説明

杭の動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置

【課題】重錘とレールを用いた動的水平載荷試験において、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能な杭の動的水平載荷試験方法・装置を提供する。
【解決手段】杭頭部2に向けてレール12を設置し、このレール12には杭頭部2に向かって下り勾配の傾斜部分12aを設け、レール12上を車輪17により移動可能な重錘13をウインチ20等で傾斜部分12aに引き上げて位置エネルギーを与え、重力により重錘13をレール12に沿って所定の速度で移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する。杭頭部2に設けた緩衝コイルばねを備えた荷重検出器で衝撃荷重を計測し、杭頭部2に接続した変位検出器で杭1の水平変位を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭に水平方向の動的荷重を与える杭の水平載荷試験方法及び水平載荷試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭の水平載荷試験方法として、杭頭に静的荷重を与える試験方法があり、荷重と変位の関係より地盤抵抗などの地盤パラメータを求めるものである。また、この試験方法には、載荷方向の違いにより正負交番載荷と一方向載荷に分類され、載荷時間の違いにより段階載荷と連続載荷に分類される。
【0003】
図6は、静的水平載荷試験(正負交番載荷)の一例を示したものであり、試験杭90の両側に加力装置として油圧ジャッキ91を配置し、反力杭92に反力を取って試験杭90に水平方向の静的荷重を加える。H形鋼材93とPC鋼棒94からなる反力装置を介して油圧ジャッキ91を2本の反力杭92に接続している。試験杭90と油圧ジャッキ91との間にはロードセル95が配置される。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005―315611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の静的水平載荷試験では、加力装置として油圧ジャッキを用いるため、反力装置が必要であり、この反力装置が問題点となっていた。即ち、(a) 試験結果に反力装置の影響が混入することが避けられない、(b)反力装置が必要であることから、試験装置が大掛かりになり、試験の準備に日数が掛かり、経費も高価となる、などの問題があった。
【0006】
このような静的水平載荷試験の問題点を解消する方法として、鐘突き方式の動的水平加振方法が考えられているが、簡易な支持架台の上部水平梁材から重錘をワイヤ等で揺動可能に吊下げ、振り上げた重錘を発泡ポリウレタン等の緩衝材を介して杭頭に衝突させる簡易な装置であり、細い杭や木杭などに適用されるものである。
【0007】
また、本出願人は、上記の静的水平載荷試験の問題点を解消すべく、反力装置が不要で、かつ、実験時間が短く、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができ、さらに重錘方式の動的水平載荷重試験において比較的簡易な試験装置により大径の鋼管杭やコンクリート杭などの動的水平載荷試験も実施することができる杭の動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置を既に出願している(特願2005−335844等)。この動的水平載荷試験は、杭に向けて架設または地上に設置したレールに沿って重錘を人力または動力を用いて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えるものである。
【0008】
しかし、このような動的水平載荷試験方法・装置でも、人が重錘を押してレールに沿って移動させる場合、次のような課題があった。即ち、(1)試験に大勢の人員が必要となる、(2)大きな加振を得るのに長いレールが必要となる、(3)大きな加振が得られない、(4)試験場所に広いスペースが必要であり、地盤を掘削する面積も大きくなる、(5)打撃力の微調整が難しい、(6)人が重錘を押すので、怪我などの心配がある、(7)人が杭付近を走るので、地盤が振動し、計測器(加速度計など)にノイズが入る、(8) 人が杭近辺の地盤に載るので、杭を拘束することになり、杭の振動に影響を与える、(9)装置が大掛かりとなる、(10)運搬費が高くなる、(11)組み立てに時間がかかる、(12)見栄えが悪い。
【0009】
この発明は、このような課題を解消すべくなされたもので、重錘とレールを用いた動的水平載荷試験において、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能な動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の水平載荷試験方法であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールに沿って移動可能に設置した重錘を、位置エネルギー、弾性エネルギー、または圧力エネルギーにより杭に向けて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。
【0011】
本発明は、杭(鋼管杭、H鋼杭、コンクリート杭、鋼コンクリート合成杭など)の水平載荷試験において、従来の油圧ジャッキによる静的水平載荷試験に代えて重錘による動的水平載荷試験とし、さらに鐘突き方式に代えて地上レール方式または懸垂型モノレール方式により重錘を支持し、重力、ばね復元力、流体圧力などを用いて重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するものである(図1〜図3参照)。
【0012】
従来の静的水平載荷試験における反力装置が不要となり、試験結果に反力装置の影響が混入することがなく、また簡易な試験装置とすることができるため、実験準備が容易で試験を短時間で行うことができ、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができる。
【0013】
また、レール方式であるため、鐘突き方式などに比べ、以下の利点がある。(a)レールに沿って移動させるため、重い重錘を容易に加力することができる、(b)位置エネルギーや弾性エネルギーや圧力エネルギーを利用することにより、重錘の衝撃速度を容易に大きくすることができる、(c)レールの断面を大きくすることにより、重錘の重さを容易に大きくできる、(d)重錘の衝突後の反動を簡易な装置等で制御できる、(e)レールを設置するだけでよいため、移動式とすることも容易である、など。
【0014】
さらに、レール方式で重錘を人力で移動させる場合に比べて、以下の利点がある。(1)試験は少人数で可能となる、(2)大きな加振を得るのに、短いレールで可能になる、(3)大きな加振が得られる、(4)試験場所が狭くても試験が可能であり、また施工上埋設されている杭頭部を露出させるための地盤を掘削する面積も少なくて済む、(5)打撃力の微調整が可能である、(6)人が重錘を押さないので、安全であり、(7)人が杭付近に近寄らないので、人の走行で地盤が振動することがなく、計測器(加速度計など)にノイズが入らない、(8) 人が杭近辺の地盤に載らないので、杭を拘束せず、杭の振動に影響を与えない、(9)装置がコンパクトになる、(10)運搬費が安くなる、(11)組み立てに時間がかからない、(12)見栄えがよい、など。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動的水平載荷試験方法において、重錘が衝突する杭頭部外面の衝突点に設けた荷重検出器により衝撃荷重を計測し、変位検出器により杭頭部の変位量を計測することを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。変位検出器には、機械式変位計、光学式等の非接触式変位計、加速度計、速度計などを用いることができる。機械式変位計を用いる場合、杭頭部から重錘の反対側に向かって距離をおいて設置された不動梁に基部を取付け、先端を杭頭部に取付ける。
【0016】
例えば質量2トンの重錘を杭頭部に衝突させ、ロードセルを内蔵した荷重検出器で衝撃荷重を計測し、杭頭部と不動梁とを連結する水平配置のシリンダ型の伸縮部材とその伸縮ロッドの伸縮量を検出する変位計からなる変位検出器により杭頭部の変位量を計測する(図4参照)。一例として、質量2トンの重錘に対して、重錘の載荷継続時間は約70msec、変位量は動的荷重約70kNで約15mmの結果が得られた。不動梁は、杭頭部から重錘とは反対側に向かって十分な距離をおいてレールと直交するように配置し、杭や杭間の梁で支持した梁であり、正確な変位計測が可能となる。この変位計測は杭頭部に取付けた加速度計や速度計でも可能であり、2回積分や1回積分により変位量を求めることができるが、変位波形の低周波数成分が小さく評価されるおそれがあるため、上記の変位検出器が好ましい。なお、変位計による変位波形には高周波数のノイズが広帯域にわたって含まれるため、ハイカットフィルターを用いて除去する。なお、光学式等の非接触式変位計を用いれば、ノイズの一因と考えられる不動梁は不要になる。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の動的水平載荷試験方法において、荷重検出器は、杭頭部外面に配置したロードセルと、このロードセルと重錘の間で衝撃を吸収し、かつ、ロードセルに重錘による荷重を伝達する緩衝用治具とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。
【0018】
ロードセルと重錘との間に内管に対して重錘移動方向にスライドする外管を設け、ロードセルと外管の蓋体との間にコイルばねや皿ばね等のばね部材を設け、このばね部材の圧縮で重錘の衝撃を吸収する。ロードセル側と外管の蓋体側にそれぞれ硬質プラスチック等のクッション材とストッパーを兼ねる荷重伝達部材を所定のギャップをおいて取付け、衝撃を緩和しつつ荷重を伝達する(図5参照)。このような緩衝用治具を設けることにより、衝撃荷重を円滑に杭頭部に伝達することができる。また、緩衝材の効果が大きい場合には動的な載荷時間を伸長させることができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘とを備え、前記レールには、杭に向かって下り勾配の傾斜部分が設けられていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。レールの傾斜部分は杭から遠ざかる後側にのみ形成してもよいし、レール全体を下り勾配の傾斜とすることもできる。
【0020】
これは、重力を用いて重錘を杭頭部に衝突させる位置エネルギー方式の動的水平載荷試験装置である(図1参照)。重錘に位置エネルギーを与える手段としては、例えばウインチとワイヤーロープによる方式を用いることができる。
【0021】
本発明の請求項5に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘を杭に向かって移動させる弾性力を蓄積するように構成された弾性部材とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。
【0022】
これは、ばね等の復元力を用いて重錘を杭頭部に衝突させる弾性エネルギー方式の動的水平載荷試験装置である(図2参照)。ばね等に弾性エネルギーを蓄積させる手段としては、例えばウインチとワイヤーロープによる方式を用いることができる。
【0023】
本発明の請求項6に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘を杭に向かって移動させる圧力を与える圧力装置とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。
【0024】
これは、重錘の後面に流体圧力を加えて重錘を杭頭部に衝突させる圧力エネルギー方式の動的水平載荷試験装置である(図3参照)。圧力装置は、例えば、燃焼ガス圧を発生する装置、圧縮空気を吹き付ける圧縮機などを用いることができる。
【0025】
本発明の請求項7に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、前記レールを杭に向かって下り勾配で傾斜させる昇降装置とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。
【0026】
位置エネルギー方式の他の例であり、レールを油圧ジャッキ等の昇降装置で持ち上げることでレールを傾斜させ、重錘に位置エネルギーを与えることもできる。
【0027】
いずれの装置においても、重錘の下部に取付けた移動用治具によりレール上を移動させる地上レール方式あるいはレール上を移動する移動用治具を介して重錘をレールから吊下げる懸垂型モノレール方式を採用することができる。レールは1本でもよいし、2本以上でもよい。移動用治具には、レール上を転動する車輪方式、レール上を滑動するスライダー方式などを用いることができる。
【0028】
移動用治具に車輪方式を用いた場合、車輪にラチェットとラチェット爪等による逆転防止機構を設ければ、重錘が衝突後に反動で戻ってくるのを防止することができる。これにより、重錘による動的載荷時間を伸長させること、動的荷重を大きくすること、試験時の危険を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0030】
(1) レールに沿って重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するため、従来の静的水平載荷試験における反力装置が不要となり、試験結果に反力装置の影響が混入することがなく、また簡易な試験装置とすることができるため、実験準備が容易で試験を短時間で行うことができ、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができる。
【0031】
(2) レール方式であるため、重い重錘を容易に加力することができ、位置エネルギーや弾性エネルギーや圧力エネルギーを利用することにより、重錘の衝撃速度を容易に大きくすることができ、レールの断面を大きくすることで重錘の重さを容易に大きくでき、重錘の衝突後の反動を簡易な装置等で制御でき、比較的簡易な試験装置により大径の鋼管杭やコンクリート杭などの動的水平載荷試験を実施することができる。
【0032】
(3) 反力装置は一般的に杭を用いているが、本発明では反力装置が不要となることにより杭1本でも水平載荷試験が可能となり、より低コストの水平載荷試験が可能となる。
【0033】
(4) 重力、ばね復元力、流体圧力などを用いて重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するため、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能となる。
【0034】
(5) 人が重錘を押さないので、安全であり、安全な水平載置試験が可能となる。
【0035】
(6)杭頭部の衝突点に設置する荷重検出器をロードセルとコイルばね等からなる緩衝用治具とから構成することにより、重錘による衝撃荷重を円滑に杭頭部に伝達することができる。また、緩衝材の効果が大きい場合には動的な載荷時間を伸長させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、鋼管杭の水平載荷試験に適用した場合であり、また地上レール方式の重錘による動的水平載荷試験の例である。図1は、本発明の動的水平載荷試験の第1実施形態(位置エネルギー方式)を示す立面図である。図2は、第2実施形態(弾性エネルギー方式)を示す立面図である。図3は、第3実施形態(圧力エネルギー方式)を示す立面図である。
【0037】
図1〜図3に示すように、構造物の基礎地盤には鋼管杭1が縦方向及び横方向に間隔をおいて複数本打設されており、杭頭部2が地上に所定の高さで突出している。本発明では、このような杭頭部2に対して、位置エネルギー、弾性エネルギー、あるいは圧力エネルギーを利用した重錘方式・レール方式の動的水平載荷試験装置10により動的水平載荷試験を実施する。
【0038】
図1の位置エネルギー方式の動的水平載荷試験装置10は、杭1に向けて地上に設置された鋼材からなる装置架台11と、この装置架台11の上に設置されるレール12と、レール12に沿って移動可能な重錘13とから構成され、レール12の杭頭部2から遠ざかる後側に、杭頭部2に向かって下り勾配の傾斜部分12aを設け、この傾斜部分12aにより重錘13に位置エネルギーを与え、重錘13を重力でレール12に沿って所定の速度で水平移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する動的水平載荷試験を行う。
【0039】
装置架台11は、例えば、2段に重ねたH形鋼等の鋼材14、15から構成し、上段の鋼材15に傾斜部分15aを形成し、この上にレール12の傾斜部分12aを設置する。傾斜部分15aは鉛直柱16で支持する。これらレール12及び鋼材14〜16は、移動方向直角方向に所定の間隔をおいて一対で配置して、走行路を形成する。重錘13は、例えば長さ1m程度の重量物であり、下部にレール12上を転動する車輪17を設ける。
【0040】
重錘13を傾斜部分12aの上方に引き上げる手段には、ウインチ20とワイヤーロープ21を用いることができる。ウインチ20は、鉛直柱16の下部に設置し、鉛直柱16の上部には滑車22を設置し、ウインチ20から繰り出したワイヤーロープ21を滑車22に掛け回し、ワイヤーロープ先端を重錘13の固定用治具18に接続する。
【0041】
以上のような構成において、ウインチ20をワイヤーロープ21が巻き戻される方向に稼動させ、重錘13を傾斜部分12aに引き上げ、ウインチ20をブレーキ等で固定する(図1(a)参照)。この状態から、ウインチ20の固定を解除し、重錘13を重力と慣性によりレール12上を走行させ、杭頭部2に衝突させ、杭頭部2に載荷する(図1(b)参照)。重錘13の走行速度は、重錘13を傾斜部分12aに引き上げる高さを適宜設定することで、調整することができる。
【0042】
なお、上記のようにレールに傾斜部分を設けなくても、直線上のレールを油圧ジャッキ等の昇降装置で持ち上げるだけで、重錘に位置エネルギーを簡単に与えることができる(図示せず)。
【0043】
図2の弾性エネルギー方式の動的水平載荷試験装置10は、杭頭部2に向けて地上に設置された鋼材からなる装置架台11と、この装置架台11の上に設置されるレール12と、レール12に沿って移動可能な重錘13と、重錘13を杭頭部2に向かって移動させる弾性力を蓄積するように構成された弾性部材23とから構成され、弾性部材23に蓄積された弾性エネルギーにより重錘13をレール12に沿って所定の速度で水平移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する動的水平載荷試験を行う。
【0044】
装置架台11は、例えば、図1と同様に、2段に重ねたH形鋼等の鋼材14、15から構成し、この上にレール12を設置する。この場合、レール12及び鋼材14〜16は、水平部分だけで構成することができる。
【0045】
弾性部材23は、例えば引張りコイルばねを用い、杭頭部2を挟んで本装置とは反対側に立設した支柱24に引張コイルばね23の一端を接続し、重錘13の上部に立設したばね連結用治具25に他端を接続し、重錘13を杭頭部2から遠ざかる方向に移動させることで、引張コイルばね23に引張力が蓄積されるようにする。なお、杭頭部2を挟んで本装置とは反対側には、杭の振動に影響を与えないように、何もない方がよいため、支柱24はこの箇所を避けるように左右一対で配置するのが好ましい。
【0046】
重錘13を杭頭部2から遠ざかる方向に移動させ、引張コイルばね23に引張力を与える手段には、図1と同様に、ウインチ20とワイヤーロープ21を用いることができる。この場合、ウインチ20は、装置架台11の杭頭部2から遠ざかる後側の端部に設置し、ウインチ20から繰り出したワイヤーロープ21の先端を重錘13の固定用治具18に接続する。
【0047】
以上のような構成において、ウインチ20をワイヤーロープ21が巻き戻される方向に稼動させ、重錘13をウインチ20の近くまで引き寄せ、ウインチ20をブレーキ等で固定する(図2(a)参照)。この状態から、ウインチ20の固定を解除し、重錘13を引張コイルばね23の復元力によりレール12上を走行させ、杭頭部2に衝突させ、杭頭部2に載荷する(図2(b)参照)。重錘13の走行速度は、重錘13の引き寄せ位置を適宜設定することで、調整することができる。なお、弾性部材23は引張コイルばねに限らず、圧縮ばねやその他の弾性部材を用いることができる。
【0048】
図3の圧力エネルギー方式の動的水平載荷試験装置10は、杭1に向けて地上に設置された鋼材からなる装置架台11と、この装置架台11の上に設置されるレール12と、レール12に沿って移動可能な重錘13と、重錘13を杭頭部2に向かって移動させる圧力を与える圧力装置26とから構成され、重錘13の後面に流体圧力を加えて重錘13をレール12に沿って所定の速度で水平移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する動的水平載荷試験を行う。
【0049】
装置架台11は、図2と同様のものを用いる。圧力装置26は、例えば燃焼ガス圧を発生する装置、圧縮空気を吐出する圧縮機などを用いることができ、装置架台11の杭1から遠ざかる後側の端部に設置する。
【0050】
以上のような構成において、重錘13を圧力装置26の近くまで移動させ(図3(a)参照)、この状態から、圧力装置26を稼動させ、重錘13の後面に燃焼ガス圧や空気圧を作用させ、重錘13をこの圧力エネルギーによりレール12上を走行させ、杭頭部2に衝突させ、杭頭部2に載荷する。重錘13の走行速度は、圧力を適宜設定することで、調整することができる。
【0051】
図4に示すように、杭頭部2には、水平荷重の作用高さHが設定されており、この作用高さレベルにおいて、ロードセルを用いた荷重検出器30が杭頭部2に設けられ、重錘による動的荷重(衝撃荷重)が測定される。移動直角方向の左右両側には変位計を用いた変位検出器31が配置され、杭の水平変位が測定される。その他、杭頭部2の移動直角方向の左右両側の側面には、加速度計(水平加速度)・ひずみゲージ(せん断)32が取り付けられ、杭の水平加速度、せん断ひずみが測定される。また、杭頭部2の移動方向の前面(重錘側)・後面(反重錘側)、重錘13の左右両側に、加速度計33が取り付けられ、杭の水平加速度・鉛直加速度、重錘の水平加速度が測定される。
【0052】
重錘13の円柱中心軸は、作用高さレベルに一致するように高さ調整され、重錘13の前面中心が荷重検出器30に衝突する。図5は、緩衝用治具を備えた荷重検出器の一例を示す平面図と水平断面図であり、この荷重検出器30は、動的荷重を測定するためのロードセル40を杭頭部2の外面に接着し、このロードセル40の重錘側にコイルばねを内蔵した緩衝用治具41を設け、重錘13による衝撃荷重を円滑に杭頭部2に伝達できる構造とされている。
【0053】
緩衝用治具41は、ロードセル40の円筒形ケーシングの外周に内管42を嵌め込み、この内管42の外周に外管43を軸方向にスライド可能に嵌め込み、ロードセル40と外管43の蓋体44との間にコイルばね45を配置し、コイルばね45の圧縮変形により衝撃を吸収するように構成されている。さらに、ロードセル40の重錘側と蓋体44の反重錘側にそれぞれクッション材とストッパーを兼ねる荷重伝達部材46、47を間に所定のギャップが形成されるように取付け、この荷重伝達部材46、47の外側にコイルばね45を配置する。この荷重伝達部材46、47は、硬い金属よりも硬質プラスチック等の比較的クッション作用のある材料が好ましい。また、蓋体44の重錘側の面には、ラバーを表面に貼り付けた鋼板48が取付けられている。ラバーは重錘に取付けてもよい。なお、杭頭部2の外面にはブラケット等の支持金具(図示せず)を取付けておき、この上に荷重検出器30を載置する。
【0054】
変位検出器31は、図4に示すように、変位計50とシリンダ型の伸縮部材51からなる。杭頭部2の側面には取付片52が固定されており、この取付片52に伸縮部材51の伸縮ロッド51aの先端が取付けられ、レール11に直交する梁27にシリンダ本体51bの基端部が固定される。作用高さレベルに水平に配置された伸縮部材51の下に変位計50が水平に配置され、変位計50のロッド先端が伸縮ロッド51aに接続され、杭の変位が計測される。変位計設置用の梁27を試験杭から十分に離れた位置に設置し、かつ、両端をH形鋼等の大きい断面の杭や杭間の梁で支持することにより、変位計50が設置される梁27を不動梁とすることができ、正確な変位計測を行うことができる。
【0055】
試験杭の変位計測は、上記の変位計50のほか、試験杭に取付けた加速度計32で行うこともできる。加速度を2回積分して変位を求める。なお、変位計50から求めた変位波形には高周波数のノイズが広帯域にわたって生じており、一方、加速度計32から求めた変位波形には高周波数のノイズがない。この高周波数のノイズは、変位計50の取付構造や固定部材の振動などが原因と推定され、また加速度計32から得られる変位波形は、変位計50から得られる変位波形と比べて低周波数領域が小さく評価されている。以上の2点から、変位計50を用い、高周波数成分をハイカットフィルターにより除去するのが好ましい。なお、不動梁のいらない光学式等の非接触式変位計を用いることもできる。
【0056】
なお、図示例は、重錘の下部に取付けた移動用治具によりレール上を移動させる地上レール方式を示したが、レール上を移動する移動用治具を介して重錘をレールから吊下げる懸垂型モノレール方式にも適用できる。いずれの方式の場合も、レールは1本でもよいし、2本以上でもよい。また、移動用治具は、レール上を転動する車輪方式を示したが、レール上を滑動するスライダー方式などを用いることができる。さらに、レールは水平に限らず、例えば杭頭部に向かって下り勾配で傾斜させることもできる。
【0057】
なお、以上は鋼管杭に適用した場合について説明したが、コンクリート杭やその他の杭にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の動的水平載荷試験の第1実施形態を示す立面図である。
【図2】本発明の動的水平載荷試験の第2実施形態を示す立面図である。
【図3】本発明の動的水平載荷試験の第3実施形態を示す立面図である。
【図4】本発明で用いる杭頭部の変位計測装置の一例であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】本発明で用いる緩衝用治具を備えた荷重検出器の一例であり、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図6】従来の静的水平載荷試験装置の一例であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…鋼管杭
2…杭頭部
10…動的水平載荷試験装置
11…装置架台
12…レール
12a…傾斜部分
13…重錘
14…鋼材
15…鋼材
16…鉛直柱
17…車輪
18…固定用治具
20…ウインチ
21…ワイヤーロープ
22…滑車
23…弾性部材(コイルばね)
24…支柱
25…ばね連結用治具
26…圧力装置
27…変位計設置用の梁
30…荷重検出器
31…変位検出器
32…加速度計・ひずみゲージ(せん断)
33…加速度計
40…ロードセル
41…緩衝用治具
42…内管
43…外管
44…蓋体
45…コイルばね
46、47…荷重伝達部材
48…鋼板
50…変位計
51…伸縮部材
51a…伸縮ロッド
51b…シリンダ本体
52…取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の水平載荷試験方法であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールに沿って移動可能に設置した重錘を、位置エネルギー、弾性エネルギー、または圧力エネルギーにより杭に向けて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の動的水平載荷試験方法において、重錘が衝突する杭頭部外面の衝突点に設けた荷重検出器により衝撃荷重を計測し、変位検出器により杭頭部の変位量を計測することを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項3】
請求項2に記載の動的水平載荷試験方法において、荷重検出器は、杭頭部外面に配置したロードセルと、このロードセルと重錘の間で衝撃を吸収し、かつ、ロードセルに重錘による荷重を伝達する緩衝用治具とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項4】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘とを備え、前記レールには、杭に向かって下り勾配の傾斜部分が設けられていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。
【請求項5】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘を杭に向かって移動させる弾性力を蓄積するように構成された弾性部材とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。
【請求項6】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘を杭に向かって移動させる圧力を与える圧力装置とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。
【請求項7】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、前記レールを杭に向かって下り勾配で傾斜させる昇降装置とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−286679(P2008−286679A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132831(P2007−132831)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】