4’−Diphenylmethane Diisocyanate、分子Bを1,3−Di−4−hydroxycyclohexylpropaneとして、素子No.1と同条件で製膜した。
【0143】
【化20】

【0144】
<本発明の素子No.4:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとフラーレンC−60を含有する伝熱層>
下記により調製した。
分子A、分子B、およびC−60は抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:C−60=1:1:2とし、全体の蒸着レートを1nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0145】
<本発明の素子No.5:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとカーボンナノチューブを含有する保護層>
下記により調製した。
分子A、分子B、およびカーボンナノチューブは抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボンナノチューブ=1:1:2とし、全体の蒸着レートを1nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0146】
<比較の素子No.A:本発明の素子No.1と同様で、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーを含有しカーボンを含有しない保護層>
下記により調製した。
分子A、分子Bは抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボンナノチューブ=1:1とし、全体の蒸着レートを0.5nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0147】
2.性能評価
得られた本発明の素子No.1〜5、および比較の素子Aについて、室温、窒素雰囲気下で下記性能を評価した。
1)評価項目
・一定電流における駆動電圧、およびEL発光輝度
電流密度25mA/cm時の駆動電圧(V)、発光輝度(cd/m)を測定した。
・駆動耐久性
電流密度25mA/cmでの連続駆動において、発光輝度が初期輝度から半減するまでの時間を測定した。
【0148】
2)評価結果
得られた結果を表1に示した。
【0149】
【表1】

【0150】
本発明の素子No.1〜5は、駆動電および発光輝度は比較の素子Aと同等であるが、特に駆動耐久性が向上した。
【0151】
実施例2
1.有機EL素子の作製
下記のトップエミッション型有機電界発光素子を作製した。
基板として厚み0.7mmで2.5cm角のガラス板を用いて、表面に下記の伝熱層を設けた。
【0152】
<本発明の素子No.11:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
分子Aおよび分子Bは抵抗加熱、カーボンはカーボンロッドへの電流通電により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボン=1:1:2とし、全体の蒸着レートを1nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0153】
<本発明の素子No.12:ポリ尿素とカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
素子No.11における分子Aを4,4’−Diphenylmethane Diisocyanate、分子Bを1,3−Di−4−piperidylpropaneとして、素子No.1と同条件で製膜した。
【0154】
【化21】

【0155】
<本発明の素子No.13:ポリウレタンとカーボンを含有する伝熱層>
下記により調製した。
素子No.11における分子Aを4,4’−Diphenylmethane Diisocyanate、分子Bを1,3−Di−4−hydroxycyclohexylpropaneとして、素子NO.1と同条件で製膜した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0156】
【化22】

【0157】
<本発明の素子No.14:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとフラーレンC−60を含有する伝熱層>
下記により調製した。
分子A、分子B、およびC−60は抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:C−60=1:1:2とし、全体の蒸着レートを1nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0158】
<本発明の素子No.15:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーとカーボンナノチューブを含有する保護層>
下記により調製した。
分子A、分子B、およびカーボンナノチューブは抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボンナノチューブ=1:1:2とし、全体の蒸着レートをnm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0159】
<比較の素子No.B:本発明の素子No.11と同様で、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子A)とアミノエチルベンゼン(分子B)の共着重合ポリマーを含有しカーボンを含有しない保護層>
下記により調製した。
分子A、分子Bは抵抗加熱により真空蒸着した。各材料の蒸着レートを、分子A:分子B:カーボンナノチューブ=1:1とし、全体の蒸着レートを0.5nm/sとして、全体の膜厚が10μmとなるように蒸着した。蒸着後、窒素雰囲気中60℃10時間加熱して重合反応を促進した。
【0160】
基板の上記伝熱層の上に、反射層としてアルミニウムを抵抗加熱式真空蒸着法により100nm蒸着した後、樹脂層(アクリル系樹脂)をスピンコート法によって2000nm設けた。
さらに陽極として厚み150nmのITOをアルゴンスパッタにて成膜し、エッチングにより2mmの幅に成型した。
この上に以下の機能層をいずれも抵抗加熱式真空蒸着法により順次設けた。
機能層:170nmの2−TNATA層/10nmのNPD層/50nmのAlq層/0.5nmのLiF層
この上に、第2電極(陰極)として1.5nmのAlと15nmのAg層を抵抗加熱式真空蒸着法により蒸着した。
【0161】
2.性能評価
得られた本発明の素子No.11〜15、および比較の素子Bについて、実施例1と同様に性能を評価した。
【0162】
【表2】

【0163】
本発明の素子No.11〜15は、駆動電および発光輝度は比較の素子Bと同等であるが、特に駆動耐久性が向上した。
【0164】
実施例3
1.有機EL素子の作製
実施例1の本発明の素子No.1において、保護層の上にさらにセラミック材料を含有する下記放熱層を設けた。
放熱層:Al膜、膜厚2μm、スパッタにより製膜した。
【0165】
2.性能評価
EL駆動電圧、発光輝度はセラミック材料膜なしの素子No.1と同等であったが、駆動耐久性はセラミック材料膜なしの素子No.1の210時間に対して242時間と向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に伝熱層を有し、該伝熱層が少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーの蒸着重合ポリマーを含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記熱伝導材料が、黒色カーボン材料であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記蒸着重合ポリマーが、前記少なくとも2種のモノマーを真空中で加熱して蒸発させ、化学反応により前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記化学反応が水を生成しない化学反応であることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記水を生成しない化学反応がエーテル結合、尿素結合、ウレタン結合、もしくはイミド結合を形成する反応であることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記2種のモノマーが少なくとも分子内に少なくとも2つのエポキシ基もしくはシアノ基を有するモノマーとアミノ基を有するモノマーであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記蒸着重合ポリマーがエポキシポリマー、ポリ尿素、またはポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記伝熱層に隣接して放熱層を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記放熱層がセラミック材料を含有することを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記セラミック材料がアルミナ、又はジルコニアを含有することを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
基板上に、一対の電極、および前記電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層を挟持して有し、前記電極の少なくとも一方は光を取り出す透明電極である有機電界発光素子の製造方法であって、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に、少なくとも熱伝導材料と少なくとも2種のモノマーを蒸発させ、化学反応により重合させ、前記有機電界発光素子の光を取り出さない面側に熱伝導材料と蒸着重合ポリマーを含有する伝熱層を形成する工程を有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記伝熱層を形成する工程が少なくとも前記熱伝導材料の蒸発工程、および前記2種のモノマーをそれぞれ独立に蒸発させる工程を有することを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記2種のモノマーをそれぞれ独立に蒸発させる工程を有し、前記2種のモノマーの少なくとも一方が前記熱伝導材料を予め混合して有し、該モノマーの蒸着に伴って該熱伝導材料を蒸着することを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記化学反応がエポキシ基形成反応、ウレタン結合形成反応、または尿素結合形成反応であることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記2種のモノマーの一方が分子内に少なくとも2つのエポキシ基又はシアノ基を有するモノマーであり、他方がアミノ基を有するモノマーであることを特徴とする請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【公開番号】特開2008−311076(P2008−311076A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157821(P2007−157821)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】