説明

有機EL素子の製造装置

【課題】複数のロボット及び成膜室での位置決め機構が不要で安価であるとともに、位置決め時間を要さず、有機EL素子の生産性を向上させることができる有機EL素子の製造装置を提供すること。
【解決手段】成膜室内で被処理基板上に被蒸着物をパターニングさせて蒸着させるように、前記被処理基板に相対し且つ前記被蒸着物との間に配置されるマスクと前記マスクを保持するマスク保持部材を有する有機EL素子を製造する製造装置において、前記マスク保持部材の交換及び前記被処理基板の搬送を行うロボットが前記マスク保持部材と前記被処理基板の両方を掴持でき、且つ、掴持位置を決める。ここで、前記マスク保持部材は、前記被処理基板と同一な形状部位を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有機EL膜蒸着装置は、特許文献1や特許文献2に記載されているように、複数の成膜室を配置し、有機EL素子を構成する層状膜を成膜する装置が提案されている。
【0003】
一般的に層状膜は図4に示すように、ガラス基板30上に透明電極31、正孔注入輸送層32、発光層33、電子注入輸送層34、陰極35、Si層36で形成され、それぞれ層状膜は成膜室内でガラス基板30上に相対し、且つ、被蒸着物との間に配置されるマスクを位置決めしてパターニングされる。前記マスクは、通常マスク保持部材に締結され、数十回蒸着毎に交換される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−027213号公報
【特許文献2】特開平8−111285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、マスクの交換及びガラス基板の搬送を行うロボットが複数必要となったり、成膜室でのガラス基板とマスク保持部材の位置決め機構の必要性が生じたりする。この場合、成膜室内でガラス基板及びマスク保持部材が搬入された後に、位置決め動作を開始して成膜することとなる。
【0006】
本発明の目的は、複数のロボット及び成膜室での位置決め機構が不要で安価であるとともに、位置決め時間を要さず、有機EL素子の生産性を向上させることができる有機EL素子の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、成膜室内で被処理基板上に被蒸着物をパターニングさせて蒸着させるように、前記被処理基板に相対し且つ前記被蒸着物との間に配置されるマスクと前記マスクを保持するマスク保持部材を有する有機EL素子を製造する製造装置において、前記マスク保持部材の交換及び前記被処理基板の搬送を行うロボットが前記マスク保持部材と前記被処理基板の両方を掴持でき、且つ、掴持位置を決めることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記マスク保持部材は、前記被処理基板と同一な形状部位を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マスクの交換及びガラス基板の搬送を行うロボットが複数必要となったに対して、マスク保持部材は前記被処理基板と同一な形状部位を持ち、マスク保持部材と被処理基板の両方を掴持できることによって、ロボットが共有でき1台となって安価な有機EL素子の製造装置の提供が可能となる。
【0010】
又、成膜室でのガラス基板とマスク保持部材の位置決め機構の必要性が生じたのに対して、ロボット上で掴持位置を決めることによって、各成膜室毎の位置決め機構が不要となって大幅にコストが低減し、安価な有機EL素子の製造装置の提供が可能となる。
【0011】
更に、成膜室内に搬送された後に位置決め動作を開始することに対し、ロボット上で掴持位置を決めることで、成膜室内での位置決め時間を要さないこととなって、製造時間を短縮でき、有機EL素子の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更がなされたものも包含する。
【0013】
図1〜図4は本発明の実施形態に係る有機EL素子の製造装置を示しており、図1は実施形態に係る製造装置の上視図、図2は図1に示した製造装置の一部拡大図、図3及び図4は図1に示した製造装置の成膜室内の一部拡大断面図である。又、図5は有機EL素子の膜構成を示す簡略断面斜視図である。
【0014】
図5において、1はガラス基板であり、2はガラス基板1上に成膜される陽極(ITO)であり、3はホール輸送層、4は発光層、5は電子輸送層、6は陰極であって、ガラス基板1上に順次成膜される。
【0015】
図1〜図4において、11は被蒸着体のガラス基板である。12はマスク、13はマスク12を保持するマスク保持部材であり、ガラス基板11と同一な形状部位のつば19を備える。図1〜図3は前記ガラス基板11を掴持した様子を示し、図4は前記マスク保持部材13を掴持した様子を示している。14(a),14(b),14(c)はガラス基板11及びマスク保持部材13を突き当てる突き当て部材、15(a),15(b),15(c)は突き当て部材14(a),14(b),14(c)の対向位置に設けたガラス基板11及びマスクユニット13を押し付ける押し付け部材であり、16(a),16(b),16(c)は押し付け部材15(a),15(b),15(c)を駆動するプランジャである。
【0016】
21はガラス基板11及びマスク保持部材13を格納するストッカー、22は成膜室であり、有機ELを構成する各膜を成膜する。
【0017】
17はマスク保持部材13の交換及びガラス基板11の搬送を行うロボットであり、Y方向及び高さ方向に駆動する。又、X方向に駆動するスライド装置18に締結され、各成膜室22に移動する。20は成膜室内の下部に設けられた蒸着物である。
【0018】
上記有機EL素子の製造装置によれば、ロボット16によりストッカー21から運び出されたガラス基板11は、ロボット16上で押し付け部材15(a),15(b),15(c)がプランジャ16(a),16(b),16(c)により、駆動し押し付けられて、突き当て部材14(a),14(b),14(c)に突きあたり所望の位置に位置決めされる。この動作はストッカー21から成膜室22(a)にガラス基板11が移動する間に行う。
【0019】
図3に示すように、成膜室22(a)へ移動したガラス基板11は、押し付け部材15(a),15(b),15(c)がプランジャ16(a),16(b),16(c)の力が解除されると同時にロボット16が下降し、マスク12上に設置される。このとき、既にマスク12との位置が所望の位置に決められている。ロボット16が上昇及びY方向に移動して待避後、直ちに成膜を開始する状態にある。成膜は前述のような膜を成膜する場合、蒸着物20を加熱等して行われる場合の他、スパッタリングが用いられるが、一般的な公知であるため、これについての説明は省略する。
【0020】
同様に前述した層を順次成膜する際に、成膜室22(a)から成膜室22(n−1)、成膜室22(n−1)から成膜室22(n)へガラス基板11が移動する間にも、ロボット16上でガラス基板11は位置決めされる。
【0021】
又、各成膜室22内のマスク12は、70回程度の蒸着により目詰まりを生じ、パターニング状態が不備となる。この場合、図4に示すように、ガラス基板11と同一な形状部位のつば19を持つマスク保持部材13をロボット16が運び出し、ストッカー21へ移動し、不備となったマスク保持部材13を置く。
【0022】
ストッカー21より良好なマスク保持部材13を運び出し、ロボット16上で押し付け部材15(a),15(b),15(c)がプランジャ16(a),16(b),16(c)により駆動し押し付けられ、突き当て部材14(a),14(b),14(c)に突き当たって所望の位置に位置決めされる。この動作はストッカー21から各成膜室22にマスク保持部材が移動する間に行う。
【0023】
ガラス基板11の場合と同様に、各成膜室22へ移動したマスク保持部材13は、押し付け部材15(a),15(b),15(c)がプランジャ16(a),16(b),16(c)の力が解除されると同時にロボット16が下降し設置される。このとき、既に成膜室22内での位置が所望の位置に決められており、且つ、ガラス基板11との位置と合致する。
【0024】
しかして、本実施の形態によれば、ガラス基板11と同一な形状部位を持つマスク保持部材13により、ロボット16両方を掴持できる。これにより2種のロボットを用意する必要がなくなり、有機ELの製造装置が安価となる。又、搬送中にガラス基板及びマスク(マスク保持部材)を位置決めできることで、各成膜室に設置されていた位置決め機構が不要となり、有機EL素子の製造装置が安価となる。又、成膜室内での位置決め時間を要さないため、有機EL素子の製造時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る製造装置の上視図である。
【図2】図1に示した製造装置の一部拡大図である。
【図3】図1に示した製造装置の成膜室内の一部拡大断面図である。
【図4】図1に示した製造装置の成膜室内の一部拡大断面図である。
【図5】有機EL素子の膜構成を示す断面斜視図である
【符号の説明】
【0026】
1 ガラス基板
2 陽極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極
11 ガラス基板
12 マスク
13 マスク保持部材
14(a)〜14(c) 突き当て部材
15(a)〜15(c) 押し付け部材
16(a)〜16(c) プランジャ
17 ロボット
18 スライド装置
19 つば
21 ストッカ
22 成膜室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室内で被処理基板上に被蒸着物をパターニングさせて蒸着させるように、前記被処理基板に相対し且つ前記被蒸着物との間に配置されるマスクと前記マスクを保持するマスク保持部材を有する有機EL素子を製造する製造装置において、
前記マスク保持部材の交換及び前記被処理基板の搬送を行うロボットが前記マスク保持部材と前記被処理基板の両方を掴持でき、且つ、掴持位置を決めることを特徴とする有機EL素子の製造装置。
【請求項2】
前記マスク保持部材は、前記被処理基板と同一な形状部位を持つことを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−147488(P2006−147488A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339392(P2004−339392)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】