説明

有機ELパネルおよびその製造方法

【課題】非表示領域を小さくし、かつ、信頼性の高い有機ELパネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
有機ELパネル1は、透明基板10と、透明基板10上に設けられた有機EL素子14と、透明基板10上に設けられた有機EL素子14を駆動する駆動用ICチップ20と、透明基板10上に形成され有機EL素子14と駆動用ICチップ20とを電気的に接続する第1の回路パターン12と、有機EL素子14を封止する封止板16と、封止板16上に形成され有機EL素子14と駆動用ICチップ20とを電気的に接続する第2の回路パターン18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機ELパネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型ディスプレイの一つとして普及が見込まれる有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイは、ガラス基板に透明電極、発光材料、陰極等を積層して作成される有機ELパネルを用いている。有機ELの発光材料は、嫌水性のため、積層上部すなわち表示パネルの裏側の面を封止している。このような有機ELディスプレイは、一部簡易ディスプレイとして、パッシブタイプの表示回路を利用したものがある。パッシブタイプのものでは、駆動用ICをガラス基板にマウントし、その駆動用ICから配線しフレキシブル配線基板(FPC:Flexible printed circuits)で外部回路と接続している(例えば、特許文献1参照)。特に、特許文献2では、駆動用ICを1つではなく複数マウントして外部回路と接続している。一方、特許文献3、4、5、6では、封止板に回路パターンを形成し、更に駆動用ICをマウントした例が開示されている。
【特許文献1】特開2003−295785号公報
【特許文献2】特開2003−157028号公報
【特許文献3】特開2003−332044号公報
【特許文献4】特開2003−332043号公報
【特許文献5】特開2000−58271号公報
【特許文献6】特開平11−233266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のように駆動用ICを基板にマウントし、表示領域の三方から配線パターンを形成することにより、非表示エリアが大きくなる一方、特許文献2のように複数の駆動用ICを使用すると、コスト上昇や外部回路との接続に手間がかかるという製造上のデメリットが生じる。
【0004】
また、特許文献3、4、5、6のように封止板上に駆動用ICをマウントすると、非表示エリアを小さくすることはできるが、駆動用ICからの発熱により、封止板と基板との熱膨張率差や、封止板内部の流体(気体)の熱膨張などにより内部の気密性が低下し、信頼性が低下するおそれがある。特に、駆動用ICを封止板の内側にマウントする場合は、駆動用ICを封止板に取り付けた後に封止板を基板に取り付けるため、有機EL素子の不良検査が、駆動用IC付きの状態になるまで行うことができず、不良が生じた際の損失が大きくなる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、非表示領域を小さくし、かつ、信頼性の高い有機ELパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有機ELパネルは、透明基板と、透明基板上に設けられた有機EL素子と、透明基板上に設けられた有機EL素子を駆動する駆動用ICチップと、透明基板上に形成され有機EL素子と駆動用ICチップとを電気的に接続する第1の回路パターンと、有機EL素子を封止する封止板と、封止板上に形成され有機EL素子と駆動用ICチップとを電気的に接続する第2の回路パターンと、を備える。
【0007】
この有機ELパネルでは、有機EL素子と駆動用ICチップとを電気的に接続する第2の回路パターンが封止板に形成されているため、その分の透明基板上における配線スペースが不要になり、非表示領域を小さくすることができる。また、駆動用ICチップを透明基板上に設けることで、封止板と基板との熱膨張率差や、封止板内部の流体(気体)の熱膨張などにより内部の気密性が低下するおそれを低減することができ、信頼性を高くすることができる。
【0008】
第2の回路パターンが跨ぐ封止板のエッジ部は面取りされていると好ましい。このようにすれば、第2の回路パターンが破断するおそれを低減でき、信頼性を高くすることができる。
【0009】
本発明に係る有機ELパネルの製造方法は、有機EL素子と第1の回路パターンとが形成された透明基板と、第2の回路パターンが形成された封止板とを準備する工程と、透明基板と封止板とを位置合わせし、有機EL素子を封止しつつ第1の回路パターンと第2の回路パターンとを電気的に接続する工程と、透明基板上に有機EL素子を駆動する駆動用ICチップを実装する工程と、を備える。
【0010】
この有機ELパネルの製造方法では、有機EL素子と駆動用ICチップとを電気的に接続する第2の回路パターンが形成された封止板を用いて有機ELパネルを製造するため、その分の透明基板上における配線スペースが不要になり、非表示領域を小さくすることができる。また、駆動用ICチップを透明基板上に実装することで、封止板と基板との熱膨張率差や、封止板内部の流体(気体)の熱膨張などにより内部の気密性が低下するおそれを低減することができ、信頼性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非表示領域を小さくし、かつ、信頼性の高い有機ELパネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る有機ELパネル1の構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、有機EL素子と第1の回路パターンとが形成された透明基板を示す平面図である。図4は、第2の回路パターンが形成された封止板を示す平面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、有機ELパネル1は、透明基板10と、透明基板10上に形成された第1の回路パターン12と、有機EL素子14と、封止板16と、封止板16上に形成された第2の回路パターン18と、駆動用ICチップ20と、外部回路と接続するためのフレキシブル配線基板22とを備えている。
【0015】
透明基板10の材質は特に限定されないが、例えば、ガラス基板や樹脂基板が挙げられる。厚みは特に限定されないが、例えば0.1〜1.1mm程度のものを使用できる。
【0016】
第1の回路パターン12は、有機EL素子14と駆動用ICチップ20とを電気的に接続するために、透明基板10上に形成されている。この第1の回路パターン12は、図3に示すように、主として有機EL素子14が形成された部分から駆動用ICチップ20が実装されるべき部分20aまで延びる陽極側とされる垂直電極部12aと、陰極とされるべき水平電極部12b、12c、12d、12eと、駆動用ICチップ20が実装されるべき部分20aからフレキシブル配線基板22が実装されるべき部分22aまで延びる配線部12fとを備えている。
【0017】
垂直電極部12aは、透明基板10上で図3の縦方向に延在し、有機EL素子14の図示しない垂直電極膜と接触している。垂直電極部12aの駆動用ICチップ20側の端部には、駆動用ICチップ20との接続のためのバンプ40が設けられている。
【0018】
水平電極部12bは、有機EL素子14の左上側端部において図3の横方向に延びており、水平電極部12cは、有機EL素子14の右下側端部において図3の横方向に延びている。これら水平電極部12b,12cの一端は、有機EL素子14の図示しない水平電極膜と接続されている。またこれら水平電極部12b,12cの他端は、後述する封止板16に形成された第2の回路パターン18と電気的に接続される。従って、水平電極部12b,12cの他端には、バンプ42が設けられている。
【0019】
また水平電極部12d,12eは、有機EL素子14の下端中央部において図3の縦方向に延びている。この水平電極部12d,12eは、後述する封止板16に形成された第2の回路パターン18と電気的に接続される。また水平電極部12d,12eは、後述する駆動用ICチップ20と電気的に接続される。従って、水平電極部12d,12eの両端には、バンプ44が設けられている。
【0020】
配線部12fは、駆動用ICチップ20とフレキシブル配線基板22とを電気的に接続するものであり、その両端にはバンプ46が設けられている。
【0021】
このような第1の回路パターン12は、ITO等の導電材料や、Al、Cr、Mo等の金属材料を用い、フォトリソグラフィー法等によって容易に製造できる。また、第1の回路パターン12の一部は、ベースとなる金属膜上に、タンタル、TiN等のバリア膜を有することができ、3層以上の構造を有していても良い。
【0022】
有機EL素子14は、図示しない垂直電極膜と水平電極膜とで有機EL層を挟んだ構造を有している。有機EL層の構成は特に限定されず、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層から構成される公知のものを利用できる。
【0023】
封止板16は、有機EL素子14を封止する。この封止板16は、平面視において有機EL素子14よりも一回り大きい外形を有する。封止板16の外縁は内側に屈曲するように加工され、側壁部16aが設けられている。この封止板16のエッジ16bは、図2に示すように、面取りされている。
【0024】
この封止板16は、後述するように第2の回路パターン18が形成されるものであるため、非導電性の材料から形成されていると好ましい。このような材料として、例えばガラスが挙げられる。また、例えばSUSのような導電性の材料であっても、表面を電気絶縁処理しているものであれば使用してもよい。
【0025】
この封止板16は、有機EL素子14を内部に収容するように透明基板10上に搭載され、接着剤24を用いて側壁部16aの先端が透明基板10に接着される。これにより、有機EL素子14が封止される。なお、封止板16の内面には、封止板16内を乾燥状態に保つために乾燥剤26を設けても良い。
【0026】
第2の回路パターン18は、有機EL素子14と駆動用ICチップ20とを電気的に接続するために、封止板16の外面に設けられている。この第2の回路パターン18は、図4に示すように、透明基板10上の水平電極部12bと水平電極部12dを繋ぐ電極部18aと、透明基板10上の水平電極部12cと水平電極部12eを繋ぐ電極部18bとを備えている。これら電極部18a,18bは、封止板16の側壁部16aを通る部分と低壁部16cを通る部分とを有しており、封止板16のエッジ16bを2回跨いでいるが、上述したように封止板16のエッジ16bは面取りされているため、第2の回路パターン18が破断するおそれが低減されている。
【0027】
このような第2の回路パターン18も、ITO等の導電材料や、Al、Cr、Mo等の金属材料を用い、フォトリソグラフィー法等によって容易に製造できる。また、第2の回路パターン18の一部は、ベースとなる金属膜上に、タンタル、TiN等のバリア膜を有することができ、3層以上の構造を有していても良い。
【0028】
上記した透明基板10と封止板16とが位置合わせされた状態で、第1の回路パターン12と第2の回路パターン18とは、図2に示すように、ボールボンディング50により電気的に接続されている。
【0029】
駆動用ICチップ20は、有機EL素子14を駆動する。すなわち、本実施形態では、駆動用ICチップ20は、フレキシブル配線基板22を介して入力される信号に基づいて、パッシブマトリクス方式で有機EL素子14の発光を制御する。
【0030】
次に、本実施形態に係る有機ELパネル1の製造方法について説明する。
【0031】
まず、図3に示すような、有機EL素子14と第1の回路パターン12とが形成された透明基板10を準備する。また、図4に示すような、第2の回路パターン18が形成された封止板16を準備する。
【0032】
次に、有機EL素子14を内部に収容しつつ、接続されるべき第1の回路パターン12と第2の回路パターン18とが対応するように、これら透明基板10と封止板16とを位置合わせする。
【0033】
次に、接着剤24を介して封止板16を透明基板10に接着し固定する。これにより、有機EL素子14が封止板16により封止される。
【0034】
次に、対応する第1の回路パターン12と第2の回路パターン18とをボールボンディング50により電気的に接続する。そして、透明基板10上に駆動用ICチップ20とフレキシブル配線基板22とを実装する。
【0035】
なお、透明基板10上で露出する第1の回路パターン12上にシリコーン樹脂などの保護樹脂を塗布してもよい。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態の有機ELパネル1及びその製造方法では、有機EL素子14と駆動用ICチップ20とを電気的に接続する第2の回路パターン18が封止板16に形成されているため、その分の透明基板10上における配線スペースが不要になり、非表示領域を小さくすることができる。また、駆動用ICチップ20を封止板16上に設けることなく透明基板10上にのみに設けることで、封止板16と透明基板10との熱膨張率差や、封止板16内部の流体(気体)の熱膨張などにより内部の気密性が低下するおそれを低減することができ、信頼性を高くすることができる。
【0037】
また、第2の回路パターン18が跨ぐ封止板16のエッジ部16bは面取りされているため、第2の回路パターン18が破断するおそれを低減でき、信頼性を高くすることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、封止板16のエッジ16bはC面取りなどの斜め面取りでなく、丸みを持ったR面取りであっても良い。
【0039】
また、第2の回路パターン18は、封止板16の内面に設けても良い。ただし、封止板16の外面に設けたほうが、製造が容易となる。
【0040】
また、回路パターン12,18のレイアウトは図示したものに限定されず、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係る有機ELパネルの構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】有機EL素子と第1の回路パターンとが形成された透明基板を示す平面図である。
【図4】第2の回路パターンが形成された封止板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…有機ELパネル、10…透明基板、12…第1の回路パターン、14…有機EL素子、16…封止板、16b…エッジ部、18…第2の回路パターン、20…駆動用ICチップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に設けられた有機EL素子と、
前記透明基板上に設けられた前記有機EL素子を駆動する駆動用ICチップと、
前記透明基板上に形成され前記有機EL素子と前記駆動用ICチップとを電気的に接続する第1の回路パターンと、
前記有機EL素子を封止する封止板と、
前記封止板上に形成され前記有機EL素子と前記駆動用ICチップとを電気的に接続する第2の回路パターンと、
を備える有機ELパネル。
【請求項2】
前記第2の回路パターンが跨ぐ前記封止板のエッジ部は面取りされている請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
有機EL素子と第1の回路パターンとが形成された透明基板と、第2の回路パターンが形成された封止板とを準備する工程と、
前記透明基板と前記封止板とを位置合わせし、前記有機EL素子を封止しつつ前記第1の回路パターンと第2の回路パターンとを電気的に接続する工程と、
前記透明基板上に前記有機EL素子を駆動する駆動用ICチップを実装する工程と、
を備える有機ELパネルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−288541(P2009−288541A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141288(P2008−141288)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】