説明

有機顔料ナノ粒子の製造方法、それにより得られる有機顔料ナノ粒子、これを含有する顔料分散物、着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】ナノメートルサイズに微細化された有機顔料微粒子を極めて効率的かつ大量に製造しうる方法を提供する。
【解決手段】有機顔料を微粒子として析出させた分散液Aを用意する工程と、低分子有機材料を微粒子として析出させた分散液Bを用意する工程と、前記分散液Aと前記分散液Bとを混合後、該混合液における前記低分子有機材料の溶解度が前記有機顔料の溶解度より高くなる状態を経る工程とを有する有機顔料ナノ粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料ナノ粒子の製造方法、それにより得られる有機顔料ナノ粒子、これを含有する顔料分散物、着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー撮像素子、カラー液晶表示装置等の画像関連精密機器の高品質化および用途の拡大が急速に進でいる。それを反映して、カラーフィルタについても表示性能の高品位化が強く求められるようになってきた。カラーフィルタの色材についてみると、染料に代わって有機顔料が用いられるようになってきており、最近ではナノメートルサイズレベルで、しかも単分散で安定な顔料ナノ粒子が求められている。そして、インクジェット技術を利用した新規のカラーフィルタの製造方法が検討されている。これにより設計自由度の著しい向上、コストの大幅な低減が期待されるが、それに適し、十分な性能を発揮しうる顔料ナノ粒子の分散物はまだない。
【0003】
ここで有機顔料粒子の製造方法についていうと、ビーズミル法やソルトミリング法などのブレークダウン法が一般的である。上記ミリング法では、有機顔料を十分に微細化し組成物中で分散させるために多大な時間とエネルギーとを要する。また用いることができる顔料種が限られる。そして顔料の微細化にともないその分散組成物が高粘度を示すことがあり、場合によっては貯蔵中にゲル化して使用できなくなることもある。
これに対し最近、液相法により分散安性の高い顔料分散組成物の製造方法が開発された。液相法は微細な顔料粒子を得るのに適しており、具体的に、顔料溶液と貧溶媒とを混合してナノ粒子を析出させ、所定の高分子化合物を添加する方法が開示されている(特許文献1〜3参照)。しかし、これらの方法で得られた顔料分散液の分散安定性は上述の画像関連精密機器やその他高性能精密機器等への適用を考慮したとき未だ十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/121016号パンフレット
【特許文献2】特開2004−43776号公報
【特許文献3】特開2007−119586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナノメートルサイズに微細化された有機顔料微粒子を極めて効率的かつ大量に製造しうる方法の提供を目的とし、さらに、得られる有機顔料ナノ粒子に分散物中での長期間に亙る分散安定性を付与しうる有機顔料ナノ粒子の製造方法、それにより得られる有機顔料ナノ粒子、これを含有する顔料分散物の提供を目的とする。また、上記有機顔料ナノ粒子ないしこれを含有する顔料分散物を用いたインクジェットインク、着色感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂転写材料、並びにこれらにより作製した高いコントラストを有する表示品位の高いカラーフィルタ、これを備えた液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は下記の手段により達成された。
(1)第1の良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記第1の良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる第1の貧溶媒とを混合して、前記有機顔料を微粒子として析出させた分散液Aを用意する工程と
第2の良溶媒に低分子有機材料を溶解しかつ高分子化合物を含有する有機材料溶液と、前記第2の良溶媒と相溶性でありかつ前記低分子有機材料に対しては貧溶媒となる第2の貧溶媒とを混合して、前記低分子有機材料を微粒子として析出させた分散液Bを用意する工程と
前記分散液Aと前記分散液Bとを混合後、該混合液における前記低分子有機材料の溶解度が前記有機顔料の溶解度より高くなる状態を経る工程と
を有することを特徴とする有機顔料ナノ粒子の製造方法。
(2)前記分散液Aと前記分散液Bとを混合する工程において、前記混合液の、混合状態の維持、温度の調節、圧力の調節、溶媒量の調節、pHの調節、又はこれらを組み合わせて行うことを特徴とする(1)に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
(3)前記低分子有機材料が、有機顔料、有機色素、芳香族炭化水素、及び脂肪族炭化水素からなる群から選ばれることを特徴とする(1)又は(2)に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
(4)前記高分子化合物の質量平均分子量が1000〜500000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
(5)前記高分子化合物が、ビニルモノマーの重合体、ビニルモノマーの共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、これらの変性物、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法で調製した有機顔料ナノ粒子を含有する分散液の溶媒分を除去して粉末化したことを特徴とする有機顔料ナノ粒子。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法で作製した有機顔料ナノ粒子を含有することを特徴とする顔料分散物。
(8)(7)に記載された顔料分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
(9)(7)に記載された顔料分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
(10)仮支持体上に、少なくとも、(8)に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
(11)(8)に記載の着色感光性樹脂組成物、(9)に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は(10)に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
(12)(11)に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、ナノメートルサイズに微細化された有機顔料微粒子を極めて効率的かつ大量に製造することができ、さらに、得られる有機顔料ナノ粒子に分散物中での長期間に亙る分散安定性を付与しうる。また、上記製造方法により得られた有機顔料ナノ粒子ないしこれを含有する顔料分散物は、カラーフィルタ用インクジェットインク、着色感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂転写材料の色材として好適に用いることができ、これにより高いコントラストを有する表示品位の高いカラーフィルタを作製し、これを備えた高性能の液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法に用いられる有機顔料の種類は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、それらの混合物などが挙げられる。
【0009】
なかでも、ペリレン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料がより好ましい。
【0010】
本発明の製造方法においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いても良く、また、有機色素と組み合わせて用いても良い。
【0011】
本発明の有機ナノ粒子の製造方法に用いられる低分子有機材料は、再沈法で粒子形成できるものであれば特に限定されず、例えば、有機顔料、有機色素、芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素(例えば、配向性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素、または昇華性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素)などからなる粒子が挙げられ、有機顔料、有機色素が好ましく、有機顔料が特に好ましい。低分子有機材料の分子量は、1000以下が好ましく、100以上700以下が特に好ましい。
【0012】
低分子有機材料の使用量は特に限定されないが、分散液Aと分散液Bとを混合させたときに、有機顔料に対して0.1〜500質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜100質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。上記範囲より少ないと、作製した有機顔料ナノ粒子分散物に十分な微分散性を付与できない。また上記範囲より多いと、作製した有機顔料ナノ粒子分散物がゲル化してしまう場合や、所望の色調が得られなくなる場合がある。
【0013】
本発明において用いられる高分子化合物は、低分子有機材料を第2の良溶媒に溶解した溶液に含まれるが、このとき該高分子化合物が溶解された状態であっても、分散した状態であっても、その他の混合状態であってもよい。ただし、該高分子化合物が第2の良溶媒に溶解された状態であることが好ましく、これにより後述するように第2の貧溶媒と混合して、低分子有機材料と高分子化合物とを共に析出させることができ、均質な微粒子とすることができる。このような観点から前記高分子化合物は、第2の良溶媒に溶解可能であることが好ましく、また第2の貧溶媒に対して不溶性の化合物(つまり第2溶媒が貧溶媒となるようなもの)であることが好ましい。なかでも前記低分子有機材料溶液と前記第2の貧溶媒とを混合することにより低分子有機材料を析出させた際に、析出させた低分子有機材料に素早く吸着するような高分子化合物であることが好ましい。ここで、本発明において、溶媒に対する化合物の溶解度が2.0質量%未満であるとき、該化合物は該溶媒に対して不溶性であると定義し、0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
前記高分子化合物の質量平均分子量は、特に限定されないが、1000〜500000であることが好ましく、2000〜300000であることがより好ましく、3000〜200000であることが特に好ましい。前記高分子化合物の形状としては、線状であっても、分岐状(例えば、グラフト、星型等)であってもよい。また重合体が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0015】
前記高分子化合物としては、特に限定されないが、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体(例えば、メタクリル酸アルキルの単独重合体、スチレン類の単独重合体、メタクリル酸アルキル/スチレン類の共重合体、ポリビニルブチラールなど)、エステル系ポリマー(例えば、ポリカプロラクトンなど)、エーテル系ポリマー(例えば、ポリテトラメチレンオキシドなど)、ウレタン系ポリマー(例えば、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリウレタンなど)、アミド系ポリマー(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66など)、シリコーン系ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンなど)、カーボネート系ポリマー(例えば、ビスフェノールAとホスゲンから合成されるポリカーボネートなど)などが挙げられる。
【0016】
前記高分子化合物としては、これらの中でも特に、ビニルモノマーの重合体、ビニルモノマーの共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、これらの変性物、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる高分子化合物が好ましい。溶媒への溶解性調整、コスト、合成的な容易さ等の観点から、前記高分子化合物としては、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が特に好ましい。
【0017】
前記ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい例として挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0019】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、およびクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0020】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0021】
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0022】
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0023】
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0025】
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0026】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
【0028】
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0029】
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
【0031】
また上記以外にも、前記ビニルモノマーとして、酸性基を有するビニルモノマー、塩基性基を有するビニルモノマー、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーなども好ましい例として挙げられる。
【0032】
前記酸性基を有するビニルモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を有するモノマーと無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、(メタ)アクリル酸ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマー等を挙げることができる。また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)等が挙げられる。
【0033】
塩基性窒素原子を有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられ、(メタ)アクリルアミド類として、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等、が挙げられる。
【0034】
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等の複素環構造を有するモノマーを挙げることができる。
【0035】
また、末端にエチレン性不飽和結合を有する重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称することがある)を用いてもよい。ここで、重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなる。上記ポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びブタジエン、からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体あるいは共重合体、あるいはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカプロラクトンであることが一般的である。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0036】
また、このマクロモノマーは、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲にあることが好ましく、特に、2000〜9000の範囲が好ましい。
前記マクロモノマーの好ましい例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート及びポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0037】
ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体の製造には、例えばラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でビニルモノマーの重合体もしくは共重合体を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0038】
前記ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体は、末端に官能基を有する高分子化合物であっても良い。該官能基としては、析出した顔料への吸着能に優れた官能基であることが好ましい。
【0039】
末端に官能基を有する高分子化合物は、例えば、官能基を含有する連鎖移動剤を用いてラジカル重合を行う方法、官能基を含有する重合開始剤を用いて重合(例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合など)を行う方法などにより、合成することが可能である。
【0040】
高分子化合物の末端に官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メカルプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メカルプルイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、メルカプトアセトフェノン、ナフタレンチオール、ナフタレンメタンチオール等)またはこれらメルカプト化合物の酸化体であるジスルフィド化合物、およびハロゲン化合物(例えば、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸など)が挙げられる。
【0041】
また、高分子化合物の末端に官能基を導入できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2−シアノペンタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0042】
高分子化合物の使用量は特に限定されないが、分散液Aと分散液Bを混合させたときに、有機顔料に対して0.1〜1000質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜500質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜100質量%の範囲であることが特に好ましい。上記範囲より少ないと、作製した有機顔料ナノ粒子分散物に十分な微分散性を付与できない。また上記範囲より多いと、作製した有機顔料ナノ粒子分散物がゲル化してしまう場合がある。
【0043】
前記高分子化合物は、上記の低分子有機材料溶液中で、塩基性基もしくは酸性基を有する有機化合物と共存させてもよいが、含窒素高分子化合物と酸性基を有する高分子化合物とを併用して共存させないことが好ましい。前記2種の化合物を併用して共存させると、含窒素高分子化合物の窒素原子と酸性基を有する高分子化合物の酸性基とが相互作用するためか、有機顔料微粒子が凝集しやすくなることがあり、カラーフィルタとした際にコントラストが低下したりすることがある。また前記高分子化合物が含窒素高分子化合物を含むものであるときには、顔料溶液中に塩基性窒素原子を有する化合物を共存させないことが好ましい。これを共存させるとカラーフィルタとしたときに、ベークにより着色してしまうことがある。
【0044】
本発明では、まず、有機顔料および低分子有機材料を各々の良溶媒(第1の良溶媒、第2の良溶媒)に溶解した溶液と、良溶媒に対して相溶性を有し、有機顔料および低分子有機材料に対して貧溶媒となる溶媒(第1の貧溶媒、第2の貧溶媒)とを混合して、有機顔料および低分子有機材料をナノサイズの微粒子として生成させた有機顔料ナノ粒子の分散物(分散物A、分散物B)をそれぞれ調製する。
ここで良溶媒と貧溶媒との組み合わせは有機顔料の溶解度に十分な差があることが必要であり、有機顔料に合わせて好ましいものを選択する必要があるが、本発明における工程を可能にする組み合わせであればいかなる選択も可能である。
【0045】
良溶媒は用いる有機顔料または低分子有機材料を溶解することが可能で、前記貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料または低分子有機材料の良溶媒への溶解性は有機顔料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機顔料または低分子有機材料の良溶媒への溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料または低分子有機材料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。
【0046】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が好ましく、水性溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒がさらに好ましく、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が特に好ましい。
【0047】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0048】
また、良溶媒に有機顔料または低分子有機材料を溶解した溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機顔料または低分子有機材料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
有機顔料溶液または低分子有機材料の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0049】
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各有機顔料または低分子有機材料との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、例えばその溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料または低分子有機材料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0050】
有機顔料または低分子有機材料を良溶媒中に均一に溶解するとき、酸もしくはアルカリなどの溶解促進剤を添加して溶解してもよい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料や低分子有機材料の場合はアルカリの添加が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子等を分子内に多く有するときは酸の添加が好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で溶解される。フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解されるが、中には、アルカリ性で溶解されるものもあり、アルカリ性で溶解する機構は明らかでない。
【0051】
アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基が挙げられ、なかでも、トリアルキルアミン、金属アルコキシドが好ましく、金属アルコキシドがより好ましい。アルカリの添加量は特に限定されないが、無機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であことがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0052】
酸としては、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、なかでも無機酸であることが好ましく、硫酸であることがより好ましい。酸の添加量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、有機顔料または低分子有機材料に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0053】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、有機顔料または低分子有機材料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機顔料溶液または低分子有機材料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この量の下限値に特に制限はないが、通常0.01質量%以上である。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0054】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の粘度は0.5〜80.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0055】
貧溶媒は特に限定されないが、有機顔料または低分子有機材料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料または低分子有機材料の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料または低分子有機材料を考慮すると0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0056】
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0057】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0058】
前記第1の良溶媒と第2の良溶媒とは同じものであっても異なるものであってもよいが、同種のもの又は同じものを組み合わせて用いることが好ましい。前記第1の貧溶媒と第2の貧溶媒とは同じものであっても異なるものであってもよいが、同種のもの又は同じものを組み合わせて用いることが好ましい。
【0059】
顔料微粒子または低分子有機材料微粒子を析出生成させる際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
【0060】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液または低分子有機材料溶液を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0061】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料微粒子または低分子有機材料微粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の密度[kg/m]を表し、Uは有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
【0062】
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて有機顔料溶液または低分子有機材料溶液を貧溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
【0063】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している貧溶媒中に有機顔料溶液または低分子有機材料溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
【0064】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、本発明の製造方法に好ましく用いられる材料の範囲では、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した有機顔料溶液または低分子有機材料溶液の好ましい粘度と同義である。
【0065】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して顔料微粒子または低分子有機材料微粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な顔料微粒子または低分子有機材料微粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られる微粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな顔料微粒子または低分子有機材料微粒子を制御して得ることができる。
【0066】
有機顔料溶液または低分子有機材料溶液と貧溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
顔料微粒子または低分子有機材料微粒子を析出させた場合液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して顔料微粒子または低分子有機材料微粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
また、顔料微粒子または低分子有機材料微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0067】
本発明の製造方法においては、上述のようにして調製した有機顔料の分散液Aと低分子有機材料の分散液Bとを混合し、該混合液における低分子有機材料の溶解度が有機顔料の溶解度より高くなる状態を経る工程(熟成工程)により、目的とする有機顔料ナノ粒子を得る。上記混合液中の有機顔料および低分子有機材料の溶解度の調整方法の好ましい実施態様として、混合液の、混合状態の維持、撹拌条件の調節、温度の調節、圧力の調節、溶媒量の調節、混合液のpHの調節、又はこれらを組み合わせることが挙げられる。具体的に混合状態の維持とは、両分散液A,Bの混合により有機顔料及び低分子有機材料の所望の溶解度が得られていれば、これを所定時間維持することが挙げられる。良溶媒の量の調節は例えば良溶媒を追加して添加すること、pHの調節については例えば酸またはアルカリを添加することが挙げられる。上記熟成工程において、これらの調節項目は有機顔料および低分子有機材料の種類に応じて適宜選択されるが、なかでも少なくとも温度の調節、良溶媒の量の調節、pHの調節をすることが好ましく、pHの調節をすることがより好ましい。
【0068】
上記熟成工程において、有機顔料の分散液Aと低分子有機材料の分散液Bとを混合する量は特に限定されないが、上述した有機顔料に対する低分子有機材料の量の好ましい範囲となる量で混合することが好ましい。混合液中の有機顔料及び低分子有機材料の含有率は特に限定されないが、有機顔料の含有率が0.001〜4質量%となる濃度で熟成することが好ましく、0.005〜2質量%であることがより好ましい。
【0069】
上記熟成工程において混合液の温度の調節を行うこときには、混合前の温度から5〜80℃上昇させることが好ましい。調節後の温度としては10〜80℃とすることが好ましく、20〜60℃とすることがより好ましい。圧力の調節を行うこときには、混合前の圧力から0.01〜2MPaさせることが好ましい。調節後の圧力としては0.11〜2.1MPaとすることが好ましく、0.15〜1.1MPaとすることがより好ましい。第1もしく第2の良溶媒の量の調節を行うこときには、混合前の良溶媒の量の1.05〜5倍とすることが好ましく、1.1〜2倍とすることがより好ましい。混合液のpHの調節を行うこときには、混合前の分散液BのpHから1以上変化させることが好ましい。調節後のpHとしてはアルカリ性の場合、8〜12とすることが好ましく、9〜11とすることがより好ましく、酸性の場合、1〜6とすることが好ましく、2〜5とすることがより好ましい。
【0070】
熟成工程における混合液の熟成時間は特に限定されないが、0.1〜5時間であることが好ましく、0.2〜2時間であることがより好ましい。
【0071】
前記熟成工程における混合液の低分子有機材料の溶解度と有機顔料の溶解度との差は以下に説明する溶解度試験によって評価される。
[熟成溶解度試験]
前記溶解度を評価する有機顔料の分散液Aと低分子有機材料の分散液Bとの混合液(被試験体)に対し、これとは別に、そこから有機顔料、低分子有機材料、高分子化合物を除いた成分組成からなる溶液(試験用溶液)を準備する。この試験用溶液に、混合液(被試験体)中のものと同じ有機顔料または低分子有機材料を適当量添加して、24時間振とうしてから24時間静置する。そして、その添加量を漸次増加していき、試験用溶液における混合状態が、均一で透明な状態から、粒状の外観や明らかな濁りを示す不完全溶解として存在する状態に変化する前後の添加量の中間値をモル数に換算した値を溶解度(モル/リットル)とする。このときの条件は熟成工程において適用される条件(温度、圧力、溶媒量、酸又はアルカリの添加量等)と同じ条件とする。このようにして測定された溶解度を通常の溶解度と区別していうときには特に「熟成溶解度」という。なお、上記手順において、有機顔料および低分子有機材料の組合せと溶解度試験時の漸次増加させる添加量の増加幅の取り方によっては、溶解度が見かけ上等しくなる場合がある。このような場合には、添加量の増加幅をより細分化して上記溶解度試験を行い、有機顔料と低分子有機材料の溶解度の序列がつくようにする。
上述の熟成工程を経て形成された有機顔料微粒子は低分子化合物で被覆され、かつ高分子化合物の一部分が低分子化合物の層に埋め込まれた構造をとると推定しされる。
【0072】
顔料ナノ粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。顔料ナノ粒子(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜0.5μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明の製造方法で形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0073】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。顔料ナノ粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
顔料ナノ粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0074】
顔料微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、顔料溶液及び第1の貧溶媒の少なくとも一方に、少なくとも第1の貧溶媒が良溶媒(第2溶媒に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
【0075】
高分子粒径調整剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体、ジアリルアミン塩酸塩/マレイン酸共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体などが好ましい。これら粒径調整剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
【0076】
アニオン粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンのカチオン性物質の塩が挙げられる。これらカチオン性粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
両イオン性の粒径調整剤は、前記アニオン性の粒径調整剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性の粒径調整剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する粒径調整剤である。
【0079】
ノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
前記高分子化合物として含窒素高分子化合物を用いる場合、粒径調整剤としては、酸性基を有する高分子化合物からなる粒径調整剤、塩基性窒素原子を有する化合物からなる粒径調整剤を併用しないことが好ましい。また、前記高分子化合物として酸性基を有する高分子化合物を用いる場合、粒径調整剤としては、含窒素高分子化合物からなる粒径調整剤を併用しないことが好ましい。
【0081】
粒径調整剤の含有量は、顔料微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、顔料に対して0.1〜1000質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量%の範囲であり、さらに好ましくは5〜200質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0082】
本発明の製造方法においては、顔料ナノ粒子を析出させた後、その析出粒子を含有する分散液の溶媒分を減少させるか、または除去することが好ましい(以下、この操作を単に濃縮ということもある。)。それによって、カラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適したナノ粒子濃縮液や顔料ナノ粒子粉末とすることができる。
【0083】
本発明において溶媒の濃縮には、通常の装置を単体であるいは組み合わせて用いることが可能である。例えば、熱風を用いる乾燥機としては棚型乾燥機、バンド乾燥機、撹拌乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、気流乾燥機など、熱伝導を利用する乾燥機としてはドラム乾燥機、多重管乾燥機、円筒乾燥機などが好適に用いられる。また、溶媒組成によっては凍結乾燥機や赤外線乾燥機も使用することが可能である。
これらの手段の中では、分散液から直接乾燥した顔料ナノ粒子粉末を得るのに適しているという観点から、噴霧乾燥機(例えば大川原化工機(株)製COC−12[商品名])、流動層乾燥機(例えば(株)奈良機械製作所製MSD−100[商品名])が特に好ましく用いられる。また、残存溶媒量の少ない顔料ナノ粒子粉末とするために複数の乾燥手段を組み合わせて使用してもよく、例えば円筒乾燥機で予備濃縮した顔料分散物をドラム乾燥機にて完全に乾燥させて顔料ナノ粒子粉末を得る、といったプロセスを使用することができる。
乾燥条件については、溶媒を蒸発させることが可能であり、かつ顔料や分散剤などの材料が変性しない範囲であれば特に制約されない。その他分散剤などがこれよりも低い温度で変性する場合にはさらに低い温度にする必要があることはもちろんである。ただし使用する溶媒種によっては、許される温度範囲では乾燥速度が遅くなることも考えられるため、その際は乾燥速度を増加させる目的で、乾燥機の種類によって減圧、撹拌混合、多段化などの手段を組み合わせることができる。
【0084】
溶媒分を減少させるもしくは除去する量は特に限定されないが、溶媒分を減少させる態様においては全溶媒分の50質量%以上を取り除くことが好ましく、75質量%以上を取り除くことがより好ましい。溶媒分を除去して顔料ナノ粒子粉末とする態様においては全溶媒分の80質量%以上を取り除くことが好ましく、90質量%以上を取り除くことがより好ましい。
溶媒分を減少させるもしくは除去することにより溶媒分を減じたとき、残された分散物中の含水率は特に限定されないが、0.01〜3質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。このとき例えば上記の乾燥法等により溶媒分を除去して顔料ナノ粒子粉末とすることが好ましく、このとき固形分の含率を50〜100質量%とすることが好ましく、70〜100質量%とすることがより好ましい。
濃縮工程は複数回行ってもよく、例えば、後述する第3溶媒の添加の前及び/又は後に行うことが好ましい。
【0085】
顔料ナノ粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、顔料ナノ粒子形成時に用いるバインダーと再分散化に用いるバインダーとが同じであっても異なっていてもよい。
【0086】
本発明の顔料分散物の顔料ナノ粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散物全量に対して顔料ナノ粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。
上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は有機顔料の種類などにより適宜定められるが、分散組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0087】
溶媒分を減じた濃縮顔料ナノ粒子液においては、先にも述べたとおり、ナノ粒子が凝集することがある。このような凝集顔料ナノ粒子を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(非特許文献1参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて濃縮した顔料ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0088】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、前記有機顔料ナノ粒子の分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含む。以下、着色感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0089】
ナノメートルサイズの有機顔料ナノ粒子及びその分散液を作製する方法については既に詳細に述べた。顔料ナノ粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0090】
モノマーもしくはオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。
モノマーもしくはオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0091】
バインダーとしては、酸性基を有するバインダーが好ましく、インクジェットインクないし着色感光性樹脂組成物の調製時に添加することもできるが、前記顔料ナノ粒子分散組成物を製造する際、または顔料ナノ粒子形成時に添加することも好ましい。有機顔料溶液および有機顔料溶液を添加して顔料ナノ粒子を生成させるための貧溶媒の両方もしくは一方にバインダーを添加することもできる。またはバインダー溶液を別系統で顔料ナノ粒子形成時に添加することも好ましい。バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するアルカリ可溶性のポリマーが好ましい。バインダーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、顔料ナノ粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0092】
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましい。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく、10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが特に好ましい。
【0093】
着色感光性樹脂組成物においては、上記成分の他に、更に樹脂組成物調製用有機溶媒(第4溶媒)を用いてもよい。第4溶媒の例としては、特に限定されないが、エステル類、エーテル類、ケトン類が挙げられる。これら溶剤のうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が溶剤として好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。またこの第4溶媒として前記の高沸点有機溶剤を用いることができ、例えば沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。第4溶媒の含有量は、樹脂組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0094】
また着色感光性樹脂組成物中には、界面活性剤、熱重合防止剤、着色剤(染料、顔料)、紫外線吸収剤、接着助剤、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0095】
本発明のインクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、画像形成用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。インクジェットインクとして、本発明における実施態様としては特に限定されないが例えば特開2002−201387号に記載される方法などを好ましく用いることが出来る。
本発明のインクジェットインクは前記有機顔料ナノ粒子(a)を用いたものであればよく、さらに、バインダー(b)と、モノマーもしくはオリゴマー(c)とを含有することが好ましい。ここで、バインダー(b)モノマーもしくはオリゴマー(c)としては、先に着色感光性樹脂組成物において説明したものを用いることができる。本発明のインクジェットインクにおいては、さらに光重合開始剤ないしは光重合開始剤系(d)、その他の添加剤を含有させてもよい。それぞれの成分((a)〜(d)、その他の添加剤)の含有量は先に着色感光性組成物において説明したものと同様にしてもよい。ただし、本発明のインクジェットインクをカラーフィルタ作製用インクとするときには、感光性インクとはしない態様が好ましく、光重合開始剤ないしは光重合開始剤系を用いないことが好ましい。
【0096】
本発明のインクジェットインクについては、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sであることが好ましく、8〜22mPa・sであることがより好ましく、10〜20mPa・sであることが特に好ましい(本発明において粘度は、特に断らない限り25℃のときの値である。)。前記射出温度の設定以外に、インクに含有させる成分の種類と添加量を調節することで、粘度の調整をすることができる。前記粘度は、例えば、円錐平板型回転粘度計やE型粘度計などの通常の装置により測定することができる。
また、射出時のインクの表面張力は15〜40mN/mであることが、画素の平坦性向上の観点から好ましい(本発明において表面張力は、特に断らない限り23℃のときの値である。)。より好ましくは、20〜35mN/m、最も好ましくは、25〜30mN/mである。表面張力は、界面活性剤の添加や、溶剤の種類により調整することができる。前記表面張力は、例えば、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)や、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)などの測定器を用いて白金プレート方法により測定することができる。
【0097】
カラーフィルタ用インクジェットインクの吹き付けとしては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
また、各画素形成のために用いるインクジェット法に関しては、インクを熱硬化させる方法、光硬化させる方法、あらかじめ基板上に透明な受像層を形成しておいてから打滴する方法など、通常の方法を用いることができる。
【0098】
本発明においては、カラーフィルタ用インクジェットインクを用いて画素を形成する前に、予め隔壁を作製し、該隔壁に囲まれた部分にインクを付与することが好ましい。この隔壁はどのようなものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁(以下、単に「隔壁」とも言う。)であることが好ましい。該隔壁は通常のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。
【0099】
上記の着色感光性樹脂組成物は通常の塗布方法により塗布することができ、それを乾燥することによって塗布膜を形成することができる。塗布方法については例えば、スリット状ノズルによる塗布、スピン塗布などが挙げられる。
【0100】
本発明の感光性転写材料は、上記の着色感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を有してなり、具体的な構成は特に限定されないが、例えば一体型となったフイルムを用いて形成したものであることが好ましい。一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。
【0101】
感光性転写材料において、仮支持体としては、可撓性を有し、加圧、若しくは加圧及び加熱下においても著しい変形、収縮若しくは伸びを生じないものであることが必要である。そのような仮支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができ、中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0102】
熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0103】
感光性転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。
該酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、通常のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0104】
感光性樹脂層の上には貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い保護フイルムを設けることが好ましい。保護フイルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、感光性樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フイルム材料としては例えばシリコーン紙、ポリオレフィン若しくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0105】
感光性転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の添加剤を溶解した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥することにより熱可塑性樹脂層を設け、その後熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤からなる中間層材料の溶液を塗布、乾燥し、その後感光性樹脂層を、中間層を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設けることにより作製することができる。
また、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び中間層を設けたシート、及び保護フイルム上に感光性樹脂層を設けたシートを用意し、中間層と感光性樹脂層が接するように相互に貼り合わせることによっても、更には、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設けたシート、及び保護フイルム上に感光性樹脂層及び中間層を設けたシートを用意し、熱可塑性樹脂層と中間層が接するように相互に貼り合わせることによっても、作製することができる。
【0106】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の膜厚としては、1.0〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmが特に好ましい。また、特に限定されるわけではないが、その他の各層の好ましい膜厚としては、仮支持体は15〜100μm、熱可塑性樹脂層は2〜30μm、中間層は0.5〜3.0μm、保護フイルムは4〜40μmが、一般的に好ましい。
【0107】
本発明のカラーフィルタは、コントラストに優れる。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0108】
本発明のカラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0109】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0110】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0111】
本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、本発明のカラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
(実施例1・比較例1)
<カラーフィルタA1の作製(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)>
[濃縮顔料液Aの調製]
ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)970mlに、ナトリウムメトキシド30%メタノール溶液31.0ml、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)34g、及びポリビニルピロリドン(K−30、商品名、和光純薬社製)10gを添加した顔料溶液Aaを調製した。また、これらとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸水溶液(和光純薬社製)30mlを含有した水1200mlを用意した。ここで、18℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により600rpmで攪拌した貧溶媒の水1200mlに、顔料溶液AaをNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて流速100ml/minで100ml(1分間)注入し、有機顔料ナノ粒子を形成し、顔料微粒子分散液Aaを調製した。
【0114】
ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)90mlに、ナトリウムメトキシド30%メタノール溶液5.1ml、顔料C.I.ピグメントレッド255(Irgazin DPP SCARLET EK、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)1.58g、及びポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量20000)10.0gを添加した顔料溶液Abを調製した。また、これらとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸水溶液(和光純薬社製)6mlを含有した水200mlを用意した。ここで、18℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により200rpmで攪拌した貧溶媒の水200mlに、顔料溶液AbをNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて流速100ml/minで20ml(12秒間)注入することにより、低分子有機材料微粒子を形成し、低分子有機材料分散液Abを調製した。
【0115】
18℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により600rpmで攪拌した上記分散液Aaに、18℃に温度コントロールされた分散液Abを速やかに添加し混合液Aを調製した。
【0116】
続いて、混合液Aを18℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により600rpmで攪拌ながらナトリウムメトキシド30%メタノール溶液を添加しpH10になる様調製後、1時間経過させ熟成液Aを調製した。熟成液A中の微粒子について、日機装社製ナノトラックUPA−EX150[商品名]を用いて、その粒径および単分散度を測定したところ、それぞれ、数平均粒径28nm、Mv/Mn1.50であった。なお、本実施例に用いたC.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントレッド255の上記[熟成溶解度試験]の項で示した手順で測定た熟成溶解度は、それぞれ0.00005モル/リットル、0.001モル/リットルであった。
【0117】
上記方法で調製した、熟成液Aを高速遠心冷却機HIMAC SCR20B(商品名、日立工機(株)社製)で、3100rpm(2000G)、1時間の条件で遠心分離し、上澄みを捨てて沈降した顔料ナノ粒子濃縮ペーストを回収した。ペーストの顔料含率を8453型分光光度計(商品名、アジレント(Agilent)社製)を用いて測定したところ、ピグメントレッド254が22.0質量%であった。
【0118】
上記顔料ナノ粒子濃縮ペースト14.5gに、乳酸エチル50.0mlを添加し、ディソルバーで3000rpm・60分攪拌した後、ナス型フラスコに移し、エバポレーターで70℃で1.5時間減圧乾燥することにより、顔料乾燥粉末A(ピグメントレッド254濃度52.0 質量%)を得た。
【0119】
[R顔料分散物Aの調製]
前記乾燥粉末Aを用い、下記組成のR顔料分散物Aを調製した。
前記顔料乾燥粉末A 6.0g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(和光純薬社製) 18.0g
【0120】
上記組成のR顔料分散物AをモーターミルM−50(商品名、アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで1時間分散した。
【0121】
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表1−1に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂層K1を得た。
【0122】
[表1−1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物1(カーボンブラック) 25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.0質量部
メチルエチルケトン 53質量部
バインダー2 9.1質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
DPHA液 4.2質量部
重合開始剤A 0.16質量部
界面活性剤1 0.044質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0123】
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製を100倍希釈した液)にて23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
【0124】
着色感光性樹脂組成物K1は、まずK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、メチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、重合開始剤A(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン)、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得た。
【0125】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(商品名:Nipex 35、デグサ ジャパン(株)社製)
13.1質量部
・分散剤(下記化合物J1) 0.65質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
【0126】
【化20】

【0127】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 76質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24質量部
<界面活性剤1>
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製):組成は下記
・C13CHCHOCOCH=CH 40質量部と
H(OCH(CH)CHOCOCH=CH 55質量部と
H(OCHCHOCOCH=CH 5質量部との共重合体(分子量3万)
30質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
【0128】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記画像Kを形成した基板に、下記表1−2に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物RA1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。該感光性樹脂層RA1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.90
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.10
【0129】
[表1−2]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料分散物A 40質量部
R顔料分散物2(CIPR177) 4.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.6質量部
メチルエチルケトン 37質量部
バインダー1 0.7質量部
DPHA液 3.8質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0130】
<R顔料分散物2>
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 18質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 12質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70質量部
<バインダー1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量4万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<重合開始剤B>
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾール
【0131】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表1−3に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該感光性樹脂層G1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
【0132】
[表1−3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物1(CIPG36) 28質量部
Y顔料分散物1(CIPY150) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29質量部
メチルエチルケトン 26質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
バインダー2 2.5質量部
DPHA液 3.5質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0133】
<G顔料分散物1>
富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製「商品名:GT−2」
【0134】
<Y顔料分散物1>
御国色素(株)社製「商品名:CFイエロ−EX3393」
【0135】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表1−4に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、目的のカラーフィルタA1を得た。該感光性樹脂層B1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
【0136】
[表1−4]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物1(CIPB15:6) 8.6質量部
B顔料分散物2(CIPB15:6+CIPV23) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
バインダー3 17質量部
DPHA液 4.0質量部
重合開始剤B 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0137】
<B顔料分散物1>
御国色素(株)社製「商品名:CFブル−EX3357」
<B顔料分散物2>
御国色素(株)社製「商品名:CFブル−EX3383」
<バインダー3>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=36/22/42モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
【0138】
<カラーフィルタB1の作製>
カラーフィルタA1の作製において、熟成液Aの遠心分離で得られた顔料ナノ粒子濃縮ペーストを、80℃で12時間乾燥させ顔料乾燥粉末B(ピグメントレッド254濃度55.0 質量%)を得た。
【0139】
[R顔料分散物Bの調製]
前記乾燥粉末Bを用い、下記組成のR顔料分散物Bを調製した。
前記顔料乾燥粉末A 5.6g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(和光純薬社製) 18.0g
【0140】
上記組成のR顔料分散物BをモーターミルM−50(商品名、アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで1時間分散した。
カラーフィルタA1と同様にしてR顔料分散物B及び着色感光性樹脂組成物RB1を調製し、カラーフィルタB1を作製した。
【0141】
<カラーフィルタC1の作製>
カラーフィルタB1の作製において、分散液Abの調製に使用するポリメタクリル酸メチルの質量平均分子量を600000に変更した以外は同様にしてR顔料分散物C及び着色感光性樹脂組成物RC1を調製し、カラーフィルタC1を作製した。
【0142】
<カラーフィルタD1の作製>
カラーフィルタA1の作製において得た熟成をしていない混合液Aを高速遠心冷却機HIMAC SCR20B(商品名、日立工機(株)社製)で、3100rpm(2000G)、1時間の条件で遠心分離し、上澄みを捨てて沈降した顔料ナノ粒子濃縮ペーストを回収した。回収したペーストを80℃で12時間乾燥させ顔料乾燥粉末D(ピグメントレッド254濃度53.0 質量%)を得た。
【0143】
[R顔料分散物Dの調製]
前記乾燥粉末Dを用い、下記組成のR顔料分散物Dを調製した。
前記顔料乾燥粉末D 5.9g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(和光純薬社製) 18.0g
【0144】
上記組成のR顔料分散物DをモーターミルM−50(商品名、アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで1時間分散した。
カラーフィルタA1と同様にしてR顔料分散物D及び着色感光性樹脂組成物RD1を調製し、カラーフィルタD1を作製した。
【0145】
<カラーフィルタE1の作製>
[濃縮顔料液Eの調製]
ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)970mlに、ナトリウムメトキシド30%メタノール溶液31.0ml、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)34g、及びポリビニルピロリドン(K−30、商品名、和光純薬社製)10g、ポリメタクリス酸メチル22gを添加した顔料溶液Eaを調製した。また、これらとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸水溶液(和光純薬社製)30mlを含有した水1200mlを用意した。ここで、18℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により600rpmで攪拌した貧溶媒の水1200mlに、顔料溶液AaをNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて流速100ml/minで100ml(1分間)注入し、有機顔料ナノ粒子を形成し、顔料微粒子分散液Eaを調製した。
分散液Ea中の微粒子について、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、その粒径および単分散度を測定したところ、それぞれ、数平均粒径27nm、Mv/Mn1.52であった。
【0146】
上記方法で調製した、分散液Eaを高速遠心冷却機HIMAC SCR20B(商品名、日立工機(株)社製)で、3100rpm(2000G)、1時間の条件で遠心分離し、上澄みを捨てて沈降した顔料ナノ粒子濃縮ペーストを回収した。回収したペーストを80℃で12時間乾燥させ顔料乾燥粉末E(ピグメントレッド254濃度56.0 質量%)を得た。
【0147】
[R顔料分散物Eの調製]
前記乾燥粉末Eを用い、下記組成のR顔料分散物Eを調製した。
前記顔料乾燥粉末E 5.4g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(和光純薬社製) 18.0g
【0148】
上記組成のR顔料分散物EをモーターミルM−50(商品名、アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで1時間分散した。
カラーフィルタA1と同様にしてR顔料分散物E及び着色感光性樹脂組成物RE1を調製し、カラーフィルタE1を作製した。
【0149】
<カラーフィルタF1の作製>
カラーフィルタE1の作製において、分散液Eaの調製に使用するポリメタクリル酸メチルをポリビニルピロリドン(K−30、商品名、和光純薬社製)に変更した以外は同様にしてR顔料分散物F及び着色感光性樹脂組成物RF1を調製し、カラーフィルタF1を作製した。
【0150】
上記のようにしてスリット状ノズルを用いた塗布により作製したカラーフィルタA1〜F1を総称してカラーフィルタ1ともいう。
【0151】
[カラーフィルタA1〜F1のコントラストの測定]
作製したカラーフィルタを、バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(FWL18EX−N、商品名、東芝ライテック(株)社製)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(HLC2−2518、商品名、(株)サンリツ社製)の間に置き、偏光軸が平行のときと垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(植木、小関、福永、山中著,「512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ」,第7回色彩光学コンファレンス(1990年)等参照。)。
カラーフィルタA1〜F1のコントラストの測定結果を表1−6に示す。
【0152】
[経過安定性の評価]
作製した着色感光性樹脂組成物RA1〜RF1の作製直後の25℃での粘度(初期粘度)を測定した。また、40℃の環境下で1ヶ月間保存した着色感光性樹脂組成物RA1〜RG1の25℃での粘度(経時粘度)を測定した。初期粘度と経時粘度を比較したときの上昇値とともに、結果を表1−7に示す。このとき粘度は振動式粘度計VM−100A−L[商品名]を用いて測定した。
【0153】
[表1−6]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カラーフィルタ コントラスト 初期粘度 経時粘度 粘度上昇
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A1 9200 13cp 16cp 3cp
B1 9670 11cp 12cp 1cp
C1 9100 14cp 19cp 5cp
D1 6000 15cp 26cp 11cp
E1 8300 12cp 27cp 15cp
F1 4500 13cp 37cp 24cp
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0154】
表1−6の結果から明らかなように、本発明例のカラーフィルタA1〜C1は、比較例のカラーフィルタD1、E1及びF1に比べて高いコントラストを示し、良好な表示特性を示すことがわかった。また、本発明例の着色感光性樹脂組成物RA1〜RC1は、比較例の着色感光性樹脂組成物RD1、RE1及びRF1に比べて長期間に亙って高い分散安定性が維持され、良好な経時安定性を示すことがわかった。
【0155】
(実施例2・比較例2)
<カラーフィルタA2〜F2の作製(感光性樹脂転写材料のラミネートよる作製)>
〔感光性樹脂転写材料の作製〕
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1から成る中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、前記着色感光性樹脂組成物K1を塗布、乾燥させ、該仮支持体の上に乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.4μmの感光性樹脂層を設け、保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)とブラック(K)の感光性樹脂層とが一体となった感光性樹脂転写材料K1を作製した。
【0156】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール 11.1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.36質量部
・メチルエチルケトン 52.4質量部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、
分子量:9万、Tg:約70℃) 5.83質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=63/37、分子量:1万、Tg:約100℃) 13.6質量部
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリレートを
2当量脱水縮合した化合物(新中村化学工業(株)社製、
商品名:2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)
フェニル]プロパン) 9.1質量部
・界面活性剤1 0.54質量部
【0157】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ社製、
鹸化度=88%、重合度550) 32.2質量部
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン(株)社製、
K−30) 14.9質量部
・蒸留水 524質量部
・メタノール 429質量部
【0158】
次に、前記感光性樹脂転写材料K1の作製において用いた前記着色感光性樹脂組成物K1を、下記表2−1〜2−3に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物RA2、G101及びB101に変更し、それ以外は上記と同様の方法により、感光性樹脂転写材料RA2、G101及びB101を作製した。尚、着色感光性樹脂組成物RA2、G101及びB101の調製方法は、それぞれ前記着色感光性樹脂組成物RA1、G1及びB1の調製方法に準ずる。
【0159】
[表2−1] RA2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料分散物A 40質量部
R顔料分散物2(CIPR177) 4.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.1質量部
メチルエチルケトン 57質量部
バインダー1 0.8質量部
DPHA液 4.4質量部
重合開始剤B 0.14質量部
重合開始剤A 0.06質量部
フェノチアジン 0.01質量部
添加剤1 0.52質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0160】
[表2−2] G101
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物1(CIPG36) 28質量部
Y顔料分散物1(CIPY150) 13質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 39質量部
メチルエチルケトン 16質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
バインダー2 3.0質量部
DPHA液 4.3質量部
重合開始剤B 0.15質量部
重合開始剤A 0.06質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0161】
[表2−3] B101
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物1(CIPB15:6) 8.6質量部
B顔料分散物2(CIPB15:6+CIPV23) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
バインダー3 18.5質量部
DPHA液 4.3質量部
重合開始剤B 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0162】
尚、表2−1に記載の組成物の内、添加剤1は、燐酸エステル系特殊活性剤(楠本化成(株)社製、商品名:HIPLAAD ED152)を用いた。
【0163】
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱して次のラミネーターに送った。
前記感光性樹脂転写材料K1の保護フイルムを剥離後、ラミネーター((株)日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃に加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。
【0164】
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム社製を純水で12倍希釈した液(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合した。))にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットル濃度の炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像しパターニング画像を得た。
引き続き、洗浄剤(商品名「T−SD1(富士写真フイルム社製)」を純水で10倍に希釈した液を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、ブラック(K)の画像を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、220℃、15分熱処理した。
この画像Kを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0165】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料RA2を用い、前記感光性樹脂転写材料K1と同様の工程で、熱処理済みのレッド(R)の画素Rを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は35℃35秒とした。感光性樹脂層RA2の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254及びC.I.P.R.177)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.90
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.10
この画像K、及び画素Rを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0166】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料G101を用い、前記感光性樹脂転写材料RA2と同様の工程で、熱処理済みのグリーン(G)の画素Gを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は34℃45秒とした。感光性樹脂層G101の膜厚及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.150)の塗布量を表以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
この画像K、画素R、および画素Gを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0167】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料B101を用い、前記感光性樹脂転写材料RA2と同様の工程で、熱処理済みのブルー(B)の画素Bを得た。但し露光量は30mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は36℃40秒とした。感光性樹脂層B101の膜厚及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
この画素R、画素G、画素B、および画像Kを形成した基板を240℃で50分ベークして、カラーフィルタA2を得た。
【0168】
上記のカラーフィルタA2の作製方法に対し、R顔料分散物AをR顔料分散物B〜F、にそれぞれ変更し、着色感光性樹脂組成物RB2〜RF2およびカラーフィルタB2〜F2を作製した。
【0169】
上記のようにして感光性樹脂転写材料のラミネートにより作製したカラーフィルタA2〜F2を総称してカラーフィルタ2ともいう。
【0170】
得られたカラーフィルタA2〜F2のコントラストと着色感光性樹脂組成物RA2〜RF2の経時安定性の評価をを実施例1・比較例1と同様にして評価した。結果を表2−4に示す。
【0171】
[表2−4]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カラーフィルタ コントラスト 初期粘度 経時粘度 粘度上昇
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A2 10000 17cp 18cp 1cp
B2 11000 15cp 17cp 2cp
C2 9800 13cp 17cp 4cp
D2 7500 16cp 28cp 12cp
E2 8500 19cp 28cp 9cp
F2 5500 13cp 31cp 18cp
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0172】
表2−4の結果から明らかなように、本発明例のカラーフィルタA2〜C2は、比較例のカラーフィルタD2、E2及びF2に比べて高いコントラストを示し、良好な表示特性を示すことがわかった。また、本発明例の着色感光性樹脂組成物RA2〜RC2は、比較例の着色感光性樹脂組成物RD2、RE2及びRF2に比べて長期間に亙り高い分散安定性を維持し、良好な経時安定性を示すことがわかった。
【0173】
(実施例3・比較例3)
<カラーフィルタA3〜F3の作製(インクジェットによる作製)>
上記感光性樹脂転写材料K1の作製手順について、着色感光性樹脂組成物K1を下記表3−1に記載の着色感光性樹脂組成物K2に代えた以外、同様にして感光性樹脂転写材料K2を作製した。
【0174】
[表3−1]着色感光性樹脂組成物K2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物1(カーボンブラック) 30質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.3質量部
メチルエチルケトン 34質量部
シクロヘキサノン 8.6質量部
バインダー2 14質量部
DPHA液 5.8質量部
重合開始剤A 0.22質量部
フェノチアジン 0.006質量部
前記界面活性剤1 0.058質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0175】
遮光性を有する樹脂組成物K2は、まずK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表3−1記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダー2、フェノチアジン、DPHA液、重合開始剤A、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌することによって得られた。
【0176】
〔遮光性を有する隔壁の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0177】
前記感光性樹脂転写材料K2の保護フイルムを剥離後、ラミネーター(株式会社日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量100mJ/cmでパターン露光した。マスク形状は格子状で、画素と遮光性を有する隔壁との境界線に該当する部分における、遮光性を有する隔壁側に凸な角の曲率半径は0.6μmとした。
【0178】
次に、トリエタノールアミン系現像液(30%のトリエタノールアミン含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム株式会社製を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断層)を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し遮光性を有する樹脂層を現像しパターニング離画壁(遮光性を有する隔壁パターン)を得た。
【0179】
引き続き洗浄剤(商品名「T−SD3(富士写真フイルム株式会社製)」を純水で10倍に希釈した液)を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、遮光性を有する隔壁を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、240℃、50分熱処理した。
【0180】
〔プラズマ撥水化処理〕
その後、下記方法によりプラズマ撥水化処理を行った。
遮光性を有する隔壁を形成した前記基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にてプラズマ撥水化処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー :50W
処理時間 :30sec
【0181】
〔カラーフィルタ用インクジェットインクの調製〕
以下の処方でカラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
[表3−R]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インク RA3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料分散物A 63
R顔料分散物2(CIPR177) 7
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000(商品名))1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0182】
[表3−G]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インクG1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物1(P.G.36) 35
Y顔料分散物1(P.Y.150) 32
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000) 1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0183】
[表3−B]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インクB1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物1 (P.B.15:6+P.V.23) 8
B顔料分散物2 (P.B.15:6) 71
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000(商品名))1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ポリマー1 ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万
【0184】
上記表3−R、3−G、3−Bの各成分の混合については、先ず、顔料及び高分子分散剤を溶剤の一部に投入、混合し、3本ロールとビーズミルを用いて攪拌して顔料分散液を得た。一方、他の配合成分を溶剤の残部に投入、攪拌して溶解分散し、モノマー溶液を得た。そして、顔料分散液または顔料分散組成物を少量ずつモノマー溶液中に添加しながらディソルバーで十分に攪拌し、カラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
【0185】
〔画素形成〕
まず、上記記載のインクRA3、インクG−1、インクB−1を用いて下記のようにしてカラーフィルタA3を作製した。
インクジェットヘッドはDimatix社製SE−128を、吐出制御装置はDimatix社製 ApolloIIを用いた。インクジェットヘッドを自動2次元移動ステージ(駿河精機製KS211−200)上に搭載し、前記で作製した隔壁の間隙に所定インク量が吐出されるように、ステージを移動させながら吐出制御装置によるヘッドからの吐出を同期させた。
ここで上記記載のインクRA3、インクG−1、インクB−1の3色のインクは各々別のヘッドに充填されており、各ヘッドはXYステージ上に固定され、各々のインクが所定の位置に着弾するように、吐出制御装置により3つのヘッドを独立に制御した。
打滴は、所望の濃度になるまでインク組成物の吐出を行い、ホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタA3を作製した。
【0186】
上記のカラーフィルタA3の作製方法に対し、R顔料分散物AをR顔料分散物B〜Fにそれぞれ変更し、インクRB3〜RF3およびカラーフィルタB3〜F3を作製した。
【0187】
本明細書では、上記のようにしてインクジェットにより作製したカラーフィルタA3〜F3を総称してカラーフィルタ3ともいう。
【0188】
得られたカラーフィルタA3〜F3のコントラストとインクRA3〜RF3の経時安定性の評価をを実施例1・比較例1と同様にして評価した。結果を表3−2に示す。
【0189】
[表3−2]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カラーフィルタ コントラスト 初期粘度 経時粘度 粘度上昇
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A3 12100 10cp 12cp 2cp
B3 12500 12cp 12cp 0cp
C3 10700 13cp 16cp 3cp
D3 8600 11cp 22cp 11cp
E3 9500 12cp 22cp 10cp
F3 7300 12cp 20cp 8cp
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表3−2の結果から明らかなように、本発明例のカラーフィルタA3〜C3は、比較例のカラーフィルタD3、E3及びF3に比べて高いコントラストを示し、良好な表示特性を示すことがわかった。また、本発明例のインクRA3〜RC3は、比較例のインクRD3、RE3及びRF3に比べて長期間に亙って高い分散安定性が維持され、良好な経時安定性を示すことがわかった。
【0190】
(実施例4・比較例4)
[液晶表示素子の作製]
以下の方法に従い、液晶表示素子を作製した。
(1)ガラス基板の片面に、パターニングされた1cmのITO膜を形成したのち、該ITO膜上に、スピンナーを用いて、市販のアクティブマトリックス用液晶配向剤を塗布したのち、180℃で1時間乾燥して、膜厚600Åの塗膜を形成した。
(2)前記の実施例・比較例で作製したカラーフィルタ1〜3のそれぞれ上に、パターニングされた1cmのITO膜を形成したのち、該ITO膜上に、(1)と同様にして、液晶配向剤の塗膜を形成した。
(3)ガラス基板の片面にITO膜(連続膜)を形成したのち、該ITO膜上に、(1)と同様にして、液晶配向剤の塗膜を形成した。
(4)次いで、(1)〜(3)で得た各基板上の塗膜の表面に、レーヨン製の布を巻き付けたロールを備えたラビングマシーンを用いてラビング処理を行なって、液晶配向膜を形成した。その際のラビング条件は、ロール回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、毛足の押し込み長さ0.4mmであった。
(5)このようにして液晶配向膜が形成された基板のうち、(1)又は(2)の処理を経たそれぞれの基板を(3)の処理を経た基板と組み合わせて2枚一組とし、各組毎に、2枚の基板の外縁部に、直径5.5μmのシリカゲル柱状スペーサーを含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷により塗布したのち、各液晶配向膜のラビング方向が90度に交差するように、2枚の基板を間隙を開けて対向配置し、各基板の外縁部同士が当接するように圧着して、接着剤を硬化させた。
(6)次いで各組毎に、2枚の基板の内表面と接着剤の硬化層とにより区画されたセルギャップ内に、フルオロビフェニルの誘導体からなるネマティック型液晶「ZLI−5081」(商品名、メルクジャパン(株)社製)を注入充填したのち、注入孔を封止して液晶セルを作製した。その後、液晶セルの外表面に偏光板を、その偏光方向が各基板上の液晶配向膜のラビング方向と一致するように貼り合わせて、液晶表示素子を作製した。
【0191】
作製した液晶表示装置について表示特性(色むら、黒のしまり)を目視により評価した。その結果、本発明例のカラーフィルタA1〜C1,A2〜C2及びA3〜C3のそれぞれを用いて作製した液晶表示素子では、いずれも、比較例のカラーフィルタD1,E1、F1、D2、E2、F2,D3、E3又はF3を用いて作製した液晶表示素子と比較して、良好な表示特性を示すことがわかった。
【0192】
以上の結果より、本発明の製造方法により作製した有機顔料ナノ粒子及びその顔料分散組成物を用いることにより、コントラストが極めて高いカラーフィルタとすることができ、この本発明のカラーフィルタを用いた液晶表示装置は、良好な表示特性を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記第1の良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる第1の貧溶媒とを混合して、前記有機顔料を微粒子として析出させた分散液Aを用意する工程と
第2の良溶媒に低分子有機材料を溶解しかつ高分子化合物を含有する有機材料溶液と、前記第2の良溶媒と相溶性でありかつ前記低分子有機材料に対しては貧溶媒となる第2の貧溶媒とを混合して、前記低分子有機材料を微粒子として析出させた分散液Bを用意する工程と
前記分散液Aと前記分散液Bとを混合後、該混合液における前記低分子有機材料の溶解度が前記有機顔料の溶解度より高くなる状態を経る工程と
を有することを特徴とする有機顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散液Aと前記分散液Bとを混合する工程において、前記混合液の、混合状態の維持、温度の調節、圧力の調節、溶媒量の調節、pHの調節、又はこれらを組み合わせて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記低分子有機材料が、有機顔料、有機色素、芳香族炭化水素、及び脂肪族炭化水素からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記高分子化合物の質量平均分子量が1000〜500000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記高分子化合物が、ビニルモノマーの重合体、ビニルモノマーの共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、これらの変性物、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で調製した有機顔料ナノ粒子を含有する分散液の溶媒分を除去して粉末化したことを特徴とする有機顔料ナノ粒子。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で作製した有機顔料ナノ粒子を含有することを特徴とする顔料分散物。
【請求項8】
請求項7に記載された顔料分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7に記載された顔料分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
【請求項10】
仮支持体上に、少なくとも、請求項8に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
【請求項11】
請求項8に記載の着色感光性樹脂組成物、請求項9に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は請求項10に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2010−180386(P2010−180386A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27903(P2009−27903)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】