説明

木質複合板およびその製造方法

【課題】 植林木合板等の軽質な合板と木質繊維板との木質複合板に関し、製造時並びに使用時に反り、ねじれ等の変形が生じない木質複合板とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 低比重木材単板を3層乃至5層積層して形成した比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を貼着して形成した木質複合板であって、矩形合板を構成する少なくとも表面側および裏面側の単板の繊維方向が矩形合板の長辺方向に直交する方向になるように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等建築物の内装材や家具の面材の基材として、特に1尺×6尺フロアーのような細長い床材の基材として好適に用いることのできる木質複合板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1尺×6尺フロアーのような細長い床材の基材として、矩形合板の表面に硬度の高いMDF等の木質繊維板を貼着した木質複合板が使用されている。このような木質複合板は、通常、奇数枚の単板を、表裏の単板の木質繊維の方向が長さ方向となるように積層接着した合板の表面に、尿素樹脂や尿素−メラミン樹脂接着剤などの水系接着剤を塗布し、この上にMDF等の木質繊維板を載置積層し、この積層物をホットプレスにより熱圧し接着一体化して製造されている。
【0003】
しかしながら、このような木質複合板は、上記熱圧時にMDF等の木質繊維板が、加熱による水分の放散によって収縮し、その結果、図4に示すように幅方向や長さ方向に凹反りやねじれなどの変形が生じるという問題を有していた。また製造時には上記反りやねじれがなくても、例えばこの木質複合板を、床暖房仕上げ材の基板として実際の住宅に用いた場合には、木質繊維板が極度に乾燥することによって収縮し、この結果、前記図4に示すように、特に幅方向の凹反りが1.0mm以上と許容しかねる程度に大きくなることがあるという問題があった。また逆に木質繊維板が吸湿することによって膨張し、この場合は図5に示すように、特に幅方向の凸反りが生じることがあるという問題があった。
【0004】
このため、特許文献1に示すような木質複合板も提案されている。この木質複合板は、少なくとも4枚の単板から形成される単板積層体の表面に繊維板を積層一体化したもので、最表面側および最裏面側の単板の繊維方向は長手方向に略一致するとともに、中間の単板の繊維方向は長手方向と直交する方向に略一致し、前記最裏面側の単板の厚さは前記最表面側の単板の厚さに等しいか大きく形成され、且つ前記最裏面側の単板の比重は前記最表面側の単板の比重より大きくすることで形成されている。
【0005】
そしてこのような構成により、木質複合板製造時の熱圧後に木質繊維板の裏面側の含水率が低下することにより表面側を凸とする椀状の反りや変形が生じるという従来の不具合の発生を少なくし、反りやねじれ等のひずみが小さい複合板を得ることができるという効果を奏する。
【0006】
一方、近年、合板の主原料であったラワン等の南洋産広葉樹の資源が減少し、また、地球温暖化など地球環境の保全の観点から、成長の早い未利用材や植林木の利用が強く望まれてきている。しかし、このような未利用材や植林木の多くは、その比重が0.5以下と軽質で、曲げ剛性や硬度などの強度的性質が低いうえに、変形し易く、又抜け節等の欠点も多いという問題点を有していた。
【0007】
このため、前記特許文献1に記載等の従来の木質複合板の基板合板として、上記植林木等からなる軽質な木材単板を適用した場合、特にその表面側単板と裏面側単板の木質繊維の方向が、矩形合板の長さ方向に対し平行方向となるように形成されているので、長さ方向に対しては十分な曲げ剛性を有しているが、幅方向に対しての曲げ剛性が顕著に不足する結果、製造工程におけるホットプレスでの熱圧時において、木質繊維板の表面側が乾燥収縮し、この収縮力によって、前記図4に示すような曲げ剛性の弱い幅方向に、表面側に凹の反りが木質複合板に一層発生し易いという不具合があった。
【特許文献1】特開2006−192817号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は斯かる問題点に鑑みなされたもので、植林木など軽質な木材を用いて形成された比重0.5以下の合板を基板に用いた木質複合板で、製造時の熱圧工程や使用時の乾燥湿潤環境によって、反りやねじれ等の変形が発生し難い木質複合板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、請求項1に係る発明の木質複合板は、低比重木材単板を3層乃至5層積層して形成した比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を貼着して形成した木質複合板であって、矩形合板を構成する少なくとも表面側および裏面側の単板の繊維方向が矩形合板の長辺方向に直交する方向になるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明の木質複合板は、請求項1の発明において、矩形合板を構成する単板の積層構成が、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板からなる4層構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明の木質複合板は、請求項1の発明において、矩形合板を構成する単板の積層構成が、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の中芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板からなる5層構成であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明の木質複合板は、請求項1乃至3の発明において、矩形合板の裏面には、繊維質裏張りシートが貼着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明の木質複合板の製造方法は、低比重木材単板を、少なくとも表面側単板および裏面側単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向となるように3層乃至5層積層して形成した、比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を、溶融したホットメルト樹脂接着剤を介して積層し、該積層物を上記ホットメルト樹脂接着剤が溶融状態にあるうちにロールプレスにより押圧して一体に接着することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明の木質複合板の製造方法は、低比重木材単板を、少なくとも表面側単板および裏面側単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向となるように3層乃至5層積層して形成した、比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を、水性ビニルウレタン樹脂接着剤を介して積層し、該積層物を平板プレスにより押圧して一体に接着することを特徴とする
【0015】
請求項7に係る発明の木質複合板の製造方法は、請求項5又は6の発明の矩形合板が、低比重木材単板を、裏面側から順に矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板となるように4層積層して形成したものであることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明の木質複合板の製造方法は、請求項5又は6の発明において、矩形合板が、低比重木材単板を、裏面側から順に矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の中芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板となるように5層積層して形成したものであることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明の木質複合板の製造方法は、請求項5〜8の発明において、矩形合板の裏面には、繊維質裏張りシートが貼着されていることを貼着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明の木質複合板は、基板である矩形合板の表裏面の単板の繊維方向が矩形合板の長辺方向に直交する方向になるように構成されているので、矩形合板の全乾比重が0.5以下と軽質であっても、矩形合板の幅方向の曲げ剛性が強化され、これによって木質複合板製造時の熱圧工程において、木質繊維板の収縮挙動に伴なう幅方向の凹反りの発生を抑制することができる。
【0019】
また、木質繊維板は、その厚みが1.5mm〜3mmと薄く、全乾比重が0.6〜1.0と硬いものを用いているので、上記熱圧工程における木質繊維板の収縮力を小さくして反りが発生するのを少なくするとともに、全乾比重0.5以下の軽質な矩形合板の表面の、硬度・耐傷性等の物理的性質を向上させることができる。
【0020】
尚、木質繊維板の厚みは、1.5mm未満となると硬度・耐傷性等の物理的性質が低くなりすぎて好ましくなく、また、3mmを超えるとなると複合板製造時の熱圧工程や床暖房仕上げ材の基材としての実際の使用時において、木質繊維板の乾燥による収縮力が大きくなって、複合板に幅方向の凹反りが発生し易くなるので好ましくない。また、木質繊維板の気乾比重は、0.6未満となると、十分な硬度や耐傷性の発現が困難であり、1.0を超えると脆く加工がし難くなり、且つ基材自体が重くなるので好ましくない。
【0021】
請求項2及び請求項3の発明の木質複合板は、請求項1の発明において、木質複合板の基板である矩形合板の好ましい単板構成を夫々示したものであり、請求項1の発明の効果に加えて、複合板製造時の熱圧工程における木質繊維板の収縮挙動に伴なう特に幅方向の反りの発生を殆どフラットになるまで抑制することができる。
【0022】
請求項4の発明の木質複合板は、請求項1乃至3の発明において、矩形合板の裏面に繊維質裏張りシートを貼着したものであり、これによって、請求項1乃至3の発明の効果に加えて、複合板製造後の実際の使用時に木質繊維板が乾燥して収縮することによる基材の長さ方向の反りを良好に抑制することができるので好ましい。
【0023】
請求項5の発明の木質複合板の製造方法は、矩形合板と木質繊維板とを溶融したホットメルト樹脂接着剤を介して積層し、これをロールプレスにより押圧して接着しているので、従来のような水性接着剤を用いる場合に較べて木質繊維板に含有される水分量を少なくすることができ、製造時や使用時に幅方向に生じる反りの発生が少ない木質複合板を、連続プレスによって生産性よく製造することができる。
【0024】
請求項6の発明に係る木質複合板の製造方法は、矩形合板と木質繊維板とを水性ビニルウレタン樹脂接着剤を介して積層し、これを平板プレスにより押圧して接着しているので、特に接着時における幅方向の反りの発生が少ない木質複合板を製造することができる。
【0025】
請求項7及び請求項8の木質複合板の製造方法は、請求項5及び請求項6の発明において、矩形合板に幅方向の反りが一層発生しないような具体的な構成としたもので、請求項5及び6の発明の効果に加えて、製造時や使用時において幅方向の反りの発生が一層少ない木質複合板を製造することができる。
【0026】
請求項9の木質複合板の製造方法は、請求項5乃至8の木質複合板の製造方法において、矩形合板の裏面に繊維質裏張りシートを貼着しているので、請求項5乃至8の発明の効果に加えて、特に製造後の使用時において長さ方向の反りが大きくなるのを抑制した木質複合板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図1、図2に基づき説明する。尚、本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0028】
図1、図2は、本発明の第1の実施形態である木質複合板A、及びBを示す。この木質複合板A、及びBは、幅150mm〜450mm、長さ900mm〜2730mm、厚さ9〜15mm程度の矩形状に形成されており、通常、床板として用いる場合には、幅303mm、長さ1818mm、厚さ12mm程度の形状に形成されている。
【0029】
また、図1に示すように、木質複合板Aは、上から順に、木質繊維板2、矩形合板1A、繊維質裏張りシート3とが接着剤により一体に接着されて形成されており、木質複合板Bは、上から順に、木質繊維板2、矩形合板1B、繊維質裏張りシート3とが接着剤により一体に接着されて形成されている。
【0030】
矩形合板1A、1Bは、いずれも気乾比重(以下、比重と略称する)が0.5以下であり、厚さ1.5mm〜3mm程度の植林木等の軽質なロータリー単板を、その表面側および裏面側の単板の木質繊維の方向が矩形合板1A、1Bの長辺方向に対し略直交する方向となるように3枚乃至5枚積層接着して形成されている。
【0031】
ここにおいて、植林木等の軽質なロータリー単板としては、トドマツ単板、カラマツ単板、スギ単板、ラジアータパイン単板、ファルカタ単板等のロータリー単板を、単独種で、或いは複数種組み合わせて用いることができる。本発明は、このように軽質なロータリー単板を用いて形成した比重0.5以下の矩形合板を用いて木質複合板を反り等の問題を生じることなく形成するのに好適であり、矩形基板の比重が0.5を超える場合には、幅方向の曲げ剛性も高くなるので適用する必要はない。
【0032】
そして、具体的に矩形合板1Aは、図1に示すように該矩形合板1Aの長辺方向に対して、裏面側から順に、木質繊維が直交する方向の裏面側単板1a、木質繊維が平行する方向の芯単板1b、木質繊維が平行する方向の芯単板1c、木質繊維が直交する方向の表面側単板1dからなる4層構成に形成されている。また、矩形合板1Bは、図2に示すように該矩形合板1Bの長辺方向に対して、裏面側から順に、木質繊維が直交する方向の裏面側単板1e、木質繊維が平行する方向の芯単板1f、木質繊維が直交する方向の中芯単板1g、木質繊維が平行する方向の芯単板1h、木質繊維が直交する方向の表面側単板1iからなる5層構成に形成されている。
【0033】
このように、矩形合板1A、1Bは、国内外の植林木等軽質な木質単板を積層して形成されているが、その表面側および裏面側の単板の木質繊維の方向が、矩形合板の長辺方向に対し直交する方向に形成されているので、矩形合板1A、1Bの幅方向の曲げ剛性が強くなっており、幅方向に変形し難くなっている。
【0034】
このような矩形合板1A、1Bは、常法に従い、例えば、尿素メラミン樹脂接着剤を用いて、仕組んだ単板をホットプレス等で熱圧接着することにより形成することができる。
【0035】
次に、矩形合板1A、1Bの表面に接着される木質繊維板2は、その厚さが1.5mm〜3.0mmで、その比重が0.6〜1.0のものを用いる。木質繊維板2の厚みが1.5mm未満となると硬度や耐傷性等の物理的性質が低くなりすぎて好ましくなく、また、3mmを超えるとなると熱圧工程や使用時における乾燥により木質繊維板の収縮力が大きくなって、木質複合板に特に幅方向の凹反りが発生し易くなるので好ましくない。また、木質繊維板の比重は、0.6未満となると十分な硬度や耐傷性の付与が困難であり、1.0を超えると脆く加工がし難くなったり重くなったりするので好ましくない。
【0036】
尚、この木質繊維板2は、その厚さが2mm未満となると安定した製造が難しくなるので、その倍以上の厚さの木質繊維板を水平方向に2分割或いは3分割し、更に必要により研削して厚みを調整したもの等を用いることもできる。
【0037】
矩形合板1A、1Bと木質繊維板2との接着に用いる接着剤は特に限定されないが、ウレタン系ホットメルト樹脂接着剤は、水分を含まないので木質繊維板2の水分変化に伴なう変形を軽減できるので好ましく、また、水性ビニルウレタン樹脂接着剤は熱をかけずに接着できるので木質繊維板2の熱による水分変化を生じさせないので好ましい。
【0038】
繊維質裏張りシート3は、紙やスライス単板など薄いシート材を好適に用いることができる。この繊維質裏張りシート3を貼着しておくことで、木質複合板Aの使用時における長さ方向の反りの発生を抑制することができる。繊維質裏張りシート3としてスライス単板を用いる場合は、厚さ0.2mm〜0.4mm程度の薄い厚さのものを、その木質繊維の方向が木質複合板Aの長さ方向に平行となるように矩形合板1の裏面側に貼着するのが望ましい。尚、このような繊維質裏張りシート3は、矩形合板1A、1Bの裏面に、尿素メラミン樹脂接着剤を用いて熱圧接着することができる。このような繊維質裏張りシート3は、特に木質複合板A、又はBの表面に化粧突板や印刷化粧シートによって化粧して木質化粧複合板を形成する場合に、事前に貼着しておくことにより、反りの発生を一層良好に抑制することができる。
【0039】
このようにして得られる木質複合板A、および木質複合板Bは、表面に貼着した木質繊維板2が製造過程や使用時に乾燥して収縮しても、特に幅方向の反りを生じて施工性を損なったり、施工外観を損なったりすることがなく、また、その表面に化粧単板や化粧紙を貼着して化粧床板等の化粧板に形成した場合にも、上記同様反りを生じることがない。
【0040】
次に図3の(a)〜(e)に基づき、木質複合板Bの製造方法の一例を説明する。先ず、図3(a)に示すように、矩形合板1Bと、裏面側に湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂接着剤4を50g〜100g/m2の割合で塗布した木質繊維板2を準備し、矩形合板1Bの表面に上記木質繊維板2裏面の接着剤4塗布面が接するように載置する。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、この積層物を20〜30m/分の速度でコンベアで搬送(図示しない。)しながら、塗布した湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂接着剤4が溶融状態にあるうちに、ロールプレス装置7により線圧10〜20kg/cm2の圧力で押圧し、矩形合板1Bに木質繊維板2を接着して、図3(c)に示すような木質複合物5を製造した。
【0042】
次に、図3(d)に示すように、この木質複合物5の裏面に尿素メラミン樹脂接着剤6を固形分換算で50〜80g/cm2の割合で塗布し、この接着剤6塗布面上に厚さ0.2〜0.4mmのスライス単板からなる繊維質裏張りシート3を載置し、110〜120℃の温度、5〜8kg/cm2の圧力で30〜45秒間ホットプレス装置8で熱圧することにより、図3(e)に示すような、反り、ねじれ等の変形のない木質複合板Bを製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例を示す。
【0044】
(実施例1)
トドマツロータリー単板を4プライ積層接着して形成した幅303mm、長さ1818mm、厚さ9mmで、平均気乾比重0.40の矩形合板を準備した。この矩形合板は、下から順に、厚さ2.25mmの裏面側単板、厚さ2.25mmの芯単板、厚さ2.25mmの芯単板、厚さ2.25mmの表面側単板の4プライで構成され、表面側と裏面側の単板の木質繊維の方向が矩形合板の略長辺方向に直交する方向になり、2枚の芯単板の木質繊維の方向が矩形合板の略長辺方向に平行する方向になるように、尿素メラミン樹脂接着剤を用いてホットプレスにより熱圧接着して形成されたものである。この矩形合板の幅方向の曲げ剛性は、12650000Nmm2であった。
【0045】
次に、厚さが2.7mmで、幅303mm、長さ1818mm、気乾比重0.75の木質繊維板を準備した。そして、この木質繊維板の裏面側に湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂接着剤を60g/m2塗布して、上記矩形合板の表面に載置し、この積層物を送り速度30m/分で搬送しながら、その表面を線圧が20kg/cm2となるようにロールプレスで押圧して、木質繊維板と矩形合板とを一体に接着して木質複合物に形成した。
【0046】
次に、この木質複合物の裏面に、尿素メラミン樹脂接着剤を固形分換算で65g/m2塗布し、厚さ0.25mmの突板を、その木材繊維の方向が木質複合物の長さ方向となるように載置し、115℃の温度、6.5kg/cm2の圧力で、40秒間ホットプレスで熱圧して、本実施例1に係る木質複合板を得た。このようにして得られた木質複合板には、基板である矩形合板に軽質なトドマツ単板を用いているにも拘わらず、幅方向、長さ方向ともに顕著な反りの発生はなかった。
【0047】
また、この木質複合板の表面に尿素メラミン樹脂接着剤を塗布した後、厚さ0.3mmの化粧突板を載置し熱圧接着して化粧木質複合板を形成した。このようにして得られた化粧木質複合板にも、幅方向、長さ方向ともに顕著な反りの発生はなかった。また、この化粧木質複合板を床板として施工したが、施工性は良く、また施工後にも反りやねじれ等の欠点は生じなかった。
【0048】
(実施例2)
トドマツロータリー単板5プライ積層接着して形成した幅303mm、長さ1818mm、厚さ9mmで、平均気乾比重0.40の矩形合板を準備した。この矩形合板は、下から順に、厚さ1.8mmの裏面側単板、厚さ1.8mmの芯単板、厚さ1.8mmの中芯単板、厚さ1.8mmの芯単板、厚さ1.8mmの表面側単板の5プライで構成され、表面側と裏面側と中芯の単板の木質繊維の方向が矩形合板の略長辺方向に直交する方向になり、2枚の芯単板の木質繊維の方向が矩形合板の略長辺方向に平行する方向になるように、尿素メラミン樹脂接着剤を用いてホットプレスにより熱圧接着して形成されたものである。この矩形合板の幅方向の曲げ剛性は、11300000Nmm2であった。
【0049】
次に、この矩形合板の表面に、実施例1で用いたものと同じ木質繊維板を、実施例1と同様の条件で接着して実施例2に係る木質複合物を得た。
【0050】
次に、この木質複合物の裏面に、実施例1に用いたものと同じ突板を、実施例1と同様にして貼着し、本実施例2に係る木質複合板を得た。このようにして得られた木質複合板は、基板である矩形合板に軽質なトドマツ単板を用いているにも拘わらず、幅方向、長さ方向ともに、ほとんど反りの発生はなかった。
【0051】
また、この木質複合板の表面に、実施例1に用いたものと同じ化粧突板を、実施例1と同様にして貼着し、実施例2に係る化粧木質複合板を形成した。このようにして得られた化粧木質複合板にも、幅方向、長さ方向ともにほとんど反りの発生はなかった。また、この実施例2に係る化粧木質複合板を床板として施工したが、施工性は良く、また施工後にも反りやねじれ等の欠点は生じなかった。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同じ4枚の単板を、表面側と裏面側の単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略平行する方向になり、2枚の芯単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向になるように、実施例1と同じ条件で熱圧接着して、実施例1と同じ形状の矩形合板を準備した。この比較例1に係る矩形合板の幅方向の曲げ剛性は、2790000Nmm2であり、実施例1及び2に係る矩形合板の曲げ剛性に較べ、低い数値であった。
【0053】
次に、この矩形合板の表面に、実施例1で用いたものと同じ木質繊維板を、実施例1と同様の条件で接着して比較例1に係る木質複合物を得た。
【0054】
次に、この木質複合物の裏面に、実施例1に用いたものと同じ突板を、実施例1と同様にして貼着し、比較例1に係る木質複合板を得た。このようにして得られた木質複合板は、実施例1および2に較べ、基板である矩形合板の幅方向の曲げ剛性が低いため、製造時の熱圧工程や乾燥下の使用時において、幅方向に顕著な反りを生じていた。
【0055】
また、この木質複合板の表面に、実施例1に用いたものと同じ化粧突板を、実施例1と同様にして貼着し、比較例1に係る化粧木質複合板を形成した。このようにして得られた化粧木質複合板にも幅方向や長さ方向に反りが生じていた。また、この比較例1に係る化粧木質複合板を床板として施工したが、特に幅方向の反りによって施工性は悪かった。
【0056】
(比較例2)
実施例2と同じ5枚の単板を、表面側と裏面側と中芯の単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に対し略平行する方向になり、2枚の芯単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向になるように、実施例2と同じ条件で熱圧接着して、実施例2と同じ形状の矩形合板を準備した。この比較例2に係る矩形合板の幅方向の曲げ剛性は、4160000Nmm2であり、実施例1及び2に係る矩形合板の曲げ剛性に較べ、低い数値であった。
【0057】
次に、この矩形合板の表面に、実施例2で用いたものと同じ木質繊維板を、実施例2と同様の条件で接着して比較例2に係る木質複合物を得た。
【0058】
次に、この木質複合物の裏面に、実施例2に用いたものと同じ突板を、実施例2と同様にして貼着し、比較例2に係る木質複合板を得た。このようにして得られた木質複合板は、実施例1および2に較べ、基板である矩形合板の幅方向の曲げ剛性が低いため、製造時の熱圧工程や乾燥下の使用時において、幅方向に顕著な反りを生じていた。
【0059】
また、この木質複合板の表面に、実施例2に用いたものと同じ化粧突板を、実施例2と同様にして貼着し、比較例2に係る化粧木質複合板を形成した。このようにして得られた化粧木質複合板にも幅方向や長さ方向に反りが生じていた。また、この比較例2に係る化粧木質複合板を床板として施工したが、特に幅方向の反りによって施工性は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、木材資源の枯渇化、地球温暖化を背景として、再生可能木材資源である植林木の活用を促す技術であり、有用で産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態である木質複合板Aを説明する長さ方向断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態である木質複合板Bを説明する長さ方向断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態である木質複合板Bの製造方法を説明する工程図
【図4】従来技術に係る木質複合板に生じる特に幅方向の凹反りの説明図。
【図5】従来技術に係る木質複合板に生じる特に幅方向の凸反りの説明図。
【符号の説明】
【0062】
A、B 木質複合板
1A、1B 矩形合板
1a、1b、1c、1d、1e ロータリー単板
2 木質繊維板
3 繊維質裏張りシート
4 ホットメルト樹脂接着剤
5 木質複合物
6 尿素メラミン樹脂接着剤
7 ロールプレス装置
8 ホットプレス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低比重木材単板を3層乃至5層積層して形成した比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を貼着して形成した木質複合板であって、矩形合板を構成する少なくとも表面側および裏面側の単板の繊維方向が矩形合板の長辺方向に直交する方向になるように配されていることを特徴とする木質複合板。
【請求項2】
矩形合板を構成する単板の積層構成が、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板からなる4層構成であることを特徴とする請求項1に記載の木質複合板。
【請求項3】
矩形合板を構成する単板の積層構成が、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の中芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板からなる5層構成であることを特徴とする請求項1に記載の木質複合板。
【請求項4】
矩形合板の裏面には、繊維質裏張りシートが貼着されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の木質複合板。
【請求項5】
低比重木材単板を、少なくとも表面側単板および裏面側単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向となるように3層乃至5層積層して形成した比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を、溶融したホットメルト樹脂接着剤を介して積層し、該積層物を上記ホットメルト樹脂接着剤が溶融状態にあるうちにロールプレスにより押圧して一体に接着することを特徴とする木質複合板の製造方法。
【請求項6】
低比重木材単板を、少なくとも表面側単板および裏面側単板の木質繊維の方向が矩形合板の長辺方向に略直交する方向となるように3層乃至5層積層して形成した比重0.5以下の矩形合板の表面に、厚み1.5mm〜3mmで比重0.6〜1.0の木質繊維板を、水性ビニルウレタン樹脂接着剤を介して積層し、該積層物を平板プレスにより押圧して一体に接着することを特徴とする木質複合板の製造方法。
【請求項7】
矩形合板が、低比重木材単板を、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板となるように4層積層して形成したものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の木質複合板の製造方法。
【請求項8】
矩形合板が、低比重木材単板を、裏面側から順に、矩形合板の長辺方向に対して、木質繊維が直交する方向の裏面側単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の中芯単板、木質繊維が平行する方向の芯単板、木質繊維が直交する方向の表面側単板となるように5層積層して形成したものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の木質複合板の製造方法。
【請求項9】
矩形合板の裏面には、繊維質裏張りシートが貼着されていることを特徴とする請求項5乃至8に記載の木質複合板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−101648(P2009−101648A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277157(P2007−277157)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】