説明

有機EL素子アレイ

【課題】 より簡便に高開口率、高精細な有機EL素子アレイを提供する。
【解決手段】 画素間領域の構成が、第1の電荷輸送層13、第1の有機EL素子の第1の発光層12a、第2の有機EL素子の第2の発光層12b、第2の電荷輸送層16の順に形成されており、第1の発光層12aと第2の発光層12bは異種のキャリア輸送性を有し、第1の電荷輸送層13と第1の発光層12aは同種のキャリア輸送性を有し、且つ第1の電荷輸送層13と第2の発光層12bは異種のキャリア輸送性を有し、第1の発光層12aと第2の発光層12bのうち、短波長側の発光を呈する発光層の方が長波長側の発光を呈する発光層よりも形成領域が広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイ、電子写真感光体用の露光光源、照明器具等に用いられる有機EL素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル対応の自発光型デバイスが注目されている。自発光型デバイスとしては、プラズマ発光表示素子、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネセンス(EL)素子等がある。
【0003】
この中で、特に、有機EL素子に関しては、研究開発が精力的に進められており、緑単色や、青、赤等の色を加えたエリアカラータイプのディスプレイが製品化され、現在はフルカラー化への開発が活発化している。
【0004】
従来の各色ごとに独立して異なる波長の光を発光する3色独立発光方式を用いたカラー有機ELパネルの製造方法として、特許文献1には、ガラス基板にITO等で透明電極パターンを形成し、次に絶縁材料で作られたシャドウマスクを基板上に配設し、各有機層を成膜する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2ではRGBの塗りわけを行う際に、隣接する画素の間を発光層、あるいは電子輸送層で間隙なく、あるいは重なり合うように形成する技術が提案されている。
【0006】
これらは図1の様に、真空チャンバー中に有機材料を蒸着する際に、基板と蒸着源の間にマスクを挿入し、任意の場所に有機材料を形成するという手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−258859号公報
【特許文献2】特開平11−214157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マスク蒸着によって、RGBの塗り分けを行う場合には、高精細になるほど、有効発光面積(開口率)が小さくなるという問題があった。
【0009】
例えば、200ppiのフルカラーパネルを作成する場合、その画素ピッチは、約127μmとなり、さらに一画素中でRGBの表示を行うためには、その1/3の幅(約42μm:ストライプの場合)の画素となる。この画素領域に混色なく各色の有機EL素子を形成するためには、±10μmのアライメントマージンを仮定すると実際に発光させることが可能な幅は20μm程度となってしまう。
【0010】
また、このような高精度な塗り分けをマスクで実現する場合には、マスク自身の厚みや、基板とのクリアランスによって、膜厚が均一となる領域が少なくなるため、さらに有効発光領域が小さくなるという問題があった。
【0011】
特に図7に示すようなアクティブマトリクス駆動を行うトップエミッション構造の有機EL素子では、駆動回路を画素電極の下に形成できるために、原理的には90%以上の開口率を実現することが可能であるにもかかわらず、上記の問題によりその性能を生かしきれていなかった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、二色以上の異なる発光色を有する複数の有機EL素子を備えた有機EL素子アレイにおいて、より簡易な構成で高開口率、高精細な有機EL素子アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって本発明は、下部電極と、第1の電荷輸送層と、前記第1の電荷輸送層上に配置される発光層と、前記発光層の上に配置される第2の電荷輸送層と上部電極とを有する有機EL素子1画素として基板上に複数配置されている有機EL素子アレイにおいて、第1の有機EL素子の前記第1の電荷輸送層は、隣に配置されている第2の有機EL素子を構成する前記第1電荷輸送層と画素間領域を介して共通して形成されている層であり、前記第1の有機EL素子の前記第2の電荷輸送層は、前記隣に配置されている前記第2の有機EL素子を構成する前記第2電荷輸送層と前記画素間領域を介して共通して形成されている層であり、前記画素間領域の構成が、前記第1の電荷輸送層、前記第1の有機EL素子の第1の発光層、前記第2の有機EL素子の第2の発光層、前記第2の電荷輸送層の順に形成されており、前記第1の発光層と前記第2の発光層は異種のキャリア輸送性を有し、前記第1の電荷輸送層と前記第1の発光層は同種のキャリア輸送性を有し、且つ前記第1の電荷輸送層と前記第2の発光層は異種のキャリア輸送性を有し、前記第1の発光層と前記第2の発光層のうち、短波長側の発光を呈する発光層の方が長波長側の発光を呈する発光層よりも形成領域が広いことを特徴とする有機EL素子アレイを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、異なるキャリア種の輸送性を有する発光層を、その隣接部で積層させ、さらに共通に形成される電荷輸送層と発光層のキャリア輸送性の関係を規定することにより、アライメントに対するマージンが広がり、より簡便に高開口率、高精細な有機EL素子アレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】有機EL素子をマスクを介して真空蒸着する一般技術を説明するための模式図である。
【図2】本発明の多色発光素子の一実施形態の構成を示す概略断面図である。
【図3】発光層の電荷輸送特性と発光領域の関係を説明する模式図である。
【図4】発光層の電荷輸送特性と発光領域の関係を説明する模式図である。
【図5】画素電極と発光層の形成領域の位置関係を説明する図である。
【図6】実施例における画素電極と発光層形成領域の位置関係を説明する図である。
【図7】一般的なトップエミッション構成有機EL素子の断面図である。
【図8】本発明における参考例1の多色発光素子の断面概略図である。
【図9】参考例1の効果を示す画素の輝度分布のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本発明では隣接する発光素子のそれぞれの発光層が異なるキャリア輸送性を有する(即ち一方の発光層が電子輸送性で、他方が正孔輸送性)という点で上記特許文献2と構成上異なる。このため隣接する発光層の重なり部が画素領域に及んでも混色することが無い。よって特許文献2と比べて画素間領域を少なく出来る、或いは発光層形成時のアライメントマージンを大きく出来るという効果がある。
【0017】
さらに本発明の有機EL素子アレイは、画素間領域において傾斜を有して隣接しあう発光素子の発光層がそれぞれの重なり合う構成であり、且つ画素間領域において一方の電極に近いほうの発光層のキャリア輸送性は、この一方の電極から供給されるキャリア(正孔あるいは電子のいずれか)と異なるキャリアを輸送しやすい性質であることが好ましい。なおぞれぞれの発光層に関して同一側に配置されている電極は同じキャリアを発光層へ供給する電極であることはいうまでもない(すなわち例えば後述するトップエミッション構造の有機EL素子アレイの場合それぞれの有機EL素子の反射電極は発光層に対して同一側に配置されている)。
【0018】
以下、図2を参照して本発明の有機EL素子アレイの一例である多色発光素子を複数有する多色発光素子アレイの具体的な一実施形態について説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0019】
図2に示す多色発光素子は、一例として基材上に3つの素子を設けた構成として図示されている。各素子間をそれぞれ画素間領域と呼ぶ。画素とは一対の電極とそれに狭持される有機層とからなる1つの発光素子を単位とする。一般にいわれる単画素や1つの副画素(サブピクセル)も本発明における画素ということができる。
【0020】
基材の一例である透明基板(基材)15上に、下部電極である陽極となる透明電極(第二電極)14が形成され、その上に有機化合物層として、第一電荷輸送層13、発光層11a、発光層12b、第二電荷輸送層16が形成され、上部電極である陰極となる反射電極(第二電極)11が形成されている。図2においては、発光層は、12a,12bと塗り分けられており、それぞれ異なる発光スペクトルを有する。また、発光層12aと12bは異なるキャリア輸送性を有している。これら発光層を含めた各有機層は蒸着法等によって形成され、特に発光層は形成時にマスクを用いることによって、任意の位置に形成される。
【0021】
本発明において異なるキャリア輸送性とは、一方の有機EL素子の発光層の電子輸送性が高い場合に、他方の有機EL素子の発光層の正孔輸送性が高いことを意味する。つまり画素間でそれぞれの有機EL素子の発光層のキャリア輸送性が(正孔を+、電子を−という意味で)異極の関係にあるということもできる。
【0022】
このとき、マスクの開口部の大きさを調整することで、図2中A部(画素間領域)のように隣接する画素で発光層が重なり合う領域を形成する。
【0023】
尚、本明細書中の多色発光素子の図面は、異なる発光スペクトルを有する2つの有機EL素子の部分のみを示しているが、多色発光素子が備える有機EL素子の数はこれらに限られるものではない。
【0024】
第一電極と第二電極との間に発光層を含む有機化合物層を有する有機エレクトロルミネセンス素子を面上に複数備えるために用いる基材としては、基材側を光の取り出し側とする場合には上記のように透明であることが必要であり、透明基板を用いるのが好ましい。好適に使用される具体的な基板としては、各種のガラス基板や、poly−SiでTFT等の駆動回路を形成したガラス基板、シリコンウエハー上に駆動回路を設けたもの等が挙げられる。基材側では無く反対側を光の取り出し側とする場合には基材が透明である必要は必ずしも無い。
【0025】
第一電極と第二電極とは、一方が陽極、もう一方が陰極となる。これらの電極の材料は何れかが一方が透明であることが望ましい。陽極には仕事関数の高い材料が好ましく、又、陰極としては仕事関数の小さい材料が好ましい。具体的には、陰極の金属材料としては、アルミニウムやアルミニウム・リチウムの合金、マグネシウム・銀の合金など仕事関数の小さな金属が好適に使用される。また、陽極にはインジウム錫酸化物(ITO)等の仕事関数の大きな透明導電性材料が好適に使用される。なお、陰極を透明な電極とする場合には、上記のような仕事関数が小さく陰極に好ましく使用可能な金属材料の層を、有機化合物層と接する側に1〜10nm程度の膜厚で設けておき、さらにその外側にITO等の透明導電性材料の層を設けるといった方法がある。
【0026】
有機化合物層を構成する第一電荷輸送層、第一、第二の発光層、第二電荷輸送層等の有機層は、蒸着法等により形成される。第一、第二電荷輸送層は、一方が正孔を優先的に輸送する(正孔輸送性の高い)材料で、他方が電子を優先的に輸送する(電子輸送性の高い)材料である。これらは、使用する第一電極、第二電極の極性に従って選択すればよい。
【0027】
尚、発光層としては、単一の材料で所望の発光を得る材料、或いはホスト材料にゲスト材料をドープしたものが用いられ、その方法としてはホスト材料、ゲスト材料を同時に真空蒸着し、それぞれの蒸着レートを調整することで任意のドープ濃度の発光層が得られる。このとき発光色に対応し、発光層の材料、或いは発光層を構成するホスト/ゲストの組み合わせを変え、それぞれの有機EL素子で任意の発光を得ることが出来る。
【0028】
本発明において、第一電荷輸送層と、第一発光層のキャリア輸送能が異種である場合には、第一発光層と第二発光層が積層されている領域では、ほとんど発光が観測されないため、仮に発光層形成時にマスクと基板のアライメントがずれる、あるいは、マスクが浮く等して、発光層形成領域が、隣接する画素電極まで発光層が及んだとしても、その領域が非発光となるため、混色を避けることが可能となる。
【0029】
この様な効果は、以下のような機構によると思われる。
【0030】
有機EL素子は、発光層に到達した電子と正孔が再結合する際に生じる発光を利用した、キャリア注入型の自発光デバイスであるため、異なる種のキャリア輸送能を有する層を互い違いに積層した場合には、発光層において再結合できるキャリアが極端に少なくなり、積層部では非発光となる。たとえ、注入できたとしてもその量は、通常発光領域と比べごくわずかであるため、実質的にその領域では非発光となったと推察される。
【0031】
図3では、第一電荷輸送層が正孔輸送性、第一発光層が電子輸送性、第二発光層がホール輸送性、第二電荷輸送層が電子輸送性であるときの模式図を示している。図中領域A、および領域Bではそれぞれ第一発光層、第二発光層内で電子と正孔が再結合するが、領域Cにおいては、発光層に電子、正孔のいずれも注入されないため発光しない。領域Cが上記A部(画素間領域)である。
【0032】
なお、画素内に非発光領域が発生した場合、トータルの輝度が減少することが懸念される。しかしながら、有機EL素子を、電流制御(電流値を調整して、所望の諧調レベルを表示する)で駆動することにより、発光面積の減少は自己補償されるため、実際の画質としては問題にならない。すなわち、ある画素において、その画素の輝度をL(cd/m)、発光面積をS(m)、流れる電流値をI1(A)、有機EL素子の電流効率(cd/A)をαとしたとしたとき、その画素から放出される全光束φ(lm)は
【0033】
【数1】

【0034】
と表すことができ、画素のトータルの発光量は発光面積には関係せず、電流値のみに依存する事がわかる。
【0035】
また本発明において第一電荷輸送層と、第一電荷輸送層と、第一発光層のキャリア輸送能が同種である場合には、第一発光層と第二発光層の積層界面付近で電子と正孔が再結合し、発生した励起子はよりエネルギーの低い色素分子へエネルギーが移動し発光する。図4では、第一電荷輸送層が正孔輸送性、第一発光層が正孔輸送性、第二発光層が電子輸送性、第二電荷輸送層が電子輸送性であるときの模式図を示している。
【0036】
図4中領域Dでは、第一電荷輸送層と第一発光層界面で電子と正孔が再結合し、第一発光層が発光し、領域Fでは第二電荷輸送層と第二発光層との界面で電子と正孔が再結合し、第二発光層が発光する。領域Eでは第一発光層と、第二発光層の界面が再結合領域となるが、エネルギー移動により発光スペクトルが長波長の側の発光層が発光する。領域Eが上記A部(画素間領域)に相当する。
【0037】
このとき、あらかじめ短波長側の発光を呈する発光層(第一発光層)の形成領域を広めに形成し、長波長側の発光を呈する発光層の形成領域を狭く形成することで、アライメントに対するマージンが広がり、開口率を大きくとることができる。
【0038】
たとえば、マスク蒸着によって断面が台形状の発光層が形成できるとし、マスクと基板のアライメント精度を±ΔL、周辺部の膜厚不均一部の幅をδとすると、従来、画素間の領域が2ΔL+δの幅が必要である(図5−a)。なお台形形状の発光層は、長辺の方が短辺よりも基材に近い様に配置されている。
【0039】
一方、本発明によると、膜厚不均一部の重なりを許容するので、画素間はΔL+δとなる。(図5−b)
なお、図5は簡単のために、電極と第一発光層、第二発光層の位置関係のみを図示している。
【0040】
一般に、マスク蒸着による、周辺部の膜厚不均一領域の幅は、マスクの厚み、基板とマスクのクリアランス、マスクのエッジ形状で変化するが、10μmから30μm程度発生する。例えば、40μmピッチの画素で、アライメント精度が±10μ、膜厚不均一領域の幅を10μmとすると、従来は10μm幅の実効発光領域しか取れないことになるが、本発明によると、倍の20μm幅の実効発光領域が得られることになる。
【0041】
本発明の有機EL素子アレイは、光取り出し側を基材とは反対側に配置されるいわゆるトップエミッション構造の有機EL素子アレイとしても適用できる。
【0042】
本発明の有機EL素子アレイは、ディスプレイとして適用可能である。例えばデジタルカメラの画面やファインダー画面、あるいは携帯電話の画面や複写機等のプリンタの操作画面や、テレビ、パソコン用ディスプレイ、車載パネル等である。あるいは電子写真方式の画像形成装置の感光体に潜像を形成させるための露光光源や、インテリア等の照明光源としても適用可能である。
【0043】
(参考例1)
図2に示すものと同様な多色発光素子を作成した。本参考例においては、発光層12としては緑と赤との2色の発光スペクトルを有するもののみを形成した。
【0044】
ガラス基板(コーニング社:1737)(透明基板15)上に100nmのITOを形成した基板を用い、フォトリソグラフィー法によりパターニングして、陽極(透明電極14)を形成し、ITO基板を形成した。
【0045】
そのITO基板上に、以下の有機化合物層と電極層を10−4Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着により連続成膜し、素子Aを得た。なお、蒸着時に用いたマスクの厚さは約20μmであった。
【0046】
使用した材料、及びその膜厚は以下の表1の通りである。尚、本例においては、正孔輸送層が第一電荷輸送層13、電子輸送層が第二電荷輸送層16に対応する。
【0047】
また、第一発光層としてはAlqをホスト、Coumarin6をゲストとした混合層、第二発光層としては、CBPをホスト、Ir(piq)をゲストとした混合層を用いた。
【0048】
尚、Alqは電子輸送性、CBPは正孔輸送性が高いことが知られている。
【0049】
【表1】

【0050】
上記に示した材料を、夫々の色に対応する発光層を形成する部分に開口を有するマスクを順に使用し、共蒸着により形成した。ドープ濃度は、共蒸着時のそれぞれの材料の堆積スピードを制御することにより所定の濃度に調整した。
【0051】
また、本参考例で用いている材料の化学式は以下の通りである。
【0052】
【化1】

【0053】
【化2】

【0054】
マスクを介して30nmの厚みで蒸着された膜の周辺領域の幅δは、約15μであった。
【0055】
この様な形状を呈する第一、第二発光層を、図8のような配置で形成した。本参考例では画素間領域およびそれぞれの隣接画素領域(隣り合う有機EL素子が配置される領域)の一部ずつにまでそれぞれの発光層が重なり合っている有機EL素子アレイを用いた。なお本参考例においてそれぞれの発光層の斜面はその発光層が配置されている下部電極内から始まり、隣の有機EL素子の下部電極にまで及ぶ面である。
【0056】
以上の素子Aを所望の電流値で発光させ、その輝度分布を測定したものが図9である。
【0057】
図中、電極が存在する領域でも、第一、第二発光層が形成されている領域では発光は観測されなかった。
【0058】
なお、第一発光層と第二発光層で輝度が異なるのは、発光スペクトルによる視感度の違いによるものである。
【0059】
(実施例1)
参考例1における緑の発光層、赤の発光層の形成する順番を変えて、すなわち、第一発光層としてCBPをホスト、Ir(piq)をゲストとした混合層を、第二発光層として、Alqをホスト、Coumarin6をゲストとした混合層をそれぞれ用いて素子Bを作成した。作成方法は、実施例1とほぼ同様である。また、本実施例では第一、第二発光層に対応する電極は、共通で行った。
【0060】
このとき、電極幅、電極間隔、膜の形成領域などの関係を図6に示す。図6は2つの同形状の電極とそれぞれの上に配置される第1発光層と第2発光層とを図示している。すなわち、図示するように本実施例では電極ピッチは45μm、電極幅20μm、電極間間隔は25μmに設定した。
【0061】
また、第一発光層は、周辺領域の幅が約15μm、全形成領域幅が50μm、第二発光層は周辺領域幅が15μm、全形成領域幅が70μmとなるようにマスクを調整した。
【0062】
なお、このときのアライメント精度は±10μmと見積もられている。
【0063】
その結果、第一発光層の(周辺領域を含めた)形成領域では赤の発光が観測され、一方、緑の発光は、第一発光層が形成されていない領域でしか観測されなかった。
【0064】
(参考例2)
本例においては、図8に示す構成、すなわち陰極側から光を取り出す構成(トップエミッション構成)で多色発光素子を作成した。
【0065】
ガラス基板(コーニング社:1737)(透明基板15)上にCrを100nmの膜厚でスパッタ法で成膜し、リフトオフ法によりパターニングすることで光を反射する陽極(反射電極14)を形成し、Cr電極付き基板を形成した。
【0066】
このCr基板上に、以下の有機化合物層としてAlLi層(不図示)、透明電極(陰極11)を10−4Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着により連続成膜し、素子Cを得た。
【0067】
なお有機化合物層の構成は参考例1と同様である。
【0068】
以上のように作成した素子Cは、画素電極周辺で、若干の輝度変化はあるものの、混色せず、良好なカラー表示が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、第1の電荷輸送層と、前記第1の電荷輸送層上に配置される発光層と、前記発光層の上に配置される第2の電荷輸送層と上部電極とを有する有機EL素子1画素として基板上に複数配置されている有機EL素子アレイにおいて、
第1の有機EL素子の前記第1の電荷輸送層は、隣に配置されている第2の有機EL素子を構成する前記第1電荷輸送層と画素間領域を介して共通して形成されている層であり、
前記第1の有機EL素子の前記第2の電荷輸送層は、前記隣に配置されている前記第2の有機EL素子を構成する前記第2電荷輸送層と前記画素間領域を介して共通して形成されている層であり、
前記画素間領域の構成が、前記第1の電荷輸送層、前記第1の有機EL素子の第1の発光層、前記第2の有機EL素子の第2の発光層、前記第2の電荷輸送層の順に形成されており、
前記第1の発光層と前記第2の発光層は異種のキャリア輸送性を有し
前記第1の電荷輸送層と前記第1の発光層は同種のキャリア輸送性を有し、且つ前記第1の電荷輸送層と前記第2の発光層は異種のキャリア輸送性を有し、
前記第1の発光層と前記第2の発光層のうち、短波長側の発光を呈する発光層の方が長波長側の発光を呈する発光層よりも形成領域が広いことを特徴とする有機EL素子アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−246402(P2009−246402A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176526(P2009−176526)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【分割の表示】特願2004−30829(P2004−30829)の分割
【原出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】