説明

末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法

【課題】不純物の含有量が極めて少ない高純度末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを製造する。
【解決手段】(A)式(1)のオルガノポリシロキサンと、


(R1は一価炭化水素基、XはOH基又はR1、mは整数。)(B)(A)成分のOH基1モルに対して等モルを超える量の式(2)のアルコキシシランとを、


(R2、R3は一価炭化水素基、aは整数。)(C)沸点が30〜80℃である一級アミンの存在下で縮合反応を行い、得られた生成物を減圧加熱して末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に無機質材料(塗料用無機顔料、プラスチック用無機充填剤、化粧料用無機粉体、ガラス、コンクリート等)の表面処理剤、撥水処理用コーティング剤、縮合硬化型シリコーンゴムの原料シロキサンとして有用である高純度末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法に関する。詳細には、未反応物や副生成物等の不純物をほとんど含有しないため、それらの不純物に起因する臭気や着色がなく、また、末端アルコキシシリル変性率が高いため、粉体の表面処理効率も極めて良好となる末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体はUV遮蔽効果に優れることから、基礎化粧品を始め、サンカット料、ファンデーション等の化粧料に広く用いられている。これらの粉体を化粧料に配合する際に、表面上の極性基をなくして水分の吸着等を防ぐと共に油性成分中への分散性を高めるために、オルガノポリシロキサンで表面処理することが知られている。
【0003】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、特開2003−95655号公報、特開2003−95839号公報(特許文献1,2)に記載の下記式(4)で表されるようなメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンがある。
【0004】
【化1】

【0005】
該メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンは、そのSiH基が粉体表面の活性基と反応し、表面処理が進行する。しかし、反応率は十分ではなく、粉体表面には未反応のSiH基が残留する。このため、該表面処理粉体を化粧料に配合した場合、他の原料を劣化させることがある。
【0006】
一方、特開平7−196946号公報(特許文献3)に記載の直鎖状反応性アルキルポリシロキサンを用いた場合、上記の問題を解決し得るものである。例えば、下記式(5)で表される片末端アルコキシ変性ジメチルポリシロキサンがある。
【0007】
【化2】

【0008】
該化合物は、そのSi(OCH33基が粉体表面で反応することによって、粉体の表面と結合を形成する。また、該粉体を化粧料に配合した場合に、他の原料を劣化させてしまうこともない。しかし、該化合物は、従来からの製造方法によれば、触媒や副生成物等の不純物が残留するため、これらに起因する着色や臭気が発生する。化粧品用途での使用を可能とするには、これら不純物を除去し、着色や臭気を完全になくす必要がある。このため、実際の製造においては、該化合物を合成後、煩雑な精製・分離の工程が課されるが、完全なる無着色・無臭化は、極めて困難である。そこで、無着色・無臭で、かつ簡単な工程で容易に製造することができる高純度なアルコキシ変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法が必要となる。
【0009】
他にもいくつか、アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの製造方法に関する報告がある。例えば、特開2000−26609号公報(特許文献4)では、シラノール基末端ジメチルポリシロキサンにイソシアナト基含有シランを反応させて、イソシアナト基末端オルガノポリシロキサンを合成し、このイソシアナト基末端オルガノポリシロキサンにアルコールを反応させて両末端アルコキシ基変性オルガノポリシロキサンを製造する方法が開示されているが、目的物を得るための反応工程を2段階必要とする複雑な方法である。また、この反応ではカルバミン酸アルキルのような副生成物が発生し、反応生成物から減圧分離するためには厳しい減圧分離条件が必要である。
【0010】
また、特公平7−98864号公報(特許文献5)では、酸性アミン塩を触媒とし、シラノール基末端オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの反応により、目的物を得ている。しかし、酸性アミン塩は、沸点が高いため、反応生成物から減圧分離するためには厳しい減圧分離条件が必要となる。
【0011】
特開2003−246860号公報(特許文献6)には、酸性触媒存在下で、シラノール基末端オルガノポリシロキサンとオルガノトリアルコキシシランから末端アルコキシ変性シロキサンを製造する方法が開示されている。しかし、酸性触媒は沸点が高いため、その分離には困難が予想される。
【0012】
特開2010−168431号公報(特許文献7)では、アンモニアあるいは沸点20℃以下のアミンを触媒とし、シラノール基末端オルガノポリシロキサンとオルガノトリアルコキシシランから末端アルコキシ変性シロキサンを製造する方法が開示されている。しかし、この方法は、室温で気体状のアミンを触媒としているため、取扱いが煩雑となる。気体状のアミンは、ガスのままで使用するか、アルコール等の溶剤に溶かして使用する。また、沸点20℃以下のアミンは、室温での反応においても、系外へ揮発して抜けていってしまう。これを防ぐためには、密閉型の反応装置が必要となる。更に、反応生成物中には、厳しい精製工程を経た後においても、僅かな不純物が残留し、これが原因で着色や臭気が発生するという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−95655号公報
【特許文献2】特開2003−95839号公報
【特許文献3】特開平7−196946号公報
【特許文献4】特開2000−26609号公報
【特許文献5】特公平7−98864号公報
【特許文献6】特開2003−246860号公報
【特許文献7】特開2010−168431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、無着色・無臭で、かつ簡単な工程で容易に製造することができる高純度末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、沸点30〜80℃の一級アミンを触媒とし、シラノール基末端オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとを反応させることにより、オルガノポリシロキサンの末端を効率よくアルコキシシリル基で封鎖することができ、更に得られた生成物を減圧加熱することで、アミン触媒、未反応成分、副生成物等の不純物を含有しない極めて高純度な末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンが得られ、着色や臭気の問題もなく、化粧料用途の粉体表面処理等に好適に使用できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
即ち、本発明は、
(A)下記一般式(1)で表される末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、
【化3】

(式中、R1は同一でも異なってもよく、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、Xはヒドロキシ基又はR1であり、mは3以上の整数である。)
(B)(A)成分のヒドロキシ基1モルに対して等モルを超える量の下記一般式(2)で表されるアルコキシシランとを、
【化4】

(式中、R2は独立に炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、R3は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
(C)沸点が30〜80℃である一級アミンの存在下で縮合反応を行い、
次に、得られた生成物を減圧加熱して、(B)成分の未反応分、(C)成分、及び副生成するアルコール成分を除去することを特徴とする下記一般式(3)で表される末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
【化5】

(式中、ZはR1又はY−O−から選択される有機基であり、Yは−SiR34-a(OR2a-1で表される有機基である。R1、R2、R3、a、mは上記の通りである。)
【0017】
この場合、前記(C)成分の一級アミンが、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミンより選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることが好ましい。また、一般式(1)のXが炭素原子数1〜6のアルキル基であり、一般式(3)のZが炭素原子数1〜6のアルキル基である分子鎖の片末端にのみアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0018】
本発明は、更に、上記製造方法によって得られ、下記(i)〜(iii)の特徴を有する上記一般式(3)で表される末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを提供する。
(i)ハーゼン色数(APHA)≦30の無色透明液体で、かつ臭気官能試験で臭気が感知されないこと。
(ii)下記揮発性不純物の含有量が、下記に示す通りであること。
・触媒として添加した請求項1又は2記載のアミン≦10ppm
・未反応物の一般式(2)で表されるアルコキシシラン≦100ppm
・副生成物のアルコール≦100ppm
(iii)末端シラノール基のアルコキシシリル化率≧90%であること。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法により、触媒、その他不純物の含有量が極めて少ない高純度末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを、簡単な工程で容易に製造することができる。このため、得られた末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンは、不純物に起因する臭気や着色がなく、化粧料用途の粉体表面処理等に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0021】
[(A)成分]
(A)成分は、下記一般式(1)で表される末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンである。
【化6】

(式中、R1は同一でも異なってもよく、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、Xはヒドロキシ基又はR1であり、mは3以上の整数である。)
【0022】
両末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを得る場合は、Xがヒドロキシ基のものを用い、片末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを得る場合はXがR1のものを用いる。
【0023】
上記R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が例示でき、またこれら一価炭化水素基の水素原子の一部が置換されたものとしては、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロプロピル基等、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)で置換された一価炭化水素基等を例示することができる。R1は、好ましくはメチル基である。
上記mは3以上、好ましくは3〜500、特に好ましくは3〜50の整数である。
【0024】
なお、(A)成分としては、25℃における粘度が、好ましくは1〜100,000mPa・s、特に2〜10,000mPa・sのものが好ましい。粘度が高すぎると反応効率が低下したり、反応後の不純物除去効率が低下するなどの不都合が生じることがある。なお、粘度はキャノンフェンスケ粘度計を用いて測定できる。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(2)で表されるアルコキシシランである。
【化7】

(式中、R2は独立に炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、R3は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
【0026】
(B)成分は、(A)成分の末端シラノール基と反応し、目的とする末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを製造するためのアルコキシシリル化剤である。(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記R2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2は、好ましくはメチル基、エチル基である。また、R3としては、上述したR1の置換基を有してもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基と同様のものが例示される。R3は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基である。
aは2〜4の整数であり、3、4が好ましく、特に4が好ましい。
【0028】
上記アルコキシシランとして、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
[(C)成分]
(C)成分は、沸点が30〜80℃の一級アミンであり、下記アルコキシシリル化反応の触媒として用いられる成分である。(C)成分は、室温下において、液体状であるため、気体状のアミンと比較して取扱いが容易である。また、沸点が30℃以上であるため、室温下の反応においては、揮発して系外へ取り除かれてしまうこともない。なお、沸点が80℃以下であるため、反応終了後、減圧加熱により完全に除去されうる。また、該アミン触媒を用いた場合、アルコキシシリル化反応は効率良く進行し、(A)成分の末端シラノール基の90モル%以上が、アルコキシシリル基で封鎖される。
【0030】
沸点が30〜80℃のアミンとしては、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、アリルアミン等が挙げられる。好ましくは、分岐型アルキル鎖をもつイソプロピルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミンであり、特に好ましくは、tert−ブチルアミンである。なお、これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
[アルコキシシリル化反応]
本発明の製造方法は、まず、(A)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、(A)成分のヒドロキシ基1モルに対して等モルを超える量の(B)アルコキシシランとを、(C)アミン触媒の存在下で反応させ、末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを含む生成物を得る工程を有する。
【0032】
(B)成分の仕込み量は、(A)成分中のシラノール基1molに対し、等モルを超える量であればよいが、(B)成分の量が、好ましくは1.5〜50モル、より好ましくは1.8〜30モル、特に好ましくは、2〜10molの範囲となる量である。(B)成分の量が(A)成分中のシラノール基1モルに対して等モル以下であると未反応の(A)成分が残存することがある。該(B)成分の量が多すぎると反応終了後において、(B)成分の未反応分が多量に残留するため、次の精製工程に大きな負荷がかかることがある。
【0033】
[末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの精製]
本発明の製造方法は、上記アルコキシシリル化の後に、得られた生成物を減圧加熱して、(B)成分の未反応分、(C)成分、及び副生成するアルコール成分を除去し、高純度な末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを得るための精製工程を有する。
【0034】
減圧加熱時の圧力としては、例えば、500〜10,000Pa、好ましくは500〜5,000Paが挙げられる。また、減圧加熱時の温度としては、例えば、100〜150℃、好ましくは100〜120℃が挙げられる。なお、減圧加熱時に、N2ガスバブリングを併用すると、精製効率が向上する。
【0035】
[末端アルコキシ変性シロキサン]
本発明の製造方法により、最終目的物として、下記一般式(3)で表される末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンを得ることができる。
【化8】

(式中、ZはR1又はY−O−から選択される有機基であり、Yは−SiR34-a(OR2a-1で表される有機基である。R1、R2、R3、a、mは上記の通りである。)
【0036】
この場合、式(1)のオルガノポリシロキサンとして、Xが炭素原子数1〜6のアルキル基を用いることにより、式(3)のZが炭素原子数1〜6のアルキル基である分子鎖の片末端にのみアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンが得られる。
【0037】
本発明の末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンは、極めて高純度で、含有する不純物の濃度は、下記に示す通り、極めて低いレベルである。
・アミン成分≦10ppm
・未反応物の一般式(2)で表されるアルコキシシラン≦100ppm
・副生成物のアルコール≦100ppm
【0038】
このため、下記に示す通り、不純物に起因する臭気や着色がなく、化粧料用途の粉体表面処理等に好適に使用できる。
・ハーゼン色数(APHA)≦30の無色透明液体
なお、ハーゼン色数はJIS K0071−1に準じて測定する。
・臭気官能試験で臭気が感じられない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記に制限されるものではない。
【0040】
[実施例1]
撹拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、片末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン100.0g[式(1)において、X=CH3、R1=CH3、m=27、分子量=2,088]、テトラメトキシシラン43g及びt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gを仕込み、200rpmの回転速度で、30℃にて5時間、混合撹拌した。その後、1.3kPaの減圧下、140℃にて2時間加熱を行い、揮発分を除去した。最後に、系内を室温まで冷却し、圧力を大気圧に戻して、105.0gの液体を得た。
【0041】
このようにして得られた液体について、外観を目視で観察し、また臭気を官能試験により評価した。また、液体中に残留する不純物(未反応のテトラメトキシシラン、副生成するメタノール、残留t−ブチルアミン)について、定量分析を行った。まず、t−ブチルアミンの残留量に関しては、元素分析で窒素原子の含有量を測定することにより分析した。次に、テトラメトキシシラン及びメタノールに関しては、サンプル0.1gを20mLのバイアルビンに入れて密閉し、100℃で1時間加熱して、揮発成分をガスクロマトグラフィー分析装置へ圧送し、各成分の定量を行った。
【0042】
表1に、外観、臭気、不純物含有量測定結果を示す。得られた液体は、無色透明かつ無臭であった。また、アミンの残留量は検出下限(5ppm)以下であり、t−ブチルアミンの残留は確認されなかった。また、ガスクロマトグラフィー分析では、未反応のテトラメトキシシランは検出下限(5ppm)以下であり、メタノールは56ppmと極めて低いレベルであった。
【0043】
次に、得られた液体の29Si−NMR測定を行い、構造解析を行った。
表2に、29Si−NMR測定結果を示す。反応前に存在していたジメチルポリシロキサン末端のシラノール基由来ピーク(−10ppm付近)が消滅し、これに替わって、トリメトキシシリル基の生成を示唆するピーク(−85ppm付近)が観測された。ジメチルポリシロキサンの末端シラノール基は、テトラメトキシシランと反応し、トリメトキシシリル基でほぼ完全に封鎖されたことが確認できた。
【0044】
次に、末端シラノール基のメトキシシリル化率について測定を行った。20mLのバイアルビンに、上記で得られた液体1.0gと1mol/LのKOHアミルアルコール溶液を5g加えて密閉し、80℃で1時間加熱して、メトキシ基の加水分解を行った。次に、ガスクロマトグラフィー分析装置を用いて、加水分解によって発生したメタノールの定量を行なった。その結果、メタノールの発生量は、12.8×10-4molであった。この値から、処理前のサンプル中にもともと存在していたトリメトキシシリル基の量を算出すると、4.27×10-4molとなる。サンプル1g中に、片末端がトリメトキシシリル化されたジメチルポリシロキサン(分子量=2,208)が、4.27×10-4mol存在する。一方、片末端に未反応のシラノール基を有するジメチルポリシロキサンは、2.74×10-5mol([1−2208×(4.27×10-4)]/2088=2.74×10-5)存在する。ここで、下記計算式に従い、本反応におけるジメチルポリシロキサン末端シラノール基のトリメトキシシリル化率を算出した。表3に評価結果を示す。
【0045】
【数1】

【0046】
トリメトキシシリル化率は94%であり、高反応率で末端シラノール基のトリメトキシシリル化が進行したことが示された。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、触媒として添加するアミン成分をt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gからイソプロピルアミン(一級アミン;33.0℃)0.20gへ変更したこと以外は、同様の操作を行い、104.7gの液体を得た。
表1〜3に評価結果を示す。
実施例1と同様、無色透明、かつ無臭の液体が得られた。また、アミン及びテトラメトキシシランの残留量は検出下限以下で、またメタノールに関しても実施例1と同様、極めて低いレベルであった。なお、トリメトキシシリル化率は95%であり、高反応率で末端シラノール基のトリメトキシシリル化が進行したことが示された。
【0048】
[実施例3]
実施例1において、片末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン100.0gを両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン100.0g[X=OH、R1=CH3、m=29、分子量=2,238]へ変更し、テトラメトキシシラン81.5gとt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gを仕込み、それ以外は、同様の操作を行い、109.2gの液体を得た。
表1〜3に評価結果を示す。
実施例1と同様、無色透明、かつ無臭の液体が得られた。また、アミン及びテトラメトキシシランの残留量は検出下限以下で、またメタノールに関しても実施例1と同様、極めて低いレベルであった。なお、トリメトキシシリル化率は94%であり、高反応率で、両末端シラノール基のトリメトキシシリル化が進行したことが示された。
【0049】
[実施例4]テトラエトキシシラン
撹拌機、温度計を備えた1リットルの密閉容器に、片末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン100.0g[式(1)において、X=OH、R1=CH3、m=27、分子量=2,088]、テトラエトキシシラン59.0g及びt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gを仕込み、200rpmの回転速度で、100℃にて5時間、混合撹拌した。その後、1.3kPaの減圧下、140℃にて2時間加熱を行い、揮発分を除去した。最後に、系内を室温まで冷却し、圧力を大気圧に戻して、106.7gの液体を得た。
表1〜3に評価結果を示す。
実施例1と同様、無色透明、かつ無臭の液体が得られた。また、アミン及びテトラエトキシシランの残留量は検出下限(5ppm)以下であり、またメタノールに関しても実施例1と同様、極めて低いレベルであった。なお、トリエトキシシリル化率は93%であり、高反応率で、末端シラノール基のトリエトキシシリル化が進行したことが示された。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、触媒として添加するアミン成分をt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gからジメチルアミン(二級アミン;沸点7.4℃)0.20gへ変更したこと以外は、同様の操作を行い、104.9gの液体を得た。
表1〜3に評価結果を示す。
得られた液体の外観は、着色と濁りがあり、アミン臭があった。元素分析の結果、アミン成分の残留が確認された。一方、テトラメトキシシランの残留量は検出下限以下で、またメタノールに関しても、極めて低いレベルであった。なお、トリメトキシシリル化率は、およそ98%であった。
【0051】
[比較例2]
実施例1において、触媒として添加するアミン成分をt−ブチルアミン(一級アミン;沸点43.6℃)0.50gからトリエチルアミン(三級アミン;沸点89.6℃)0.20gへ変更したこと以外は、同様の操作を行い、100.7gの液体を得た。
表1〜3に評価結果を示す。
実施例1と同様、無色透明、かつ無臭の液体が得られた。また、アミン及びテトラエトキシシランの残留量は検出下限(5ppm)以下であり、メタノールに関しても、極めて低いレベルであった。一方、トリメトキシシリル化率は、およそ35%であり、末端シラノール基のトリメトキシシリル化が十分に進行していなかった。
【0052】
【表1】


(注1)実施例1〜3、比較例1〜2:テトラメトキシシラン
実施例4:テトラエトキシシラン
【0053】
【表2】


(注1)実施例1〜3、比較例1〜2:テトラメトキシシラン
実施例4:テトラエトキシシラン
(注2)実施例1〜3、比較例1〜2:トリメトキシシリル基
実施例4:トリエトキシシリル基
【0054】
【表3】


(注3)実施例1〜3、比較例1〜2:トリメトキシシリル化率
実施例4:トリエトキシシリル化率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、
【化1】

(式中、R1は同一でも異なってもよく、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、Xはヒドロキシ基又はR1であり、mは3以上の整数である。)
(B)(A)成分のヒドロキシ基1モルに対して等モルを超える量の下記一般式(2)で表されるアルコキシシランとを、
【化2】

(式中、R2は独立に炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、R3は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、aは2〜4の整数である。)
(C)沸点が30〜80℃である一級アミンの存在下で縮合反応を行い、
次に、得られた生成物を減圧加熱して、(B)成分の未反応分、(C)成分、及び副生成するアルコール成分を除去することを特徴とする下記一般式(3)で表される末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化3】

(式中、ZはR1又はY−O−から選択される有機基であり、Yは−SiR34-a(OR2a-1で表される有機基である。R1、R2、R3、a、mは上記の通りである。)
【請求項2】
前記(C)成分の一級アミンが、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミンより選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
一般式(1)のXが炭素原子数1〜6のアルキル基であり、一般式(3)のZが炭素原子数1〜6のアルキル基である分子鎖の片末端にのみアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを得る請求項1又は2記載の末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法によって得られ、下記(i)〜(iii)の特徴を有する下記一般式(3)で表される末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン。
(i)ハーゼン色数(APHA)≦30の無色透明液体で、かつ臭気官能試験で臭気が感知されないこと。
(ii)下記揮発性不純物の含有量が、下記に示す通りであること。
・触媒として添加した請求項1又は2記載のアミン≦10ppm
・未反応物の一般式(2)で表されるアルコキシシラン≦100ppm
・副生成物のアルコール≦100ppm
(iii)末端シラノール基のアルコキシシリル化率≧90%であること。
【化4】

(式中、ZはR1又はY−O−から選択される有機基であり、Yは−SiR34-a(OR2a-1で表される有機基である。R1は同一でも異なってもよく、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、R2は独立に炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、R3は置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、aは2〜4の整数であり、mは3以上の整数である。)

【公開番号】特開2012−233110(P2012−233110A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103399(P2011−103399)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】