説明

有毒化学薬品および有毒材料を中和するための方法および製剤

【課題】本発明は、有毒工業用化学薬品および有毒工業用材料、例えば刺激剤、重金属、放射性金属、酸および酸刺激剤、農薬、ならびに様々な農業用化学薬品、(有毒化学薬品、材料、または単に毒物と総称される)を含む、1以上の有毒化学薬品および/または有毒材料を中和するための、かつ、これらの薬剤と接触した表面の汚染除去のための製剤および関連する方法に関する。結果として、本発明の製剤は、広範囲の有毒化学薬品および有毒材料を中和するために使用することができる。
【解決手段】一実施形態では、有効成分は2,3,ブタンジオンモノオキシム(ジアセチルモノオキシム(DAM)としても公知)、およびそのアルカリ塩、例えばカリウム2,3−ブタンジオンモノオキシム(KBDO)などを含む。本製剤にはまた、一般に、有効成分を分散させているキャリアが含まれる。一実施形態では、キャリアは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)、ならびにそれらの組合せおよび誘導体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に化学剤を中和するための製剤および方法に関し、より具体的には、広範囲の化学剤を中和するための製剤および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な化学剤および生物剤への曝露の危険性は、一般人はもとより軍人にとっても高まりつつある関心事である。この関心事は、近年のテロリストによる攻撃を考えれば特に高まる。特に、そのような薬剤を伴うテロリストの脅威は外国だけでなく米国においても増加しつつある。この脅威に応えて、特定の化学兵器剤を中和することのできる様々な対応策が開発されている。例えば、いわゆる神経ガス、例えばサリン、ソマン、およびタブンなどが、化学的に変化させてその毒性を除去することのできるリン含有化合物の例である。これらの化合物の多くが共通のまたは類似する化学部分を共有しているので、その多くを中和するために単一の化学的対応策を使用することができる。
【0003】
化学剤および生物剤に加えて、市民の安全に対する懸念を引き起こす、有毒工業用化学薬品(TIC’s)および有毒工業用材料(TIM’s)などの幅広い種類の汚染物質も存在する。そのような汚染物質には、工業用化学薬品、農薬、および除草剤、ならびに、通常の加工、処分、廃棄物処理、または事故時放出の間に環境に放出される可能性のあるその他の材料が含まれる。一般に、そのような汚染物質は、単一の化学対応策で容易に中和されないかまたは破壊されない広範囲の化学組成を含む。結果として、そのような汚染物質への曝露に対して、汚染物質を効果的に中和するために適切な対応策を選択することが必要とされる。さらに、多くの対応策は、曝露より前に適用される場合にのみ効果的であり、人が曝露されてしまった後には汚染物質を効果的に中和することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適切な対応策を選択することに関する問題は、幅広い種類の有毒化学薬品/有毒材料が使用されている環境において特に懸念される。例えば、多くの近代的な工場では、毎日の操業および加工において幅広い種類の様々な化学薬品および物質が使用されている。結果として、幅広い種類の様々な有毒化学薬品/有毒材料が存在し、工場内の従業員がそれに曝露される可能性がある。多くのこれらの化学薬品/有毒材料への曝露は、被爆した作業者に重篤な傷害を、場合によっては死を引き起こし得るので、曝露後の個人を効果的に処置するために用いることのできる対応策を提供する必要がある。
【0005】
残念ながら、そのことにより、適正な数の適切な対応策を維持する実現可能性に関する問題、ならびに適切な対応策の選択に従事する従業員を教育することに関連する問題が生じる。そのような問題は、曝露が起こった後の非常事態に高まる可能性がある。結果として、時宜を得た方法で適切な対応策を見出し適用することは困難である可能性があり、それにより、曝露の長期化および傷害の重篤度の増大がもたらされる可能性がある。さらに、多くの化学的対応策、例えば次亜塩素酸塩溶液のような化学的消毒剤は有用であるが、大部分の金属および織物に対して、かつヒトの皮膚に対して腐食性である。液体状の泡沫殺菌剤も使用されていて、一般に効率的な適用のために水および加圧ガスを必要とする。そのような現状であるため、それらは多くの状況下で一般に実用的ではない。
【0006】
工場に加えて、そのような問題は全国の多くの家庭においても経験される可能性がある。例えば、典型的な台所の流し台には、家庭用洗浄製品から農薬に及ぶ、多くの様々な化学薬品/材料が含まれ得る。典型的な工場で見出され得る化学薬品/材料と同様に、家庭用化学薬品への曝露も重篤な傷害をもたらし得る。しかし、現代のほとんどの家庭は、最も基本的な対応策さえ取り入れていなく、結果として、曝露された皮膚または表面を清浄しようとして水が最初に選択される場合が多い。多くの化学薬品/材料は水と反応しないか、または水に不溶性であるので、水を使用すると、化学薬品/材料を周囲に広げることにより曝露および傷害の重篤度をさらに悪化させ、それにより有毒化学薬品/材料と接触している面積を増大させる可能性がある。
【0007】
化学的対応策に加えて、物理的な汚染除去法を用いて多くの有毒化学薬品/有毒材料を中和してもよい。物理的な汚染除去は、通常、長期間の乾熱または約20分間の蒸気もしくは過熱蒸気を伴う。場合によっては、紫外線を効果的に使用してもよいが、現実の実務において実施することは一般に困難である。そのような物理的な汚染除去法は、ヒト皮膚への曝露の場合には使用することができず、多くの状況下では使用が実際的でない場合が多い。したがって、工場、ならびに家庭において直面する可能性のある多くの有毒化学薬品/有毒材料を中和するために使用することのできる効果的な対応策がなお必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一代替実施形態では、本発明は、有毒工業用化学薬品および有毒工業材料、例えば、刺激剤、重金属、放射性金属、酸および酸刺激剤、農薬、ならびに様々な農業用化学薬品、(集合的に、有毒化学薬品、有毒材料、または単に毒物と称される)を含むが、これらに限定されるものではない、有毒化学薬品および有毒材料、ならびに広範囲の有毒化学薬品および/または有毒材料を中和するため、ならびにこれらの薬剤と接触している表面の汚染物質を除去するための、製剤および関連する方法に関する。結果として、本発明の製剤は、幅広い種類の有毒化学薬品および有毒材料を中和するために使用することができる。
【0009】
特に、本発明は、酸、有毒工業用化学薬品、有毒工業材料、金属イオン、および農薬を含むが、これらに限定されるものではない、1以上の化学剤を中和することのできる1以上の活性部分を有する製剤を含む。一実施形態では、本製剤には、求核攻撃または求電子攻撃を介して多様な毒物を中和することのできる窒素オキシム部分およびカルボニル部分を有する有効成分が含まれてよい。一実施形態では、有効成分は、2,3,ブタンジオンモノオキシム(ジアセチルモノオキシム(DAM)としても既知)、およびそのアルカリ塩、例えばカリウム2,3−ブタンジオンモノオキシム(KBDO)を含む。本製剤はまた、有効成分を分散させるキャリアを含んでよい。一実施形態では、キャリアは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)、ならびにそれらの組合せおよび誘導体を含んでよい。
【0010】
一実施形態では、本発明の製剤を用いて、幅広い種類の有毒工業用化学薬品および有毒工業用材料を中和することができる。かかる一実施形態では、DAMおよびその塩、例えばKBDOには、標的化学薬品の反応性部分へ求核攻撃する能力のある、3個の潜在的に求核性の原子が含まれる。例えば、DAMの構造には、3個の求核性原子すなわちカルボニル酸素、オキシム窒素および、程度は低いが、オキシム酸素が含まれる。求核性原子は、幅広い種類の有毒化学薬品を攻撃および中和する能力がある。求核攻撃を受けやすい毒物を中和することに加えて、DAMおよびKBDOを用いて酸性毒物も同様に中和することができる。一部の実施形態では、DAMおよびKBDOは金属イオンをキレート化するためにも使用することができ、それにより金属イオンを効果的に除去および中和することができる。なお、さらなる実施形態では、DAMおよびKBDOは、様々なTICsおよびTIMsを可溶化および中和する能力があるキャリア、例えばPEGまたはmPEG中に存在してよい。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明を用いて、製造または生産環境で直面する可能性のある多くの酸および酸無水物/無水酸、例えば、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、過塩素酸(HClO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、硝酸(HNO)、亜硝酸(HNO)、酢酸、アルシン(AsH)、セレン化水素、硫化水素(HS)、二酸化窒素(NO)の酸性副生成物、二酸化硫黄(SO)、無水マレイン酸、無水酢酸、混合無水物、およびその任意の塩、エステルまたは誘導体、あるいはその任意の組合せ、ならびに同類のものを中和することができる。
【0012】
酸を中和することに加えて、本製剤を用いて、多くの工業環境において一般に用いられる幅広い種類の刺激剤を中和することもできる。例えば、多くの有毒な工業用または有毒な材料には、DAMの1個以上の求核性原子による求核攻撃を受けやすい1以上の反応性部分が含まれる。そのような毒物としては、限定されるものではないが、1,1’−ビ(エチレンオキシド)、アクリロニトリル、アリルアルコール、塩化アリル、メチルメルカプタン、ホスゲン、ヒドラジン、および同類のもの、ならびにその任意の塩、エステルまたは誘導体あるいはその任意の組合せを挙げることができる。
【0013】
一実施形態では、本発明の製剤は、グリコール類、例えばヒドラジン、ホスフィン、およびトルエンジイソシアネート(混合異性体)などに可溶性の毒物を中和する能力があり得る。本発明はまた、一部の酸化および腐食性毒物を中和するために用いてもよい。
【0014】
一代替実施形態では、本発明は、有効成分を有する組成物を有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料に適用し、それにより有毒工業用化学薬品または/および有毒工業用材料を中和する、広範囲の有毒工業用化学薬品および有毒工業用材料を中和するための方法に関する。一実施形態では、有効成分は、2,3,ブタンジオンモノオキシムまたはそのアルカリ塩を含む。
【0015】
一代替実施形態では、本発明の製剤は、様々な金属および放射性核種、例えば重金属、鉛、遷移金属、放射性金属、Pu、Th、U、Zr、Nb、Ru、アクチニド、ランタニド、希土類元素およびそれらの組合せを、例えば、キレート化または環形成反応を介して中和するために使用することができる。この実施形態では、DAMは、金属がキレート化剤の2個以上の原子に結合しているキレート錯体を形成するためのキレート化剤の役割を果たす。一実施形態では、DAMは、金属イオンとキレート化して5〜7員環を形成することができる。
【0016】
一代替実施形態では、本発明は、少なくとも1つの求核性カルボニル部分および少なくとも1つの求核性オキシム窒素部分を有する組成物を金属と反応させ、金属原子を中和または封鎖するための方法を提供する。組成物と金属の反応は、金属をキレート化して、少なくとも1つの求核性カルボニル部分および少なくとも1つの求核性オキシム窒素部分が金属に結合している環構造を形成する。
【0017】
一代替実施形態では、本発明の製剤を用いて幅広い種類の農薬を中和してもよい。一実施形態では、本発明の製剤を用いて、有機リン酸塩(OPs)、ピレスロイド(SP)、カルボキシ部分、およびカルバメート、またはそれらの任意の組合せを含有する農薬を中和することができる。一実施形態では、第一のDAM分子はOPを含有する農薬と反応してリン酸化されたオキシムを生成する。その後の反応において、第二のDAM分子が次にホスホニル化されたオキシムと反応して無毒の置換ホスホン酸を生成する。一実施形態では、DAMによって中和することのできるOP農薬としては、限定されるものではないが、アジンホス−メチル、クロルピリホス、ダイアジノン、ジスルホトン、エトプロップ、ホノホス、マラチオン、メチルパラチオン、パラチオン、ホレート、およびテルブホスが挙げられる。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明の製剤は、カルバメートを含有する農薬、例えば2−メチル−2−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド O−メチルカルバモイルオキシム(Aldicarb);2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニルメチルカルバメート(カルボフラン、フラダン、またはキュレーター(curator));3−ヒドロキシカルボフラン;エチルN−[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチル]カルバメート(フェノキシカルブ);1−ナフチルメチルカルバメート(Sevinの商標名でも公知のカルバリル);エチエノカルブ(ethienocarb)、例:3−ヒドロキシカルボフラン、アルジカルブスルホン、アルジカルブスルホキシド、ブチレート、S−エチルジプロピルチオカルバメート(EPTC)、メチオカルブ、メトミル、モリネート、オキサミル、ペブレート、プロファム、プロポキスル、チオベンカルブ、トリアレート、および2−(1−メチルプロピル)フェニルN−メチルカルバメートを中和するために使用してもよい。
【0019】
一代替実施形態では、本発明は、広範囲の農薬、例えば有機リン酸塩、カルバメート、有機塩素、およびピレスロイドなどを中和する方法に関し、その方法では、2,3,ブタンジオンモノオキシムまたはそのアルカリ塩を含有する組成物を農薬と反応させ、それによりその農薬を中和する。
【0020】
一実施形態では、有効成分を含有する組成物は、人または表面に曝露した農薬の量に対して約1:1〜20:1の範囲の量で適用する。一部の実施形態では、この量は約2:1〜15:1の範囲、特に約5:1〜10:1の範囲であってよい。有効成分を用いて毒物を処置した後に、水を用いて表面または処置された人の皮膚から毒物および製剤の残留物を除去してよい。
【0021】
一実施形態では、本発明の製剤は、局所皮膚保護剤(TSP)、例えばローションまたはクリームとして提供されてよく、その局所皮膚保護剤は有毒化学薬品または有毒材料への曝露前、または曝露後にヒト皮膚に適用することができる。一部の実施形態では、本製剤は、液体、ゲル、粉末、乳濁液、フォーム、スプレー、および同類のものの形態で提供することができる。一実施形態では、本製剤を用いて、金属表面、石材表面、およびプラスチック表面を含むが、これらに限定されるものではない、有毒化学薬品または有毒材料に曝露された表面の汚染物質を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これから本発明を以下において、本発明の一部であって全てではない実施形態を示す、添付図面を参照してさらに詳細に説明する。実際に、これらの発明は、多くの異なる形態に具体化することができ、それらは本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、適用される法的必要条件を満たすように提供される。同様の数字は全体を通して同様の要素をさす。
【0023】
本発明の一実施形態では、本製剤は、広範囲の有毒化学薬品および有毒材料を中和するために使用することのできる1種類以上の除染剤を提供する。本発明の文脈において、用語「中和」には、解毒、汚染除去、緩和、または、それにより毒物がヒトまたは動物において急性の有害作用を低減させる、毒物の実質的な破壊が含まれる。中和の方法としては、限定されるものではないが、求核攻撃、求電子攻撃、キレート化反応、酸−塩基反応、可溶化、金属イオン封鎖、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0024】
一実施形態では、本製剤には、求核攻撃または求電子攻撃を介して多様な毒物を中和することのできる窒素オキシム部分およびカルボニル部分を有する有効成分が含まれる。もう一つの実施形態では、有効成分には、窒素オキシム部分およびカルボニル部分が含まれる。さらに別の実施形態では、有効成分は、ジアセチルモノオキシム(DAM)としても既知の2,3,ブタンジオンモノオキシム、およびその塩を含み、それには限定されるものではないが、アルカリ塩、例えばカリウム2,3−ブタンジオンモノオキシム(KBDO)およびナトリウム2,3−ブタンジオンモノオキシムなど、およびアルカリ土類塩、例えばカルシウム2,3−ブタンジオンモノオキシムなどが挙げられる。DAMの構造を、以下の式(1)により示す。
【化1】

【0025】
一代替実施形態では、本発明の実施に使用してよいさらなるオキシムとしては、DAMのアルキル基に4〜6個の炭素原子が含まれるDAMの誘導体が挙げられる。例えば、一実施形態では、有効成分には、2,3ペンタンジオンモノオキシム、3,4ペンタンジオンモノオキシム、3,4ヘキサノンモノオキシム、2,3ヘキサナノン(hexananone)モノオキシムおよび4,5ヘキサノンモノオキシム(代替名称には、2,3−ペンタンジオン3−オキシム(CAS609−29−0)2オキシモペンタン−3−オン,3,オキシモペンタン−4−オン、2,3−ペンタンジオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオンオキシム、ペンタン−2,3−ジオン2−オキシム、2,3,4−ペンタントリオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオン,ジオキシム、2,4−ペンタンジオン,2,4−ジオキシム、およびそれらの組合せが含まれ得る)の1以上が含まれてよい。特に指定のない限り、本明細書においてDAMへの言及には、ジアセチルモノオキシム、2,3−ブタンジオンモノオキシム、それらの塩、ならびにそれらの誘導体が含まれる。本製剤を敏感な毒物に適用すると、反応性部分の1以上が標的毒物と反応し、それにより毒物を中和する。一実施形態では、毒物は、少なくとも実質的に、水によって、またはその他の手段により除去することのできる最終生成物に分解される。
【0026】
一実施形態では、本発明の製剤は、必要な解毒および汚染除去をもたらすために、多様な方法および段階で送達され、毒物に適用することができる。例えば、本製剤は、局所皮膚保護剤(TSP)、例えばローションまたはクリーム、液体溶液または懸濁液、フォーム、および同類のものの形態であってよい。一代替実施形態では、本発明の製剤は、ゲルまたはコーティングの形態であってよい。本発明に適したゲルおよびコーティングは、一般に当技術分野で既知である。
【0027】
以下でより詳細に考察されるように、本発明の代替実施形態は、一般に、それを必要とする個体の表面または皮膚に適用するか、あるいは空中に分散させて、1以上の有毒化学薬品/有毒材料を中和するかまたあるいは解毒させることのできる、活性化された溶液または生成物を含んでよい。
【0028】
一実施形態では、本製剤には、一般に、標的化学物質を結合、吸収、可溶化、またあるいは中和する能力のある1以上の有効成分が含まれる。本製剤にはまた、一般に、有効成分を分散させるキャリアが含まれてよい。一実施形態では、キャリアは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)、ならびにそれらの組合せおよび誘導体を含む。一実施形態では、有効成分は、1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカンおよび4,7,13、16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンから選択される大環状分子をジオキソラン、テトラグリム、ジメトキシエタン、ポリエチレングリコール、またはポリエチレングリコールモノ−エーテルもしくはポリエチレングリコールジ−エーテルから選択されるキャリアと共に含む塩基中に分散されてよい。もう一つの実施形態では、本製剤には、水またはその他の溶媒が、塩基中の有効成分を確実に溶解するために十分な量で含まれてもよい。
【0029】
一代替実施形態では、塩基は、実質的に等量の大環状分子および有効成分を含む。本製剤中に存在する水または溶媒の量は、一般に本製剤の所望の最終用途に依存する。例えば、クリームおよび同様の用途において、含められる水の量は少量、例えば塩基の約5%未満であってよい。その他の実施形態では、存在する水の量は最小限に維持されることが望ましい。そうでなければ有効成分と水または溶媒との間の不要な副反応が起こる可能性があるためである。一部の実施形態では、本製剤は、水または溶媒を全く含まない。
【0030】
上述のように、本製剤には、キャリア、例えばポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール、またはポリエチレングリコールエーテルなどが含まれてよい。これらの化合物は、式R−−O−−CHCHO)CHCHORを有し、式中、いずれのRも水素またはアルキル基であってよく、それには、限定されるものではないが、メチルまたはエチルが含まれ、「n」は鎖長を示す。一代替実施形態では、「n」の値には幅があってよい。一般に、「n」が増加するにつれて、化合物はより粘稠となる。例えば、クリーム用途において、本製剤は比較的高粘度かつ粘稠であることが望ましい可能性があり、そのために増粘剤を含めることが望ましい可能性がある。一般に、1500の分子量を表す「n」の値では、クリームの形態となる本製剤に増粘剤は不要であり得る。一実施形態では、R基の少なくとも1つ、最も好ましくは、両方は、水素以外であり、一般にメチルまたはエチルである。
【0031】
一実施形態では、本製剤は、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液の形態であってよい。かかる乳濁液のその他の成分としては、バリヤークリームまたはローション型製剤に従来使用されている乳化剤およびオイル、例えば鉱油またはシリコーン油などを挙げることができる。
【0032】
一部の実施形態では、本製剤には、1以上のさらなる添加剤、例えば界面活性剤、保湿剤、香料、増量剤、着色剤、乳化剤、増粘剤、および同類のものも、その添加剤が有効成分に対して不活性であるという条件で含まれてよい。一代替実施形態では、本製剤には、製薬上許容される不活性固体が増粘剤として含まれてよく、この増粘剤も有効成分に対して不活性である。典型的な使用に適した固体としては、シリカ、チタニア、フラー土、クレイ、ベントナイトおよび同類のものを挙げることができる。
【0033】
[有毒工業用化学薬品および有毒工業用材料の中和]
一実施形態では、本発明の製剤を用いて、それぞれTICSおよびTIMSと一般に呼ばれる、幅広い種類の有毒な工業用化学薬品および有毒工業用材料を中和することができる。多くのTICSおよびTIMSには、熱傷および皮膚への刺激作用を引き起こし得る酸および皮膚刺激剤が含まれている可能性がある。一実施形態では、本発明の製剤を用いてこれらの様々な毒物の有害な影響を中和させ、かつ/または緩和し、それにより、曝露の結果生じ得る熱傷および皮膚刺激作用を寛解させるのに役立たせることができる。一部の実施形態では、本発明の製剤はまた、TICSおよびTIMSに曝露された表面に適用されるように処方されてよい。TICSおよびTIMSには、製造設備、生産施設、およびメンテナンス設備に見出される化学物質が含まれてよく、必ずしも化学兵器、例えば、発疱剤(例えば、マスタード・ガス)および神経ガスなどを含むものではない。
【0034】
DAMおよびその塩、例えばKBDOなどには、標的化学薬品の反応性部分へ求核攻撃する能力のある3個の潜在的に求核性の原子が含まれる。例えば、DAMの構造には、3個の求核性原子すなわちカルボニル酸素、オキシム窒素および、程度は低いが、オキシム酸素が含まれる。これらの求核性原子は、幅広い種類の有毒化学薬品を攻撃および中和する能力がある。求核攻撃を受けやすい毒物を中和することに加えて、DAMおよびKBDOを用いても同様に酸性毒物を中和することができる。一部の実施形態では、DAMおよびKBDOを使用して金属イオンをキレート化させることができ、その結果として様々な金属イオンを効果的に除去および中和するために使用することができる。なおさらなる実施形態では、DAMおよびKBDOは、様々なTICsおよびTIMsを可溶化および中和する能力のあるキャリア、例えばPEGまたはmPEG中に存在してよい。
【0035】
一部の実施形態では、本発明に従う製剤を用いて、作業環境で直面する可能性のある多くの酸および酸無水物を中和することができる。そのような酸としては、限定されるものではないが、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、過塩素酸(HClO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、硝酸(HNO)、亜硝酸(HNO)、酢酸、アルシン(AsH)、セレン化水素、硫化水素(HS)、二酸化窒素(NO)の酸性副生成物、二酸化硫黄(SO)、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、マロン酸、ギ酸、リン酸、酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水酢酸、および同類のものなどを挙げることができる。この実施形態では、有効成分(例えば、DAM)およびその塩であるKBDOは塩基性であり、酸と反応し、それによりそれらを中和する能力がある。一部の例では、酸に曝露された作業者は水を適用することによりその酸を除去しようと試みることもあるが、それは状況を悪化させるだけである。本発明では、酸性成分を素早く中和させ、それによってさらなる傷害を作業者に与えることを防ぐために、本製剤を皮膚に適用することができる。
【0036】
酸を中和することに加えて、本製剤を用いて、多くの工業環境において一般的に用いられる幅広い種類の刺激剤を中和させてもよい。例えば、多くの有毒工業用化学薬品または有毒工業用材料には、DAMの1個以上の求核性原子による求核攻撃を受けやすい1以上の反応性部分が含まれる。求核攻撃を受けやすい典型的な反応性部分としては、カルボニル、アリル、エポキシド、アミド、ニトリル、酸無水物、および同類のものを挙げることができる。そのような毒物としては、限定されるものではないが、1,1’−ビ(エチレンオキシド)、アクリロニトリル、アリルアルコール、塩化アリル、メチルメルカプタン、無水酢酸、フルオロ酢酸、および同類のものを挙げることができる。一実施形態では、本発明の製剤を用いて、DAMの1個以上の求核性原子による求核攻撃によってホスゲンを中和させてもよい。
【0037】
一代替実施形態では、本発明の製剤を用いて、アルコール、例えばグリコールなどに可溶性の毒物を中和することもできる。この実施形態では、有効成分は、一般にグリコール系キャリア、例えばPEGまたはmPEG中に存在する。この実施形態では、キャリアは、毒物を可溶化させ、それにより中和する能力がある。一実施形態では、本発明の製剤は、ヒドラジン、ホスフィン、およびトルエンジイソシアネート(混合異性体)などの毒物を中和する能力があり得る。
【0038】
ヒドラジンの場合、本製剤の有効成分(例えば、DAM)は塩基性のヒドラジンと反応してヒドラジンの塩基性を中和するのに役立つ一方、グリコール系のキャリアがヒドラジンを少なくとも実質的に可溶化させることにより有効成分を付随的に補助すると考えられる。結果として、本発明の製剤を用いてヒドラジンを安全に中和することに役立たせることができ、それにより曝露された皮膚または表面を水で洗浄してヒドラジンを除去することができる。
【0039】
一部の実施形態では、本製剤は、これらに限定されるものではないが、アンモニア、無水アンモニア、および、塩素などの酸化毒物を含む。そして、これらの本製剤を用いて、腐食性の毒物を中和させてもよい。
【0040】
一般に、有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料を中和するために必要とされる本製剤の量は、人または表面が曝露された有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料の量によって決まる。一実施形態では、有効成分を含有する組成物は、人または表面が曝露された有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料の量に対して約1:1〜20:1の範囲の量で適用されてよい。一部の実施形態では、この量は約2:1〜15:1の範囲、特に約5:1〜10:1の範囲であってよい。一実施形態では、本製剤を有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料に適用した後、水を用いて処置された皮膚または表面から残留物を除去することができる。
【0041】
[重金属および放射性金属の中和]
一代替実施形態では、本発明の製剤を用いて様々な金属および放射性核種、例えば、重金属、鉛、遷移金属すなわち放射性金属Pu、Th、U、Zr、Nb、Ru、アクチニド、ランタニド、希土類およびそれらの組合せを、例えば、キレート化または環形成反応によって中和することができる。この実施形態では、DAMは、金属がキレート化剤の2個以上の原子に結合しているキレート錯体を形成するためのキレート化剤の役割を果たす。
【0042】
DAMの構造は、遷移金属、アクチニド、ランタニドおよび重金属とともに安定した5〜7員環構造を形成することができる。例えば、2,3−ブタンジオンモノオキシムは、様々な金属とともに5員環を形成することができ、DAMの誘導体、例えば2,4ヘキサンジオン2オキシムは、6員環構造を形成することができる。一般に、結果として得られる5〜7の間の側基(sides)を有する環構造は、金属がDAMによって効果的に結合されている比較的安定した反応生成物をもたらす。上記式(1)に示されるように、DAMにはカルボニル酸素およびオキシム窒素部分が含まれる。これらの部分は、各々が1より多くの金属配位座で金属と結合または配位を形成する配位子の役割を果たし得る。例えば鉛原子の場合、DAMの=Nおよび=Oは、Pbの別々の配位部位に結合して安定した5員環を形成する。
【0043】
一般に、外側の電子殻が空または一部分空の金属は、DAMに配位してキレート錯体を形成することができる。一実施形態では、DAMは、金属、例えば遷移金属、重金属、およびアクチニドおよび超ウラン金属に配位して二座の配位子を形成することができる。DAMは、3個の求核性原子、カルボニル酸素、オキシム窒素および、程度は低いが、オキシム酸素を有する。カリウム塩オキシメート(KBDO)は、これらの同じ求核性原子を有し、一般に中性のオキシムよりもさらに求核性が強いと考えられている。例えば、一実施形態では、DAMは、Pbとキレート化して平面正方形配位錯体を形成することができる。さらに別の実施形態において、可能性のある鉛とDAMまたはKBDOの錯体を以下に示す。PbからオキシムNおよびカルボニルOへの2本の破線は配位結合であり、5員環を形成する。一部の実施形態では、DAMまたはKBDOの別の分子は、Pb原子により収容する(accommodated)ことができ、残ったsp軌道を用いて以下に示されるように平面正方形錯体を形成する。
【化2】

【0044】
もう一つの実施形態では、DAMおよびKBDOを用いて、アクチニドおよび超ウラン金属と錯体形成させて、それらを溶液および/または表面から除去することができる。これは、核兵器または放射線分散装置(RDD)からの放射性物質、あるいは表面/区域上の他の形態の拡散性放射性物質に曝露された表面を汚染除去する際に特に有効であると考えられる。
【0045】
一般に、金属を中和するために必要とされる本製剤の量は、人または表面が曝露された金属の量によって決まる。一実施形態では、有効成分を含有する組成物は、人または表面が曝露された金属の量に対して約1:1〜20:1の範囲の量で適用することができる。一部の実施形態では、この量は、約2:1〜15:1、特に約5:1〜10:1の範囲であってよい。一実施形態では、本組成物を金属に適用した後、水を用いて処置された皮膚または表面から残留物を除去することができる。
【0046】
[農薬の中和]
一代替実施形態では、本発明の製剤を用いて、幅広い種類の農薬を中和することもできる。米国で使用されている農薬は、一般に数種類の主なクラスすなわち有機リン酸塩、カルバメート、有機塩素、およびピレスロイドに分類される。一実施形態では、本発明の製剤を用いて、有機リン酸塩(OPs)、ピレスロイド(SP)、カルボキシ部分、およびカルバメートを含有する農薬を中和することができる。農薬には、一般に、殺虫剤に多く用いられる化学薬品および材料が含まれ、必ずしも化学兵器、例えば発疱剤および神経ガスなどを含むものではない。
【0047】
OP農薬の中和では、DAMの窒素オキシムは、求核攻撃においてOPの活性リン中心と反応すると考えられる。求核攻撃の結果、反応副生成物に分解されるOP化合物がもたらされる。この反応において、DAMの第一の分子は、OPと反応してリン酸化オキシムを生成する。その後の反応において、第二のDAM分子は、次にホスホニル化オキシムと反応して無毒の置換ホスホン酸を生成する。一実施形態では、DAMによって中和することのできるOP農薬としては、限定されるものではないが、アジンホス−メチル、クロルピリホス、ダイアジノン、ジスルホトン、エトプロップ、ホノホス、マラチオン、メチルパラチオン、パラチオン、ホレート、およびテルブホスが挙げられる。
【0048】
カルボニル、例えばカルバメートなどを含有する農薬は、酵素アセチルコリンエステラーゼを可逆的に不活化することによりコリンエステラーゼ阻害中毒を引き起こし得る。さらなる実施形態では、本発明の製剤を用いて、カルバメートを含有する農薬、例えば2−メチル−2−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドO−メチルカルバモイルオキシム(Aldicarb);2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニルメチルカルバメート(カルボフラン、フラダン、またはキュレーター);3−ヒドロキシカルボフラン;エチルN−[2−(4−フェノキシフェンオキシ)エチル]カルバメート(フェノキシカルブ);1−ナフチルメチルカルバメート(Sevinの商標名でも公知のカルバリル);エチエノカルブ(ethienocarb)、3−ヒドロキシカルボフラン;アルジカルブスルホン;アルジカルブスルホキシド;ブチレート;S−エチルジプロピルチオカルバメート(EPTC);メチオカルブ;メトミル;モリネート;オキサミル;ペブレート;プロファム;プロポキスル;チオベンカルブ;トリアレート;および2−(1−メチルプロピル)フェニルN−メチルカルバメートを中和するために使用してもよい。炭酸塩の中心のカルボニルは求電子性であり、そのためにDAMのオキシムにより求核攻撃を受けやすいと考えられる。
【0049】
一部の実施形態では、キャリアもカラバート(carabate)を除去または封鎖することによりカルバメートを中和するための有効な手段をもたらすことができる。一実施形態では、キャリアは、カルバメートを可溶化してそれによりカルバメートを除去および中和する能力があるポリグリコール、例えばPEGまたはmPEGを含んでよい。
【0050】
一般に、農薬を中和するために必要とされる本製剤の量は、人または表面が曝露された農薬の量によって決まる。一実施形態では、有効成分を含有する組成物は、人または表面が曝露された農薬の量に対して約1:1〜20:1の範囲の量で適用することができる。一部の実施形態では、この量は、約2:1〜15:1、特に約5:1〜10:1の範囲であってよい。一実施形態では、農薬を本製剤で処置した後、水を用いて処置された皮膚または表面から残留物を除去することができる。
【0051】
上述のように、本発明に従う製剤は、多様な方法および段階で毒物に送達および適用されるように処方することができる。例えば、本製剤は、有毒化学薬品または有毒材料への曝露の前、または後にヒト皮膚に適用することのできる局所皮膚保護剤(TSP)、例えばローションまたはクリームとして提供されてよい。一部の実施形態では、本製剤は、液体、ゲル、粉末、乳濁液、フォーム、スプレー、および同類のものの形態で提供することができる。一実施形態では、本製剤を用いて有毒化学薬品または有毒材料に曝露された表面を汚染除去することができる。
【0052】
一般に、本製剤中の有効成分の量は、本製剤の総重量に基づいて、約1〜90、1〜50、または1〜25重量パーセントである。一実施形態では、本製剤中の有効成分の量は、本製剤の総重量に基づいて、約2〜20重量パーセントの間、特に約4〜18重量パーセントの間、より具体的には約5〜15重量パーセントの間である。
【0053】
以下の表1および2は、本製剤がクリームの形態である、例示的かつ非限定的な本発明の実施形態を記載する。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
上記のように、本発明の製剤は、エアゾール、ローション、クリームおよびゲルの形態であってよい。一般に、本製剤の所望の粘度は意図する用途によって決まり、それは当業者により容易に確認することができる。例えば、ゲルは一般にローション、クリーム、またはエアゾールの粘度よりも大きい粘度を有する。以下の表3は、一部の例となる本発明の実施形態に従う製剤の粘度を列挙する。
【0057】
【表3】

【0058】
一実施形態では、本発明に従う製剤は、+25℃で140〜180cpの間の粘度を有し得る。
【0059】
一代替実施形態では、本発明に従う製剤は、MPEGのブレンドを変化させることにより製造することができる。例えば、一実施形態では、様々な粘度のmPEGを、結果として得られる最終生成物の粘度を増加または低下させる割合でブレンドすることができる。
【0060】
一実施形態では、本製剤の粘度は、乳化の物理的機械的プロセスにより増加させることができる。以下の表4および5は、本発明の実施形態に従う、非限定の、例となる製剤を説明する。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
本明細書に示される本発明の多くの変更形態およびその他の実施形態は、前述の説明および付随する図面に示される教示の利益を有するこれらの発明の属する当業者に思い浮かぶものである。そのために、本発明は開示される特定の実施形態に限定されるものでなく、変更形態およびその他の実施形態は添付される特許請求の範囲内に含まれることが意図されることは当然理解される。本明細書において具体的な用語が用いられているが、それらは一般的かつ説明の意味だけで使用されているものであり、限定のためのものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲の有毒工業用化学薬品および有毒工業用材料を中和するための方法であって、
前記方法が、
有効成分を有する組成物を有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料に適用する段階と、それにより前記有毒工業薬品または/および前記有毒工業用材料を中和する段階とを含み、前記有効成分が1種類以上の2,3,ブタンジオンモノオキシム、それらのアルカリもしくはアルカリ性塩、またはそれらの誘導体を含む、方法。
【請求項2】
前記有毒工業用材料が、酸、または、求核性カルボニル原子もしくは求核性オキシム窒素原子もしくは酸素原子による求核攻撃を受けやすい部分を含む薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有毒工業用化学薬品もしくは前記有毒工業用材料が、1,1’−ビ(エチレンオキシド)、アクリロニトリル、アリルアルコール、塩化アリル、メチルメルカプタン、およびホスゲンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有毒化学薬品または前記有毒工業用材料が酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、過塩素酸(HClO)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、硝酸(HNO)、亜硝酸(HNO)、酢酸、アルシン(AsH)、セレン化水素、硫化水素(HS)、二酸化窒素(NO)の酸性副生成物、二酸化硫黄(SO)、リン酸、無水酢酸、無水マレイン酸、混合無水物、フルオロ酢酸、およびクロロ酢酸からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記有効成分が、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択されるキャリア中に分散している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有毒工業用化学薬品もしくは前記有毒工業用材料が、ヒドラジン、塩素、およびアンモニアからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有効成分を含有する前記組成物が、有毒工業用化学薬品もしくは有毒工業用材料の量に基づいて、約1:1〜20:1の範囲の量で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有効成分が、2,3ペンタンジオンモノオキシム、3,4ペンタンジオンモノオキシム、3,4ヘキサノンモノオキシム、2,3ヘキサナノンモノオキシムおよび4,5ヘキサノンモノオキシム(代替名称には、2,3−ペンタンジオン3−オキシム(CAS609−29−0)2オキシモペンタン−3−オン,3,オキシモペンタン−4−オン、2,3−ペンタンジオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオンオキシム、ペンタン−2,3−ジオン2−オキシム、2,3,4−ペンタントリオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオン,ジオキシム、2,4−ペンタンジオン,2,4−ジオキシム、およびそれらの組合せが含まれ得る)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有毒工業薬品または/および前記有毒工業用材料を中和する前記段階が、前記有毒工業薬品または/および材料を封鎖する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
金属原子を中和するための方法であって、
前記方法が、
少なくとも1つの求核性カルボニル部分と少なくとも1つの求核性オキシム窒素部分とを有する有効成分を有する組成物を、金属と反応させる段階と、
前記金属をキレート化する段階と、前記少なくとも1つの求核性カルボニル部分と少なくとも1つの求核性オキシム窒素部分とが前記金属に結合している環構造を形成する段階と、
を含む、方法。
【請求項12】
前記有効成分が、2,3,ブタンジオンモノオキシムまたはそのアルカリもしくはアルカリ性塩を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有効成分が、カリウム2,3,ブタンジオンモノオキシムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記金属が、重金属、鉛、遷移金属、放射性金属、Pu、Th、U、Zr、Nb、Ru、アクチニド、ランタニド、希土類金属、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記環が、5〜7の間の側基を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記有効成分が、2,3ペンタンジオンモノオキシム、3,4ペンタンジオンモノオキシム、3,4ヘキサノンモノオキシム、2,3ヘキサナノンモノオキシムおよび4,5ヘキサノンモノオキシム(代替名称には、2,3−ペンタンジオン3−オキシム(CAS609−29−0)2オキシモペンタン−3−オン,3,オキシモペンタン−4−オン、2,3−ペンタンジオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオンオキシム、ペンタン−2,3−ジオン2−オキシム、2,3,4−ペンタントリオン,3−オキシム、2,4−ペンタンジオン,ジオキシム、2,4−ペンタンジオン,2,4−ジオキシム、およびそれらの組合せが含まれ得る)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記有効成分を含有する前記組成物が、金属の量に基づいて約1:1〜20:1の範囲の量で適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記有効成分が、2,3,ブタンジオンモノオキシムを含み、かつ、
前記金属と、2,3,ブタンジオンモノオキシムの第1の分子および第2の分子を反応させる段階と、平面正方形錯体を有するキレートされた金属を形成する段階とをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、それを必要とする人の皮膚に適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
広範囲の農薬を中和する方法であって、前記方法が、
有効成分を有する組成物と農薬を反応させる段階と、それにより前記農薬を中和する段階とを含み、前記有効成分が、2,3,ブタンジオンモノオキシムまたはそのアルカリ塩を含み、かつ、前記農薬が、有機リン酸塩、カルバメート、有機塩素、およびピレトロイドからなる群から選択される、方法。
【請求項21】
前記農薬に、2−メチル−2−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドO−メチルカルバモイルオキシム、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニルメチルカルバメート、3−ヒドロキシカルボフラン、エチルN−[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチル]カルバメート、1−ナフチルメチルカルバメート、エチエノカルブ(ethienocarb)、3−ヒドロキシカルボフラン、アルジカルブスルホン、アルジカルブスルホキシド、ブチレート、S−エチルジプロピルチオカルバメート、メチオカルブ、メトミル、モリネート、オキサミル、ペブレート、プロファム、プロポキスル、チオベンカルブ、トリアレート、および2−(1−メチルプロピル)フェニルN−メチルカルバメートからなる群から選択されるカルバメートが含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、それを必要とする人の皮膚に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、クリーム、ゲル、またはローションである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記有効成分が、キャリア中に分散されていて、前記方法が、前記キャリアと前記農薬を反応させる段階と、それにより前記農薬を封鎖する段階とをさらに含む、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2011−511656(P2011−511656A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544304(P2010−544304)
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/088547
【国際公開番号】WO2009/094098
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(506276158)イー‐ゼット‐イーエム,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】