説明

木材乾燥装置

【課題】 木材乾燥室内で、強制乾燥中に生じる木材への暗黒色液体の付着を無くすことのできる木材乾燥装置を提供する。
【解決手段】 本発明の乾燥装置は、木材5を積載して木材乾燥室1に搬入する台車2の側部と、木材乾燥室1の内壁面3との間隙を塞ぐフラップ板4を設ける。フラップ板4は、台車2の側部に設けて、木材乾燥室1の内壁面3に当接させるようにしてもよく、また木材乾燥室1の内壁面3に取り付け、台車2の側部に当接させるようにしてもよい。さらに、台車2と、この台車2に積載する木材5との間に、凹部に細孔を有する波形プレート7を配置するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、土台、ハリ、ケタ等の建築構造材および内装用の板材、並びに家具材に使用される木材、特には杉材や蒸発した樹脂によって変色しやすい木材の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造材として用いられる木材は、伐採後、十分乾燥したものを用いる必要があるが、乾燥期間を短縮するため、通常、木材乾燥装置を用いて強制乾燥させている。
この木材乾燥装置は、一般に、断熱構造の直方体形で、木材乾燥室と操作室とからなり、木材の強制乾燥は、図1に示すように、木材乾燥室1の入口より、木材5を積載した台車2を搬入して行われる。
【0003】
木材乾燥室1は、通常、上部に室温を上げる加熱ヒータ11(加熱装置)と、乾燥室内の湿度を上げるためのスチームパイプ12(加湿装置)と、乾燥室内の空気の循環をするための循環送風ファン13(循環装置)とが配置され、側部には給気・排気ファンに連通した管路14(給排気装置)が設けられ、底部には室内乾燥工程で木材から流れ出た水・樹脂液等を溜めるための受け部9が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
木材は、台車上に隙間をあけて積載され、乾燥室に搬入された後、密閉された乾燥室で、所望の温度・湿度に制御された雰囲気下で強制乾燥される。その際、乾燥室内の空気は、強力な循環送風ファン13で、通常、矢印で示す方向に循環される。
【特許文献1】特公平4−68550号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木材乾燥室に搬入された台車上の木材5は、前記したような強力な乾燥室内の循環風に曝されることにより、20時間以上の長時間にわたって強制乾燥されるが、この間に木材の内部から蒸気化した水分と共に樹脂液等も噴出し、それらが木材乾燥室の底部に設けられた受け部9に多量に溜まる。これらの液体は、木材乾燥室内の高温下で濃縮されて暗黒色液体15に変色する。
さらに、受け部9に溜まった暗黒色液体15は、乾燥室内雰囲気下の高温と強力な循環風によって、台車2の側部と木材乾燥室の内壁面3との隙間、及び台車とその積載木材との隙間から蒸散して上方に巻き上げられ、台車2に積載された木材5の表面に付着して、木材を変色させるという問題があった。
【0006】
付着した暗黒色液体によって変色した木材は、色落ちしにくく木材の製品価値を著しく低下させる。そこで、受け部9に暗黒色液体15が溜まらないように、木材乾燥中に、受け部9の底部から排出管(図示せず)を介して乾燥室外へ流出させる等の排出手段が試みられてはいるが、それでも、乾燥中の木材への暗黒色液体の付着を完全に無くすことはできなかった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、木材乾燥室内で、強制乾燥中に生じる暗黒色液体の木材への付着を無くし、高品質な無変色の乾燥木材を製造できる木材乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の木材乾燥装置は、木材を積載して木材乾燥室に搬入する台車の側部と、前記木材乾燥室の内壁面との間隙を塞ぐフラップ板を設けたことを特徴とする。
この木材乾燥装置では、木材を積載して木材乾燥室に搬入する台車の側部に、前記木材乾燥室の内壁面との間隙を塞ぐフラップ板を設けるようにしてもよく、木材乾燥室の内壁面に、該内壁面と木材を積載して前記木材乾燥室に搬入させた台車の側部との間隙を塞ぐフラップ板を設けるようにしてもよい。さらに、台車と、該台車に積載する木材との間に、凹部に細孔を有する波形プレートを配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木材乾燥装置によれば、木材乾燥室内に搬入された台車上に積載した木材の乾燥中に、木材の内部から噴出した水分や樹脂液等が乾燥室の受け部に溜まってできた暗黒色液体が蒸散して、木材を汚すことがなくなるため、製品価値の高い乾燥木材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る木材乾燥装置の実施の形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本発明の木材乾燥装置に係る乾燥室の一例を示す概略縦断面であり、図2は、本発明の木材乾燥装置に使用される波形プレートの一例を示す模式的な部分斜視図である。
【0011】
本発明の木材乾燥装置は、図1に示すように、木材乾燥室1の内部に搬入させた台車2と、木材乾燥室1の内壁面3との間隙をフラップ板4で塞ぐようにしている。
図1に示す木材乾燥装置では、フラップ板4は、台車2の側縁部上面に蝶番等によって回動自在に取り付けられ、木材5を積載した台車2を木材乾燥室1に搬入する前は、フラップ板4は、その上辺縁が上方に向いた状態で固定され、台車2を木材乾燥室1に搬入した後に、フラップ板4を木材乾燥室1の内壁面3側に倒し、フラップ板4の上辺縁を木材乾燥室1の内壁面3に立て掛けるように当接させて、台車2の側部と木材乾燥室1の内壁面3との隙間を塞ぐようになっている。
【0012】
なお、図1では、フラップ板4は、台車2の側辺部上面に取り付けた例を示したが、台車2の側面に設けるようにしてもよい。
また、図1に示す本発明の木材乾燥装置では、フラップ板4を台車の側部に取り付けた例を示したが、フラップ板4を木材乾燥室1の内壁面3に蝶番等によって回動自在に取り付け、木材乾燥室1内へ台車2を搬入する前は、木材乾燥室1の内壁面側に立て掛けた状態にし、台車2を木材乾燥室1に搬入した後に、フラップ板4を倒し、フラップ板4の上辺縁を台車2の側部に当接させて、台車2の側部と木材乾燥室1の内壁面3との隙間を塞ぐようにしてもよい。
【0013】
フラップ板4は、耐蝕性に優れた、厚さが1.2mm〜3mmのステンレス鋼板製を使用するのが望ましく、また、フラップ板4は、台車2の側部の全周縁にわたって設けるようにしてもよい。さらに、フラップ板4の先端辺縁部を耐熱性ゴム等の弾力性部材で形成し、あるいは前記弾力部材で覆うようにして、フラップ板と木材乾燥室1の内壁面との密着性を高めるようにしてもよい。
【0014】
本発明の木材乾燥装置は、さらに、前述したフラップ板4とともに、台車2上に波形プレートを配置し、この波形プレート上に木材5を積載するようにするとよい。
この波形プレート6は、図2に示すように、波形に形成されたプレートの凹部7に細孔8が形成されており、波形プレート6上に木材5を積載することにより、木材5と台車2との間に波形プレート6の凹凸部によって形成された空間によって、室内の循環空気の対流が促され積載木材の均一な乾燥が促進される。
【0015】
また、前述したように木材の内部から噴出した水分や樹脂液は、この波形プレート6の凹部7に形成された細孔8を経て、木材乾燥室の底部にある受け部9に滴下して溜まる。
細孔8は、波形プレート6の凹部7の底面に、50〜200mm間隔で形成され、また、細孔8の直径は、1〜3mmが好ましい。
細孔8の直径が、1mmより小さいと、波形プレート6の凹部7に流れ込んだ水分や樹脂液の、受け部9への滴下が妨げられ、3mmより大きいと受け部9に溜まった暗黒色液体の蒸散を通過させることにより、乾燥木材への暗黒色液体の付着防止効果が妨げられる。
【0016】
波形プレート6は、フラップ板と同様、耐蝕性に優れたステンレス鋼板が好適に用いられる。
また、波形プレート6は、図2に示すような、上方に開口を有する断面角形の波形連続体、又は上方に開口を有する断面円弧状の波形連続体、若しくは台形、切頭円錐体が点在する形態等、凹凸が連続する若しくは点在する形状であればどのような形態のものであってもよい。
【0017】
本発明の木材乾燥装置は、木材乾燥室の内壁と台車の側部との隙間を、フラップ板で塞ぐことにより、木材の乾燥中に、乾燥室内雰囲気下の高温と強力な循環風によって、台車の下方の受け部に溜まった暗黒色液体が、前記隙間から上方に巻き上がることがなくなるため、乾燥木材に前記暗黒色液体が付着して、木材の製品価値を下げることがなくなる。
【0018】
また、台車の上面に配置させた波形プレートにより、台車に積載した木材と台車間の風通しを良くして、木材の乾燥を促進する。さらに、波形プレートの凹部の底面に設けられた細孔は、木材の内部から出た水分や樹脂液を木材乾燥室の底部に設けられた受け部に落下させるが、前記受け部に溜まった水分や樹脂液によって形成された暗黒色液体が、木材乾燥室内の高温と強力な循環風によって上方に巻き上がることがなくなる。
このように、本発明の木材乾燥装置は、台車の側部と木材乾燥室の内壁面との隙間をフラップ板で覆い、さらには、台車上に波形プレートを配置させることによって、乾燥中の木材が汚れることがなくなるので、製品価値の高い乾燥木材が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の木材乾燥装置によれば、高品質な乾燥木材が得られる他、台車に積載した乾燥対象物を乾燥室に搬入して乾燥させる、各種分野への利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の木材乾燥装置に係る乾燥室の一例を示す概略縦断面である。
【図2】本発明の木材乾燥装置に使用される波形プレートの一例を示す模式的な部分斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 木材乾燥室
2 台車
3 (木材乾燥室の)内壁面
4 フラップ板
5 木材
6 波形プレート
7 (波形プレートの)凹部
8 (波形プレートの凹部の)細孔
9 受け部
11 加熱ヒータ
12 スチームパイプ
13 循環送風ファン
14 管路
15 暗黒色液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を積載して木材乾燥室に搬入する台車の側部と、前記木材乾燥室の内壁面との間隙を塞ぐフラップ板を設けたことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項2】
木材を積載して木材乾燥室に搬入する台車の側部に、前記木材乾燥室の内壁面との間隙を塞ぐフラップ板を設けたことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項3】
木材乾燥室の内壁面に、該内壁面と木材を積載して前記木材乾燥室に搬入させた台車の側部との間隙を塞ぐフラップ板を設けたことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項4】
台車と、該台車に積載する木材との間に、凹部に細孔を有する波形プレートを配置してなる請求項2または3に記載の木材乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−125772(P2007−125772A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319830(P2005−319830)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(597093698)株式会社新柴設備 (6)
【Fターム(参考)】