説明

木片セメント板およびその製造方法

【課題】本発明は、可使時間を十分に確保して、物性も良好でしかも短時間での脱型が可能な木片セメント板およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】ポルトランドセメントと木片とを主成分とし、さらにカルシウム含有材料として消石灰と、高反応性ケイ酸含有材料としてシリカフュームが添加されていることを特徴とする木片セメント板。
本発明によれば、可使時間を十分に確保し、物性も良好でしかも短時間での脱型が可能な木片セメント板およびその製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木片とセメントとを主成分とする木片セメン板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から木片などの木質補強材とセメント等の水硬性無機質材料とを主原料として、型板の上に混合した原料を散布し圧締する、いわゆる乾式、半乾式製法による木片セメント板の製造方法がある。
このとき、原板は型板の上に載ったまま、プレス機によって圧縮され、さらにそのままクランピングによって型板ごと締結保持される。
そしてそのまま、硬化養生(一次養生)が行われ、その後、型板から原板を外す脱型工程が行われ、さらに、二次養生が行われ、製品となる。
硬化養生には、配合にもよるが、6〜10時間が必要で、製造工程上のネックの一つになっている。
そのため、特開平10−231161号公報に開示されているように、硬化時間短縮のために水硬性無機質材料をアルミナセメント、石膏などの急結材を使用する手法がよく知られている。
しかしながら、その反応性の速さゆえに原料の可使時間(突発的トラブル発生時に原料がやむをえず使用される製造ライン内で放置されることがあり、この時間を経ても原料が使用可能であることが重要であり、その使用可能な時間のこと)が十分確保できない状況があり、可使時間を確保するような操作が別途必要になる。
そのために、クエン酸ナトリウムを始めとする硬化遅延剤を添加して、逆に硬化を遅延させることが行われるが、硬化阻害を起こす原料でもあり、可使時間と硬化性能を両立させることが大変重要になってくる。
しかしながら、日々の原料変化や季節変動に対する対応を考えると、非常にコントロールしにくい配合構成であり、可使時間を悪化させずに物性も良好な原料・配合構成が期待されている。
【特許文献1】特開平10−231161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した可使時間を十分に確保し、物性も良好でしかも短時間での脱型が可能な木片セメント板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するための本請求項1に記載の木片セメント板は、ポルトランドセメントと木片とを主成分とし、さらにカルシウム含有材料が添加されていることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2に記載の木片セメント板は、さらに高反応性ケイ酸含有材料が添加されていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に記載の木片セメント板は、請求項2に記載の木片セメント板において、前記カルシウム含有材料が消石灰であり、前記高反応性ケイ酸含有材料がシリカフュームであることを特徴としている。
【0007】
また、請求項4に記載の木片セメント板の製造方法は、ポルトランドセメントと木片とカルシウム含有材料と水とを混合して原料混合物とし、該原料混合物を型板上に散布したのち、プレス圧締して硬化養生し、さらに脱型後二次養生することを特徴とする。
【0008】
また、請求項5に記載の木片セメント板の製造方法は、請求項4に記載の木片セメント板の製造方法において、原料混合物にさらに高反応性ケイ酸含有材料を混合していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項6に記載の木片セメント板の製造方法は、請求項5の木片セメント板の製造方法において、前記カルシウム含有材料が消石灰であり、前記高反応性ケイ酸含有材料がシリカフュームであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に記載の木片セメント板の製造方法は、請求項6の木片セメント板の製造方法において、前記ポルトランドセメントが30質量部以上45質量部以下、前記木片が20質量部以上25質量部以下、前記消石灰が2質量部以上10質量部以下、前記シリカフュームが2質量部以上10質量部以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可使時間を十分に確保し、物性も良好でしかも短時間での脱型が可能な木片セメント板およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の木片セメント板は、ポルトランドセメントと木片とを主成分とし、さらにカルシウム含有材料と高反応性ケイ酸含有材料とが添加されている。
ここで、ポルトランドセメントとは、JIS R 5210にもあるように、非常に一般的なセメントであり、アルミナ分や、石膏分等の調整は一切ないものであり、一般的にセメントと言えばこのポルトランドセメントを指すことが多い。
木片は、薄片状になっているものが好ましく、具体的には、長径1.0〜10.0mm、短径0.5〜2.0mm、アスペクト比20〜30の木片を使用することが好ましい。
カルシウム含有材料としては、生石灰、消石灰等があるが、消石灰の使用が好ましく、粒径は、30〜150μmが好ましい。
また、高反応性ケイ酸含有材料としては、シリカフュームや水ガラス、フライアッシュ、シラスバルーン、パーライト等があるが、反応性から考えると特にシリカフュームが好ましく、粒径は、0.05〜1.0μmが好ましい。
これらの主成分のほか、高反応性ではないケイ酸含有材料として、フライアッシュ、シラスバルーン、パーライト、けい砂、珪石粉等や、リターン原料、ミョウバンや水ガラス、アルミン酸塩等の少量の硬化促進剤や、ロウ、ワックス、パラフィン、界面活性剤、シリコン等の防水剤や撥水剤等が混合されてもよい。
また、木質補強材として、木片以外に、木粉、木質繊維、木質パルプ、木質繊維束、ドライパルプ等が適量混合されてもよい。
また、ポリプロピレン繊維などの有機繊維や、発泡ポリスチレンビーズなどが適宜混合されてもよい。
【0013】
次に本発明に係る木片セメント板の製造方法について説明する。
まず、ポルトランドセメントと木片と消石灰とシリカフュームと適量の水とを混合して原料混合物とする。
シリカフュームは粉体での添加よりも、水に溶かした状態での添加が作業上好ましい。
この原料混合物を型板上に散布したのち、原料混合物の載った型板を複数枚積み重ね、そのあとプレス機によって圧縮され、さらにそのままクランピングによって複数枚の型板ごと締結保持される。
そしてこのまま、硬化養生(一次養生)が行われ、その後、クランプを外し、型板から原板を外す脱型工程が行われる。
ここで硬化養生時間としては、一般的には6〜10時間が必要で、木片セメント板製造工程上のネックの一つとなっている。
もし、硬化養生が不完全であると、原板を型板から脱型するときに必要な脱型強度が得られず、もし、無理やり脱型できたとしても、このときの目には見えない微細なクラックによって、二次養生後の強度発現がされずに、結局不良板となる。
本発明によれば、原料に、カルシウム含有材料としての消石灰と、高反応性ケイ酸含有材料としてシリカフュームを使用しているので、硬化養生時間を3〜4時間と、ほぼ半減にすることができる。
通常の硬化養生条件である6〜10時間の硬化養生では、セメントの水和反応に起因する消石灰(水酸化カルシウム)の生成量は少ないが、消石灰を原料として添加し、さらに高反応性のシリカフュームを添加することで、ポゾラン反応が促進されて、短時間での強度発現が可能になったと考えられる。
さらに、その後、オートクレーブ養生や、自然養生にて、二次養生が行われて製品となる。
【0014】
配合の比率としては、ポルトランドセメントが30質量部以上45質量部以下、木片が20質量部以上25質量部以下、消石灰が2質量部以上10質量部以下、シリカフュームが2質量部以上10質量部以下の範囲が好ましい。
ポルトランドセメントが30質量部未満であれば、水硬性成分が少なく硬化不足になり、45質量部以上になると、最終製品の長期的耐久性が低下する可能性がある。
また、木片が20質量部未満であると、板としての構造材性能が不足し、25質量以上になると、逆に板としての構造材性能が高くなりすぎて、かさ比重が高くなり製造が難しくなってくる。
消石灰が2質量部未満であると、硬化促進の効果が少なく、また、10質量部以上になっても、あまり硬化促進に寄与しない。
シリカフュームが2質量部未満であると、硬化促進の効果が少なく、また、10質量部以上になると、原料の分散が不十分となり、逆に強度低下をまねく可能性がある。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明の実施例を挙げる。
表1に示す原料配合、製造条件にて、実施例1〜4、比較例1〜4を製造した。
【0016】
【表1】

【0017】
表1によれば、消石灰を添加した実施例1、2については、アルミナセメントと無水石膏を使用した比較例3と同等の硬化後曲げ強度、オートクレーブ養生後曲げ強度が得られ、高価なアルミナセメントを使用しなくても、ポルトランドセメントでの硬化養生時間短縮が可能になった。
また、消石灰にさらにシリカフュームを添加した実施例3、4については、アルミナセメントを使用した比較例3はもちろんのこと、ポルトランドセメントを使用して硬化時間を通常の8時間かけた比較例1と同等の物性が得られたことにより、硬化養生時間の短縮が可能になった。
ちなみに、消石灰、シリカフュームを使用せずに、ポルトランドセメントを使用して硬化時間を実施例と同じにした比較例2は硬化後の状態が悪く、硬化不良気味であり、また、アルミナセメントの系に遅延剤であるクエン酸ソーダを添加した比較例4は硬化後およびオートクレーブ後の状態も悪く、硬化不良となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントと木片とを主成分とし、さらにカルシウム含有材料が添加されていることを特徴とする木片セメント板。
【請求項2】
請求項1において、さらに高反応性ケイ酸含有材料が添加されていることを特徴とする木片セメント板。
【請求項3】
前記カルシウム含有材料が消石灰であり、前記高反応性ケイ酸含有材料がシリカフュームであることを特徴とする請求項2に記載の木片セメント板。
【請求項4】
ポルトランドセメントと木片とカルシウム含有材料とを混合して原料混合物とし、該原料混合物を型板上に散布したのち、プレス圧締して硬化養生し、さらに脱型後二次養生することを特徴とする木片セメント板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、原料混合物にさらに高反応性ケイ酸含有材料が添加されていることを特徴とする木片セメント板の製造方法。
【請求項6】
前記カルシウム含有材料が消石灰であり、前記高反応性ケイ酸含有材料がシリカフュームであることを特徴とする請求項5に記載の木片セメント板の製造方法。
【請求項7】
前記ポルトランドセメントが30質量部以上45質量部以下、前記木片が20質量部以上25質量部以下、前記消石灰が2質量部以上10質量部以下、前記シリカフュームが2質量部以上10質量部以下であることを特徴とする請求項6に記載の木片セメント板の製造方法。

【公開番号】特開2007−176724(P2007−176724A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375360(P2005−375360)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】