説明

有機電界発光装置及びその製造方法、並びに有機電界発光ディスプレイ

【課題】有機材料からなる第1の光路長調整層及び無機材料からなる第2の光路長調整層を有し、耐久性が向上した有機電界発光装置、及び製造プロセスを簡易化する有機電界発光装置の製造方法、並びに有機電界発光ディスプレイの提供。
【解決手段】赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも1つの画素領域に、反射金属層と、半透明部材と、少なくとも発光層を有する有機電界発光素子と、光路長調整層とを有し、前記有機電界発光素子からの発光を共振させる共振構造を備えた有機電界発光装置であって、前記光路長調整層が、光透過性樹脂からなる第1の光路長調整層と、無機材料からなる第2の光路長調整層とからなる有機電界発光装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料からなる第1の光路長調整層及び無機材料からなる第2の光路長調整層を有し、耐久性が向上した有機電界発光装置、及び製造プロセスを簡易化する有機電界発光装置の製造方法、並びに有機電界発光ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイが広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器及びインフラの発展により、パーソナル・コンピュータ並びにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。更に、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへ、フラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスとして、有機電界発光素子がある。有機電界発光素子は、電気信号に応じて発光し、かつ発光物質として有機化合物を用いて構成される素子である。有機電界発光素子は、生来的に広視野角及び高コントラスト並びに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる素子として注目されている。
【0004】
有機電界発光素子を用いたフルカラー表示装置としては、種々提案されているが、例えば、フルカラー表現のための赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3基本色を得る手段として白色有機電界発光素子と光反射膜との間での多重干渉効果を組み合わせ、特定の波長の光のみを有機電界発光素子の外部に取り出す方法がある。この構成には上部電極に半透明の陰極を採用し、高い色再現性を実現するトップエミッション構成、下部電極に半透過又は透明下部電極の下に誘電体多層膜ミラーを用いたボトムエミッション構成が想定される。更に、多重干渉構造にカラーフィルターを組み合わせる方法がこの種のフルカラー表示装置において検討されている。
【0005】
例えば、光反射材料からなる第1の電極、有機発光層を備えた有機層、光半透明反射層及び透明材料からなる第2の電極が順次積層され、有機層が共振部となるように構成された有機電界発光素子において、取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、以下の式を満たすように構成した有機電界発光素子が知られている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
ただし、Lは光学的距離(光路長)、λは取り出したい光の波長を示し、mは、整数を示し、Φは、位相シフトを示し、光学的距離Lが正の最小値となるように構成する。
この種の白色有機電界発光表示素子にカラーフィルターを組み合わせるフルカラー表示装置においては、ITO(Indium Tin Oxide)などの無機材料からなる陽極の厚みを変えることにより、各画素毎の光路長Lの長さを調整し、各色の光を取り出すようにしている(特許文献1及び2参照)。
【0006】
しかしながら、光路長調整層として、ITO等の無機材料を用いる場合には、有機電界発光装置の製造プロセスが複雑となり、生産コストが嵩むことに加え、生産性が低下するという問題がある。
この干渉長調整用の膜はメタルマスクを用いた有機素材あるいは無機素材の蒸着法によって画素ごとに積層している。しかし、大面積ディスプレイの作製に対応するにはメタルマスクが高価であり対応が困難である。RGBの画素ごとに膜厚の異なる干渉長調整用膜を、レジスト素材を用いて、従来より大面積のカラーフィルターの作製等で実績のあるフォトリソグラフィー工程により形成することで、大面積のディスプレイの作製が可能となる。
一方、干渉長調整用の膜を有機素材で形成すると、有機素材由来の物質により有機電界発光装置の耐久性の低下が生じるという問題がある。この場合、特許文献3には、透明なSiOからなるパッシベーション層が設けられているが、共振構造を有するものでなく、干渉長を調整する目的については開示も示唆もされていない。
【0007】
以下に従来技術による光路長調整層を有する有機電界発光装置の製造プロセスについて説明する。
まず、基板1上に、赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素に対応して、反射金属層2を配する(図13参照)。
次いで、スパッタ法、蒸着法等により、反射金属層2が配された基板上に対して、ITO膜10を成膜する(図14参照)。
次いで、ITO膜10上に硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を成膜する(図15参照)。
こうして基板1上に、反射金属層2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素上のレジスト層20を選択的に露光し、樹脂を硬化させる(図16参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図17参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図18参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、一つの画素上に、反射金属層2とITO膜10とが配された状態とする(図19参照)。
【0008】
次に、多段の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図20参照)。この状態において、先の工程で、反射金属層2とITO膜10とが配された画素領域においては、ITO膜10が重ねて蒸着され、他の画素上でのITO膜10との間で、光路長差が形成される。
次に、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図21参照)。
こうして基板1上に、反射金属層2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、ITO膜10が重ねて蒸着された画素領域と、該画素領域に隣接する画素領域とに対して、光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図22参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図23参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図24参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、基板1上に、反射金属層2と重ねて配されたITO膜10とを有する画素領域、及び、反射金属層2とITO膜10とを有する画素領域を形成する(図25参照)。
【0009】
次に、他の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図26参照)。この状態において、先の工程で、反射金属層2とITO膜10とが配された2つの画素領域においては、異なる光路長差を有するように、ITO膜10が重ねて蒸着され、それぞれの画素上において、ITO膜10層の厚みによる光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図27参照)。
こうして基板1上に、反射金属層2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、ITO膜10部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、各画素上のレジスト層20に光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図28参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図29参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図30参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離する。こうして、基板1上の各画素領域において、反射金属層2上に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層が形成されることとなる(図31参照)。
【0010】
次に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層を有する状態で、各光路長調整層上に、有機発光層7と、半透明部材8とをこの順で積層し、有機電界発光装置400を製造する(図32参照)。
このような有機電界発光装置400においては、有機発光層7から出射された光が、異なる厚みで形成されたITO膜10の光路長d、d、及びdに対応して、それぞれ青色、緑色、及び赤色に対応する波長の光として半透明部材8から取り出される。即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd、d、及びdからなる半透明部材8と反射金属層2との間で共振され、各光路長に応じた青色、緑色、及び赤色の波長の光が強められることにより、青色、緑色、及び赤色の光として有機電界発光装置400から取り出すことを可能とされる。
【0011】
このように、光路長調整層を有する有機電界発光装置においては、青色、緑色、及び赤色の3原色による高精細なカラー表示が可能となるが、前記光路長調整層の形成材料として、ITO膜等の無機材料を用いる場合には、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が必要であり、また、これらの工程を、光路長差を形成するごとに行わなければならないため、製造プロセスが複雑になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−503093号公報
【特許文献2】特開2006−269329号公報
【特許文献3】特開2004−39311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、有機材料からなる第1の光路長調整層及び無機材料からなる第2の光路長調整層を有し、耐久性が向上した有機電界発光装置、及び製造プロセスを簡易化する有機電界発光装置の製造方法、並びに有機電界発光ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも1つの画素領域に、反射金属層と、半透明部材と、少なくとも発光層を有する有機電界発光素子と、光路長調整層とを有し、前記有機電界発光素子からの発光を共振させる共振構造を備えた有機電界発光装置であって、
前記光路長調整層が、光透過性樹脂からなる第1の光路長調整層と、無機材料からなる第2の光路長調整層とを有することを特徴とする有機電界発光装置である。
<2> 第1の光路長調整層と、有機電界発光素子との間に、第2の光路長調整層を有する前記<1>に記載の有機電界発光装置である。
<3> 第2の光路長調整層における無機材料が、SiO、Al、SiON及びZrOから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光装置である。
<4> 第2の光路長調整層の厚みが、5nm〜30nmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光装置である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光装置を有することを特徴とする有機電界発光ディスプレイである。
<6> フレキシブルディスプレイとして用いられる前記<5>に記載の有機電界発光ディスプレイである。
<7> 赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属層及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、
前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、
前記硬化反応後の光透過性樹脂層を現像し、第1の光路長調整層を形成する第1の光路長調整層形成工程と、
前記第1の光路長調整層と前記一の画素領域を構成する有機電界発光素子との間に無機材料からなる第2の光路長調整層を形成する第2の光路長調整層形成工程と、
を含むことを特徴とする有機電界発光装置の製造方法である。
<8> 光透過性樹脂材料の成膜が、気相成膜方法、スプレー塗布及びインクジェット塗布のいずれかで行われる前記<7>に記載の有機電界発光装置の製造方法である。
<9> 光透過性樹脂材料が光反応性樹脂組成物である前記<7>から<8>のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法である。
<10> 光反応性樹脂組成物における光反応性樹脂が反応性官能基を2つ以上有する前記<9>に記載の有機電界発光装置の製造方法である。
<11> 第2の光路長調整層が、スパッタ法及び蒸着法のいずれかで形成される前記<7>から<10>のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法である。
<12> 第1の光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記第1の光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される前記<7>から<11>のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、有機材料からなる第1の光路長調整層及び無機材料からなる第2の光路長調整層を有し、耐久性が向上した有機電界発光装置、及び製造プロセスを簡易化する有機電界発光装置の製造方法、並びに有機電界発光ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図2】図2は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図3】図3は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図4】図4は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図5】図5は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図6】図6は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図7】図7は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図8】図8は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図9】図9は、本発明の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(9)である。
【図10】図10は、本発明の有機電界発光装置の一の構成例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の有機電界発光装置の他の構成例を示す概略図である。
【図12】図12は、本発明の有機電界発光装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【図13】図13は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図14】図14は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図15】図15は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図16】図16は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図17】図17は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図18】図18は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図19】図19は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図20】図20は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図21】図21は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(9)である。
【図22】図22は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(10)である。
【図23】図23は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(11)である。
【図24】図24は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(12)である。
【図25】図25は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(13)である。
【図26】図26は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(14)である。
【図27】図27は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(15)である。
【図28】図28は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(16)である。
【図29】図29は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(17)である。
【図30】図30は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(18)である。
【図31】図31は、従来の有機電界発光装置の製造プロセスを示す概略図(19)である。
【図32】図32は、従来の有機電界発光装置の構成例を示す概略図(20)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(有機電界発光装置)
本発明の有機電界発光装置は、赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも1つの画素領域に、反射金属層と、半透明部材と、少なくとも発光層を有する有機電界発光素子と、光路長調整層とを有し、前記有機電界発光素子からの発光を共振させる共振構造を備えており、基板、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0018】
前記有機電界発光装置においては、有機発光層から出射された光が、異なる厚みで形成される前記光路長調整層の光路長に対応して、青色、緑色、及び赤色に対応する波長の光を取り出すことが可能であるが、前記有機電界発光装置の観察者側における青色、緑色、及び赤色の各画素領域において、それぞれの色に対応するカラーフィルターを更に配し、より高精細なフルカラー表示を可能としてもよい。
【0019】
<光路長調整層>
前記光路長調整層は、有機材料である光透過性樹脂からなる第1の光路長調整層と、無機材料からなる第2の光路長調整層とを有する。
【0020】
−第1の光路長調整層−
前記第1の光路長調整層は、光透過性樹脂からなる。
前記光透過性樹脂としては、光透過性を有し、また、後述する光透過性樹脂層における硬化反応を生ずるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(本明細書では、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を併せてアクリレート重合物ということがある)、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、ポリシロキサン、又はその他の有機珪素化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
−−光硬化性樹脂(ラジカル重合性モノマー)−−
前記光透過性樹脂としては、前記例示の化合物の中でも、光硬化性樹脂が好ましい。
前記光硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つの下記一般式(1)及び下記一般式(2)のいずれかで表されるラジカル重合性モノマーがより好ましい。
これらのラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を2つ以上有することが好ましい。重合性官能基が2つ以上あると3次元的に架橋することができ、機械強度が向上する点で好ましい。
【0022】
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Rは、水素又はメチル基を表し、Rは、水素原子を表し、Lは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、又はこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR及びRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
【化2】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R10は、水素原子を表し、Lは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR及びR10は、同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
前記光硬化性樹脂としては、前記一般式(2)で表されるエチレン不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーからなるアクリレート重合体を主成分とするのが特に好ましい。ここで主成分とは、後述する光透過性樹脂層を構成する重合性モノマーのうち、含有量が最も多いことを意味し、80質量%以上であることを意味する。
また、前記アクリレート重合体としては、下記一般式(3)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0025】
【化3】

ただし、前記一般式(3)中、Zは、下記一般式(a)、又は二重結合性基を有する一般式(b)で表され、該下記一般式(a)又は(b)におけるR11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を表し、*は一般式(3)のカルボニル基と結合する位置を表し、Lは、n価の連結基を表す。nは、1〜6の整数を示す。nが2以上の場合において、各繰り返し単位におけるZは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つのZは、下記一般式(a)で表される。
【0026】
【化4】

【0027】
前記一般式(3)において、Lの炭素数は、3〜18が好ましく、4〜17がより好ましく、5〜16が更により好ましく、6〜15が更に好ましい。
nが2の場合、Lは、2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例としては、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、又はこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えばポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基等)などが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が特に好ましい。
【0028】
また、前記一般式(3)において、Lは、置換基を有してもよく、Lを置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられる。
これらの中でも、前記置換基としては、含酸素官能基を持たない基が好ましく、このような基としては、アルキル基が挙げられる。即ち、nが2の場合、Lは、含酸素官能基を持たないアルキレン基が最も好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0029】
前記一般式(3)において、nが3の場合、Lは、3価の連結基を表すが、そのような3価の連結基の例として、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除いて得られる3価残基、又は、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除き、ここにアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、及びこれらを直列に結合した2価基を置換した3価残基を挙げることができる。このうち、アルキレン基から任意の水素原子を1個除いて得られる、含酸素官能基を含まない3価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0030】
前記一般式(3)において、nが4以上の場合、Lは、4価以上の連結基を表すが、そのような4価以上の連結基の例も、同様に挙げられる。好ましい例も同様に挙げられる。特に、アルキレン基から任意の水素原子を2個除いて得られる、含酸素官能基を含まない4価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0031】
また、前記ポリマーは、前記一般式(3)で表されない構造単位を有していても構わない。例えば、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーを共重合したときに形成される構造単位を有していてもよい。
前記ポリマーにおいて、前記一般式(3)で表されない構造単位は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(3)で表される構造単位を有さないポリマーとして、例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
以下において、前記一般式(2)で表されるラジカル重合性モノマーの具体例を示すが、本発明における前記光透過性樹脂は、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
−−酸性モノマー−−
前記光透過性樹脂材料としては、更に、酸性モノマーが含むものであってもよい。
前記酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。
前記酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーを意味する。
前記酸性モノマーとしては、カルボン酸基又はリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基又はリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0039】
−−−リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート−−−
前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着がよくなる。
【0040】
【化10】

ただし、前記一般式(P)中、Zは、Ac−O−X−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。Zは、Ac−O−X−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。Ac、Ac及びAcは、それぞれアクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。X、X及びXは、それぞれ2価の連結基を表す。
前記一般式(P)で表される化合物としては、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
前記一般式(P−1)〜(P−3)において、Ac、Ac、Ac、X、X及びXの定義は、前記一般式(P)における定義と同じである。前記一般式(P−1)及び(P−2)において、Rは、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Rは、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X、X及びXは、一般式(2)におけるL1と同様の基である。X、X及びXとしては、アルキレン基、アルキレンオキシカルボニルアルキレン基が好ましい。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。
【0045】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6が更に好ましい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
前記アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、直鎖アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
【0046】
前記アリール基の炭素数としては、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。
前記アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、前記一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、前記一般式(P−1)で表される単官能モノマー、前記一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び前記一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、前記リン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬株式会社製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル株式会社製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0047】
以下に、酸性モノマーの具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。
【化14】

【0048】
前記第1の光路長調整層の厚みとしては、各副画素が所定の波長の光が効率よく共振し得る光学的距離(光路長)となるように調整される。
従って、共振する光学的距離は、光反射膜と光半透過反射膜との間に挟持される材料の屈折率とその組成、厚みによって決定されるので、光路長調整層によって決定される訳ではない。
一般に用いられる有機電界発光層の構成を斟酌すると、前記赤色の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、30nm〜1,000nmであることが好ましく、150nm〜350nmがより好ましく、200nm〜250nmが更に好ましい。
前記緑色の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、5nm〜800nmであることが好ましく、100nm〜250nmがより好ましく、150nm〜200nmが更に好ましい。
前記青色の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、0nm〜600nmであることが好ましく、50nm〜200nmがより好ましく、100nm〜150nmが更に好ましい。
【0049】
−第2の光路長調整層−
前記第2の光路長調整層の構成材料としては、透明かつ導電性のない無機材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばSiO、Al、SiON、ZrOなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成膜が容易である点でSiO、Alが特に好ましい。
なお、前記第2の光路長調整層の形成方法は、後述する本発明の有機電界発光装置の製造方法において説明する。
前記第2の光路長調整層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5nm〜30nmであることが好ましく、5nm〜15nmがより好ましい。前記厚みが、5nm未満であると、有機電界発光素子の耐久性が低下することがあり、30nmを超えると、画素ごとの光路長調整が困難となることがある。
【0050】
−反射金属層及び半透明部材−
前記反射金属層は、有機発光層から出射される光を反射する作用を有する。
前記半透明部材は、有機発光層から出射される光を反射乃至透過させる作用を有する。
これら前記反射金属層及び半透明部材は、有機発光層を間に有する状態で対向配置され、有機発光層から出射される光を共振する作用を有する。
前記半透明部材としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、半透明金属、半透明性の誘電体多層膜ミラー、及びこれらの組み合わせが好ましい。
前記半透明金属としては、特に制限はなく、後述する陽極を用いて構成することができる。
前記半透明性の誘電体多層膜ミラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiO、SiNの積層等で構成される誘電体多層膜からなるミラー、などが挙げられる。
前記反射金属層としては、特に制限はなく、後述する陰極と同じものを用いて構成することができる。
【0051】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、耐熱性、ガスバリア性を有するガラス材料、バリアフィルムなどが好ましい。
具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上及び線熱膨張係数が40ppm/℃以下の少なくともいずれかで耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)や線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)などが挙げられる(括弧内はTgを示す)。これらの中でも、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィンを使用するのが好ましい。
【0052】
前記基板の光線透過率としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記光線透過率としては、例えばJIS−K7105に記載された方法、即ち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
前記ガラス材料やバリアフィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜800μmが好ましく、10μm〜200μmがより好ましい。
【0053】
<有機電界発光素子>
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0054】
前記有機電界発光素子は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0055】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0056】
−−発光層−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、発光材料を含む。発光層は発光材料のみで構成されていてもよいし、ホスト材料と発光材料の混合層でもよい(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上が混合されていてもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0057】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2nm〜500nmであるのが好ましく、外部量子効率の観点から、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、前記発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0058】
−−−発光材料−−−
前記発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
前記発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0059】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、白金などが挙げられる。これらの中でも、レニウム、イリジウム、白金が好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
【0060】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0061】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0062】
これらの中でも、燐光発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の各公報に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。これらの中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体がより好ましく、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも1つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が特に好ましく、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点から、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が最も好ましい。
【0063】
前記燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
【0067】
−−−ホスト材料−−−
前記発光層に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(以下、「正孔輸送性ホスト」と称することがある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(以下、「電子輸送性ホスト」と称することがある)を用いることができる。
【0068】
<正孔輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、分子内にカルバゾール基を有する化合物がより好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が特に好ましい。
【0069】
<電子輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる電子輸送性ホストとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体などが挙げられる。これらの中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体が特に好ましい。
前記金属錯体電子輸送性ホストとしては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等の公報に記載の化合物が挙げられる。
【0070】
前記正孔輸送性ホスト材料及び電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【0073】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボンなどが挙げられる。
【0074】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記電子受容性ドーパントの含有量は、特に制限はなく、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
【0075】
前記正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0076】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、などが挙げられる。
【0077】
前記電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Li等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。前記金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記電子供与性ドーパントの含有量は、特に制限はなく、材料の種類に応じて異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることがより好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0078】
前記電子注入層、前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0079】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、などが挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚みは、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。また、正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0080】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0081】
前記電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その陽極、陰極において、前記反射金属層、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0082】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが特に好ましい。
【0083】
前記陰極を構成する材料としては、例えばアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が特に好ましい。前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0084】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0085】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合には、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着法やスパッタ法等を行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0086】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料からなる基板が挙げられる。
【0087】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。前記基板の形状としては、板状であることが好ましい。前記基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2つ以上の部材で形成されていてもよい。前記基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0088】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素等の無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0089】
−−保護層−−
本発明において、前記有機電界発光素子全体は保護層によって保護されていてもよい。保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0090】
前記保護層の形成方法については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0091】
−−封止−−
前記有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0092】
また、下記に示す樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
−−−樹脂封止層−−−
前記有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により抑制することが好ましい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましく、エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法などが挙げられる。
【0093】
−−−封止接着剤−−−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。
また、前記材料にフィラーを添加することも好ましい。封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。前記乾燥剤としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、又は酸化ストロンチウムが好ましい。前記封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
本発明においては、前記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0094】
ここで、本発明の有機電界発光装置の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0095】
−第1の実施形態−
前記第1の実施形態の有機電界発光装置の一例について図10を用いて説明する。有機電界発光装置100は、トップエミッション方式の有機電界発光装置である。
この有機電界発光装置100は、基板1上に、赤色、緑色、及び青色の各画素領域において、反射金属層2を有している。
赤色の画素領域においては、反射金属層2を被覆するように有機材料からなる第1の光路長調整層3、5が配され、該第1の光路長調整層5上に無機材料からなる第2の光路長調整層11を配し、透明導電膜6と有機発光層7と介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該赤色の画素領域においては、光路長が第1の光路長調整層3、5及び第2の光路長調整層11により調整され、反射金属層2と半透明部材8との間に第1の光路長調整層3、5及び第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
緑色の画素領域においては、反射金属層2を被覆するように第1の光路長調整層3が配され、該第1の光路長調整層3上に第2の光路長調整層11を配し、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該緑色の画素領域においては、光路が第1の光路長調整層3及び第2の光路長調整層11により調整され、反射金属層2と半透明部材8との間に第1の光路長調整層3及び第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
青色の画素領域においては、反射金属層2を被覆するように第2の光路長調整層11が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該青色の画素領域においては、反射金属層2と半透明部材8との間に第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
【0096】
このようにして形成される有機電界発光装置100は、有機発光層7から出射される光が、反射金属層2と半透明部材8との間で共振され、光路長d、d、dに応じた波長の光が強められ、それぞれ青色、緑色、及び赤色の光として半透明部材8側から取り出される。
また、第2の光路長調整層11はパッシベーション層としても機能し、有機材料からなる第1の光路長調整層由来、及び外部からの水分の浸入を防ぎ、耐久性を向上させることができる。
【0097】
−第2の実施形態−
前記第2の実施形態の有機電界発光装置の他の一例について図11を用いて説明する。この有機電界発光装置200は、トップエミッション方式の有機電界発光装置である。
該有機電界発光装置200では、赤色の画素領域において、反射金属層2を被覆するように有機材料からなる第1の光路長調整層3が配され、該第1の光路長調整層3上に無機材料からなる第2の光路長調整層11を配し、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該赤色の画素領域においては、光路が第1の光路長調整層3及び第2の光路長調整層11により調整され、反射金属層2と半透明部材8との間に第1の光路長調整層3と第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
緑色の画素領域においては、反射金属層2を被覆するように無機材料からなる第2の光路長調整層11が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該緑色の画素領域においては、反射金属層2と半透明部材8との間に第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
青色の画素領域においては、反射金属層2を被覆するように無機材料からなる第2の光路長調整層11が配され、有機発光層7を介して、反射金属層2に対向する半透明部材8が配されている。該青色の画素領域においては、反射金属層2と半透明部材8との間に第2の光路長調整層11と有機発光層7と有する光路長dが形成される。
該青色の領域において、基板1上に配される反射金属層2は、電極材料で形成され、透明導電膜6と同様の電極作用を奏するように構成されている。
前記第2の実施形態において、その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
また、第2の光路長調整層11はパッシベーション層としても機能し、有機材料からなる第1の光路長調整層由来、及び外部からの水分の浸入を防ぎ、耐久性を向上させることができる。
【0098】
−第3の実施形態−
前記第3の実施形態の有機電界発光装置の一例について図12を用いて説明する。この有機電界発光装置300は、ボトムエミッション方式の有機電界発光装置である。
この有機電界発光装置300では、基板1上に、赤色、緑色、及び青色の各画素領域において、半透明部材8を有している。
赤色の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように有機材料からなる第1の光路長調整層3、5が配され、該第1の光路長調整層5上に無機材料からなる第2の光路長調整層11を配し、透明導電膜6と有機発光層7と介して、半透明部材8に対向する反射金属層2が配されている。該赤色の画素領域においては、光路長が第1の光路長調整層3、5及び第2の光路長調整層11により調整され、半透明部材8と反射金属層2との間に第1の光路長調整層3、5と第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
緑色の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように有機材料からなる第1の光路長調整層3が配され、該第1の光路長調整層3上に無機材料からなる第2の光路長調整層11を配し、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明部材8に対向する反射金属層2が配されている。該緑色の画素領域においては、光路が第1の光路長調整層3及び第2の光路長調整層11により調整され、半透明部材8と反射金属層2との間に第1の光路長調整層3と第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
青色の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように無機材料からなる第2の光路長調整層11が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明部材8に対向する反射金属層2が配されている。該青色の画素領域においては、半透明部材8と反射金属層2との間に第2の光路長調整層11と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長dが形成される。
前記第3の実施形態において、その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
また、第2の光路長調整層11はパッシベーション層としても機能し、有機材料からなる第1の光路長調整層由来、及び外部からの水分の浸入を防ぎ、耐久性を向上させることができる。
【0099】
(有機電界発光装置の製造方法)
本発明の有機電界発光装置の製造方法は、光透過性樹脂材料成膜工程と、光透過性樹脂層形成工程と、第1の光路長調整層形成工程と、第2の光路長調整層形成工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0100】
<光透過性樹脂材料成膜工程>
前記光透過性樹脂材料成膜工程は、赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属層及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する工程である。
【0101】
−成膜−
前記光透過性樹脂の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、気相成膜法、塗布成膜法などが挙げられるが、製造プロセスの簡易化の観点からは、気相成膜方法が好ましい。
【0102】
前記気相成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フラッシュ蒸着法、スプレーコート法などが好ましい。
前記塗布成膜法として、前記光透過性樹脂材料を溶剤に溶かし、スピンコート法などで成膜してもよいが、この場合、パネルの構造(例えば、基板上に配されるTFT回路素子等)の平坦性による影響を受け、膜厚の制御が困難な場合があり、所望の光路長差を得られないことがある。
一方、前記気相成膜方法によれば、パネルの構造の平坦性による影響を受けずに光透過性樹脂材料を成膜することができる。
【0103】
前記フラッシュ蒸着法による成膜条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマーの加熱温度としては、100℃〜200℃、また、真空度としては、1×10-2Pa〜10Pa程度が好ましい。
【0104】
<光透過性樹脂層形成工程>
前記光透過性樹脂層形成工程は、前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する工程である。
【0105】
−硬化反応−
前記光透過性樹脂を硬化させる反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
これらの中でも、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行うことが好ましい。
【0106】
前記光重合において、照射する光としては、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。
前記照射エネルギーとしては、0.5J/cm以上が好ましく、2J/cm以上がより好ましい。
前記ラジカル重合性モノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを用いる場合、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。
このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
前記窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1,000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。
また、100Pa以下の減圧条件下で、2J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
フラッシュ蒸着法で形成した前記ラジカル重合性モノマー被膜を、減圧条件下、2J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。前記ラジカル重合性モノマーの重合は、前記モノマーの混合物を蒸着により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。
【0107】
前記ラジカル重合性モノマーの重合率としては、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更により好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは、モノマーの混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。前記重合率は、赤色外線吸収法によって定量することができる。
【0108】
−−光重合開始剤−−
前記重合開始剤としては、光を照射したときにラジカルを発生する化合物であれば、特に制限はないが、気相成膜法が好ましい。特にフラッシュ蒸着法で成膜する場合は、融点が30℃以下である重合開始剤であるか、1気圧30℃で液状であるものが好ましい。ここで、融点とは、固体状態から液体状態に変化する温度をいう。また、液状とは、1気圧30℃において重合開始剤を入れた容器を傾けた時に流動性を示すことをいう。
前記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種併用することにより、液状となる光重合開始剤も好ましく用いることができる。
このような光重合開始剤は、実際に、有機層を真空蒸着する際に、液体状態となるため、少ない量の光重合開始剤で、前記ラジカル重合性モノマーを良好に硬化させることができる。
このように安定した光透過性樹脂層は、残存するラジカル重合性モノマー由来のガスが放出されにくくなり、隣接層へのダメージを低減させることができる。
本発明では、前記光透過性樹脂(後述する光路長調整層)における前記ラジカル残存重合性モノマーの量が、1×10−2g/m以下であることが好ましく、1×10−4g/m以下であることがより好ましい。
【0109】
前記光重合開始剤の分子量としては、170以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。このような分子量であると、前記光重合開始剤が揮発しにくくなり、更に、安定に硬化した光透過性樹脂層が得られやすくなる。なお、前記光重合開始剤の分子量の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、1,000以下であることが好ましい。
【0110】
前記重合開始剤の含有量としては、前記光透過性樹脂層を形成する組成物としての前記光透過性樹脂材料において、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
前記気相成膜法により前記光透過性樹脂材料を成膜する場合には、該光透過性樹脂材料を溶剤に溶かして塗布し形成する場合よりも、前記光重合開始剤の添加量を少なくしても、前記ラジカル重合性モノマーを十分に反応させることができるので、光重合開始剤の添加量を減らすことができる。
また、前記光重合開始剤の添加量を減らすことにより、前記光透過性樹脂層(光路長調整層)に残存する前記光重合開始剤の量も少なくでき、より光重合開始剤由来のガスの発生を低減でき、隣接する層へのダメージを低減できる。
【0111】
前記光重合開始剤としては、特に制限はないが、気相成膜法を用いる場合、下記一般式(4)で表される化合物、及び下記一般式(5)で表される化合物のいずれかを含む化合物が好ましい。
【0112】
【化21】

ただし、前記一般式(4)中、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、カルボニル基、及びこれらの基が複数個結合した置換基のいずれかを表し、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は、0〜5の整数を表し、n1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR2は、同一であっても異なっていてもよい。
ここで、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、及び炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基のいずれかが好ましく、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。Rが炭素数1〜18の置換アルキル基の場合は、カルボニル基に連結する炭素が、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されていることが好ましい。n1は、0〜3が好ましい。
このような化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、ダロキュア1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0113】
【化22】

ただし、前記一般式(5)中、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基のいずれかを表し、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2及びn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2及びn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるRは、同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、各繰り返し単位におけるRは、同一でも異なっていてもよい。
は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。n2は、0〜3であることが好ましく、n3は、0〜3であることが好ましい。
このような化合物としては、2−メチルベンゾフェノンなどが挙げられ、例えば、エザキュアTZT(ランベルティ社製)等の市販品を採用できる。
【0114】
<第1の光路長調整層形成工程>
前記第1の光路長調整層形成工程は、前記硬化反応後の光透過性樹脂層を現像し、第1の光路長調整層を形成する工程である。
【0115】
−現像−
前記現像の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン等の有機溶剤を用いた超音波現像が挙げられる。
【0116】
本発明の有機電界発光装置においては、赤色、緑色、及び青色の少なくとも一つの画素領域において、前記第1の光路長調整層及び第2の光路長調整層が内部に導入され、共振構造を有してなる。
【0117】
前記第1の光路長調整層は、前記基板上に配される前記反射金属層又は前記半透明部材の上面に直接配されてよいが、第1の光路長調整層を平坦に配する観点からは、前記反射金属層又は前記半透明部材の上面に、該上面形状を平坦化させる平坦化膜を配し、該平坦化膜上に配されることしてもよい。
前記平坦化膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0118】
<第2の光路長調整層形成工程>
前記第2の光路長調整層形成工程は、前記第1の光路長調整層と前記一の画素領域を構成する有機電界発光素子との間に無機材料からなる第2の光路長調整層を形成する工程である。
【0119】
前記第2の光路長調整層は、前記第1の光路長調整層上、前記反射金属層上、又は前記半透明部材上に形成され、パターンは形成されず、ベタ(連続)に形成することが製造効率を上げる点で好ましい。
前記第2の光路長調整層は、スパッタ法及び蒸着法のいずれかで形成されることが、薄膜を均一に積層できる点で好ましい。
【0120】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば有機電界発光素子を作製する工程などが挙げられる。
【0121】
ここで、本発明の有機電界発光装置の製造方法の製造プロセスについて、図1〜図9に示す概略図を用いて説明する。なお、図中の符号3及び5のそれぞれについては、同材料からなるため、光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層、第1の光路長調整層のいずれかを示すようにしている。
【0122】
まず、基板1上に、赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素に対応して、反射金属層2を配する(図1参照)。
次いで、フラッシュ蒸着法により、反射金属層2が配された基板上に対して、光透過性樹脂材料3を成膜する(光透過性樹脂材料成膜工程、図2参照)。
こうして基板1上に、反射金属層2と光透過性樹脂材料3とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素領域と該画素に隣接する画素領域における光透過性樹脂材料2を選択的に露光し硬化させ、光透過性樹脂層3を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図3参照)。
これを現像して、光透過性樹脂層3から、露光した部分以外の箇所を取り除き、第1段目の第1の光路長調整層3を形成する(第1の光路長調整層形成工程、図4参照)。
【0123】
次に、多段の光路長を形成するために、フラッシュ蒸着法により、光透過性樹脂材料5を蒸着させる(光透過性樹脂材料成膜工程、図5参照)。この状態において、先の工程で、反射金属層2と第1の光路長調整層3とが配された画素領域においては、光透過性樹脂材料5が第1の光路長調整層3に重ねて蒸着され、第1の光路長調整層3が配されていない他の画素領域との間で、光路長差が形成される。
こうして基板1上に、反射金属層2と第1の光路長調整層3と光透過性樹脂材料5とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、第1の光路長調整層3と光透過性樹脂材料5が重ねて蒸着された2つの画素領域のうち、一つの画素領域に対して、光を照射して露光し硬化させ、第2段目の第1の光透過性樹脂層5を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図6参照)。
これを現像して、第1の光透過性樹脂層5から露光した部分以外の箇所を取り除き、一つの画素領域に第1の光路長調整層5を形成する(第1の光路長調整層形成工程、図7参照)。この段階で、一つの画素領域において、第1の光路長調整層3、5が重ねて配され、該画素領域に隣接する画素領域において、第1の光路長調整層3が配されることとなる。
【0124】
次に、前記第1段目の第1の光路長調整層3、第2段目の第1の光路長調整層5、及び反射金属層2の上面に、無機材料からなる第2の光路長調整層11をベタで形成する
(第2の光路長調整層形成工程、図8参照)
次に、第1の光路長調整層3、5、及び第2の光路長調整層11が配された画素領域において、第1の光路長調整層5上に、透明導電膜6を配する。同時に、第1の光路長調整層3が配された画素領域において、第1の光路長調整層3上に、透明導電膜6を配し、第2の光路長調整層11が配された画素領域において、第2の光路長調整層11上に透明導電膜6を配する(図9参照)。
次いで、透明導電膜6が配された3つの画素領域のそれぞれにおいて、透明導電膜6上に、有機発光層7と半透明部材8とをこの順で積層し、有機電界発光装置100を製造する(図10参照)。
このようにして製造される有機電界発光装置100においては、有機発光層7から出射された光が、第1の光路長調整層3、5及び第2の光路長調整層11により調整された光路長d、d、dに対応して、それぞれ青色、緑色、赤色に対応する波長の光として半透明部材8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd、d、dからなる半透明部材8と反射金属層2との間で共振されることにより、各光路長に応じた青色、緑色、及び赤色の波長の光が強められることにより、青色、緑色、及び赤色の光として有機電界発光装置100から取り出すことを可能とされる。
【0125】
そして、本発明の有機電界発光装置100の前記製造プロセスによれば、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が不要であることから、従来の製造プロセスに比べて、製造プロセスを大幅に簡易化することができる。
【0126】
(有機電界発光ディスプレイ)
本発明の有機電界発光ディスプレイは、本発明の前記有機電界発光装置を有してなり、必要に応じて、その他の構成を適用することができる。
前記有機電界発光ディスプレイとしては、第1の光路長調整層が光透過性樹脂材料により形成され、発光表示部がフレキシブル性を有するため、応力による割れなどが生じにくく、フレキシブルディスプレイとして用いることができる。
また、無機材料からなる第2の光路長調整層はパッシベーション層としても機能し、有機材料からなる第1の光路長調整層由来、及び外部からの水分の浸入を防ぎ、耐久性を向上させることができる。
また、前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ディスプレイに必要な事項として、公知の手段すべてを適用することができる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0128】
(実施例1)
−有機電界発光装置及び有機電界発光ディスプレイの作製−
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを厚み100nmに成膜し、フォトリソグラフィー法にて反射電極層(反射金属層)を形成した。
次に、反射電極層が形成された基板上にフラッシュ蒸着法にて、光透過性樹脂材料(ラジカル重合性モノマー、商品名:1,10−デカンジオールジメタアクリレート、新中村化学工業株式会社製)を厚み45nmに成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次に、露光装置(装置名:KP364N2、大日本スクリーン株式会社製)により、一の画素領域をマスクを用いた選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次に、2−プロパノールにて現像を行い、厚み45nmの第1段目の第1の光路長調整層を作製した(第1の光路長調整層形成工程)。
【0129】
前記一の画素領域に隣接する画素領域における光路長段差を形成するため、再度、前記光透過性樹脂材料を厚み40nmに成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次に、前記一の画素領域及び隣接する画素領域における光透過性樹脂材料に、前記と同様の選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次に、前記と同様に現像を行い、前記一の画素領域に対し、厚み40nmで第2段目の第1の光路長調整層を作製し、該画素領域に隣接する画素領域に対し、同厚みの第2段目の第1の光路長調整層を作製した(第1の光路長調整層形成工程)。
【0130】
前記第1段目の第1の光路長調整層、第2段目の第1の光路長調整層、及び反射金属層の上面に、ターゲットとしてホウ素ドープSi、放電ガスとしてAr、電源としてDCパルス電源を用いてプラズマ放電させ、SiOの化学量論比になるようプラズマ発光をモニターしながら反応ガスとしてのOの流量を制御してSiOを成膜し、前記第1段目の第1の光路長調整層、第2段目の第1の光路長調整層、及び反射金属層の上面に、第2の光路長調整層として厚み10nmのSiOの膜をスパッタ法により作製した(第2の光路長調整層形成工程)。
【0131】
前記第2の光路長調整層の上面に透明電極(ITO、IZO等よりなる。ここではITOにより形成した)を各副画素毎に電気的に分離形成した。透明電極のパターニングはシャドウマスクを用いた成膜製法を用いて行った。なお、該パターニングは、全面成膜してフォトリソグラフィー法によるパターニングでもよい。
【0132】
前記透明電極の上面に、真空成膜装置(装置名:CM457、トッキ株式会社製)を用い、白色有機電界発光層(白色OLED)を形成した。
前記白色OLEDの上面に、半透過部材として金属電極(アルミニウム)を真空成膜製装置(装置名:CM457、トッキ株式会社製)で形成した。
【0133】
次に、OLED形成領域をガラス缶により封止し、各電極を外部の信号制御装置に接続し、実施例1における有機電界発光装置を製造した。
【0134】
前記有機電界発光装置を複数配置することで、実施例1における有機電界発光ディスプレイを作製した。
作製された実施例1の有機電界発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細なRGBの発色を確認することができた。
【0135】
(実施例2)
−有機電界発光装置及び有機電界発光ディスプレイの作製−
実施例1において、第2の光路長調整層形成工程で、厚み10nmのSiO層を厚み9nmのAl層に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機電界発光装置、及び有機電界発光ディスプレイを作製した。
作製した有機電界発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0136】
(実施例3)
−有機電界発光装置及び有機電界発光ディスプレイの作製−
実施例1において、第2の光路長調整層形成工程で、厚み10nmのSiO層を厚み7nmのZrO層に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機電界発光装置、及び有機電界発光ディスプレイを作製した。
作製した有機電界発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0137】
(実施例4)
−有機電界発光装置及び有機電界発光ディスプレイの作製−
実施例1において、第2の光路長調整層形成工程で、イオンプレーティング法により窒素雰囲気下SiOを蒸着して、厚み9nmのSiON層を成膜した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機電界発光装置、及び有機電界発光ディスプレイを作製した。
作製した有機電界発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0138】
(比較例1)
−有機電界発光装置及び有機電界発光ディスプレイの作製−
実施例1において、第2の光路長調整層形成工程で、SiO層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機電界発光装置、及び有機電界発光ディスプレイを作製した。
作製された有機電界発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0139】
<耐久性の評価>
作製した各有機電界発光装置を、室温(25℃)で3日間放置後、及び室温(25℃)で60日間放置後に、100個の画素内に欠陥(DS:ダークスポット)が発生している割合を光学顕微鏡で観察した。
【0140】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の有機電界発光装置の製造方法は、簡易な製造プロセスを有する有機電界発光装置の製造方法として、広く利用可能である。本発明の有機電界発光装置の製造方法により製造された有機電界発光装置は、高耐久性であり、高精細なフルカラー表示が可能であるため、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
【符号の説明】
【0142】
1 基板
2 反射金属層
3、5 第1の光路長調整層(光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層)
4 マスク
6 透明導電膜(陽極)
7 有機発光層
8 半透明部材
9 陰極
10 ITO膜(光路長調整層)
11 第2の光路長調整層
20 レジスト層
100、200、300、400 有機電界発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも1つの画素領域に、反射金属層と、半透明部材と、少なくとも発光層を有する有機電界発光素子と、光路長調整層とを有し、前記有機電界発光素子からの発光を共振させる共振構造を備えた有機電界発光装置であって、
前記光路長調整層が、光透過性樹脂からなる第1の光路長調整層と、無機材料からなる第2の光路長調整層とを有することを特徴とする有機電界発光装置。
【請求項2】
第1の光路長調整層と、有機電界発光素子との間に、第2の光路長調整層を有する請求項1に記載の有機電界発光装置。
【請求項3】
第2の光路長調整層における無機材料が、SiO、Al、SiON及びZrOから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光装置。
【請求項4】
第2の光路長調整層の厚みが、5nm〜30nmである請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光装置を有することを特徴とする有機電界発光ディスプレイ。
【請求項6】
フレキシブルディスプレイとして用いられる請求項5に記載の有機電界発光ディスプレイ。
【請求項7】
赤色、緑色、及び青色に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属層及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、
前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、
前記硬化反応後の光透過性樹脂層を現像し、第1の光路長調整層を形成する第1の光路長調整層形成工程と、
前記第1の光路長調整層と前記一の画素領域を構成する有機電界発光素子との間に無機材料からなる第2の光路長調整層を形成する第2の光路長調整層形成工程と、
を含むことを特徴とする有機電界発光装置の製造方法。
【請求項8】
光透過性樹脂材料の成膜が、気相成膜方法、スプレー塗布及びインクジェット塗布のいずれかで行われる請求項7に記載の有機電界発光装置の製造方法。
【請求項9】
光透過性樹脂材料が光反応性樹脂組成物である請求項7から8のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法。
【請求項10】
光反応性樹脂組成物における光反応性樹脂が反応性官能基を2つ以上有する請求項9に記載の有機電界発光装置の製造方法。
【請求項11】
第2の光路長調整層が、スパッタ法及び蒸着法のいずれかで形成される請求項7から10のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法。
【請求項12】
第1の光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記第1の光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される請求項7から11のいずれかに記載の有機電界発光装置の製造方法。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−141990(P2011−141990A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1480(P2010−1480)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】