説明

材料の成形方法および成形金型

【課題】ポリイミドを含む樹脂で成形され、ソリ等の変形が生じ難い成形品を得る。
【解決手段】上型40のゲート54から溶融材料が供給されつつ、下型42が上型40に対して相対移動させられる。そのため、エアが摺動面から逃がされるため、キャビティ内に溜まり難い。また、ゲート54から供給された溶融材料は、徐々にキャビティ内に充填される。そのため、射出成形における場合のように、高圧、かつ、高速でキャビティ内に充填される場合に比較して、溶融材料に加えられるストレスが小さくなる。以上により、ソリ等の変形が生じ難い成形品110を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、金属等の成形方法およびその成形方法の実施に使用される成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機を用いてディスクを成形する成形方法が記載されている。この成形方法によれば、ゲートから樹脂がキャビティに供給された後、ゲートがキャビティから遮断され、設定圧力に保持される。
特許文献2には、幅80mm、φ15mmのTダイ押出機を用いてポリイミドのシートを成形する方法が記載されている。ポリイミドを420℃で加熱溶融し、押出量215g/hで押し出すことにより、厚み100μmのシートが成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−141441号公報
【特許文献2】特開平2−209924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ソリ等の変形が生じ難い成形品を得るための成形方法および成形金型を提供することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
本願発明に係る成形方法によれば、ゲートが形成された第1型とキャビティが形成された第2型とが、ゲートとキャビティとが対向する状態で、ゲートから溶融状態にある材料が供給されつつ相対移動させられる。
また、本発明に係る金型は、(a)ゲートが形成された第1型と、(b)キャビティが形成された第2型と、(c)第1型と第2型とを、それらの当接面とほぼ平行な方向に、互いに相対移動させる型移動装置とを含むものとされる。
ゲートから溶融状態にある材料(以下、溶融材料と略称することがある)がキャビティに供給されつつ、第1型と第2型とが相対移動させられるため、キャビティ内に、溶融材料が、徐々に充填されるようにすることができ(溶融材料の流れを抑制することができ)、溶融材料に加えられるストレスを小さくすることができる。
また、第1型と第2型との間の隙間からエアが逃がされるため、キャビティ内にエアが溜まり難くすることができる。
さらに、第1型と第2型とによってキャビティ内に充填された溶融材料に加えられる圧力を適切な大きさとすることができる。
以上の理由により、ソリ等の変形が生じ難い成形品を得ることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明について説明する。
(1)下型と上型とを備えた金型であって、
前記上型にゲートが形成されるとともに前記下型にキャビティが形成され、かつ、前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記上型と前記下型とを、それら上型と下型との当接面と平行な方向に、互いに相対移動させる型移動装置を含むことを特徴とする金型。
当接面と平行な方向とは、当接面と平行な方向と、当接面とほぼ平行な方向とを含む意味であり、当接面と平行な方向を成分に含む方向と称することができる。
上型を移動させても下型を移動させても上型および下型の両方を移動させてもよい。
型移動装置は、(i)電動モータと、回転運動を直線運動に変換する運動変換装置とを含むものとしたり、(ii)流体(エア、油等)シリンダを含むものとしたりすること等ができる。
また、上型と下型との当接面はほぼ水平方向に伸びていることが多く、上型と下型とは、ほぼ水平方向に相対移動させられることが多い。
材料としては、熱可塑性の材料が用いられる。材料は、金属であっても、樹脂であってもよい。
(2)前記型移動装置が、前記下型を移動させる下型移動装置と、前記下型の停止位置を規定するストッパとを含む(1)項に記載の金型。
上型(ゲートが設けられる)には溶融材料供給部が接続されるのが普通であるため、上型を固定し、下型を移動させる方が構造を簡単にすることができる。
また、ストッパを設ければ、下型を所望の位置に正確に停止させることができる。
(3)前記下型のキャビティが、幅方向および長手方向に伸びた浅溝形状を成し、前記上型のゲートが、前記幅方向に伸びたスリット状を成したものである(1)項または(2)項に記載の金型。
(4)前記型移動装置が、前記上型と前記下型とを、前記長手方向に相対移動させる長手方向移動装置を含む(3)項に記載の金型。
キャビティが幅方向および長手方向に伸びる浅溝形状(平面視が長方形を成した浅い凹)を成したものであり、ゲートが幅方向に伸びたスリット形状を成したものである。本項に記載の金型は、シート状(板状)の成形品を成形するのに適している。
ゲートの幅方向の長さは、キャビティの幅方向の長さとほぼ同じとすることが望ましい。
(5)当該金型が、熱可塑性の樹脂材料の成形に用いられるものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の金型。
例えば、熱可塑性の樹脂としてポリイミドがある。ポリイミドの成形品は、耐熱性に優れ、高強度を有する。
(6)前記型移動装置が、前記上型と前記下型との相対移動速度を制御する移動速度制御部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の金型。
(7)前記移動速度制御部が、前記上型と前記下型との相対移動速度を、少なくとも、前記ゲートから供給される前記溶融状態にある材料の流量に基づいて制御する流量対応制御部を含む(6)項に記載の金型。
上型と下型との相対移動速度が、ゲートから供給される溶融材料の流量(単位時間当たりの溶融材料の重量で表すのが普通であり、押出量と称することもある。)に対して大きい場合には、キャビティに充填される溶融材料の量が少なくなり、上型と下型とによって加えられる圧力が小さくなる。
上型と下型との相対移動速度が、溶融材料の押出量に対して小さい場合には、キャビティに充填される溶融材料の量が多くなり、加えられる圧力が大きくなる。
また、ゲートからキャビティに溶融材料が供給されつつ、相対移動を停止させたり、逆向きに移動させたりすることも可能であり、それにより、キャビティに供給された溶融材料に当接面とほぼ平行な方向の力を加えることも可能となる。
溶融材料の押出量は、溶融材料供給部の諸元{加熱温度、スクリュの回転速度(押出量)}、材料の特性{流体特性(例えば、粘度等)}、ゲート、ライナの形状等で決まる。
また、溶融材料の押出量の他に、キャビティの形状等を考慮して相対移動速度が制御されるようにすることもできる。
(8)前記型移動装置が、前記上型と前記下型とを、少なくとも前記ゲートから供給される溶融状態にある材料の流量で決まる速度で相対移動させるものである(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の金型。
ゲートから供給される溶融材料の流量等の成形条件は予め決まることが多い。そのため、上型と下型との相対移動速度も予め決めておくことができる。このように、型移動装置は、上型と下型との相対移動速度を制御可能なものとすることは不可欠ではない。
(9)前記上型が、前記ゲートと、前記溶融状態にある材料の前記上型への流入口との間に設けられたホットライナを含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の金型。
ホットライナを上型に設ければ、ゲートからキャビティに供給される材料を良好に溶融状態に保持することができる。ライナの形状(滞留部の大きさ、形状等)、ヒータの温度は、キャビティに溶融材料を安定的に、所望の押出量で供給し得るように、かつ、材料の劣化を抑制し得る温度に決めることができる。
(10)当該金型が、前記成形品を前記金型から取り出すエジェクタと、そのエジェクタを、前記当接面と平行な方向へ移動させるエジェクタ移動装置とを含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の金型。
エジェクタは、キャビティに対向する位置に設けられた突き出しロッドを含むのが普通である。そのため、下型の移動に伴ってエジェクタも移動させられるようにすることが望ましい。エジェクタ移動装置は、下型移動装置と共通のものであっても別個のものであってもよい。
(11)前記型移動装置が、前記下型を移動する下型移動装置を含み、前記ゲートが、前記上型の平面視の中央に形成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の金型。
下型が移動可能とされ、上型のほぼ中央にゲートが設けられれば、下型が上型に対して相対移動させられても、上型と下型とによりキャビティ内の溶融材料に良好に力を加えることができる。
(12)第1型と第2型とを備えた金型であって、
前記第1型にゲートが形成され、前記第2型にキャビティが形成され、前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記第1型と前記第2型とを、それら第1型と第2型との当接面と平行な方向に相対移動させる型移動装置を含むことを特徴とする金型。
当接面は、ほぼ水平方向に伸びた面であっても、ほぼ垂直方向に伸びた面であっても、水平方向あるいは垂直方向の成分を含む方向に伸びた面であってもよい。
いずれにしても、成形品の製造時には、第1型と第2型とが、これらの当接面とほぼ平行な方向に相対移動させられる。
本項に記載の金型には、(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(13)ゲートが形成された第1型とキャビティが形成された第2型とを含む金型を用いて、成形品を得る成形方法であって、
前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記ゲートから溶融材料が供給されつつ、前記第1型と前記第2型とを相対移動させることを特徴とする成形方法。
本項に記載の成形方法には、(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(14)前記第2型を、前記溶融状態にある材料の供給前に、予め定められた設定温度まで上げておく(13)項に記載の成形方法。
第2型(キャビティ)の温度が低すぎると、溶融材料が急冷させられ、所望の品質が得られないことがある。それに対して、第2型の温度を予め設定温度に上げておけば、溶融材料の急冷を抑制することができ、品質の低下を抑制することができる。
(15)ゲートが設けられた第1型とキャビティが設けられた第2型とを備えた金型と、
前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記第1型と前記第2型とを、水平な方向に互いに相対移動させる型移動装置と
を含むことを特徴とする成形装置。
水平な方向とは、水平方向と、水平方向とほぼ平行な方向とを含み、水平方向を成分に含む方向と称することができる。
本項に記載の成形装置には、(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例である金型を備えた成形装置を示す。本成形装置においては、本発明の一実施例である成形方法が実施される。
【図2】上記金型の幅方向の断面図である。
【図3】上記金型の上型の平面図である。
【図4】上記金型の下型の平面図である。
【図5】(a)〜(d)上記成形装置における作動を示す図である。
【発明の実施形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例である成形金型を備えた成形装置について、図面に基づいて詳細に説明する。この成形装置においては本発明の一実施例である成形方法が実施される。
【実施例】
【0009】
図1に示す成形装置は、溶融材料供給部10と、成形部12とを含む。
溶融材料供給部10は、ホッパ20と、スクリュー22を備えた押出シリンダ24と、図示しない加熱部とを含む。ホッパ20にはペレット状の材料(本実施例においては、ポリアミドを含む熱可塑性の樹脂)が収容されている。ホッパ20から押出シリンダ24に供給された材料は、加熱されつつスクリュー22により前方に押し出され、ノズル26から成形部12に供給される。
【0010】
成形部12は、ハウジング(ベース)38,第1型である上型40,第2型である下型42,エジェクタ44,下型移動装置46等を含む。本実施例においては、上型40が固定型であり、下型42が可動型である。
上型40は、図2に示すように、ノズル26に対する開口部50と、下型42に形成されたキャビティ52に対向するゲート54と、開口部50とゲート54とを連通させるホットライナ56とを含む。ホットライナ56は、滞留部(湯溜まり部)57と、その滞留部57に配設されたヒータ58とを含む。
ゲート54は、図3に示すように、上型40のほぼ中央に設けられ、幅方向(x方向)に長いスリット状を成したものである。
ホットライナ56は、溶融材料供給部10から供給された材料を、良好な溶融状態に保ったまま、キャビティ52に供給するために設けられたものである。ポリイミドを含む樹脂の成形は、高い温度で行われるため、ホットライナ56を設けることが望ましい。また、滞留部57の形状(大きさ)、ヒータ58による加熱条件等は、ゲート54から、安定的に、所望の流量で溶融材料が供給されるように、かつ、樹脂の劣化が抑制されるように、適宜設計される。ヒータ58は、電磁誘導加熱方式のものとすることができる。
【0011】
下型42は、図4に示すように、ベース38に、長手方向(幅方向に直交するy方向)に移動可能に保持される。
下型42に形成されたキャビティ52は、平面視において四角形を成したものであり、幅方向(x方向)および長手方向(y方向)に延び、厚み(z方向)が小さいものである。
ベース38には、下型移動装置46が設けられる。
下型移動装置46は、図1に示すように、(a)油圧シリンダ64と、(b)油圧シリンダ64の作動状態を制御することにより、下型42の移動の向きおよび速度を制御する移動速度等制御部66とを含む。
油圧シリンダ64のピストン67のピストンロッド68に、下型42が係合させられ、油圧シリンダ64の作動により、下型42が長手方向(y方向)に往復移動可能とされている。長手方向は、上型40と下型42との当接面PL(金型の分割面と称することもできる)と平行な方向である。
油圧シリンダ64において、ピストン67によってシリンダ本体の内部が、第1液圧室70と第2液圧室72とに液密に仕切られる。第1液圧室70,第2液圧室72には、電磁弁74を介して、高圧源76,低圧源78が接続され、電磁弁74の作動により、高圧源76と低圧源78とに選択的に連通させられる。
また、第1液圧室70,第2液圧室72と電磁弁74との間に、それぞれ、可変絞り80、82が設けられ、その流量が制御可能とされている。
高圧源76は、ポンプと蓄圧器との少なくとも一方を含むものであり、高圧の油を供給可能なものである。低圧源78は、ほぼ大気圧で油を収容する。
【0012】
電磁弁74の第1位置において、第1液圧室70に低圧源78が連通させられ、第2液圧室72に高圧源76が連通させられる。ピストン67が図1の左方(y方向)へ移動させられ、下型42が左方へ移動させられる。
電磁弁74の第2位置において、第1液圧室70に高圧源76が連通させられ、第2液圧室72に低圧源78が連通させられる。ピストン67が図1の右方へ移動させられ、下型42が右方へ移動させられる。
電磁弁74の第3位置において、第1液圧室70,第2液圧室72は、高圧源76からも低圧源78からも遮断される。下型42は停止させられる。
また、電磁弁74の第1位置、第2位置において、可変絞り80,82の開度の制御により、第1液圧室70,第2液圧室72における油の流入流量、流出流量が制御され、下型42の移動速度が制御される。
このように、電磁弁74の制御により、下型42の、当接面PLと平行な方向(y方向)における移動の向き(右方向、左方向)が制御され、可変絞り80,82の制御により、移動速度が制御される。これら電磁弁74,可変絞り80,82は、コンピュータを主体とする成形制御コンピュータ84の指令に基づいて制御される。本実施例においては、電磁弁74,可変絞り80,82,成形制御コンピュータ84等により移動速度等制御部66が構成される。
なお、符号86,88は、ストッパであり、下型42の停止位置が規定される。
【0013】
ハウジング38にはエジェクタ44がy方向に移動可能に保持される。
エジェクタ44は、プレート98と、そのプレート98に保持され、下型42のキャビティ52に対向する位置に設けられた4本の成形品取出ロッド100と、成形品取出ロッド100の外側に設けられた4本のリターンピン102とを含む(図4参照)。
プレート98は、下型42の移動に伴ってy方向に移動可能とされている。油圧シリンダ64と別個の移動装置を設けても、油圧シリンダ64によって移動可能とされるようにしてもよい。
【0014】
以上のように構成された成形装置において、ポリイミドを含む樹脂の成形品を成形する場合の作動について説明する。
図5(a)に示すように、溶融樹脂供給部10から、ゲート54を経てキャビティ52へ、溶融材料の供給が開始されると、油圧シリンダ64の作動により、下型42が図5の左方へ移動させられる。
図5(b)に示すように、ゲート54からキャビティ52に溶融材料が供給されつつ、下型42が左方へ移動させられるため、キャビティ52の内部に溶融材料が徐々に充填される。溶融材料のゲート54からの押出量と、下型42の移動速度とが、キャビティ52内に溶融材料が充填され、かつ、上型40と下型42とによって材料に所望の大きさの圧力が加えられる大きさとされる。なお、エジェクタ44は、下型42と同様に左方へ移動させられる。
そして、図5(c)に示すように、下型42がストッパ86に当接すると、電磁弁74が第3位置に切り換えられ、油圧シリンダ70の作動が停止させられる。この状態が予め定められた設定時間の間保持される。キャビティ内の溶融材料には予め定められた圧力が加えられる。また、キャビティ内の溶融材料が冷却され、成形品110が得られる。
設定時間が経過すると、図5(d)に示すように、図示しない昇降装置により、下型42等が下降させられ{上型40に対してz方向(昇降方向)へ離間させられ}、成形品取出ロッド100により成形品110がキャビティ52から取り出される。
その後、電磁弁74が第2位置に切り換えられる。油圧シリンダ64の作動により、下型42が右方へ、ストッパ88に当接するまで移動させられる。図5(a)の位置に戻され、次の成形品の成形が行われる。
【0015】
以上のように、本実施例においては、ゲート54から溶融材料がキャビティ52に供給されつつ、下型42が上型40に対してy方向へ相対移動させられる。そのため、エアを、上型40と下型42との摺動面から逃すことができ、キャビティ内にエアが残らないようにすることができる。特に、ポリイミドは高温で成形が行われるため、エアが発生し易い。そのため、エアが良好に排出されるようにすることは重要なことである。
また、ゲート54から溶融材料が供給されつつ上型40と下型42とが相対移動させられるため、ゲート54から供給される溶融材料の押出量、溶融材料に加えられる圧力を、射出成形装置における場合より小さくすることができる。さらに、下型42が固定され、ゲート54から供給された溶融材料がキャビティ52全体に充填される場合に比較して、ゲート54からキャビティ52に充填される場合の溶融材料の流れを抑制することができる。
また、キャビティ52に充填された溶融材料に上型40と下型42とによって加えられる圧力も、射出成形装置における場合に比較して小さくされる。
以上により、成形時に、溶融材料に加えられるストレスを、射出成形装置における場合より小さくすることが可能となり、ソリ等の変形が生じ難い成形品110を製造することができる。
また、特許文献1,2のいずれにも、溶融材料がキャビティに供給されつつ上型40と下型42とが相対移動させられることを示唆する記載も、上型40と下型42とが、成形品110の取り出し方向(z方向)と交差する方向に相対移動させられることを示唆する記載もない。したがって、本願発明は、新規性および進歩性を有するものである。
【0016】
なお、材料は、ポリイミドを含む樹脂に限らず、他の熱可塑性の樹脂であってもよく、さらに、金属材料、セラミックス材料であってもよい。例えば、溶融材料が、時間の経過に伴って粘度が変化する流体であるもの、非ニュートン流体(高分子材料であれば、非ニュートン流体であるのが普通である)であるものに適している。
また、型移動装置46を、下型42の移動速度を制御可能とすること(可変絞り80,82)は不可欠ではない。ゲート54からの溶融材料の押出量、キャビティ52の形状等は予め決まるため、下型42の移動速度を予め決めておくことができる。
さらに、上型40をy方向に移動可能とすることもできる。
また、成形品の大きさ、形状は、上記実施例における場合に限定されない等本発明は、上記実施例の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0017】
40:上型 42:下型 46:下型移動装置 52:キャビティ 54:ゲート 56:ホットライナー 58:ヒータ 64:油圧シリンダ 66:移動速度等制御部 74:電磁弁 80,82:可変絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と上型とを備えた金型であって、
前記上型にゲートが設けられるとともに前記下型にキャビティが設けられ、かつ、前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記上型と前記下型とを、これら上型と下型との当接面と平行な方向に相対移動させる型移動装置を含むことを特徴とする金型。
【請求項2】
前記型移動装置が、(i)前記下型を移動させる下型移動装置と、(ii)前記下型の停止位置を規定するストッパとを含む請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記下型のキャビティが、幅方向および長手方向に伸びた浅溝形状を成し、前記上型のゲートが、前記幅方向の伸びたスリット状を成したものである請求項1または2に記載の金型。
【請求項4】
当該金型が、熱可塑性の樹脂の成形に用いられるものである請求項1ないし3のいずれか1つに記載の金型。
【請求項5】
前記型移動装置が、前記上型と前記下型とを、前記ゲートから供給される前記溶融状態にある材料の押出量で決まる速度で相対移動させるものである請求項1ないし4のいずれか1つに記載の金型。
【請求項6】
前記上型が、前記ゲートと前記溶融状態にある材料の前記上型への流入口との間に設けられたホットライナを含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の金型。
【請求項7】
第1型と第2型とを備えた金型であって、
前記第1型にゲートが形成され、前記第2型にキャビティが形成され、前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記第1型と前記第2型とを、それら第1型と第2型との当接面と平行な方向に相対移動させる型移動装置を含むことを特徴とする金型。
【請求項8】
ゲートが形成された第1型とキャビティが形成された第2型とを含む金型を用いて、成形品を得る成形方法であって、
前記ゲートと前記キャビティとが対向する状態で、前記ゲートから溶融材料が供給されつつ、前記第1型と前記第2型とを相対移動させることを特徴とする成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28108(P2013−28108A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166539(P2011−166539)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(511185324)株式会社 大統 (1)
【Fターム(参考)】