説明

木質板

【課題】化粧溝の塗膜密着性を向上させた木質板を提供する。
【解決手段】木質基材1の上に、熱可塑性樹脂、無機フィラー及び木粉からなる木粉樹脂複合材2と、表面化粧材4とが順次に配設され、表面化粧材4から木粉樹脂複合材2に達する深さの化粧溝6が形成されて、表面に塗膜5が形成された木質板であって、木粉樹脂複合材2に含まれる無機フィラーが平均粒径50〜300μmの範囲内の炭酸カルシウムを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用の床材や壁材、扉等に用いられる木質板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅用の床材や壁材、扉等に用いられる木質板は、通常、合板等の木質基材の表面側に複合材が配設され、その上に表面化粧材が配設された後に、表面から複合材にまで達する深さの化粧溝加工が施され、さらに表面に塗膜が形成された構造となっている。
【0003】
近年では、前記複合材として、熱可塑性樹脂に無機フィラー、木粉を添加し、混練して得られる木粉樹脂複合材が用いられている(例えば特許文献1、2参照)。本出願人においてはこの複合材をウッドプラスチックボード(WPB:Wood Plastic Board)と称して用いている。
【0004】
このような木粉樹脂複合材は、一般に公知の複合材である中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)に比べて樹脂成分が多く配合されている。このため、吸水時の膨潤が少なく耐水性に優れ、また着色剤を添加することにより表面色に応じた化粧溝の着色が可能である等の点で優れている。
【0005】
しかしながら、化粧溝加工が施された木質板の表面に塗膜を形成する場合、化粧溝に露出した木粉樹脂複合材に配合されているポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂によって、化粧溝の塗膜密着性が低下して、溝白化や割れ等の外観不良が生じやすいという問題があった。
【0006】
そこで、塗膜密着性の向上を目的に、表面改質処理としてコロナ放電処理が試みられている。しかしながら、化粧溝が断面V形状等になっているために、化粧溝深部までコロナ放電の電極を近接させることが容易でなく、平坦な表面に比べて十分に表面改質をすることができず、コロナ放電処理の効果が十分に得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4001012号公報
【特許文献2】特開2010−7275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、木粉樹脂複合材(WPB)を配設する木質板において、表面塗膜の配設に際しての化粧溝での塗膜密着性を向上させることのできる木質板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の木質板は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
第1:木質基材の上に、熱可塑性樹脂、無機フィラー及び木粉からなる木粉樹脂複合材と、表面化粧材とが順次に配設され、表面化粧材から木粉樹脂複合材に達する深さの化粧溝が形成されて、表面に塗膜が形成された木質板であって、木粉樹脂複合材に含まれる無機フィラーが平均粒径50〜300μmの範囲内の炭酸カルシウムを含有する。
【0011】
第2:前記第1の発明の木質板において、炭酸カルシウムの配合量が、木粉樹脂複合材全体の15〜65質量%の範囲内である。
【0012】
第3:前記第1又は第2の発明の木質板において、表面化粧材が木質単板である。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、木粉樹脂複合材に配合する無機フィラーを平均粒径50〜300μmの範囲内の炭酸カルシウムを含有するので、化粧溝の木粉樹脂複合材の露出面には割れた炭酸カルシウムの凹凸が形成されることから、塗膜の密着性を向上させることができる。
【0014】
第2の発明によれば、炭酸カルシウムの配合量を木粉樹脂複合材全体の15〜65質量%の範囲内としたので、第1の発明の効果を確実に顕著なものとすることができる。
【0015】
また、第3の発明によれば、表面化粧材を木質単板としたので、意匠性に優れ、また、寸法安定性、耐クラック性、耐傷性等に優れた木質板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の木質板を床材とした場合の一実施形態を示した概略斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の概略断面図である。
【図3】(A)、(B)は、寒熱の繰り返しにより発生する塗膜の剥離状態を示す化粧溝部分の概略断面図である。
【図4】(1)は、無機フィラーに炭酸カルシウムを用いた、木粉樹脂複合材の表面の光学顕微鏡写真(×50倍)であり、(2)は無機フィラーに炭酸カルシウムを用いた、木粉樹脂複合材の表面のレーザー顕微鏡写真(×50倍)である。
【図5】(1)は無機フィラーにタルクを用いた、木粉樹脂複合材の表面の光学顕微鏡写真(×50倍)であり、(2)は無機フィラーにタルクを用いた、木粉樹脂複合材の表面のレーザー顕微鏡写真(×50倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の木質板では、図1及び図2に示すように、木質基材1の表面側に木粉樹脂複合材2を配設し、さらにその上に表面化粧材4を配設し、表面化粧材4から木粉樹脂複合材2に達する深さの化粧溝6を形成し、表面に塗膜5を形成した構造となっている。なお、表面化粧材4が木質単板の場合には、用途に応じて木質単板の表面に着色をした後、塗膜5を設ける。
【0019】
本発明の木質板に用いられる木質基材1としては、汎用のものを用いることができ、例えば合板、中密度繊維板等を用いることができる。
【0020】
木粉樹脂複合材2は、熱可塑性樹脂、無機フィラー、そして木粉からなり、これらを混練、混合して成形することにより製造することができる。
【0021】
木粉樹脂複合材2に用いられる熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、オレフィン系樹脂等を挙げることができる。これらのなかでも安価で耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。これら熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0022】
無機フィラーとしては、少なくとも炭酸カルシウムを用い、その平均粒径は50〜300μm、好ましくは100〜200μmの範囲内である。このような比較的大きな平均粒径の無機フィラーを用いると、化粧溝6に露出する炭酸カルシウムの表面に大きな凹凸が形成され、塗膜5との密着性が優れた木質板となる。
【0023】
平均粒径が50μm未満では、化粧溝加工により露出した木粉樹脂複合材2の表面に、十分な炭酸カルシウムによる凹凸が形成されず優れた塗膜密着性を得ることができない場合がある。また300μmを超えると木粉樹脂複合材2表面の凹凸が大きくなり外観不良となる場合がある。
【0024】
炭酸カルシウムの配合量は、木粉樹脂複合材2全体に対して15〜65質量%、好ましくは40〜60質量%の範囲内である。
【0025】
配合量が15質量%未満では、化粧溝加工により露出した木粉樹脂複合材2表面の炭酸カルシウムによる凹凸面積が不十分となり、優れた塗膜密着性が確保できないおそれがあり、65質量%を超えると均一な成形体が得られなくなるおそれがある。
【0026】
また、上記炭酸カルシウムのほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の無機フィラーを併用することができる。他の無機フィラーとしては、マイカ、アルミナ、タルク等を挙げることができ、これらを1種、又は2種以上を混合したものを炭酸カルシウムと併用して用いてもよい。これらの無機フィラーを併用する場合、その平均粒径は、一般的には5〜30μmの範囲内がよいが、従来と同様であってもよい。
【0027】
また、その配合量については、炭酸カルシウムとの合計量が木粉樹脂複合材2の全体に対し、炭酸カルシウム単独の場合と同様の前記15〜65質量%の範囲内とすることが好ましい。そして、炭酸カルシウムに対しての質量比としては、3倍未満とすることが好ましい。
【0028】
木粉としては、例えば、おがくず、廃木材、合板、中密度繊維板、パーチクルボード等を粉末にしたものを用いることができる。この木粉は、分散性、成形性を考慮して平均粒径が10〜150メッシュのものを好ましく用いることができる。
【0029】
熱可塑性樹脂(A)及び炭酸カルシウム(他の無機フィラー併用の場合も含む)(B)、そして木粉(C)からなる木粉樹脂複合材2の全体に対しての配合比率(質量%)は一般的には次の範囲内になるように考慮する。
(A)熱可塑性樹脂 5〜75
(B)炭酸カルシウム 15〜65
(C)木粉 10〜30
木粉樹脂複合材2の成形方法としては、例えば、二軸混練押出機を用いて混練と押し出しを同時に行う方法や、混練した後に金型成形する方法、また、カレンダー加工により成形する方法等により成形することができる。
【0030】
また、本発明の木質板の表面化粧材4としては、木質単板、樹脂シート等を用いることができる。樹脂シートとしては、例えば表面に印刷を施したポリプロピレンシート等のオレフィン系樹脂シートを用いることができる。
【0031】
本発明においては、表面化粧材4として木質単板を用いることがより好ましい。木質単板を用いることにより木質の外観を有するとともに、寸法安定性、耐クラック性、耐傷性等に優れた木質板とすることができる。また、表面塗装の前に木質単板の表面を研磨することにより表面平滑性を向上させることができる。
【0032】
以上のような木質板を構成する各材料の間には、他の材料を適宜挟むことができる。他の材料としては中密度繊維板や、図2の断面図にも示した紙3等を挙げることができる。
【0033】
本発明の木質板は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0034】
まず、木粉樹脂複合材2と木質基材1を接着剤により接着し、さらに、裏側に接着剤を塗布した木質単板と木粉樹脂複合材2を貼り合わせた後熱圧プレスにより加圧接着する。
【0035】
接着剤としては、ウレタン系反応型ホットメルト接着剤(PUR)や、エマルジョン系接着剤等を適宜選択して用いることができる。
【0036】
なお、本発明の木質板の構成において、表面化粧材4を木質単板とする場合には、木質単板と木粉樹脂複合材2との間に前記の紙3を配設するのが好ましい。紙3を配設することにより木質単板や接着剤中に含まれる水分等を逃がすことができる。
【0037】
さらに、この紙3と木粉樹脂複合材2とを接着する場合、接着を確実にするために、あらかじめ木粉樹脂複合材2表面にコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0038】
表面化粧材4として樹脂シート等を用いる場合には、紙3の配設は不要であり、直接木粉樹脂複合材2と樹脂シート等を接着すればよい。
【0039】
木質板の意匠性を高めるために、本発明においては化粧溝加工を施す。この化粧溝加工は、チップソー等を用いて適宜加工することができる。形成された化粧溝6は図2にも示したように表面化粧材4から木粉樹脂複合材2に達する深さであり、通常断面V字形状を有している。もちろん、この化粧溝6については意匠性を考慮して、本数、長さ、断面形状等を適宜設定することができる。
【0040】
さらに、木質板の意匠性を高めるために最表面に塗装を行い図2のように塗膜5を形成する。塗装は通常、着色、下塗り、中塗り、上塗の工程により行う。
【0041】
着色は、所望の色調に応じた着色染料や着色顔料により行う。表面化粧材4として印刷された樹脂シートを用いる場合には着色は不要である。
【0042】
下塗り、中塗り、上塗りには生産性や環境面を考慮して、通常、無溶剤のUV塗料が用いられる。
【0043】
塗装には、ロールコーターやフローコーターを用い、化粧溝6部分は、下塗り又は中塗り塗料のスポンジロールによる塗布と、金属リバースロールによるかきとりやフローコーターによる塗布によって塗装する。
【0044】
通常、木質板に寒熱の温度が繰り返し加えられた場合、図3(A)から図3(B)のように、化粧溝6部分では塗膜5の収縮により内側に引っ張ろうとする残留応力7が働く。また、耐汚染性や耐傷性等の塗膜物性向上のために、1回の塗布で厚膜を形成することができるフローコーターを用いた場合、化粧溝6部分の塗膜5が厚くなると、より大きな残留応力7が働き、塗膜剥離8が発生しやすくなる。
【0045】
本発明の木質板では、チップソー等を用いて形成された化粧溝6には、削られた木粉樹脂複合材2が露出する。そして露出した木粉樹脂複合材2の表面には、図4の(1)光学顕微鏡写真(×50倍)並びに(2)レーザー顕微鏡写真(×50倍)に示すような割れた炭酸カルシウムによる凹凸9が形成される。この炭酸カルシウムによる凹凸9形状及び、木粉及び炭酸カルシウムに塗料が染み込む効果により塗膜密着性が飛躍的に向上する。
【0046】
従って、本発明の木質板によれば、化粧溝6部分において塗膜5の収縮による残留応力7が働いたとしても、塗膜5の剥離、溝白化、割れ等の外観不良の発生は抑えられる。
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
次の工程に従って木質板を作製した。以下、図1及び図2に示す実施形態に基づいて説明する。
(1)ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂30質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウム60質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した。
(2)この木粉樹脂複合材2の表裏面にコロナ放電処理を行い、厚さ50μmの紙3にウレタン系反応型ホットメルト接着剤を塗布して、ロールラミネーターにて圧締することにより木粉樹脂複合材2と紙3を接着した。
(3)紙3を接着した木粉樹脂複合材2を裁断し、厚さ11.2mmの木質基材1の合板に水性ビニルウレタン系接着剤を塗布した後、紙3を接着していない木粉樹脂複合材2の面と木質基材1の合板を常温で接着した。
(4)紙3の表面に、水性ラテックス系樹脂にメラミン樹脂を添加した接着剤を塗布して、表面化粧材4として厚さ0.2mmの湿式木質単板を熱圧にて接着して木質板原板を作製した。
(5)作製した木質板原板の表面化粧材4である木質単板の継ぎ目に沿って、木粉樹脂複合材2に達する深さを有する断面がV形状の化粧溝6を形成した。
(6)化粧溝6加工を施した木質板原板表面に、水性着色剤をスポンジロールで塗布した後、リバースロールにてかきとり、さらにゴムロールにて塗布して、木質単板と化粧溝6に着色を施した。
(7)着色した木質板原板に、下塗りとして無溶剤のUV塗料をスポンジロールで塗布した後、リバースロールにてかきとり2.5g/尺塗布し、さらにゴムロールにて1.5g/尺塗布した後、紫外線を照射して硬化させた。
(8)下塗りを施した木質板原板に、中塗りとして無溶剤のUV塗料を2連のゴムロールで1.5g/尺塗布した後、紫外線を照射して硬化させた。
(9)中塗りを施した木質板原板に、#320の研磨紙により表面を研磨した。
(10)表面を研磨した木質板原板に、上塗りとして無溶剤のUV塗料をスポンジロールとゴムロールで1.5g/尺塗布した後、フローコーターにて7g/尺塗布し、紫外線を照射して硬化させて塗膜5を配設した木質板を作製した。
<実施例2>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂30質量%、45メッシュの木粉30質量%、無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウム40質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<実施例3>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂40質量%、45メッシュの木粉15質量%、無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウム45質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<実施例4>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂45質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウム45質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<実施例5>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂30質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウム25質量%と、平均粒径15μmのタルク35質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<比較例1>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂45質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径15μmの炭酸カルシウム45質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<比較例2>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂30質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径15μmのタルク60質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<比較例3>
ポリエチレン及びポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂45質量%、45メッシュの木粉10質量%、無機フィラーとして平均粒径30μmの炭酸カルシウム45質量%を配合し、カレンダー成形にて厚さ0.6mmの木粉樹脂複合材2を作製した以外は、実施例1と同様にして木質板を作製した。
<評価方法>
実施例1〜5及び、比較例1〜3の木質板について、化粧溝6部分の塗膜密着性を評価するため、JAS規格に準拠して寒熱繰り返しB試験を行い、溝白化や割れの発生を評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
評価は以下の基準で行った。評価A、Bは実用的に有意であることを示し、評価Cは不可であることを示している。
A:優良、溝白化、割れなし
B:やや溝白化はあるものの割れなし
C:不良、溝白化、割れあり
【0050】
【表1】

【0051】
<評価結果>
無機フィラーとして平均粒径150μmの炭酸カルシウムを、木粉樹脂複合材2全体の40〜60質量%の範囲内で配合して製造した木粉樹脂複合材2を用いた実施例1〜4の木質板は、溝白化や割れがなく優れた塗膜密着性が確認された。
【0052】
図4に示す実施例1の木粉樹脂複合材2表面の(1)光学顕微鏡写真(×50倍)及び(2)レーザー顕微鏡写真(×50倍)を見てもわかるように、この優れた塗膜密着性は、化粧溝6の木粉樹脂複合材2表面に形成された、割れた炭酸カルシウムの凹凸9によるものであると考えられる。
【0053】
炭酸カルシウムの配合量が25質量%、タルクの配合量が35質量%の実施例5は、やや溝白化はあるものの割れは発生しなかった。
【0054】
無機フィラーとして平均粒径が本発明の範囲から外れた炭酸カルシウムを用いた比較例1及び3と、無機フィラーとしてタルクのみを用いた比較例2では溝白化、割れが発生した。
【0055】
図5に示す比較例2の木粉樹脂複合材2表面の(1)光学顕微鏡写真(×50倍)及び(2)レーザー顕微鏡写真(×50倍)を見てもわかるように、化粧溝6の木粉樹脂複合材2表面にはタルクによる凹凸は確認することができない。
【0056】
これらのことから、割れた炭酸カルシウムの凹凸が塗膜密着性の向上に極めて大きく関与していることが確認された。
【符号の説明】
【0057】
1 木質基材
2 木粉樹脂複合材
3 紙
4 表面化粧材
5 塗膜
6 化粧溝
7 残留応力
8 塗膜剥離
9 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の上に、熱可塑性樹脂、無機フィラー及び木粉からなる木粉樹脂複合材と、表面化粧材とが順次に配設され、表面化粧材から木粉樹脂複合材に達する深さの化粧溝が形成されて、表面に塗膜が形成された木質板であって、木粉樹脂複合材に含まれる無機フィラーが平均粒径50〜300μmの範囲内の炭酸カルシウムを含有することを特徴とする木質板。
【請求項2】
炭酸カルシウムの配合量が、木粉樹脂複合材全体の15〜65質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の木質板。
【請求項3】
表面化粧材が木質単板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173285(P2011−173285A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37715(P2010−37715)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】