有機EL表示装置
【課題】電源配線の電圧降下に起因する表示むらを抑制し、色の異なる画素毎に電圧の印加を可能として発光特性の異なる画素間の発光効率を最適化して高画質の表示を実現する。
【解決手段】1行目(X1)では副画素Bの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続し、2行目(X2)では副画素Rの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続し、3行目(X3)では副画素Gの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続する。以降、この繰り返しとする。
【解決手段】1行目(X1)では副画素Bの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続し、2行目(X2)では副画素Rの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続し、3行目(X3)では副画素Gの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbを接続する。以降、この繰り返しとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子を用いた有機EL表示装置に係り、特に画素に電流を供給する電源配線の電圧低下に起因する輝度不均一を改善した有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(以下、有機ELディスプレイとも称する)は電流駆動であり、電源配線に複数の画素が並列に接続される。そのため、電源配線との接続位置により電圧が異なってしまい、表示面内での輝度の不均一を招く。有機EL表示装置の画面サイズが大型化すれば、それに伴って電源配線に流れる電流が大きくなり、場所による画素間の電圧降下が大きく、したがって輝度のばらつきによる表示むらも大きくなる。
【0003】
図12は、有機EL表示装置の画素配列例を説明する表示領域の要部平面図である。また、図13は、図12のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。なお、カラー表示の場合、1つのカラー画素(ピクセル)は複数の原色を表示する複数の副画像(サブピクセル)から構成され、例えば図12におけるR(赤色)、G(緑色)、B(青色)で示した単位画素が副画素で、これらの副画素の発光部をpr、pg、pbで示す。なお、説明の都合上、特に副画素と表記する必要がある場合を除いて、単に画素と称する場合がある。図12において、X1、X2、・・・は行、Y1、Y2、・・・は列を示す。
【0004】
図12、図13では、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色ストライプ配列のアクティブマトリクス構成とした有機EL表示装置である。一般的に、一つの副画素は電源供給線である電源配線Lvと、映像信号を供給するデータ信号配線Ldと、データ書き込みする行を選択するための走査信号配線Lsと、薄膜トランジスタやデータ保持容量で構成した画素回路pcと、有機EL発光層からなる発光部pL(図12では、画素回路pcと発光部pLとをまとめて表記)とで構成される。発光部pLは、Rの副画素の発光部pr、Gの副画素の発光部pg、Bの副画素の発光部pbの何れかになる。
【0005】
前記表示むらを改善する手段として、隣接する電源配線間を繋ぐ方法が特許文献1、特許文献2.特許文献3に記載のものが知られている。特許文献1は、電源配線と交差する電源バイパス配線を設け、全ての電源配線を接続することで電圧降下を抑制する構成を開示する。また特許文献2は、遮光用のブラックマトリクスを抵抗の低い材料で形成し、全ての電源配線に接続させることで電圧降下を抑制する発明を開示する。そして、特許文献3では、電源バイパス配線を特定の画素のみに配置することで電圧降下を抑制しつつ画素の開口率低下を抑えている。特許文献3には明記されていないが、色の異なる画素毎に電圧をかけることを示唆している。
【0006】
図14は、電源バイパス配線を有する従来の有機EL表示装置の構成例を説明する表示領域の要部平面図である。また、図15は、図14から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。図14、図15は特許文献1に開示の有機EL表示装置であり、行と列、副画素の配列は図12と同じである。この構成例では、隣接する電源配線Lv同士を電源バイパス配線Lbで接続し、網目状の電源供給構造としている。
【特許文献1】特開2000−242196号公報
【特許文献2】特開2001−100654号公報
【特許文献3】特開2004−356052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2に開示の発明では、色の異なる画素毎に電源電圧を印加することができない。特許文献3には、色の異なる画素毎に異なる電源電圧を印加するための具体的な手段は明示されていない。特許文献3の発明では、開口率は上がるが、画素サイズが等しくないため、開口率が小さい画素が暗く見える恐れがあり、開口率を等しくしようとすれば隣接する画素で中心がずれてしまうため、映像信号側の補正が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、電源配線の電圧降下に起因する表示むらを抑制し、色の異なる画素毎に電圧の印加を可能として発光特性の異なる画素間の発光効率を最適化して高画質の表示を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有機EL表示装置は、異なる色を発光する複数の有機EL素子を1カラー画素の副画素をマトリクス配置した表示領域を有する絶縁性基板と、前記表示領域を覆って設置される透明な封止基板とを有し、前記副画素からなるカラー画素の発光を前記封止基板側から出射する構成である。しかし、本発明は、カラー画素の発光を前記絶縁性基板側から出射する構成とした有機EL表示装置にも同様に適用できるものである。本発明の代表的な特徴点は、以下に記述するのとおりである。
【0010】
本発明では、前記表示領域には、一方向に延在し、該一方向と交叉する他方向に並設された複数の走査信号配線と、前記他方向に延在して前記一方向に並設される複数のデータ信号配線と、前記複数の副画素に接続されて表示のための電流を供給する複数の電源配線とを有し、
前記走査信号配線と前記データ信号配線の交差部に前記副画素が配置されており、
かつ、前記一方向に延在し、前記他方向に並設された複数の電源バイパス配線を有し、
前記電源バイパス配線の一または二以上は、前記電源配線のうちの一色の副画素に接続された電源配線のみに接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記1カラー画素を赤色、緑色、青色の副画素を有し、前記バイパス配線として前記赤色の副画素のみに接続されたバイパス配線、緑色の副画素のみに接続されたバイパス配線、又は青色の副画素の副画素のみに接続されたバイパス配線を有するものとすることができる。
【0012】
また、本発明では、前記1カラー画素が白色の副画素を有し、前記バイパス配線が前記白色の副画素のみに接続されたバイパス配線を有するものとすることができる。
【0013】
そして、本発明では、表示領域内の電源配線とバイパス配線のコンタクト部が連続することに起因するスジ状のムラを対策するため以下の工夫を施す。(1)前記バイパス配線を前記走査信号配線に各一本ずつ設ける。(2)前記電源バイパス配線と前記電源配線の交差部に、当該電源バイパス配線と当該電源配線の一方又は双方に形成された接続パターンを設け、前記電源バイパス配線と前記電源配線の何れか又は双方の配線幅を前記接続パターンの幅と同等又はそれ以上とする。(3)前記接続パターンに、前記電源バイパス配線と前記電源配線の接続に寄与しないダミーの接続パターンを設ける。(4)前記副画素のマトリクス上の斜め直線方向で前記接続パターンを5画素以上連続させない。
【0014】
なお、本発明は、上記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配線面積が増えることで配線抵抗が低減し、電圧効果も抑えられるため、輝度の均一性が向上する。また、電源配線が配線の途中で接続されるのでスメアの発生が抑えられる。同色の画素(副画素)毎に専用のバイパス配線を設けることで、異なる色の画素毎に異なる電源電圧を供給可能である。さらに、電源配線とバイパス配線の接続点(コンタクト)の配置を適正化することで、当該コンタクトでの斜め方向の反射むらを目立たなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する表示領域の要部平面図である。また、図2は、図1から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。図1において、1行目(X1)では副画素Bの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、2行目(X2)では副画素Rの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、3行目(X3)では副画素Gの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、以降この繰り返しとなる。これにより、各色の副画素に異なる電源電圧を供給可能となる。
【0018】
図2の左側は電源配線Lvとバイパス配線Lbが接続した(コンタクトctのある)副画素、右側は電源配線Lvとバイパス配線Lbが接続しない(コンタクトctのない)副画素である。コンタクトctの部分の幅(面積)は、プロセスマージンを考慮して、最小の配線幅よりも広くする必要がある。これは、電源配線Lvとバイパス配線Lbの両方に言えることである。
【0019】
実施例1の構成により、赤色、緑色、青色の副画素のそれぞれ毎に電源供給できるため、各色の発光効率に合わせて電流量を調整して色バランスを適正化して高品質の表示画像を得ることができる。
【実施例2】
【0020】
図3は、本発明による有機EL表示装置の実施例2を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。実施例1の構成では、コンタクトctのある画素ではコンタクトのパターン幅が増加した分、反射率が増え、図1の斜め方向(1行1列横方向)に反射率の高い画素が連続するため、斜め方向に縞が見えることがある。実施例2の構成は、このような縞の発生を抑制するようにしたものである。
【0021】
実施例2では、電源配線Lvとバイパス配線Lbの幅をコンタクトctの幅と同等、又はそれ以上に大きくして、コンタクトctのある画素と無い画素とで反射率がほぼ等しくなるようにした。図3では、電源配線Lvとバイパス配線Lbの両方の幅を広くしたが、何れか一方の幅のみを大きくすることでも上記の縞の発生を抑制する効果があるが、観察者側から遠い配線層を選択するよりも近い配線層の幅を広くした方が大きな改善効果が期待できる。
【実施例3】
【0022】
図4は、本発明による有機EL表示装置の実施例3を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。実施例3も実施例2と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例3は、図4にAで囲んだ部分に示すように、コンタクトctの無い画素もコンタクトctのある画素と同じ配線パターンとした。この構成でも、電源配線Lvとバイパス配線Lbの何れか一方についてのみ同じパターンとすることができ、観察者側から遠い配線層を選択するよりも近い配線層について同じパターンとする方が大きな改善効果を期待できる。
【実施例4】
【0023】
図5は、本発明による有機EL表示装置の実施例4を説明する表示領域の要部平面図である。実施例4も実施例2、3と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例4では、1行目(X1)ではBの電源配線Lvとバイパス配線Lbとのコンタクトctを3個に1個の割合で間引いた。すなわち、1行目(X1)で2個連続したコンタクトctの間に位置する2行目(X2)のコンタクトctを間引く(コンタクトctが無い状態とする)。2行目(r2)で2個連続したコンタクトctの間に位置する3行目(X3)のコンタクトctを間引く(コンタクトctが無い状態とする)。
【0024】
以降、これを繰り返し、斜め方向(1行1列隣の方向)や隣接方向(横方向あるいは縦方向)に3個以上コンタクトctが連続しないように配置する。図5では、3個以上コンタクトctが連続しないように間引いたが、4個以上コンタクトctが連続しないように間引くことでも同様の効果がある。ただし、連続する数が多くなればなるほど、斜め方向の縞が見える恐れが強くなるので、図5のような間引き方が最も効果がある。
【実施例5】
【0025】
図6は、本発明による有機EL表示装置の実施例5を説明する表示領域の要部平面図である。実施例5も実施例2〜4と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例5では、1行目(X1)と2行目(X2)および3行目(X3)の3組のバイパス配線Lbでは、上から順にGRBの電源配線Lvに接続し、その次の4行目(X4)と5行目(X5)および6行目(X6)の3組のバイパス配線Lbでは、上から順にGBRの電源配線Lvに接続する。
【0026】
このように、2種類以上の接続の組み合わせを繰り返し配列することで、斜め方向(1行1列隣の方向)のコンタクトの連続性がくずされ、斜め方向の縞の発生を抑制できる。
【0027】
また、隣接する行のバイパス配線Lbが同じ色の副画素の電源配線Lvと接続するような方法も考えられるが、この方法では2行連続で接続した後に4行連続で接続なしとなり、輝度の均一性が劣化する恐れがあるため、図6に示した配置がより適している。
【実施例6】
【0028】
図7は、本発明による有機EL表示装置の実施例6を説明する表示領域の要部平面図である。前記のフルカラーを3色で表現する場合は副画素R、G、Bの順序をR、B、Gと変えても、斜め方向(1行1列隣の方向)にコンタクトctが連続してしまうが、フルカラーを4色以上で表現する場合は斜め方向にコンタクトが3個以上連続しないような組み合わせが可能となる。実施例6では、フルカラーを4色(R、G、B、W)で表現し、横方向にR、G、B、Wの順で配列する。この場合、電源配線Lvとバイパス配線Lbの接続を上から順にR、G、W、Bのようにすれば、斜め方向(1行1列隣の方向)にはコンタクトは3個以上連続しない。これにより、斜め方向の縞は見え難くなる。
【実施例7】
【0029】
図8は、本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する表示領域の要部平面図である。また、図9は、本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する隣接する4画素を取り出して示す拡大図である。実施例7では、フルカラーを4色(R、G、B、Wの副画素)で表現し、副画素RGBWを2行2列に配列して1カラー画素とした。この場合も、1行に1色の電源配線Lvのみをバイパス配線Lbで接続することで、発光部pLの減少を抑えつつ輝度の不均一性を改善することが可能である。実施例7に示したR、G、B、W配置の場合、バイパス配線Lbは上から順にR、B、W、Gの電源配線Lvと接続する。この構成により、コンタクトctが斜め方向に3個以上連続しないため、斜め方向の縞が見え難くなる。
【0030】
以上説明した実施例2と実施例3は配線パターンを工夫したものであり、実施例4と実施例5はコンタクトの配向位置箇所を工夫したものである。このような配線パターンの工夫とコンタクトの配向位置箇所の工夫とを組み合わせることで、斜め方向の縞をさらに見え難くすることができる。
【0031】
図10は、本発明の有機EL表示装置の画素構造例を説明する模式図であり、図10の(a)は平面図、図10の(b)は図10の(a)のA―A'線に沿った断面図である。この有機EL表示装置は、ガラス基板SUBの内面の下層に走査信号配線Lsが形成されている。なお、走査信号配線Lsの下層(ガラス基板SUBの内表面)には下地層として酸化シリコン(SiO)と窒化シリコン(SiN)膜が成膜されているが、図示は省略した。走査信号配線Lsには第1の薄膜トランジスタTFT1のゲート電極GT1が形成されている。細部の構造は省略した。
【0032】
走査信号配線Lsと同層にバイパス配線Lb、および第2の薄膜トランジスタTFT2のゲート電極GT2が形成されている。走査信号配線Ls、ゲート電極GT1、ゲート電極GT2を覆ってゲート絶縁膜GIが形成され、薄膜トランジスタ部分にシリコン半導体層をパターニングした能動層SIが形成されている。図10の(b)に第2の薄膜トランジスタTFT2の能動層SIを示した。能動層SIを覆って層間絶縁層ISが形成されている。
【0033】
層間絶縁層ISにコンタクトホールが開けられ、電源配線Lvがこのコンタクトホールを通して第2の薄膜トランジスタTFT2のソース(又はドレイン)に接続して前記走査信号配線Lsおよびバイパス配線Lbと交差(ここでは、直交)して形成されている。さらに、その上にパシベーション膜PASが形成されている。パシベーション膜PASと層間絶縁層ISを貫通して第2の薄膜トランジスタTFT2のドレイン(又はソース)に至るコンタクトホールが開けられ、このコンタクトホールを通して当該ドレイン(又はソース)に接続した有機EL素子OLEDの一方の電極(ここでは陽極)ADが形成されている。
【0034】
陽極ADの上層に有機EL素子を構成する複数の有機材料層が積層され、その上にて他方の電極である陰極CDが図示しない複数の画素に共通に形成されている。この陰極CDは表示領域外で接地等に接続されている。陰極CDの上層には保護膜(図示せず)が形成され、その上層又は上方には図示しない封止缶(通常はガラス基板)が設置される。
【0035】
この画素(カラーの副画素)は第1の薄膜トランジスタTFT1で選択され、データ信号配線Ldからの表示データを保持容量Csに蓄積する。保持容量Cに蓄積された表示データは第2の薄膜トランジスタTFT2の導通することで、電源配線Lvから当該表示データの大きさに基づいた電流が陽極ADから有機EL素子OLEDに供給される。有機EL素子OLEDは流れる電流に応じた輝度で発光する。
【0036】
電源配線Lvは、前記実施例の何れかで説明した態様でバイパス配線Lbとコンタクトされている。コンタクト部分を符号ctで示した。なお、特に、有機EL材料層を塗布で形成する場合には、有機EL素子の周縁に絶縁材のバンクが形成され、このバンク内に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層からなる有機EL材料層が積層される。なお、ホール輸送層の上にホール注入層が設けられる場合もある。
【0037】
有機EL素子OLEDの発光を陰極CDから封止缶側、すなわち図10(b)の上側に出射させるトップエミッション型では、陽極ADをアルミニウム等の金属からなる反射電極とし、陰極CDをITO等の透明導電膜で形成する。この場合は、画素のボトム側、すなわち陽極ADのガラス基板SUB側は表示光の通過を考慮する必要はないので、余裕を持って画素回路や配線をレイアウトできる。例えば、図10(a)に示した第1、第2の薄膜トランジスタTFT1、TFT2や前記した各配線、図示しない保持容量配線などの全部あるいは一部を陽極ADの下側に配置することができる。
【0038】
一方、図10(b)の陽極ADからガラス基板SUB側に有機EL素子OLEDの発光を出射させるボトムエミッション型では、陰極CDをアルミニウム等の金属からなる反射電極とし、陽極ADをITO等の透明導電膜とする。
【0039】
なお、図10では、ガラス基板SUBに近い方の電極を陽極ADとし、ガラス基板SUBとは遠い方の電極を陰極CDとしたが、これら陽極ADと陰極CDの配置は逆にすることもできることはいうまでもない。また、薄膜トランジスタはガラス基板SUBにゲート電極を形成し、その上層に能動層を設けた構造としたが、これとは逆の構造とした薄膜トランジスタを用いたものも本発明の適用範囲である。なお、何れの場合にも、電源配線Lvとバイパス配線Lbとは層間絶縁層、あるいは他の絶縁層を介して互いに異なる層に形成され、両者はこれらの絶縁層に設けたコンタクトホールを通して接続される。
【0040】
図11は、本発明の有機EL表示装置の全体構成例を説明する等価回路図である。この構成は前記の実施例1に対応する。pxは副画素(図1のpr、pg、pbに対応)を示し、3色の副画素からなるカラー画素がマトリクス配列されて表示領域ARを形成している。各副画素PXは第1の薄膜トランジスタTFT1と第2の薄膜トランジスタTFT2および保持容量Csおよび有機EL素子OLEDで構成されている。表示領域にはデータ配線Ld、走査信号配線Ls、電源配線Lvおよびバイパス配線Lbが配置されている。電源配線Lvは電源バス配線CBにつながり、バイパス配線Lbは電源バス配線CBと交叉(通常は直交)配置され、図1に示したように、コンタクトctで所定の副画素の位置で電源配線Lvに接続している。
【0041】
走査信号配線Lsは走査配線駆動回路GDRで駆動されて行方向を選択する。選択された行に接続する複画素に接続するデータ配線にはデータ配線駆動回路DDRから表示データが供給され、所定の表示がなされる。上記した封止基板であるガラス基板SUB2は表示領域ARを覆って設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する表示領域の要部平面図である。
【図2】図1から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図3】本発明による有機EL表示装置の実施例2を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図4】本発明による有機EL表示装置の実施例3を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図5】本発明による有機EL表示装置の実施例4を説明する表示領域の要部平面図である。
【図6】本発明による有機EL表示装置の実施例5を説明する表示領域の要部平面図である。
【図7】本発明による有機EL表示装置の実施例6を説明する表示領域の要部平面図である。
【図8】本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する表示領域の要部平面図である。
【図9】図8から隣接する4画素を取り出して示す拡大図である。
【図10】本発明のトップエミッション型の有機EL表示装置の画素構造の一例を説明する図である。
【図11】本発明の有機EL表示装置の全体構成例を説明する等価回路図である。
【図12】有機EL表示装置の画素配列例を説明する表示領域の要部平面図である。
【図13】図12のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図14】電源バイパス配線を有する従来の有機EL表示装置の構成例を説明する表示領域の要部平面図である。
【図15】図14のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
X1、X2、…・・・行、Y1、Y2、…・・・列、Lv・・・電源配線、Lb・・・バイパス配線、ct・・・コンタクト、Ld・・・データ信号配線、Ls・・・走査信号配線、pc・・・画素回路、pL(pr、pg、pb、pw)・・・発光部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子を用いた有機EL表示装置に係り、特に画素に電流を供給する電源配線の電圧低下に起因する輝度不均一を改善した有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(以下、有機ELディスプレイとも称する)は電流駆動であり、電源配線に複数の画素が並列に接続される。そのため、電源配線との接続位置により電圧が異なってしまい、表示面内での輝度の不均一を招く。有機EL表示装置の画面サイズが大型化すれば、それに伴って電源配線に流れる電流が大きくなり、場所による画素間の電圧降下が大きく、したがって輝度のばらつきによる表示むらも大きくなる。
【0003】
図12は、有機EL表示装置の画素配列例を説明する表示領域の要部平面図である。また、図13は、図12のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。なお、カラー表示の場合、1つのカラー画素(ピクセル)は複数の原色を表示する複数の副画像(サブピクセル)から構成され、例えば図12におけるR(赤色)、G(緑色)、B(青色)で示した単位画素が副画素で、これらの副画素の発光部をpr、pg、pbで示す。なお、説明の都合上、特に副画素と表記する必要がある場合を除いて、単に画素と称する場合がある。図12において、X1、X2、・・・は行、Y1、Y2、・・・は列を示す。
【0004】
図12、図13では、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色ストライプ配列のアクティブマトリクス構成とした有機EL表示装置である。一般的に、一つの副画素は電源供給線である電源配線Lvと、映像信号を供給するデータ信号配線Ldと、データ書き込みする行を選択するための走査信号配線Lsと、薄膜トランジスタやデータ保持容量で構成した画素回路pcと、有機EL発光層からなる発光部pL(図12では、画素回路pcと発光部pLとをまとめて表記)とで構成される。発光部pLは、Rの副画素の発光部pr、Gの副画素の発光部pg、Bの副画素の発光部pbの何れかになる。
【0005】
前記表示むらを改善する手段として、隣接する電源配線間を繋ぐ方法が特許文献1、特許文献2.特許文献3に記載のものが知られている。特許文献1は、電源配線と交差する電源バイパス配線を設け、全ての電源配線を接続することで電圧降下を抑制する構成を開示する。また特許文献2は、遮光用のブラックマトリクスを抵抗の低い材料で形成し、全ての電源配線に接続させることで電圧降下を抑制する発明を開示する。そして、特許文献3では、電源バイパス配線を特定の画素のみに配置することで電圧降下を抑制しつつ画素の開口率低下を抑えている。特許文献3には明記されていないが、色の異なる画素毎に電圧をかけることを示唆している。
【0006】
図14は、電源バイパス配線を有する従来の有機EL表示装置の構成例を説明する表示領域の要部平面図である。また、図15は、図14から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。図14、図15は特許文献1に開示の有機EL表示装置であり、行と列、副画素の配列は図12と同じである。この構成例では、隣接する電源配線Lv同士を電源バイパス配線Lbで接続し、網目状の電源供給構造としている。
【特許文献1】特開2000−242196号公報
【特許文献2】特開2001−100654号公報
【特許文献3】特開2004−356052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2に開示の発明では、色の異なる画素毎に電源電圧を印加することができない。特許文献3には、色の異なる画素毎に異なる電源電圧を印加するための具体的な手段は明示されていない。特許文献3の発明では、開口率は上がるが、画素サイズが等しくないため、開口率が小さい画素が暗く見える恐れがあり、開口率を等しくしようとすれば隣接する画素で中心がずれてしまうため、映像信号側の補正が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、電源配線の電圧降下に起因する表示むらを抑制し、色の異なる画素毎に電圧の印加を可能として発光特性の異なる画素間の発光効率を最適化して高画質の表示を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有機EL表示装置は、異なる色を発光する複数の有機EL素子を1カラー画素の副画素をマトリクス配置した表示領域を有する絶縁性基板と、前記表示領域を覆って設置される透明な封止基板とを有し、前記副画素からなるカラー画素の発光を前記封止基板側から出射する構成である。しかし、本発明は、カラー画素の発光を前記絶縁性基板側から出射する構成とした有機EL表示装置にも同様に適用できるものである。本発明の代表的な特徴点は、以下に記述するのとおりである。
【0010】
本発明では、前記表示領域には、一方向に延在し、該一方向と交叉する他方向に並設された複数の走査信号配線と、前記他方向に延在して前記一方向に並設される複数のデータ信号配線と、前記複数の副画素に接続されて表示のための電流を供給する複数の電源配線とを有し、
前記走査信号配線と前記データ信号配線の交差部に前記副画素が配置されており、
かつ、前記一方向に延在し、前記他方向に並設された複数の電源バイパス配線を有し、
前記電源バイパス配線の一または二以上は、前記電源配線のうちの一色の副画素に接続された電源配線のみに接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記1カラー画素を赤色、緑色、青色の副画素を有し、前記バイパス配線として前記赤色の副画素のみに接続されたバイパス配線、緑色の副画素のみに接続されたバイパス配線、又は青色の副画素の副画素のみに接続されたバイパス配線を有するものとすることができる。
【0012】
また、本発明では、前記1カラー画素が白色の副画素を有し、前記バイパス配線が前記白色の副画素のみに接続されたバイパス配線を有するものとすることができる。
【0013】
そして、本発明では、表示領域内の電源配線とバイパス配線のコンタクト部が連続することに起因するスジ状のムラを対策するため以下の工夫を施す。(1)前記バイパス配線を前記走査信号配線に各一本ずつ設ける。(2)前記電源バイパス配線と前記電源配線の交差部に、当該電源バイパス配線と当該電源配線の一方又は双方に形成された接続パターンを設け、前記電源バイパス配線と前記電源配線の何れか又は双方の配線幅を前記接続パターンの幅と同等又はそれ以上とする。(3)前記接続パターンに、前記電源バイパス配線と前記電源配線の接続に寄与しないダミーの接続パターンを設ける。(4)前記副画素のマトリクス上の斜め直線方向で前記接続パターンを5画素以上連続させない。
【0014】
なお、本発明は、上記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配線面積が増えることで配線抵抗が低減し、電圧効果も抑えられるため、輝度の均一性が向上する。また、電源配線が配線の途中で接続されるのでスメアの発生が抑えられる。同色の画素(副画素)毎に専用のバイパス配線を設けることで、異なる色の画素毎に異なる電源電圧を供給可能である。さらに、電源配線とバイパス配線の接続点(コンタクト)の配置を適正化することで、当該コンタクトでの斜め方向の反射むらを目立たなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する表示領域の要部平面図である。また、図2は、図1から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。図1において、1行目(X1)では副画素Bの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、2行目(X2)では副画素Rの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、3行目(X3)では副画素Gの電源配線Lvのみとバイパス配線Lbが接続し、以降この繰り返しとなる。これにより、各色の副画素に異なる電源電圧を供給可能となる。
【0018】
図2の左側は電源配線Lvとバイパス配線Lbが接続した(コンタクトctのある)副画素、右側は電源配線Lvとバイパス配線Lbが接続しない(コンタクトctのない)副画素である。コンタクトctの部分の幅(面積)は、プロセスマージンを考慮して、最小の配線幅よりも広くする必要がある。これは、電源配線Lvとバイパス配線Lbの両方に言えることである。
【0019】
実施例1の構成により、赤色、緑色、青色の副画素のそれぞれ毎に電源供給できるため、各色の発光効率に合わせて電流量を調整して色バランスを適正化して高品質の表示画像を得ることができる。
【実施例2】
【0020】
図3は、本発明による有機EL表示装置の実施例2を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。実施例1の構成では、コンタクトctのある画素ではコンタクトのパターン幅が増加した分、反射率が増え、図1の斜め方向(1行1列横方向)に反射率の高い画素が連続するため、斜め方向に縞が見えることがある。実施例2の構成は、このような縞の発生を抑制するようにしたものである。
【0021】
実施例2では、電源配線Lvとバイパス配線Lbの幅をコンタクトctの幅と同等、又はそれ以上に大きくして、コンタクトctのある画素と無い画素とで反射率がほぼ等しくなるようにした。図3では、電源配線Lvとバイパス配線Lbの両方の幅を広くしたが、何れか一方の幅のみを大きくすることでも上記の縞の発生を抑制する効果があるが、観察者側から遠い配線層を選択するよりも近い配線層の幅を広くした方が大きな改善効果が期待できる。
【実施例3】
【0022】
図4は、本発明による有機EL表示装置の実施例3を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。実施例3も実施例2と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例3は、図4にAで囲んだ部分に示すように、コンタクトctの無い画素もコンタクトctのある画素と同じ配線パターンとした。この構成でも、電源配線Lvとバイパス配線Lbの何れか一方についてのみ同じパターンとすることができ、観察者側から遠い配線層を選択するよりも近い配線層について同じパターンとする方が大きな改善効果を期待できる。
【実施例4】
【0023】
図5は、本発明による有機EL表示装置の実施例4を説明する表示領域の要部平面図である。実施例4も実施例2、3と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例4では、1行目(X1)ではBの電源配線Lvとバイパス配線Lbとのコンタクトctを3個に1個の割合で間引いた。すなわち、1行目(X1)で2個連続したコンタクトctの間に位置する2行目(X2)のコンタクトctを間引く(コンタクトctが無い状態とする)。2行目(r2)で2個連続したコンタクトctの間に位置する3行目(X3)のコンタクトctを間引く(コンタクトctが無い状態とする)。
【0024】
以降、これを繰り返し、斜め方向(1行1列隣の方向)や隣接方向(横方向あるいは縦方向)に3個以上コンタクトctが連続しないように配置する。図5では、3個以上コンタクトctが連続しないように間引いたが、4個以上コンタクトctが連続しないように間引くことでも同様の効果がある。ただし、連続する数が多くなればなるほど、斜め方向の縞が見える恐れが強くなるので、図5のような間引き方が最も効果がある。
【実施例5】
【0025】
図6は、本発明による有機EL表示装置の実施例5を説明する表示領域の要部平面図である。実施例5も実施例2〜4と同様に、斜め方向の縞の発生を抑制する構成である。実施例5では、1行目(X1)と2行目(X2)および3行目(X3)の3組のバイパス配線Lbでは、上から順にGRBの電源配線Lvに接続し、その次の4行目(X4)と5行目(X5)および6行目(X6)の3組のバイパス配線Lbでは、上から順にGBRの電源配線Lvに接続する。
【0026】
このように、2種類以上の接続の組み合わせを繰り返し配列することで、斜め方向(1行1列隣の方向)のコンタクトの連続性がくずされ、斜め方向の縞の発生を抑制できる。
【0027】
また、隣接する行のバイパス配線Lbが同じ色の副画素の電源配線Lvと接続するような方法も考えられるが、この方法では2行連続で接続した後に4行連続で接続なしとなり、輝度の均一性が劣化する恐れがあるため、図6に示した配置がより適している。
【実施例6】
【0028】
図7は、本発明による有機EL表示装置の実施例6を説明する表示領域の要部平面図である。前記のフルカラーを3色で表現する場合は副画素R、G、Bの順序をR、B、Gと変えても、斜め方向(1行1列隣の方向)にコンタクトctが連続してしまうが、フルカラーを4色以上で表現する場合は斜め方向にコンタクトが3個以上連続しないような組み合わせが可能となる。実施例6では、フルカラーを4色(R、G、B、W)で表現し、横方向にR、G、B、Wの順で配列する。この場合、電源配線Lvとバイパス配線Lbの接続を上から順にR、G、W、Bのようにすれば、斜め方向(1行1列隣の方向)にはコンタクトは3個以上連続しない。これにより、斜め方向の縞は見え難くなる。
【実施例7】
【0029】
図8は、本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する表示領域の要部平面図である。また、図9は、本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する隣接する4画素を取り出して示す拡大図である。実施例7では、フルカラーを4色(R、G、B、Wの副画素)で表現し、副画素RGBWを2行2列に配列して1カラー画素とした。この場合も、1行に1色の電源配線Lvのみをバイパス配線Lbで接続することで、発光部pLの減少を抑えつつ輝度の不均一性を改善することが可能である。実施例7に示したR、G、B、W配置の場合、バイパス配線Lbは上から順にR、B、W、Gの電源配線Lvと接続する。この構成により、コンタクトctが斜め方向に3個以上連続しないため、斜め方向の縞が見え難くなる。
【0030】
以上説明した実施例2と実施例3は配線パターンを工夫したものであり、実施例4と実施例5はコンタクトの配向位置箇所を工夫したものである。このような配線パターンの工夫とコンタクトの配向位置箇所の工夫とを組み合わせることで、斜め方向の縞をさらに見え難くすることができる。
【0031】
図10は、本発明の有機EL表示装置の画素構造例を説明する模式図であり、図10の(a)は平面図、図10の(b)は図10の(a)のA―A'線に沿った断面図である。この有機EL表示装置は、ガラス基板SUBの内面の下層に走査信号配線Lsが形成されている。なお、走査信号配線Lsの下層(ガラス基板SUBの内表面)には下地層として酸化シリコン(SiO)と窒化シリコン(SiN)膜が成膜されているが、図示は省略した。走査信号配線Lsには第1の薄膜トランジスタTFT1のゲート電極GT1が形成されている。細部の構造は省略した。
【0032】
走査信号配線Lsと同層にバイパス配線Lb、および第2の薄膜トランジスタTFT2のゲート電極GT2が形成されている。走査信号配線Ls、ゲート電極GT1、ゲート電極GT2を覆ってゲート絶縁膜GIが形成され、薄膜トランジスタ部分にシリコン半導体層をパターニングした能動層SIが形成されている。図10の(b)に第2の薄膜トランジスタTFT2の能動層SIを示した。能動層SIを覆って層間絶縁層ISが形成されている。
【0033】
層間絶縁層ISにコンタクトホールが開けられ、電源配線Lvがこのコンタクトホールを通して第2の薄膜トランジスタTFT2のソース(又はドレイン)に接続して前記走査信号配線Lsおよびバイパス配線Lbと交差(ここでは、直交)して形成されている。さらに、その上にパシベーション膜PASが形成されている。パシベーション膜PASと層間絶縁層ISを貫通して第2の薄膜トランジスタTFT2のドレイン(又はソース)に至るコンタクトホールが開けられ、このコンタクトホールを通して当該ドレイン(又はソース)に接続した有機EL素子OLEDの一方の電極(ここでは陽極)ADが形成されている。
【0034】
陽極ADの上層に有機EL素子を構成する複数の有機材料層が積層され、その上にて他方の電極である陰極CDが図示しない複数の画素に共通に形成されている。この陰極CDは表示領域外で接地等に接続されている。陰極CDの上層には保護膜(図示せず)が形成され、その上層又は上方には図示しない封止缶(通常はガラス基板)が設置される。
【0035】
この画素(カラーの副画素)は第1の薄膜トランジスタTFT1で選択され、データ信号配線Ldからの表示データを保持容量Csに蓄積する。保持容量Cに蓄積された表示データは第2の薄膜トランジスタTFT2の導通することで、電源配線Lvから当該表示データの大きさに基づいた電流が陽極ADから有機EL素子OLEDに供給される。有機EL素子OLEDは流れる電流に応じた輝度で発光する。
【0036】
電源配線Lvは、前記実施例の何れかで説明した態様でバイパス配線Lbとコンタクトされている。コンタクト部分を符号ctで示した。なお、特に、有機EL材料層を塗布で形成する場合には、有機EL素子の周縁に絶縁材のバンクが形成され、このバンク内に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層からなる有機EL材料層が積層される。なお、ホール輸送層の上にホール注入層が設けられる場合もある。
【0037】
有機EL素子OLEDの発光を陰極CDから封止缶側、すなわち図10(b)の上側に出射させるトップエミッション型では、陽極ADをアルミニウム等の金属からなる反射電極とし、陰極CDをITO等の透明導電膜で形成する。この場合は、画素のボトム側、すなわち陽極ADのガラス基板SUB側は表示光の通過を考慮する必要はないので、余裕を持って画素回路や配線をレイアウトできる。例えば、図10(a)に示した第1、第2の薄膜トランジスタTFT1、TFT2や前記した各配線、図示しない保持容量配線などの全部あるいは一部を陽極ADの下側に配置することができる。
【0038】
一方、図10(b)の陽極ADからガラス基板SUB側に有機EL素子OLEDの発光を出射させるボトムエミッション型では、陰極CDをアルミニウム等の金属からなる反射電極とし、陽極ADをITO等の透明導電膜とする。
【0039】
なお、図10では、ガラス基板SUBに近い方の電極を陽極ADとし、ガラス基板SUBとは遠い方の電極を陰極CDとしたが、これら陽極ADと陰極CDの配置は逆にすることもできることはいうまでもない。また、薄膜トランジスタはガラス基板SUBにゲート電極を形成し、その上層に能動層を設けた構造としたが、これとは逆の構造とした薄膜トランジスタを用いたものも本発明の適用範囲である。なお、何れの場合にも、電源配線Lvとバイパス配線Lbとは層間絶縁層、あるいは他の絶縁層を介して互いに異なる層に形成され、両者はこれらの絶縁層に設けたコンタクトホールを通して接続される。
【0040】
図11は、本発明の有機EL表示装置の全体構成例を説明する等価回路図である。この構成は前記の実施例1に対応する。pxは副画素(図1のpr、pg、pbに対応)を示し、3色の副画素からなるカラー画素がマトリクス配列されて表示領域ARを形成している。各副画素PXは第1の薄膜トランジスタTFT1と第2の薄膜トランジスタTFT2および保持容量Csおよび有機EL素子OLEDで構成されている。表示領域にはデータ配線Ld、走査信号配線Ls、電源配線Lvおよびバイパス配線Lbが配置されている。電源配線Lvは電源バス配線CBにつながり、バイパス配線Lbは電源バス配線CBと交叉(通常は直交)配置され、図1に示したように、コンタクトctで所定の副画素の位置で電源配線Lvに接続している。
【0041】
走査信号配線Lsは走査配線駆動回路GDRで駆動されて行方向を選択する。選択された行に接続する複画素に接続するデータ配線にはデータ配線駆動回路DDRから表示データが供給され、所定の表示がなされる。上記した封止基板であるガラス基板SUB2は表示領域ARを覆って設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する表示領域の要部平面図である。
【図2】図1から隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図3】本発明による有機EL表示装置の実施例2を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図4】本発明による有機EL表示装置の実施例3を説明する隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図5】本発明による有機EL表示装置の実施例4を説明する表示領域の要部平面図である。
【図6】本発明による有機EL表示装置の実施例5を説明する表示領域の要部平面図である。
【図7】本発明による有機EL表示装置の実施例6を説明する表示領域の要部平面図である。
【図8】本発明による有機EL表示装置の実施例7を説明する表示領域の要部平面図である。
【図9】図8から隣接する4画素を取り出して示す拡大図である。
【図10】本発明のトップエミッション型の有機EL表示装置の画素構造の一例を説明する図である。
【図11】本発明の有機EL表示装置の全体構成例を説明する等価回路図である。
【図12】有機EL表示装置の画素配列例を説明する表示領域の要部平面図である。
【図13】図12のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【図14】電源バイパス配線を有する従来の有機EL表示装置の構成例を説明する表示領域の要部平面図である。
【図15】図14のから隣接する2画素を取り出して示す拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
X1、X2、…・・・行、Y1、Y2、…・・・列、Lv・・・電源配線、Lb・・・バイパス配線、ct・・・コンタクト、Ld・・・データ信号配線、Ls・・・走査信号配線、pc・・・画素回路、pL(pr、pg、pb、pw)・・・発光部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色を発光する複数の有機EL素子を1カラー画素の副画素としてマトリクス配置した表示領域を有する絶縁性基板と、前記表示領域を覆って設置される透明な封止基板とを有する有機EL表示装置であって、
前記表示領域には、
一方向に延在し、該一方向と交差する他方向に並設された複数の走査信号配線と、
前記他方向に延在して前記一方向に並設される複数のデータ信号配線と、
前記複数の副画素に接続されて表示のための電流を供給する複数の電源配線とを有し、
前記走査信号配線と前記データ信号配線との交差部に前記副画素が配置されており、
かつ、前記一方向に延在し、前記他方向に並設された複数の電源バイパス配線を有し、
前記電源バイパス配線の一又は二以上は、一色の副画素に接続された電源配線同士を接続する配線であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記画素は、赤色、緑色、青色の副画素からなり、
前記バイパス配線は、前記赤色の副画素のみに接続されたバイパス配線、緑色の副画素のみに接続されたバイパス配線、又は青色の副画素の副画素のみに接続されたバイパス配線を含むことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記画素は、白色の副画素を有し、
前記バイパス配線として、前記白色の副画素のみに接続されたバイパス配線を有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記バイパス配線は、前記走査信号配線の間に設けられていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電源バイパス配線と前記電源配線の交差部に、当該電源バイパス配線と当該電源配線の一方又は双方に形成された接続パターンを有し、
前記電源バイパス配線と前記電源配線の何れか又は双方の配線幅が前記接続パターンの幅と同等又はそれ以上であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記接続パターンは、前記電源バイパス配線と前記電源配線の接続に寄与しない接続パターンを含むことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記接続パターンにコンタクトホールを有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記接続パターンは、前記副画素のマトリクス上の斜め直線方向で前記コンタクトホールを有しない接続パターンを有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記電源バイパス配線と前記電源配線との間に層間絶縁層を有し、該層間絶縁層に設けたコンタクトホールを通して接続されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記電源バイパス配線は、前記走査信号配線と同層であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項1】
異なる色を発光する複数の有機EL素子を1カラー画素の副画素としてマトリクス配置した表示領域を有する絶縁性基板と、前記表示領域を覆って設置される透明な封止基板とを有する有機EL表示装置であって、
前記表示領域には、
一方向に延在し、該一方向と交差する他方向に並設された複数の走査信号配線と、
前記他方向に延在して前記一方向に並設される複数のデータ信号配線と、
前記複数の副画素に接続されて表示のための電流を供給する複数の電源配線とを有し、
前記走査信号配線と前記データ信号配線との交差部に前記副画素が配置されており、
かつ、前記一方向に延在し、前記他方向に並設された複数の電源バイパス配線を有し、
前記電源バイパス配線の一又は二以上は、一色の副画素に接続された電源配線同士を接続する配線であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記画素は、赤色、緑色、青色の副画素からなり、
前記バイパス配線は、前記赤色の副画素のみに接続されたバイパス配線、緑色の副画素のみに接続されたバイパス配線、又は青色の副画素の副画素のみに接続されたバイパス配線を含むことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記画素は、白色の副画素を有し、
前記バイパス配線として、前記白色の副画素のみに接続されたバイパス配線を有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記バイパス配線は、前記走査信号配線の間に設けられていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電源バイパス配線と前記電源配線の交差部に、当該電源バイパス配線と当該電源配線の一方又は双方に形成された接続パターンを有し、
前記電源バイパス配線と前記電源配線の何れか又は双方の配線幅が前記接続パターンの幅と同等又はそれ以上であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記接続パターンは、前記電源バイパス配線と前記電源配線の接続に寄与しない接続パターンを含むことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記接続パターンにコンタクトホールを有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記接続パターンは、前記副画素のマトリクス上の斜め直線方向で前記コンタクトホールを有しない接続パターンを有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記電源バイパス配線と前記電源配線との間に層間絶縁層を有し、該層間絶縁層に設けたコンタクトホールを通して接続されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記電源バイパス配線は、前記走査信号配線と同層であることを特徴とする有機EL表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−209864(P2008−209864A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48998(P2007−48998)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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