説明

有機EL素子及びその製造方法

【課題】 有機EL素子の光取出し効率を向上させるとともに、発光層からの発光を高効率に取出せる有機EL素子およびその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上に、青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を設け、緑色カラーフィルター層の上には緑色変換層またはクリアー層、赤色カラーフィルター層の上には赤色変換層またはクリアー層、青色カラーフィルター層の上にはクリアー層を設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を設け、各カラーフィルター層上の色変換層またはクリアー層および遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次有し、カラーフィルター層上の色変換層またはクリアー層の上面をそれぞれ所定の深さのU字型に形成したことを特徴とする有機EL素子およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に適用される発光素子の一例として、有機化合物の薄膜積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称する)が知られている。有機EL素子については、1987年、イーストマンコダック社のC.W.Tangらによって、高効率の発光を実現する2層積層構造の有機EL素子が発表(非特許文献1参照)されて以来、現在に至るまでに様々な有機EL素子が開発され、その一部は実用化され始めている。
【0003】
一般に有機EL素子は、一方に光を取り出すための透明電極、他方に金属電極を有しており、これらの電極の間に有機層を備える構造となっている。金属電極は光の取り出し面と反対方向に発光した光を取り出し面に反射させる作用を有し、ELの利用効率を高める効果があるが、有機EL素子を実用化するにあたっては有機EL素子自身の発光効率自体を向上させることが必要である。そのため、発光した光の取出し効率を向上させることが重要となる。しかしながら一般的な有機EL素子は、基板界面の反射により基板端面で光が外部放出されるため、素子として取り出す光は20%程度になってしまい、問題となっている。
【0004】
そこで、有機EL素子の光取出し効率を向上させる方策が多方面から考えられており、透明基板上に多数の凸部を設けることによって、発光面を凸凹に製膜させる方法(例えば、特許文献1参照。)や上部電極面を凸凹に形成させて上部電極でのEL発光反射損失を下げる方法(例えば、特許文献2参照。)の提案がある。
【特許文献1】特開2003−249381号公報
【特許文献2】特開2000−40584号公報
【非特許文献1】C.W.Tang,S.A.Vanslyke,Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2記載の方法では、基板上の膜全体を凸凹に製膜することになり、その制御及び製造工程が煩雑になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、有機EL素子の光取出し効率を向上させるとともに、発光層からの発光を高効率に取出せる有機EL素子およびその簡便な製造方法につき鋭意検討した結果、基板から色変換層又はカラーフィルター層までは平坦に製膜させた後に、色変換層又はカラーフィルター層の上面を所定のU字型に形成させると、色変換層又はカラーフィルター層のオーバーコート層側に更に積層されるオーバーコート層と有機EL層及び上部電極が前記U字型に形成した色変換層又はカラーフィルター層のオーバーコート層側をなぞることによってオーバーコート層と有機EL層及び上部電極もU字型に形成されることを見出し、また、この有機EL素子は優れた発光効率を有することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の有機EL素子は、基板上に、青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を設け、緑色カラーフィルター層の上には緑色変換層、赤色カラーフィルター層の上には赤色変換層、青色カラーフィルター層の上にはクリアー層を設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を設け、各色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層および遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次有し、色変換層および青色カラーフィルター層上のクリアー層の上面をそれぞれ所定の深さのU字型に形成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明における他の有機EL素子は、基板上に、青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を設け、各カラーフィルター層の上にそれぞれクリアー層を設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を設け、各色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層および遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次有し、各カラーフィルター層上のクリアー層の上面を所定の深さのU字型に形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上に所定のサイズの多数のエリアを形成するように遮光層のパターンを形成し、あるいはさらに遮光層の上にクリアー層を形成し、前記エリアに青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を各エリアにはそれぞれ1種のカラーフィルター層が形成されるように平坦に製膜し、緑色カラーフィルター層の上には緑色変換層、赤色カラーフィルター層の上には赤色変換層、青色カラーフィルター層の上にはクリアー層をそれぞれその上面が所定の深さのU字状となるように設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を製膜し、色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層と遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上に前記色変換層、クリアー層のU字形状をなぞるようにオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の有機EL素子の製造方法は、基板上に所定のサイズの多数のエリアを形成するように遮光層のパターンを形成し、あるいはさらに遮光層の上にクリアー層を形成し、前記エリアに青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を各エリアにはそれぞれ1種のカラーフィルター層が形成されるように平坦に製膜し、各カラーフィルターの上にそれぞれクリアー層をその上面が所定の深さのU字状となるように製膜し、カラーフィルター層上のクリアー層と遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にクリアー層のU字形状をなぞるようにオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来型の平面構造と比べて発光層が等方的に発光する光のロスが減少し、更に平面構造よりも発光面積が増加することによって発光面からの光の取出し効率を向上させた有機EL素子を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、発光面からの光の取出し効率を向上させた有機EL素子を簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について図面を用いながら詳細に説明する。
図1から図4は、本発明の有機EL素子の一例を示す模式的断面図である。図1は本発明の1実施態様を示す図であり、基板1の上に青色カラーフィルター層3と、緑色カラーフィルター層4と、赤色カラーフィルター層5が設けられ、緑色カラーフィルター層4の上には緑色変換層6、赤色カラーフィルター層5の上には赤色変換層7、青色カラーフィルター層3の上にはクリアー層10が設けられている。各色変換層6、7および青色カラーフィルター層上のクリアー層10の上面は所定の深さのU字型が形成されている。各カラーフィルター層の間には遮光層8が設けられており、それぞれの遮光層8の上にはクリアー層10が設けられている。なお、クリアー層は光の特性を変化させない任意の材料からなる層であり、好ましくは色変換層に用いられる光重合性樹脂と同様の光重合性樹脂からなるが、蛍光色素や蛍光色素を溶解する溶剤を含んでいないものからなる層をいう。
これらの各層を覆うようにオーバーコート層2が設けられており、その上面がU字状のクリアー層、色変換層に面する部分はそのU字形状をなぞるようにU字状となっている。オーバーコート層2のU字形状以外の部分は平坦になっている。オーバーコート層2の上には有機EL層9が設けられており、有機EL層も上面がU字状のクリアー層、色変換層に面する部分はそのU字形状をなぞるようにU字状となっており、その他の部分は平坦になっている。図1では、遮光層8の上のクリアー層10の上面が色変換層6、7や青色カラーフィルター層上のクリアー層10の最も高い部分に比べて低い位置にあり、その分、この部分におけるオーバーコート層2の厚みが厚くなっている。
【0013】
図2は本発明の他の実施態様を示す図であり、図1と異なる点は、遮光層8の上のクリアー層10の上面の位置が色変換層6、7や青色カラーフィルター層上のクリアー層10の最も高い部分と同じ高さになっている点のみである。したがって、オーバーコート層2の厚みは端部を除いてほぼ同じ厚みとなっている。
【0014】
図3は本発明の他の実施態様を示す図であり、基板1の上に青色カラーフィルター層3と、緑色カラーフィルター層4と、赤色カラーフィルター層5が設けられ、各カラーフィルター層の上にはクリアー層10が設けられている。各カラーフィルター層上のクリアー層10の上面は所定の深さのU字型が形成されている。各カラーフィルター層の間には遮光層8が設けられており、それぞれの遮光層8の上にはクリアー層10が設けられている。これらの各層を覆うようにオーバーコート層2が設けられており、その上面がU字状のクリアー層に面する部分はそのU字形状をなぞるようにU字状となっている。オーバーコート層2のU字形状以外の部分は平坦になっている。オーバーコート層2の上には有機EL層9が設けられており、有機EL層も上面がU字状のクリアー層に面する部分はそのU字形状をなぞるようにU字状となっており、その他の部分は平坦になっている。図1では、遮光層8の上のクリアー層10の上面がカラーフィルター層上のクリアー層10の最も高い部分よりも低い位置にあり、その分、この部分におけるオーバーコート層2の厚みが厚くなっている。
【0015】
図4は本発明の他の実施態様を示す図であり、図3と異なる点は、遮光層8の上のクリアー層10の上面の位置がカラーフィルター層上のクリアー層10の最も高い部分と同じ高さになっている点のみである。したがって、オーバーコート層2の厚みは端部を除いてほぼ同じ厚みとなっている。
【0016】
本発明においては、色変換層又はカラーフィルター層上のクリアー層の上面を所定の深さのU字型に形成し、色変換層又はカラーフィルター層上のクリアー層の上に積層されるオーバーコート層と有機EL層及び上部電極が前記U字型に形成した色変換層又はカラーフィルター層の上面形状をなぞることによって、オーバーコート層と有機EL層及び上部電極もU字型に形成された結果、発光層から等方的に発光する光のロスを減少させ、更に平面構造よりも発光面積が増加することによって発光面からの光の取出し効率を向上するものである。
【0017】
U字型に形成された色変換層又はカラーフィルター層の上面のU字型の深さとこれを用いて完成した素子に電源投入した場合の短絡の割合及び輝度について調査した結果を図7及び図9に示す。図7、図9に見られるように短絡発生率は10μmを超えると急激に増加し、輝度は12μm以下では深さが大きくなるにつれて増加し、以後は深さが深くなるにつれて逆に低下する。
これらは本発明の一実施態様についての結果であるが、他の実施態様についても輝度のレベルは異なっても短絡の割合及び輝度とU字型の深さの関係は同様であった。
よってU字型の深さとしては短絡発生率を高めない観点から10μm以下が好ましく、輝度向上の観点からは0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上がより好ましいことが分かった。
【0018】
以下、構成エレメントについて詳細に説明する。
遮光層は、黒色の無機膜、黒色顔料又は黒色染料を樹脂に分散した層により形成されカーボンブラック、フタロシアニン、キナクロドン等の顔料又は染料をポリイミド等の樹脂に分散したもの、カラーレジスト等が例として挙げられる。この遮光層は遮光層で取り囲まれた多数のサブピクセルサイズのエリアを形成するようなパターンで設けられる。
【0019】
カラーフィルター層は、樹脂中へ顔料又は染料を分散させたものや、屈折率の異なる多層の膜で形成させた多層膜の他、基板に対して直接着色する方法によって形成され、特定の波長における透過率を制御することによって、赤、緑、青の色純度を向上させる働きを持つ。
【0020】
色変換層は、発光体から発する近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる可視光を発するものであり、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせてもよい。
【0021】
赤色領域の光は、該素子からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることにより、十分な強度の出力が可能となる。一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、該素子からの光を別の有機蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力してもよいし、あるいは該素子の発光が緑色領域の光を十分に含むならば、該素子からの光を単に緑色フィルターを通して出力してもよい。一方、青色領域の光に関しては、有機発光素子の光を単なる青色フィルターに通して出力させることも可能である。
【0022】
クリアー層は透光性の層でクリアーレジスト材料などからなる層を例示できる。
オーバーコート層は、カラーフィルター層又は色変換層側面の凹凸を平滑化する役割を持ち、特に発光部が水分やアルカリ等に弱い場合、このオーバーコート層に水分やアルカリのバリア性を付加することにより、有機EL素子の信頼性を向上させることができる。オーバーコート層としては、通常オーバーコート層に用いられるものであればどのようなものも用いることができ、例えばUV硬化型樹脂などを例示できる。
【0023】
下部電極はEL光の取り出し側の電極にあたるためIZO(インジウム-酸化亜鉛)またはITO(インジウム−酸化錫)などの透明導電性材料からなる膜とする必要がある。更に下部電極は、可視光の領域の380〜780nmの波長において80%以上の透過率を有することが望ましい。電極材料としては、例えば透明導電性酸化物であるITOまたはIZOが好ましい。
【0024】
有機EL層は、陽極および陰極に電圧が印加されることによって生じる正孔および電子が再結合することで発光する有機発光層を少なくとも含み、陽極/発光層/陰極の構成を基本として、これに正孔注入輸送層や電子注入輸送層を設けたもの、たとえば陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極や、陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極などの構成のものが知られている。該正孔注入輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、また、電子注入輸送層は陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有している。そして、該正孔注入輸送層を発光層と陽極との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、発光層に陰極または電子注入層より注入された電子は、正孔注入輸送層が電子を輸送しないので、正孔注入輸送層と発光層との界面に蓄積され発光効率が上がることが知られている。
【0025】
有機EL層における各層の材料としては、特に限定されるものではなく公知のものが使用される。正孔注入層は、フタロシアニン類(銅フタロシアニンなど)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。正孔輸送層は、TPD、N,N′−ビス(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニルビフェルアミン(α−NPD)、4,4′,4″−トリス(N−3−トリル−N−フェニルアミン)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N,N′−テトラビフェニル−4,4′−ビフェニレンジアミン(TBPB)などのトリアリールアミン系材料を含む公知の材料を用いることができる。
【0026】
有機発光層は、例えば、青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層中に、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などの材料が好ましく使用される。あるいはまた、ホスト化合物(ジスチリルアリーレン化合物、TPD、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alqなど))にドーパント(ペリレン、キナクリドン類、ルブレンなど)を添加することによって、種々の波長域の光を発する有機発光層を形成してもよい。電子輸送層は、2−(4−ビフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、アルミニウムのキノリノール錯体(例えばAlq)などを用いることができる。
【0027】
次に本発明の有機EL素子の製造方法につき説明する。
本発明の製造方法においては、基板上に遮光層で取り囲まれた複数のサブピクセルサイズのエリアを形成するようなパターンで遮光層を設ける。
これらの遮光層は、スパッタ、CVD、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート等のウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフ法等によりパターニングすることができる。
【0028】
こうして形成された遮光層の高さが充分でない場合は、遮光層の上にクリアー層を設ける。このクリアー層は遮光層と同じパターニングを行う。
【0029】
次いで、遮光層で取り囲まれた多数のエリアに青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を各エリアにはそれぞれ1種のカラーフィルター層が形成されるように平坦に製膜する。
これらのカラーフィルター層はいずれの色を最初にいずれの色をその次に製膜してもよく、形成順は問わない。
【0030】
カラーフィルター層は主に光重合性樹脂にカラーフィルター材料を加えた塗液をスピンコート法によって塗布した後、フォトリソグラフ法でパターニングすることによって形成される。
【0031】
カラーフィルター層の上には色変換層またはクリアー層が形成されるが、色変換層は蛍光色素を加えた塗液をスピンコート法によって塗布した後、フォトリソグラフ法でパターニングすることによって形成される。
カラーフィルター層上の色変換層、クリアー層の形成順はどの順でもよく、色変換層やクリアー層のどれを最初に製膜し、次にどれを製膜してもよい。
このフォトリソグラフの方法を応用することにより、図1から図4に示すような色変換層の上面を所定の深さのU字型に形成することが可能であり、具体的製法としては2つの製法がある。
【0032】
1つは図5に示すような、サブピクセルエリア中央部の透過率が低下したマスクを用いてフォトリソグラフを行う方法である。この中央部の透過率は10〜60%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましい。
図5はサブピクセルエリア中央部が上記透過率のマスクの一例を示す図であり、図6は、このマスクを用いて赤色変換層を形成する事例を示した図である。図6(a)に例示するように前面に赤色変換層用塗布液を塗布した後、図5に示すようなマスクを用いて赤色カラーフィルター層の上にのみ光を照射し、次いで未露光部をエッチングすると、未露光部の塗膜が除去されるとともに、サブピクセルエリア中央部の露光量が不足するため図6(b)に示す形状で色変換層の上面を所定の深さのU字型に形成することができる。
【0033】
もう一方は遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を厚く製膜、すなわち、遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上面の高さがカラーフィルター層上の色変換層やクリアー層の最も高い部分と同じ高さになっている場合であり、図8はこのような基板上に上面を所定の深さのU字型に形成するように赤色変換層を形成する事例を示した図である。
従来の色変換層形成工程で、先に遮光層を設け、その後にカラーフィルター層、色変換層を形成する場合では、遮光層の厚みは通常5〜10μm程度であり、カラーフィルター層と色変換層またはクリアー層の積層体の厚みは20μm程度であり、遮光層上面より色変換層や青色カラーフィルター上のクリアー層の上面の高さが高くなっているのが通常である。
【0034】
図8(a)に例示するように遮光層とクリアー層の積層体の上面の高さを形成しようとする色変換層の高さと同じになるようにして、赤色変換層用塗液を塗布する、好ましくは色変換層が盛り上がらないように塗布すると、遮光層または積層体の部分では遮光層または積層体を覆うように少し盛り上がり、その間のサブピクセルエリアでは少しくぼむようになる。この色変換層製膜時に生じる起伏を利用することによって、例えば、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いて赤色カラーフィルター層部分のみに光を照射し、次いで未露光部をエッチングすることによって図8(b)に示す形状で色変換層又はカラーフィルター層のオーバーコート層側を所定の深さのU字型に形成させることができる。
【0035】
カラーフィルター層の上にクリアー層を設ける場合も、蛍光色素を加えた塗液の代わりにクリアーレジストを用いる以外は同様にすることにより、上面を所定の深さのU字型に下クリアー層を形成することができる。
【0036】
オーバーコート層は、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法等の手法により形成することができる。これらの手法を採用することにより、色変換層及び/またはクリアー層上面のくぼみをなぞって、この部分でU字型を形成することができる。
【0037】
下部電極はIZO、ITOなどの透明導電性材料を用いて、例えばスパッタ法など公知の方法を用いて製膜することができる。
【0038】
有機EL層の形成方法としては、たとえば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。また樹脂などの結着材とともに溶剤に溶かして溶液としたのち、スピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
以下に本発明の有機EL素子を用いた有機ELディスプレイの作製例を、図面を参照しながら説明する。実施例1においては、図1に示す形状の有機EL素子を作成し、用いた。有機ELディスプレイは画素数480×64×RGB、画素ピッチ0.165mmで形成した。
【0040】
最初に基板1上に遮光層用塗液(CK8400L 富士フィルムARCH製)をスピンコート法にて全面に塗布し、80℃にて加熱乾燥後、フォトリソグラフ法を用いて165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmの遮光層8のパターンを形成した。次にこの上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層した後に、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚10μmの図1に示すようなクリアー層10のパターンを得た。
【0041】
青色カラーフィルター層3は青色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCB−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布後フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの青色カラーフィルター層3のパターンを得た。次いでクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層した後に、図5に示すサブピクセルエリア中央部が透過率30%程になるマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0042】
緑色カラーフィルター層4は緑色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCG−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの緑色カラーフィルター層4のパターンを得た。
【0043】
赤色カラーフィルター層5は赤色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCR−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの赤色カラーフィルター層5のパターンを得た。
【0044】
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させ、次いで、光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、緑色変換層用塗液を得た。この塗布液を、基板1上にスピンコート法を用いて塗布し、図5に示すサブピクセルエリア中央部が透過率30%程になるマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、緑色カラーフィルター層4の上に上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの緑色変換層6のパターンを得た。
【0045】
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させ、次いで、光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、赤色変換層用塗液を得た。この塗布液を、基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、図5に示すサブピクセルエリア中央部が透過率30%程になるマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、赤色カラーフィルター層5の上に上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの赤色変換層7のパターンを得た。こうして基板1上の遮光層とクリアー層の積層体のパターンの間に青色カラーフィルター層とクリアー層の積層体パターン、緑色カラーフィルター層と緑色変換層の積層体パターン、赤色カラーフィルター層と赤色変換層の積層体パターンを有する蛍光変換層を作成した。
【0046】
オーバーコート層は、この蛍光変換層の上に、オーバーコート層としてUV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射し、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、カラーフィルター層に対応する部分が深さ10μmのU字型に形成されていた。
【0047】
このオーバーコート層の上にパシベーション層として、室温において、デュアルカソードを用いた交流スパッタ法により酸化ケイ素膜を300nm厚で形成した。スパッタターゲットにはホウ素添加の抵抗率0.1ΩcmのSiを用い、スパッタガスとしてAr100sccm、酸素45sccmの混合ガスを用い、ターゲットと基板間の距離を120mmとし、成膜圧力0.6Pa、電力密度4W/cm、搬送速度50mm/分で形成した。
【0048】
上記のようにして製造した色変換層基板の上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成した。
まず下部電極は、In−Zn酸化物パターンを形成した。DCスパッタ法により室温において、In−Zn酸化物膜を200nm厚で形成した。スパッタターゲットにはIn−Zn酸化物ターゲットを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素を用いた。フォトリソグラフによりレジストをパターニングした後にシュウ酸をエッチング液として用いてパターニングすることにより配線幅100μmのパターンを形成した。パターニング後、乾燥処理(150℃)およびUV処理(室温及び150℃)をおこなった。
【0049】
UV処理後に抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次製膜して有機EL層を製膜した。製膜に際して真空槽内圧は1×10−5Paまで減圧した。正孔注入層は銅フタロシアニン(CuPc)を100nm厚で積層した。正孔輸送層は4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm厚で積層した。発光層は4,4′−ビス(2,2′−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm厚で積層した。電子注入層はアルミキレート(Alq)を20nm厚で積層した。
【0050】
この後、下部電極のラインと垂直に幅0.30mm、空隙0.03mmギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、長さ200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層からなる上部電極を、真空を破らずに形成した。こうして得られた有機EL素子は下部電極、有機EL層、上部電極とも深さ10μmのU字型が形成されていた。この有機EL素子をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気下において、封止硝子とUV硬化接着剤を用いて封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0051】
[実施例2]
本実施例においては、図2に示す有機EL素子を作成した。
最初に基板1上に実施例1と同様にして165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmの遮光層8のパターンを形成した。次にこの上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層した後に、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚21μmの図1に示すようなクリアー層10のパターンを得た。
【0052】
青色カラーフィルター層3は実施例1と同様にして基板1上に165μmピッチ、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmのパターンを形成した。次いでこの上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PAをスピンコート法にて積層した。積層されたクリアー層は、遮光層の影響により遮光層間に緩やかなU字型の形状に塗布され、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0053】
緑色カラーフィルター層4、赤色カラーフィルター層5は実施例1と同様にして基板1の上に、それぞれエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmのパターンを形成した。
【0054】
緑色変換層6は、実施例1と同様にして緑色変換層用塗液を得、この塗液を、基板1上にスピンコート法を用いて塗布した。塗布された緑色変換層は、遮光層の影響により遮光層間に緩やかなU字型の形状に塗布され、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの緑色変換層6のパターンを得た。
【0055】
赤色変換層7は、実施例1と同様にして赤色変換層用塗液を得、この塗液を、基板1上に、スピンコート法を用いて塗布した。塗布された赤色変換層は、遮光層の影響により遮光層間に緩やかなU字型の形状に塗布され、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの赤色変換層7のパターンを得た。
【0056】
次いで、実施例1と同様にしてこの蛍光変換層の上に、オーバーコート層を、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、カラーフィルター層に対応する部分が深さ10μmのU字型に形成されていた。
【0057】
このオーバーコート層の上に実施例1と同様にしてパシベーション層を形成し、その上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成し、その上に上部電極を形成して有機EL素子を得た。得られた有機EL素子は下部電極、有機EL層、上部電極とも深さ10μmのU字型が形成されていた。この有機EL素子を実施例1と同様にして封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0058】
[実施例3]
本実施例においては、図3に示す有機EL素子を作成した。
最初に実施例1と同様にして基板1上に165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmの遮光層8のパターンを形成し、その上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚21μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0059】
次いで、実施例1と同様にして、基板1上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの青色カラーフィルター層3のパターンを形成し、その上に上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0060】
次いで、実施例1と同様にして、基板1上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの緑色カラーフィルター層4のパターンを形成した。次いでその上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PAをスピンコート法にて積層した後に、図5に示すサブピクセルエリア中央部が透過率30%程になるマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0061】
次いで、実施例1と同様にして、基板1上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの赤色カラーフィルター層4のパターンを形成した。次いでその上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PAをスピンコート法にて積層した後に、図5に示すサブピクセルエリア中央部が透過率30%程になるマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。こうして基板1上の遮光層とクリアー層の積層体のパターンの間に青色カラーフィルター層とクリアー層の積層体パターン、緑色カラーフィルター層と緑色変換層の積層体パターン、赤色カラーフィルター層と赤色変換層の積層体パターンを有する蛍光変換層を作成した。
【0062】
次いで、実施例1と同様にしてこの蛍光変換層の上に、オーバーコート層を、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、カラーフィルター層に対応する部分が深さ10μmのU字型に形成されていた。
【0063】
このオーバーコート層の上に実施例1と同様にしてパシベーション層を形成し、その上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成し、その上に上部電極を形成して有機EL素子を得、これを封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0064】
[実施例4]
本実施例においては、図4に示す有機EL素子を作成した。
最初に実施例2と同様にして基板1上に165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmの遮光層8のパターンを形成し、その上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚21μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0065】
次いで、実施例2と同様にして、基板1上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの青色カラーフィルター層3のパターンを形成し、その上に上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0066】
緑色カラーフィルター層4、赤色カラーフィルター層5は実施例1と同様にして基板1の上に、それぞれエリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmのパターンを形成した。
【0067】
青色カラーフィルター層3の上にクリアー層10を形成したと同様の手順でこれらのカラーフィルター層4、5の上に上面を深さ10μmのU字型に形成させたエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0068】
次いで、実施例1と同様にしてこの蛍光変換層の上に、オーバーコート層を、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、カラーフィルター層に対応する部分が深さ10μmのU字型に形成されていた。
【0069】
このオーバーコート層の上に実施例1と同様にしてパシベーション層を形成し、その上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成し、その上に上部電極を形成して有機EL素子を得、これを封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0070】
[比較例1]
図5に示すマスクの代わりに、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施した以外は実施例1と同様にして有機ELディスプレイを得た。
また、本素子のオーバーコート層形成後に、表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定したところ、オーバーコート層にはU字型が形成されておらず、本素子ではカラーフィルター層上の色変換層、クリアー層の上面にもU字型が形成されていないことが確認された。
【0071】
[比較例2]
最初に基板1上に青色カラーフィルター層3を青色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCB−7001)、スピンコート法を用いて塗布し、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmのパターンを得た。次いでクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層し、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0072】
緑色カラーフィルター層4は緑色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCG−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの緑色カラーフィルター層4のパターンを得た。
【0073】
赤色カラーフィルター層5は赤色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCR−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの赤色カラーフィルター層5のパターンを得た。
【0074】
緑色変換層6は、実施例1で用いたと同様の緑色変換層用塗液を基板1の上にスピンコート法を用いて塗布し、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、緑色カラーフィルター層4の上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの緑色変換層6のパターンを形成した。
【0075】
赤色変換層7は、実施例1で用いたと同様の赤色変換層用塗液を基板1の上にスピンコート法を用いて塗布し、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、赤色カラーフィルター層5の上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmの赤色変換層7のパターンを形成した。
【0076】
遮光層用塗液(CK8400L 富士フィルムARCH製)をスピンコート法にて全面に塗布し、80℃にて加熱乾燥後、フォトリソグラフ法を用いて遮光層8の165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmのパターンを形成し、この上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層した後に、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、遮光層パターンの上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚21μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0077】
次いで、実施例1と同様にしてこの蛍光変換層の上に、オーバーコート層を、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、オーバーコート層には所定のU字型に形成されておらず、本素子ではカラーフィルター層上の色変換層、クリアー層の上面にもU字型が形成されていないことが確認された。
【0078】
このオーバーコート層の上に実施例1と同様にしてパシベーション層を形成し、その上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成し、その上に上部電極を形成して有機EL素子を得、これを封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0079】
[比較例3]
図5に示すマスクの代わりに、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施した以外は実施例3と同様にして有機ELディスプレイを得た。
また、本素子のオーバーコート層形成後に、表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定したところ、オーバーコート層にはU字型が形成されておらず、本素子ではカラーフィルター層上の色変換層、クリアー層の上面にもU字型が形成されていないことが確認された。
【0080】
[比較例4]
最初に基板1上に青色カラーフィルター層3を青色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCB−7001)、スピンコート法を用いて塗布し、エリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmのパターンを得た。次いでクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層し、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、青色カラーフィルター層3のパターンの上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0081】
緑色カラーフィルター層4は緑色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCG−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの緑色カラーフィルター層4のパターンを得た。次いでクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層し、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、緑色カラーフィルター層3のパターンの上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0082】
赤色カラーフィルター層5は赤色カラーフィルター層用塗液(富士フィルムARCH製:カラーモザイクCR−7001)を基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、エリアサイズ40μm×150μm、膜厚2μmの赤色カラーフィルター層5のパターンを得た。次いでクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層し、これをエリアサイズ40μm×150μm、165μmピッチのマスクを用いてフォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、赤色カラーフィルター層3のパターンの上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚20μmのクリアー層10のパターンを得た。
【0083】
遮光層用塗液(CK8400L 富士フィルムARCH製)をスピンコート法にて全面に塗布し、80℃にて加熱乾燥後、フォトリソグラフ法を用いて遮光層8の165μmピッチ、サブピクセルサイズ40μm×150μmで膜厚1μmのパターンを形成し、この上にクリアーレジスト材料(新日鐵化学:V−259PA)をスピンコート法にて積層した後に、フォトリソグラフ法によるパターニングを実施し、遮光層パターンの上にエリアサイズ40μm×150μm、膜厚21μmのクリアー層10のパターンを形成した。
【0084】
次いで、実施例1と同様にしてこの蛍光変換層の上に、オーバーコート層を、膜厚2μmで形成した。
これを表面粗さ計(DEKTAK6M)で表面凹凸を測定すると、オーバーコート層には所定のU字型に形成されておらず、本素子ではカラーフィルター層上のクリアー層の上面にもU字型が形成されていないことが確認された。
【0085】
このオーバーコート層の上に実施例1と同様にしてパシベーション層を形成し、その上に、下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/上部電極の構成とした有機EL層を形成し、その上に上部電極を形成して有機EL素子を得、これを封止して、有機ELディスプレイを得た。
【0086】
各実施例、比較例で得た有機ELディスプレイについて点灯時輝度測定を行って比較した。結果を表1に示す。なお、表1において、EL発光面積比は発光面がフラットな有機EL素子を用いたディスプレイ(比較例1〜4)を1とした場合の値である。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4はそれぞれカラーフィルター層上の色変換層またはクリアー層の上面のU字型の有無のみで異なる対応した例であり、これらの比較から、本発明におけるようにカラーフィルター層上の色変換層またはクリアー層の上面にU字型を形成したものはU字型を形成しなかったものに比べて輝度が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の有機EL素子は発光面からの光の取り出し効率を向上させた素子であり、フルカラー表示ディスプレイパネル用素子として有用である。(光の取り出し効率が高くなるとディスプレイパネルが明るくなるだけですか?)
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施態様を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の他の実施態様を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の他の実施態様を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の他の実施態様を示す模式的断面図である。
【図5】サブピクセルエリア中央部が透過率30%になるフォトリソグラフ用マスクの平面図である。
【図6】図1に示す実施態様における赤色カラーフィルター上に赤色変換層を作成する工程を示す図である。
【図7】U字型の深さと短絡発生率の関係を示す図である。
【図8】図2に示す実施態様における赤色カラーフィルター上に赤色変換層を作成する工程を示す図である。
【図9】U字型の深さと輝度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 オーバーコート層
3 青色カラーフィルター層
4 緑色カラーフィルター層
5 赤色カラーフィルター層
6 緑色変換層
7 赤色変換層
8 遮光層
9 有機EL層
10 クリアー層
11 フォトマスク
12 開口部
13透過率例えば約30%の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を設け、緑色カラーフィルター層の上には緑色変換層、赤色カラーフィルター層の上には赤色変換層、青色カラーフィルター層の上にはクリアー層を設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を設け、各色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層および遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次有し、色変換層および青色カラーフィルター層上のクリアー層の上面をそれぞれ所定の深さのU字型に形成したことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
基板上に、青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を設け、各カラーフィルター層の上にそれぞれクリアー層を設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を設け、各色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層および遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次有し、各カラーフィルター層上のクリアー層の上面を所定の深さのU字型に形成したことを特徴とする有機EL素子。
【請求項3】
基板上に所定のサイズの多数のエリアを形成するように遮光層のパターンを形成し、あるいはさらに遮光層の上にクリアー層を形成し、前記エリアに青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を各エリアにはそれぞれ1種のカラーフィルター層が形成されるように平坦に製膜し、緑色カラーフィルター層の上には緑色変換層、赤色カラーフィルター層の上には赤色変換層、青色カラーフィルター層の上にはクリアー層をそれぞれその上面が所定の深さのU字状となるように設け、各カラーフィルター層間には遮光層または遮光層とクリアー層の積層体を製膜し、色変換層、青色カラーフィルター層上のクリアー層と遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上に前記色変換層、クリアー層のU字形状をなぞるようにオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項4】
基板上に所定のサイズの多数のエリアを形成するように遮光層のパターンを形成し、あるいはさらに遮光層の上にクリアー層を形成し、前記エリアに青色カラーフィルター層、緑色カラーフィルター層および赤色カラーフィルター層を各エリアにはそれぞれ1種のカラーフィルター層が形成されるように平坦に製膜し、各カラーフィルターの上にそれぞれクリアー層をその上面が所定の深さのU字状となるように製膜し、前記エリアに上部を所定の深さのU字状としたカラーフィルター層を製膜し、カラーフィルター層上のクリアー層と遮光層または遮光層とクリアー層の積層体の上にクリアー層のU字形状をなぞるようにオーバーコート層、下部電極、有機発光層を含む有機EL層と、上部電極とを順次形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−73483(P2006−73483A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258998(P2004−258998)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】