説明

木造建築用の接合金具

【課題】 木造建築の持っている温かみを損なうことなく、基礎と柱とを直接的に且つ正確に接合することができ、取付作業も容易な接合金具を提供する。
【解決手段】 基礎20に固定される略ボックス状の本体部1Aと、本体部1Aから直立する接合部1Bとが一体的に形成された鋳鋼品である。本体部1Aは、作業穴WRを有する頂部2と、頂部2と平行に形成されて作業穴WRに対応する取付穴HOを有する底部3と、頂部2と底部3とを連絡する一対の側部4,5と、前記4つの部分2〜5に直交して本体部1Aの内部を二分する中央壁6とを備えて構成され、接合部1Bは、接合対象の柱材30の長さ方向に形成された作業溝30aに挿入可能な板状に形成され、柱材30を貫通して挿入される連結部材PINを通過させる通過穴8A,8Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築用の接合金具に関し、特に、通し柱や管柱などの柱材を、直接的に基礎に固定することのできる柱脚一体型の接合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅などの木造建築物では、一般に、布基礎などに土台を強固に固定すると共に、固定された土台と柱材とを、接合金具を用いて一体化する工法が採られている。しかし、特に、隅通し柱や隅管柱では、土台を介在させることなく、柱材を直接的に基礎に固定したい場合もあり、かかる用途に適した接合金具の完成が望まれている。
【0003】
また、地震の多い日本では、木造住宅の耐震補強ラーメンの必要性も指摘されているところであり、この場合にも、柱脚部を基礎に強固に固定することが重要となる。そこで、かかる要請に関連して、木造構造物におけるラーメン架構を構築するべく、柱部材の端部に使用する柱脚支持金物も提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−244965号公報
【0004】
特許文献1の柱脚支持金物は、上部が開口する一方、底部が閉口した箱状に形成され、その底部には、アンカーボルトを挿入するためのボルト孔を有する支持板を設けられて構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、柱部材の表面に箱状の金物が剥き出しになってしまうので、見栄えが悪く木造建築の持っている温かみを台無しにしてしまう。また、箱体の中に柱を挿入する取付作業が煩雑であり、そもそも、特許文献1の構成では、十分な剛性が確保できるかも疑問である。更にまた、特許文献1の構成では、柱脚支持金具の下方空間を通して、建物の内外が連通するので、昆虫や小動物などが自由に進入可能である点も問題である。
【0006】
この発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、木造建築の持っている温かみを損なうことなく、基礎と柱とを直接的に且つ正確に接合することができ、また、その取付作業も容易で遮蔽構造を有する接合金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る接合金具は、基礎に固定される略ボックス状の本体部と、前記本体部から直立する接合部とが一体的に形成された鋳鋼品であって、前記本体部は、作業穴を有する頂部と、前記頂部と平行に形成されて前記作業穴に対応する取付穴を有する底部と、前記頂部と前記底部とを連絡する一対の側部と、前記4つの部分に直交して前記本体部の内部を二分する中央壁とを備えて構成され、前記接合部は、接合対象の柱材の長さ方向に形成された作業溝に挿入可能な板状に形成され、前記柱材を貫通して挿入される連結部材を通過させる通過穴が形成されている。
【0008】
本発明の接合金具は鋳鋼で構成されるが、鋳鋼は、鋳鉄に較べて炭素量が低く、珪素やリンなどの不純物も少ないので、組織が比較的均一であり、鋼に近い剛性を有する利点がある。また、本発明は、鋳鋼品であるから、鍛鋼品のような機械加工を省略でき、また材質を選択も容易で多量生産も可能であるので、十分な剛性のものを安価に提供できる。なお、普通鋳鋼と合金鋳鋼の何れを使用しても良いが、好ましくは、普通鋳鋼が使用される。但し、耐食性などが要求される場合には、特殊元素を加えた合金鋳鋼であっても良い。
【0009】
何れにしても、本発明では、鋳鋼を用いるので、底部と頂部の外周面を平坦に形成できるだけでなく、底部と頂部を、正確な平行状態に形成することができる。また、接合金具の本体部は、中央壁によって内部が二分されて遮蔽されるので昆虫や小動物の侵入のおそれもない。接合金具の接合部についても、本体部から正確に直立させることができる。そして、直立した接合部は、柱材の長さ方向に形成された作業溝に挿入されるので、柱の表面を覆う金属部分が存在しない。
【0010】
なお、本発明の接合金具では、本体部の内部は、前記中央壁に直交する補強壁によって更に二分されているのが好ましい。また、前記一対の側部は、前記頂部及び底部に直交する平坦な外表面を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明によれば、木造建築物の持っている温かみを損なうことなく、基礎と柱とを直接的に接合することができる接合金具を安価に実現することができる。また、本発明によれば、基礎の上に柱材を正確に直立させる作業も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、実施例に係る接合金具JNを示す斜視図であり、図2はその使用状態を例示している。また、図3〜図5は、図1の接合金具JNの六面図と各断面図を示している。
【0013】
この接合金具JNは、図2に示すように、コンクリート基礎20の上面に、通し柱や管柱などの柱材30を、強固に固定するための鋳鋼品である。そして、コンクリート基礎20に固定される略ボックス状の本体部1Aと、本体部1Aから直立する接合部1Bとが一体的に形成されている。ここで、本体部1A及び接合部1Bの板厚は、軽量化や低価格化などの観点から、必要な強度を有する範囲でなるべく薄い値が採用される。具体的な板厚は、鋳鋼の種類に応じて異なるが、一般には4〜8mm程度であり、この実施例では6mm程度に設定されている。
【0014】
図1〜図5に示す通り、本体部1Aは、4つの作業穴WRを設けた頂部2と、基礎20から突出するアンカーボルトBTを貫通させる取付穴HOを設けた底部3と、頂部2と底部3とに直交する一対の側部4,5と、これら4つの部分2〜5に直交して、本体部1の内部空間を前後に遮蔽して二分する中央壁6とを備えて構成されている。
【0015】
頂部2の中央には、4つの作業穴WRを二分するように、板状の接合部1Bが立設されている。なお、各作業穴WRは、頂部2を貫通する丸穴であり、接合金具JNの強度を損なわない範囲でなるべく大きい穴とするのが望ましい。そのため、この実施例では、100mm×100mm程度の頂部に、36mm程度の4つの丸穴が、均一に配置されて形成されている。
【0016】
底部3には、前記4つの作業穴WRに対応して、作業穴WRと同心状の取付穴HOが4つ形成されている。この取付穴HOは、コンクリート基礎20から突出するアンカーボルトBTを通過させるための貫通穴である。そして、取付穴HOを通過させたアンカーボルトBTにナットNTを締め込むことで、この接合金具JNが基礎に確実に固定される(図2)。なお、取付穴HOの開口径は、アンカーボルトBTを無理なく通過させる開口径として、例えば36mm程度に設定される。
【0017】
このように、底部3の外周面3a(図4(a))は、コンクリート基礎20に接触して固定されるので、平坦に形成されると共に、頂部2と平行になるように形成されている。なお、この接合金具JNは鋳造品であるから、頂部2と正確に平行で平坦な外周面3aを実現することは極めて容易である。
【0018】
左右の側部4,5は、頂部2及び底部3に直交して構成されている。この側部4,5の垂直方向の高さは、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトBTの頭部に対応して決定されており、アンカーボルトBTの頭部を収容する必要最小限の高さとして、この実施例では30mm程度に設定されている。したがって、実施例の側部4,5は、前後幅100mm×高さ30mm×厚さ6mm程度の大きさとなる。なお、接合金具JNの左右に土台40,40が配置される場合には、左右側部4,5の外周面が土台の端面に当接されるので、左右側部4,5の外周面は、平坦に形成されている。
【0019】
ところで、右側部4、左側部5、頂部2、及び底部3の各内面に連結して、中央壁6が設けられ、中央壁6が各内面に直交している。この中央壁6は、頂部2に立設された接合部1Bに連続する位置に設けられているので、垂直方向の荷重を確実に受け止めることができる。また、昆虫や小動物の侵入を確実に阻止できる。
【0020】
また、中央壁6と頂部2の内面に連結して、三角板状の補強リブ7が設けられている(図5(b))。したがって、中央壁6によって二分された本体部1Aは、補強リブ7によって更に二分され、それぞれに作業穴WRと取付穴HOが1個設けられていることになる。
【0021】
一方、接合部1Bは、その上部に4つの通過穴8が形成されている(図1)。通過穴8は、接合部1Bの鉛直方向の仮想中心線を基準にした左右対称位置に、外側通過穴8Aと内側通過穴8Bがそれぞれ形成されている。この通過穴8は、接合金具JNと柱を接合する際に、連結ピンPINを通過させる貫通穴である。なお、接合部の下部には、通過穴8より大きい開口穴9が形成されているが、これは軽量化のために設けられている。
【0022】
続いて、実施例の接合金具JNの使用方法を確認的に説明する。図2に示すように、接合対象となる柱材30には、接合部1Bを受け入れる作業溝30aと、接合部1Bの通過穴8に対応するピン穴30bとが予め形成されている。なお、柱材30のピン穴30bは、必ずしも、図示例のように4個設ける必要はなく、場合によっては2個であっても良い。
【0023】
一方、コンクリート基礎20からは、本体部1Aの取付穴HOの位置に対応して、4本のアンカーボルトBTが突出している。そこで、先ず、アンカーボルトBTを取付穴HOに通過させて、接合金具JNをコンクリート基礎20の上に配置する。しかる後、本体部1Aの前後に設けられた矩形状の開口部や、頂部2に設けられた作業穴WRを利用して、アンカーボルトBTの頭部にナットNTを締着して、基礎20の上に接合金具JNを強固に固定する。
【0024】
このようにして接合金具JNの固定作業が終われば、柱材30を降下させて、接合金具JNの上に配置する。この場合、接合部1Bが作業溝30aの中に進入するように柱部材30を降下させる。そして、その後、ピン部材PINをピン穴30bに打ち込むことによって、柱部材30を接合金具JNに固定する。
【0025】
このように、この接合金具JNを使用すれば、極めて簡単な作業によって、コンクリート基礎20の上に、土台などを介在させることなく、柱材30を直接組付けることができる。そして、組付け完了状態では、柱材30の下端部に接合金具JNの本体部1Aが現れるだけであり、木材の表面を金属部分が覆うような弊害はない。また、基礎と柱が強固に固定されるので、木造構造物におけるラーメン架構を構築することもできる。図6(a)は、門型のラーメンフレームを図示したものであり、この例では、布基礎の上に接合金具JNを固定し、その接合金具JNを利用して柱部材を立設している。
【0026】
なお、この接合金具JNは側部4,5の外表面が平坦に形成されているので、図7のように、2つの接合金具JNを隣接して配置することができる。そのため、例えば、二本の柱材を一体的に立設したいような場合にも使用することができる(図6(b)参照)。
【0027】
以上、本発明の実施例について説明したが、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱することなく各種の改変が可能である。例えば、実施例では側部の外表面を平坦に形成したが、側部から水平方向にも、垂直方向と同様の接合部1Bを突出させても良い。この場合、水平方向の接合部を用いて土台を接合することができる。
【0028】
また、実施例では、中央壁6と頂部2の内面に連結する補強リブを設けたが、これに加えて、中央壁6と底部3の内面に連結する補強リブ7を設けても良い。また、三角板状の補強リブに代えて、頂部と底部とを接続する補強壁を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例に係る接合金具の斜視図である。
【図2】図1の接合金具の使用状態を示す斜視図である。
【図3】接合金具の平面図(a)と底面図(b)である。
【図4】接合金具の正面図(a)と側面図(b)である。
【図5】図3(a)のA−A断面図(a)とB−B断面図(b)である。
【図6】門型のラーメンフレームを例示したものである。
【図7】接合金具を2つ連続して使用する状態を図示したものである。
【図8】接合金具の六面図である。
【符号の説明】
【0030】
1A 本体部
1B 接合部
2 頂部
3 底部
4,5 側部
6 中央壁
8 通過穴
20 基礎
30 柱材
30a 作業溝
WR 作業穴
HO 取付穴
PIN PIN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に固定される略ボックス状の本体部と、前記本体部から直立する接合部とが一体的に形成された鋳鋼品であって、
前記本体部は、作業穴を有する頂部と、前記頂部と平行に形成されて前記作業穴に対応する取付穴を有する底部と、前記頂部と前記底部とを連絡する一対の側部と、前記4つの部分に直交して前記本体部の内部を二分する中央壁とを備えて構成され、
前記接合部は、接合対象の柱材の長さ方向に形成された作業溝に挿入可能な板状に形成され、前記柱材を貫通して挿入される連結部材を通過させる通過穴が形成されていることを特徴とする接合金具。
【請求項2】
前記本体部は、前記中央壁に直交する補強壁によって更に二分されている請求項1に記載の接合金具。
【請求項3】
前記一対の側部は、前記頂部及び底部に直交する平坦な外表面を有している請求項1又は2に記載の接合金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−336226(P2006−336226A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159521(P2005−159521)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(500543834)木建技研株式会社 (10)
【Fターム(参考)】