材料の欠陥検出方法およびそのシステム
【課題】鋼板等の材料の表面および表層のどちらの欠陥に対しても、それが移動中あるいは搬送中であっても、精度良く検出できる検出方法およびシステムを提供する。
【解決手段】移動している材料の表面あるいは表層における欠陥は、以下の工程を含む方法によって検出可能である。すなわち、材料表面を加熱する工程と、その材料表面が加熱工程で加熱中あるいは加熱後の冷却中に、赤外線サーモグラフィカメラを用いてその材料表面の熱画像データを取得する工程と、およびその熱画像データで表される表面温度についてそのラプラシアンを算出することによってその欠陥を検出する工程とを含む、方法。材料が加熱中に熱画像データが取得される場合には、加熱装置とカメラは、加熱装置から放射される熱エネルギーがその材料によって反射されてカメラに入射するように配置する。
【解決手段】移動している材料の表面あるいは表層における欠陥は、以下の工程を含む方法によって検出可能である。すなわち、材料表面を加熱する工程と、その材料表面が加熱工程で加熱中あるいは加熱後の冷却中に、赤外線サーモグラフィカメラを用いてその材料表面の熱画像データを取得する工程と、およびその熱画像データで表される表面温度についてそのラプラシアンを算出することによってその欠陥を検出する工程とを含む、方法。材料が加熱中に熱画像データが取得される場合には、加熱装置とカメラは、加熱装置から放射される熱エネルギーがその材料によって反射されてカメラに入射するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の表面欠陥および/または表層欠陥を検出するのに好適な、材料の欠陥検出方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料が鋼板の場合を例にとると、鋼板の表面や表層には、例えば、ロールによる押し込み疵、溶融亜鉛浴のドロスが亜鉛めっき層に咬みこんで形成されるドロス疵、鋳造中にアルゴンガスが鋳片内に捕捉されて形成される鋼板内部に点在するブローホール欠陥、あるいは亜鉛めっき層厚みの不均一さに起因する表面疵等、種々の欠陥が発生することがある。
【0003】
鋼板におけるこれらの欠陥のうち、他の正常部位と比較して光学的に色が異なって見える欠陥は、作業者による目視検査によって検出されていた。
【0004】
一方、特開2004−219177号公報に開示されているように、鋼板の表面をCCDカメラによって撮影した鋼板表面の画像データに基づいて欠陥検出を行う欠陥検出技術が知られている。
【0005】
しかしながら、作業者による目視検査を行う場合は生産ラインのスピードを減速しなければならないし、またその目視検査の精度は作業者により異なる。さらに、近年ではより高い品質管理レベルが要請されるにつれ、目視で検出するにはあまりに微小な欠陥もその検出が要求されてきている。
【0006】
また、鋼板の表面をCCDカメラで視覚的に検査する方法では、鋼板の表層(表面にではなく)に存在する欠陥については、それらを表面を外側から視認して検出するのは困難なことが多いために、その検出能は高いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−219177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みて着想されたものであり、その目的は、鋼板等の材料の表面および表層のどちらの欠陥に対しても、それが移動中あるいは搬送中であっても、精度良く検出できる検出方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、材料における欠陥が、その表面および表層のどちらの欠陥も検出する方法を使用して検出され、その方法は、下記のステップ、すなわち、材料表面を加熱する工程、材料が加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得する工程、およびその熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出する工程を有する。また、材料の表面および表層のどちらの欠陥も検出するためのシステムは、下記の構成、すなわち、材料の表面を加熱する加熱装置、材料が加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを取得するための赤外線サーモグラフィカメラ、およびその熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出するための検出装置を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、欠陥の検出は、材料表面を加熱し、その材料を加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得し、その熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出することによって実行される。これにより材料が搬送されているあるいは移動している場合でも、その表面欠陥および表層欠陥の両方に関して精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1A2】図1A2は、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1A3】図1A3は、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1C】図1Cは、本発明の他の一実施形態であって、被検査材料が加熱中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1D】図1Dは、本発明の他の一実施形態であって、被検査材料が加熱中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図2A】図2Aは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図2B】図2Bは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図2C】図2Cは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図3A】図3Aは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図4】図4は、赤外線サーモグラフィカメラを用いた非破壊検査を説明するための説明図である。
【図5】図5は、ラプラシアン算出のための画素間の関係を説明する説明図である。
【図6A】図6Aは、赤外線サーモグラフィカメラによって取得される加熱後冷却中における熱画像データに基づいた表面温度を表す温度特性曲線を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、赤外線サーモグラフィカメラによって取得される加熱中における熱画像データに基づいた表面温度を表す温度特性曲線を示すグラフである。
【図7A】図7Aは、図6Aの温度特性曲線に対応するラプラシアンを示すグラフである。
【図7B】図7Bは、図6Bの温度特性曲線に対応するラプラシアンを示すグラフである。
【図8】図8は、表層における温度分布曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、熱画像データにガウシアンフィルター処理を施した場合の効果を示すグラフである。
【図10】図10は、検出装置として機能するコンピュータシステムのハードウェア構成を示す図である。
【図11A】図11Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図11B】図11Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図11C】図11Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図12A】図12Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図12B】図12Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図12C】図12Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図13A】図13Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図13B】図13Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図13C】図13Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図14A】図14Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図14B】図14Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図14C】図14Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図15A】図15Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図15B】図15Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図15C】図15Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図16A】図16Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図16B】図16Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図16C】図16Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図17A】図17Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図17B】図17Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図17C】図17Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図18A】図18Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図18B】図18Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図18C】図18Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図19A】図19Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図19B】図19Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図19C】図19Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明をより具体的に材料を鋼板とした場合を例にして説明する。図1Aおよび図1Cにおいて示されるように、本発明における欠陥検出システムは、加熱装置1、赤外線サーモグラフィカメラ2、および検出装置3を有し、鋼板100(例えば厚さ数ミリ程度)の表面および/または表層にある欠陥(以下、簡単に欠陥101と称する)を検出する。
【0013】
図3A−3Dを参照しながら、本発明での検出対象である欠陥101について以下に説明する。鋼板100の表面/表層の欠陥には多くのタイプがあり、例えばその形状も、散砂状、柳葉状、あるいは斑状等を呈する。
【0014】
図3Aにおける欠陥101aは、鋼板100の表層に異物が咬み込まれることによって引き起こされる欠陥、例えば溶融亜鉛浴からのドロスめっき層に咬み込まれて形成されるドロス疵であり、また空隙の形成によって生じた欠陥、例えば鋳造中にアルゴンガスが鋳片内に捕捉され圧延工程で圧延されることで形成される鋼板内部に散在するブローホール欠陥等である。このタイプの欠陥においては、欠陥(異物や空隙)101aの熱伝導率は鋼板自体の熱伝導率に比べて低い。その結果、その欠陥101aの部位における鋼板表面(欠陥に隣接する表面)は、鋼板の正常部位における表面に比べてより迅速に加熱または冷却されることになる。
【0015】
図3Bにおける欠陥101bは、鋼板100の表面に形成された微小な凸部である。亜鉛めっき層の一部が局部的に厚くなった欠陥等がその一例である。このタイプの欠陥においては、その凸部101bでは表面積が大きくなるため、凸部101bは、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。[Sub 0014 bottom]またその欠陥の形状の故に、凸部101bにおける熱放射量は、鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。
【0016】
図3Cにおける欠陥101cは、鋼板100表面に形成された微小な鋭角的凹部である。この欠陥はしばしばロール表面に付着した異物を鋼板に押し付けることで形成される。この欠陥の形状の故に、鋭角凹部101cの領域からの熱放射量は、鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。それによって鋭角的凹部101cの領域は、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。
【0017】
図3Dにおける欠陥101dは、鋼板の表面に付着するダストのような異物である。このタイプの欠陥においてはその異物の放射率は鋼板のそれより高い。その結果、欠陥101dからの熱放射量は鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。それによって異物101dの領域は、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。
【0018】
本発明は発明者等の見つけた、下記の事実に基づいてなされたものである。すなわち、赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得された熱画像データが表す表面温度に関してそのラプラシアンΔxyTを求めると、ラプラシアンΔxyTの絶対値が欠陥101部位においては鋼板の他の正常表面の部位に比べてより大きくなり、またラプラシアンΔxyTの値が正か負かに基づいて欠陥のタイプが判定できる。
【0019】
図1Aは、本発明の一実施形態に係わる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。図1Cは、本発明の他の一実施形態に係わる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。図1Aおよび図1Cにおいて、加熱装置1は検査ライン上の鋼板100の表面を加熱する。鋼板の温度は、常温よりは高く、また品質への影響を避けるため、100℃未満(好ましくは60℃程度)が好ましい。検査ライン上の鋼板は矢印方向に所定のラインスピード(0〜300mpm程度)で搬送されている。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、鋼板が冷却中に欠陥を検出するために適したシステムを示す。図1Aにおいて、赤外線サーモグラフィカメラ2は加熱装置1の下流側に位置している。鋼板は上流で加熱装置1によって加熱され、その鋼板の表面領域は下流側の検査エリアSで熱画像撮影され、検査エリアSの2次元熱画像データが取得される。熱画像とは、検査対象物である鋼板100の表面から放出される放射熱量の分布を表す画像、すなわち表面温度分布を表す画像のことである。赤外線サーモグラフィカメラ2は、赤外線センサーを有する撮像部および信号処理部を有し、各画素についての温度情報を色情報に変換することによって熱画像データを提示する。
【0021】
赤外線サーモグラフィカメラ2を用いて検査エリアSの熱画像データを取得するこのプロセスにおいては、加熱装置1により放射される熱エネルギーが直接にあるいは鋼板100の表面で反射されて赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないようにする必要がある。そのために加熱装置1と赤外線サーモグラフィカメラ2は十分な距離をその間にとるように設置される。空間的制限等で両者の間に十分な距離をとることが難しい場合には、図1A3に示すように、加熱装置1から放射された熱エネルギーが、鋼板100の表面で反射されて赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないように、両者の間に熱遮蔽部材4を設ける方法もある。言うまでもないことであるが、この熱遮蔽部材4は赤外線サーモグラフィカメラ2の視野を遮らないように配置される。 加熱装置1から放射される熱エネルギー赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないようにこのような配置をとることは、例え加熱装置1が鋼板100を加熱後に電源オフされるとしても、電源オフされた加熱装置の余熱からの熱エネルギーがカメラに入射しうる以上、望ましいことである。図1A、図2Aにおけるカメラ2と図1Bにおけるカメラ2は、設定されている方向(カメラの光学システムの光軸方向)と鋼板表面への相対的位置において異なる。本発明においては、カメラと加熱装置1の種々の方向および設置位置が適用可能である。
【0022】
後述の鋼板が加熱中における欠陥検出の場合においても、加熱装置1とサーモグラフィカメラ2が、加熱装置1から放射される熱エネルギーが鋼板表面によって反射されてカメラに入射するように配置されている限り、種々の方向および設置位置が適用可能である。
【0023】
赤外線サーモグラフィカメラ2のフレームレートやインテグレーションタイム等は、その生産ラインのスピードに合うように設定される。市販の赤外線サーモグラフィカメラにおいてはそのインテグレーションタイムは0.01ms程度である。これは150mpmで走行する鋼板におけるずれとしては0.025mm程度であることを意味し、0.25mm以上のサイズの画素に関しては10%以下となる。すなわち、画像の質はほとんど低下しない。
【0024】
パーソナルコンピュータを備えた検出装置3は、赤外線サーモグラフィカメラによって取得された熱画像データが表す表面温度に基づいてラプラシアンΔxyTを求めて欠陥101を検出し、その欠陥のタイプを判定する。前述したように、ラプラシアンΔxyTの絶対値が欠陥101部位においては鋼板の他の正常表面の部位に比べてより大きくなり、またラプラシアンΔxyTの値が正か負かに基づいて欠陥のタイプが判定できる。従って、もし検査エリアSに欠陥があれば、その欠陥位置におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は鋼板の正常表面部位のそれに比べて大きな値を示し、そしてその欠陥のタイプはその値が正か負かによって決まる。
【0025】
検出装置3は入力部301を有し、赤外線サーモグラフィカメラ2により取得された熱画像データがそこに入力される。
【0026】
検出装置3の画像処理部302は、入力部301入力された熱画像データを、あらかじめ決められた画像処理手順に従って処理するためのものである。図2A、2Bおよび2Cは、検出装置3の画像処理部302において実行される画像データ処理の一例を示す模式図である。図2Aは入力部301へ入力された熱画像データを示す。図2Bは温度をラプラシアン値に変換したラプラシアン処理済み熱画像データを示す。図2Cはそのラプラシアン値熱画像データを二値化処理した画像を示す。ラプラシアン処理は、熱画像データ(図2A)において温度ムラによって生じる外乱を減少するために実行され、また後述されるように、鋼板100の表面および表層において生ずる熱バランスを検出するためにも実行される。ここで、表層とは材料の表面に非常に近い部分であり、経験的には鋼板の厚みが1−2mmの場合では表面から板厚の1/4程度の深さまでの範囲が表層といえる。
【0027】
検査エリアSにおいて、欠陥101部位ではラプラシアンΔxyTの絶対値が大きく検出されるので、ラプラシアン処理は欠陥101が抽出された画像を与えることができるといえる(図2Cの黒色部分を参照)。また欠陥101のタイプは、ラプラシアンΔxyTが正か負かによって判定することができる。
【0028】
検出装置3の出力部303は、画像処理部302によって処理された熱画像データを出力しモニター(図示せず)上に表示する。
【0029】
鋼板の表面および/または表層における欠陥を検出する本発明の方法を以下に詳細に述べる。
【0030】
赤外線サーモグラフィカメラは、図4に示すように検査対象物401の内部に存在する内部欠陥402(例えば異物の混入あるいは空隙の形成)を検出するのに用いることができる。一般に検査対象物401の熱伝導度と欠陥402の熱伝導度は異なるので、検査対象物401の表面からの熱放射量は、欠陥402の位置の表面からの放射熱量とは異なる。その結果、検査対象物401の内部にある欠陥402は、その対象物402の表面上で放射熱量分布を経時的に測定することにより検出することができる。
【0031】
もし対象物401の熱伝導度と欠陥402の熱伝導度が互いに大きく異なれば、精度良く欠陥402を検出することが可能である。もし対象物401と欠陥402が同じか殆ど同じの熱伝導度を有する場合、例えば図3Bおよび図3Cに示すように対象物と欠陥の間に差異がない場合には、この方法は適用することができない。
【0032】
この方法は熱放射量分布に基づいて欠陥部位における温度異常を検出している。しかしながらその分布は対象物の2次元表面(x−y方向)における熱拡散によって影響を受ける。それゆえ欠陥部位における放射熱量が減少し、それが欠陥部位検出の精度を低下させてしまう。
【0033】
本件発明の欠陥検出方法においては、対象物(鋼板100)の熱放射量の分布の利用に加えてラプラシアン処理が施される。既に述べたように、欠陥部位101におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は、鋼板の正常表面部位102のそれより大きな値として検出される。本発明は、もし欠陥101が検査エリアSに存在すればその欠陥101の部位におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は、他の正常部位のそれに対して大きな値として認識されるはずであるという発想に基づいてなされたものである。
【0034】
ある画素に関するラプラシアンΔxyTは、下記の式(1)で表される。図5に示されるように、式(1)の右辺は、赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データに基づくその画素での表面温度T(x,y)と、その画素の上下左右にそれぞれ位置する各画素の温度、すなわち、T(x+1,y)、T(x,y+1)、T(x−1,y),T(x,y−1)を用いて算出することができる。ここで、hはその画素のサイズである。上述の例においては、ラプラシアンは各1画素に関して計算されているが、複数画素からなるブロックごとに(例えば2画素2画素)計算することもできる。
【0035】
【数1】
【0036】
鋼板内部における熱移動現象は非定常3次元熱伝導方程式を満たすので、ラプラシアンΔxyTは下記の式(2)のように記述できる。ここで、αは材料の熱拡散率である。式(2)の右辺は、鋼板100の表層における熱移動において支配的なz方向(板厚の方向)における熱移動量の収支を示している。すなわち、式(2)の右辺第1項は鋼板表層の蓄熱変化量を表し、第2項はz方向への熱移動による蓄熱変化量を表している。
【0037】
【数2】
【0038】
冷却過程において赤外線サーモグラフィカメラによって取得された検査エリアの熱画像データに基づいて、図6に示されるように温度特性曲線T1およびT2がえられる場合について、以下に述べる。ここで、赤外線サーモグラフィカメラの画素サイズは、欠陥101のサイズの2倍程度、0.4mmに設定されている。
【0039】
温度特性曲線T1は図1Aにおける正常部位102の温度特性を表し、そのT1についてのラプラシアンΔxyTは図7Aに特性線L1として示される。この特性線L1(ラプラシアンΔxyT)は、ノイズによるある程度の変位をともないながらも、その値はほぼ0になっていることを示す。このラプラシアンΔxyTの値が0ということは、鋼板表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第1項の値(冷却中の過程であるので負値)と、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)がほぼ等しいことを意味している。すなわち、熱移動は非常に円滑になされている。
【0040】
温度特性曲線T2は図3Aに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT2についてのラプラシアンΔxyTは図7Aに特性線L2として示される。図3Aに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L2(ラプラシアンΔxyT)の値は正である。このラプラシアンΔxyTの値が正であるということは、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)が、表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)よりも小さいことを意味している。すなわち、この冷却過程は、鋼板深層部からの熱供給より鋼板表面での放熱の方が大きいという状態で進行している。このことは、図8に示されるように欠陥部位の表層における温度特性曲線t2は、正常部位の表層における温度特性曲線t1に比較してより大きな勾配を有する凸型曲線となっていて、欠陥部位における冷却速度がその欠陥周囲の冷却速度より大きいことを意味している。図3Bに示されるタイプの欠陥も図3Aのタイプの欠陥と同様の結果を有する。
【0041】
図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性曲線についてのラプラシアンΔxyTは、図7Aに特性線L3として示す。図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表す温度特性曲線は、図6Aにおいては図示されてないが、図6Aの正常部位の温度特性を表す温度特性曲線T1とほぼ同じである。図3Cあるいは図3Dに示すタイプの欠陥の場合、特性線L3(ラプラシアンΔxyT)の値は負値になる。ラプラシアンΔxyTの負値は、表層における蓄熱量の変化を表している式(2)の右辺第1項の値(冷却中の過程であるので負値)が、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す第2項の値(冷却中の過程であるので負値)より小さいことを意味し、その結果、図8に示す表層における温度分布曲線t3が得られる。これは欠陥部位での放射熱量が欠陥周囲からの放射熱量より大きいため、赤外線サーモグラフィカメラ2により観測される温度が実際の温度より高い値を示すことがその原因である。
【0042】
図1Cおよび図1Dは、鋼板を加熱中に欠陥検出を行うに適したシステムである。図1Cにおいて、赤外線サーモグラフィカメラ2は、加熱装置1によって表面が加熱されている検査エリアSのイメージを撮像し、検査エリアSの2次元熱画像データを取得する。
【0043】
前述したように、鋼板が加熱中に欠陥検出を行う場合にも(後述)、加熱装置1とサーモグラフィカメラ2を、加熱装置1から放射される熱エネルギーが鋼板表面で反射した後にカメラに入射するように配置されている限り、種々の方向と設置位置が適用できる。
【0044】
加熱中に赤外線サーモグラフィカメラによって撮像された検査エリアの熱画像データに基づいて、図6Bに示すような温度特性曲線T1、T2およびT3が得られた場合について以下に説明する。図6Bにおいては、温度は急上昇し、ある温度特性曲線は鋼板100の好ましい温度範囲(100℃未満)を超えた温度に到達している。しかしながらこれは単に、図1Dで示されるように、加熱装置1から放射される熱ネエネルギーが鋼板表面で反射されてカメラに入射するためである。
【0045】
温度特性曲線T1は図1Cにおける正常部位102の温度特性を表し、T1についてのラプラシアンΔxyTは、図7Bに特性線L1として示す。特性線L1(ラプラシアンΔxyT)は、その値がホワイトノイズによる多少のハンチングを伴いながら、ほぼ0であることを示している。このラプラシアンΔxyTの値が0ということは、鋼板表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第1項の値(加熱中の過程であるので正値)と、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)がほぼ等しいことを意味している。すなわち、熱移動は非常に円滑になされている。
【0046】
温度特性曲線T2は図3Aあるいは図3Bに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT2についてのラプラシアンΔxyTは図7Bに特性線L2として示される。図3Aあるいは図3Bに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L2(ラプラシアンΔxyT)の値は負である。これはz方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)が大きくなるためである。
【0047】
温度特性曲線T3は図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT3についてのラプラシアンΔxyTは図7Bに特性線L3として示される。図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L3(ラプラシアンΔxyT)の値は正である。これはz方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)が小さくなるためである。
【0048】
赤外線サーモグラフィカメラ2によって得られた熱画像データがノイズを有するとき、そのノイズを除去するためにガウシアンフィルターを適用することができる。図9は、ノイズを含む熱画像データにラプラシアン処理を施した場合の特性線Lを示す。ラプラシアン値はノイズのために大きくハンチングしている。もう一つの特性線L´はガウシアンフィルター処理を施した後の捏画像データに対してラプラシアン処理を行った場合の結果であり、特性線Lとは異なりハンチングが減少している。ノイズ除去フィルター処理に関してはガウシアンフィルター処理に限らず平滑化を行うものであればどのようなフィルター処理方法も用いることが可能である。ガウシアンフィルター処理については、例えば、特開2004−219177号公報に詳述されている。
【0049】
次の式(3)は、鋼板の表面を加熱した後の冷却中に、赤外線サーモグラフィカメラによって計測される鋼板表面からの放射熱エネルギーを表す。εは鋼板表面の放射率、εmは赤外線サーモグラフィカメラでユーザーにより設定される見かけの放射率、Tは鋼板の表面温度、Tcは赤外線サーモグラフィカメラのセンサー素子の温度、Tmは赤外線サーモグラフィカメラが表示する鋼板の表面温度(赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データによって表わされる表面温度)、σはステファンボルツマン定数を示す。
【0050】
【数3】
【0051】
下記の式(4)は、鋼板100の表面の加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラが計測する放射熱エネルギーを表す。Taは加熱装置1の加熱素子表面の温度を表す。
【0052】
【数4】
【0053】
式(3)と式(4)を比較すると、式(4)においては左辺第1項の熱エネルギー量が付加されている。これは加熱装置1の加熱素子から放射されて鋼板100の表面(検査エリアS)で反射して、赤外線サーモグラフィカメラ2のセンサーに入射する熱エネルギー量を表している(図1Dにおける矢印Eを参照)。加熱装置1の加熱素子表面の温度Taは、鋼板100の表面温度Tの5倍以上もある。それゆえ、加熱中は、冷却中の支配因子である式(4)の左辺第2項が、左辺第2項に対し圧倒的に大きくなる。このことによって、鋼板100の表面の放射量の変化を感度良く検出することが可能となる。
【0054】
上述したように、鋼板が加熱中に欠陥を検出する方法においては、鋼板表面からの放射量の変化を感度良く検出することができるので、図3B、図3Cあるいは図3Dに示されるような欠陥、特に図3Cあるいは図3Dのタイプは、感度良く検出することが可能である。図3Aのタイプの欠陥については、このタイプにおいては放射量の変化が余り大きくないので、その検出は余り容易ではない。すなわち、左辺第2項の熱エネルギー量が主たる変化であるが、その第2項の値の変化は、第1項の値に比べて小さい。
【0055】
上述したように、赤外線サーモグラフィカメラによる熱画像データに基づいた表面温度から求められるラプラシアンΔxyTの絶対値は、欠陥101部位では正常部位に比べて大きくなることがわかる。この知見を利用することで、鋼板の表面欠陥および表層欠陥をラインスピードを減速させることなく、かつ精度良く検出することが可能となる。
【0056】
また、熱拡散効果により、欠陥101によって温度が影響を受ける領域が拡大するので、CCDカメラを用いた光学式欠陥検出装置と比較して画素サイズをより大きく設定することが可能である。
【0057】
図10は、検出装置3として機能するコンピュータシステムの一ハードウェア構成を示す。このハードウェア構成は、CPU51、入力装置52、表示装置53、記憶装置54および通信装置55を有し、それらはそれぞれバス56を介して互いに接続されている。記憶装置54は検出装置3の動作を制御するためのコンピュータプログラムを格納するROM、RAMおよびHD等を有する。CPU51がそのプログラムを実行することによって、検出装置3の機能または処理が実現される。なお、検出装置3は単一のユニットから構成されても良いし、あるいは複数のユニットから構成されても良い。
【0058】
以下に、鋼板が冷却中に欠陥の検出を行う場合の実施例をいくつか示す。図11は、図3Aに示すような欠陥、すなわち表層に異物あるいは空隙が存在する鋼板を試験片として欠陥検出を行った一例を示す。ここでは、鋼板を80℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0059】
図11Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図11Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図11Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図11A、11Bおよび11Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図11Cは、欠陥1101(異物あるいは空隙)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0060】
図12には、図3Bに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な凸部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは1.2mm、カメラと鋼板間の距離は90cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0061】
図12Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図12Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図12Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図12A、12Bおよび12Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図12Cは、欠陥1201(微小な凸部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0062】
図13には、図3Cに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な鋭角的凹部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を80℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.1mm、カメラと鋼板間の距離は10cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0063】
図13Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図13Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図13Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図13A、13Bおよび13Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図13Cは、欠陥1301(微小な鋭角的凹部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図13A、13Bおよび13Cに見られる線状のパターン1302は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0064】
図14には、図3Dに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に付着した異物を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0065】
図14Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図14Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図14Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図14A、14Bおよび14Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図14Cは、欠陥1401(付着した異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図14A、14Bおよび14Cに見られる線状のパターン1402は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0066】
本発明は他のタイプの材料にも適用することができる。図15は、鋼板に代えて、タンクシェルの表層に異物の混入している樹脂製自動車用燃料タンクをサンプルとして欠陥検出を行った例を示す。ここでは、燃料タンクサンプルを60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより燃料タンクサンプルの熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板サンプル表面に対して垂直である。
【0067】
図15Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図15Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図15Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図15A、15Bおよび15Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図14Cは、欠陥1501(表層中の異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図15Aおよび15Bに見られるリング状のパターン1502は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0068】
以下に、鋼板が加熱中に欠陥の検出を行う場合の実施例をいくつか示す。
図16は、図3Bに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な凸部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0069】
図16Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図16Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図16Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図16A、16Bおよび16Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図16Cは、欠陥1601(微小な凸部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0070】
図17は、図3Cに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な鋭角的凹部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を40℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0071】
図17Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図17Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図17Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図17A、17Bおよび17Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図17Cは、欠陥1701(微小な鋭角的凹部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0072】
図18は、図3Dに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に付着した異物を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を90℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0073】
図18Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図18Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図18Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図18A、18Bおよび18Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図18Cは、欠陥1801(付着した異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図18A、18Bおよび18Cに見られる線状のパターン1802は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0074】
本発明は他のタイプの材料にも適用することができる。図19は、鋼板に代えて、タンクシェルの表層に異物の混入している樹脂製自動車用燃料タンクをサンプルとして欠陥検出を行った例を示す。ここでは、燃料タンクサンプルを70℃程度に加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより燃料タンクサンプルの熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0075】
図19Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図19Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図19Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図19A、19Bおよび19Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図19Cは、欠陥1901(表層中の異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図19Aおよび19Bに見られるリング状のパターン1902は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプルの上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0076】
本発明は、材料の表面および表層での伝熱現象の特異点検出に基づくものである。伝熱現象はいかなる材料においても発生し、表面および表層におけるいかなる形状の欠陥もサーモグラフィカメラによって検出可能であり、それゆえ、本発明は、鋼板や樹脂に限らずその他いかなる材料に対しても適用可能となる。
【0077】
図11、12、13、14および15に示す実施例においては、欠陥検出は、鋼板あるいは燃料タンクを同じ場所に置いたまま行なわれたが、既に述べたように、この欠陥検出は移動中の鋼板あるいは搬送中の燃料タンクについても実行可能である。例えば、市販品の赤外線サーモグラフィカメラにおいては、そのインテグレーションタイムは0.01ms程度であり、これは150mpmで走行する鋼板におけるずれとしては0.025mm程度であることを意味し、0.25mm以上のサイズの画素に関しては10%以下となる。すなわち、画像の質はほとんど低下しない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の表面欠陥および/または表層欠陥を検出するのに好適な、材料の欠陥検出方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料が鋼板の場合を例にとると、鋼板の表面や表層には、例えば、ロールによる押し込み疵、溶融亜鉛浴のドロスが亜鉛めっき層に咬みこんで形成されるドロス疵、鋳造中にアルゴンガスが鋳片内に捕捉されて形成される鋼板内部に点在するブローホール欠陥、あるいは亜鉛めっき層厚みの不均一さに起因する表面疵等、種々の欠陥が発生することがある。
【0003】
鋼板におけるこれらの欠陥のうち、他の正常部位と比較して光学的に色が異なって見える欠陥は、作業者による目視検査によって検出されていた。
【0004】
一方、特開2004−219177号公報に開示されているように、鋼板の表面をCCDカメラによって撮影した鋼板表面の画像データに基づいて欠陥検出を行う欠陥検出技術が知られている。
【0005】
しかしながら、作業者による目視検査を行う場合は生産ラインのスピードを減速しなければならないし、またその目視検査の精度は作業者により異なる。さらに、近年ではより高い品質管理レベルが要請されるにつれ、目視で検出するにはあまりに微小な欠陥もその検出が要求されてきている。
【0006】
また、鋼板の表面をCCDカメラで視覚的に検査する方法では、鋼板の表層(表面にではなく)に存在する欠陥については、それらを表面を外側から視認して検出するのは困難なことが多いために、その検出能は高いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−219177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みて着想されたものであり、その目的は、鋼板等の材料の表面および表層のどちらの欠陥に対しても、それが移動中あるいは搬送中であっても、精度良く検出できる検出方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、材料における欠陥が、その表面および表層のどちらの欠陥も検出する方法を使用して検出され、その方法は、下記のステップ、すなわち、材料表面を加熱する工程、材料が加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得する工程、およびその熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出する工程を有する。また、材料の表面および表層のどちらの欠陥も検出するためのシステムは、下記の構成、すなわち、材料の表面を加熱する加熱装置、材料が加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを取得するための赤外線サーモグラフィカメラ、およびその熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出するための検出装置を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、欠陥の検出は、材料表面を加熱し、その材料を加熱中あるいは加熱後の冷却中にその材料表面の熱画像データを赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得し、その熱画像データによって表現された表面の温度についてラプラシアンを算出することによって欠陥を検出することによって実行される。これにより材料が搬送されているあるいは移動している場合でも、その表面欠陥および表層欠陥の両方に関して精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1A2】図1A2は、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1A3】図1A3は、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の一実施形態であって、被検査材料が加熱後の冷却中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1C】図1Cは、本発明の他の一実施形態であって、被検査材料が加熱中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図1D】図1Dは、本発明の他の一実施形態であって、被検査材料が加熱中に検出が行われる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。
【図2A】図2Aは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図2B】図2Bは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図2C】図2Cは、検出装置の画像処理部で実行される画像データ処理の例を示す模式図である。
【図3A】図3Aは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明において検出される欠陥のタイプを示す図である。
【図4】図4は、赤外線サーモグラフィカメラを用いた非破壊検査を説明するための説明図である。
【図5】図5は、ラプラシアン算出のための画素間の関係を説明する説明図である。
【図6A】図6Aは、赤外線サーモグラフィカメラによって取得される加熱後冷却中における熱画像データに基づいた表面温度を表す温度特性曲線を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、赤外線サーモグラフィカメラによって取得される加熱中における熱画像データに基づいた表面温度を表す温度特性曲線を示すグラフである。
【図7A】図7Aは、図6Aの温度特性曲線に対応するラプラシアンを示すグラフである。
【図7B】図7Bは、図6Bの温度特性曲線に対応するラプラシアンを示すグラフである。
【図8】図8は、表層における温度分布曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、熱画像データにガウシアンフィルター処理を施した場合の効果を示すグラフである。
【図10】図10は、検出装置として機能するコンピュータシステムのハードウェア構成を示す図である。
【図11A】図11Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図11B】図11Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図11C】図11Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表層に存在する異物あるいは空隙の場合を示す図である。
【図12A】図12Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図12B】図12Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図12C】図12Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図13A】図13Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図13B】図13Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図13C】図13Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角凹部の場合を示す図である。
【図14A】図14Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図14B】図14Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図14C】図14Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図15A】図15Aは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図15B】図15Bは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図15C】図15Cは、冷却中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図16A】図16Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図16B】図16Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図16C】図16Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な凸部の場合を示す図である。
【図17A】図17Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図17B】図17Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図17C】図17Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面における微小な鋭角的凹部の場合を示す図である。
【図18A】図18Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図18B】図18Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図18C】図18Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が鋼板の表面に付着した異物の場合を示す図である。
【図19A】図19Aは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図19B】図19Bは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【図19C】図19Cは、加熱中における欠陥の検出を示す画像の例であり、その欠陥が自動車用樹脂製燃料タンクの表層における異物の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明をより具体的に材料を鋼板とした場合を例にして説明する。図1Aおよび図1Cにおいて示されるように、本発明における欠陥検出システムは、加熱装置1、赤外線サーモグラフィカメラ2、および検出装置3を有し、鋼板100(例えば厚さ数ミリ程度)の表面および/または表層にある欠陥(以下、簡単に欠陥101と称する)を検出する。
【0013】
図3A−3Dを参照しながら、本発明での検出対象である欠陥101について以下に説明する。鋼板100の表面/表層の欠陥には多くのタイプがあり、例えばその形状も、散砂状、柳葉状、あるいは斑状等を呈する。
【0014】
図3Aにおける欠陥101aは、鋼板100の表層に異物が咬み込まれることによって引き起こされる欠陥、例えば溶融亜鉛浴からのドロスめっき層に咬み込まれて形成されるドロス疵であり、また空隙の形成によって生じた欠陥、例えば鋳造中にアルゴンガスが鋳片内に捕捉され圧延工程で圧延されることで形成される鋼板内部に散在するブローホール欠陥等である。このタイプの欠陥においては、欠陥(異物や空隙)101aの熱伝導率は鋼板自体の熱伝導率に比べて低い。その結果、その欠陥101aの部位における鋼板表面(欠陥に隣接する表面)は、鋼板の正常部位における表面に比べてより迅速に加熱または冷却されることになる。
【0015】
図3Bにおける欠陥101bは、鋼板100の表面に形成された微小な凸部である。亜鉛めっき層の一部が局部的に厚くなった欠陥等がその一例である。このタイプの欠陥においては、その凸部101bでは表面積が大きくなるため、凸部101bは、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。[Sub 0014 bottom]またその欠陥の形状の故に、凸部101bにおける熱放射量は、鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。
【0016】
図3Cにおける欠陥101cは、鋼板100表面に形成された微小な鋭角的凹部である。この欠陥はしばしばロール表面に付着した異物を鋼板に押し付けることで形成される。この欠陥の形状の故に、鋭角凹部101cの領域からの熱放射量は、鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。それによって鋭角的凹部101cの領域は、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。
【0017】
図3Dにおける欠陥101dは、鋼板の表面に付着するダストのような異物である。このタイプの欠陥においてはその異物の放射率は鋼板のそれより高い。その結果、欠陥101dからの熱放射量は鋼板の他の正常表面部位の同じサイズの領域からのそれよりも大きくなる。それによって異物101dの領域は、鋼板の他の正常表面の部位に比べてより迅速に加熱あるいは冷却されることになる。
【0018】
本発明は発明者等の見つけた、下記の事実に基づいてなされたものである。すなわち、赤外線サーモグラフィカメラを用いて取得された熱画像データが表す表面温度に関してそのラプラシアンΔxyTを求めると、ラプラシアンΔxyTの絶対値が欠陥101部位においては鋼板の他の正常表面の部位に比べてより大きくなり、またラプラシアンΔxyTの値が正か負かに基づいて欠陥のタイプが判定できる。
【0019】
図1Aは、本発明の一実施形態に係わる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。図1Cは、本発明の他の一実施形態に係わる鋼板の欠陥検出システムの概略構成を示す。図1Aおよび図1Cにおいて、加熱装置1は検査ライン上の鋼板100の表面を加熱する。鋼板の温度は、常温よりは高く、また品質への影響を避けるため、100℃未満(好ましくは60℃程度)が好ましい。検査ライン上の鋼板は矢印方向に所定のラインスピード(0〜300mpm程度)で搬送されている。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、鋼板が冷却中に欠陥を検出するために適したシステムを示す。図1Aにおいて、赤外線サーモグラフィカメラ2は加熱装置1の下流側に位置している。鋼板は上流で加熱装置1によって加熱され、その鋼板の表面領域は下流側の検査エリアSで熱画像撮影され、検査エリアSの2次元熱画像データが取得される。熱画像とは、検査対象物である鋼板100の表面から放出される放射熱量の分布を表す画像、すなわち表面温度分布を表す画像のことである。赤外線サーモグラフィカメラ2は、赤外線センサーを有する撮像部および信号処理部を有し、各画素についての温度情報を色情報に変換することによって熱画像データを提示する。
【0021】
赤外線サーモグラフィカメラ2を用いて検査エリアSの熱画像データを取得するこのプロセスにおいては、加熱装置1により放射される熱エネルギーが直接にあるいは鋼板100の表面で反射されて赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないようにする必要がある。そのために加熱装置1と赤外線サーモグラフィカメラ2は十分な距離をその間にとるように設置される。空間的制限等で両者の間に十分な距離をとることが難しい場合には、図1A3に示すように、加熱装置1から放射された熱エネルギーが、鋼板100の表面で反射されて赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないように、両者の間に熱遮蔽部材4を設ける方法もある。言うまでもないことであるが、この熱遮蔽部材4は赤外線サーモグラフィカメラ2の視野を遮らないように配置される。 加熱装置1から放射される熱エネルギー赤外線サーモグラフィカメラ2に入射しないようにこのような配置をとることは、例え加熱装置1が鋼板100を加熱後に電源オフされるとしても、電源オフされた加熱装置の余熱からの熱エネルギーがカメラに入射しうる以上、望ましいことである。図1A、図2Aにおけるカメラ2と図1Bにおけるカメラ2は、設定されている方向(カメラの光学システムの光軸方向)と鋼板表面への相対的位置において異なる。本発明においては、カメラと加熱装置1の種々の方向および設置位置が適用可能である。
【0022】
後述の鋼板が加熱中における欠陥検出の場合においても、加熱装置1とサーモグラフィカメラ2が、加熱装置1から放射される熱エネルギーが鋼板表面によって反射されてカメラに入射するように配置されている限り、種々の方向および設置位置が適用可能である。
【0023】
赤外線サーモグラフィカメラ2のフレームレートやインテグレーションタイム等は、その生産ラインのスピードに合うように設定される。市販の赤外線サーモグラフィカメラにおいてはそのインテグレーションタイムは0.01ms程度である。これは150mpmで走行する鋼板におけるずれとしては0.025mm程度であることを意味し、0.25mm以上のサイズの画素に関しては10%以下となる。すなわち、画像の質はほとんど低下しない。
【0024】
パーソナルコンピュータを備えた検出装置3は、赤外線サーモグラフィカメラによって取得された熱画像データが表す表面温度に基づいてラプラシアンΔxyTを求めて欠陥101を検出し、その欠陥のタイプを判定する。前述したように、ラプラシアンΔxyTの絶対値が欠陥101部位においては鋼板の他の正常表面の部位に比べてより大きくなり、またラプラシアンΔxyTの値が正か負かに基づいて欠陥のタイプが判定できる。従って、もし検査エリアSに欠陥があれば、その欠陥位置におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は鋼板の正常表面部位のそれに比べて大きな値を示し、そしてその欠陥のタイプはその値が正か負かによって決まる。
【0025】
検出装置3は入力部301を有し、赤外線サーモグラフィカメラ2により取得された熱画像データがそこに入力される。
【0026】
検出装置3の画像処理部302は、入力部301入力された熱画像データを、あらかじめ決められた画像処理手順に従って処理するためのものである。図2A、2Bおよび2Cは、検出装置3の画像処理部302において実行される画像データ処理の一例を示す模式図である。図2Aは入力部301へ入力された熱画像データを示す。図2Bは温度をラプラシアン値に変換したラプラシアン処理済み熱画像データを示す。図2Cはそのラプラシアン値熱画像データを二値化処理した画像を示す。ラプラシアン処理は、熱画像データ(図2A)において温度ムラによって生じる外乱を減少するために実行され、また後述されるように、鋼板100の表面および表層において生ずる熱バランスを検出するためにも実行される。ここで、表層とは材料の表面に非常に近い部分であり、経験的には鋼板の厚みが1−2mmの場合では表面から板厚の1/4程度の深さまでの範囲が表層といえる。
【0027】
検査エリアSにおいて、欠陥101部位ではラプラシアンΔxyTの絶対値が大きく検出されるので、ラプラシアン処理は欠陥101が抽出された画像を与えることができるといえる(図2Cの黒色部分を参照)。また欠陥101のタイプは、ラプラシアンΔxyTが正か負かによって判定することができる。
【0028】
検出装置3の出力部303は、画像処理部302によって処理された熱画像データを出力しモニター(図示せず)上に表示する。
【0029】
鋼板の表面および/または表層における欠陥を検出する本発明の方法を以下に詳細に述べる。
【0030】
赤外線サーモグラフィカメラは、図4に示すように検査対象物401の内部に存在する内部欠陥402(例えば異物の混入あるいは空隙の形成)を検出するのに用いることができる。一般に検査対象物401の熱伝導度と欠陥402の熱伝導度は異なるので、検査対象物401の表面からの熱放射量は、欠陥402の位置の表面からの放射熱量とは異なる。その結果、検査対象物401の内部にある欠陥402は、その対象物402の表面上で放射熱量分布を経時的に測定することにより検出することができる。
【0031】
もし対象物401の熱伝導度と欠陥402の熱伝導度が互いに大きく異なれば、精度良く欠陥402を検出することが可能である。もし対象物401と欠陥402が同じか殆ど同じの熱伝導度を有する場合、例えば図3Bおよび図3Cに示すように対象物と欠陥の間に差異がない場合には、この方法は適用することができない。
【0032】
この方法は熱放射量分布に基づいて欠陥部位における温度異常を検出している。しかしながらその分布は対象物の2次元表面(x−y方向)における熱拡散によって影響を受ける。それゆえ欠陥部位における放射熱量が減少し、それが欠陥部位検出の精度を低下させてしまう。
【0033】
本件発明の欠陥検出方法においては、対象物(鋼板100)の熱放射量の分布の利用に加えてラプラシアン処理が施される。既に述べたように、欠陥部位101におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は、鋼板の正常表面部位102のそれより大きな値として検出される。本発明は、もし欠陥101が検査エリアSに存在すればその欠陥101の部位におけるラプラシアンΔxyTの絶対値は、他の正常部位のそれに対して大きな値として認識されるはずであるという発想に基づいてなされたものである。
【0034】
ある画素に関するラプラシアンΔxyTは、下記の式(1)で表される。図5に示されるように、式(1)の右辺は、赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データに基づくその画素での表面温度T(x,y)と、その画素の上下左右にそれぞれ位置する各画素の温度、すなわち、T(x+1,y)、T(x,y+1)、T(x−1,y),T(x,y−1)を用いて算出することができる。ここで、hはその画素のサイズである。上述の例においては、ラプラシアンは各1画素に関して計算されているが、複数画素からなるブロックごとに(例えば2画素2画素)計算することもできる。
【0035】
【数1】
【0036】
鋼板内部における熱移動現象は非定常3次元熱伝導方程式を満たすので、ラプラシアンΔxyTは下記の式(2)のように記述できる。ここで、αは材料の熱拡散率である。式(2)の右辺は、鋼板100の表層における熱移動において支配的なz方向(板厚の方向)における熱移動量の収支を示している。すなわち、式(2)の右辺第1項は鋼板表層の蓄熱変化量を表し、第2項はz方向への熱移動による蓄熱変化量を表している。
【0037】
【数2】
【0038】
冷却過程において赤外線サーモグラフィカメラによって取得された検査エリアの熱画像データに基づいて、図6に示されるように温度特性曲線T1およびT2がえられる場合について、以下に述べる。ここで、赤外線サーモグラフィカメラの画素サイズは、欠陥101のサイズの2倍程度、0.4mmに設定されている。
【0039】
温度特性曲線T1は図1Aにおける正常部位102の温度特性を表し、そのT1についてのラプラシアンΔxyTは図7Aに特性線L1として示される。この特性線L1(ラプラシアンΔxyT)は、ノイズによるある程度の変位をともないながらも、その値はほぼ0になっていることを示す。このラプラシアンΔxyTの値が0ということは、鋼板表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第1項の値(冷却中の過程であるので負値)と、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)がほぼ等しいことを意味している。すなわち、熱移動は非常に円滑になされている。
【0040】
温度特性曲線T2は図3Aに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT2についてのラプラシアンΔxyTは図7Aに特性線L2として示される。図3Aに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L2(ラプラシアンΔxyT)の値は正である。このラプラシアンΔxyTの値が正であるということは、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)が、表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第2項の値(冷却中の過程であるので負値)よりも小さいことを意味している。すなわち、この冷却過程は、鋼板深層部からの熱供給より鋼板表面での放熱の方が大きいという状態で進行している。このことは、図8に示されるように欠陥部位の表層における温度特性曲線t2は、正常部位の表層における温度特性曲線t1に比較してより大きな勾配を有する凸型曲線となっていて、欠陥部位における冷却速度がその欠陥周囲の冷却速度より大きいことを意味している。図3Bに示されるタイプの欠陥も図3Aのタイプの欠陥と同様の結果を有する。
【0041】
図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性曲線についてのラプラシアンΔxyTは、図7Aに特性線L3として示す。図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表す温度特性曲線は、図6Aにおいては図示されてないが、図6Aの正常部位の温度特性を表す温度特性曲線T1とほぼ同じである。図3Cあるいは図3Dに示すタイプの欠陥の場合、特性線L3(ラプラシアンΔxyT)の値は負値になる。ラプラシアンΔxyTの負値は、表層における蓄熱量の変化を表している式(2)の右辺第1項の値(冷却中の過程であるので負値)が、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す第2項の値(冷却中の過程であるので負値)より小さいことを意味し、その結果、図8に示す表層における温度分布曲線t3が得られる。これは欠陥部位での放射熱量が欠陥周囲からの放射熱量より大きいため、赤外線サーモグラフィカメラ2により観測される温度が実際の温度より高い値を示すことがその原因である。
【0042】
図1Cおよび図1Dは、鋼板を加熱中に欠陥検出を行うに適したシステムである。図1Cにおいて、赤外線サーモグラフィカメラ2は、加熱装置1によって表面が加熱されている検査エリアSのイメージを撮像し、検査エリアSの2次元熱画像データを取得する。
【0043】
前述したように、鋼板が加熱中に欠陥検出を行う場合にも(後述)、加熱装置1とサーモグラフィカメラ2を、加熱装置1から放射される熱エネルギーが鋼板表面で反射した後にカメラに入射するように配置されている限り、種々の方向と設置位置が適用できる。
【0044】
加熱中に赤外線サーモグラフィカメラによって撮像された検査エリアの熱画像データに基づいて、図6Bに示すような温度特性曲線T1、T2およびT3が得られた場合について以下に説明する。図6Bにおいては、温度は急上昇し、ある温度特性曲線は鋼板100の好ましい温度範囲(100℃未満)を超えた温度に到達している。しかしながらこれは単に、図1Dで示されるように、加熱装置1から放射される熱ネエネルギーが鋼板表面で反射されてカメラに入射するためである。
【0045】
温度特性曲線T1は図1Cにおける正常部位102の温度特性を表し、T1についてのラプラシアンΔxyTは、図7Bに特性線L1として示す。特性線L1(ラプラシアンΔxyT)は、その値がホワイトノイズによる多少のハンチングを伴いながら、ほぼ0であることを示している。このラプラシアンΔxyTの値が0ということは、鋼板表層における蓄熱変化量を表す式(2)右辺第1項の値(加熱中の過程であるので正値)と、z方向熱移動による蓄熱変化量を表す右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)がほぼ等しいことを意味している。すなわち、熱移動は非常に円滑になされている。
【0046】
温度特性曲線T2は図3Aあるいは図3Bに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT2についてのラプラシアンΔxyTは図7Bに特性線L2として示される。図3Aあるいは図3Bに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L2(ラプラシアンΔxyT)の値は負である。これはz方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)が大きくなるためである。
【0047】
温度特性曲線T3は図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥部位における温度特性を表し、そのT3についてのラプラシアンΔxyTは図7Bに特性線L3として示される。図3Cあるいは図3Dに示されるタイプの欠陥検出の場合、特性線L3(ラプラシアンΔxyT)の値は正である。これはz方向熱移動による蓄熱変化量を表す式(2)の右辺第2項の値(加熱中の過程であるので正値)が小さくなるためである。
【0048】
赤外線サーモグラフィカメラ2によって得られた熱画像データがノイズを有するとき、そのノイズを除去するためにガウシアンフィルターを適用することができる。図9は、ノイズを含む熱画像データにラプラシアン処理を施した場合の特性線Lを示す。ラプラシアン値はノイズのために大きくハンチングしている。もう一つの特性線L´はガウシアンフィルター処理を施した後の捏画像データに対してラプラシアン処理を行った場合の結果であり、特性線Lとは異なりハンチングが減少している。ノイズ除去フィルター処理に関してはガウシアンフィルター処理に限らず平滑化を行うものであればどのようなフィルター処理方法も用いることが可能である。ガウシアンフィルター処理については、例えば、特開2004−219177号公報に詳述されている。
【0049】
次の式(3)は、鋼板の表面を加熱した後の冷却中に、赤外線サーモグラフィカメラによって計測される鋼板表面からの放射熱エネルギーを表す。εは鋼板表面の放射率、εmは赤外線サーモグラフィカメラでユーザーにより設定される見かけの放射率、Tは鋼板の表面温度、Tcは赤外線サーモグラフィカメラのセンサー素子の温度、Tmは赤外線サーモグラフィカメラが表示する鋼板の表面温度(赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データによって表わされる表面温度)、σはステファンボルツマン定数を示す。
【0050】
【数3】
【0051】
下記の式(4)は、鋼板100の表面の加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラが計測する放射熱エネルギーを表す。Taは加熱装置1の加熱素子表面の温度を表す。
【0052】
【数4】
【0053】
式(3)と式(4)を比較すると、式(4)においては左辺第1項の熱エネルギー量が付加されている。これは加熱装置1の加熱素子から放射されて鋼板100の表面(検査エリアS)で反射して、赤外線サーモグラフィカメラ2のセンサーに入射する熱エネルギー量を表している(図1Dにおける矢印Eを参照)。加熱装置1の加熱素子表面の温度Taは、鋼板100の表面温度Tの5倍以上もある。それゆえ、加熱中は、冷却中の支配因子である式(4)の左辺第2項が、左辺第2項に対し圧倒的に大きくなる。このことによって、鋼板100の表面の放射量の変化を感度良く検出することが可能となる。
【0054】
上述したように、鋼板が加熱中に欠陥を検出する方法においては、鋼板表面からの放射量の変化を感度良く検出することができるので、図3B、図3Cあるいは図3Dに示されるような欠陥、特に図3Cあるいは図3Dのタイプは、感度良く検出することが可能である。図3Aのタイプの欠陥については、このタイプにおいては放射量の変化が余り大きくないので、その検出は余り容易ではない。すなわち、左辺第2項の熱エネルギー量が主たる変化であるが、その第2項の値の変化は、第1項の値に比べて小さい。
【0055】
上述したように、赤外線サーモグラフィカメラによる熱画像データに基づいた表面温度から求められるラプラシアンΔxyTの絶対値は、欠陥101部位では正常部位に比べて大きくなることがわかる。この知見を利用することで、鋼板の表面欠陥および表層欠陥をラインスピードを減速させることなく、かつ精度良く検出することが可能となる。
【0056】
また、熱拡散効果により、欠陥101によって温度が影響を受ける領域が拡大するので、CCDカメラを用いた光学式欠陥検出装置と比較して画素サイズをより大きく設定することが可能である。
【0057】
図10は、検出装置3として機能するコンピュータシステムの一ハードウェア構成を示す。このハードウェア構成は、CPU51、入力装置52、表示装置53、記憶装置54および通信装置55を有し、それらはそれぞれバス56を介して互いに接続されている。記憶装置54は検出装置3の動作を制御するためのコンピュータプログラムを格納するROM、RAMおよびHD等を有する。CPU51がそのプログラムを実行することによって、検出装置3の機能または処理が実現される。なお、検出装置3は単一のユニットから構成されても良いし、あるいは複数のユニットから構成されても良い。
【0058】
以下に、鋼板が冷却中に欠陥の検出を行う場合の実施例をいくつか示す。図11は、図3Aに示すような欠陥、すなわち表層に異物あるいは空隙が存在する鋼板を試験片として欠陥検出を行った一例を示す。ここでは、鋼板を80℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0059】
図11Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図11Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図11Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図11A、11Bおよび11Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図11Cは、欠陥1101(異物あるいは空隙)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0060】
図12には、図3Bに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な凸部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは1.2mm、カメラと鋼板間の距離は90cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0061】
図12Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図12Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図12Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図12A、12Bおよび12Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図12Cは、欠陥1201(微小な凸部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0062】
図13には、図3Cに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な鋭角的凹部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を80℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.1mm、カメラと鋼板間の距離は10cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0063】
図13Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図13Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図13Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図13A、13Bおよび13Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図13Cは、欠陥1301(微小な鋭角的凹部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図13A、13Bおよび13Cに見られる線状のパターン1302は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0064】
図14には、図3Dに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に付着した異物を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板表面に対して垂直である。
【0065】
図14Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図14Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図14Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図14A、14Bおよび14Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図14Cは、欠陥1401(付着した異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図14A、14Bおよび14Cに見られる線状のパターン1402は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0066】
本発明は他のタイプの材料にも適用することができる。図15は、鋼板に代えて、タンクシェルの表層に異物の混入している樹脂製自動車用燃料タンクをサンプルとして欠陥検出を行った例を示す。ここでは、燃料タンクサンプルを60℃程度に加熱し、その10秒経過後の冷却中に赤外線サーモグラフィカメラにより燃料タンクサンプルの熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmであり、赤外線サーモグラフィカメラの光軸は鋼板サンプル表面に対して垂直である。
【0067】
図15Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図15Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図15Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図15A、15Bおよび15Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図14Cは、欠陥1501(表層中の異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図15Aおよび15Bに見られるリング状のパターン1502は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0068】
以下に、鋼板が加熱中に欠陥の検出を行う場合の実施例をいくつか示す。
図16は、図3Bに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な凸部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を60℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0069】
図16Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図16Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図16Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図16A、16Bおよび16Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図16Cは、欠陥1601(微小な凸部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0070】
図17は、図3Cに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に形成された微小な鋭角的凹部を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を40℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0071】
図17Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図17Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図17Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図17A、17Bおよび17Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図17Cは、欠陥1701(微小な鋭角的凹部)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。
【0072】
図18は、図3Dに示すような欠陥、すなわち、鋼板表面に付着した異物を有する鋼板を試験片として欠陥検出を行った例を示す。ここでは、鋼板を90℃程度にまで加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより鋼板の熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0073】
図18Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図18Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図18Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図18A、18Bおよび18Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図18Cは、欠陥1801(付着した異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図18A、18Bおよび18Cに見られる線状のパターン1802は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプル上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0074】
本発明は他のタイプの材料にも適用することができる。図19は、鋼板に代えて、タンクシェルの表層に異物の混入している樹脂製自動車用燃料タンクをサンプルとして欠陥検出を行った例を示す。ここでは、燃料タンクサンプルを70℃程度に加熱中に、赤外線サーモグラフィカメラにより燃料タンクサンプルの熱画像データを取得した。赤外線サーモグラフィカメラの画素数は256256、画素サイズは0.8mm、カメラと鋼板間の距離は60cmである。加熱装置の加熱の方向と鋼板表面のなす角度は60°、カメラの光軸方向と鋼板表面のなす角度は90°である。
【0075】
図19Aは赤外線サーモグラフィカメラにより取得された熱画像データ、図19Bはその熱画像データをラプラシアン処理した画像、図19Cはラプラシアン処理された画像データを2値化処理した画像である。図19A、19Bおよび19Cは、実際に得られた画像(ズームアップ画像)を模式的に図示したものである。図19Cは、欠陥1901(表層中の異物)が抽出されて明瞭に見えている画像を示す。図19Aおよび19Bに見られるリング状のパターン1902は、あらかじめ目視によって検出した欠陥の位置を示すために試験サンプルの上に描かれたマーキングラインであり、誤検出の類ではない。
【0076】
本発明は、材料の表面および表層での伝熱現象の特異点検出に基づくものである。伝熱現象はいかなる材料においても発生し、表面および表層におけるいかなる形状の欠陥もサーモグラフィカメラによって検出可能であり、それゆえ、本発明は、鋼板や樹脂に限らずその他いかなる材料に対しても適用可能となる。
【0077】
図11、12、13、14および15に示す実施例においては、欠陥検出は、鋼板あるいは燃料タンクを同じ場所に置いたまま行なわれたが、既に述べたように、この欠陥検出は移動中の鋼板あるいは搬送中の燃料タンクについても実行可能である。例えば、市販品の赤外線サーモグラフィカメラにおいては、そのインテグレーションタイムは0.01ms程度であり、これは150mpmで走行する鋼板におけるずれとしては0.025mm程度であることを意味し、0.25mm以上のサイズの画素に関しては10%以下となる。すなわち、画像の質はほとんど低下しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面温度を時間とともに変化させる工程と、
前記材料の表面温度の変化中に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項2】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面を加熱する工程と、
前記加熱工程の後に前記材料の表面が冷却されている間に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項3】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面を加熱する工程と、
前記加熱工程において前記材料の表面が加熱されている間に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記検出する工程が、更に、欠陥があるかどうかを判定するために前記算出されたラプラシアンの絶対値を計算することを含む、請求項1、2または3に記載の材料の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記検出する工程が、更に、欠陥のタイプを判定するために、前記算出されたラプラシアンの値を計算して該値が正か負かを判定することを含む、請求項1、2または3に記載の材料の欠陥検出方法。
【請求項6】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面温度を変化させるための温度変更装置と、
前記材料の表面温度の変化中に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項7】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面を加熱する加熱装置と、
前記材料の表面が冷却されている間に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項8】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面を加熱する加熱装置と、
前記材料の表面が加熱されている間に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項9】
前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラとが、前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記赤外線サーモグラフィカメラに入射しないように配置されている、請求項7に記載の材料の欠陥検出システム。
【請求項10】
前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記赤外線サーモグラフィカメラに入射しないように、熱遮蔽部材が、前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラの間に設置されている、請求項7に記載の材料の欠陥検出システム。
【請求項11】
前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラとが、前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記材料表面で反射されて前記赤外線サーモグラフィカメラに入射するように配置されている、請求項8に記載の材料の欠陥検出システム。
【請求項1】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面温度を時間とともに変化させる工程と、
前記材料の表面温度の変化中に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項2】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面を加熱する工程と、
前記加熱工程の後に前記材料の表面が冷却されている間に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項3】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するための方法であって、
前記材料の表面を加熱する工程と、
前記加熱工程において前記材料の表面が加熱されている間に赤外線サーモグラフィカメラを用いて前記材料表面の熱画像データを取得する工程と、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する工程とを有することを特徴とする材料の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記検出する工程が、更に、欠陥があるかどうかを判定するために前記算出されたラプラシアンの絶対値を計算することを含む、請求項1、2または3に記載の材料の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記検出する工程が、更に、欠陥のタイプを判定するために、前記算出されたラプラシアンの値を計算して該値が正か負かを判定することを含む、請求項1、2または3に記載の材料の欠陥検出方法。
【請求項6】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面温度を変化させるための温度変更装置と、
前記材料の表面温度の変化中に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項7】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面を加熱する加熱装置と、
前記材料の表面が冷却されている間に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項8】
材料の表面および表層の両方における欠陥を検出するためのシステムであって、
前記材料の表面を加熱する加熱装置と、
前記材料の表面が加熱されている間に前記材料表面の熱画像データを取得する赤外線サーモグラフィカメラと、
前記熱画像データによって表される前記表面温度についてのラプラシアンを算出することによって前記欠陥を検出する検出装置とを有することを特徴とする材料の欠陥検出システム。
【請求項9】
前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラとが、前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記赤外線サーモグラフィカメラに入射しないように配置されている、請求項7に記載の材料の欠陥検出システム。
【請求項10】
前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記赤外線サーモグラフィカメラに入射しないように、熱遮蔽部材が、前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラの間に設置されている、請求項7に記載の材料の欠陥検出システム。
【請求項11】
前記加熱装置と前記赤外線サーモグラフィカメラとが、前記加熱装置から放射される熱エネルギーが前記材料表面で反射されて前記赤外線サーモグラフィカメラに入射するように配置されている、請求項8に記載の材料の欠陥検出システム。
【図1A】
【図1A2】
【図1A3】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図1A2】
【図1A3】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【公表番号】特表2011−527438(P2011−527438A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517394(P2011−517394)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076598
【国際公開番号】WO2010/033113
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076598
【国際公開番号】WO2010/033113
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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