説明

有用な抗体を発現する雑種細胞の作成方法

この発明は、融合パートナーとの融合の前に、IgMからIgGへのクラススイッチを誘導するようにイン・ビトロで培養されたCD27+B細胞を利用する新規なハイブリドーマストラテジーに関するものである。CD27+B細胞と融合パートナー細胞系との間の融合から生じるハイブリドーマ及びそれらのハイブリドーマから分泌される抗体は、この発明にふくまれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部分的に、国立衛生研究所から、交付番号R01 AI065967にて支援を受けた。米国政府は、この発明に一定の権利を有する。
この発明は、ヒトモノクローナル抗体を産生する新規な雑種細胞(ハイブリドーマ)の生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗血清に関する多くの問題は、予め定めた抗原に対する特異的モノクローナル抗体(MAb)を分泌することのできる独創性に富むマウスハイブリドーマのKohlerとMilsteinによる発見(Kohler G. 及び Milstein C., 1975 Nature 256: 495)によって巧みに回避された。KohlerとMilsteinの報告以来、マウスモノクローナル抗体の製造は、日常的なものとなっている。
【0003】
モノクローナル抗体は、正常Bリンパ球とミエローマ細胞との融合から生成したハイブリドーマ細胞により産生される。融合に用いられるミエローマ細胞系は、数日間しかイン・ビトロで複製して抗体を産生することのできない正常Bリンパ球と対照的に、イン・ビトロでよく成長し、無限に増殖することのできるBリンパ球腫瘍細胞系である。これらの2つの型の細胞の融合から得られた細胞は、ミエローマ細胞系のイン・ビトロで成長する特性とBリンパ球由来の抗体産生とを併せ持つ。
【0004】
雑種細胞(ハイブリドーマ)は、一般に、Bリンパ球に富むマウス脾臓細胞とミエローマ「融合パートナー細胞」との間での融合により生成される(B. Alberts等、Molecular Biology of the Cell (Garland Publishing, Inc. 1994); E. Halow等、Antibodies. A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 1988)。融合において、これらの細胞は、所望の特異性を有する抗体の産生につき分析できるプールに分配される。陽性と評価されたプールを、更に、所望の特異性の抗体を産生する単一細胞クローンが同定されるまで細分することができる。かかるクローンにより産生された抗体は、モノクローナル抗体と呼ばれる。
【0005】
多くの研究者が、ヒトBリンパ球とのハイブリドーマを生成することによりヒトモノクローナル抗体を生成することを試みてきた(N. Chiorazzi等、J.Exp.Med. 156:930(1982);C.M. Croce等、Nature 288:488(1980); P.A. Edwards等、Eur.J.Immunol. 12:641 (1982); R. Nowinski等、Science 210:537 (1980); L. Olsson等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5429; J.W. Pickering等、J.Immunol. 129:406 (1982))。不幸にも、これらの雑種細胞は、イン・ビトロでの僅かな成長、低レベルの抗体発現、抗体発現の不安定性、及び限界希釈によりクローン化される乏しい能力しか示さなかった。
【0006】
その結果、別の厄介なアプローチが、ヒトモノクローナル抗体を製造するために用いられてきた。これらは、マウス抗体を、雑種のマウス/雑種免疫グロブリン遺伝子を造って、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスにおいて抗体を産生することによって「ヒト化すること」を含む。しかしながら、これらの方法は、マウスの免疫系によってマウスにおいて産生された抗体を製造することができるだけである。それらは、天然の抗体(感染及び他の抗原への曝露に応答してヒトの免疫系が生成する免疫学的記憶)の単離、生成及び使用を可能にしない。それ故、ヒトBリンパ球から直接モノクローナル抗体を作成する能力が必要とされ、それは、相当に価値のあるものである。
【0007】
最近、SP2/0細胞系を融合パートナーとして利用してハイブリドーマを生成することによりヒトモノクローナル抗体製造における進歩があった。このSP2/0細胞系は、外因性マウステロメラーゼ遺伝子を発現する不滅化マウスミエローマ細胞系(悪性B細胞系の細胞)である。米国特許出願公開第20030224490号は、SP2/0細胞系の、インターロイキン6(IL−6)及びヒトテロメラーゼ触媒性サブユニット(hTERT)を異所的に発現させる遺伝子改変を開示している。
【0008】
しかしながら、完全なヒトモノクローナル抗体の作成における進歩は、マウスミエローマ細胞の望ましい属性(例えば、安定性及び高い抗体産生)を有する融合パートナーとしての使用に適したヒトミエローマの不在により妨げられてきた。エプスタイン−バーウイルス(EBV)の利用は、ヒトリンパ球の不滅化にとても有効であることが分かってきている(Kozbor D,及びRoder J., J.Immunology 1981; 127:1275; Casual O, Science 1986; 234:476)が、低い抗体分泌率、抗体分泌性細胞系の乏しいクローン化可能性及び頻繁な抗体発現の喪失などのある限界を有している。
【0009】
不滅化ヒトB細胞は、モノクローナル抗体製造のために用いられてきた。このアプローチは、(a)B細胞に富む末梢血リンパ球の単離;(b)それらのB細胞の、EBVウイルスによるトランスフォーメーション又は不滅化ヒトリンパ芽球状細胞との融合、及び(c)所望の抗原結合特異性を示すB細胞トランスフォーマント又はハイブリドーマの大量スクリーニングのステップを含む。B細胞トランスフォーメーション自体は、せいぜい0.1〜10%の安定なトランスフォーマントを生成する非効率的な過程である。従って、所望の特異性を有する殆どのB細胞は、後続の選択過程で使用するためのプールにおいて失われる。研究者は、関心ある抗原によるイン・ビトロ免疫化/活性化により所望の免疫グロブリンを発現するB細胞の集団を富化させることを試みてきたが、この活性化は、やはり、非特異的B細胞もこの過程で増殖するという意味において非効率的である。こうして、特異的抗体を産生するB細胞の同定は、数十及び数千のトランスフォームされたB細胞クローンが抗原への結合能につき試験されるスクリーニングの最終段階に大きく依存する。このアプローチは、時間浪費的であり、大きな労働力を要する。
【0010】
高親和性の抗体の製造は、主として胚中心(GC)で起きる事象の複雑なセットの結果である体細胞超変異のプロセッシングを受けた抗体を発現するB細胞に依存している。胚中心後(post-germinal center)B細胞は、免疫グロブリン遺伝子の体細胞超変異を受けた細胞である。胚中心成熟応答の完結後、B細胞は、血中を循環して、元の抗原に対する将来の免疫応答の基礎を形成する記憶B細胞、又は骨髄に戻り、最終分化して免疫グロブリンを分泌するプラズマ細胞になりうる。記憶B細胞及びプラズマ細胞の発生は、リンパ濾胞の胚中心で起き、そこでは、抗原駆動されたリンパ球が、おそらくヘルパーT細胞の影響下で体細胞超変異及び親和性選択を受ける。
【0011】
典型的には、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを生成するために、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)集団を融合パートナー細胞と融合させる(何故なら、約40%のB細胞を含むヒト脾臓単核細胞は、容易に入手可能でないので)。PBMCは、日常的な静脈切開により、容易に入手できるが、約5%しかB細胞を含んでいない(Klein等、1997 Blood 89:1288; Dessain等、2004 J.Immunol.Methods 219: 109; Tian等、2007 Mol Immunol 44: 2173)。しかしながら、末梢血中で利用可能であるB細胞の約15%のみが、クラススイッチされた、GC後の抗体を発現する(Klein等、1997 Blood 89: 1288; Tian等、2007 Mol Immunol 44: 2173)。それ故、未選択のPBMCとの融合は、一般に、クラススイッチしたクラスほど望ましくはない生殖系列配列を有するIgM抗体を発現するハイブリドーマを生じる。従来技術の方法の不都合は、IgM分泌性ハイブリドーマの高いバックグラウンドである。本発明は、所望のIgGクラススイッチされた、GC後抗体の生成における低い収率及び成功率を扱うのに役立つ。
【0012】
ボツリヌス中毒は、嫌気性細菌クロストリジウム・ボツリナムにより産生される神経毒により引き起こされる生命を脅かす弛緩性麻痺である。ボツリヌス神経毒による中毒(ボツリヌス中毒)は、食中毒(食品伝染ボツリヌス中毒)、感染創(創傷ボツリヌス中毒)、及び胞子摂取及びそれらの幼児の腸における毒素の産生からの「幼児ボツリヌス中毒」を含む多くのコンテキストにおいて生じる(これらに限られない)。ボツリヌス中毒は、典型的には頭の神経に関連して始まり、尾方へ進行して末端にかかわる麻痺性の疾患である。急性の症例においては、ボツリヌス中毒は、致命的となりうる。
【0013】
ボツリヌス神経毒(BoNT)は、性質において、7つの抗原的に区別しうるタンパク質(血清型A、B、C1、D、E、F及びG)として見出される。ボツリヌス神経毒は、神経筋接合部に作用する。更に、BoNTは、その極度の致死性及び環境起源からの入手容易性の故に、米国政府からカテゴリーA選択のバイオテロリズム剤として指定されている(Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70; Greenfield and Bronze, 2003 Drug Discov. Today 8:881-8; Marks, 2004 Anesthesiol. Clin. North America 22:509-32)。70kgの個人に対する吸入によるBoNTの致死投与量は、1マイクログラム未満であり;1グラムは、100万人の人々を殺すのに十分なBoNTを含有する(Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70)。従って、破壊的に致死的な量のBoNTが、秘密裏に、容易に輸送されてまき散らされうる。曝露された犠牲者に対する直接的及び延長されたICU支援に対する要求の故に、限られた一般市民の曝露は、容易に、典型的な米国都市の集中治療室の許容量を圧倒しうる(NIAID, 2002b)。
【0014】
BoNT曝露に対する主たる対策は、歴史的に、ボツリヌス毒素ワクチン及び治療用抗体であった。現存するワクチンは、不活性化した5価の毒素であり、それは、強力な中和抗体応答を誘導する(Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70; Gelzleichter等、1999 J. Appl. Toxicol. Suppl. 1:S35-8; Siegel, 1998 Immunol. Res. 17:239-51)。しかしながら、自然発生のこの病気は稀であり、広範なワクチン接種は、ワクチン接種を受けたヒトをBoNTに耐性にするので、一般大衆における使用は勧められてこなかった。それは、医学的適応症例えば眼瞼痙攣、ジストニー及び斜頚に必要とされうる(Bell等、2000 Pharmacotherapy 20:1079-91)。BoNT曝露後の毒素ワクチンの使用は、中和抗体応答を誘導するのが遅いので、価値がない(Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第20030224490号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】KohlerとMilsteinによる発見(Kohler G. 及び Milstein C., 1975 Nature 256: 495)
【非特許文献2】B. Alberts等、Molecular Biology of the Cell (Garland Publishing, Inc. 1994)
【非特許文献3】E. Halow等、Antibodies. A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 1988)
【非特許文献4】N. Chiorazzi等、J.Exp.Med. 156:930(1982)
【非特許文献5】C.M. Croce等、Nature 288:488(1980)
【非特許文献6】P.A. Edwards等、Eur.J.Immunol. 12:641 (1982)
【非特許文献7】R. Nowinski等、Science 210:537 (1980)
【非特許文献8】L. Olsson等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5429
【非特許文献9】J.W. Pickering等、J.Immunol. 129:406 (1982)
【非特許文献10】Kozbor D,及びRoder J., J.Immunology 1981; 127:1275
【非特許文献11】Casual O, Science 1986; 234:476
【非特許文献12】Klein等、1997 Blood 89:1288
【非特許文献13】Dessain等、2004 J.Immunol.Methods 219: 109
【非特許文献14】Tian等、2007 Mol Immunol 44: 2173
【非特許文献15】Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70
【非特許文献16】Greenfield and Bronze, 2003 Drug Discov. Today 8:881-8
【非特許文献17】Marks, 2004 Anesthesiol. Clin. North America 22:509-32
【非特許文献18】Gelzleichter等、1999 J. Appl. Toxicol. Suppl. 1:S35-8
【非特許文献19】Siegel, 1998 Immunol. Res. 17:239-51
【非特許文献20】Bell等、2000 Pharmacotherapy 20:1079-91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
BoNT曝露に対する治療用抗体治療の効力は、十分確立されている。BoNT曝露前に与えられたBoNT中和免疫グロブリン(BoNT−Ig)は、合併症を防止し又は排除することができる(Arnon等、2001 JAMA 285:1059-70; Gelzleichter等、1999 J. Appl. Toxicol. Suppl. 1:S35-8; Siegel, 1998 Immunol. Res. 17:239-51)。曝露後に与えられたBoNT−Igは、既に生じたシナプスの障害を逆行させることはできなくても、症状の進行を妨げることができる。しかしながら、現在利用可能なBoNT中和用抗体の効力は限られたものである。従って、更なるBoNT用の治療用抗体に対する要求がある。本発明は、この要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、ハイブリドーマを作成する方法を提供する。この方法は、CD27+B細胞を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で一定期間イン・ビトロで培養すること、及び培養したCD27+B細胞を融合パートナー細胞系と融合し、それによりハイブリドーマを生成することを含む。
【0019】
一具体例において、CD27+B細胞培養物におけるIL−4の濃度は、約2ng/mlである。他の具体例においては、CD27+B細胞培養物におけるIL−10の濃度は、約10ng/mlである。
【0020】
更に別の具体例において、CD27+B細胞培養物におけるCD40Lは、CD27+B細胞培養中にtCD40L細胞の表面上に提示されたCD40Lの形態で与えられる。
【0021】
一具体例において、培養されたCD27+B細胞は、異所的にmIL−6及びhTERTを発現する融合パートナー細胞系と融合されてハイブリドーマを生成する。
【0022】
他の具体例において、CD27+B細胞は、免疫化された患者から単離される。
【0023】
この発明は又、培養CD27+B細胞と融合パートナー細胞系との間の融合から生成されたハイブリドーマをも提供し、ここに、CD27+B細胞は、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で一定期間イン・ビトロで培養されてきた。
【0024】
この発明は又、培養CD27+B細胞と融合パートナー細胞系との間の融合から生成されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体をも提供し、ここに、CD27+B細胞は、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で一定期間イン・ビトロで培養されたものである。
【0025】
一具体例において、この発明は、ATCC受入れ番号PTA−8870として寄託されたハイブリドーマを提供する。
【0026】
この発明は又、モノクローナル抗体を製造する方法をも提供し、それは、CD27+B細胞を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で、一定期間イン・ビトロで融合パートナー細胞系と融合させてハイブリドーマを生成すること;モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択すること;及びそのハイブリドーマを培養してそのモノクローナル抗体を生成することを含む。
【0027】
一具体例において、この発明は、IL−4、IL−10、及びCD40Lの存在下で一定時間イン・ビトロで培養したCD27+B細胞を融合パートナー細胞系と融合してハイブリドーマを生成すること;及びモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択すること;及びそのハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を生成することにより製造される抗体を提供する。この発明は又、この抗体の抗原結合性断片をも提供する。
【0028】
一具体例において、この抗体は、ATCC受入れ番号PTA−8870として寄託されたハイブリドーマにより産生される抗体により特異的に結合されるエピトープに結合する。他の具体例において、この発明は、ハイブリドーマ6A(ATCC受入れ番号PTA−8870)から産生されるモノクローナル抗体を提供する。該ハイブリドーマにより与えられる抗体は、ここでは、「6A」として参照される。6Aは又、該ハイブリドーマを指すためにも用いられうる。
【0029】
他の具体例において、この抗体は、ATCC受入れ番号PTA−8870、又は該抗体の抗原結合性断片から得ることができる。
【0030】
この発明は又、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含む抗体重鎖可変ドメインを含む抗体重鎖ポリペプチドを含み;且つアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインを含む抗体軽鎖ポリペプチドを含む抗体;又は該抗体の抗原結合性断片をも提供する。
【0031】
一具体例において、この抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む重鎖ポリペプチドを含み;且つアミノ酸配列6を含む軽鎖ポリペプチドを含み;又は該抗体の抗原結合性断片を含む。
【0032】
更に別の具体例において、この発明は、一本鎖Fv(scFv)断片、Fab 断片、(Fab')2断片、及び(scFv')2断片を含む抗体断片を提供するが、これらに限られない。scFvは、作られている。配列情報は、提供される。
【0033】
この発明は又、BoNT/Aを中和する必要のある患者において該中和をする方法をも提供し、それは、該患者に、治療上有効な量の抗体又は抗原結合性断片を投与することを含む。
【0034】
この発明は又、単離された核酸分子をも提供し、該核酸分子は、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む抗体重鎖ポリペプチド又はアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含む抗体軽鎖ポリペプチドの少なくとも一方をコードする。
【0035】
一具体例において、単離された核酸分子は、抗体重鎖ポリペプチドをコードする第一の核酸断片及び抗体軽鎖ポリペプチドをコードする第二の核酸断片を含む。他の具体例において、第一の核酸断片は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を含み、且つ第二の核酸断片は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:5を含む。
【0036】
他の具体例において、単離された核酸分子は、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含む抗体重鎖可変ドメイン及びアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも一つをコードする。
【0037】
他の具体例において、単離された核酸分子は、抗体重鎖可変ドメインをコードする第一の核酸断片及び抗体軽鎖可変ドメインをコードする第二の核酸断片を含む。更に別の具体例においては、第一の核酸断片は、ヌクレオチド配列3を含み、第二の核酸断片は、ヌクレオチド配列7を含む。
【0038】
略号及び短型
下記の略号及び短型を、この明細書において使用する。
「CD40L」は、CD40リガンドを意味する。
「BoNT/A」は、ボツリヌス神経毒血清型Aを意味する。
「ELISA」は、酵素結合免疫収着検定法を意味する。
「GC」は、胚中心を意味する。
「huMAb」は、ヒトモノクローナル抗体を意味する。
「Ig」は、免疫グロブリンを意味する。
「IgH」は、免疫グロブリン重鎖を意味する。
「IgL」は、免疫グロブリン軽鎖を意味する。
「MAb」は、モノクローナル抗体を意味する。
「PCR」は、ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
「RT−PCR」は、逆転写PCRを意味する。
「scFv」は、一本鎖可変断片を意味する。
「IL」は、インターロイキンを意味する。
「hTERT」は、ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットを意味する。
【0039】
定義
この出願で用いられる定義は、説明目的のためであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0040】
ここで用いられる単数形は、単数又は複数をも指す。例えば、「エレメント」は、一つのエレメント又は二以上のエレメントをも意味する。
【0041】
「抗原」は、任意の抗原、例えばタンパク質(又は免疫原性断片)、ペプチド又はペプチド結合体、免疫原、ワクチン、又は多糖類(免疫応答を誘出するもの)である。例えば、免疫原性ボツリヌス毒素分子は、完全長のボツリヌス毒素又はその免疫原性断片を含むことができる。ボツリヌスワクチンも又、動物において免疫応答を誘出するために利用することができる。
【0042】
用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と交換可能に用いられ、遊離のアミノ酸及びペプチドのアミノ酸残基を指すことができる。それが遊離のアミノ酸を指すのかペプチドの残基を指すのかは、用語が使われているコンテキストから明らかであろう。
【0043】
用語「抗体」は、ここで用いられる場合、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子を指す。構造的に、抗体は、4つのポリペプチド鎖を含み、その2つは、重(H)鎖であり、2つは軽(L)鎖であって、これらは、ジスルフィド結合で結合されている。この用語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、ハイブリッド抗体、そしてヒト化抗体をも包含する。
【0044】
ここで用いる場合、任意の抗体につき「抗原結合性断片」は、Fab、F(ab')2、Fv断片及び一本鎖可変断片(scFv)などの抗体の断片である(これらは、エピトープ決定基に結合することができる)。抗体断片は、少なくとも約5〜15アミノ酸長以上であって幾らかの生物学的活性又は免疫グロブリンの免疫学的活性を保持している抗原結合性免疫グロブリンペプチドを指すことができる。用語「抗原結合性断片」に含まれる抗原結合性断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインよりなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインよりなるFd断片;(iii)抗体の単一アームのVL及びVHドメインよりなるFv断片;(iv)VHドメインよりなるdAb断片(Ward等、(1989) Nature 341:544-546);(v)単離された相補性決定領域(CDR);及び(vi)ヒンジ領域でジスルフィド橋により結合された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片を含むがこれらに限られない。その上、Fv断片の2つのドメインが、一般に、別々の遺伝子によってコードされていても、合成リンカーが、それらを、組換え法によって、単一タンパク質鎖として作成すること可能にする(公知の一本鎖Fv(scFv);Bird等、(1988) Science 242:423-426; 及びHuston等、(1988) PNAS 85:5879-5883)。かかる一本鎖抗体は又、用語「抗原結合性断片」にも包含される。好適な抗体断片は、それらの標的抗原を架橋することのできるもの例えば二価断片例えばF(ab')2断片である。或は、それ自身その標的抗原を架橋しない抗体断片(例えば、Fab断片)を、該抗体断片を架橋するのに役立つ二次抗体と共に利用することができ、それにより標的抗原を架橋することができる。
【0045】
「抗体重鎖」は、ここで用いる場合、すべての抗体分子中にそれらの天然のコンホメーションにて存在する一層大きい2つの型のポリペプチド鎖を指す。
【0046】
「抗体軽鎖」は、ここで用いる場合、天然のコンホメーションにおいて、全抗体分子中に存在するポリペプチド鎖の一層小さな型を指す。
【0047】
ここで用いる場合、用語「モノクローナル抗体」は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す抗体を含む。これらの抗体は、マウス、ヒト及びヒト化抗体を含む哺乳動物由来の抗体である。用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ここで用いる場合、単一結合特異性を示す抗体であって、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を指す。
【0048】
「生物学的に活性な」は、ここで、ボツリヌス神経毒素の中和抗体、断片、誘導体、同族体、及び類似体に関して用いる場合、それらの抗体、断片、誘導体、同族体又は類似体がここに記載のボツリヌス神経毒素(例えば、BoNT/A)を中和する能力を有することを意味している。
【0049】
ここで用いる場合、「クラススイッチング」又は「イソ型スイッチング」は、Ig産生細胞の表現型の変化を意味する。Igクラススイッチングは、抗体応答の多様化された生物学的エフェクター機能の生成において決定的に重要なステップである。例えば、B細胞は、最初、主としてIgMを産生し、表現型のIgG、IgE又はIgAの産生への変化は、「イソ型スイッチ」又は「クラススイッチ」である。クラススイッチングは、ここで用いる場合、次の2つのステップを含む:第一のステップは、ゲノムの免疫グロブリンDNAを適合させるためのブリッジングテンプレートとして作用するトランススプライシングされた転写物の準備であり、第二のステップは、スイッチ組換えであり、これは、異なるIg(抗体)の産生を可能にするスイッチサークルの生成及びゲノムIgDNAの再配列を生じる。特に、Igクラススイッチングは、2つのIgHスイッチ(S)領域間の、クラススイッチ組換え(CSR)として公知の過程である非相同組換えによるDNAの組換えを含む。この過程は、上流のIg遺伝子座のS領域の、下流標的S領域への再配列へと導き、下流のイソ型の発現を生じる。この介在DNAは、ループアウトして、スイッチサーキュラーDNAとして切り取られる。
【0050】
ここで用いる場合、ボツリヌス神経毒素中和抗体の「有効量」又は「治療上有効な量」BoNT/A毒素を中和する(軽減する又は排除する)のに十分な量である(例えば、BoNT/A中毒(ボツリヌス中毒)の症状を減じ又は排除する)。
【0051】
用語「発現」は、ボツリヌス神経毒素中和抗体mRNAに関して用いる場合、ボツリヌス神経毒素中和用重鎖又は軽鎖の核酸配列の発現(ボツリヌス神経毒素中和用抗体のmRNAの合成を生じる)を指す。「発現」は、ボツリヌス神経毒素中和用抗体に関して用いる場合、ボツリヌス神経毒素中和用抗体のmRNAの転写(ボツリヌス神経毒素中和用抗体の合成を生じる)を指す。
【0052】
ここで用いる場合、用語「断片」又は「セグメント」は、核酸に用いる場合、一層大きい核酸の部分配列(subsequence)を指す。核酸の「断片」又は「セグメント」は、少なくとも約20ヌクレオチド長であってよく;例えば、少なくとも約50〜100ヌクレオチドであってよく;好ましくは、少なくとも約100〜500ヌクレオチドであってよく、一層好ましくは少なくとも約500〜1000ヌクレオチドであってよく、尚一層好ましくは、少なくとも約1000〜1500ヌクレオチドであってよく;特に好ましくは、少なくとも約1500〜2500ヌクレオチドであってよく;最も好ましくは、少なくとも約2500ヌクレオチドであってよい。
【0053】
ここで用いる場合、用語「断片」又は「セグメント」は、タンパク質又はペプチドに用いる場合、一層大きいタンパク質又はペプチドの部分配列を指す。たんぱく質又はペプチドの「断片」又は「セグメント」は、少なくとも約20アミノ酸長であってよく;例えば、少なくとも約50アミノ酸長;一層好ましくは少なくとも約100アミノ酸長、尚一層好ましくは少なくとも約200アミノ酸長、特に好ましくは、少なくとも約300アミノ酸長であってよく、最も好ましくは、少なくとも約400アミノ酸長であってよい。
【0054】
ここで用いる場合、用語「遺伝子」は、細胞内で、単独で又は他のエレメントとの組合せにおいて発現されうるエレメント又はエレメントの組合せを指す。一般に、遺伝子は、(5’側から3’末端側へ向かって)次を含む:(1)原核細胞、ウイルス、又は真核細胞(トランスジェニック動物を含む)などの何れの細胞でも機能しうる5’側の非翻訳リーダー配列を含むプロモーター領域;(2)所望のタンパク質をコードする構造遺伝子又はポリヌクレオチド配列;及び(3)典型的には、転写の終結及びRNA配列の3’領域のポリアデニル化を引き起こす3’非翻訳領域。これらのエレメントの各々は、隣接するエレメントに配列結合により操作可能に結合される。上記のエレメントを含む遺伝子は、標準的な組み換えDNA方法によって植物発現用ベクターに挿入される。
【0055】
ここで用いる場合、「遺伝子産物」は、遺伝子の転写、逆転写、重合、翻訳、翻訳及び/又は発現後の過程で生成された任意の産物を包含する。遺伝子産物は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド断片、又はポリヌクレオチド分子を包含するがこれらに限られない。
【0056】
ここで用いる場合、「相同性」は、「同一性」と同義に用いられる。
用語「ハイブリドーマ」は、ここで用いる場合、Bリンパ球と融合パートナー例えばミエローマ細胞との融合から生じる細胞を指す。ハイブリドーマをクローン化して、細胞培養にて無限に維持することができ、モノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマは又、雑種細胞であると考えることもできる。
【0057】
用語「阻害する」は、ここで用いる場合、活性又は機能を、対照値と比較して少なくとも約10パーセント抑制し又はブロックすることを意味する。好ましくは、この活性は、対照値と比較して50%、一層好ましくは75%、尚一層好ましくは95%抑制され又はブロックされる。
【0058】
「単離された」は、ヒトの活動によって、自然状態から変えられ又は除去されたことを意味する。例えば、生きている動物中に自然に存在する核酸又はペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態で共存する物質と部分的に又は完全に分離された同核酸又はペプチドは、「単離されている」。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に純粋な形態で存在することができ、又は非天然環境例えば宿主細胞中に存在しうる。
【0059】
「単離された」細胞は、組織の他の細胞成分から精製された細胞である。細胞を、機械的及び/又は酵素的方法によって単離することができる。幾つかの具体例において、単離された細胞集団は、約80%、約85%、約90%、約95%より多くの、又は約99%より多い関心ある細胞を含む。他の具体例においては、単離された細胞集団においては、異なる表現型の他の細胞を検出することができない。更なる具体例においては、単離された細胞集団は、約20%、約15%、約10%、約5%未満の、又は約1%未満の、関心ある細胞以外の他の表現型の細胞を含む細胞集団である。
【0060】
ここで用いる場合、用語「ライブラリー」は、ハイブリドーマ細胞のポリクローナル集団又はそれらの細胞により分泌される抗体を指す。ライブラリーは、特異的特性を有するライブラリーのメンバー(細胞又は抗体)を同定するためにスクリーニングすることのできる形態で存在する。
【0061】
用語「培地」、「細胞培養培地」及び「培養培地」は、交換可能に用いられる。これらの用語は、真核細胞又は原核細胞が培養にて成長する水性環境を指す。この培地は、化学的、栄養的、及びホルモン的環境を含む。この細胞培養培地は、本質的に、如何なる哺乳動物起源の血清(例えば、ウシ胎児、ウマ、ヒト、ウサギ)をも含まない場合、「無血清」である。「本質的に含まない」とは、細胞培養培地が、約0〜5%の血清を、好ましくは、約0〜1%の血清を、そして最も好ましくは約0〜0.1%の血清を含むことを意味する。
【0062】
「突然変異」は、ここで用いる場合、核酸又はポリペプチド配列の、参照配列(好ましくは、天然の正常の即ち「野生型」配列)と比較しての変化を指し、転座、欠失、挿入、及び置換/点突然変異を含む。「突然変異体」は、ここでは、突然変異を含む核酸又はタンパク質の何れかを指す。
【0063】
「中和する」は、ここで用いる場合は、ボツリヌス神経毒素の生物学的作用を阻害することを意味する。好ましくは、「中和する」は、ボツリヌス神経毒素に関してここで用いる場合、患者におけるボツリヌス神経毒素への曝露の進行を減じ若しくは阻害すること又はボツリヌス毒素への曝露の危険にある患者における進行を減じ若しくは防止することを意味する。この発明の好適な抗体は、ボツリヌス神経毒素の毒性を中和する(減じ又は排除する)ように作用する。
【0064】
「核酸」は、ポリヌクレオチドを指し、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドを包含する。
【0065】
用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には、約50ヌクレオチド長以下の短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNAの配列(例えば、A、T、G及びC)により表される場合、これは、対応するRNA配列(例えば、a、u、g、c)をも包含する(そこでは、「u」が「T」に置き換わる)ということは理解されよう。
【0066】
ここで用いられる場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、交換可能に用いられ、ペプチド結合により共有結合されたアミノ酸残基よりなる化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、タンパク質又はペプチド配列を与えることのできるアミノ酸の最大数には制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合により互いに結合した2以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。ここで用いる場合、この用語は、一般に当分野で例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短い鎖と、一般に当分野でタンパク質と呼ばれる多くの種類のある長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」は、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。これらのポリペプチドは、天然のペプチド、組換えのペプチド、合成のペプチド、又はこれらの組合せを含む。
【0067】
ここで用いる場合、「ポリヌクレオチド」は、cDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスRNA、リボザイム、ゲノムDNA、合成型、及び混合されたポリマー、センス鎖とアンチセンス鎖の両方を含み、そして、非天然の又は誘導体化された、合成の、又は半合成のヌクレオチド塩基を含むように、化学的又は生化学的に改変することができる。一つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、置換、又は他のポリヌクレオチド配列への融合を含む(これらに限られない)野生型又は合成遺伝子の変化も又、この発明の範囲内に含まれる(但し、遺伝子の一次配列におけるかかる変化は、発現されるペプチドの受動免疫を誘出する能力を変えないものとする)。
【0068】
「製薬上許容しうる」は、ヒトへの適用又は獣医学的適用のために、生理学的に許容しうることを意味する。
【0069】
ここで用いる場合、「医薬組成物」は、ヒト及び獣医学的使用のための配合物を包含する。
【0070】
「防止用」又は「予防的」処置は、ボツリヌス神経毒素への曝露又はC.ボツリナムの感染の症状を示さないか、又は初期症状しか示さない患者に施与される処置である。予防又は防止的処置は、ボツリヌス神経毒素への曝露又波C.ボツリナムの感染に関係する病理の発生の危険を減らす目的のために施与される。
【0071】
「ボツリヌス神経毒素又はC.ボツリナム関連疾患」は、ここで用いる場合、ボツリヌス神経毒素への曝露又はC.ボツリナムの感染の存在と臨床的症状との間に関連がある疾患を指す。
【0072】
「ボツリヌス神経毒素の中和」は、抗体と関連してここで用いる場合、ボツリヌス神経毒素への曝露又はC.ボツリナムの感染が動物において誘出する疾病/疾患が示す程度を減じる能力を示す抗体又は抗体混合物を指す。「ボツリヌス神経毒素の中和」は、「C.ボツリヌス中和活性」と交換可能に用いられる。
【0073】
「試料」は、ここで用いる場合、正常組織試料、血液、唾液、糞便又は尿を含む、患者からの生物学的試料を指す。試料は又、関心ある化合物又は細胞を含む患者から得られる材料の任意の他の起源を含むこともできる。
【0074】
ここで用いる場合、ボツリヌス神経毒素に結合する抗体に関して、抗体が「特異的に結合する」は、その抗体が、ボツリヌス神経毒素ポリペプチド又はその断片に結合するが、ボツリヌス神経毒素ポリペプチド以外には結合しないことを意味する。ボツリヌス神経毒素又はその断片に特異的に結合する抗体は、ボツリヌス神経毒素のファミリー以外の抗原とは交差反応しない。
【0075】
「患者」は、ここで用いる場合、ヒトであっても、非ヒト動物であってもよい。非ヒト動物には、例えば、家畜、ペット、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ及びマウス並びに爬虫類、鳥類及び魚類が含まれる。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0076】
「実質的に精製された」は、元々存在していた他の化合物(例えば、他のペプチド、核酸、炭水化物、脂質)又は他の細胞の除去のために、特性において実質的に均質なペプチド又は核酸配列を指す。「実質的に精製された」は、他の化合物との人工的又は合成の混合物、又は生物学的活性を邪魔しない不純物及び例えば不完全な精製、安定剤の添加、又は製薬上許容しうる調製物への配合のために存在しうる不純物の存在を排除することを意味しない。
【0077】
「合成の変異体」は、何らかの意図的に生成された変異体タンパク質又は核酸を含む。かかる変異体は、例えば、例えば、当業者に周知の化学的突然変異導入、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアプローチ、又は、プライマーベースの突然変異導入ストラテジーによって生成することができる。
【0078】
用語「処置する」又は「処置」は、ここで用いる場合、ボツリヌス神経毒素への曝露又はC.ボツリナムの感染の影響又は症状が経験される頻度を減じ、又は防止するためにボツリヌス神経毒素中和用抗体又は化合物を投与することを指す。
【0079】
用語「ワクチン」は、ここで用いる場合、哺乳動物に投与して免疫応答を刺激するために用いられる物質として規定される。例えば、ボツリヌス神経毒素ワクチンは、ボツリヌス神経毒素に由来する分子を含み、それは、哺乳動物に投与された場合に、その哺乳動物において免疫応答を誘出する。
【0080】
「変異体」は、ここで用いる用語としては、配列が、参照用核酸配列又はペプチド配列とそれぞれ異なるが、参照用配列分子の本質的特性を保持している核酸配列又はペプチド配列である。核酸変異体の配列の変化は、参照用核酸配列によりコードされるペプチドのアミノ酸配列を変えないかもしれないし、又はアミノ酸の置換、付加、融合及び切り詰めを生じるかもしれない。ペプチド変異体の配列の変化は、典型的に、限定的であり又は保存的であり、それで、参照用ペプチドと変異体の配列は、全体的に密接に類似しており、多くの領域で同一である。変異体と参照用ペプチドは、アミノ酸配列が、一つ以上の置換、付加、欠失の任意の組合せによって異なってよい。核酸及びペプチドの変異体は、アレル変異体のような天然のものであっても、天然には知られていないものであってもよい。天然でない核酸及びペプチドの変異体は、突然変異誘発技術により作成することができ、又は調節的合成により作成することができる。
【0081】
ここで用いる場合、用語「保存的変異」又は「保存的置換」は、アミノ酸残基の、別の生物学的に類似の残基による置換を指す。保存的変異又は置換は、ペプチド鎖の形状を変えることはありそうにない。保存的変異又は置換の例は、一つの疎水性残基例えばイソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンでの他のものの置き換え、又は一つの極性残基での他のものの置き換え、例えば、アルギニンでのリジンの置き換え、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置き換え、又はグルタミンでのアスパラギンの置き換えなどを含む。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】種々のハイブリドーマプールから分泌されたヒト免疫グロブリンのIgG及びIgMプロフィルを示すグラフを示した図である。これらの種々のハイブリドーマプールは、3つの異なるBリンパ球集団から生成された。細胞融合に使用されるヒトPBMCは、1)ヨウシュヤマゴボウミトゲン(PWM)での処理、2)IL−4、IL−10及びシクロスポリンの存在下でのtCD40Lの単層上での培養、又は3)CD27の発現についての予備選択とその後のIL−4、IL−10及びシクロスポリンの存在下でのtCD40Lの単層上での培養により調製された。融合及びHAT選択後に、各ハイブリドーマプールの上清をELISAによりIgM及びIgG免疫グロブリンの発現につき試験した。各ハイブリドーマプールにつき示された吸光度値は、490nmで試験され、ELISA用の陽性血清対照に対して規格化された。
【図2】抗体6AのBoNT/AのC末端の50kDドメインへの結合を示すグラフを示した図である。
【図3】クローン化したヒト抗体のCDR3領域の変異状態をまとめた一覧表を示した図である。これらの結果は、大部分の抗体が、0.6〜12.9%の変異率で体細胞突然変異を受けていることを示している。
【図4】6A抗体の、イン・ビボでBoNT/Aを中和する能力をまとめた一覧表を示した図である。各抗体(1A、6A、15A及び31A)は、次の3通りのスケジュールの内の一つにて投与された:BoNT/Aと1時間予備インキュベートした後に注射(混合);毒素の60分前に注射(前);又は毒素の15分後に注射(後)。負の対照は、培養培地(RPMI)のみを含み及びイソ型対照IgG(Ctrl)を含んだ。6Aは、BoNT/Aを、3つすべてのシナリオにおいてイン・ビボで中和することができた。
【図5】図5A〜5Cを含む、ボツリヌス神経毒素6A抗体の重鎖及び軽鎖ドメインのアミノ酸及び核酸配列を描いた図表である。
【0083】
発明の詳細な説明
本発明は、親和性の成熟した、抗原特異的なヒトIgG抗体を発現する安定なハイブリドーマのライブラリーを生成するために末梢血B細胞を利用するための新規な細胞選択及びイン・ビトロ培養ストラテジーを提供する。こうして、この発明は、ハイブリドーマライブラリーを生成するためのIgG抗体を分泌するB細胞富化集団を提供する。この方法は、ハイブリドーマライブラリーの生成のための融合パートナーとの融合前に、CD27+B細胞を好ましくはIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養することを含む。
【0084】
この発明の方法は、CD27+B細胞の利用を含むので、IgM分泌性ハイブリドーマのバックグラウンドを低減させる。CD27は、体細胞超変異とクラススイッチングを受けたポスト胚中心細胞のマーカーである。CD27+B細胞のIL−4、IL−10及びCD40Lでの処理は、IgM+IgD+CD27+B細胞間のクラススイッチを更に含む。それ故、IL−4、IL−10及びCD40Lで処理したCD27+B細胞は、IgG抗体を分泌する細胞が富化されたB細胞集団を与える。IL−4、IL−10及びCD40Lで処理されたCD27+B細胞の融合パートナーとの融合は、IgG抗体を増大した頻度で分泌するハイブリドーマの生成を生じる。
【0085】
ハイブリドーマライブラリーは又、IL−4、IL−10及びCD40Lで処理されたCD27+B細胞と融合パートナーとの融合からも生成され与えられる。これらのライブラリーは、公知の従来技術のヒト抗体ハイブリドーマライブラリーと比較して、IgG抗体を分泌する細胞の一層大きなパーセンテージを与える。これらのライブラリーは又、部分的に、CD27+B細胞のIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下での培養がIgM+IgD+CD27+B細胞におけるクラススイッチを誘導するために、IgM抗体と比べてIgG抗体が富化されている。これらのライブラリーは、胚中心後IgM抗体からの抗体可変ドメインのクローニングを一層有用なIgGイソ型において容易にするイン・ビトロクラススイッチステップの故に、従来技術と比べて有利である。本発明のライブラリーは、従来技術のライブラリーと異なっており、それは、細胞培養及び融合前にIgM抗体を発現していたB細胞起源のIgG抗体を発現し、それ故、IgG発現性B細胞についてのみ選択する選択ステップにより失われるので、融合前にIgG抗体の発現につき選択されたB細胞から作られる。
【0086】
この発明は、本質的にポスト胚中心細胞に由来する細胞よりなるハイブリドーマのライブラリーを創出する方法を提供する。これは、従来技術の方法を超える重要な技術的進歩である。何故なら、それは、胚中心前細胞抗体を発現するハイブリドーマのバックグラウンドを低減させることにより抗原特異的ハイブリドーマのクローニングを簡素化するからである。従来技術のハイブリドーマライブラリーは、典型的には、約15%のハイブリドーマを含んでおり、それらは、胚中心後細胞抗体を分泌する。何故なら、ポスト胚中心細胞集団の約15%しか、全末梢血中に存在しないからである。少なくともIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養されたCD27+B細胞を用いて造られたこれらのライブラリーは、IgG抗体についてIgM抗体よりも富化されている。何故なら、この発明の培養条件は、IgM+IgD+CD27+B細胞においてクラススイッチを誘導するのに役立つからであり、CD27選択ステップは、低親和性の、突然変異してない(天然の)IgM抗体を発現するIgM+IgD+CD27−細胞のライブラリー中への取り込みを防止するからである。これは、IgG抗原特異的抗体の収率の増大として、ハイブリドーマ技術における進歩である。
【0087】
ポスト胚中心細胞
CD27は、ポストGCB細胞のマーカーである。「CD27+」であり又は「CD27を発現する」細胞は、ここでは、CD27−であるか又は検出可能なレベルのCD27を発現しない細胞と対比される。本発明は、CD27+B細胞を分離して拡大させる方法及びキットを包含する。用語「富化された」は、ここで用いる場合、CD27+表現型のB細胞に関して富化されてない試料よりも少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、一層好ましくは少なくとも40%、尚一層好ましくは少なくとも50%、尚一層好ましくは少なくとも60%、尚一層好ましくは少なくとも70%、尚一層好ましくは少なくとも80%、尚一層好ましくは少なくとも90%、尚一層好ましくは100%多いことを指す。CD27+B細胞は、免疫化した動物、好ましくはヒトの末梢血から分離することができる。
【0088】
CD27+B細胞は、末梢血から、当分野で公知の任意の方法によって分離することができる。例えば、抗CD27抗体は、CD27+B細胞を末梢血試料から単離するために利用することができる。この方法は、CD27を表面に発現するB細胞を含むと考えられる細胞集団を抗CD27抗体と接触させること、及びその後、CD27+細胞−抗体複合体を末梢血単核細胞の集団から分離することを含む。
【0089】
抗CD27抗体は、固体支持体に結合させて、分離を可能にすることができる。分離の手順は、抗体を被覆させた磁性ビーズ又はダイナビーズを利用した磁力による分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合させた又はモノクローナル抗体と共に用いる細胞障害性薬剤、例えば補体と細胞毒素、及び固体マトリクス例えばプレートに結合させた抗体を用いる「パニング」、又は他の慣用技術を含むことができる。正確な細胞分離を与える技術は、蛍光活性化セルソーター(精巧度を変えることができる、例えば、複数の色彩チャンネル、低角及び鈍角の光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルなど)、並びに磁気活性化セルソーターを含む。
【0090】
用いる分離技術は、採集すべき細胞画分の生存力の保持を最大化すべきである。用いる特定の技術は、当然、その方法の分離の効率、細胞障害性、分離の容易さ及び速度、並びに如何なる装置及び/又は技能が必要とされるかに依存する。
【0091】
抗体が結合した細胞は、細胞懸濁液から、単に固体支持体を細胞懸濁液から物理的に分離することによって取り出すことができる。これらの固相結合した抗体を有する細胞のインキュベーションの正確な条件及び持続時間は、用いるシステムに固有の種々の因子に依存する。しかしながら、適当な条件の選択は、十分に、当業者の技能の内にある。
【0092】
抗CD27抗体は、ビオチンと結合させ(それを、次いで、支持体に結合させたアビジン又はストレプトアビジンを用いて取り出すことができる)、又は蛍光色素と結合させ、蛍光活性化セルソーター(FACS)による細胞分離を可能にするために用いることができる。例えば、CD27を発現する細胞は、CD27の細胞表面発現によって他の細胞から分離される。都合のよいことに、抗CD27抗体は、磁気ビーズ(直接的分離を可能にする)、ビオチン(支持体に結合させたアビジン又はストレプトアビジンにより取り出すことができる)、FITCなどの蛍光色素(蛍光活性化セルソーターなどによる特定の細胞型の分離を容易にするために利用することができる)などのマーカーと結合させることができる。ここで論じている、残存細胞の生存に過度に有害でない任意の細胞分離技術を用いることができる。他の細胞分離技術は、密度遠心分離用の高密度粒子、吸着カラム、吸着膜などを含むが、これらに限られない。
【0093】
抗CD27抗体を磁気ビーズに結合させる場合には、末梢血由来単核細胞の集団を、磁気ビーズ抗体結合体と、抗体結合体がGC後細胞の表面に提示されたCD27抗原に結合するのに適した条件下で接触させる。結合に適した条件例えば4℃で20分間(但し、これに限られない)の下でのインキュベーション後に、CD27抗原について陽性のB細胞の集団を、全試料を磁気ビーズ分離装置を通過させることにより選択する。装置からの遊離溶液の排出又は溶出に際して、磁気的に保持されたマーカー含有細胞のみが残る。これらのCD27+B細胞を、次いで、装置から溶出させて、CD27+B細胞の富化され、単離され又は精製された集団を生じる。
【0094】
CD27+B細胞を使用することの、標準的な富化させてないヒトの脾臓単核細胞集団又はPBMC集団をも超える利点は、培養されたCD27+B細胞は、体細胞超変異を経験しているので、成熟した親和性の抗体を発現することである。ハイブリドーマライブラリーを生成するために用いられた融合実験からCD27−B細胞集団を除くことは、診断試薬又は治療剤としての潜在的可能性の低い変異してないIgM抗体を発現するハイブリドーマ細胞のバックグラウンドを減じる。これは、有用な抗体を発現するハイブリドーマが、モノクローナル細胞として同定されて拡大される見込みを改善する。
【0095】
培養
CD27+B細胞は、標準的培養手順に従って培養することができる。例えば、それらの分離後、CD27+B細胞を、一定期間にわたって又は集密に達するまで培養装置内の細胞培地中でインキュベートしてから、他の培養装置を通す。この培養装置は、イン・ビトロでの細胞培養に普通に用いられる任意の培養装置であってよい。好ましくは、集密レベルは、他の培養装置を通す前に、70%を超えている。一層好ましくは、集密レベルは、90%を超える。インキュベーション時間は、イン・ビトロでの細胞培養に適した任意の時間である。CD27+B細胞の培地は、CD27+B細胞の培養中、任意の時点で交換することができる。好ましくは、CD27+B細胞の培地は、3〜4日ごとに交換する。次いで、CD27+B細胞を、培養装置から採取し、そこで、それらのCD27+B細胞は、直ちに使用することもできるし、後で使用するために低温貯蔵することもできる。
【0096】
「細胞培養」は、一般に、生きている生物体から取り出して制御された条件下で成育されている細胞を指す。細胞は、成長培地中に、細胞成長及び/又は分裂を促進する条件下で置かれたときに、培養において拡大されて、一層大きい細胞集団を生じる。細胞を培養で拡大する場合に、細胞増殖の速度は、典型的には、細胞数が2倍になるのに要する時間(「倍化時間」として公知)によって測定される。
【0097】
ハイブリドーマ生成のための融合パートナーとの融合のための準備において、CD27+B細胞を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養する。培養培地におけるIL−4、IL−10及びCD40Lの組合せは、CD27+B細胞が、イソ型スイッチング又はクラススイッチングを受けることを可能にする。例えば、IgD+IgM+CD27+B細胞は、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養した場合に、IgGへのイソ型スイッチングを受けるように誘導することができる。IgD+IgM+CD27+B細胞をIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下でインキュベートした場合、これらの細胞は、イン・ビボで起きる正常なGC B細胞成熟(IgGへのクラススイッチを生じる体細胞超変異及び親和性選択など)の特徴を再現する分化プログラムを受ける。
【0098】
IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養されたCD27+B細胞は、融合パートナーと融合して、ヒトB細胞ハイブリドーマを生成することができる。処理したCD27+B細胞をハイブリドーマの生成において使用する利点は、ハイブリドーマライブラリー中の一層高いパーセンテージの細胞がIgG抗体を分泌することである。
【0099】
この発明の方法で使用するCD40Lは、自然にCD40Lを発現する細胞から単離することができ、又はCD40Lを発現するように変えられた細胞から精製することもできる。可溶性のCD40Lは、CD27+B細胞と培養するために培養培地に加えることができる。或は、CD27+B細胞は、フィーダー層上で培養することができ、フィーダー細胞は、CD40Lを分泌し又はCD40Lをそれらの細胞表面に発現する。好ましくは、これらのCD27+B細胞は、tCD40L細胞と培養される。CD40刺激活性は又、CD40に結合し及びCD40Lに類似した刺激能を有するペプチド又は抗体分子の形態で与えることもできる。このペプチド又は抗体分子は、溶液で提供することもできるし又はフィーダー細胞層(例えば、抗体分子に結合するタンパク質を発現する細胞、例えばFcガンマRII/CDw32レセプタータンパク質を発現する細胞)に結合させることもできる。
【0100】
この発明の方法において有用なサイトカイン(例えば、IL−4及びIL−10)は、当分野で公知の任意の方法によって得ることができる。IL−4及びIL−10の起源は、記載されており、それらの分子をコードするDNA配列も又、公知である。それ故、天然又は組換え体のIL−4及びIL−10をCD27+B細胞の培養に使用することができる。培地に補足されるIL−4の量は、0.1ng/mlから0.2μg/ml(及び間の任意の整数値)に及んでよい。好ましくは、2ng/mlのIL−4を培地に補足する。培地に補足するIL−10の量は、0.5ng/mlから1.0μg/ml(及び間の任意の整数値)に及んでよい。好ましくは、10ng/mlのIL−4を培地に補足する。
【0101】
特異的な抗原に特異的な抗体を産生するB細胞のパーセンテージは、細胞培地に、B細胞の起源である宿主を免疫化するのに用いられる抗原を加えることによって増大させることができる。IL−4、IL−10、CD40L、及び抗原の組合せは、IgM+IgD+CD27+B細胞のIgGへのイン・ビトロでのクラススイッチングを抗原特異的様式で更に誘導するのに役立つ。この抗原は、哺乳動物宿主に投与されたときに抗体応答を刺激することが示された又は示されうる化合物であってよい。この抗原は、IL−4、IL−10及びCD40Lを培養培地に加える前に、同時に、又は後で、培養培地に加えることができる。更に、当業者は、抗原の抗原性を増大させるために並びに抗原が培養細胞に接触することを確実にするために更なる手順を採用することもできる。かかる手順は、抗原をキャリアーと結合させて溶解度又は抗原性を増大させることを含む。
【0102】
この発明の方法によりCD27+B細胞を培養した後、それらのCD27+B細胞を融合パートナーと融合させて、ハイブリドーマのライブラリーを生成することができる。
【0103】
ハイブリドーマ技術
この発明の方法により調製したCD27+B細胞を、任意の融合パートナーと融合させて、ハイブリドーマを生成することができる。好適な融合パートナー細胞系は、hTERT及びmIL−6を異所的に発現するものである。好ましくは、レトロウイルス発現系を用いて、mIL−6及びhTERTを融合パートナー細胞系において発現させる。好適な融合パートナー細胞系は、B5−6T細胞系であり、これは、ブダペスト条約の条項の下で、American Type Culture Collection (米国、バージニア、Manassas, 20110-2209在) に2008年1月15日に寄託されて、ATCC受入れ番号PTA−8869を割り当てられている。他の融合パートナー細胞系例えばSP2/mIL−6MPT細胞系、やはり異所的にmIL−6及びhTERTを発現するマウス細胞系も又、用いることができる。
【0104】
一般に、これらのCD27+B細胞は、融合パートナーと融合されて、40〜50%の分子量1000〜4000のポリエチレングリコールで、37℃で約5〜10分間処理されて、融合物を与える。或は、細胞融合は、電気的細胞融合の標準的方法によって誘導することができる。該融合では、電荷を利用して、細胞の原形質膜の融合を引き起こす。細胞融合後に、発生期の雑種細胞が、融合混合物から分離されて、所望の雑種のための選択用培地にて増殖する。この雑種細胞が8−アザグアニンに耐性であるならば、その細胞は、HAT又はAH培地における連続的継代により有利に選択される。融合に用いる細胞の性質によっては、他の選択手順を利用することができる。所望の結合特異性を有する抗体を分泌するクローンは、培養培地に分泌される抗体を、ボツリヌス神経毒素ポリペプチド又はそのエピトープに結合する能力につきアッセイすることにより同定される。この所望の特異性を有する抗体産生細胞は、限界希釈技術によりサブクローン化されて、培養培地中でイン・ビトロで生育され、又は選択された宿主動物に注射されてイン・ビボで生育される。
【0105】
B5−6T融合パートナー細胞系は、hTERTを安定に発現する。それは、更に、
CD27+B細胞と融合して高い効率でハイブリドーマを生成することができるという点において特徴付けられる。B5−6T融合パートナー細胞系を利用する利点は、B5−6T融合パートナー細胞系が、ハイブリドーマの生成を増大した頻度で与えることである。B5−6T融合パートナー細胞系の特徴は、Bリンパ球と融合して、HAT選択で生存することのできるハイブリドーマを高い効率で生成する細胞系についての能力である。
【0106】
このB5−6T融合パートナー細胞系は、安定なハイブリドーマ(即ち、特定の抗体を産生する能力を長期間にわたって例えばイン・ビトロ培養の少なくとも3ラウンドにわたって維持するハイブリドーマ)を産生する能力を有している。B5−6T融合パートナー細胞系を利用して生成されたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞系は、抗体をグラムの量以上で産生するのに十分な細胞数が得られるまで、多くの継代のためにサブクローン化してサブ培養することができる。
【0107】
抗体
一具体例において、この発明は、ヒトの抗BoNT/A結合性抗体に向けられている。この抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメインを含む重鎖ポリペプチド、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインを含む抗体軽鎖ポリペプチドを含む。前述のアミノ酸配列は、ハイブリドーマATCC PTA−8870により分泌される抗体の軽鎖及び重鎖ポリペプチドを構成する。前述のアミノ酸配列は又、6A抗体の軽鎖及び重鎖ポリペプチドをも構成する。
【0108】
他の具体例において、この発明は、ヒトの抗BoNT/A結合性抗体に向けられており、該抗体は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含む抗体軽鎖ポリペプチドを含む。前述のアミノ酸配列は、ハイブリドーマATCC PTA−8870により分泌される抗体の軽鎖及び重鎖ポリペプチドを構成する。前述のアミノ酸配列は又、6A抗体の軽鎖及び重鎖ポリペプチドをも構成する。
【0109】
他の具体例において、この抗体は、6A抗体により特異的に結合されるエピトープに結合する。他の具体例において、この抗体は、6A抗体を含む。更なる具体例においては、6A抗体により特異的に結合されるエピトープに結合する抗原結合性断片が提供される。
【0110】
産生されたこれらの抗体は、BoNT/A又はそのエピトープに結合する能力につき試験することができる。抗体は又、BoNT/A神経毒素を中和する能力についても試験することができる。毒性は、イン・ビボで測定することができる。例えば、BoNT/Aの毒性を試験用動物(例えば、マウス)において、推定される一種以上の中和用抗体の存在下で測定することができる。中和用抗体は、ボツリヌス毒素と投与前に合わせることができ、又は動物は、抗体を、神経毒素の投与の前に、同時に又は投与後に投与されうる。
【0111】
中和活性についての好適なイン・ビトロアッセイは、半横隔膜調製法(Deshpande等、1995, Toxicon 33:551-557)を利用する。簡単には、精製した抗体を精製したBoNT/Aと30分間室温でインキュベートしてから、組織浴(tissue bath)に加えて、約2.0×10-8Mの最終抗体濃度及び約2.0×10-11Mの最終神経毒素濃度とする。研究した各抗体につき、50%単収縮張力減少に達する時間を測定する(例えば、BoNT/Aについては3回)。所与の(任意の)パーセンテージ(例えば、50%)単収縮減少に達する時間の差異を、標準的な統計分析(例えば、両側t検定)により、標準的な有意さレベルで(例えば、0.05未満のP値を有意とみなす)測定する。
【0112】
この発明の好適な抗体は、ボツリヌス神経毒素(例えば、ボツリヌス神経毒素A型)の毒性を中和する(減じ又は排除する)ように作用する。イン・ビボでの中和測定は、ボツリヌス神経毒素(例えば、ボツリヌス神経毒素A型)投与による致死性(例えば、LD50又は他の標準的な計量)の、中和活性につき試験される一種以上の抗体の存在による変化の測定を含む。この神経毒素は、直接、試験用生物体(例えば、マウス)に投与することができ、又はボツリヌス感染(例えば、クロストリジウム・ボツリナム感染)は、該動物に潜伏することもできる。抗体は、BoNT/A神経毒素の注射又は試験用動物の感染の前に、同時に、又は後に投与することができる。進行速度又は死亡率の低下は、この(これらの)抗体が中和活性を有することを示す。
【0113】
この発明のBoNT/A抗体は、ボツリヌス神経毒素と関連した病状の治療において有用である。これらの治療は、本質的に、中毒した動物(例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物)に、ボツリヌス毒素による症状を中和する(例えば、軽減し又は排除する)のに十分な量のBoNT/A中和抗体を投与することを含む。
【0114】
かかる治療は、肺活量が期待値の30〜40パーセント未満であり且つ/又は麻痺が急速に進行しており且つ/又は絶対若しくは相対的高炭酸症を伴う低酸素症が存在する急性症例において最も望ましく且つ有効である。中和抗体を用いる治療は、他の治療法(例えば、抗生物質治療)の補助として与えることもできる。
【0115】
抗体の改変
この発明は、6A抗体が特異的に結合するエピトープに特異的に結合する抗体を含む。この発明は、ここに記載した6A抗体の機能的同等物を包含する。機能的同等物は、6A抗体に匹敵する結合特性を有し、例えば、ハイブリダイズした及び一本鎖の抗体、並びにそれらの断片を包含する。かかる機能的同等物を製造する方法は、PCT出願WO93/21319及びPCT出願WO89/09622に開示されている。
【0116】
6A抗体の機能的同等物は、更に、抗体又はその断片を含み、該断片は、完全な抗体と同じ又は実質的に同じ結合特性を有する。かかる断片は、Fab断片又はF(ab')2断片の一方又は両方を含むことができる。好ましくは、これらの抗体断片は、完全な抗体の6つのすべての相補性決定領域を含む。そうはいっても、かかる領域のすべてより少ない例えば3、4又は5個の相補性決定領域を含む断片も又、機能的である。これらの機能的同等物は、IgG免疫グロブリンクラス及びそのサブクラスのメンバーであるが、次の免疫グロブリンクラス:IgM、IgA、IgD又はIgE、及びこれらのサブクラスの何れか一つであるか又は何れか一つと結合することができる。様々なサブクラス例えばIgGサブクラスの重鎖は、種々のエフェクター機能の原因となり、それ故、所望の重鎖定常領域を選択することにより、所望のエフェクター機能を有する雑種抗体が生成される。好適な定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2a及びIgG2b)、ガンマ3(IgG3)及びガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域は、カッパ型又はラムダ型であってよい。
【0117】
本発明の免疫グロブリンは、一価、二価又は多価であってよい。一価の免疫グロブリンは、雑種軽鎖とジスルフィド橋で結合された雑種重鎖から形成された二量体(HL)である。二価の免疫グロブリンは、少なくとも一つのジスルフィド橋で結合された2つの二量体から形成された四量体(H22)である。
【0118】
A)ファージディスプレィ
ファージディスプレィを利用して、抗体親和性を増大させることができる。ボツリヌス毒素に対する一層高い親和性の抗体例えばBoNT/A結合抗体を造るために、ここに開示した配列に基いて、変異型一本鎖可変断片(scFv)遺伝子レパートリーを造って、ファージの表面に発現させることができる。BoNT/A結合抗体のために、抗体6Aの可変ドメインに基く変異型scFv遺伝子レパートリーを調製する。細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ又はファージ)の表面における抗体断片のディスプレィは、広範囲の親和性及び速度論的特性を有するヒト又は他の哺乳動物の抗体を生成することを可能にする。ファージの表面に抗体断片をディスプレィする(ファージディスプレィ)ためには、抗体断片の遺伝子を、ファージの表面タンパク質をコードする遺伝子に挿入して、その抗体断片融合タンパク質をファージ表面に発現させる(McCafferty等、1990, Nature 348: 552-554; Hoogenboom等、1991, Nucleic Acids Res. 19:4133-4137)。
【0119】
ファージの表面上の抗体断片は機能的であるので、抗原結合性抗体断片を有するファージは、抗原親和性クロマトグラフィーによって、非結合性又は低親和性ファージから分離することができる(McCafferty等、1990, Nature 348:552-554)。ファージの混合物を親和性マトリクスに結合させ、非結合性又は低親和性のファージを洗浄により除去して、結合したファージを酸又はアルカリによる処理により溶出させる。抗体断片の親和性により、一回の親和性選択によって、20〜1,000,000倍の濃縮係数が得られる。
【0120】
変異型scFv遺伝子レパートリーを造るための一つのアプローチは、結合性scFvからのVH又はVL遺伝子をVH又はVL遺伝子のレパートリーと置き換えることである(鎖シャッフリングとしても知られる)(Clackson等、1991, Nature 352:624-628)。かかる遺伝子レパートリーは、結合性scFvと同じ生殖細胞系列遺伝子に由来するが点突然変異を有する多くの可変遺伝子を含む(Marks等、1992, Biotechnology 10:779-783)。軽鎖又は重鎖のシャッフリング及びファージディスプレィを利用して、BoNT/A結合抗体断片の結合力を劇的に増大させることができる。
【0121】
抗体のスクリーニング中に、増大した親和性を有する抗体を造るためには、抗原濃度を選択の各回で減らして、最終回の選択までに所望のKd未満の濃度に到達させる。これは、親和性に基く所望の抗体の選択を生じる(Hawkins等、2002, J.Mol.Biol. 226:889-896)。
【0122】
B)位置指定突然変異導入
BoNT/A結合抗体を造るために、位置指定突然変異導入は、抗体6Aの可変ドメインに基く。リガンドに接触するアミノ酸を変異させることは、一のタンパク質分子のその結合パートナーに対する親和性を増大させる有効な手段であることが示されているということは当分野では周知である(Lowman等、1993, J Mol.Biol. 234:564-578; Wells, 1990, Biochemistry 29:8509-8516)。抗体中の抗原に接触するアミノ酸側鎖の大部分は、相補性決定領域(CDR)内に位置する。CDRの内の3つは、VHに存在し(CDR1、CDR2及びCDR3)、3つは、VLに存在する(CDR1、CDR2及びCDR3)(Chothia等、1987, J.Mol.Biol. 196:901-917; Chothia等、1986, Science 233:755-8; Nhan等、1991, J.Mol.Biol. 217:133-151)。これらの残基は、抗原に対する抗体の親和性の結合エネルギー的原因の大部分を与えるものである。
【0123】
これらのCDRは、フレームワーク領域により分離されている。これらのフレームワーク領域は、CDR領域を空間的に方向付けて抗原結合構造を形づくる。CDR領域又はフレームワーク領域内の残基の突然変異は、抗体の結合特性を変え且つ/又は改善することができる。それらの構造的役割のため、フレームワーク領域内の残基の変化は、不適当に畳まれた不活性な抗体構造を生じうる(Shlomchik等、1989, Prog Immunol. 7:415-423)。それ故、フレームワーク領域の残基の変化は、保存的変化であるべきであり、疎水性パッキング相互作用及び埋められた塩橋(buried salt bridge)を保存すべきである。免疫グロブリンタンパク質配列中のどのアミノ酸がどのドメインに寄与するかの決定は、当分野において十分に理解されている。Lefranc等(2005, Nucleic Acids Res 33:D593-D597)参照。
【0124】
CDR及びFR残基は、標準的な配列限定(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda Md. (1987))及び構造的限定(Chothia 及び Lesk, J.Mol.Biol. 196:9021-917 (1987))により決定される。これらの2つの方法がCDRの僅かに異なる同定を生じた場合は、その構造的限定は、好適であるが、配列限定法により同定された残基は、どのフレームワーク残基を共通配列に引き入れるかの決定のために重要なFR残基と考えられる。
【0125】
従って、CDRの変異及びここで同定されたBoNT/A又はそのエピトープに対して生成した変異体のスクリーニングを利用して、エピトープに対する改良された結合親和性及び/又は特異的サブ血清型に対する一層高度の親和性での結合を有するBoNT/A結合抗体を生成することができる(Smith等、2005, Infect. Immun. 73:5450-5457)。
【0126】
好適具体例において、各CDRは、別個のライブラリーにおいてランダム化される。親和性の測定を簡単にするために、既存の抗体又は他の低親和性BoNT/A結合抗体は、一層高い親和性のscFvよりもむしろテンプレートとして用いられる。各CDRライブラリーからの最高の親和性の変異体のCDR配列を合わせて、親和性の更なる増加を得る。類似のアプローチが、ヒト成長ホルモン(hGH)の成長ホルモンレセプターに対する親和性を、3.4×10-10から9.0×10-13Mまで、1500倍に増すために利用されてきた(Lowman等、1993, J.Mol.Biol., 234:564-578)。
【0127】
BoNT/A結合抗体の親和性を増すために、一つ以上のCDR中に位置するアミノ酸残基(例えば、VLCDR3中に位置する9アミノ酸残基)を、例えば約49%の頻度で野生型ヌクレオチドが出現する「ドープされた」オリゴヌクレオチドを合成することによって部分的にランダム化する。このオリゴヌクレオチドは、BoNT/A結合scFv遺伝子の残りをPCRを用いて増幅するために用いられる。
【0128】
例えば、一具体例において、VHCDR3がランダム化されたライブラリーを造るために、BoNT/A結合抗体VHフレームワーク3とアニールし、VHCDR3とフレームワーク4の一部をコードするオリゴヌクレオチドが合成される。ランダム化すべき4つの位置において、配列「NNS」を利用することができる(ここに、Nは、4ヌクレオチドの何れかであり、Sは、「C」又は「T」である)。このオリゴヌクレオチドは、BoNT/A結合抗体VH遺伝子をPCRを利用して増幅するために利用され、変異型BoNT/A結合抗体VH遺伝子レパートリーを生成する。PCRは、BoNT/A結合抗体軽鎖遺伝子によるVH遺伝子レパートリーのスプライシングに利用され、生成したscFv遺伝子レパートリーは、ファージディスプレィベクター中にクローン化される。連結されたベクターDNAは、エレクトロコンピテントな大腸菌をトランスフォームしてファージ抗体ライブラリーを生成するために利用される。
【0129】
一層高い親和性の変異型scFvを選択するためには、ファージ抗体ライブラリーの各回の選択を、他所に記載のように、BoNT/Aの量を減らして行う。典型的には、第3及び第4回の選択からの96クローンを、BoNT/A抗原への結合につき、96ウェルプレート上でのELISAによりスクリーニングする。
【0130】
当分野で公知で、抗体に突然変異を導入するために用いられる他の方法は、エラープローンPCR、ドミナントネガティブミスマッチ修復タンパク質の過剰発現(WO2004/046330)、パーシモニウス(parsimonius)突然変異導入(Razai等、2005, J Mol Biol. 351:158-169)及び化学的突然変異導入を包含する。以下も参照されたい:Chowdhury等(2005, Methods 36:11-27)及びCarter (2006, Nat Rev Immunol. 6:343-357)。望ましい特性を有する抗体の同定は、様々な一般的スクリーニング法を利用して達成することができる(Hoogenboom, 2005, Nat Biotechnol. 23:1105-1116)。
【0131】
C)ボツリヌス神経毒素結合性(scFv’)2ホモ二量体の作成
ボツリヌス神経毒素結合性(scFv’)2抗体を造るために、2つのボツリヌス神経毒素結合性scFvを、リンカー(例えば、炭素リンカー、ペプチドなど)により又は例えば2つのシステインの間のジスルフィド結合によって結合させる。それ故、例えば、ジスルフィド結合されたボツリヌス神経毒素結合性scFvを造るために、システイン残基を位置指定突然変異導入によって導入することができる。
【0132】
特に好適な具体例において、(scFv’)2二量体は、scFv断片を、リンカーを介して、一層好ましくはペプチドリンカーを介して結合させることによって造られる。これは、当業者に周知の様々な手段によって達成することができる。例えば、一つの好適なアプローチは、Holliger等、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (WO94/13804も参照されたい)により記載されている。
【0133】
典型的には、リンカーは、PCRクローニングにより導入される。例えば、リンカーをコードする合成オリゴヌクレオチドを用いて、BoNT/A結合性抗体VH及びVL遺伝子をPCR増幅することができ、次いで、これらを一緒にスプライスしてBoNT/A結合性抗体の遺伝子を造ることができる。次いで、この遺伝子を、当業者に周知の標準的方法に従って、適当なベクター中にクローン化して、発現させて、精製する。
【0134】
D)ボツリヌス神経毒素結合性(scFv)2、Fab、及び(Fab’)2分子の製造
BoNT/A結合性抗体例えばBoNT/A結合性scFv、又は一層高い親和性を有する変異体は、かなり大きく価を有する変異体を造るための適当なテンプレートである。例えば、BoNT/A結合性(scFv’)2は、上記のように、抗体6Aの可変ドメインに由来する親scFvから造られる。scFv遺伝子は、適当な制限酵素を利用して切り出して、別のベクター中にクローン化することができる。
【0135】
ボツリヌス神経毒素Fabは、Better等、1988, Science 240:1041-1043に記載されたものと類似した発現ベクターを利用して、大腸菌中で発現される。BoNT/A結合性Fabを造るためには、scFvからPCRを利用してVH及びVL遺伝子を増幅する。VH遺伝子は、発現ベクター(例えば、PUC119べースの細菌用発現ベクター)中にクローン化され、それは、VH遺伝子の下流にフレームを合わせてIgG CH1ドメインを与える。このベクターは又、発現されたVH−CH1ドメインをペリプラスムへ向けるためのリーダー配列、発現された軽鎖をペリプラスムへ向けるためのリーダー配列、及び軽鎖遺伝子のためのクローニング部位をも含む。正しいVH遺伝子を含むクローンは、例えばPCRフィンガープリンティングによって同定される。VL遺伝子は、PCRを利用してCL遺伝子にスプライスされて、VHH1遺伝子を含むベクター中にクローン化される。
【0136】
遺伝子改変
ボツリヌス神経毒素結合性抗体をハイブリドーマから得るためには、それらの抗体を、抗体遺伝子を一以上の発現ベクター中にクローン化して、そのベクターを細胞系例えば組換え又はヒト化免疫グロブリンの発現に典型的に用いられる細胞系にトランスフォームすることにより生成することもできる。
【0137】
これらの細胞系から分泌される免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、当分野で公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版、Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Berger & Kimmel, Methods in Enzymology, Vol. 152: Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, Inc., San Diego, カリフォルニア、1987; Co等、1992, J. Immunol. 148:1149参照)を含む方法(但し、これらに限られない)によってクローン化される。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、抗体を分泌する細胞のゲノムDNAからクローン化され又はcDNAがその細胞のRNAの逆転写により生成される。クローニングは、これらのクローン化すべき遺伝子又は遺伝子断片に隣接し又はオーバーラップする配列にハイブリダイズするPCRプライマーの利用を含む慣用の技術によって達成される。
【0138】
抗体又はその部分の重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、組換えDNA技術によって得ることができ、特異的免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの変異体の、様々な宿主細胞又はイン・ビトロ翻訳系における製造のために利用することができる。例えば、重鎖及び軽鎖などの変異体をコードするcDNA又はそれらの誘導体を含む核酸を、適当な原核生物又は真核生物用ベクター例えば発現ベクター中に入れて、適当な宿主細胞中に、適当な方法例えばトランスフォーメーション、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染により導入し、それで、該核酸を、例えばベクター中で又は宿主細胞ゲノムに組み込んで、一以上の発現制御用エレメントに操作可能に結合することができる。
【0139】
重鎖及び軽鎖、又はそれらの部分を、レシピエント細胞に同時トランスフェクトするために用いることのできる2つの異なる発現ベクター中で組み立てることができる。各ベクターは、2つの選択可能な遺伝子を含むことができ、その一つは、細菌系における選択用であり、一つは、真核生物系における選択用である。これらのベクターは、細菌系におけるこれらの遺伝子の生成及び増幅、及びその後の、真核細胞の同時トランスフェクション及び同時トランスフェクトされた細胞の選択を可能にする。この選択手順は、真核細胞に2つの異なるDNAベクターで導入した免疫グロブリン鎖遺伝子の発現について選択するために利用することができる。
【0140】
或は、重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、一つのベクターから発現されうる。たとえ軽鎖と重鎖が別々の遺伝子によりコードされていても、それらを、組換え方法を利用して、結合することができる。例えば、2つのポリペプチドを、合成リンカーによって結合することができ、該リンカーは、それらが単一のタンパク質鎖として作成されることを可能にし、該鎖において、VL及びVH領域は、対合して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird等、1988, Science 242: 423-426; 及び Huston等、1988, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)を形成する。
【0141】
この発明は、少なくとも重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子を提供する。軽鎖及び重鎖可変領域の両方をコードする配列を含む核酸分子は、細胞中で産生された際に免疫グロブリン鎖の分泌のための合成のシグナル配列を含むように操作することができる。その上、重鎖及び軽鎖可変領域の両方を含む核酸分子は、特異的DNAリンクを含むことができ、該リンクは、他の免疫グロブリン配列の挿入を可能にし、翻訳読み枠を通常免疫グロブリン鎖中に見出されるアミノ酸を変えることのないように維持する。特に、この核酸分子は、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含む重鎖可変ドメイン及びアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインをコードする配列を含む。他の面において、この核酸分子は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:7の配列を含む。
【0142】
この発明は又、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む重鎖ポリペプチド及びアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含む抗体軽鎖ポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子をも提供する。他の面において、この核酸分子は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:5の配列を含む。
【0143】
本発明によれば、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、適当な発現ベクターに挿入することができる。このベクターは、抗体生成のために重鎖及び軽鎖免疫グロブリンの発現を指示する組換えDNA分子を生成するように、挿入されたタンパク質をコードする配列の転写及び翻訳のための必要なエレメントを含んでいる。
【0144】
BoNT/A結合性免疫グロブリン又はそれらの断片をコードするDNAセグメントに加えて、他の実質的に相同な改変免疫グロブリンを、当業者に公知の様々な組換えDNA技術例えば位置指定突然変異導入を利用して、容易にデザインして作成することができる。かかる改変セグメントは、通常、抗原結合能及び/又はエフェクター機能を維持する。その上、これらの改変セグメントは、通常、抗体産生細胞の元のゲノム配列から、これらの配列へのストリンジェントな条件化でのハイブリダイゼーションを妨げる程には変化しない。多くの遺伝子と同様に、免疫グロブリン遺伝子は、それぞれ別個の生物学的活性を有する離れた機能的領域を含むので、これらの遺伝子は、他の遺伝子からの機能的領域と融合して、新規な特性又は新規な特性の組合せを有する融合タンパク質(例えば、イムノトキシン)を生成することができる。
【0145】
様々な方法を利用して、細胞中で遺伝子を発現させることができる。核酸を多くの種類のベクター中にクローン化することができる。しかしながら、本発明は、如何なる特定のベクターに限られるとも解するべきではない。そうではなく、本発明は、容易に入手可能であり且つ/又は当分野で周知である過剰なベクターを包含すると解すべきである。例えば、この発明の核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むベクター(但し、これらに限られない)中にクローン化することができる。特に興味深いベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定用ベクターを包含する。
【0146】
特別の具体例において、この発現ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター及び哺乳動物細胞用ベクターよりなる群から選択される。上で論じた組成物の少なくとも一部又は全部を含む多くの発現ベクター系がある。原核及び/又は真核生物ベクターベースの系を本発明と共に用いて、ポリヌクレオチド又はそれらの同系のポリペプチドを生成することができる。多くのかかる系は、市販されており、広く入手可能である。
【0147】
ウイルスベクター技術は、当分野で周知であり、例えば、Sambrook等、(1989)、 及び Ausubel等 (1997)、及び他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが含まれるが、これらに限られない。好ましくは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)ベクターが、所望の核酸を発現させるために用いられる。MSCVベクターは、所望の核酸を細胞中で効率的に発現することが示されている。しかしながら、この発明は、MSCVベクターの利用にだけに限定されるべきではなく、むしろ、任意のレトロウイルスによる発現方法が、この発明に含まれる。ウイルスベクターの他の例は、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)ベクターである。一般に、適当なベクターは、少なくとも一の生物体における複製機能の複製起点、プロモーター配列、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位、及び一つ以上の選択用マーカーを含む(例えば、WO01/96584;WO01/29058;及び米国特許第6,326,193号参照)。
【0148】
レトロウイルスベクターは、遺伝子を宿主の細胞又は動物に送達するために広く用いられてきた。レトロウイルスの組込みは、多くの位置で起きうる。レトロウイルスの組込みによる偏向は、Uren等、2005 Oncogene 24: 7656-7672に総説された様々な方法によって評価されてきた。DNアーゼ感受性領域及び/又は低メチル化領域近くへの組込みに対する優先性があるという証拠があり、これは、レトロウイルスの組込みがゲノムの活発に転写されている領域内に挿入される蛍光があることを示唆している。他の証拠は、レトロウイルスの組込みは、遺伝子プロモーターの近くで優先的に起きることを示唆している。一般に、この証拠は、レトロウイルスの組込みが、標的DNAの、コンホメーション及びメチル化状態、遺伝子密度、クロマチンコンホメーション、宿主DNA関連タンパク質及び局所的転写活性を含む局所的特性と関連していることを示唆している。従って、レトロウイルスの組込みは、部分的に、如何なる特定の配列特異性よりもむしろヌクレオソーム構造により影響を受ける。従って、この組込み部位は、予想不可能である。
【0149】
所望の遺伝子の発現のためには、各プロモーター中の少なくとも一つのモジュールが、RNA合成の開始部位を特定するように機能する。これの最もよく知られた例は、TATAボックスであるが、幾つかのプロモーターはTATAボックスを欠く(例えば、哺乳動物の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子及びSV40遺伝子のプロモーター、開始部位自身と重なる別個のエレメントが開始場所を定めるのを助ける)。
【0150】
更なるプロモーターエレメント例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の30〜110bp上流の領域に位置するが、幾つかのプロモーターは、最近、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示された。プロモーターエレメント間の間隔は、柔軟であり、それで、プロモーター機能は、エレメントが逆転され又は相互に移動された場合にも保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、2つのプロモーターエレメントの間隔は、活性が低下し始める前に、50bpまで増大させることができる。プロモーターによって、個々のエレメントは、同時機能的に又は独立に機能して転写を活性化しうるようである。
【0151】
プロモーターは、自然に、遺伝子即ち、コードセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することにより得ることのできるポリヌクレオチド配列と関係するものであってよい。かかるプロモーターは、「内因性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、自然に、ポリヌクレオチド配列と関連するものであってよい(その配列の下流又は上流)。或は、コードポリヌクレオチドセグメントを、組換え又は異質プロモーター(これは、自然環境において通常ポリヌクレオチド配列と関係しないプロモーターを指す)の制御下に置くことによってある利点が得られる。組換え又は異質エンハンサーは又、自然環境においてポリヌクレオチド配列と通常関係しないエンハンサーでもある。かかるプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及び任意の他の原核細胞、ウイルス又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然のもの」でないプロモーター又はエンハンサーを包含することができる(例えば、種々の転写調節領域及び/又は発現を変える突然変異の種々のエレメントを含む)。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列の合成による作成に加えて、配列は、ここに開示した組成物と共に組換えクローニング及び/又はPCR(商標)を含む核酸増幅技術を利用して生成することができる(米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号)。その上、核以外のオルガネラ例えばミトコンドリア、クロロプラストなどの中の配列の転写及び/又は発現を指示する制御配列も又、用いることができるということも企図される。
【0152】
もちろん、発現用に選んだ細胞型、オルガネラ及び生物体内でDNAセグメントの発現を効果的に指示するプロモーター及び/又はエンハンサーを用いることが重要である。分子生物学の分野の当業者は、一般に、タンパク質発現のためにプロモーター、エンハンサー、及び細胞型の組合せを如何に用いるかを知っている(例えば、Sambrook等、1989を参照されたい)。用いるプロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター及び/又は導入されたDNAセグメントの高レベルの発現を指示する適当な条件下例えば組換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産に有利な条件下で有用なプロモーターであってよい。このプロモーターは、異質のものであっても、外因性のものであってもよい。
【0153】
プロモーターの例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに機能的に結合された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することのできる強力な構成的プロモーター配列である。しかしながら、他の構成的プロモーターも又、用いることができ、それは、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン−バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにヒトの遺伝子のプロモーター(例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター及び筋クレアチンプロモーター)を含むが、これらに限られない。更に、この発明は、構成的プロモーターの利用に限られるべきでない。誘導性プロモーターも又、この発明の部分として企図される。この発明における誘導性プロモーターの利用は、それに機能的に結合されたポリヌクレオチド配列の発現をかかる発現が望まれるときにスイッチをオンにすることができ、又は発現が望まれない場合にはスイッチをオフにすることのできる分子スイッチを与える。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限られない。更に、この発明は、組織特異的プロモーターの利用を含み、該プロモーターは、所望の組織でのみ活性である。組織特異的プロモーターは、当分野で周知であり、例えば、HER−2プロモーター及びPSA関連プロモーター配列が含まれるが、これらに限られない。
【0154】
所望の遺伝子の発現を評価するために、細胞に導入されるべき発現ベクターは又、ウイルスベクターによりトランスフェクトされ又は感染されたことを探るべき細胞の集団から発現細胞を同定して選択することを容易にするために、選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子又は両者を含むこともできる。他の具体例において、選択マーカーは、別個のDNA片で運ばれて、同時トランスフェクション手順にて使用されうる。選択マーカー及びレポーター遺伝子の両者は、宿主細胞における発現を可能にするように適当な調節配列に隣接していてよい。有用な選択マーカーは、当分野で公知であり、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子などが含まれる。
【0155】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため及び調節用配列の機能性を評価するために利用される。容易にアッセイできるタンパク質をコードするレポーター遺伝子は、当分野で周知である。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエントの生物体又は組織中に存在してそれにより発現され、容易に検出されうる特性例えば酵素活性により明示される遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAをレシピエント細胞に導入した後、適当な時点でアッセイされる
【0156】
適当なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されるアルカリホスファターゼ、又はグリーン蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含むことができる(例えば、Ui-Tei等、2000 FEBS Lett. 479:79-82参照)。適当な発現系は、周知であり、周知の技術を用いて調製することができ又は購入することができる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小5’隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に結合させて、プロモーターに駆動された転写を調節する能力につき薬剤を評価するために利用することができる。
【0157】
遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は、当分野で公知である。発現ベクターのコンテキストにおいて、該ベクターは、容易に、宿主細胞例えば哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞又は昆虫細胞に、当分野における任意の方法によって導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞にトランスファーすることができる。
【0158】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈澱法、リポフェクション、粒子ボンバードメント、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を生成する方法は、当分野で周知である。例えば、Sambrook等及びAusubel等を参照されたい。
【0159】
関心あるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの利用を含む。ウイルスベクター(特に、レトロウイルスベクター)は、遺伝子を哺乳動物(例えばヒト)細胞に挿入するための最も広く用いられる方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスイウルス、I型単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来するものであってよい。例えば、米国特許第5,350,674号及び5,585,362号を参照されたい。
【0160】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系例えば巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む)が含まれる。イン・ビトロ及びイン・ビボでの送達用ビヒクルとしての使用に好適なコロイド系は、リポソームである(例えば、人工膜小胞)。かかる系の製造及び使用は、当分野で周知である。
【0161】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために用いられる方法或は細胞を本発明の核酸にさらすために用いられる方法にかかわらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確かめるためには、様々なアッセイを行なうことができる。かかるアッセイは、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ例えばサザーンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT−PCR及びPCR;「生化学的」アッセイ例えば特定のペプチドの存否の例えば免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)による検出又はこの発明の範囲内に入る薬剤を同定するためにここに記載されたアッセイによる検出を含む。
【0162】
かかる異所的発現を引き起こすためにDNAの改変を受けた細胞は、単一細胞クローニング及び、クローン化細胞のゲノムDNAの、変化したDNA配列の存在についての、PCR(変化したDNA配列に特異的なプライマーを使用)を利用する分析によって同定することができる。
【0163】
ゲノムに異所的遺伝子を組み込まれた細胞は、単一細胞クローニング及び、クローン化細胞のゲノムDNAの、異所的テロメラーゼ遺伝子の存在についての、PCR(変化したDNA配列に特異的なプライマーを使用)を利用する分析によって同定することができる。異所的遺伝子の発現は、RT−PCRを用いて確認することができる。
【0164】
治療的利用及び医薬組成物
当業者は、所与の患者に投与すべきボツリヌス神経毒素中和抗体の有効量を、患者の大きさ及び体重;病気の進行度;患者の年齢、健康状態及び性別;投与経路;及び投与を局所投与とするか全身投与とするかなどの因子を考慮して、容易に決定することができる。一般に、患者に投与される抗体の量は、中和することを要するボツリヌス毒素の量、及び抗体が示すボツリヌス毒素中和活性の量に依存する。当業者は、特定の状況及び患者の要求に合う適当な投薬量及び投与の計画を論理的に引き出すことができる。例えば、投与すべき各抗体の適当な投与量は、患者が曝露されたボツリヌス神経毒素の量又は患者が曝露される危険にあるボツリヌス毒素の量から見積もることができる。典型的には、抗体の投薬量は、体重1kg当たり約0.001mg〜100mgである。幾つかの具体例においては、投薬量は、体重1kg当たり約0.01mg〜60mgである。
【0165】
有効投薬量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態及び体重、併用する治療(ある場合)、治療頻度、及び所望する効果の性質に依存するということは理解される。最も好適な投薬量は、個々の患者に合わせたものであり、当業者によって、過度の実験なしで理解され決定される。
【0166】
ボツリヌス神経毒素中和用ヒト抗体の混合物を等モル濃度で、かかる治療を必要とする患者に投与することができる。他の例においては、これらの抗体は、等モル濃度ではない濃度で投与される。他の例においては、これらの抗体は、等重量のタンパク質として投与される(体重1kg当たり)。例えば、これらの抗体は、患者の体重に基いて、等量で投与することができる。他の例においては、これらの抗体は、等しくない量で投与される。更に別の例においては、投与すべき各抗体の量は、その中和活性に基く。例えば、体重1kg当たり約1〜50IUのボツリヌス神経毒素中和活性の混合物を投与することができる。
【0167】
一般に、ボツリヌス神経毒素中和用ヒト抗体の混合物の投与のスケジュール及びタイミングは、実行される手順の容認された実施による。
【0168】
イン・ビボで用いる場合、これらの抗体は、天然型であっても組換え型であっても、好ましくは、医薬組成物として投与され、それは、混合物と製薬上許容しうるキャリアーを含む。これらの抗体は、医薬組成物中に、0.001〜99.9重量%の量で、一層好ましくは約0.01〜99.0重量%の量で、尚一層好ましくは、0.1〜50重量%の量で存在しうる。良好な血漿濃度を達成するためには、抗体(又は、抗体の組合せ)を、例えば、0.1〜1.0%の活性薬剤を含む溶液として、静脈注射によって投与することができる。
【0169】
これらのボツリヌス神経毒素中和用抗体は、予防処置及び/又は治療処置のために有用である。これらの抗体は、医薬組成物の成分であってよい。この発明の医薬組成物は、非経口投与例えば静脈内投与又は体腔若しくは臓器の内腔への投与のために特に有用である。投与のためのこれらの組成物は、一般に、製薬上許容しうるキャリアー(好ましくは、水性キャリアー)に溶解させたボツリヌス神経毒素中和用抗体の溶液を含む。様々な水性キャリアー例えば緩衝された塩溶液などを利用することができる。これらの溶液は、無菌であって、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、慣用の、周知の殺菌技術により殺菌されうる。これらの組成物は、生理的条件に近づけるのに必要とされる製薬上許容しうる補助物質例えばpH調節緩衝剤、毒性調節剤など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。これらの配合物中のボツリヌス神経毒素中和剤の濃度は、大きく変化しうるものであり、主として、液体容積、粘度、体重などに基いて、選択された特定の投与様式及び患者の要求に従って選択される。
【0170】
従って、静脈内投与用の典型的医薬組成物は、患者一人につき、一日当たり、約0.1〜10mgである。特に、薬物を体腔又は臓器の内腔などの隔離された部位に投与し、血流中には投与しない場合には、患者一人につき、一日当たり0.1〜100mgの投薬量を用いることができる。非経口的に投与可能な組成物の製造方法は、当業者に公知であり又は明白であって、一層詳細には、Remington's Pharmaceutical Science, 第15版、Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980)などの刊行物に記載されている。
【0171】
本発明の抗体を含む組成物は、治療処置のために投与することができる。治療応用において、好適な医薬組成物は、BoNT/Aを中和する(軽減又は排除する)(例えば、BoNT/Aの症状(ボツリヌス中毒)を減じ又は排除する)のに十分な投薬量で投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療上有効な量」と定義される。この用途に有効な量は、病気の重さ及び患者の健康の全体的状態に依存する。
【0172】
これらの組成物の単一又は多数の投与は、患者が必要とし及び耐えられる投薬量及び頻度に依存して投与されうる。とにかく、この組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な量のこの発明のタンパク質を与える。
【0173】
ここで用いる場合、医薬組成物の「非経口投与」は、患者の組織の物理的侵害により特徴付けられる任意の経路及び該組織内の侵害を通過する医薬組成物の投与を含む。従って、非経口投与は、医薬組成物の注射による投与、外科的切開による投与、組織浸透による投与(外科的負傷なし)などを含むが、これらに限られない。特に、非経口投与は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、及び腎臓透析技術を含むことが企図されるが、これらに限られない。
【0174】
非経口投与に適した医薬組成物の配合物は、活性成分を、製薬上許容しうるキャリアー例えば無菌水又は無菌の等張塩溶液と組み合わせて含む。かかる配合物は、ボーラス投与に適した形態又は連続的投与に適した形態で、製造して、パッケージ化して、販売することができる。注射可能な配合物は、単位投薬形態例えばアンプル又は防腐剤を含む多数回投与量入り容器にて、製造して、パッケージ化して、販売することができる。非経口投与用配合物は、懸濁液、溶液、乳濁液(油性又は水性ビヒクル中)、ペースト、及び移植可能な持続的放出又は生物分解性配合物を含むが、これらに限られない。かかる配合物は、一種以上の追加の成分(懸濁化剤、安定剤又は分散剤を含むが、これらに限られない)を更に含むことができる。非経口投与のための配合物の一具体例において、活性成分は、非経口投与前に適当なビヒクル(例えば、無菌の、発熱物質を含まない水)により再構成するための適当なビヒクル乾燥形態(例えば、粉末又は顆粒)で与えられる。
【0175】
これらの医薬組成物は、無菌の注射用の水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で、製造し、パッケージ化し、又は販売することができる。この懸濁液又は溶液は、公知技術に従って配合することができ、活性成分に加えて、追加の成分例えばここに記載の分散剤、湿潤剤又は懸濁化剤を含むことができる。かかる無菌の注射可能な配合物は、無毒性の、非経口的に許容しうる希釈剤又は溶剤例えば水又は1,3−ブタンジオールを用いて調製することができる。他の許容しうる希釈剤及び溶剤には、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油例えば合成のモノ又はジグリセリドが含まれるが、これらに限られない。他の非経口的に投与可能な有用な配合物は、活性成分を微晶質形態で含むもの、リポソーム調製物中に含むもの、又は生物分解性ポリマーシステムの成分として含むものを包含する。持続的放出のため又は移植用の配合物は、製薬上許容しうる高分子の又は疎水性の物質例えば乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は難溶性の塩を含むことができる。
【0176】
ここで用いる場合、「追加の成分」は、次の少なくとも一つを含むが、これらに限られない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結着剤;潤滑剤;甘味剤;調味剤;着色剤;防腐剤;生理的に分解可能な組成物例えばゼラチン;水性ビヒクル及び溶剤;油性ビヒクル及び溶剤;懸濁化剤;分散又は湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩類;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び製薬上許容しうるポリマー又は疎水性物質。この発明の医薬組成物に含まれうる他の「追加の成分」は、当分野で公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (1985, Genaro編、Mack Publishing Co., Easton, PA)(参考として、本明細書中に援用する)に記載されている。
【0177】
本発明によれば、上記のように又は下記の実施例で論じるように、慣用の臨床的、化学的、細胞学的、組織化学的、生化学的、分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術(当業者に公知)を用いることができる。かかる技術は、文献中に、完全に説明されている。
【0178】
この発明は、ここに記載したアッセイ及び方法だけに限定されると解するべきではなく、他の方法及びアッセイも含むものと解すべきである。当業者は、他のアッセイ及び方法が、ここに記載された手順を実施するのに利用可能であることを知るであろう。
【0179】
更なる記載なしでも、当業者は、前述の記載及び下記の説明用実施例を利用して、本発明の化合物を作成して利用することができ、クレームした方法を実施することができる。それ故、下記の実施例は、特に、本発明の好適具体例を示すものであり、とにかくこの開示の残りを制限するものと解すべきではない。
【実施例】
【0180】
実施例1:CD27+B細胞の単離と培養
ヘパリン化末梢血を、インフォームド・コンセント後に、トマス・ジェファーソン大学のInstitutional Review Boardにより承認されたプロトコールに合わせて、5価のボツリヌストキソイドワクチンを、ワクチン接種された志願者から得た。すべてのBoNT免疫血液試料は、5価のボツリヌストキソイドワクチンの最後の投与量の後、8日目に得られた。末梢血単核細胞(PBMC)画分を、FicollPaquePLUS(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を用いる密度勾配遠心分離を用いて分離した。精製したPBMCを新鮮なまま又は90%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS, Invitrogen, Carlsbad, CA在)、10%DMSO(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)中で凍結貯蔵後使用した。CD27+B細胞を、PBMC試料から、抗CD27磁気ビーズを、製造業者(Miltenyl Biotec, Auburn, CA)のプロトコールに従って用いて単離した。
【0181】
これらのCD27+B細胞を、次のように、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養した。CD40Lは、tCD40L細胞により培養培地に与えられた。tCD40L細胞は、CD40Lを安定に発現するCD40Lでトランスフェクトされたマウス繊維芽細胞である(Schultze等、1997)。tCD40L単層を調製するために、tCD40L細胞を、96Gyで照射し、12ウェル組織培養プレート(Corning, Corning, NY)中に、5×104/ウェルの密度でプレートした。tCD40L細胞の培養は、45%F12、45%DMEM、10%IFS、L−グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシン中であった。tCD40L細胞と培養されたCD27+B細胞は、10%ヒト血清、IL−4(2ng/ml)、IL−10(10ng/ml)、トランスフェリン(50μg/ml)、シクロスポリンA(5.5×10-4M)、L−グルタミン(2mM)を補足され、及び適宜、抗原例えばBoNT/A又は組換えの50kDのC末端BoNT/Aドメイン(Kiyatkin等、1997 Infect Immun 65: 4586-4591)(以後、「HC50A」と呼ぶ)(5μg/ml)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)を補足された。
【0182】
実施例2:ヒトIgGを産生するハイブリドーマの生成
下記の実験をデザインして、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを、融合パートナー細胞系と培養したCD27+B細胞との融合により生成した。この実験は、ヨウシュヤマゴボウミトゲン(PWM)の存在下で又はIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養されたPBMCを用いて生成されたIgG抗体を分泌するハイブリドーマの低い収率を改良するためにデザインされた(下記のA.初期の実験:非CD27+冨化B細胞を用いる融合を参照されたい)。ここに与えた結果は、IgGヒト抗体を分泌するハイブリドーマの生成の収率を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養されたCD27+B細胞を利用して増大させる方法を示している。
【0183】
A.初期の実験:非CD27+冨化B細胞を用いる融合
これらの実験に用いられた融合パートナー細胞系は、B5−6T受入れ番号PTA−8869及びMPT(SP2/mIL−6 MP hTERT)融合パートナー細胞(Dessain等、2004 J Immunol Methods 291: 109)であった。両融合パートナー細胞系は、異所的にmIL−6及びhTERT遺伝子を発現する。一般に、モノクローナル抗体の製造は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するための不滅化細胞の一次Bリンパ球との融合を含む。
【0184】
この初期の実験は、未選択CD27+B細胞を利用して生成されるハイブリドーマの基線レベルを確立するために、ハイブリドーマの生成のためにPBMCを利用するようにデザインされた。PBMCは、3〜6投与量の5価のボツリヌストキソイドワクチンを受けた志願した患者から採血した末梢血から得られた。試料は、最後のワクチン投与量後、8日目に得られた。PBMCは、ヨウシュヤマゴボウミトゲン(PWM)の存在下又はIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養された後、MPT融合パートナー細胞系と融合された。雑種は、BoNT/A及びBoNT/Bと反応性のIgG抗体の発現につきELISAにより選択された。160の全ウェルを含むMPT細胞系を用いて行なった7細胞融合から、1つのウェルがBoNT/Aに特異的なIgG抗体を含み、何れのウェルもIgG BoNT/B抗体を含まないことのみが認められた。表1にまとめたように、PMBCがPWMにより刺激されたかIL−4、IL−10、CD40Lの存在下で培養された(表1の「CD40L/IL−4/IL−10」)かに関係なく、PBMCとMPT融合パートナー細胞との融合は、高頻度の望ましいハイブリドーマを生じなかったが、B5−6Tを融合パートナーとして用いた場合にはその頻度は幾分改善された。この結果は、CD27発現について未選択のB細胞を用いた場合のIgG抗体を分泌するハイブリドーマ生成の低い収率を示している。
【0185】
B.CD27+細胞を用いる融合
この実験においては、融合は、3〜6投与量の5価のボツリヌストキソイドワクチンを受けた志願患者から得られたPBMCから、CD27+B細胞サブセット細胞集団を先ず特異的に分離し、拡大して、クラススイッチさせることにより行われた。従って、CD27+B細胞は、PBMCの集団から磁気的に選択された。このCD27マーカーは、GC後表現型及び体細胞変異した抗体遺伝子の発現と相関する(Klein等、1998; Tangye等、1998)。この分離ステップは、未変異IgM抗体を発現する末梢血B細胞の約60%を除去することができる。単離されたCD27+B細胞集団を、次いで、実施例1に従って、tCD40L単層上で、IL−4(2ng/ml)及びIL−10(10ng/ml)の存在下で培養した(表1では「27/40L/IL−4/IL−10」と表示)。8日間の培養の後に、処理されたCD27+B細胞を、B5−6T融合パートナー細胞系と融合させた。B5−6T細胞系及び処理されたCD27+B細胞の間の2融合物から、全部で12のBoNT/Aに特異的なIgG抗体を発現する雑種プール及び14のBoNT/Bに特異的なプールを得た。これらの結果は、CD27+B細胞を出発細胞集団として用いて、それらをIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養すると、望ましいハイブリドーマを生成する頻度が増大することを示している。
【0186】
C.ハイブリドーマ製造のためのB細胞の単離及び培養方法の比較分析
この実験のセットは、3つの異なるB細胞調製方法(PWM法、CD40L/IL−4/IL−10法、及び27/40L/IL−4/IL−10法)及びそれらの、B5−6T融合パートナーとの融合後のハイブリドーマの製造に対する効果を直接比較するためにデザインされた。
【0187】
単一のPBMC試料が、ワクチンの6回目の投与量の後にドナー#4から得られた(表1では、Bot4_6と表示)。この試料を、3つのグループに分けて、下記の条件下で培養した:
1)PBMCをPWMで処理(PWM法);
2)PBMCをIL−4、IL−10、CD40Lで処理(CD40L/IL−4/IL−10法);そして
3)CD27+B細胞をIL−4、IL−10、CD40Lで処理(27/40L/IL−4/IL−10法)。
【0188】
IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養したCD27+B細胞との融合は、BoNT/Aに対するIgGについて陽性のハイブリドーマウェルを全部で8生じること及び16はBoNT/Bについて陽性であるということが認められた。対照的に、PWMで処理されたPBMCは、BoNT/Aに特異的なIgGについて陽性の2ウェルを生じ、BoNT/Bに陽性のウェルは生じなかったが、IL−4、IL−10、CD40Lで処理したPBMCは、BoNT/A及びBoNT/Bについて陽性のウェルを全部で、それぞれ2及び1つ生じた。この結果は、処理されたCD27+B細胞がIgGを分泌するハイブリドーマを、CD27+B細胞の富化集団をIL−4、IL−10及びCD40Lで処理することを含まない方法と比べて増大した頻度で生じさせるということを示している。これらの結果は、表1にまとめてある。
【0189】
これらの結果は、27/40L/IL−4/IL−10法により処理されたPBMCが、増大した数の、融合パートナーとの融合後に生成されるハイブリドーマを生じたことを示している。表1に示したBoNT抗体のデータは、3つの培養方法に対する応答率の差を評価するために合わされた。HC50A IgG応答の計数につき、このモデルは、処理間の有意の差を生じた:27/40L/IL−4/IL−10は、CD40L/IL−4/IL−10(p<0.001)又はPWM(p=0.002)から有意に異なったが、CD40L/IL−4/IL−10及びPWMは異ならなかった(p=0.796)。この応答率は、27/40L/IL−4/IL−10について、CD40L/IL−4/IL−10より5.5倍高く(95% CI:4.5、6.8)、27/40L/IL−4/IL−10について、PWMより5.8倍高いと評価された。HC50B IgG応答の計数につき、このモデルは、処理間の有意の差を生じた。PWMは、CD40L/IL−4/IL−10及び27/40L/IL−4/IL−10から有意に異なり(p<0.001)、27/40L/IL−4/IL−10も又、CD40L/IL−4/IL−10から有意に異なった(p<0.001)。この応答率は、27/40L/IL−4/IL−10について、CD40L/IL−4/IL−10より15倍高いと評価された(95% CI:12.9、17.5)。PWMについては、応答は認められず、発生率は評価できなかった。これらの結果は、このCD27選択CD40L/IL−4/IL−10培養法が、他の試験された培養方法と比較して、抗原特異的IgG抗体につき有意に富化されたハイブリドーマライブラリーを生成することを示している。
【0190】
実施例3:27/40L/IL−4/IL−10法のワクシニアウイルス抗原に対する適用
IL−4、IL−10、CD40Lの存在下で培養されたCD27+B細胞が一層多くのハイブリドーマを生じたという観察は、ワクシニアウイルス抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマを生成することができるか否かを決定するために拡張された。PBMCは、ワクシニアウイルスに感染したドナーから採血された。採血時点は、ウイルスに曝露されたと見積もられた日から約3週後であり、患者は、未だ、感染の徴候がなかった。単離したPBMCを、PWM処理により、又はIL−4及びIL−10の存在下でCD27選択/tCD40L単層培養により調製して、B5−6T融合パートナーと他所で論じたように融合させた。雑種細胞選択後、ハイブリドーマの上清を、ELISAにより、全ワクシニアウイルス粒子に特異的なヒトIgG抗体につきアッセイした。PWMの存在下で培養された未選択PBMC集団からは、20ウェル中1つのウェルしか、ワクシニア特異的なヒトIgGについて陽性でなかった。対照的に、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で培養したCD27選択された細胞集団からは、20ウェル中17ウェルが陽性であった(表1)。
【0191】
【表1】

【0192】
実施例4:融合のためのCD27+B細胞の培養におけるIL−10とIL−21の比較
この実験のセットは、ハイブリドーマライブラリーを作成するための融合パートナーとの融合のためにCD27+B細胞の調製において、IL−4及びCD40Lと組み合わせたときのIL−10とIL−21との間の差を示すためにデザインされた。IL−10/IL−4/CD40L処理されたCD27+B細胞は、融合パートナーとの融合後に、IL−21/IL−4/CD40L処理したCD27+B細胞よりも一層多くの抗原特異的ハイブリドーマを生じさせるということが認められた。
【0193】
PBMCは、3〜6投与量の5価ボツリヌストキソイドワクチンを受けた志願患者から採血した末梢血から得られた。試料は、最後のワクチン投与量後、8日目に得られた。末梢血単核細胞を、CD27の発現につき磁気的に選択して、tCD40L細胞フィーダー層上でシクロスポリン、IL−4及びIL−10又はIL−21の存在下で培養した。これらの細胞を、次いで、B5−6T細胞系と融合させて、HAT選択培地中で2週間培養した。これらのハイブリドーマの上清を、組換えの50kDのC末端BoNT/Aドメイン(HC50A)又は組換えの50kDのC末端BoNT/Eドメイン(HC50E)に結合するヒト抗体の存在につきELISAにより評価した。CD27+B細胞のIL−10、IL−4及びCD40Lによる処理は、CD27+B細胞のIL−21、IL−4及びCD40Lでの処理よりも、ボツリヌス神経毒素HC50C末端ドメインに特異的な抗体を分泌する一層多くのハイブリドーマを生成するということが認められた(表2)。これらの結果は、IL−21は、ハイブリドーマライブラリーを生成するための細胞融合に望ましい細胞集団を生成するためのIL−4及びCD40Lの存在下でのCD27+B細胞の培養において、IL−10の代用となりえないことを示している。
【0194】
【表2】

【0195】
実施例5:抗体の特性表示
CD40L、IL−4及びIL−10の存在下で培養されたCD27+B細胞から生成されるハイブリドーマは、主として、IgG免疫グロブリンを分泌することが認められた。対照的に、未選択のBリンパ球集団から生成されたハイブリドーマは、有意の量のIgMとIgGの両方を生成した(図1)。これらの観察に基いて、次の実験のセットは、IL−4、IL−10及びCD40Lで処理されたCD27+B細胞から造られたハイブリドーマクローンにより発現される免疫グロブリン遺伝子の変異状態を特性表示するためにデザインされた。
【0196】
CD27選択された末梢血単核細胞は、5価のボツリヌストキソイドワクチン又はワクシニアウイルスに曝露された患者から得られた。これらのCD27+B細胞は、IL−4、IL−10及びCD40Lで処理されて、融合パートナー細胞系と融合されて、BoNT免疫ハイブリドーマライブラリー又はワクシニア免疫ハイブリドーマライブラリーを生成した。VH3及びVH4遺伝子ファミリーに特異的な共通プライマーを利用して、重鎖可変領域をこれらのハイブリドーマライブラリーからクローン化した。26の機能的重鎖可変ドメイン配列のすべてを、BoNT免疫ライブラリー(B1〜B15と表示)及びワクシニア免疫ライブラリー(V1〜V11と表示)の両方から得た(図3)。全26重鎖可変ドメイン配列の第三の相補性決定領域(CDR3)の遺伝子配列を、IMGTデータベース中の生殖細胞系の配列と、V−Questプログラム(Lefranc等、2005)を利用して比較した。これらの配列のうちの2つは、CDR3領域(B3、V2)に突然変異を含まなかった。4つの配列は、CDR3領域(B7、B10、V3、V5)に1〜2の変異を含んだ。そして、他の21の配列は、CDR3領域内に、全体として、1.1〜12.0%の変異率を有している。これらの結果は、CD27+末梢血B細胞において認められた変異率(Klein等、1998; Tian等、2007)と、分布において、高度に類似しており、それらは、本発明が、専ら、ポスト胚中心細胞に由来する抗体からなるハイブリドーマライブラリーを生成することを示している。この突然変異分析の結果は、図3にまとめてある。
【0197】
IL−4、IL−10、CD40Lで処理されたCD27+B細胞を用いて生成されたモノクローナル抗体は、ヒト末梢血B細胞中に見出されるGC後細胞により生成される抗体の典型的特性を示すということも又、認められた。例えば、BoNT免疫ライブラリー及びワクシニア免疫ライブラリーからの配列決定された遺伝子中のCDR3の長さは、9〜26アミノ酸に及び、26CDR3の内の12が、20以上のアミノ酸を含んだ(Brezinschek等、1995)。合せると、これらのデータは、処理されたCD27+B細胞から造られたハイブリドーマライブラリーは、主として、ポストGCB細胞集団の親和性の成熟した抗体レパートリーを反映するIgG抗体を発現することを示している。IgG分泌性ハイブリドーマのライブラリーの生成は、IgM分泌性ハイブリドーマのライブラリーを超えて有利なことである。何故なら、IgG抗体は、体細胞超変異を受けた抗体を代表するものであり、それ故、それらの抗原の結合部位に対する一層高い親和性を有するものだからである。
【0198】
これらの結果は、CD27選択とその後のIL−4、IL−10及びCD40Lの存在下でのイン・ビトロでの拡大は、IgM分泌性ハイブリドーマのバックグラウンドを下げ、GC後 IgGハイブリドーマの分泌に関してハイブリドーマライブラリーを冨化させ、そして、クローン化された抗原特異的な抗体の収率を増大させることを示している。末梢血中のポストGCB細胞レパートリーの約15%しかクラススイッチされないので、CD27+B細胞の、IL−4、IL−10及びCD40L中での拡大は、IgM+IgD+であるCD27+B細胞集団の約40%のクラススイッチングを与え、それ故、ハイブリドーマライブラリーにおけるIgG発現性ハイブリドーマ集団のパーセンテージを増大させる。
【0199】
実施例6:6Aハイブリドーマと6A抗体の生成
6Aハイブリドーマは、次のようにして生成される。CD27+B細胞を、5価のボツリヌストキソイドワクチンを接種された志願ドナーからの末梢血リンパ球から単離した。これらの単離されたCD27+B細胞をCD40リガンドを発現している細胞単層(tCD40L)上で培養した。この培養培地は、IL−4とIL−10を補足された。次いで、これらのCD27+B細胞をB5−6T融合パートナー細胞系と融合させて、HAT培地により標準的技術を用いて選択した。簡単には、培養されたCD27+B細胞を、50%ポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich)を用いる攪拌法及びHAT培地における選択を利用して、融合パートナー細胞と1:1の比率で融合させた。融合細胞を、48ウェルプレートにて、ウェル当たり2×105B細胞の密度で、ウェル当たり1×105C57BL/6胸腺細胞のフィーダー層の存在下で選択した。雑種細胞を、96ウェルプレート中で、1細胞/ウェルで、1×105C57BL/6胸腺細胞/ウェルにてクローン化した。3〜4回のクローニングの後に、安定なIgG分泌性ハイブリドーマを、IS MAB−CD(Irvine Scientific, Santa Ana, CA)に適合させ、100ml培養中に、5×105細胞/mlの密度でプレートし、そして、500mlのローラーボトル中で5日間インキュベートした。濾過した上清を、プロテインGセファロースカラム(GE Healthcare)上で精製した。純度を、SDS−PAGE(Invitrogen)を用いて評価した。タンパク質濃度を、NanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies, Wilmington, DE)を利用して測定した。
【0200】
雑種細胞のプールを、それらの上清中に分泌される、BoNT/Aに特異的に結合するヒト抗体につきELISAにより試験した。各陽性プール中の細胞を限界希釈法によりクローン化した。分泌された細胞のBoNT/Aに対する特異性を、限界希釈ELISAにより確認した。
【0201】
ヒトBoNT免疫グロブリンをアッセイするために、96ウェルのEasy Washプレートを、一晩、4℃で、100μl/ウェルのBoNT/A、BoNT/B、HC50A又はHC50Bで被覆した(PBS中の5g/ml) (Kiyatkin等、1997)。プレートを、PBS/0.05%ツイーン−20(Sigma-Aldrich)で洗ってから、37℃で、PBS/0.05%ツイーン−20/5%ウシ胎児血清/3%ヤギ血清(Sigma-Aldrich)にて、1時間、ブロックした。ハイブリドーマ上清を、100l/ウェルで加えて、2時間、37℃でイキュベートした後、二次抗体のマウス抗ヒトIgG HRP(9040−05)又はヤギ抗ヒトIgM HRP(2020−05)(Southern Biotechnology, AL)を加えた。OPDを、比色定量用基質として用いて;490nmでの光学密度(O.D.)を測定した。ハイブリドーマ上清中のヒト免疫グロブリンの定性分析を、記載されたように(Dessain等、2004)、ポリクローナルウサギ抗ヒト全IgG(6145−01)(Southern Biotech)を捕捉抗体として用い、HRP結合した抗IgG及び抗IgM二次抗体を用いて行なった。軽鎖を、ポリクローナルウサギ抗IgGによる抗体の捕捉及び、HRP結合された特異的ヤギポリクローナル抗体A5175(ラムダ)及びA7164(カッパ)( Sigma-Aldrich)による軽鎖の検出により評価した。
【0202】
6Aと示されたハイブリドーマを、更なる結合分析のために、ELISAスクリーニングにおける陽性結果に基いて選択した。6Aハイブリドーマから分泌される6A抗体を、フロー蛍光計(Sapidyne Instruments, Boise, ID)を用いる動的排除アッセイ(KinExA)にかけて、溶液相親和性及び会合率定数を測定した。KinExA実験は、室温で行なった。流動緩衝液は、トリス緩衝塩溶液(10TBS−10mMトリス、100mM NaCl、0.02% NaN3、pH8)であったが、試料用緩衝液は、1mM PMSF、1mg/ml BSA、HC50Aを補足した10TBSであった。HC50Aは、記載されたように精製され(Maksymowych及びSimpson, 2004)、スーパーデックスS200サイズ排除カラム(GE Healthcare)上を通過させることによる精製ステップにより処理された。抗原濃度を、エデルホッフ法、吸光係数87050を用いて測定した(Edelhoch, 1967)。平衡実験を、HC50Aを一定抗体濃度を有する溶液中に連続希釈することにより準備した。平衡時間を、溶液を、安定した較正KDに達するまで、多数回流すことにより経験的に決定した。平衡実験は、少なくとも5回行なった。
【0203】
会合率実験を、単一反応での6A抗体とHC50Aとの結合を、反応が平衡まで進行する際に、時間の関数として追跡する「直接速度論(Direct Kinetics)」法を用いて行なった(Luginbuhl等、2006)。すべてのKinExA実験は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズ(Sapidyne Instruments)に共有結合されたHC50Aを利用した。一般に、反応混合物中の遊離の抗体は、HC50結合されたビーズ上を通過させることにより捕捉され、ヤギ抗ヒトローダミン標識二次抗体(0.5g/ml)(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)により検出された(Luginbuhl等、2006)。平衡データは、ドリフト補正率を含む製造業者のソフトウェア(バージョン2.4;Sapidyne Instruments)を用いて、1:1結合モデルに適合した。速度論的実験は、このソフトウェアに含まれる一般的二分子会合モデルに適合した。解離率定数を、積KD×konとして計算した。6A抗体は、4.4×105-1-1の会合率(kon)を有するBoNT/Aに対して6.9×10-12MのKD値を有することが測定された(図2)。
【0204】
6Aハイブリドーマを、ブダペスト条約により、American Type Culture Collection (米国、10801 University Blvd, Manassas, Va. 20110-2209)に、2008年1月15日に寄託して、ATCC受託番号PTA−8870を割り当てられた。
【0205】
実施例7:6A抗体の中和活性
10pgのBoNT/A(約2.5LD50)(Metabiologics)を、100μgの抗体又は対照用細胞培養培地と、1時間、室温でインキュベートしてから、トマス・ジェファーソン大学のInstitutional Animal Care and Use Committee に認可されたプロトコールに従って、25グラムのSwiss-Websterマウスに静脈内投与した。マウスを、先ず、注射後5日間にわたって観察し(Pearce等、1994)、それらが瀕死の様子を呈したら殺した。6A抗体を受けたマウスは、生存したが、他の何れの抗体(1A、15A、31A)を受けたマウスも生存しなかった。しかしながら、15A抗体は、死に始めるのを遅くすることが認められた(図4)。
【0206】
次いで、6A抗体を試験して、それが、中毒前及び中毒後モデルの両方においてBoNT/Aを中和することができるか否かを測定した(図4)。3匹のマウスのグループは、500μgの6A抗体を、BoNT/Aの静脈内投与の60分前又は15分後に、静脈注射された。両グループのすべてのマウスは、生存し、これは、マウスの血液循環中で効果的にBoNT/Aに結合して中和する6A抗体の能力を示した。標準的な5日間の観察の後に、これらのマウスを全部で4週間にわたってモニターしたが、後発の病的状態も死亡も認められなかった。
【0207】
この6A抗体は、致死的投与量のBoNTをイン・ビボで完全に中和することのできる最初の完全にヒトのIgGであるという点においてユニークである(この能力を有するマウス抗体は、Pless等、2001に報告されているが)。その上、6Aは、曝露前及び曝露後予防モデルにおいてマウスを防護することができ、これは、如何なる単一BoNT中和性抗体についても示されたことはない。6A抗体の高い親和性及び結合状態の安定性が、それを、BoNT/Aに対するオリゴクローナル抗体治療剤の理想的成分にしている。
【0208】
実施例8:抗体のクローニング
6A、抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインのcDNAは、本書の他所で記載したハイブリドーマから標準的RT−PCR技術によってクローン化された。BoNT特異的抗体の可変DNA配列は、ヒト免疫グロブリン重鎖及びカッパ軽鎖(Campbell等、1992)及びラムダ軽鎖(Coronella等、2000)に特異的な共通プライマーセットを用いて増幅された。RNAは、ハイブリドーマから、RNA Stat60(Tel-Test, Inc., Friendswood, TX)を用いて単離された。逆転写酵素反応は、OmniscriptRT(Qiagen, Valencia, CA)を用いて行なわれた。PCR反応は、Taq(Qiagen)を用いて、94℃で15秒;55℃で30秒;72℃で60秒で30サイクル行なわれた。増幅された配列は、アガロースゲル電気泳動によって分離され、その後、QiaQuickゲル抽出キット(Qiagen)により精製されてから、Kimmel Cancer center Nucleic Acid Facility により配列決定された。非特異的な免疫グロブリン重鎖の配列は、RT−PCRにより、VH3(JH3を伴うV10B)又はVH4(JH145を伴うVH4及びVH6B)に特異的なオリゴヌクレオチドを用いて増幅された(Goossens等、1998; Coronella等、2002)。このRT反応は、スーパースクリプトII及びオリゴdTプライマー(Invitrogen)を用いて行なわれた。PCR反応は、Expand High Fidelity PCRシステム(Roche)にて行なわれ(94℃で15秒;55℃で30秒;72℃で60秒の25サイクル - 16−25サイクルの各サイクルは、5秒増大させた)、配列決定のために、Topo−TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてクローン化された。DNA配列を、V−Questプログラム(Lefranc等、2005)を用いて分析した。
【0209】



【0210】
本明細書中で引用した各発明、発明の出願、及び刊行物の開示は、参考として、本明細書中に、そっくりそのまま援用する。
【0211】
この発明は、特定の具体例に関して開示されてきたが、この発明の他の具体例及び変形物が、当業者によって、この発明の真の精神及び範囲から離れることなく工夫されうるということは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのかかる具体例及び同等の変形物を含むと解されるべきであるということを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリドーマの作成方法であって、CD27+B細胞を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で一定期間にわたってイン・ビトロで培養し、該培養されたCD27+B細胞を融合パートナー細胞系と融合させ、それによりハイブリドーマを生成することを含む方法。
【請求項2】
CD27+B細胞培養物中のIL−4の濃度が約2ng/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CD27+B細胞培養物中のIL−10の濃度が約10ng/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD27+B細胞培養中に、CD40Lが、tCD40L細胞の表面に提示されたCD40Lの形態で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
融合パートナー細胞系が、mIL−6及びhTERTを異所的に発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記のCD27+細胞が、免疫化された患者から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により生成されたハイブリドーマ。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
【請求項9】
ATCC受託番号PTA−8870で寄託されたハイブリドーマ。
【請求項10】
モノクローナル抗体を生成する方法であって、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で一定期間にわたってイン・ビトロで培養されたCD27+B細胞を、融合パートナー細胞系と融合させてハイブリドーマを生成し;該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択して;該ハイブリドーマを培養して該モノクローナル抗体を生成することを含む方法。
【請求項11】
CD27+B細胞の培養物中のIL−4の濃度が約2ng/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CD27+B細胞の培養物中のIL−10の濃度が約10ng/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
CD27+B細胞の培養中に、CD40Lが、tCD40L細胞の表面に提示されたCD40Lの形態で与えられる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
融合パートナー細胞系が、mIL−6及びhTERTを異所的に発現する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記のCD27+細胞が、免疫化された患者から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法により生成された抗体、又は該抗体の抗原結合性断片。
【請求項17】
ATCC受託番号PTA−8870で寄託されたハイブリドーマにより産生される抗体が特異的に結合するエピトープに特異的に結合する抗体。
【請求項18】
ATCC受託番号PTA−8870で入手可能な抗体、又は該抗体の抗原結合性断片。
【請求項19】
アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含む抗体重鎖可変ドメインを含む抗体重鎖ポリペプチド;及びアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインを含む抗体軽鎖ポリペプチドを含む抗体;又は該抗体の抗原結合性断片。
【請求項20】
アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む重鎖ポリペプチド、及びアミノ酸配列6を含む軽鎖ポリペプチドを含む、請求項19に記載の抗体;又は該抗体の抗原結合性断片。
【請求項21】
請求項17、19又は20の何れかに記載の抗体断片であって、一本鎖Fv(scFv)断片、Fab断片、(Fab')2断片又は(scFv')2断片である抗体断片。
【請求項22】
BoNT/Aを中和する必要のある患者においてBoNT/Aを中和する方法であって、該患者に、治療上有効な量の請求項17、19又は20の何れかに記載の抗体又は抗原結合性断片を投与することを含む方法。
【請求項23】
単離された核酸分子であって、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む抗体重鎖ポリペプチド又はアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含む抗体軽鎖ポリペプチドの少なくとも一つをコードする核酸分子。
【請求項24】
請求項23に記載の単離された核酸分子であって、前記の抗体重鎖ポリペプチドをコードする第一の核酸セグメント及び前記の抗体軽鎖ポリペプチドをコードする第二の核酸セグメントを含む核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の単離された核酸分子であって、第一の核酸セグメントがヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を含み、第二の核酸セグメントがヌクレオチド配列SEQ ID NO:5を含む核酸分子。
【請求項26】
単離された核酸分子であって、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含む抗体重鎖可変ドメイン及びアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含む抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも一つをコードする核酸分子。
【請求項27】
請求項26に記載の単離された核酸分子であって、前記の抗体重鎖可変ドメインをコードする第一の核酸セグメント及び前記の抗体軽鎖可変ドメインをコードする第二の核酸セグメントを含む核酸分子。
【請求項28】
請求項27に記載の単離された核酸分子であって、第一の核酸セグメントがヌクレオチド配列3を含み、第二の核酸セグメントがヌクレオチド配列7を含む核酸分子。
【請求項29】
ハイブリドーマのライブラリーを作成する方法であって、CD27+B細胞を、IL−4、IL−10及びCD40Lの存在下で、一定期間にわたって、イン・ビトロで培養し、そして該培養されたCD27+B細胞を融合パートナー細胞系と融合させ、それによりハイブリドーマのライブラリーを生成する方法。
【請求項30】
請求項29に記載のハイブリドーマのライブラリーにより生成されるモノクローナル抗体のライブラリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2011−510654(P2011−510654A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545017(P2010−545017)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/000562
【国際公開番号】WO2009/105150
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(597177242)トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
【Fターム(参考)】