説明

期貯蔵寿命が長い反応性熱硬化系

【課題】貯蔵寿命が長い反応性熱硬化性系。複合材料用の半製品、例えば反応性織成物または反応性フィルムを製造する方法。
【解決手段】上記半製品は2つの調合物、すなわち、エポキシ樹脂とレオロジー制御剤とをベースにした調合物1と、硬化剤とレオロジ-制御剤とをベースにした調合物2から作られる。この半製品は貯蔵中安定であり、しかも、所望の熱硬化性材料を作るために温度を上げた時に全体が一緒になって反応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性材料と、この材料の製造方法とに関するものである。
本発明は特に、別々に処理された2つの調合物(formulation)を用いて、複合材料用の反応性織物(textile)や反応性フィルムのような半製品を製造する方法に関するものである。この半製品は貯蔵中安定であるが、温度を上げると全体が反応して熱硬化性材料になる。
【0002】
熱硬化性材料は三次元ネットワーク(網状構造)を形成するように共有結合によって互いに結合した各種長さのポリマー鎖で形成されたものと定義できる。この熱硬化性材料は例えば熱硬化性樹脂(例えばエポキシ)とアミン型硬化剤との反応で得られる。熱硬化性材料は構造接着剤、複合材料用マトリックスさらには電子部品を保護する用途等で使用可能な多くの特性を有している。
【0003】
複合構造物の機械特性を改良するのは数千本のフィラメントから成る補強繊維である。この補強繊維はガラス、炭素、アラミド、その他所望特性を有する有機または無機の材料から成る。
エポキシ材料は高い架橋密度と高いガラス遷移温度(Tg)を有し、優れた熱機械的性質を有する。エポキシ材料は高い架橋密度と高いTgとを有し、熱機械特性に優れるだけでなく、材料の使用限界温度が高い。
【0004】
しかし、エポキシ材料は取り扱いが難しい。その使用を容易にするための解決策がいくつか提供されている。例えば、下記文献にはブロック共重合体をベースにしたレオロジー調整剤を用いて熱硬化性フィルムにしている。
【特許文献1】フランス特許第FR 2 841 252号公報
【0005】
しかし、この材料は貯蔵中に反応しないようにするために冷却貯蔵する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、エポキシ樹脂とその硬化剤とが分離され且つ成形時に最終反応ができる程度に接近し、しかも、容易にハンドリングでき、貯蔵安定度性が高い、熱硬化性材料とレオロジ調整剤とをベースにした特定の配合物(formulations)は物品に成形できるということを見出した。
【0007】
本発明が提供する解決策は2つの調合物(その一つは例えばエポキシドのプレポリマーからなる一種の熱硬化性樹脂とそのレオロジー制御剤とをベースにしたもの、その他方は硬化剤とレオロジー制御剤とをベースにしたもの)を同時に処理することをベースにしている。
【0008】
上記の同時に処理することで複合材料にするための反応性織物または反応性フィルムのような半製品を得ることができる。この半製品は貯蔵中安定で、しかも、所望の熱硬化性材料を成形するために温度を上げた時に反応できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の対象は、下記(a)〜(e)の段階から成る熱硬化性の材料および物品の製造方法:
(a)10〜99重量%の少なくとも一種のエポキシドプレポリマーと1〜90重量%の少なくとも一種のレオロジー調整剤(I)とから成る配合物(A)を用意し、
(b)1〜90重量%の少なくとも一種の硬化剤と10〜99重量%の少なくとも一種のレオロジー調整剤(I)とから成る調合物(B)を用意し、
(c)上記調合物(A)と調合物(B)を同時に処理して半製品を作り、その際に、製造すべき材料および物品の種類に応じて、必要な場合にはエポキシドプレポリマーと硬化剤との間の化学量論量を守り、必要に応じて繊維、マット、織成物、複合材料で一般に用いられているその他の材料を添加し、
(d)熱硬化性の複合材料を作るために半製品に実施する一般的な方法、例えばシート成形(drapage)、成形、サンドイッチ法(systems sandwich)で、段階(c)で作った半製品を用いて所望の構造物を作り、
(e)熱硬化性の複合材料の一般的な方法、例えば加熱成形で、調合物Aおよび調合物Bに熱を加え、必要な場合には圧力を加えて、上記調合物を反応させて複合材料にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の調合物(A)は下記から成る:
(1) 調合物の総重量の1〜90重量%のレオロジー制御剤(I)で、このレオロジー制御剤(I)は例えばS−B−M、B−MおよびM−B−Mブロック共重合体の中から選択される少なくとも一種のブロック共重合体:
(ここで、
各ブロックは共有結合で互いに結合しているか、1つまたは複数の中間分子を介して互いに結合し、共有結合で一方のブロックに結合し、他の共有結合で他方のブロックに結合し、
Mは熱硬化性樹脂と相溶性のあるポリマー、例えばメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも20重量%含コポリマーであり、
Bは熱硬化性樹脂およびMブロックとは非相溶性であり、
Sは熱硬化性樹脂およびBブロックと非相溶性である)
(2) 調合物の総重量の10〜99重量%の少なくとも一種の熱硬化性樹脂(II)。
【0011】
調合物(A)は調合物の総重量の0〜50重量%の少なくとも一種の熱可塑性材料(III)をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の調合物(B)は1〜90重量%の少なくとも一種の硬化剤と、10〜99重量%の少なくとも一種のレオロジー調整剤(I)とを含む。
なお、調合物Aおよび調合物Bに含まれるレオロジー調整剤(I)は必ずしも同じものである必要はない。
【0013】
本発明配合物は熱可塑性的な挙動を示し、熱可塑性プラスチック材料を成形するための標準的な技術で処理できるが、反応性を有し、熱硬化性樹脂材料に成形できる。本発明配合物は反応の間、完全に液体状またはゴム状態をしている。
当業者は製造すべき物品に応じて使用する調合物(A)および(B)の量を決めることができる。
【0014】
熱硬化性材料は三次元ネットワーク(網状構造)を形成するように共有結合によって互いに結合した各種長さのポリマー鎖で形成されたものと定義できる。例としては架橋されたエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0015】
熱硬化性材料は熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤との反応で有られるものが好ましい。これはオキシラン基を有するオリゴマと硬化剤とのの任意の反応生成物と定義することもできる。このエポキシ樹脂の反応時に起こる反応から三次元ネットワークに対応する架橋材料ができる。架橋密度はベース樹脂と使用する硬化剤によって変わる。
【0016】
「エポキシ樹脂」(以下、Eで表す)は開環重合可能なオキシランタイプの少なくとも2つの官能基を有する任意の有機化合物を意味する。「エポキシ樹脂」という用語は室温(23℃)またはそれ以上の高温度で液体である任意のエポキシ樹脂を意味する。このエポキシ樹脂はモノマーでもポリマーでもよく、また、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族でもよい。この種のエポキシ樹脂の例としてはレソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ブロムビスフェノールF ジグリシジルエーテル、m-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ポリフェノール−ホルムアルデヒド ノボラックグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックポリグリシジルエーテル、テトラテトラフェニルエタングリシジルエーテルを挙げることができる。これら樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0017】
特に好ましいエポキシ樹脂は1分子当り少なくとも1,5のオキシラン基を有するエポキシ樹脂、特に1分子当り2〜4つのオキシラン基を有するものである。また、少なくとも一つの芳香環、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルを有するエポキシ樹脂も好ましい。
【0018】
硬化剤としては下記を挙げることができる:
(1)酸無水物、特に無水琥珀酸、
(2)芳香剤または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)またはメチレンジアニリンまたは4,4'-メチレンビス(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)
(3)ジシアンジアミドとその誘導体、
(4)イミダゾール、
(5)ポリカルボン酸、
(6)ポリフェノール。
【0019】
「レオロジ制御剤」という用語は、熱硬化性材料と混合したときに、熱硬化性樹脂材料にするのに必要な反応性を保持した状態で、熱可塑性樹脂の成形分野で公知の任意の技術で熱硬化性材料を成形できるようにする任意の化合物を意味する。このレオロジ制御剤はS−B−M、B−MまたはM−B−Mブロック共重合体の中から選択されるブロック共重合体にするのが好ましい。
(1)各ブロックは共有結合しているか、一方のブロックに共有結合で接合し、他方のブロックへ他の共有結合で結合した一種または複数の中間分子を介して互いに結合している。
【0020】
Mは熱硬化性樹脂と相溶性のあるポリマーである。Mはメタクリル酸メチルか、メタクリル酸メチルを少なくとも20重量%、好ましくは50重量%含むのが好ましい。Mブロックを構成する他のモノマーはアクリルモノマーでもなくてもよく、反応性があってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語はエポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の基と反応可能な基を意味する。反応性官能基の非限定的な例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基を挙げることができる。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸となる他の任意の加水分解可能なモノマーにすることができる。Mブロックを構成できる他のモノマーの非限定的な例としてはメタクリル酸グリシジルまたはtert-ブチルメタクリル酸エステルを挙げることができる。Mブロックは少なくとも60重量%のシンジオタクチックなPMMAから成るのが有利である。
【0021】
Bは熱硬化性樹脂およびMブロックと非相溶であり、そのガラス遷移温度Tgは0℃以下、好ましくは−40℃以下にする。エラストマブロックBを合成するのに使用されるモノマーはジエンにすることができる。このジエンはブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは2-フェニル-1,3-ブタジエンの中から選択できる。このBはポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、これらのランダム共重合体または部分的または完全に水素化されたポリ(ジエン)の中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えば1,2-ポリブタジエンのTg(約0℃)より低いTg(約−90℃)を有する1,4-ポリブタジエンを使用するのが好ましい。Bブロックは水素化されていてもよい。この水素化は標準的な技術で実行できる。エラストマブロックBを合成するのに用いるモノマーはアルキル(メタ)アクリレートでもよい。Tg値は各モノマーの後のカッコ中に示してある:アクリル酸エチル(-24℃)、アクリル酸ブチル(-45℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-60℃)、ヒドロキシエチルアクリラート(-15℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(-10℃)。アクリル酸ブチルを使用するのが有利である。BとMは非相溶成であるので、BのアクリレートはMブロックのアクリレートとは相違する。Bブロックは1,4-ポリブタジエンを主とするのが好ましい。Bは熱硬化性樹脂およびMブロックと非相溶であり、そのガラス遷移温度Tgは熱硬化性樹脂材料の使用温度以下である。
【0022】
Sは熱硬化性樹脂およびBブロックと非相溶成で、そのTgまたはその融点MpはBのTgより高い。SのTgまたはMpは23℃以上、好ましくは50℃以上にするのが有利である。Sブロックの例としてビニル芳香属化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるものや、アクリル酸および/またはメタアクリル酸から得られるアルキル鎖の炭素原子が1〜18のアルキルエステルが挙げられる。
【0023】
S−B−M、B−MまたはM−B−Mコポリマーの重量平均モル質量は10000g/モル〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/モルにするのが好ましい。合計を100重量%とした場合、下記の比率が有利である:
Mの場合:10〜80%、好ましくは15〜70%、
Bの場合:2〜80%、好ましくは5〜70%、
Sの場合:10〜88%、好ましくは15〜85%。
【0024】
本発明の組成物で使用されるブロック共重合体は例えば下記文献に記載のアニオン重合方法または制御下のラジカル重合で製造できる。
【特許文献2】欧州特許出願第EP 524.054号公報
【特許文献3】欧州特許出願第EP 749 987号公報
【0025】
レオロジ制御剤の配合比率は、90〜40重量%の熱硬化性樹脂に対して10〜60重量%にするのが有利である。
【0026】
本発明の好ましい実施例でのレオロジ制御剤は少なくとも一種のS−B−Mブロック共重合体と少なくとも一種のS−Bブロック共重合体とから成るのが好ましい。S−Bジブロックが5〜80重量%、S−B−Mのトリブロックが20〜95重量%にするのが有利である。
S−BジブロックのSとBブロックは互いに非相溶成であり、S−B−MトリブロックのSブロックおよびBブロックと同じモノマー(必要な場合にはコモノマー)で構成できる。SおよびBブロックは熱硬化性樹脂材料の衝撃改良剤の他のブロック共重合体中に存在する他のS およびBブロックと同一でも異っていてもよい。
【0027】
S−Bジブロックの重量平均モル質量は10000g/モル〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/モルにすることができる。S−BジブロックのBの比率は5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%である。
【0028】
さらに、これらの組成物には合成で得られたS−B−Mを精製する必要がないという利点がある。すなわち、S−B−Mコポリマーは一般にS−Bから作られ、この反応では多くの場合、S−BとS−B−Mのコポリマーブレンドが得られ、S−BMコポリマーを得るにはそれを精製する。
【0029】
本発明の有利な実施例では、S−B−Mの一部をS−Bジブロックで置換できる。置換可能部分はS−B−Mの70重量%までである。
S−B−Mトリブロックの一部または全てをM−S−B−S−MまたはM−B−S−B−Mペンタブロックで置換しても本発明の範囲を逸脱するものではない。これらはジ−またはトリ−ブロックに会して上記で説明したアニオン重合で製造できるが、二官能性の重合開始剤を使用する。
【0030】
このペンタブロックの数平均モル質量はS−B−Mトリブロックと同じ範囲にすることができる。2つのMブロック、2つのBブロックまたはSブロックの配合比率はS−B−MトリブロックでのS、BおよびMの配合比率範囲と同じにすることができる。
【0031】
本発明配合物はエポキシドプレポリマーとレオロジー調整剤(配合物式A)および硬化剤とレオロジー調整剤(配合物B)とを混合できる従来の任意の混合方法で調製できる。熱硬化可能な樹脂と制御剤とを均一にブレンドすることができる任意の熱可塑性樹脂の技術、例えば押出成形機を使用することができる。得られた材料は未反応か、部分的に反応したもので、取り扱い可能なゴム状材料の形をしている。上記の2種類の配合物(配合物Aおよび配合物B)共押出して非反応かつ未反応な熱可塑性フィルムにすることもできる。このフィルムの2つの部分は加熱圧縮タイプの方法では混合しない。
【0032】
本発明は反応後に熱可塑性の挙動を示す直鎖または分枝したポリマーの形にすることが可能な反応性液体樹脂に適用できるということは明らかである。
本発明の他の対象は本発明配合物の各種用途、例えばスポーツ分野、産業分野、自動車分野、エレクトロニクスおよび航空分野での使用にある。
【0033】
本発明配合物に通常の添加物、例えば熱可塑性プラスチック、例えばポリエーテルサルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリフェニレンエーテル、液体弾性材またはコア−シェルタイプの衝撃吸収材を添加しても本発明の範囲から逸脱するものではない。
硬化条件
硬化条件は一般的なものである。
【実施例】
【0034】
下記の製品を使用した:
エポキシ樹脂
モル質量が383グラム/モルで、一つのエポキシ基当りのヒドロキシル基の平均数n=0.075のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)である(Vantico社から商品番号LY556で市販)。
硬化剤
芳香族ジアミンの4,4'-メチレンビス-(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)であるアミン硬化剤(Lonza社から商品番号Lonzacure MDEAで市販)。この製品の特徴は融点が87℃〜90℃で、モル質量が310グラム/モルである点。
【0035】
SBM1
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、Mがポリ(メタクリル酸メチル)であるS−B−Mトリブロックコポリマー。このSBM1のポリスチレンの重量比は12%、ポリブタジエンの重量比は10%、ポリ(メタクリル酸メチル)の重量比は78%で、重量平均モル質量が6000グラム/モルのポリスチレンブロックと、重量平均モル質量が5000g/モルのポリブタジエンブロックと、重量平均モル質量が40000g/モルのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックとを順次アニオン重合して得られる。この製品は上記特許文献2(欧州特許出願第EP 524.054号公報)および特許文献3(欧州特許出願第EP 749 987号公報)に記載の方法従って製造されたものである。この製品は3つのガラス転移温度(−90℃、95℃および130℃)を示す。
【0036】
SBM2
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、PMMAであるS−B−Mトリブロックコポリマー。このSBM2のポリスチレンの重量比は13%、ポリブタジエンの重量比は11%、PMMAの重量比は74%で、重量平均モル質量が10400グラム/モルのポリスチレンブロックと、重量平均モル質量が8800g/モルのポリブタジエンブロックと、重量平均モル質量が59200g/モルのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックとを順次アニオン重合して得られる。この製品は上記特許文献2(欧州特許出願第EP 524.054号公報)および特許文献3(欧州特許出願第EP 749 987号公報)に記載の方法従って製造されたものである。この製品は3つのガラス転移温度(−90℃、95℃および130℃)を示す。
【0037】
硬化条件
ブレンド物を220℃で2時間硬化させた。
熱機械分析による主機械的緩和温度Tαの測定
Tα(temperature de relaxation mecanique principale)はレオメータ装置(Rheometrics Solid Analyser RSAII)を使用し、後硬化させたサンプルを動的機械的分析によって測定した。平行四辺形(1×2.5×34 mm3)のサンプルに1Hzの引張り振動数で50〜250℃の温度を変えた。ガラス遷移温度は最大tan値をとった。
【0038】
実施例1(本発明)
383グラム/モルの質量を有するDGEBAに全Mn 51000 g/モルのSBM1を混合し、ウエルナー社の二軸押出機で190℃で押出し、調整物(A)とした。SBMの含有率は40%である。同じSBM1を同じ二軸押出機でMDEAと混合して調整物(B)とした。SBMの含有率は40%である。
配合物(A)と配合物(B)とを用いて線状製品に押し出した。2種類の線状製品をエポキシドとアミンとの間の化学量論量が守られる状態で、織成(tisse)した。得られたテキスタイルをプレス下で200℃に2時間保持した。得られた熱硬化性材料のTgは165℃である。
【0039】
実施例2(本発明)
383グラム/モルの質量を有するDGEBAに全Mn 80000 g/モルのSBM2を混合し、ウエルナー社の二軸押出機で190℃で押出し、調整物(A)とした。SBMの含有率は40%である。全Mn 51000 g/モルのSBM1を同じ二軸押出機でMDEAと混合して調整物(B)とした。SBMの含有率は40%である。
配合物(A)と配合物(B)とを用いて線状製品に押し出した。2種類の線状製品をエポキシドとアミンとの間の化学量論量が守られる状態で、織成(tisse)した。得られたテキスタイルをプレス下で200℃に2時間保持した。得られた熱硬化性材料のTgは164℃である。
【0040】
実施例3(比較例)
348.5グラム/モルの質量を有するダウケミカル社のエポキシド混合物(DGEBA)60gにロンザ社のアミンMDEAをロール混合機で混合した。DGEBAとMDEAとは化学量論量、すなわち、DGEBA41.53gとMDEA18.47gで混合した。混合は150℃で行なった。圧縮成形で100μmの厚さを有する透明なフィルムを得た。このフィルムは周囲温度で取り扱いできた。しかし、周囲温度で1ヵ月間貯蔵した後のフィルムは堅くて脆くなり、ハンドリングが簡単にできなくなった。このフィルムのガラス遷移温度は26℃である。
【0041】
実施例4(本発明)
383グラム/モルの質量を有するDGEBAに全Mn 51000 g/モルのSBM1をウエルナー社の同時回転式二軸押出機で190℃で混合・押出し、調整物(A)とした。SBMの含有率は40%である。同じSBM1を同じ二軸押出機でMDEAと混合して調整物(B)とした。SBMの含有率は40%である。
配合物(A)と配合物(B)とをCollin社の機械CASTを用いて共押出しした。フィルムの巾は200mm、全体の厚さは100μmであり、配合物(A)をベースにした層Aの厚さは65μm、配合物(B)をベースにした層Bの厚さは35μmである。フィルムが互いに付着するのを上記フィルムはポリエチレンの支持フィルムと一緒に共押出しした。室温で1ヵ月間貯蔵した後でも上記フィルムはしハンドリングでき、フィルム境界での反応程度はフィルムが熱可塑性を保持するために十分に低いものであった。上記のポリエチレンフィルムは共押出しした配合物(A)+(B)の構成物から簡単に剥がすことができた。得られた構成物を金型に入れ、220°C、50kg/cm2の圧力下に4時間に圧縮成形した。得られた材料は熱硬化性材料の全ての特性を示し、トルエンに溶解しない。ガラス遷移温度は170℃である。
【0042】
実施例5(本発明)
383グラム/モルの質量を有するDGEBAに全Mn 80000 g/モルのSBM2をウエルナー社の同時回転式二軸押出機で190℃で混合・押出して調整物(A)とした。SBM2の含有率は40%である。全Mn 51000 g/モルのSBM1を同じ二軸押出機でMDEAと混合して調整物(B)とした。SBMの含有率は40%である。
配合物(A)と配合物(B)とをCollin社の機械CASTを用いて共押出しした。フィルムの巾は200mm、全体の厚さは100μmであり、配合物(A)をベースにした層Aの厚さは65μm、配合物(B)をベースにした層Bの厚さは35μmである。フィルムが互いに付着するのを上記フィルムはポリエチレンの支持フィルムと一緒に共押出しした。室温で1ヵ月間貯蔵した後でも上記フィルムはしハンドリングでき、フィルム境界での反応程度はフィルムが熱可塑性を保持するために十分に低いものであった。上記のポリエチレンフィルムは共押出しした配合物(A)+(B)の構成物から簡単に剥がすことができた。得られた構成物を金型に入れ、220°C、50kg/cm2の圧力下に4時間に圧縮成形した。得られた材料は熱硬化性材料の全ての特性を示し、トルエンに溶解しない。ガラス遷移温度は170℃である。
【0043】
実施例6(比較例)
ロール混合機に、40gのSBM1と、348.5グラム/モルの質量を有するダウケミカル社のエポキシド混合物(DGEBA)60gと、ロンザ社のアミンMDEAとを導入した。DGEBAとMDEAとは化学量論量、すなわち、DGEBA41.53gとMDEA18.47gで混合した。混合は150℃で行なった。圧縮成形で100μmの厚さを有する透明なフィルムを得た。このフィルムは周囲温度で取り扱いできた。しかし、周囲温度で1ヵ月間貯蔵した後のフィルムは堅くて脆くなり、ハンドリングが簡単にできなくなった。このフィルムのガラス遷移温度は26℃である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)の段階から成る熱硬化性の材料および物品の製造方法:
(a)10〜99重量%の少なくとも一種のエポキシドプレポリマーと1〜90重量%の少なくとも一種のレオロジー調整剤(I)とから成る配合物(A)を用意し、
(b)1〜90重量%の少なくとも一種の硬化剤と10〜99重量%の少なくとも一種のレオロジー調整剤(I)とから成る調合物(B)を用意し、
(c)上記調合物(A)と調合物(B)を同時に処理して半製品を作り、その際に、製造すべき材料および物品の種類に応じて、必要な場合にはエポキシドプレポリマーと硬化剤との間の化学量論量を守り、必要に応じて繊維、マット、織成物、複合材料で一般に用いられているその他の材料を添加し、
(d)熱硬化性の複合材料を作るために半製品に実施する一般的な方法、例えばシート成形(drapage)、成形、サンドイッチ法で、段階(c)で作った半製品を用いて所望の構造物を作り、
(e)熱硬化性複合材料の一般的な方法、例えば加熱成形で、上記調合物を反応させて複合材料にする。
(なお、調合物Aおよび調合物Bに含まれるレオロジー調整剤は必ずしも同じものである必要はない)
【請求項2】
レオロジー調整剤がS−B−M、B−MおよびM−B−Mコポリマーの中から選択される少なくとも一種のブロック共重合体等からなる請求項1に記載の方法:
(ここで、上記の各ブロックは共有結合しているか、一方のブロックに共有結合で接合し、他方のブロックへ他の共有結合で結合した一種または複数の中間分子を介して互いに結合しており、
Mはエポキシドプレポリマーと相溶性のあるポリマー、例えばメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも20重量%含コポリマーであり、
BはエポキシドプレポリマーおよびMブロックとは非相溶性であり、
Sは熱硬化性樹脂およびBブロックと非相溶性である)
【請求項3】
Mブロックがポリ(メタクリル酸メチル)およびメタクリル酸メチルを少なくとも20重量%含むコポリマーの中から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブロック共重合体のMブロックが少なくとも75重量%がシンジオタクチックなPMMAから成る請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ブロック共重合体のMブロックが、メタクリル酸グリシジル、tert-メタクリル酸ブチルまたはアクリル酸のような反応性モノマーをさらに含む請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
BブロックのTgが0℃以下、好ましくは−40℃以下である請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Bブロックがポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)またはポリ(オクチルアクリレート)のようなポリ(アクリル酸アルキル)およびポリジエンの中から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項8】
Bブロックが1,4-ポリブタジエンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Bブロックのジエンが水素化されている請求項7ま8に記載の方法。
【請求項10】
SのTgまたはMpが23℃以上、好ましくは50℃以上である請求項2に記載の方法。
【請求項11】
Sがポリスチレンである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ブロック共重合体の重量平均モル質量が10000 g/モル〜500000g/モルである請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ブロック共重合体の重量平均モル質量が20000g/モル〜200000g/モルである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記の同時の処理が共織成(coweaving)加工である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法で得られた織成物および編成物。
【請求項16】
上記の同時の処理が共押出し成形である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記の処理が粉末混合物による含浸である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法で得られる熱硬化性の物品または材料。

【公表番号】特表2007−517951(P2007−517951A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548343(P2006−548343)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000033
【国際公開番号】WO2005/073314
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】