説明

有機電界発光素子用材料、膜、発光層、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の作製方法

【課題】結晶化させずに配向性の高い膜を成膜可能な有機電界発光素子用材料を提供すること。
【解決手段】発光材料と液晶性ホスト材料とを含む有機電界発光素子用材料であって、発光材料のアスペクト比が3以上であり、前記液晶性ホスト材料の相転移によるエンタルピー変化が下記式(A)を満たす有機電界発光素子用材料。
ΔHLI/ΔHCL>0.7 (A)
ΔHLIは前記液晶性ホスト材料が液晶相から等方相へ又は等方相から液晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表し、ΔHCLは前記液晶性ホスト材料が結晶相から液晶相へ又は液晶相から結晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、膜、発光層、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、有機EL素子ともいう)は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途などとしての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
有機EL素子は、通常、発光層を含め素子を構成する各層や素子の基板(ガラス基板)の屈折率は空気より高く、例えば、有機電界発光素子では、発光層などの有機層の屈折率は1.6〜2.1である。このため、発光した光の多くは界面で全反射してしまうため、発光層で発光した光のうちの約20%しか素子外に取り出すことができない。この状態で高い輝度を得るためには、過剰に発光させる必要があり、結果として素子の耐久性が低下してしまう問題がある。
これに対して、発光材料を基板に対して水平に配向させ、基板面に対して垂直な方向の発光成分を増やすことで、光取り出し効率が原理的に向上することが知られている。
例えば、特許文献1には、発光性ディスコティック液晶を基板に対して水平に配向させることで、発光した光の指向性を改善し、光取り出し効率を向上させ、結果として耐久性を向上させることが記載されている。
【0004】
ところで、有機EL素子において、発光層及びその他の有機層は、蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することができる。このうち、蒸着成膜法は、無溶媒で成膜が可能なこと、不純物混入が少ないこと、膜厚の制御が容易なこと、シャドウマスクを用いたパターン化が可能なこと等の点で有利である。
蒸着成膜法は、材料の配向がランダムな状態で成膜されるため、室温で結晶化する材料(室温結晶の材料)であっても結晶化させずにアモルファス状態で成膜しやすい。
しかし、非特許文献1には、嵩高い置換基を有する棒状の発光材料と形状異方性の小さいホスト材料を蒸着成膜しても、結晶化させずにアモルファス状態なものの発光材料が特定方向に配向した膜が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−321371号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Organic Electronics,10,127−137(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、液晶性材料(室温結晶の材料)の場合、蒸着成膜法で特定方向に配向させようとすると結晶化しやすく、蒸着レートを上げて成膜すれば、結晶化させずにアモルファス状態で成膜できるものの、特定方向への配向性を付与することが難しい。
非特許文献1では、アモルファス状態の膜中で特定方向に発光材料が配向した膜(以下、「アモルファス配列状態の膜」とよぶ)が得られているが、本発明者らが検討した結果、その配向性は低く、また非特許文献1の発光材料は棒状構造であり、平面性が高い白金錯体などの発光材料は配向しないことが予想される。
特許文献1では、発光性ディスコティック液晶を基板に対して水平に配向させているが、塗布により成膜されており、蒸着によりアモルファス配列状態の膜が得られるか不明である。また、本発明者らが検討した結果、特許文献1の素子は偏光発光比やフォトルミネッセンスによる発光量子収率が低いことが分かった。
偏光発光比やフォトルミネッセンスによる発光量子収率は、発光材料の遷移双極子モーメントの配向度を示し、EL素子における光取り出し効率に直接つながるため、その向上が求められている。
【0008】
本発明の目的は、結晶化させずに配向性の高い膜を成膜可能な有機電界発光素子用材料を提供することである。本発明の他の目的は、該有機電界発光素子用材料を用いた膜及び発光層を提供することである。更に本発明の目的は、光取り出し効率に優れた有機電界発光素子を提供及び該有機電界発光素子の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、液晶性材料の相転移エンタルピーに着目し、液晶相と等方相との相転移におけるエンタルピー変化と、結晶相と液晶相との相転移におけるエンタルピー変化が特定の関係を満たすような材料を用いた場合、結晶化せずに良好なアモルファス配列状態が得られることを見出した。
【0010】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1]
発光材料と液晶性ホスト材料とを含む有機電界発光素子用材料であって、
前記発光材料のアスペクト比が3以上であり、
前記液晶性ホスト材料の相転移によるエンタルピー変化が下記式(A)を満たす、有機電界発光素子用材料。
ΔHLI/ΔHCL>0.7 (A)
ここで、ΔHLIは前記液晶性ホスト材料が液晶相から等方相へ又は等方相から液晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表し、ΔHCLは前記液晶性ホスト材料が結晶相から液晶相へ又は液晶相から結晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表す。
[2]
前記液晶性ホスト材料がディスコティック液晶性材料である、[1]に記載の有機電界発光素子用材料。
[3]
前記ディスコティック液晶性材料が下記一般式(I)で表される化合物である、[2]に記載の有機電界発光素子用材料。
一般式(I)
【化1】

一般式(I)中、yはトリフェニレン骨格に置換するLの数を表し、1〜6の整数である。*はLが置換する置換位置を表す。Lは以下の基を表す。
【化2】

**はトリフェニレン骨格に結合する位置を表す。Zは2価の連結基を表し、Arは置換基を有してもよい芳香環を表し、Tは2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はパーフルオロアルキル基を表す。ただし、Rは、一般式(I)で表される化合物が液晶性を発現するのに必要な最も短い鎖長を有する。nは0又は1、mは0又は1、xは0又は1、rは0又は1である。r=0のときは、m=1、x=0である。
[4]
前記発光材料が白金錯体である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
[5]
前記白金錯体が下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである、[4]に記載の有機電界発光素子用材料。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
一般式(2)
【化4】

(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
一般式(5)
【化7】

(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
[6]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。
[7]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層。
[8]
発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該発光層が[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する、有機電界発光素子。
[9]
発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子の作製方法であって、
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層を真空蒸着プロセスで作製する、有機電界発光素子の作製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結晶化させずに配向性の高い膜を成膜可能な有機電界発光素子用材料を提供することができる。また、本発明によれば、光取り出し効率に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0014】
[有機電界発光素子用材料]
本発明の有機電界発光素子用材料は、発光材料と液晶性ホスト材料とを含む有機電界発光素子用材料であって、発光材料のアスペクト比が3以上であり、液晶性ホスト材料の相転移によるエンタルピー変化が下記式(A)を満たす、有機電界発光素子用材料。
ΔHLI/ΔHCL>0.7 (A)
ここで、ΔHLIは液晶性ホスト材料が液晶相から等方相へ又は等方相から液晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表し、ΔHCLは液晶性ホスト材料が結晶相から液晶相へ又は液晶相から結晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表す。
【0015】
ΔHLI/ΔHCLが0.7より大きい液晶性ホスト材料を用いた場合に、結晶化せずに配向性の高いアモルファス配列状態の膜が得られる理由は定かではないが、次のように推測している。
ΔHは状態間の熱的安定性を示し、ΔHLI/ΔHCLが0.7より小さい場合は、液晶状態と結晶状態の熱的安定性の差が、等方相と液晶相の熱的安定性の差よりも大きく、成膜時に速やかに熱的に最安定な結晶状態へと転移する。また、該範囲の材料は、ΔHCLそのものの値が小さいことが多く、この場合は、液晶相となっても配向度が向上しないまま、固化することになる。
逆にΔHLI/ΔHCLが0.7より大きい場合は、液晶状態の熱的安定性が高く、結晶に転移する前に固化する。また、この場合、液晶相が安定な為、配向度が高くなる。
【0016】
本発明の有機電界発光素子用材料を用いて得た膜においては、液晶性ホスト材料の配向性が高く、これにより発光材料の配向性も高まり、該膜を発光層として有機電界発光素子に適用した場合に光取り出し効率も向上させることができる。
【0017】
ΔHLI/ΔHCLは0.8より大きいことが好ましく、1.0より大きいことがより好ましい。ΔHLI/ΔHCLの上限は特に限定されないが、ガラス転移温度を高くするとの理由で、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
液晶性ホスト材料の相転移エンタルピー変化は、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。
以下、本発明の有機電界発光素子用材料の構成について説明する。
【0018】
(液晶性ホスト材料)
本発明に用いる液晶性ホスト材料としては、上記式(A)を満足すれば、公知の液晶性化合物を使用することができるが、素子の光取り出し効率向上の観点から、ディスコティック液晶性材料(円盤状液晶性材料)が好ましい。
ディスコティック液晶性材料は平面性が高く水平配向させ易い。ディスコティック液晶性材料の配向に伴って発光材料も水平配向し、光取り出し効率を向上させることができる。特に平面性の高い発光材料を配向させる為に好ましい。ここで、水平配向とは、材料を基板(又は下層)上に成膜したときに、該基板(又は下層)対して平行な方向を指す。
【0019】
(ディスコティック液晶性材料)
ディスコティック液晶性材料は、平面性の高い円盤状の分子からなる液晶性材料であり、屈折率が、負の光学一軸性である。
ディスコティック液晶性材料が発現する液晶相としては、カラムナー液晶相、ディスコティックネマチック液晶相(N相)などが挙げられる。これらの中でも、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック液晶相が好ましい。
なお、材料の液晶性の発現の有無は、偏光顕微鏡を観察することで判別することができる。
【0020】
ディスコティック液晶性材料には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0021】
ディスコティック液晶性材料としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶性材料は、最終的に有機電界発光素子に含まれる化合物が液晶性を示す必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性材料の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性材料の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0022】
ディスコティック液晶性材料のディスコティック液晶相−等方相転移温度は、50〜300℃が好ましく、70〜300℃がより好ましく、100℃〜300℃が特に好ましい。
【0023】
ディスコティック液晶性材料としては、下記一般式(I)で表される化合物であるトリフェニレン誘導体が好ましい。
一般式(I)
【0024】
【化8】

【0025】
一般式(I)中、yはトリフェニレン骨格に置換するLの数を表し、1〜6の整数である。*はLが置換する置換位置を表す。Lは以下の基を表す。
【0026】
【化9】

【0027】
**はトリフェニレン骨格に結合する位置を表す。Zは2価の連結基を表し、Arは置換基を有してもよい芳香環を表し、Tは2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はパーフルオロアルキル基を表す。ただし、Rは、一般式(I)で表される化合物が液晶性を発現するのに必要な最も短い鎖長を有する。nは0又は1、mは0又は1、xは0又は1、rは0又は1である。r=0のときは、m=1、x=0である。
【0028】
一般式(I)において、yはトリフェニレン骨格に置換するLの数を表し、1〜6の整数である。yは、好ましくは3〜6の整数であり、より好ましくは6である。
Z及びTは、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。具体的には、アルキレン基、−O−、−COO−、−OCO−、又はこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Arは置換基を有してもよい芳香環を表す。芳香環としては、縮環又は非縮環ベンゼン環、ピリジン環、縮環又は非縮環チオフェン環が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。Arが有していてもよい置換基としてはフッ素原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、液晶相発現の観点で、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8の範囲であり、更に好ましくは1〜5の範囲である。
【0029】
はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はパーフルオロアルキル基を表し、好ましくはアルキル基、パーフルオロアルキル基であり、より好ましくはアルキル基である。Rのアルキル部分は直鎖であることが好ましい。ただし、Rは、一般式(I)で表される化合物が液晶性を発現するのに必要な最も短い鎖長を有する。この液晶性を発現するのに必要な最も短い鎖長は、L中の他の基(Z、Ar及びT)の形態にも依存するが、Rが有する炭素数として好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
【0030】
nは0又は1であり、mは0又は1、xは0又は1、rは0又は1である。ただし、rが0のとき、m=1、x=0である。n及びxのいずれか一方は1であることが好ましい。rは1であることが好ましい。
【0031】
Lとしては、具体的には、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−(O−RnT−、R−(O−RnT−O−、R−O−、R−COO−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、R−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8の範囲であり、更に好ましくは2〜6の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはArが有していてもよい置換基と同じものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
は好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0032】
Lとしては、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−(O−RnT−、R−(O−RnT−O−、R−O−、R−COO−、R−O−Ph−COO−が好ましく、R−、R−O−、R−COO−がより好ましく、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−O−、R−COO−が更に好ましい。
【0033】
一般式(I)で表されるトリフェニレン誘導体の具体例を下記に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0034】
【化10】

【0035】
上記のトリフェニレン誘導体以外のディスコティック液晶性材料としては、例えば下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記の具体例において、Lは上記一般式(I)のLと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
上記化合物(D1)〜(D8)において、(D3)、(D6)、(D8)が好ましい。
【0039】
ディスコティック液晶性材料の分子半径としては、0.4nm〜3nmが好ましく、1.0nm〜2.5nmがより好ましく、1.0nm〜2.0nmが特に好ましい。
ディスコティック液晶性ホスト材料の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
分子半径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、ディスコティック液晶性材料の分子半径を求める。
【0040】
有機電界発光素子用材料における液晶性ホスト材料の含有量は、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0041】
(発光材料)
本発明の有機電界発光素子用材料に用いる発光材料について説明する。
発光材料としては、液晶性ホスト材料の配向を乱さないで自身の配向性を向上させる観点から、アスペクト比は3以上であり、3〜30がより好ましく、4〜20が特に好ましい。
ここで、アスペクト比とは、分子コア直径と分子コア厚みとの比(分子コア直径/分子コア厚み)である。
前記分子コア直径とは、クロモフォア(共役系でつながった発色団、発光骨格)の最も長い分子長を意味する。
前記分子コア直径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ
にて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを前記燐光発光性化合物の分子コア直径と定義する。
前記分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。
前記分子コア厚みについても、前記分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0042】
発光材料の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。この範囲であることは、配向性の向上、発光強度と発光波長の制御し易さ等の観点から好ましい。
ここで、発光材料の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
分子半径としては、前記分子コア直径と同様に、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、発光材料の分子半径を求める。
分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。分子コア厚みについても、分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0043】
発光材料の分子半径と液晶性ホスト材料の分子半径とのサイズ比(発光材料の分子半径/液晶性ホスト材料の分子半径)としては、0.8〜1.2が好ましく、0.85〜1.15がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。前記サイズ比がこの範囲であると、有機電界発光素子の正面方向の輝度が上昇する。これは、液晶性ホスト材料に発光材料を混合しても、液晶性ホスト材料の配向秩序度(オーダーパラメーター)を低下させないため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となり、発光材料分子の配向方向が均一になるためと推測している。なお、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
【0044】
発光材料としては、例えば遷移金属原子、を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0045】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
配位子としては、例えば、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0046】
遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。
【0047】
発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、燐光発光材料が好ましく、前記アスペクト比が3以上となる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、サレン系、ポルフィリン系骨格の白金錯体がより好ましい。
【0048】
前記白金錯体としては、下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択されることが好ましい。
一般式(1)
【0049】
【化13】

【0050】
(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【0051】
一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。好ましくは、Zが炭素原子、Yが窒素原子、Xが炭素原子である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。nは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。pは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。qは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0052】
〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭化水素基で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
また、R及びRとしては、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基又はシリル基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、フェニル基であることが好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0053】
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子)である。Arとしてより好ましくは、置換基を有するフェニル基であり、該置換基としては、メチル基、t−ブチル基、4−ペンチル−シクロヘキシル基、4−ペンチル−シクロヘキシルメトキシ基などが好ましい。
m、n、p、q、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
一般式(2)
【0054】
【化14】

【0055】
(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0056】
一般式(2)中、X,Y,Zは、一般式(1)のX,Y,Zと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0057】
〜Rは、一般式(1)のR〜Rと同義である。
及びRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子、シアノ基が好ましい。
及びRが表すアルキル基としては、置換基を有してもよい、メチル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが好ましく、ブチル基、トリフルオロメチル基、オクチル基、デシル基がより好ましい。
及びRが表すアルコキシ基としては、デシルオキシ基が好ましい。
及びRが表すアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基が好ましく、該置換基としては、アルキル基が好ましく、プロピル基、ブチル基がより好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0058】
r、s、t、u、は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは0又は1が好ましく、uは0又は1が好ましい。
r、s、t、u、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。該環状構造としては、ベンゾフラン環が挙げられる。
【0059】
とWとは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
とWが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
また、WとWが結合して形成する環状構造としては、シクロヘキシル環状構造が挙げられる。
とWとしては、高アスペクト比の観点でメチル基、シクロヘキシル環状構造が好ましい。
一般式(3)
【0060】
【化15】

【0061】
(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0062】
一般式(3)中、R〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、ペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0063】
〜R10は、水素原子あるいはRとR11、R10とR12がそれぞれ結合したヘテロ芳香環が好ましい。該へテロ芳香環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。好ましくは、ピリジン環である。
13、R14、R15、R16は、R13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環であることが好ましい。該芳香環としては、ベンゼン環が挙げられる。
11とR12は、水素原子、アルキル基、又はR11とR12が結合した芳香環を表すことが好ましい。R11とR12が結合した芳香環としては、ベンゼン環又はナフタレン環が挙げられる。
とR11、R10とR12がそれぞれ結合したヘテロ芳香環、及びR13、R14、R15、R16は、R13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子などが挙げられ、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ウンデシル基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フッ素原子が好ましい。
これらの中でも、アスペクト比及び分子サイズの観点でR13とR16、R14とR15、R11とR12がそれぞれ結合した芳香環が好ましい。
【0064】
一般式(3)で表される化合物のより好ましい態様としては、下記一般式(6)の化合物が挙げられる。
一般式(6)
【0065】
【化16】

【0066】
前記構造式(6)中、Bは、芳香族及び非芳香族の6員環のいずれかを形成してもよい。
17〜R26は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
17、R20、R21、R24は、水素原子、アルキル基が好ましい。
18、R19、R22、R23は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基が好ましく、アルキル基、アルコキ基がより好ましく、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基が更に好ましい。
25〜R26は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はR25とR26が結合した芳香環が好ましい。
Bは非芳香族6員環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。該環には置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基(メチル基、ブチル基)が挙げられる。
アススペクト比の観点からは、R17〜R26は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
一般式(4)
【0067】
【化17】

【0068】
(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【0069】
一般式(4)中、R〜R、Ar、X、Y、Z、m、n、pは一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。
gは、0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0070】
30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基は、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
30としては、フッ素原子が好ましい。
アススペクト比の観点からは、R30は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
一般式(5)
【0071】
【化18】

【0072】
(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【0073】
一般式(5)中、R、R、Ar、Z、m、nは一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同じである。また、M、Q、R30、gは一般式(4)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0074】
一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
一般式(1)〜(5)で表される白金錯体は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0079】
有機電界発光素子用材料における発光材料の含有量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0080】
有機電界発光素子においては、発光材料の遷移双極子モーメントを陽極に対して水平に配向させるが好ましい。発光材料の遷移双極子モーメントが陽極に対して水平に配向されることで、陽極に対して垂直方向への発光成分が増加し、光取り出し効率を向上させる点で有利である。
遷移双極子モーメントの方向としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて行う。計算に使用する分子構造は、構造最適化計算を行って生成エネルギーが最小となる構造を用い、遷移双極子モーメントの方向を求めることができる。
あるいは、発光層を形成した後、ATR−IR測定法や斜入射UV測定法により測定することもできる。
【0081】
〔膜〕
本発明の有機電界発光素子用材料により、液晶性ホスト材料及び発光材料の配向性が高い膜を得ることができる。該膜は、配向性の観点から真空蒸着プロセスにより形成することが好ましいが、塗布プロセスによっても配向性の良好な膜を得ることができる。該膜は、有機電界発光素子の発光層として用いることができ、配向性が高いため光取り出し効率に優れる発光層とすることができる。
【0082】
〔有機電界発光素子〕
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子の好ましい態様としては、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子である。
【0083】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層と陽極の間に更に少なくとも一層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0084】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、陽極上に又は陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、陽極又は陰極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0085】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0086】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0087】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0088】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0089】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0090】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0091】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、真空蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。乾式法としては真空蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。
これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。 湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0092】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0093】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は前述の本発明の有機電界発光素子用材料を含む。
発光材料としては、配向性の観点から、前述した平面性の高い発光材料が好ましく、燐光発光材料であることが好ましく、白金錯体であることが更に好ましい。発光材料は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
配向性の観点から発光層は真空蒸着プロセスにより形成することが好ましい。
【0094】
発光層中の発光材料の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であるのがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0095】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から発光材料へエネルギー移動が起こり、その結果、該発光を発光させる化合物である。
本発明では、前述した液晶性ホスト材料を含有する。該液晶性ホスト材料の発光層中での含有量は、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0096】
ホスト材料としては、前述の液晶性ホスト材料以外の材料を含有させてもよく、その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0097】
発光層の厚みは、駆動電圧上昇を抑え、また短絡を防止する観点から、10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。
【0098】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0099】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0100】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0101】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0102】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0103】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0104】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0105】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0106】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
以下、溶媒の混合比は体積比を表す。
【0108】
(実施例1)
(液晶性ホスト材料1〜3の合成)
下記スキームにのっとり、合成を行った。
【0109】
【化22】

【0110】
上記スキーム中、Rは、−C[ホスト材料1]、−(n−C)[ホスト材料2]、−(n−C11)[ホスト材料3]を表す。
【0111】
ヘキサヒドロキシトリフェニレン(1g)に対して、アルキルブロミド(7.2当量、アルキル部位は上記Rに相当する)及びDBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)(9当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(20ml)を加熱環流下で12時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30〜1/40)することにより、液晶性ホスト材料1〜3(収率60%〜85%)を得た。なお、化合物の同定は、元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行うことができる。以下に、得られた液晶性ホスト材料1〜3のNMRデータを示す。なお、得られた液晶性ホスト材料1〜3の外観は白色固体であった。
【0112】
ホスト材料1
1H−NMR(CDCl3
δ:1.12(18H,t)、2.02(12H,m)、4.15(12H,t)、7.80(6H,s)
【0113】
ホスト材料2
1H−NMR(CDCl3
δ:0.97(18H,t)、1.45(12H,m)、1.80(12H,m)、4.00(12H,t)、7.80(6H,s)
【0114】
ホスト材料3
1H−NMR(CDCl3
δ:0.85(18H,t)、1.33(12H,m)、1.54(12H,m)、1.85(12H,m)、4.10(12H,t)、7.80(6H,s)
【0115】
(液晶性ホスト材料4〜6の合成)
下記スキームにのっとり、合成をおこなった。
【0116】
【化23】

【0117】
上記スキーム中、Rは、−(n−C)[ホスト材料4]、−(n−C11)[ホスト材料5]、−(n−C13)[ホスト材料6]を表す。
【0118】
ヘキサヒドロキシトリフェニレン(1g)に対して、アシルクロリド(7.8当量、アシル基のアルキル部位は上記Rに相当する)及びトリエチルアミン(18当量)のTHF溶液(20ml)を室温で8時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8〜10)することにより、液晶性ホスト材料4〜6(収率70%〜90%)を得た。なお、化合物の同定は、元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行うことができる。以下に、得られた液晶性ホスト材料4〜6のNMRデータを示す。なお、得られた液晶性ホスト材料4〜6の外観は白色固体であった。
【0119】
ホスト材料4
1H−NMR(CDCl3
δ:0.88(18H,t)、1.33(12H,m)、1.58(12H,m)、2.53(12H,t)、8.45(6H,s)
【0120】
ホスト材料5
1H−NMR(CDCl3
δ:0.95(18H,t)、1.20−1.43(24H,m)、1.77(12H,m)、2.57(12H,t)、8.45(6H,s)
【0121】
ホスト材料6
1H−NMR(CDCl3
δ:0.87(18H,t)、1.25−1.45(36H,m)、1.70(12H,m)、2.56(12H,t)、8.45(6H,s)
【0122】
(実施例2)
上記のように作製した下記構造の液晶性材料について、偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察を行い、液晶性の発現の有無を調べた。液晶性を発現した材料については、DSCにより相転移エンタルピーを求め、ΔHLI/ΔHCLを計算した。結果を下記表1に示す。
【0123】
【化24】

【0124】
【表1】

【0125】
(成膜)
25mm×25mm×0.7mmの石英ガラス基板を洗浄し、UVオゾン処理した後、配向膜(日産化学製水平配向膜SE−130)をスピンコート塗布し、100℃で10分、その後180℃で1時間加熱することで下地基板(配向膜の膜厚200nm)を得た。
この下地基板上に、真空蒸着法にて、下記表2に示す液晶ホスト材料単独、又は液晶ホスト材料と発光材料を質量比(90:10)となるように蒸着して成膜した(膜厚300nm)。
(評価)
成膜後各試料について、偏光ATR−IR法解析によりホスト材料の配向度及び発光材料の配向度を算出した。
評価結果を表2及び表3に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【0128】
表2及び3の結果から、液晶性ホスト材料としてΔHLI/ΔHCLが0.7より大きな材料を用いることで、配向性が良好な膜が得られることが分かる。
【0129】
(実施例3)
(有機電界発光素子の作製)
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:NPD:膜厚40nm
第2層:表4記載の液晶性ホスト材料及び発光材料(質量比90:10):膜厚30nm
第3層:CBP:膜厚5nm
第4層:BAlq:膜厚45nm
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機電界発光素子を得た。
これらの素子を発光させた結果、各素子とも発光材料に由来する発光が得られた。
【0130】
(評価)
得られた素子について下記評価を行った。評価結果を表4に示す。
(a)外部量子効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出した。液晶性ホスト材料として材料1〜3を用いた素子については非液晶材料ホストの材料2を用いた素子の値を1とし、材料4〜6を用いた素子については非液晶材料ホストの材料5を用いた素子の値を1としたときの相対値を示した。
【0131】
【表4】

【0132】
表4から、本発明の有機電界発光素子用材料を発光層に用いた素子は、比較素子に対して外部量子効率が1.5倍以上優れ、光取り出し効率が向上していることが分かる。
【0133】
以下、上記の液晶ホスト材料1〜6以外の実施例で用いた化合物の構造を示す。
【0134】
【化25】

【0135】
【化26】

【符号の説明】
【0136】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光材料と液晶性ホスト材料とを含む有機電界発光素子用材料であって、
前記発光材料のアスペクト比が3以上であり、
前記液晶性ホスト材料の相転移によるエンタルピー変化が下記式(A)を満たす、有機電界発光素子用材料。
ΔHLI/ΔHCL>0.7 (A)
ここで、ΔHLIは前記液晶性ホスト材料が液晶相から等方相へ又は等方相から液晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表し、ΔHCLは前記液晶性ホスト材料が結晶相から液晶相へ又は液晶相から結晶相へ相転移する際のエンタルピー変化を表す。
【請求項2】
前記液晶性ホスト材料がディスコティック液晶性材料である、請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項3】
前記ディスコティック液晶性材料が下記一般式(I)で表される化合物である、請求項2に記載の有機電界発光素子用材料。
一般式(I)
【化1】

一般式(I)中、yはトリフェニレン骨格に置換するLの数を表し、1〜6の整数である。*はLが置換する置換位置を表す。Lは以下の基を表す。
【化2】

**はトリフェニレン骨格に結合する位置を表す。Zは2価の連結基を表し、Arは置換基を有してもよい芳香環を表し、Tは2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はパーフルオロアルキル基を表す。ただし、Rは、一般式(I)で表される化合物が液晶性を発現するのに必要な最も短い鎖長を有する。nは0又は1、mは0又は1、xは0又は1、rは0又は1である。r=0のときは、m=1、x=0である。
【請求項4】
前記発光材料が白金錯体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
前記白金錯体が下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の有機電界発光素子用材料。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
一般式(2)
【化4】

(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
一般式(5)
【化7】

(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層。
【請求項8】
発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該発光層が請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する、有機電界発光素子。
【請求項9】
発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子の作製方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層を真空蒸着プロセスで作製する、有機電界発光素子の作製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−79894(P2012−79894A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223257(P2010−223257)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】