説明

木質系化粧板

【課題】植物性資源を主原料とし、かつ難燃性、抗菌性を付与した木質系化粧板を提供する。
【解決手段】樹脂層で芯材表面を被覆した木質系化粧板であって、前記樹脂層が、リグニン及び硬化剤を含む樹脂組成物からなり、前記リグニンが有機溶媒に可溶であり、前記樹脂層中の樹脂成分として前記リグニンを5〜90質量%含む、木質系化粧板。リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである、前記の木質系化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧板とは、合板などの芯材の表面に合成樹脂を印刷、塗装または樹脂を含浸させた化粧紙を貼り付ける等のさまざまな方法により化粧仕上げして美観を向上した板である。化粧板は無垢材よりも安価で、ヒビや反りといった自然素材の欠点を解消し、耐摩耗性、耐水性、耐熱性を向上させたものである。化粧板に使用する樹脂としてはメラミン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の石油、石炭などの化石資源を原料とするものが主流である。これらの化粧板は、使用後焼却されるのが普通である。化粧板の主成分は木材であるが、化石資源を焼却することで発生する二酸化炭素量の増加に伴い、地球温暖化の問題が関心を集めるようになった。そこで地球温暖化防止の観点からバイオマス(生物資源)の有効活用が見直されている。近年、包装資材、家電製品の部材、自動車用部材などのプラスチックを植物由来樹脂(バイオプラスチック)に置き換える動きが活発化している。
【0003】
前記植物由来樹脂の具体例としては、ジャガイモやサトウキビやトウモロコシ等の糖質を醗酵させて得られた乳酸をモノマーとし、これを用いて化学重合を行い作製したポリ乳酸:PLA(PolyLactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産するポリエステルである微生物産生樹脂:PHA(PolyHydroxy Alkanoate)等が挙げられる。
また、PBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来の原料が用いられているが、今後においては、植物由来樹脂として作製する研究が開発されており、主原料の一つであるコハク酸を植物由来で作製する技術についての開発がなされている。
【0004】
一方、上記植物由来樹脂はいずれも熱可塑性であり、ポリ乳酸の融点は170℃である(非特許文献1参照)。これらを化粧板として活用するには耐久性、耐熱性に問題がある。
【0005】
植物由来の硬化性樹脂原料として、古くからリグニンが注目されてきた。国内で容易に入手できるリグニンとして、例えば、リグニンスルホン酸塩が挙げられるが、水溶性であり、有機溶媒に難溶である。そのため、硬化剤及び硬化促進剤との相溶性が悪く、均質な硬化物が得られなかった。
【0006】
また、難燃化、抗菌化に関してはこれまでにも、植物由来原料を用いた樹脂、特にポリ乳酸樹脂において種々の試みがなされてきた。しかし、前記物性を向上させるために、石油系樹脂を用いており、その含有量を増やす分、環境負荷を低減化させる観点からの、化石資源使用量削減や二酸化炭素排出量削減の効果が低下してしまうという課題があった。
【0007】
公知の難燃剤としては、臭素系・ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる(特許文献1参照)。従来においても各種難燃剤が知られているが、上記の難燃剤は、有効に機能を発揮させるための添加量が多く、樹脂100質量部に対して10〜30質量部、多いものでは50質量部程度必要とする場合もある。
これらの難燃剤は、化石資源を原料として合成されているものであるから、主材料として植物由来樹脂を用いたとしても、環境負荷削減効果は低いものとなっていた。
【0008】
また、難燃剤自体の有害性も検討しなければならない。例えば、臭素系難燃剤は、焼却時に熱分解によりダイオキシン類が発生する。またリン系難燃剤は、化学物質過敏症(アレルギー)を引き起こす恐れもあり、今後において、難燃剤は、生体に無害かつ安全で、かつ少量であっても実用上充分な難燃効果が得られるものであることの要望が高まっている。
【0009】
一方、抗菌性を付与する方法としては、抗菌剤を化粧板に練り込むか、あるいは表面に抗菌剤を塗布する方法がある。現状では、抗菌剤としては無機系抗菌剤が主に練り込みに使用され、一方、有機系抗菌剤が主に液状で製品に塗布して使用されている。無機系抗菌剤の代表例は、銀などの金属で置換されたゼオライトや合成鉱物などが挙げられ、有機抗菌剤としては、クロロヘキシジン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0010】
一方、天然由来の抗菌剤の検討もされ始めている。天然物由来の有機系抗菌剤としては、ヒノキチオール、ワサオーロ(有効成分;アリルイソチオシアネート)、わさび、しょうが、等各種あり、天然物由来という長所はあるものの、一般的に樹脂の加工温度に耐えない、供給が限られて入手困難、樹脂との相溶性を改善するために他の添加剤を加えなければならない等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−002120号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】土肥義治(編) 生分解性高分子材料、工業調査会 1990年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明においては、環境負荷低減化の観点から、植物由来の木質系材料を利用した化粧板を提供することを目的とする。特に植物由来であるリグニンを主原料とし、かつ難燃性、抗菌性を付与した木質系化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の通りである。
(1) 樹脂層で芯材表面を被覆した木質系化粧板であって、前記樹脂層が、リグニン及び硬化剤を含む樹脂組成物からなり、前記リグニンが有機溶媒に可溶であり、前記樹脂層中の樹脂成分として前記リグニンを5〜90質量%含むことを特徴とする木質系化粧板。
(2)リグニンの重量平均分子量が100〜7000である前記(1)記載の木質系化粧板。
(3)リグニン中の硫黄原子の含有率が2質量%以下である前記(1)または(2)に記載の木質系化粧板。
(4)リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(5)リグニンが、植物原料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することで植物原料を爆砕する水蒸気爆砕法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(6)芯材が、乾燥材、合板、繊維板、単板積層材、集成材、パーティクルボード、配向性ストランドボードのいずれかであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(7)樹脂層が、樹脂組成物を芯材の表面に塗布し、その後硬化して得られる被膜である、前記(1)〜(6)に記載の木質系化粧板。
(8)樹脂層が、樹脂組成物をシート状に成形してなるものである、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(9)樹脂層が、樹脂組成物を基材に含浸し、シート状に成形してなるものである、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(10)基材が、植物繊維、炭素繊維、合成繊維、無機繊維のうち1つないし2つ以上選択される繊維からなる紙、織布、不織布のいずれかである前記(9)に記載の木質系化粧板。
(11)硬化剤がエポキシ樹脂である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(12)硬化剤がイソシアネートである前記(1)〜(10)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(13)硬化剤がアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成する化合物である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(14)硬化剤が多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも一つである前記(1)〜(10)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(15)硬化剤が不飽和多価カルボン酸または不飽和多価カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも一つである前記(1)〜(10)のいずれかに記載の木質系化粧板。
(16) シート状に成形してなるものを、芯材に貼りつけて、芯材表面を被覆することを特徴とする、前記(8)〜(15)のいずれかに記載の木質系化粧板。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化石資源使用量の削減、及び二酸化炭素の排出量の低減効果が得られ、環境負荷低減化に好適な木質系化粧板が提供できた。また、リグニンを主原料とすることで、耐熱性に優れた木質系化粧板を提供できた。
【0016】
本発明によれば、リグニンを主原料としたことにより、前記効果に加え、難燃効果を付与した木質系化粧板を提供できた。
【0017】
本発明によれば、リグニンを主原料としたことにより、前記効果に加え、抗菌効果を付与した木質系化粧板を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、リグニン及び硬化剤を含む樹脂組成物からなる樹脂層で芯材表面を被覆した木質系化粧板であって、当該リグニンが有機溶媒に可溶であり、樹脂層中の樹脂成分としてリグニンを5〜90質量%含む木質系化粧板である。樹脂成分としてリグニンを、好ましくは30〜80質量%、また、さらに40〜80質量%含む木質系化粧板が好ましい。90質量%を超えると表面樹脂層の強度が劣化するおそれがある。また、5質量%未満であると、化石資源使用量の削減効果、難燃性効果、抗菌性効果が得られないおそれがある。なお、前記樹脂組成物は、通常、有機溶媒を含む。
【0019】
リグニンの重量平均分子量は、ポリスチレン換算値において、100〜7000が好ましく、さらに200〜5000が好ましく、500〜4000であることが特に好ましい。リグニンの重量平均分子量が7000を超えると有機溶媒への溶解性が低下するおそれがある。重量平均分子量が100未満であるとリグニンの構造を活かした木質系化粧板を得ることができないおそれがある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用した。
【0020】
リグニンの基本骨格は一般的にヒドロキシフェニルプロパン単位を基本単位とする架橋構造の高分子である。樹木は親水性の線状高分子の多糖類(セルロースとヘミセルロース)と疎水性の架橋構造リグニンの相互侵入網目(IPN)構造を形成している。リグニンは樹木の約25質量%を占め、不規則かつ極めて複雑なポリフェノールの化学構造をしている。フェノール類は燃焼の際、黒鉛を形成し易いため難燃性に優れ、抗菌作用を有することが知られている。本発明は植物から得られたこの複雑な構造をそのまま活かし、化粧板中の樹脂原料とすることで、難燃性、抗菌性を有する木質系化粧板を提供するものである。
【0021】
リグニンの原料に特に制限は無い。スギ、マツ、ヒノキ等の針葉樹、ブナ等の広葉樹、タケ、イネワラ、バガス等が使用される。樹木からリグニンを分離し取り出す方法としては、クラフト法、硫酸法、爆砕法などが挙げられる。現在多量に製造されているリグニンの多くは、紙やバイオエタノールの原料であるセルロース製造時に残渣として得られる。入手可能なリグニンとしては、主に硫酸法により副生するリグニンスルホン酸塩があげられる。他にもアルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、ソルボリシスリグニン、糸状菌処理木材、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニン、爆砕リグニンなどがある。本発明に用いるリグニンは取り出す方法によらず、上記記載のリグニンを用いることができる。
【0022】
取りだした際、リグニン以外の例えばセルロースやヘミセルロースのような成分が、多少含まれていても良い。また、これらのリグニンをアセチル化、メチル化、ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、硫化ナトリウムや硫化水素との反応等によって作製されたリグニン誘導体も含む。
【0023】
主原料とするリグニンを取得する方法として、水を用いた分離技術を用いた方法が好ましい。使用するリグニンが、水のみを用いた処理方法により、セルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得たリグニンであることが好ましい。また、リグニンを取得する方法としては、水蒸気爆砕法がより好ましい。水蒸気爆砕法は高温高圧の水蒸気による加水分解と、圧力を瞬時に開放することによる物理的破砕効果により、植物を短時間に破砕するものである。この方法は硫酸法、クラフト法など他の分離方法と比較し、硫酸、亜硫酸塩等を用いることなく、水のみを使用するので、クリーンな分離方法である。
水蒸気爆砕の条件は特に限定しないが、通常、原料を水蒸気爆砕装置用の耐圧容器に入れ、3〜4MPaの水蒸気を圧入し、1〜15分間放置した後、瞬時に圧力を開放することにより爆砕する。なお、前記有機溶媒可溶リグニンは、水蒸気爆砕リグニンとも表す。また、原料としては、リグニンが抽出できれば特に限定しないが、例えば、スギ、竹、稲わら、麦わら、ひのき、アカシア、ヤナギ、ポプラ、バガス、とうもろこし、サトウキビ、米穀、ユーカリ、エリアンサスなどが挙げられる。
この方法では、リグニン中に硫黄原子を含まないリグニン、又は、硫黄原子の含有率が少ないリグニンが得られる。通常、リグニン中の硫黄原子の含有率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。硫黄原子の含有量が増大すると親水性のスルホン酸基が増加するため、有機溶剤への溶解性が低下する。
【0024】
本発明で用いるリグニンの抽出に用いる有機溶媒は、1種又は2種以上複数の混合のアルコール溶媒、アルコールと水を混合した含水アルコール溶媒、そのほかの有機溶媒または、水と混合した含水有機溶媒を使用することができる。
水にはイオン交換水を使用することが好ましい。水との混合溶媒の含水率は0質量%〜70質量%が好ましい。リグニンは水への溶解度が低いため、水のみを溶媒とするとリグニンを抽出することが困難である。また、用いる溶媒を選択することにより、得られるリグニンの重量平均分子量を制御することが可能である。
【0025】
本発明で用いる芯材としては、特に制限はないが、通常、厚み2〜50mmの板状の芯材であり、例えば、乾燥材、合板、繊維板、単板積層材、集成材、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB;Oriented Strand Board)が使用される。特に合板、繊維板、単板積層材、集成材、パーティクルボードに好適に使用される。
【0026】
本発明の木質系化粧板の構成の一つとしては、リグニンと少なくとも1種の硬化剤を含む樹脂組成物を芯材に塗布した後、乾燥、硬化させてなるものである。樹脂組成物にはさらに所望の染料、顔料を混合しても良い。また硬化促進剤を添加して硬化時間を短縮できる。また、有機溶媒を添加して作業性を向上することが出来る。さらに樹脂組成物の塗布に先立ち、芯材の表面に化粧紙を貼り付けて、表面を平滑化しても良い。前記樹脂組成物塗布後に有機溶剤が揮発また硬化反応をすることで、前記リグニンと硬化剤が、芯材の表面上に被膜(樹脂層)を形成する。硬化を促進するため加熱、高温で焼付けをして、硬化時間を短縮しても良い。なお、被膜(樹脂層)の厚みは、通常、20〜1000μmであり、板状の芯材の片面または両面に形成される。
【0027】
前記木質系化粧板で使用される有機溶媒、あるいは、リグニンの抽出に用いられる有機溶媒としてはアルコール、トルエン、ベンゼン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどがあり、これらは二種類以上、混合して用いることができる。アルコールにはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクノヘキサノールなどのモノオール系とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミンなどのポリオールが挙げられる。また、さらに好ましくは、天然物質から得られるアルコールであることが、環境負荷低減化の観点で好ましい。具体的には、天然物質から得たメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシメチルフルフラールなどが挙げられる。
【0028】
本発明の木質系化粧板の構成の一つとしては、リグニンと少なくとも1種の硬化剤を含む樹脂組成物をあらかじめシート状に半硬化成形または硬化成形し、芯材表面に直接または接着剤等を介して貼り付けたものとすることができる。樹脂組成物中にさらに所望の染料、顔料を混合しても良い。また硬化促進剤を添加して硬化時間を短縮できる。さらに硬化を促進するため加熱をして、硬化時間を短縮しても良い。本発明の木質系化粧板に用いる、シート(樹脂層)はあらかじめリグニンと硬化剤及び他の上記添加成分を混合した樹脂組成物を金型に導入し、加圧加熱成形することで得ることができる。使用できる成形方法としては、特に制限はないが、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法等が使用できる。
【0029】
本発明の木質系化粧板の構成の一つとしては、リグニンと少なくとも1種の硬化剤を含む樹脂組成物をあらかじめ基材に含浸させ、樹脂成分を含浸した基材を乾燥または加圧加熱成形しシート状にしたものを、芯材表面に直接または接着剤等を介して貼り付けたものとすることができる。樹脂組成物中にさらに所望の染料、顔料を混合しても良い。また硬化促進剤を添加して硬化時間を短縮できる。本発明の木質系化粧板に用いるシート(樹脂層)は、あらかじめリグニンと硬化剤及び他の上記添加成分を混合し、基材に含浸させたものを金型に導入し、加圧加熱成形することで得ることができる。使用できる基材として特に制限はないが、植物繊維、炭素繊維、合成繊維、無機繊維のうち1つないし2つ以上選択される繊維からなる紙、織布、不織布等が使用できる。なお、本発明の木質系化粧板の樹脂層中の樹脂成分としてリグニンを5〜90質量%含むが、通常、前記の基材を除いた、含有量である。
例えば、基材として、ラミー(苧麻)繊維織布(ユニチカ株式会社製)、リネン(亜麻)繊維織布、ヘンプ(大麻)繊維織布、綿繊維織布、カポック織布、ジュート(黄麻)織布、マニラ麻織布、サイザル麻織布、ヤシ織布、イグサ織布、バショウ織布、サボテン織布、上質紙などが挙げられる。
シート状にしたもの(シート)を得るための製造条件としては、特に限定しないが、例えば、含浸乾燥機、油圧真空加熱プレス機、射出成形機、コンプレッション成形機などの樹脂組成物用の乾燥機、成形機により、乾燥、圧縮、押出し、または、射出され、製造(成形)してもよい。含浸乾燥機を使用する場合、基材に樹脂組成物を含浸させ、半硬化または硬化プリプレグを作製する。油圧真空加熱プレス機を使用する場合は、例えば、リグニンと、少なくとも1種の硬化剤を含んだ樹脂組成物を、繊維織布などに含浸させ、プリプレグ状態にし、これを、面圧0.1〜10MPa、80〜250℃、5分間〜2時間ほど、プレスし、成形(硬化)し、シートとしてもよい。あるいは、所定の形状の型に樹脂組成物のワニスを注ぎ、25〜250℃、10分間〜5時間程度硬化し、シートとしてもよい。また、例えば、射出成形機により、組成物を、ノズル温度80〜200℃、射出圧力1〜30MPa、型締圧力1〜30MPa、金型温度50〜300℃、硬化時間1分〜100分の条件で射出、成形し、さらに50〜300℃で1〜8時間熱処理し、硬化させ、シートとしてもよい。
なお、シート状にしたもの(シート)を、芯材表面に貼り付ける条件としては、特に限定しないが、半硬化プリプレグを直接または一般的な接着剤を用い、例えば、温度20〜200℃、圧力0〜100kPa、5分〜2時間などである。また、接着剤としては、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、アクリル系接着剤、合成ゴム系接着剤などが挙げられる。また、通常、シート状にしたもの(シート)は、板状の芯材の両面に貼り付けられる。
【0030】
本発明で用いる硬化剤としてエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂にはビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールADグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシがある。また、さらに天然由来物質から得られたエポキシ樹脂であることが環境負荷低減化の観点で好ましい。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステル類、エポキシ化アマニ油、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0031】
本発明で用いる硬化剤としてイソシアネートが挙げられる。イソシアネートには、脂肪族系イソシアネート、脂環族系イソシアネートおよび芳香族系イソシアネートの他、それらの変性体が挙げられる。脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられ、脂環族系イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。芳香族系イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。イソシアネート変性体としては、例えば、ウレタンプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、イソホロンジイソシアネートトリマー等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いる硬化剤としてアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成する化合物が挙げられる。アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドを生成する化合物としてはヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。特にヘキサメチレンテトラミンが好ましい。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することもできる。また、硬化性、耐熱性の面からヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
【0033】
本発明で用いる硬化剤として多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物が挙げられる。多価カルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族多価カルボン酸や、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、マロン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物、スベリン酸無水物、アゼライン酸無水物、エチルナジック酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物等の脂肪族多価カルボン酸無水物や、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物が挙げられる。多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物が、リグニンが有する水酸基と反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【0034】
本発明で用いる硬化剤として不飽和多価カルボン酸または不飽和多価カルボン酸無水物が挙げられる。不飽和多価カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸または不飽和多価カルボン酸無水物が、リグニンが有する水酸基と反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【0035】
樹脂組成物は硬化促進剤を含んでも良い。硬化促進剤としては、シクロアミジン化合物、キノン化合物、三級アミン類、有機ホスフィン類、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。
【0036】
樹脂組成物においては、必要に応じて各種添加剤成分、可塑剤(鉱油、シリコンオイル等)、滑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、無機充填材、有機充填材などを配合することもできる。また、他の公知の難燃剤や抗菌剤と併用しても良い。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
(リグニンの抽出)
リグニン抽出原料としては、竹を使用した。適当な大きさにカットした竹材を水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、4分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、真空乾燥機で残存水分を除去した。得られた乾燥体100gに抽出溶媒(アセトン)1000mlを加え、3時間攪拌した後、ろ過により繊維物質を取り除いた。得られた濾液から抽出溶媒(アセトン)を除去し、リグニンを得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
【0039】
(リグニンの分析)
溶媒溶解性としては、前記リグニン1gを、有機溶媒10mlに加えて評価した。常温(25℃)で容易に溶解した場合は○、50〜70℃で溶解した場合は△、加熱しても溶解しなかった場合を×として、評価した。溶媒群1としてアセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、溶媒群2としてメタノール、エタノール、メチルエチルケトンとして溶解性を評価した結果、溶媒群1ではいずれも○、溶媒群2ではいずれも△の判定であった。
【0040】
元素分析法によって測定された上記リグニン中の硫黄原子の含有率は0.1質量%であった。さらに示差屈折計を備えたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてリグニンの分子量を測定した。多分散度の小さいポリスチレンを標準試料として用い、移動相をテトラヒドロフランとして使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製ゲルパックGL−A120SとGL−A170Sとを直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は2400であった。
【0041】
上記で得られたリグニン(有機溶媒可溶リグニン)の水酸基当量は無水酢酸−ピリジン法により水酸基価、電位差滴定法により酸価を測定し求めた。アセトン抽出竹由来リグニンの水酸基当量は140g/eqであった。リグニンのフェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比(以下P/A比)を以下の方法で決定した。リグニン2gのアセチル化処理を行い、未反応のアセチル化剤を留去し、乾燥させたものを、重クロロホルムに溶解させ、H−NMR(BRUKER社製、V400M、プロトン基本周波数400.13MHz)により測定した。アセチル基由来のプロトンの積分比(フェノール性水酸基に結合したアセチル基由来:2.2〜3.0ppm、アルコール性水酸基に結合したアセチル基由来:1.5〜2.2ppm)からモル比を決定したところ、P/A比は2.2/1.0であった。
【0042】
(木質系化粧板の作製例)
硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを60g、前記リグニン400gをメトルエチルケトン200gに溶解して、樹脂組成物を作製し、前記樹脂組成物を厚さ20mmのパーティクルボード表面に塗布した。溶剤乾燥後、150℃、1時間で加熱したところ、リグニンを87質量%含んだ、厚み50μmの被膜(樹脂層)を供えた木質系化粧板が得られた。
【0043】
(抗菌性試験)
JIS Z2801に準じて、黄色ぶどう球菌、大腸菌に対する抗菌性を評価した。前記化粧板から樹脂層を剥離して試験片とし、試験片上に菌液(生菌数2.5〜10×10の5乗個/mL)0.4mLを播き、フィルムをかぶせ35℃±1℃、24時間培養した。試験片上の生菌数を測定するため、サンプリングし、サンプルを適宜希釈し、寒天平板培養にて35℃±1℃、48時間培養して生菌数を得た。
R=[Log(B/A)−log(C/A)]=[Log(B/C)]
R:抗菌活性値
A:無加工試験片における接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
抗菌活性値2以上を抗菌性ありとした。抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ7.5、5.2であった。よって、木質系化粧板の抗菌性が確認できた。
【0044】
(実施例2)
(リグニンの抽出及び分析)
抽出溶媒としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様にリグニンを得た。実施例1と同様に元素分析及び分子量測定をした結果、それぞれリグニン中の硫黄原子の含有率0.1質量%、重量平均分子量は1900であった。実施例1と同様に溶媒溶解性を評価した結果、溶媒群1ではいずれも○、溶媒群2ではいずれも○の判定であった。リグニンのフェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比(以下P/A比)を実施例1と同様の方法で実施した。実施例2で得られたリグニンのP/A比は1.6/1.0であった。実施例1と同様に上記で得られたリグニン(有機溶媒可溶リグニン)の水酸基当量を測定した結果、水酸基当量は120g/eqであった。
【0045】
(木質系化粧板の作製)
前記リグニン28gと硬化剤として前記ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ21gをアセトン42gに均一になるまで溶解し、硬化促進剤としてキュアゾール2PZ−CN(四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)0.21gを加え、樹脂組成物のワニス(固形分54質量%)を得た。さらにこの樹脂組成物のワニスを100×100mm、厚さ0.25mmのラミー繊維織布(ユニチカ株式会社製)に含浸させた後、真空乾燥機で40℃、2時間乾燥させ、プリプレグを得た。得られたプリプレグを15枚積層し、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、180℃/10分プレスした後、オーブンで200℃/4時間硬化し、厚み3mmのシートを得た。接着剤としては、厚み50μmの合成ゴム系接着剤(コニシ株式会社製、G10Z)を用い、貼り付け条件25℃、圧力10kPa、30分間で、シートを厚さ15mmの合板の両面に貼り付けることで樹脂層(シート)としてリグニンを57質量%(ラミー繊維織布を除く)含む木質系化粧板を得た。
【0046】
(難燃性及び抗菌性評価)
難燃性の評価としては、UL耐炎試験規格(UL94)に準じて行った。試験片として上記木質系化粧板に用いた樹脂層(シート)を厚さ3mm、長さ130mm、幅13mmに切断したものを使用した。水平燃焼試験にてHBレベル以上を難燃性ありとした。評価の結果、燃焼速度は16mm/分であり、HBレベル満たしていた。また実施例1と同様に抗菌試験を実施した。抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ6.2、4.6であった。よって、木質系化粧板の抗菌性及び難燃性が確認できた。
【0047】
(実施例3)
実施例2の樹脂組成物のワニスを100×100mm、厚さ0.25mmのラミー繊維織布(ユニチカ株式会社製)に含浸させた後、真空乾燥機で40℃、2時間乾燥させ、プリプレグを得た。これを芯材として厚さ15mmの合板の両側に上記のプリプレグをそれぞれ2枚重ね、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、180℃/10分プレスした後、オーブンで200℃/4時間硬化して、樹脂層としてリグニンを57質量%(ラミー繊維織布を除く)含む木質系化粧板を製造した。また実施例1と同様に抗菌試験を実施した。抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ6.2、4.6であった。
【0048】
(実施例4)
(木質系化粧板の作製)
実施例1記載のリグニン30gと、硬化剤として無水フタル酸10gをアセトン40gに溶解し、樹脂組成物のワニス(固形分50質量%)を得た。さらにこの樹脂組成物のワニスを100×100mm、厚さ0.2mmの上質紙に含浸させた後、真空乾燥機で40℃、2時間乾燥させ、プリプレグを得た。得られたプリプレグ1枚を、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、80℃/10分プレスし、厚み0.2mmのシートを得た。接着剤としては、厚み50μmの合成ゴム系接着剤(コニシ株式会社製、G10Z)を用い、貼り付け条件25℃、圧力10kPa、30分間でシートを厚さ15mmの繊維板の両面に貼り付けることで、樹脂層(シート)としてリグニンを75質量%(上質紙を除く)含む木質系化粧板を得た。
実施例1と同様にして被膜の抗菌性を評価した結果、抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ2.8、3.2であった。よって、木質系化粧板の抗菌性が確認できた。
【0049】
(実施例5)
(木質系化粧板の作製)
実施例1記載のリグニン10g、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)10gを入れ60℃で攪拌した。硬化促進剤としてジラウリン酸ジブチルすず(IV)(和光純薬工業株式会社製)0.2gを加え、十分に攪拌した後、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)1.8gを加え、樹脂組成物のワニス(固形分55質量%)を得た。この樹脂組成物のワニスを40℃にて減圧乾燥し、その後乾燥物を粉砕し、粉末を得た。粉末を100mm×100mm、深さ2mmの金型に充填し、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、120℃/20分プレスした後、オーブンで180℃/2時間硬化し、厚み3mmのシートを得た。得られたシートを、接着剤として、厚み50μmの合成ゴム系接着剤(コニシ株式会社製、G10Z)を用い、貼り付け条件25℃、圧力10kPa、30分間で、厚さ20mmの移行性ストランドボードの両面に貼り付け、樹脂層(シート)としてリグニンを83質量%含む木質系化粧板を得た。
また実施例1と同様に抗菌試験を実施した。抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ7.2、5.3であった。よって、木質系化粧板の抗菌性が確認できた。
【0050】
(比較例1)
(比較用化粧板の作製)
リグニンとしてリグニンスルホン酸塩(バニレックスN、日本製紙株式会社製)を用い、化粧板の作製を試みた。元素分析によって測定された上記リグニンスルホン酸塩中の硫黄原子の含有率は3質量%であった。重量平均分子量を島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(C−R4A)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。移動相をDMF+LiBr(0.06mol/L)+リン酸(0.06mol/L)として使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製ゲルパックGL−S300MDT−5を2つ直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は11000であった。
実施例1と同様に有機溶剤への溶解性を評価した。溶媒としてアセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンを用いて溶解性を評価した結果、すべての溶媒に不溶であった。
【0051】
エポキシ樹脂との相溶性を評価した。前記リグニンスルホン酸1g、シクロヘキサノン1g、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ(YDF−8170C、新日化エポキシ製造株式会社製)1gを混合し、常温(25℃)で2時間攪拌した。その結果、リグニンスルホン酸とエポキシ樹脂が相分離し、化粧板を作製できなかった。
【0052】
(比較例2)
(比較用化粧板の作製)
リグニンとしてリグニンスルホン酸塩(サンエキスP321、日本製紙株式会社製)を用いた以外は比較例1と同様に化粧板の作製を試みた。比較例1と同様に有機溶剤への溶解性を評価した結果、すべての溶媒に不溶であった。
また、エポキシ樹脂との相溶性を評価した結果、リグニンスルホン酸とエポキシ樹脂が相分離し、化粧板を作製できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層で芯材表面を被覆した木質系化粧板であって、前記樹脂層が、リグニン及び硬化剤を含む樹脂組成物からなり、前記リグニンが有機溶媒に可溶であり、前記樹脂層中の樹脂成分として前記リグニンを5〜90質量%含むことを特徴とする木質系化粧板。
【請求項2】
リグニンの重量平均分子量が100〜7000である請求項1記載の木質系化粧板。
【請求項3】
リグニン中の硫黄原子の含有率が2質量%以下である請求項1又は2に記載の木質系化粧板。
【請求項4】
リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項5】
リグニンが、植物原料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することで植物原料を爆砕する水蒸気爆砕法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項6】
芯材が、乾燥材、合板、繊維板、単板積層材、集成材、パーティクルボード、配向性ストランドボードのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項7】
樹脂層が、樹脂組成物を芯材の表面に塗布し、その後硬化して得られる被膜である、請求項1〜6に記載の木質系化粧板。
【請求項8】
樹脂層が、樹脂組成物をシート状に成形してなるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項9】
樹脂層が、樹脂組成物を基材に含浸し、シート状に成形してなるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項10】
基材が、植物繊維、炭素繊維、合成繊維、無機繊維のうち1つないし2つ以上選択される繊維からなる紙、織布、不織布のいずれかである請求項9に記載の木質系化粧板。
【請求項11】
硬化剤がエポキシ樹脂である請求項1〜10のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項12】
硬化剤がイソシアネートである請求項1〜10のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項13】
硬化剤がアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成する化合物である請求項1〜10のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項14】
硬化剤が多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜10のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項15】
硬化剤が不飽和多価カルボン酸または不飽和多価カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜10のいずれかに記載の木質系化粧板。
【請求項16】
シート状に成形してなるものを、芯材に貼りつけて、芯材表面を被覆することを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の木質系化粧板。

【公開番号】特開2011−218777(P2011−218777A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199770(P2010−199770)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】