説明

材料の動弾性率を超音波的に求めるデバイスおよび方法

本発明は、音、好ましくは、材料を貫通し、連続して測定され分析される超音波を使用して、セメントまたはジプサムなどのような無機バインダー含む材料などの材料あるいはポリマーあるいはセラミック、好ましくは、モルタルまたはコンクリート、特に、ショットクリートの動弾性率を求めることに関する。特に、本発明は、装置を使用して材料の動弾性率を決定する装置、測定デバイス、および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を貫通し、連続して測定され分析される音波、好ましくは、超音波を使用して、ポリマーあるいはセラミックあるいはセメントまたはジプサムなどのような無機バインダーを含む材料などの材料、特に、モルタル、コンクリート、特に、ショットクリートを含む材料の動弾性率を求めることに関する。特に、本発明は、装置を使用して材料の動弾性率を決定する装置、測定デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機バインダーおよびポリマーを含む材料の材料特性を測定する古典的なツールは、たとえば、Instron(登録商標)からの、たとえば、Vicat試験、透過度計、粘弾性計、針貫入、または圧縮試験機器などである。しかし、これらのツールは、選択された材料特性の完全な時間発展を監視するのに使用することができない。
【0003】
無機バインダーの材料特性を測定する超音波分析法が知られている。US5,412,990は、音響せん断波信号を使用してセメントスラリの凝結時間を求める方法および装置を開示する。US6,655,213は、超音波を使用して材料の凝固および/または硬化を調査する方法を開示する。
【0004】
材料の粘弾性的および機械的特性の特徴化のために使用される既存の超音波デバイスは、狭い範囲の高周波にわたって動作する。この手法は、均質な弾性材料について申し分ないだけである。網状体と異なる超音波応答を有する気泡、多孔性、割れ目および/または異物を有する材料では、材料の応答はより複雑である。特に、特別な較正無しでは、真の基本材料特性を得ることができないことが多い。
【0005】
知られているデバイスの主要な欠点は、デバイスが、狭い範囲の周波数にわたって使用することができるだけであり、一方、材料の衝撃弾性特性は、励起可能な周波数に強く依存する可能性があることである。さらに、当技術分野で知られているデバイスは、重くかつ扱いにくく、エネルギー消費が高く、したがって、現場での容易な測定には適さない。さらに、既存のデバイスは、材料特性の直接表示を提供せず、時間がかかる、測定後のデータ処理に依存する。さらに、既存のデバイスは、高い信号対雑音比を備えていない。
【特許文献1】US5,412,990
【特許文献2】US6,655,213
【特許文献3】US4,754,645
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、材料の動弾性率の直接の時間的発展に追従することができる非破壊技法ならびに程度の高い可搬性とユーザの馴染み易さを提供する装置についての必要性が増大している。
【0007】
したがって、本発明の一目的は、業界において装置および試験方法の確実な使用を提供すること、および、無機バインダーまたはポリマーなどの材料の動弾性率の、容易で、連続し、非破壊で、非侵入的な監視を可能にすること、特に、セメントなどの無機バインダー、好ましくは、コンクリート、特に、ショットクリートなどを含む材料の粘弾性的および機械的発展を、無機バインダーの初期から凝結を超えるまで定量化すること、特に、測定から材料特性の表示までの短い応答時間を提供することであり、急速に硬化する材料、たとえば、ショットクリート適用の分析を可能する。そのため、既存のデバイスと比較して改善された信号対雑音比を有し、超低周波音から超音波までの周波数範囲を含む、広い範囲の周波数にわたって行われる音伝播方法によって材料の特徴化を可能にする装置およびデバイスを提供することが本発明の目的である。これは、既存の超音波デバイスと対照的であり、また、全ての粘弾性材料ならびに空気泡、砕石、および多孔性などの異物を含む材料にとって重要である。
【0008】
本発明のさらなる目的は、求めた材料特性をリアルタイムに表示するために、測定信号を直接にかつ完璧に処理する方法およびデバイスである。
【0009】
さらに、電力消費が小さい、現場で測定するための、小型で可搬型の装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、これは、独立請求項の特徴によって達成される。本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0011】
本発明の装置、デバイス、および方法は、無機バインダーについて、ならびに、ポリマー、特に、反応性ポリマーまたはオリゴマーについて、ならびに、それらの硬化生成物について動弾性率を求めるために使用することができる。特に、方法は、硬化をリアルタイムに監視するのに特に適する。本発明の装置、デバイス、および方法は、原料、中間生成物、および最終製品の品質を制御するためのツールとして使用されることができる。本発明の装置、デバイス、および方法は、品質制御ツールまたはプロセス制御ツールとして使用されてもよい。
【0012】
本発明は、音波によって、ある材料のサンプルの動弾性率を決定する装置を提供し、装置は、(a)材料のサンプルを少なくとも1つの変換器に、好ましくはケーブル接続を介して、音響的に結合する手段を有する測定デバイスを備え、測定デバイスは、(b)カードに結合し、カードは、(i)変換器から受信される応答信号を受信し処理する手段と、(ii)広い周波数範囲にわたって高電圧信号を生成し、低電圧周波数調整可能電子発振器、信号発生器、電子スイッチ、高電圧広帯域増幅器、および、任意選択で、電子メモリを含む手段とを備え、高電圧広帯域増幅器は、1次巻線と2次巻線を有する少なくとも1つのコアレス変圧器を備えるか、または、コアレス変圧器に接続され、前記2次巻線は、少なくとも1つの変換器に接続される。好ましい実施形態では、高電圧広帯域増幅器は、少なくとも1つの変圧器を備える。別の実施形態では、少なくとも1つの変圧器は、高電圧広帯域増幅器と別個に、または、高電圧広帯域増幅器の外側に、好ましくはさらに、カードと別個に、または、カードの外側にあり、高電圧広帯域増幅器は、少なくとも1つの変圧器の1次巻線に接続される。この実施形態では、2つ以上のカードが、少なくとも1つ、好ましくは、2つ以上の変圧器に接続されることができる。好ましい実施形態では、少なくとも1つのコアレス変圧器は、平坦巻線を好ましくは備える平面変圧器である。そのため、本発明の装置は、好ましくは、平面コアレス変圧器を備える。
【0013】
好ましくは、高電圧広帯域増幅器は、2つ以上のコアレス電磁変圧器、好ましくは、3つ以上のコアレス変圧器、好ましくは、4つ以上、6つ以上、11以上の変圧器を備え、少なくとも2つの変圧器は、直列または並列に、好ましくは、並列に接続される。好ましくは、少なくとも2つのコアレス変圧器の1次巻線は、互いに並列に接続され、少なくとも2つのコアレス変圧器の2次巻線は、直列に接続される。非常に好ましい実施形態では、高電圧広帯域増幅器は、3つまたは5つのコアレス変圧器を備え、少なくとも2つのコアレス変圧器の1次巻線は、互いに並列に接続され、少なくとも2つのコアレス変圧器の2次巻線は、直列に接続される。高電圧広帯域増幅器は、さらに、少なくとも1つの変圧器の1次巻線において、ハイパワー電流、好ましくは、1〜50アンペア(A)、より好ましくは、10〜40アンペアを提供する、または、発生するための、パワードライバ、好ましくは、パワートランジスタまたはハイパワー半導体を備える。
【0014】
少なくとも2つのコアレス変圧器の1次巻線が、互いに並列に接続され、少なくとも2つのコアレス変圧器の2次巻線は、直列に接続される、2つ以上のコアレス変圧器を使用するときの大きな利点は、こうした変圧器を用いると、1つだけのコアレス変圧器を用いるよりも高い電圧を発生することができることである。1つだけのコアレス変圧器を用いて同じ大きさの電圧を発生するためには、多くの2次巻線が必要になるであろう。これは、2つ以上の変圧器を使用するときよりも変圧器を大きくするであろう。本発明の装置の場合、できる限り小さくかつ軽量である変圧器が望まれる。したがって、少なくとも2つのコアレス変圧器が好ましい。本発明のこうしたコアレス変圧器によって、広い周波数範囲にわたって高電圧信号を発生することが可能である。従来技術の変圧器を用いると、高電圧でかつ大電流で、広い周波数範囲にわたって多くの異なる離散的な周波数を発生することができない。
【0015】
変換器から受信される応答信号を受信し処理する手段は、好ましくは、テンション除算器またはテンション制限器などの信号調節手段を備える。信号調節手段は、好ましくは、デジタル応答信号をコンピュータメモリに転送するアナログ-デジタル変換モジュールに接続される。
【0016】
それぞれ、テンション制限器およびテンション除算器若しくは電圧制限器および電圧除算器の使用は、低い信号対雑音比を有する正確なエコー信号を求めることを可能にする。テンション制限器は、テンションを、ある所定のレベル、たとえば、±10Vに制限する。このレベルは、それぞれ、エコー信号の電圧振幅、透過信号の電圧振幅が、完全に、この制限器が及ぶ電圧範囲内にあるように選択される。テンション除算器は、所定の倍率、たとえば、倍率10による除算によって電気信号の振幅を減少させる。除算された信号の電圧範囲が、制限される信号の電圧レベルの範囲内になるか、または、好ましくは、制限される信号の電圧レベルと等しくなるように、倍率が選択される。
【0017】
カードは、ハイテンションのパルスを発生する。ハイテンションは、たとえば、100Vより大きい、200Vより大きい、またはさらに、1000Vより大きい高電圧を意味し、約1msの最大反復レートを有する。パルス周波数は、100Hz〜1MHzまたは1kHz〜1MHz、より好ましくは、100Hz〜10MHzまたは1kHz〜10MHz、より好ましくは、10Hz〜10MHz、より好ましくは、1Hz〜10MHz、最も好ましくは、1Hz〜100MHz、さらに、1Hz〜200MHzに調整されることができる。こうして、本発明のカードは、人にとっての可聴音波の周波数より低い、20Hzより低い超低周波音の周波数、可聴音波、すなわち、20Hz〜20kHzの周波数、および、人にとっての可聴音波を超える、20kHzを超える超音波の周波数を含む、広い範囲の周波数にわたって使用されることができる。そのため、増幅器に関して「広帯域」という用語は、広い周波数範囲にわたって、すなわち、1kHz〜1MHzの範囲にわたって、あるいはさらに、100Hz〜10MHzまたは10Hz〜100MHzまたはさらに1Hz〜200MHzの範囲にわたる広い周波数範囲にわたって、増幅器が働き、また、使用されることができることを、本明細書全体を通して意味する。
【0018】
発振器は、周波数フィルタを必要とすることなく、いくつかの離散的でかつ異なる周波数を、好ましくは、25より多い、より好ましくは、100より多い、最も好ましくは、1000より多い、特に、210より多い、または、最大232の離散的周波数を作ることができる。当技術分野で知られているカードは、最大10に過ぎない異なる周波数で働き、周波数フィルタを必要とする。さらに、本発明のカードは可搬型である。
【0019】
本発明の装置は、2つ以上のカードを備えることができる。
【0020】
本発明の装置は、さらに、動弾性率、特に、無機バインダーまたはポリマーなどの被分析材料の、圧縮弾性率Κ、せん断弾性率G、ヤング率E、ポアソン比νを音波によって測定する測定デバイスを備える。本明細書で使用されるように、「音(sound)」という用語は、人間の聴力の周波数より低い、20Hzより低い周波数の範囲を有する音である超低周波音、人の聴力の周波数の範囲内にある20Hz〜20kHzの周波数の範囲を有する音である可聴音、および、人の聴力の周波数を超える20kHzを超える周波数の範囲を有する音である超音波を指すことを意味する。さらに、本明細書で使用されるように、「音響(acoustic)」という用語は、先に定義した音に関連する。
【0021】
本発明の測定デバイスは、少なくとも1つの変換器と、材料サンプルを少なくとも1つの変換器に音響的に結合する手段とを備える。好ましくは、材料サンプルを少なくとも1つの変換器に音響的に結合する手段は、少なくとも1つの導波路を備える。少なくとも1つの変換器は、好ましくは、接触材料、好ましくは、たとえば、シロップなどのような粘弾性材料によって、導波路に接触する。非常に好ましい実施形態では、導波路は、コーティング、好ましくは、ポリマーコーティングによって少なくとも部分的に覆われる。このコーティングは、材料を分析するときに、コーティングが、導波路と被分析材料との間になるように、被分析材料に直接接触するようされる。
【0022】
コーティングは、測定デバイスの導波路から材料が外れることによる信号の時折の喪失を防止する。コーティングは、一方で、材料サンプルと導波路との間の接触を強化し、また、接触が、全測定期間にわたって確実に維持されるように、他方で、測定が終了した後の、導波路からの材料サンプルの除去を容易にするように選択される。測定後、コーティングは、導波路から除去される必要はない。コーティングは、数回使用することができる。コーティングは、好ましくは、ポリマーコーティングである。一実施形態では、ポリマーコーティングは、モノマーまたはオリゴマーの付加反応から得られる。こうした好ましいポリマーコーティングは、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂ベースのコーティングである。好ましいポリウレタンベースのポリマーコーティングは、ポリイソシアネート、特に、プレポリマーおよび水またはポリアミンまたはポリオールを含有するポリイソシアネート基から得られる。エポキシ樹脂ベースの好ましいポリマーコーティングは、ビスフェノールAの、かつ/または、ビスフェノールFの、かつ/または、ビスフェノールA/Fの、好ましくは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む樹脂成分、および、ポリアミンおよび/またはポリメルカプタンを含む硬化剤成分の反応から得られる。これらのポリマーコーティングは、好ましくは、被分析材料が無機バインダーであるときに使用される。特に好ましい実施形態では、被分析材料は、ショットクリートであり、コーティングは、エポキシ樹脂ベースのポリマーコーティングである。
【0023】
別の実施形態では、コーティングは、反応性材料に対する剥離特性を示すポリマーコーティングである。こうしたコーティングは、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)としても知られる)などのフッ素化炭化水素、シリコーン、あるいは、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのポリオレフィン、あるいは、シラン、チタン酸塩、またはジルコン酸塩などのナノ粒子または自己組織化単分子層分子、たとえば、「はす効果(lotus flower effect)」をもたらすものを含む、または、それらからなるがそれに制限されない。これらのポリマーコーティングは、好ましくは、被分析材料がポリマーであるときに使用される。
【0024】
好ましくは、ポリマーコーティングは、コーティングと被分析材料ならびに導波路との間の化学結合または化学的親和性をもたらす反応基を有する。したがって、被分析材料と導波路との間の接触を確実にするために、圧力を必要としない。このことは、たとえば、US4,754,645に記載されるように、測定を可能にするために、被分析材料が導波路に押し付けられる必要があった最新技術の解決策と比べて有利である。
【0025】
被分析材料が、既に固くなり、かなりの表面粗さを有するとき、コーティングが、さらに、導波路のポリマーコーティングと被分析材料との間で使用される粘弾性材料を含む場合、有利である。
【0026】
ポリマーコーティングは、その場で(in situ)調製されてもよい。すなわち、モノマーが測定中に反応するように、モノマーまたはオリゴマーを含む混合物が、導波路と被分析材料との間に配置される。モノマーまたはオリゴマーは、好ましくは、コーティングを形成する反応が速くなるように選択される。被分析材料の硬化の動力学(kinetics)を、できる限り少なく変更するために、この反応中に、わずかのエネルギーだけが消散することが好ましい。ポリマーコーティングのその場での形成は、好ましくは、既に固くなり、かなりの表面粗さを有する材料を測定する場合に使用される。これは、導波路と被分析材料との間の良好な接触を保証するのに役立つ。
【0027】
コーティングの厚さは、好ましくは、200μm未満、より好ましくは、100μm未満、50μm未満、または、さらに10μm未満である。測定中、付加的な反射または信号歪を導入しないように、コーティングの厚さは、薄く、好ましくは、音の波長に対して約10分の1の薄さでなければならない。たとえば、1MHzの周波数と1482m/sの音速の場合、波長は、1.48mmであり、そのため、コーティングの厚さは、1.48mmより薄い、好ましくは、0.148mmより薄くなければならない。
【0028】
ポリ(メチルアクリレート(メタクリレート))またはアルミニウムを含む、または、好ましくは、それからなる導波路は、1層または2つ以上の層を含む。2つ以上の層の場合、異なる層は、結合材料、好ましくは、接着剤によって結合される。導波路が2つ以上の層を含む場合、層は、同じ材料か、異なる材料のいずれかである。こうして、一実施形態では、導波路は、第1層と第2層を含み、第1層は、第2層と異なる材料である。少なくとも1つの導波路の厚さは、好ましくは、それぞれ、エコーモードにおける放出パルス(I)と反射パルス(II)、透過モードにおける放出パルス(I)および透過パルス(III')が、重ならないことを確実にするのに十分に厚くなるように選択される。
【0029】
本発明の測定デバイスは、1つまたは2つ以上の変換器を備える。好ましい実施形態では、測定デバイスは、少なくとも1つのせん断変換器または少なくとも1つの圧縮変換器を備える。特に好ましい実施形態では、測定デバイスは、せん断変換器および圧縮変換器を備える。せん断変換器を使用するとき、せん断弾性率を分析することができ、一方、圧縮変換器を使用して、圧縮弾性率を分析することができる。透過モードでは、同じタイプの2つの変換器、たとえば、2つのせん断変換器または2つの圧縮変換器は、被分析材料が中間にある状態で、互いに対向して配列される。2つ以上の異なる変換器の場合、異なる変換器が、並んで配列されてもよい。変換器は、電気パルスを同じ周波数の機械式パルスに変換する圧電素子(component)である。このパルスは、導波路を通って伝播して材料サンプルとの界面に進む。パルスのある部分は、放出用変換器の方へ反射し、他の部分は、材料を透過する。この透過パルスは、透過音響波を元の電気信号に変換する、通常、放出用変換器と同じタイプの別の変換器によって捕捉されてもよい。反射またはエコーモードでは、同じ変換器が、放出器と受信器の両方の役目を果たし、したがって、反射音響波を元の電気信号に変換する。こうして、非常に好ましい実施形態では、測定デバイスは、1つのタイプの少なくとも1つの変換器を備え、前記少なくとも1つの変換器は、放出用変換器と受信用変換器として使用される。
【0030】
別の実施形態では、測定デバイスは、同じタイプの少なくとも2つの変換器を備え、1つの変換器は放出用変換器として使用され、他の変換器は受信用変換器として使用される。
【0031】
より多くの異なる変換器が使用され、材料のより多くの異なる局面が分析される可能性がある。しかし、本発明は、広い周波数範囲にわたって働くための、1つのタイプの2つ以上の変換器を必要としない。1つのタイプの1つの変換器は、広い周波数範囲にわたって働くのに十分である。
【0032】
材料内での音速の伝播は温度に依存する。たとえば、水の中では、音速は、20℃で1482m/s、40℃で1530m/sである。したがって、精度を高めるために、温度が、制御され、かつ/または、測定されなければならない。そのため、さらなる実施形態では、測定デバイスは、被分析材料内の温度を測定することを可能にする温度測定素子、好ましくは、熱電対を備える。
【0033】
本発明の測定デバイスは、被分析材料に直接接触させられる、すなわち、無機バインダーまたはポリマーを含む材料の表面上に設置されるか、または、測定デバイスは、さらに、材料サンプルを受け取り保持する手段、すなわち、被分析材料を支持する手段を備える。材料サンプルを受け取り保持する手段は、たとえば、オープンセルまたは管であってよい。好ましくは、材料サンプルを受け取り保持する手段はリング形状である。材料サンプルを受け取り保持する手段は、管の形をとることもできる。この実施形態では、管内の材料を分析することができる。こうした実施形態は、管内の材料を連続して分析するのに特に有用であり、原料、中間生成物、または最終製品である反応性ポリマーまたはオリゴマーのインプロセス(in-process)品質制御または反応制御のために使用されてもよい。管は、好ましくは、搬送パイプ、反応容器、またはバイパスパイプである。管は、金属、好ましくは、ステンレス鋼を含む、または、それからなる材料、あるいは、ポリマー材料であってよい。一実施形態では、導波路は、前記管の開口内に導入され、それにより、材料が管を出ることを回避するように、管と導波路との間の空隙がシールされる。好ましくは、管の内側にある導波路の表面は平坦である。あるいは、管の内側にある導波路の表面は、管湾曲面の形をとる。別の実施形態では、導波路は、管の外側に設置されることができる。管に接触する導波路の表面は、管湾曲面の形をとることができる。あるいは、導波路は、好ましくは、管と同じ材料であり、また、好ましくは、管材料の層が管に接触する面で、管湾曲面の形をとる、さらなる層を備えることができる。他方、導波路のさらなる層が、導波路の他の部分に接触する場合、さらなる層は、好ましくは、平坦である。さらに別の実施形態では、管の断面は、測定が実施されるところ、また、導波路が、管内に導入されるか、または、管の外に設置されるところで平坦化される。好ましくは、これは、管断面全体が、それぞれ、平坦化されるか、または、プレスされるため実現することができる。一実施形態では、導波路が管の外側にある場合、導波路からの信号が、平坦でない表面によって変位しないように、管は、好ましくは、管の内側と外側に平坦隆起部を有する断面を含む。
【0034】
材料サンプルを受け取り保持する手段は、任意選択で、2つ以上の区画、好ましくは、分離壁によって分離された、好ましくは、2つの区画を備える。2つの区画が使用される場合、1つの区画は被分析材料に接触し、一方、他の区画は空であることが好ましく、材料の測定と平行して、対照としての空の区画の測定が可能になり、したがって、直接比較が可能になる。2つ以上の区画または2つ以上のデバイスの別の利点は、空の区画を備える手段が、測定と測定との間で空にされる必要がないことである。2つ以上の区画を備える測定デバイスは、測定デバイス全体のために1つの変換器、または、区画ごとに2つ以上の変換器、好ましくは、1つの変換器を備えてもよい。別の実施形態では、2つ以上の測定デバイスが、材料の動弾性率を求めるために使用され、少なくとも1つの測定デバイスは、被分析材料を支持する空の手段を備え、すなわち、手段は、被分析材料に接触せず、少なくとも1つの測定デバイスは、被分析材料を有する手段を備え、すなわち、手段は、被分析材料に接触する。好ましくは、被分析材料を支持する手段は、熱伝導性材料で作られる。
【0035】
好ましい実施形態では、材料を支持する手段は、被分析材料についてサーモスタットの役目を果たす、少なくとも1つの温度制御素子、好ましくは、少なくとも1つのペルチエ素子を備える。
【0036】
本発明の測定デバイスは、被分析材料が、注入、型押し、または吹き付けなどの種々の方法で設けられることを可能にするように、また、適切なコーティングのおかげで、導波路との界面における接触が、導波路に関して大幅に向上するように特に設計されてもよい。
【0037】
測定デバイスは、動弾性率、特に、圧縮弾性率Κ、ヤング率E、およびせん断弾性率Gを測定するため、また、無機バインダーまたはポリマーなどの被分析材料の、たとえば、ポアソン比ν、粘度、ガラス遷移温度(Tg)などのような、動弾性率から導出される他の物理パラメータを計算するために使用されることができる。圧縮弾性率Κ、ヤング率E、およびせん断弾性率Gならびにポアソン比νは、媒体内の音響波の伝播の縦速度(Vl)および横速度(Vt)の測定によって計算することができる基本材料特性である。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、ρは媒体の密度である。すなわち、(1)サンプルの長さdを通る波の通過時間tを測定することによる(速度は、
【0040】
【数2】

【0041】
で与えられる)か、または、(2)音の伝播に対する材料の抵抗を特徴付け、また、Z=ρVによって密度と速度に関連する、材料の音響インピーダンスZを測定することによる、音速を求めるための2つの異なる可能性が存在する。被分析材料が軟質材料、または、軟質状態または液体状態から固体状態へ発展する材料である場合、透過時間測定は、適切でなく、超音波検査の測定が好ましく、音響インピーダンスによる処理が使用される。
【0042】
異なるインピーダンスの2つの材料間で、波のある部分は反射し、他の部分は透過する。エコーモードでは、変換器は、波の放出器および同時に波の受信器の役目を果たす。時刻t=0で、変換器は、音波パルス、好ましくは、超音波パルスを放出し、音波パルスは、導波路内を伝播し、導波路/材料サンプル界面に達する、または、導波路がコーティングされている場合、単層導波路の場合には従来の反射の無い状態で材料サンプル/コーティング界面に達する。波のある部分は、材料サンプル/導波路界面で反射する、または、導波路がコーティングされている場合、材料サンプル/コーティング界面で反射し、変換器に戻る(たとえば、図5aの界面IIを参照されたい)。波の他の部分は、材料サンプルを通過し、その後、材料サンプル/空気界面の材料の他の面で反射する(図5の場合、界面IIIで示す)。あるいは、導波路の面でない材料の他の面の界面は、材料サンプルとサンプル容器の蓋との間、または、材料サンプルと別の導波路との間、または、材料サンプルと別の変換器との間の界面であってよい。その界面の正確な性質によらず、これによって、時刻2t1と2(t1+t2)における2つのパルス応答が生じる(たとえば、図5bを参照されたい)。第1界面反射から生じるパルスの大きさ(2t1における第2パルス)は、2つの媒体の音響インピーダンスに関連する。材料サンプル/導波路界面における入射波の振幅Aiは、この界面における、反射波の振幅Arと透過波の振幅Atの和に等しい(界面では消散が無い)。反射係数rおよびパワー反射係数Rは比であり(それぞれ、反射波の振幅Arと入射波の振幅Aiの比、反射波の振幅Arと入射波の振幅Aiの平方比である)、2つの媒体の音響インピーダンスに関連する。
【0043】
【数3】

【0044】
ArおよびAiは、導波路/サンプル界面に到達する振幅および導波路/サンプル界面から反射される振幅であるため、わかっていない。反射信号は、導波路を横切って変換器の方に戻りながら減衰する。しかし、反射パルスは、サンプルが無い状態で、以前に(または、平行して)測定される場合、導波路と空気との間の音響インピーダンスの差が大きいため、全音響エネルギーが反射される。そのため、材料サンプルが無い状態のエコー信号は、導波路/材料サンプル界面に達する信号と同じであるが、導波路を横切って変換器まで戻ることによって減衰する。これは、Ar/Aiと同等な値が、サンプルが有るときと、無いときのパルス振幅の比によって与えられることを意味する。
【0045】
上記関係から最も正確にインピーダンスを求めることは、測定セル内で、サンプルが有るときと、無いときのパルスの平方の積分の比からRを求めることを含む。この測定値は、パルスの高さに基づくrの測定より正確である。材料サンプルの動弾性率は、導波路の音響インピーダンスおよびRの測定を知ることによって決めることができる。
【0046】
透過が測定される場合、受信器の役目を果たす第2変換器が、第1変換器に対向する材料サンプルの面に、たとえば、材料サンプル/空気界面に配置される(たとえば、図5aの界面IIIを参照されたい)。これによって、2つのパルス、時刻t=0における放出パルスと、時刻t1+t2における材料サンプル/空気界面III'から生じる透過パルスがもたらされる。透過モードでは、対応する放出用および受信用変換器が同じであることが好ましい。受信用変換器は、その後、材料サンプル/空気界面に達するパルスを受信し、音響信号を元の電気信号に変換する。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの導波路および少なくとも1つの変換器であって、変換器が導波路に接触する、少なくとも1つの導波路および少なくとも1つの変換器を備える測定デバイスを提供し、前記導波路は、好ましくは、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂をベースとする、コーティング、好ましくは、ポリマーコーティングによって少なくとも部分的に覆われる。本発明の測定デバイスは、先に述べたように、導波路と、変換器と、コーティングを備える。
【0048】
接着剤などの無機バインダーまたはポリマー基材を含む材料、シーラント、またはフロアなどの反応性材料の場合、信号は、時間と共に発展し、したがって、音伝播測定、特に、超音波伝播測定は、材料の動弾性率の連続した非破壊測定を提供する。
【0049】
一実施形態では、本発明の装置は、2つ以上の測定デバイス、好ましくは、対照として被分析材料に接触しない1つの測定デバイス、および、被分析材料を含む、または、被分析材料に接触する1つの測定デバイスを備える。
【0050】
一実施形態では、装置は、好ましくはさらに、コンピュータ手段と、変換器から受信された応答信号を受信し処理するための前記手段を制御するための、かつ/または、高電圧信号を発生する前記手段を制御するためのコンピュータ読取媒体とを備える。
【0051】
さらなる実施形態では、本発明の装置は電源を備える。電力は、電気、電池などであってよい。
【0052】
なおさらなる実施形態では、装置は、さらに、送信または受信される信号を転送するためのm個のゲートを備えるマルチプレクサユニットを備え、mはゲートの数であり、各ゲートは、変換器tyに接続され、yは可変指数である。マルチプレクサユニットは、好ましくは、ケーブル接続によって、測定デバイスの変換器に接続される。
【0053】
好ましくは、装置は可搬型である。本明細書で使用されるように、「可搬型(portable)」という用語は、1人の人間によって運ぶことができる装置の全体のサイズを指すことを意味する。好ましくは、測定デバイスの無い装置、より好ましくは、測定デバイスを含む装置全体は、100dm3より小さい、好ましくは、10dm3より小さい、さらにより好ましくは、1dm3より小さい容積を有し、好ましくは、測定デバイスの無い装置、より好ましくは、測定デバイスを含む装置全体の重量は、100kg未満、より好ましくは、10kg未満、さらにより好ましくは、2kg未満である。最も好ましい実施形態では、測定デバイスの無い装置、より好ましくは、測定デバイスを含む装置全体は、1dm3より小さい容積および2kg未満の重量を有する。したがって、アナログ-デジタルモジュールが、本発明のカード内に一体化される場合、有利である。特に、マルチプレクサユニットが、本発明のカードを備え、好ましくは、カードがアナログ-デジタルモジュールを備える場合が好ましい。さらにより好ましい実施形態では、コンピュータ読取可能媒体は、本発明のマルチプレクサユニットまたはカード内に一体化される。さらなる実施形態では、装置は、さらに、ディスプレイデバイス、好ましくは、タッチスクリーン、または、任意選択で、ディスプレイユニットおよびキーボードまたはキーパッドなどのデータ入力ユニットを備える。別の実施形態では、本発明のカードは、コンピュータ、好ましくは、ラップトップコンピュータに接続される。カードとコンピュータとの間の接続は、ケーブルまたは無線によってもよい。無線接続は、たとえば、赤外または無線波接続によって、送り手と受け手を使用することによって達成される。
【0054】
本発明の装置は、当技術分野で知られている超音波測定デバイスよりも少ない電力しか必要としない。十分な電源は、たとえば、ラップトップコンピュータの電池またはマルチプレクサユニット内部の電池である。これは、本発明の装置を、特に可搬送性の高いものにし、したがって、材料適用の現場での測定にとって有用なものとする。
【0055】
本発明の装置によって分析される材料は、無機バインダー、セラミック、またはポリマーを含む材料である。好ましくは、無機バインダーは、セメントまたはジプサムなどの水圧バインダーである。好ましい実施形態では、材料は、モルタルまたはコンクリート、特に、ショットクリートである。ポリマーは、好ましくは、反応性プレポリマーまたはオリゴマーである。本明細書で使用されるように、反応性プレポリマーまたはオリゴマーによって、これらのプレポリマーまたはオリゴマーが、化学反応、特に、架橋を受けることが可能な官能基を有することが意味される。一実施形態では、ポリマーは、ポリウレタンプレポリマーを含有するイソシアネート基である、または、イソシアネート基を含む。別の実施形態では、ポリマーは、アルコキシシランおよび/またはシラノールカルボキシエステル基を含有するシリコーンであるか、または、シリコーンを含む。さらなる実施形態では、ポリマーは、ビスフェノールAの、かつ/または、ビスフェノールFの、かつ/または、ビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル基を含有するプレポリマーまたはオリゴマーである、または、プレポリマーまたはオリゴマーを含む。さらなる実施形態では、ポリマーは、(メタ)アクリレート基を含有するプレポリマーまたはオリゴマーである、または、プレポリマーまたはオリゴマーを含む。さらなる実施形態では、ポリマーは、たとえば、加硫ゴムなどの2重結合を含有するプレポリマーまたはオリゴマーである、または、プレポリマーまたはオリゴマーを含む。これらの反応性ポリマーは、接着剤、シーラント、コーティング、またはフロアの生産において使用するのに特に適する。
【0056】
本発明のなおさらなる態様では、本発明の装置を用いて、音波によって、特に、モルタルまたはコンクリート、特に、ショットクリートの、あるいは、ポリマーの、あるいは、セラミックの材料サンプルの動弾性率を求める方法が提供される。そのため、被分析材料の動弾性率を求める方法が提供され、方法は、本発明の装置を使用することを含む。方法は、好ましくはさらに、本発明の測定デバイスによって、透過した、または、反射した信号を分析する段階を含む。
【0057】
好ましくは、材料の動弾性率を求める方法は、(A)最低周波数fminおよび最高周波数fmaxならびに周波数の数nを選択する段階と、(B)mがゲートの数である、m個のゲートを備えるマルチプレクサユニットに好ましくは送信される第1信号を生成するデータを本発明のカードに送出する段階と、(C)好ましくは、yが可変指数である、変換器tyに接続されるゲートgyを選択する段階と、(D)xが可変指数である、周波数fxをfmin〜fmaxの範囲から分離する段階と、(E)音、好ましくは、超音波エネルギーを導波路内に伝播させるように、第1信号を本発明の測定デバイス内に送信する段階と、(F)透過する、または、導波路または被分析材料から反射する、音波エネルギー、好ましくは、超音波エネルギーから生じる第2信号を変換器から受信する段階と、(G)対応する周波数fxについて前記第2信号を格納する段階と、(H)前記第2信号を分析する段階であって、それにより、受信された音、好ましくは、超音波エネルギーの振幅、位相、およびエネルギーを求める、分析する段階と、(I)振幅、位相、およびエネルギーの発展、および、任意選択で、温度発展をリアルタイムに評価する段階と、(J)xが、段階(A)で選択された周波数の数nに等しくなるまで、可変指数xを1だけ増やし、段階(B)〜(I)を繰り返す段階と、(K)好ましくは、yが、ゲートの数であるmに等しくなるまで、可変指数yを1だけ増やし、段階(B)〜(J)を繰り返す段階と、(M)被分析材料が無い状態での測定から得られる、第2信号の振幅、位相、およびエネルギーの発展を、前記測定デバイスが被分析材料に接触する測定から得られる、対応する第2信号の振幅、位相、およびエネルギーの発展と比較する段階と、(N)段階(M)で行われる比較から動弾性率を計算する段階とを含む。
【0058】
一実施形態では、段階(B)〜(K)は、被分析材料に接触しない測定デバイスを用いて実施され、その後、2回目の測定で、方法は、さらに、段階(K)と段階(N)との間で実施される、測定デバイスが、被分析材料に接触する段階(B)〜(K)を繰り返す段階(L)を含む。
【0059】
別の実施形態では、段階(B)〜(K)は、被分析材料が有る状態と無い状態の測定デバイスについて平行して実施される。
【0060】
好ましくは、段階は、コンピュータプログラムによって制御される。
【0061】
本発明の装置、デバイス、および方法は、無機バインダーを含む材料について、ならびに、ポリマー、特に、反応性ポリマーまたはオリゴマーについて、ならびに、その硬化生成物について動弾性率を求めるために使用することができる。特に、方法は、硬化をリアルタイムに監視するのに特に適する。本発明の装置、デバイス、および方法は、原料、中間生成物、および最終製品の品質を制御するためのツールとして使用されることができる。本発明の装置、デバイス、および方法は、品質制御ツールまたはプロセス制御ツールとして使用されてもよい。この目的で使用される場合、測定デバイスは、配管(tubing)に取り付けられる、または、材料を支持する管形状手段を備え、その中で、反応性ポリマーまたはオリゴマーが搬送されることが好ましい。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、被分析材料、好ましくは、無機バインダーを含む材料またはポリマーの動弾性率を分析するために、本発明の装置の使用を実現する。好ましくは、無機バインダーは、セメントまたはジプサムなどの水圧バインダーであり、材料は、モルタルまたはコンクリートであり、ショットクリートが特に好ましい。ポリマーは、好ましくは、接着剤、シーラント、またはフロアなどのポリマー基材である。
【0063】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の装置内でオプトエレクトロニクスマルチプレクサユニットの使用を実現する。すなわち、マルチプレクサユニットは、少なくとも1つのオプトエレクトロニクススイッチを備える。
【0064】
本発明は、添付図面に関連して考えられるとき、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるようになるため、本発明および本発明の付随する多くの利点のより完全な理解は、容易に達成されるであろう。
【0065】
本発明の理解にとって絶対必要である要素だけが示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
ここで、図面を参照すると、図1aは、マルチプレクサユニット22、測定デバイス10、およびアナログ-デジタルモジュール8に接続したカード7を示し、カードは、コンピュータ読取可能媒体21に信号を送出するコンピュータブリッジインタフェース1、低電圧周波数調整可能電子発振器2、信号発生器3、電子スイッチ4、高電圧広帯域増幅器5、および、任意選択で、電子メモリ9を備える。さらに、図1aは、カード7から分離した、マルチプレクサユニット22、測定デバイス10、テンション制限器31、テンション除算器32、アナログ-デジタルモジュール8、およびコンピュータ読取可能媒体21を示す。アナログ-デジタルモジュール8は、別個のユニットまたはコンピュータの一部である。電子メモリ9(破線で示す)は、カード7上にあるか、または、コンピュータ内にあることができる。アナログ-デジタルモジュール8がコンピュータの一部である場合、好ましくは、電子メモリ9はコンピュータの一部である。
【0067】
音響信号は、以下の通りに生成される。
【0068】
低電圧周波数調整可能電子発振器2は、所望の周波数の連続正弦波電子信号を発生する。低電圧によって、約1〜10ボルト(V)、好ましくは、1Vを意味する。周波数調整可能によって、約1Hz〜約200MHzの範囲の周波数を意味する。電子発振器2と並列に働いて、信号発生器3は、所望のパルス継続時間と所望のデューティサイクルを有するTTLに似た(トランジスタ-トランジスタロジック)パルス信号を発生する。TTLに似たパルスは、約1〜約10V、好ましくは、約5Vの振幅を有する。この信号は、電子スイッチ4に送出され、電子発振器2から発生した信号は、少なくとも1つのコアレス変圧器33(図1aには示さないが、図7に示す)を備える高電圧広帯域増幅器5に送信されることをイネーブルまたはディスエーブルする。高電圧によって、約100V〜約1kV、またはさらに、約10kVを意味する。増幅器5の出力は、マルチプレクサユニット22を通して、測定デバイス10の変換器12(図1aには示さないが、図2および図3に示す)に送出されて、電気信号が音響信号に変換される。
【0069】
その後、測定デバイス10は、以下の通りに、被分析材料25(図1aには示さないが、図2および図3に示す)を透過するか、または、被分析材料25によって反射される音響信号、好ましくは、超音波信号を測定する。
【0070】
変換器12は、音響信号、好ましくは、超音波信号を電気信号に変換するのに使用される。その後、このアナログ電気信号は、マルチプレクサユニット22を介して、テンションをたとえば、約10Vに制限するテンション制限器31およびテンションを、たとえば、倍率10で除算するテンション除算器32に送出され、その後、信号は、アナログ-デジタルモジュール8内のアナログ-デジタル信号変換器6(図示せず)手段によってデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、カード上またはコンピュータ内にある電子メモリ9に記憶されて、直接にまたはコンピュータブリッジインタフェース1を介してコンピュータ読取可能媒体21に転送される。2つの可能性が、破線によって指示される。
【0071】
測定デバイス10は、温度を測定し、制御する機能も有する。すなわち、1つまたは複数の温度測定素子17(図1aには示さないが、図2および図3に示す)および/または1つまたは複数の温度制御素子19(図1aには示さないが、図2および図3に示す)が、測定デバイス10に接続される。アナログ-デジタルモジュール8内のアナログ-デジタル信号変換器6(図示せず)は、温度測定素子17(図1には示さないが、図2および図3に示される)および/または温度制御素子19(図1には示さないが、図2および図3に示される)のアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号が、電子メモリ9に記憶される。
【0072】
図1bによれば、図1aについて述べたカード7が示される。図1aについて述べたカード7と対照的に、アナログ-デジタルモジュール8、テンション制限器31、およびテンション除算器32は、カード7内に一体化される。
【0073】
図1cによれば、マルチプレクサユニット22は、図1aについて述べたカード7、テンション制限器31、およびテンション除算器32を備える。アナログ-デジタルモジュール8および測定デバイス10は、別個のユニットである。電気信号は、マルチプレクサユニット22のスイッチングユニット30の少なくとも1つのゲート28を通して、高電圧広帯域増幅器5から測定デバイス10の変換器12(図1cには示さず)に送出されて、電気信号が音響信号に変換される。その後、測定デバイス10は、被分析材料25(図1cには示さず)を透過するか、または、被分析材料25によって反射される音響信号を測定する。変換器12(図1cには示さず)は、音響信号を電気信号に変換するのに使用され、その後、このアナログ電気信号は、マルチプレクサユニット22のスイッチングユニット30の少なくとも1つのゲート28を介して、テンション制限器31およびテンション除算器32に送出され、その後、アナログ-デジタルモジュール8内のアナログ-デジタル信号変換器6(図示せず)手段によってデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、カード上またはコンピュータ内にある電子メモリ9に記憶されて、直接にまたはコンピュータブリッジインタフェース1を介してコンピュータ読取可能媒体21に転送される。2つの可能性が、破線によって指示される。マルチプレクサユニット22は、任意選択で、電源23を備えてもよい。
【0074】
図1dは、図1cについて示すマルチプレクサユニット22を示す。図1cと対照的に、アナログ-デジタルモジュール8は、カード7内に一体化され、別個のユニットではない。
【0075】
図1eは、テンション制限器31およびテンション除算器32の作動原理を述べる。電気信号は、マルチプレクサユニット22と高電圧広帯域増幅器5との間の接続から取得される。それぞれ、励起信号Iとエコー信号II、励起信号Iと透過信号III'、の電圧差が大きいため、電気信号の2つの部分の直接の比較は、信号対雑音比が低いという問題を生じる。
【0076】
テンション制限器31およびテンション除算器32の使用は、信号対雑音比が高い状態で、正確なエコー信号または透過信号を求めることを可能する。テンション制限器31は、テンションを、ある所定のレベル、たとえば、±10Vに制限する。このレベルは、それぞれ、エコー信号、透過信号の電圧振幅が、完全に、この制限器が及ぶ電圧範囲内になるように選択される。こうして制限された信号は、アナログ-デジタルモジュール8に転送される。このアナログ-デジタルモジュール8は、選択された電圧範囲の範囲内の所定の数の離散的なレベル点で決まる分解能を使用して、到来する信号をデジタル信号に変換する。
【0077】
テンション除算器32は、所定の倍率の除算、たとえば、倍率10によって、電気信号の振幅を減少させる。この除算された信号は、アナログ-デジタルモジュール8に転送される。倍率は、除算された信号の電圧範囲が、制限された信号の電圧レベルの範囲内になるか、好ましくは、制限された信号の電圧レベルに等しくなるように選択される。
【0078】
それぞれ、メモリ内、コンピュータ内で、それぞれ、エコー信号、透過信号は、除算された信号Imodから分離され、励起パルスは、制限された信号IImodから分離される。分離された2つの信号IImodとImodの除算によって、それぞれ、エコー信号の補正IIcor、透過信号の補正IIcorが達成され、励起パルスの振幅から生じる全ての信号変動がなくなる。位相変動は、IImodからImodを減算することによって減少させられてもよい。これは、それぞれ、エコー信号、透過信号の精度および信号対雑音比の向上をもたらす。
【0079】
図2aによれば、測定デバイス10は、被分析材料25の材料表面に接触するか、または、材料表面上に設置される。こうした測定デバイスは、ケーシング11、少なくとも1つの層、好ましくは、第1層13'および第2層13''を有する導波路13、変換器12を備え、変換器12は、接触材料15、好ましくは、粘弾性材料によって導波路13に接触し、導波路13''の導波路13/材料サンプル25界面は、コーティング14、好ましくは、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂ベースのポリマーコーティングによって少なくとも部分的に覆われる。図2aは、2つの層、第1層13'および第2層13'' の導波路を含む測定デバイスを示す。2つの層は、結合材料16、好ましくは、接着剤によって結合される。第1層13'および第2層13''は、同じか、または、異なる材料である。図2aは、測定デバイスの例示的な実施形態を示すだけである。測定デバイス10が、1つだけの層または3つ以上の層の導波路13を含んでもよく、また、測定デバイス10が、2つ以上の変換器12を備えてもよいことが当業者には明らかである。変換器12は、ケーブル接続24によってマルチプレクサユニット22(図示せず)に接続される。被分析材料の温度は、温度測定素子17、好ましくは、熱電対を用いて測定され、温度測定素子17は、ケーブル接続24'によってアナログ-デジタルモジュール8(図示せず)に接続される。
【0080】
図2bは、図2aの測定デバイスに加えて、被分析材料25を支持する手段18を備える測定デバイスの断面を示す。手段18は、少なくとも1つの温度制御素子19、好ましくは、ペルチエ素子を備え、温度制御素子19は、被分析材料25を焼入れする(temper)サーモスタットとして使用される。さらに、1つだけの層の導波路13および2つの変換器、せん断変換器12'および圧縮変換器12''が示される。温度測定素子17および温度制御素子19は、ケーブル接続24'によってアナログ-デジタルモジュール8(図示せず)に接続される。
【0081】
図2cは、被分析材料25を支持するリング形状手段18の図2bのA-Aを通る水平断面を示す。2つ以上の温度制御素子19が、好ましくは、ケーブル接続24''によって接続される。別の実施形態では、各温度制御素子19は、ケーブル接続24'によってアナログ-デジタルモジュール8に別々に接続される。
【0082】
図3aは、音波によって材料の動弾性率を決定する装置20の略図を示し、装置20は、好ましくはコンピュータまたはラップトップコンピュータの一部であるコンピュータ読取可能媒体21、アナログ-デジタルモジュール8(図示せず)を備える図1bに詳細に述べたカード7、マルチプレクサユニット22、および、ケーブル接続24および24'によってマルチプレクサユニット22およびカード7のアナログ-デジタルモジュール8(図示せず)に接続される、図2bでより詳細に述べた本発明の測定デバイス10を備える。コンピュータ読取可能媒体21、通常、コンピュータまたはラップトップコンピュータか、マルチプレクサユニット22のいずれか、あるいは、その両方が、電源23(図示せず)を備える。電力は、電気、電池などであってよい。カード7は、たとえば、ケーブルまたは無線によって、コンピュータ読取可能媒体、好ましくは、コンピュータまたはラップトップコンピュータに接続される。
【0083】
図3bは、音波によって材料25の動弾性率を決定する装置20の略図を示し、装置20は、コンピュータ読取可能媒体21、図1cでより詳細に述べたカード7を備えるマルチプレクサユニット22、および、図2bでより詳細に述べた本発明の測定デバイス10を備える。好ましくはコンピュータまたはラップトップコンピュータの一部であるコンピュータ読取可能媒体21は、無線接続によって、マルチプレクサユニット22に接続される。マルチプレクサユニット22は、アナログ-デジタルモジュール8および電源23を備える本発明のカード7を備える。電源23は、マルチプレクサユニット22の電源23に加えて、または、その代わりに、コンピュータまたはラップトップコンピュータの一部であってもよい。測定デバイス10の、変換器12、または、ここで示すように、2つの変換器の場合、変換器12'および12''は、ケーブル接続24によって、マルチプレクサユニット22にゲート28を通して接続される。被分析材料の温度は、ケーブル接続24'によって、アナログ-デジタルモジュール8に接続される温度測定素子17、好ましくは、熱電対によって測定される。
【0084】
図3cは、音波によって材料25の動弾性率を決定する装置20の略図を示し、装置20は、本発明のマルチプレクサユニット22および測定デバイス10を備える。マルチプレクサユニット22は、コンピュータ読取可能媒体21、ディスプレイユニット26、命令を入力するためのキーボードまたはキーパッドなどのデータ入力ユニット29、アナログ-デジタルモジュール8を備える、図1cについて詳細に述べたカード7、および電源23を備える。測定デバイス10の変換器12は、ケーブル接続24によってマルチプレクサ22にゲート28を通して接続される。被分析材料の温度は、ケーブル接続24'によって、アナログ-デジタルモジュール8に接続される温度測定素子17、好ましくは、熱電対によって測定される。
【0085】
図4は、好ましくはコンピュータプログラムによって制御される本発明の方法のフローチャートを示す。コンピュータプログラムは、好ましくは、コンピュータが方法の段階を実施するようにさせる。音波によって材料サンプルの動弾性率を求める方法は、(A)最低周波数fminおよび最高周波数fmaxならびに周波数の数nを選択する段階と、(B)mがゲートの数である、m個のゲートを備えるマルチプレクサユニット22に好ましくは送信される第1信号を生成するデータを本発明のカード7に送出する段階と、(C)好ましくは、yが可変指数である、変換器tyに接続されるゲートgyを選択する段階と、(D)xが可変指数である、周波数fxをfmin〜fmaxの範囲から分離する段階と、(E)音、好ましくは、超音波エネルギーを導波路内に伝播させるように、第1信号を測定デバイス内に送信する段階と、(F)透過する、または、導波路または被分析材料から反射する、音、好ましくは、超音波エネルギーから生じる第2信号を変換器から受信する段階と、(G)対応する周波数fxについて前記第2信号を格納する段階と、(H)前記第2信号を分析する段階であって、それにより、受信される音、好ましくは、超音波エネルギーの振幅、位相、およびエネルギーを求める、分析する段階と、(I)振幅および位相発展、波エネルギー発展、および、任意選択で、温度発展をリアルタイムに評価する段階と、(J)xが、段階(A)で選択された周波数の数nに等しくなるまで、可変指数xを1だけ増やし、段階(B)〜(I)を繰り返す段階と、(K)好ましくは、yが、ゲートの数であるmに等しくなるまで、可変指数yを1だけ増やし、段階(B)〜(J)を繰り返す段階とを含み、任意選択で、本発明の測定デバイスが被分析材料に接触する段階(B)〜(K)を繰り返す段階(L)(破線で示される)を含み、(M)被分析材料が無い状態での測定から得られる、第2信号の振幅、位相、およびエネルギーの発展を、前記測定デバイスが被分析材料に接触する測定から得られる、対応する第2信号の振幅、位相、およびエネルギーの発展と比較する段階と、(N)段階(M)で行われる比較から動弾性率を計算する段階とを含む。
【0086】
図5aは、音伝播の反射モード測定を示す。反射またはエコーモードでは、変換器12は、同時に、波の放出器および受信器の役目を果たす。接触材料15を含む変換器12/導波路13界面Iで時刻t=0において、変換器12は、音パルス、好ましくは、超音波パルスを放出し、音パルスは、単一層およびコーティング14を備える導波路13内に伝播する。音パルスは、その後、従来の反射が無い状態で、コーティング14/材料サンプル25界面(II)に達する。波のある部分は、時刻t1においてコーティング14/材料サンプル25界面IIで反射し、変換器12に戻る。波の他の部分は、材料サンプル25を通過し、その後、材料サンプル25/空気界面IIIで反射する。これは、2t1および2(t1+t2)において、2つのパルスの観測をもたらす。
【0087】
図5bは、音伝播の反射モード測定の結果を示す。3つのパルスの時間(秒(s)単位)に対する電圧の振幅(V)が示される。t0における第1パルスIは、放出用変換器12から生じ、2t1における第2パルスIIは、コーティング14/材料サンプル25界面上の反射から生じ、2(t1+t2)における第3パルスIIIは、材料サンプル25/空気界面から生じる。
【0088】
図6は、3つのモルタルに関する実験によって求められる、時間t(分)を関数とするせん断弾性率G(Pa)の生成を示す。Ex2は、水、ならびに、セメントの重量23.1%、炭酸カルシウムの重量7%、砂(0〜1mm)の重量27.94%、および砂(1〜4mm)の重量41.96%からなる組成物のモルタルである。
【0089】
Ex3は、コンクリート流動化剤および凝結遅延剤Sika(登録商標)ViscoCrete(商標)SC-305(Sika Schweizで市販される)の、セメントベースの重量1%をさらに含むことを除いて、Ex2と同じモルタルである。Ex1は、硬化促進剤Sigunit(登録商標)-L53AF(Sika Schweizで市販されている)の、セメントベースの重量6%をさらに含むことを除いて、Ex3と同じモルタルである。したがって、Ex1は、硬化促進されたモルタルを示し、Ex2は、標準的なモルタルを示し、Ex3は、凝結遅延されたモルタルを示す。
【0090】
すべてのモルタルは、0.48の水/セメント比を有し、測定デバイス上に湿潤した混合物として塗布された。Ex1は、実験室ショットクリート機器によって、湿潤したショットクリートとして測定デバイス内に室温で吹き付けられた。使用される測定デバイスは、エコーモード測定のために配列された、一方が圧縮弾性率の測定用、他方がせん断弾性率の測定用である2つの変換器を備える。導波路は、2成分樹脂、すなわち、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む第1成分およびポリアミンを含む第2成分の硬化によって得られるエポキシ樹脂の100マイクロメートルの層をコーティングされる。測定デバイスは、9cmの高さと13cmの径と4kgの重量を有する円柱形状である。測定デバイスは、10×5×4cmの寸法を有し、300gの重量を有する、図1cにより詳細に述べるマルチプレクサユニットに接続される。マルチプレクサは、USB接続によって、ラップトップコンピュータに接続され、ラップトップコンピュータ上で、制御および計算プログラムが、LabVIEW(商標)(National Instrumentsから市販されているLabView7express)環境において実行される。測定は、50kHz〜5MHzの周波数範囲内の100の離散的な周波数にわたって、リアルタイムに行われる。個々の周波数についての、せん断弾性率の時間発展曲線のセットから、図6は、例示的に、500kHzの周波数についての曲線を示す。この図から、硬化が進むにつれて、率が増加することを明確に見てわかることができる。さらに、既に最初の数分で急速に補剛すること、ならびに、早期でかつ急速な強度が生まれることを測定することができることを図6のEx1から見てわかることができる。
【0091】
図7は、電力ドライバ36および3つの変圧器33A、33B、33Cを備える高電圧広帯域増幅器5の略図を示す。電力ドライバ36は、好ましくは、少なくとも1つの変圧器の1次巻線34において、ハイパワー電流、好ましくは、1〜50アンペア(A)、より好ましくは、10〜40アンペアを提供する、または、発生するパワートランジスタまたはハイパワー半導体である。3つのコアレス変圧器の1次巻線34は、互いに並列に接続され、3つのコアレス変圧器の2次巻線35は、直列に接続される。所望の周波数の低電圧電子信号は、電子スイッチ4(図1aに示す)から高電圧広帯域増幅器5のパワードライバ36に、その後、送信され、3つの変圧器33A、33B、33Cの1次巻線34に送信される。電子信号は、その後、直列に接続される、3つの変圧器33A、33B、33Cの2次巻線35に送信される。各変圧器の2次巻線35は、各変圧器の1次巻線34より多くの巻線を備えるため、信号の電圧が増幅される。2次巻線における電圧の和である、信号の最終の総合出力電圧は、この場合、3つの変圧器が使用されるとき、1つだけの変圧器が使用されるときに比べて3倍大きくなる。これは、3つの変圧器の1次巻線34が並列に接続され、3つの変圧器の2次巻線35が直列に接続されることによる。高電圧、好ましくは、100〜1000Vの電子信号は、その後、変圧器の2次巻線35から測定デバイス10(ここでは示さず)の変換器12へ送信される。
【0092】
図8は、セメントに関する実験によって得られる、時間を関数とする材料特性の生成を示す。
【0093】
図8aは、0.3の水/セメント比で、水と混合されたポーランドセメントのせん断弾性率Gおよび圧縮弾性率Kの生成を示す。セメント/水混合物が、測定デバイス上に設置される。このデバイスは、リング形状容器を有し、リング形状容器に取り付けられたペルチエ素子によって、25℃に調温される。使用される測定デバイスおよび装置ならびに測定に対するさらなる詳細は、図6の説明で示される。実験について、100個の離散的な周波数が、50kHz〜5MHzの範囲から使用された。図8aは、500kHzについての曲線を示す。
【0094】
図8bは、図8aで測定され説明された実験値から求められた、500kHzにおけるポアソン比νの時間発展を示す。図8aおよび図8bは、セメントが硬化するにつれての材料特性の変化を明確に示す。
【0095】
図8cは、図8aおよび図8bで述べた例の音測定Ginvによって求められたせん断弾性率G値とレオロジー測定Grheoによって求められたせん断弾性率G値との比較を示す。レオロジーによって求める場合、サンプルは、粗いプレート/プレート幾何形状(径50mm、ギャップ2mm)、周波数1Hz、発振モード、0.02%の最大変形(25℃の温度で線形領域にある)を使用した粘弾性計Paar Physica MCR300上で測定された。本発明により、それぞれ、レオロジーGrheo、Ginvによって得られる選択された時点についてのせん断弾性率値の個々の値は、図8cの図によって比較された。良好な相関がある場合、異なる方法によって同じ値が得られる、このことは、点を使用したグラフィックの表現上の点が、対角線上にあることに反映される。レオロジー法は、短い硬化時間で、比較的大きな測定誤差を示し、測定誤差は、図8cの誤差バーで指示される。
【0096】
しかし、音測定によって求められる値は、1つのサンプルからリアルタイムに得られ、一方、レオロジーによって求められるデータは、異なるサンプルから生じ、リアルタイムには求められない。さらに、粘弾性計によって圧縮弾性率を測定することが可能でない。図8cから観察することができるように、2つの異なる方法によって得られる結果の相関は、非常に良好である。
【0097】
本発明は、もちろん、図示し、述べた例示的な実施形態に限定されない。
【0098】
明らかに、上記教示に照らして、本発明の、多数の変更、組合せ、および変形が可能である。したがって、添付特許請求項の範囲内で、本発明は、本明細書で特に述べる以外の方法で実施されてもよいことが理解されるべきである。
【0099】
「1つ(one)」、「ある(a)」、または「ある(an)」という用語が、本明細書で使用されるとき、特に指示しない限り、それらは、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つまたは複数(one or more)」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1a】カードの略図である。
【図1b】アナログ-デジタルモジュール、テンション制限器、およびテンション除算器を備えるカードの略図である。
【図1c】カードを備えるマルチプレクサユニットの略図であり、カードはテンション制限器およびテンション除算器を備える。
【図1d】カードを備えるマルチプレクサユニットの略図であり、カードはテンション制限器、テンション除算器およびアナログ-デジタルモジュールを備える。
【図1e】テンション制限器およびテンション除算器の作動原理の略図である。
【図2a】被分析材料に接触させられた測定デバイスの略垂直断面図である。
【図2b】被分析材料を支持する手段を備える測定デバイスの略垂直断面図である。
【図2c】被分析材料を支持する手段の図2bのA-Aを通る略水平断面図である。
【図3a】装置の一実施形態の略図である。
【図3b】装置の第2の実施形態の略図である。
【図3c】装置の第3の実施形態の略図である。
【図4】コンピュータプログラムのフローチャートである。
【図5a】音伝播の反射モード測定の略図である。
【図5b】音伝播の反射モード測定から得られる波の概略グラフである。
【図6】モルタルのせん断弾性率の時間発展を示す図である。
【図7】3つの変圧器を備える高電圧広帯域増幅器の略図である。
【図8a】セメントペーストのせん断弾性率および圧縮弾性率の時間発展を示す図である。
【図8b】セメントペーストのポアソン比の時間発展を示す図である。
【図8c】音測定とレオロジー測定によって求められたセメントペーストのせん断弾性率を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 コンピュータブリッジインタフェース
2 低電圧周波数調整可能電子発振器
3 信号発生器
4 電子スイッチ
5 高電圧広帯域増幅器
6 アナログ-デジタル信号変換器
7 カード
8 アナログ-デジタル変換器モジュール
9 電子メモリ
10 測定デバイス
11 ケーシング
12 変換器
12' せん断変換器
12'' 圧縮変換器
13 導波路
13' 第1層の導波路
13'' 第2層の導波路
14 コーティング
15 接触材料
16 結合材料
17 温度測定素子
18 被分析材料を支持する手段
19 温度制御素子
20 装置
21 コンピュータ読取可能媒体
22 マルチプレクサユニット
23 電源
24 変換器12とマルチプレクサユニット22との間のケーブル接続
24' 温度測定素子17とアナログ-デジタルモジュール8との間のケーブル接続
24'' 温度制御素子19間のケーブル接続
25 被分析材料
26 ディスプレイユニット
27 コンピュータプログラム製品
28 マルチプレクサゲート
29 データ入力ユニット
30 スイッチングユニット
31 テンション制限器
32 テンション除算器
33 変圧器
33A 第1変圧器
33B 第2変圧器
33C 第3変圧器
34 1次巻線
35 2次巻線
36 パワードライバ
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】

【図1e)】

【図2a)】

【図2b)】

【図2c)】

【図3a)】

【図3b)】

【図3c)】

【図5a)】

【図5b)】

【図6)】

【図7)】

【図8a)】

【図8b)】

【図8c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波によって材料サンプル(25)の動弾性率を決定する装置(20)であって、
(a)前記材料のサンプル(25)を少なくとも1つの変換器(12,12',12'')に音響的に結合する手段(13,13',13'')を有する測定デバイス(10)を備え、前記測定デバイスは、
(b)カード(7)に結合され、前記カード(7)は、
(i)前記変換器(12,12',12'')から受信される応答信号を受信し処理する手段(1,8,9,30,31,32)と、
(ii)広い周波数範囲にわたって高電圧信号を生成すると共に、低電圧周波数調整可能電子発振器(2)、信号発生器(3)、電子スイッチ(4)、および高電圧広帯域増幅器(5)を含む手段(1,2,3,4,5)とを備え、前記高電圧広帯域増幅器(5)は、1次巻線と2次巻線を有する少なくとも1つのコアレス変圧器(33)を備えるか、または、前記コアレス変圧器(33)に接続され、前記2次巻線は、前記少なくとも1つの変換器(12,12',12'')に接続される装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのコアレス変圧器(33)は平面変圧器である請求項1記載の装置(20)。
【請求項3】
前記高電圧広帯域増幅器(5)は、少なくとも2つのコアレス変圧器(33A,33B,…)を備え、前記少なくとも2つのコアレス変圧器(33A,33B,…)の1次巻線は互いに並列に接続され、前記少なくとも2つのコアレス変圧器(33A,33B,…)の2次巻線は直列に接続される請求項1または2のいずれかに記載の装置(20)。
【請求項4】
前記周波数調整可能発振器(2)は、1Hz〜200MHzの周波数範囲内の少なくとも25の離散的な周波数を生成するように設計される請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項5】
前記変換器(12,12',12'')から受信される応答信号を受信し処理する前記手段(1,8,9,30,31,32)は、テンション除算器(32)またはテンション制限器(31)などの信号調節手段を備え、前記信号調節手段は、デジタル応答信号をコンピュータメモリ(9)に転送するアナログ-デジタル変換器モジュール(8)に接続される請求項1から4のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項6】
コンピュータ手段(1)およびコンピュータ読取可能媒体(21)は、前記変換器(12,12',12'')から受信される応答信号を受信し処理する前記手段(1,8,9,30,31,32)を制御するため、かつ/または、高電圧信号を生成する前記手段(1,2,3,4,5)を制御するために設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項7】
送信または受信される信号を転送するためのm個のゲートを備えるマルチプレクサユニット(22)を有し、mはゲート(28)の数であり、各ゲート(28)は、変換器tyに接続され、yは可変指数である請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項8】
前記高電圧広帯域増幅器(5)から前記変換器(12,12',12'')へ信号を転送し、また、前記変換器(12,12',12'')から応答信号を受信し処理する前記手段(1,8,9,30,31,32)へ信号を転送するように設計されたスイッチングユニット(30)を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項9】
前記材料サンプル(25)を少なくとも1つの変換器(12,12',12'')に音響的に結合する前記手段(13,13',13'')は、少なくとも1つの導波路(13,13',13'')を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの導波路(13,13',13'')は、ポリ(メチルアクリレート(メタクリレート))またはアルミニウムで作られる請求項9に記載の装置(20)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導波路(13,13',13'')は、接触材料(15)、好ましくは粘弾性材料によって前記少なくとも1つの変換器(12,12',12'')に接触する請求項9または10に記載の装置(20)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの導波路(13)は、好ましくは、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂ベースで作られたポリマーコーティングなどのコーティング(14)によって少なくとも部分的に覆われる請求項9から11のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項13】
前記導波路(13)は、同じ材料の2つ以上の層または異なる材料の2つ以上の層からなり、前記層は、結合材料(14)、好ましくは、接着剤によって結合される請求項9から12のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項14】
前記導波路(13)は、第1層(13')および第2層(13'')からなり、前記第1層(13')は、前記第2層(13'')と異なる材料であり、前記第1層(13')は、結合材料(14)、好ましくは、接着剤によって前記第2層(13'')に結合される請求項13に記載の装置(20)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの変換器(12)は、せん断変換器(12')および/または圧縮変換器(12'')である請求項1から14のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの変換器(12)は、放出変換器および捕捉変換器として使用される請求項1から15のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項17】
前記測定デバイス(10)は、少なくとも2つの変換器(12)を備え、一方の変換器は放出変換器として使用され、他方の変換器は捕捉変換器として使用される請求項1から15のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項18】
温度測定素子(17)、好ましくは、熱電対をさらに備える請求項1から17のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項19】
前記測定デバイス(10)は、前記材料サンプル(25)を受け取り、保持する手段(18)をさらに備える請求項1から18のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項20】
前記手段(18)は、リング形状である請求項19に記載の装置(20)。
【請求項21】
前記手段(18)は、温度制御素子(19)を備える請求項19または20に記載の装置(20)。
【請求項22】
前記材料(25)は、無機バインダーまたはポリマーを含む請求項1から21のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項23】
前記無機バインダーは、セメントまたはジプサムなどの水圧バインダーである請求項22に記載の装置(20)。
【請求項24】
前記材料は、モルタルまたはコンクリート、特に、ショットクリートである請求項22または23に記載の装置(20)。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の装置(20)を用いて、音波によって、ポリマーあるいはセメントまたはジプサムなどの無機バインダーを含む材料サンプル(25)の動弾性率を求める方法であって、
(A)最低周波数fminおよび最高周波数fmaxならびに周波数の数nを選択する段階と、
(B) m個のゲートを備えるマルチプレクサユニット(22)に好ましくは送信される第1信号を生成するデータをカード(7)に送出する段階と、
(C)好ましくは、変換器(12)ty(yは可変指数)に接続されるゲートgyを選択する段階と、
(D)周波数fx(xは可変指数)をfmin〜fmaxの範囲から分離する段階と、
(E)音、好ましくは、超音波のエネルギーを前記導波路(13)内へ伝播させるように、前記第1信号を前記測定デバイス(10)内に送信する段階と、
(F)透過、または、前記導波路(13)または前記被分析材料(25)から反射する、音、好ましくは、超音波エネルギーから生じる第2信号を前記変換器(12)から受信する段階と、
(G)前記対応する周波数fxについて前記第2信号を格納する段階と、
(H)前記第2信号を分析して、受信される音、好ましくは、超音波のエネルギーの振幅、及び位相を決定する段階と、
(I)前記振幅、及び位相、の実時間発展を評価する段階と、
(J)xが、段階(A)で選択された周波数の数nに等しくなるまで、前記可変指数xを1だけ増やし、段階(B)〜(I)を繰り返す段階と、
(K)好ましくは、yが、ゲートの数であるmに等しくなるまで、前記可変指数yを1だけ増やし、段階(B)〜(J)を繰り返す段階と、
(M)被分析材料(25)が無い状態での測定から得られる、前記第2信号の前記振幅、位相、および時間発展を、前記測定デバイス(10)が前記被分析材料(25)に接触する測定から得られる、対応する第2信号の前記振幅、位相、および時間発展と比較する段階と、
(N)段階(M)で行われた比較から動弾性率を計算する段階とを含む方法。
【請求項26】
段階(K)と段階(N)との間で実施される、前記測定デバイス(10)が、被分析材料(25)に接触している段階(B)〜(K)を繰り返す段階(L)を有する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
段階(B)〜(K)は、被分析材料(25)が有る状態と無い状態で平行して実施される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記段階は、コンピュータプログラムによって制御される請求項25から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの導波路(13)、および、前記導波路(13)に接触する少なくとも1つの変換器(12)を備える測定デバイス(10)であって、前記導波路(13)は、コーティング(14)によって少なくとも部分的に覆われることを特徴とする測定デバイス。
【請求項30】
測定デバイス(10)であって、
前記導波路(13)は、ポリ(メチルアクリレート(メタクリレート))またはアルミニウムで作られる請求項29に記載の測定デバイス。
【請求項31】
前記コーティング(14)は、好ましくは、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂ベースで作られたポリマーコーティングである請求項29または30のいずれかに記載の測定デバイス。

【図4】
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【公表番号】特表2008−537133(P2008−537133A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507082(P2008−507082)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061705
【国際公開番号】WO2006/111559
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】