説明

【課題】載置面Gの傾斜角度に応じて自在に角度調整することができ、しかも、強度的にも優れた束を提供する。
【解決手段】本発明は、所定の厚みで球面状に突出する凸部2を有し、該凸部2の中心にて内外を貫通する通孔3が形成される基台1と、大引や根太といった横架材を載置するための載置部10が上方に設けられ、下方が通孔3に遊挿される支柱6とを備える束であって、支柱6は、基台1の凸部2の外面が内接する第1の座金19と、該凸部2の内面に内接する第2の座金22と、該凸部2を第1の座金19と第2の座金22とで挟持することにより、支柱6を基台1に締め付け固定するための締結手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大引や根太といった横架材を支持するための束であって、その載置面が傾斜しているとしても、横架材を適正な姿勢(通常は水平)に支持することができる機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅にあっては、ベタ基礎であれば、水平に施工されたコンクリート面に束を載置するようにし、また、布基礎であれば、上面が水平となるように束石を地面に載置し、その上面に束を載置するようにしているから、特に問題は生じにくいが、例えば近年流行のウッドデッキにあっては、束の載置面として水平が確保できない場合がある。
【0003】
そのような場合に適した束としては、図4に示すようなものが知られている(特許文献1)。かかる束は、ドーム形状の基台51と、ネジ軸52と、該ネジ軸52に設けられた支持プレート53と、基台51の上面に形成され、ネジ軸52が隙間を空けて挿入される丸穴54と、該丸穴54に挿入されたネジ軸52に基台51の上面側から螺合してネジ軸52を基台51に支持させる締付ナット55と、ネジ軸52に嵌められ、上面が締付ナット55と当接し、傾斜した底面が基台51の上面に当接する座金56と、基台51の丸穴54から挿通されたネジ軸52に螺合するナット57とを備えるものであり、傾斜した載置面Gであっても、根太N及びその上に載置される床材Yを水平に支持することができるとされている。
【特許文献1】特許第3806112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の束は、座金56の底面の傾斜角度を異なるものにわざわざ変更しなければ、基台51の傾斜角度を変更することができないという問題がある。ということで、上記特許文献1記載の束は、載置面Gの傾斜角度に応じてわざわざ座金56を取り替えなければならず、また、載置面Gの傾斜角度に応じて底面の傾斜角度が異なる各種の座金56を用意しておかなければならないという問題がある。
【0005】
このような問題は、わざわざ座金56を取り替えるようなことをしなければ問題とならないが、そうすると、座金56の底面の傾斜角度と載置面Gの傾斜角度が一致しない場合、座金56が基台51の外面と片当たりするため、偏荷重がかかったり、基台51の外面に傷が入る等、強度面で好ましくない事態が起こり得る。この問題は、ナット57についても然りである。傾斜した載置面Gの場合、ナット57は、常時、基台51の内面と片当たりしているので、やはり、偏荷重がかかったり、基台51の内面に傷が入る等、強度面で好ましくない事態が起こり得る。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、載置面の傾斜角度に応じて自在に角度調整することができ、しかも、強度的にも優れた束を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、所定の厚みで球面状に突出する凸部2を有し、該凸部2の中心にて内外を貫通する通孔3が形成される基台1と、大引や根太といった横架材を載置するための載置部10が上方に設けられ、下方が通孔3に遊挿される支柱6とを備える束であって、支柱6は、基台1の凸部2の外面が内接する第1の座金19と、該凸部2の内面に内接する第2の座金22と、該凸部2を第1の座金19と第2の座金22とで挟持することにより、支柱6を基台1に締め付け固定するための締結手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、第1及び第2の座金19,22の、基台1の凸部2に対する位置を(例えば摺動によって)変えるだけで、自在に角度調整することができ、また、第1の座金19は、載置面Gの傾斜角度に関わらず、基台1の凸部2の外面と環状に当接し、大引や根太といった横架材から支柱6を介して受ける荷重は、第1の座金19で均一に分散されて基台1(の凸部2)に伝達されるため、強度的に優れたものとなる。
【0009】
また、本発明は、第1の座金19は、支柱6に挿通される環状の平面部20と、該平面部20の周縁からテーパ状に垂下するテーパ部21とからなる円錐台形状を有し、バネ性を有する構成を採用することができる。
【0010】
かかる構成によれば、締め付けに伴い、テーパ部21が拡開するように撓んで、基台1の凸部2の外面との接触面積が増えるようになる。従って、横架材から支柱6を介して受ける荷重は、第1の座金19でより均一に分散されて基台1(の凸部2)に伝達されるため、より強度的に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0011】
以上の如く、本発明によれば、載置面の傾斜角度に応じて自在に角度調整することができ、しかも、強度的にも優れた束を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る束の一実施形態として、ウッドデッキ用の鋼製束について、図1〜図3を参酌しつつ説明する。
【0013】
本実施形態に係るウッドデッキ用の鋼製束は、所定の厚みで球面状に突出する凸部2を有し、該凸部2の中心にて内外を貫通する通孔3が形成される基台1と、横架材(図示しない)を載置するための載置部10が上方に設けられ、下方が通孔3に遊挿される支柱6とを備え、基台1に対して支柱6が傾斜可能に構成されている。
【0014】
基台1は、SPHC(熱間圧延軟鋼板)であり、矩形状を呈し、プレス加工により凸部2を形成するようにしている。そのため、凸部2の厚みは、基台1のその他の部分(平面部4)と略同じ厚みとなっている。また、ネジ、ビス、コンクリート釘等で載置面Gに固定すべく、これらのものを通すための通孔5が平面部4の適所に複数形成されている。
【0015】
凸部2の中心に形成された通孔3は、支柱6よりも大径の円孔となっており、このため、支柱6は、揺動可能にして通孔3に遊挿される。また、通孔3は、凸部2の曲率中心を中心として、約20°の角度範囲でテーパ状に形成されており、従って、支柱6は、基台1に対して約20°の角度範囲で揺動可能であり、そのため、施工時、支柱6が垂直となるようにすることを前提とすると、基台1は、載置面Gの傾斜角度が10°まで対応可能となっている。
【0016】
支柱6は、一端に頭部8を有し、それ以外は全長に亘ってネジ部9となっているボルト7によって柱が構成される。該ボルト7は、SWCH(冷間圧造用炭素鋼線)であり、頭部8を下方にして、基台1の通孔3に下方から上方に向けて挿通される。従って、ボルト7の頭部8は、基台1の凸部2の内部空間に収容され、また、頭部8は、凸部2の通孔3よりも大径であるため、ボルト7は、基台1に対する上方への抜け止めがなされている。
【0017】
載置部10は、受け部材11と、該受け部材11の下面に取り付けられ、ボルト7のネジ部9に螺合するナット16とを備える。受け部材11は、基台1と同様、SPHC(熱間圧延軟鋼板)であり、矩形状を呈し、プレス加工により略L字状に屈曲されている。そのため、受け部材11は、横架材の下面に当接する水平片12と、横架材の側面に当接する垂直片13とからなる。また、水平片12や垂直片13には、載置された横架材を固定すべく、ネジ、ビス、釘等を通すための通孔15が適所に複数形成されている。
【0018】
ナット16は、ボルト7と同様、SWCH(冷間圧造用炭素鋼線)であり、受け部材11の水平片12の下面に溶接によって固定され、ナット16を回してボルト7の長手方向に対する位置を変更することにより、載置部10の高さ位置を変更することができる。尚、載置部10を低くする際、ボルト7と受け部材11とが干渉しないよう、受け部材11(の水平片12)には、ボルト7を挿通可能とする通孔14が形成されている。
【0019】
また、載置部10は、受け部材11のうち、横架材と接する部分にゴムシート17を備える。具体的には、ゴムシート17が受け部材11の水平片12の上面及び垂直片13の内面に跨って付設され、横架材と受け部材11との間にゴムシート17が介在するようにしている。
【0020】
本実施形態に係るウッドデッキ用の鋼製束は、以上のように、基台1と、支柱6とを主たる構成要素とするが、特徴的なことは、非平面状からなり、凹部を備えて基台1の凸部2の一部を収容可能な座金(第1の座金)19と、同じく非平面状からなり、凸部を備えて凸部2内に収容される環状の座金(第2の座金)20と、第1の座金19と第2の座金22とで凸部2を挟持することにより、支柱6を基台1に締め付け固定するための締結手段とを支柱6が備えることである。
【0021】
第1の座金19は、ボルト7のうち、基台1の凸部2から突出している部分に挿通される。第1の座金19は、環状の平面部20と、該平面部20の周縁からテーパ状に垂下するテーパ部21とからなる円錐台形状を有し、凸部2の一部に覆い被さり、平面部20の内面と凸部2の外面とは接触せずに、テーパ部21の内面と凸部2の外面とが当接するようになっている。しかも、テーパ部21は、凸部2の接線と略一致する角度設定となっているため、第1の座金19の内面に凸部2の外面が内接する(言い換えれば、凸部2の外面に第1の座金19の内面が外接する)格好となる。
【0022】
また、第1の座金19は、SPHC(冷間圧延鋼板)であり、板厚が基台1よりも薄く(本実施形態においては、1.2mmであるが、0.8〜1.5mmであればよい)なっており、バネ性を有して、一種の皿バネ(バネ座金)を構成する。
【0023】
第2の座金22は、ボルト7のうち、基台1の凸部2内に挿通された部分に挿通される。第2の座金22は、凸部2と同様、球面状であり、曲率半径が凸部2よりも僅かに小さいことから、凸部2の内面に第2の座金22の外面が内接する(言い換えれば、第2の座金22の外面に凸部2の内面が外接する)格好となる。
【0024】
また、第2の座金22は、第1の座金19と同様、SPHC(冷間圧延鋼板)であり、板厚が基台1よりも薄く(本実施形態においては、1.2mmであるが、0.8〜1.5mmであればよい)なっている。
【0025】
第1及び第2の座金19,22は、ともに凸部2の通孔3よりも大径であり、従って、第1の座金19は、下方への移動が規制され、第2の座金22は、基台1に対する上方への抜け止めがなされている。加えて、第2の座金22は、ボルト7の頭部8よりも大径であり、従って、ボルト7は、第2の座金22に対する上方への抜け止めがなされている。
【0026】
締結手段は、ボルト7(より詳しくは、頭部8及びネジ部9)と、該ボルト7のネジ部9に螺合する締付ナット18とによって構成される。締付ナット18は、ナット16と同様、SWCH(冷間圧造用炭素鋼線)であり、ボルト7のネジ部9のうち、基台1の凸部2から突出している部分に螺合する。
【0027】
また、締付ナット18は、第1の座金19の平面部20と同じ程度の大きさであり、従って、締付ナット18をねじ込んで、下方側に移動させると、第1の座金19の平面部20に着座する。
【0028】
このように、第1の座金19は、締付ナット18と基台1の凸部2との間に介在し、第2の座金22は、凸部2とボルト7の頭部8との間に介在し、締付ナット18をボルト7の頭部8側に向けて締め付けていくと、第1の座金19と第2の座金22とが凸部2を内外から挟持し、支柱6が基台1に締め付け固定されるようになっている。
【0029】
本実施形態に係るウッドデッキ用の鋼製束は、載置面Gが通常は水平である場合が多いことから、出荷時は、図2に示すような直立姿勢とされて、支柱6が基台1に締め付け固定されている。また、このような姿勢が恒久的に維持されるよう、図示はしないが、第1の座金19から基台1の凸部2にかけて(あるいは、凸部2を貫通してさらに第2の座金22に至るまで)、若しくは、第2の座金22から凸部2にかけて(あるいは、凸部2を貫通してさらに第1の座金19に至るまで)、ネジやビス等の固定手段が打ち込まれ、第1の座金19や第2の座金22と凸部2との相対変位を規制し、それにより、基台1に対する支柱6の傾動を規制するものである。
【0030】
しかしながら、図3に示すような、載置面Gが傾斜している場合には、基台1を載置面Gに合わせて傾斜させなければならない。その場合は、まず、締付ナット18を一旦緩め、基台1と支柱6との固定状態を解除する。その上で、支柱6に対して基台1の傾斜角度を載置面Gの傾斜角度に応じて変更し(別の言い方をすれば、基台1に対して支柱6の傾斜角度を載置面Gの傾斜角度に応じて変更し)、その状態で、締付ナット18を再度締め付け、再び支柱6を基台1に締め付け固定する。
【0031】
このとき(図2に示すような直立姿勢とすべく、支柱6を基台1に締め付け固定するときもそうであるが)、第1の座金19は、締付ナット18から受ける締付力に伴い、テーパ部21が拡開するように撓んで、基台1の凸部2の外面との接触面積が増えるようになる。即ち、第1の座金19と凸部2とは環状に当接するが、その環状面積が増えるようになる。従って、大引や根太といった横架材から支柱6を介して受ける荷重は、第1の座金19でより均一に分散されて基台1(の凸部2)に伝達されるため、より強度的に優れたものとなる。
【0032】
尚、図3に示すような、傾斜した載置面Gに合わせて角度調整した後、その姿勢を恒久的に維持するために、図2に示すような直立姿勢と同様、ネジやビス等の固定手段を用いて、第1の座金19や第2の座金22と凸部2との相対変位を規制し、それにより、基台1に対する支柱6の傾動を規制するようにしてもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るウッドデッキ用の鋼製束によれば、載置面Gの傾斜角度に応じて自在に角度調整することができる。しかも、従来のように、座金やナットが基台に片当たりすることもないので、偏荷重がかかったり、基台1の凸部2の外面や内面に傷が入る等、強度面で好ましくない事態も起こらず、強度的にも優れたものとなる。
【0034】
尚、本発明に係る束は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、ウッドデッキ用としての束について説明したが、本発明は、広く一般的な束にも適用可能である。また、鋼製ではなく、樹脂製であってもよいし、その材質は、特に限定されない。
【0036】
また、上記実施形態においては、一端に頭部8を備えるボルト7を使用したが、頭部のないボルトを用い、一対のナットで基台1に固定するようにしてもよい。あるいは、締付ナット18の代わりに、中間部に頭部を有するボルトを用いてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、ボルト7に対して載置部10が相対的に上下することにより、載置部10の高さ位置を調整するようにしているが、載置部10は支柱6に固定される代わりに、支柱6が基台1に対して上下することにより、載置部10の高さ位置を調整するようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、第1の座金19を円錐台形状にしたが、第2の座金22と同様、球面状に形成し、第1の座金の内面が全体的に基台1の凸部2の外面と当接するようにしてもよい。逆に、第2の座金22を全体的に球面状とせず、ボルト7の頭部8にかかる部分は、第1の座金19の平面部20と同様、平面状にしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、受け部材11を略L字状にしたが、水平片12のみの平坦な構造であってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、ボルト7は、頭部8を除く、全長に亘ってネジ部9が形成されたものを用いたが、これに限定されず、少なくとも必要な箇所にのみ、ネジ部が形成されていればよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、第1の座金19及び第2の座金22が支柱6とは別部材で構成されているが、第1の座金19及び/又は第2の座金22が支柱6と一体的に構成されるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、第1の座金19及び第2の座金22は、円周方向に連続した面を有するが、一定間隔で切り欠きが形成される形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係る束の外観斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る束であって、直立姿勢の場合の縦断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る束であって、傾斜姿勢の場合の縦断面図を示す。
【図4】従来の束であって、傾斜姿勢の場合の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0044】
1…基台、2…凸部、3…通孔、4…平面部、5…通孔、6…支柱、7…ボルト、8…頭部、9…ネジ部、10…載置部、11…受け部材、12…水平片、13…垂直片、14…通孔、15…通孔、16…ナット、17…ゴムシート、18…締付ナット、19…第1の座金、20…平面部、21…テーパ部、22…第2の座金、G…載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みで球面状に突出する凸部(2)を有し、該凸部(2)の中心にて内外を貫通する通孔(3)が形成される基台(1)と、大引や根太といった横架材を載置するための載置部(10)が上方に設けられ、下方が通孔(3)に遊挿される支柱(6)とを備える束であって、支柱(6)は、基台(1)の凸部(2)の外面が内接する第1の座金(19)と、該凸部(2)の内面に内接する第2の座金(22)と、該凸部(2)を第1の座金(19)と第2の座金(22)とで挟持することにより、支柱(6)を基台(1)に締め付け固定するための締結手段とを備えることを特徴とする束。
【請求項2】
第1の座金(19)は、支柱(6)に挿通される環状の平面部(20)と、該平面部(20)の周縁からテーパ状に垂下するテーパ部(21)とからなる円錐台形状を有し、バネ性を有する請求項1に記載の束。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62757(P2009−62757A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232422(P2007−232422)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000108638)タカヤマ金属工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】